(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186027
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】欠陥検査システムおよび欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20221208BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20221208BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20221208BHJP
G06N 3/02 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G06T7/00 350C
G06T7/00 610
G06N20/00
G06N3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094038
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 公彦
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051CA04
2G051EA14
2G051EC02
2G051ED21
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096CA17
5L096CA22
5L096DA02
5L096FA02
5L096GA51
5L096HA11
5L096JA11
5L096JA24
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】
良品の過検出を低減し不良品の流出を抑制する欠陥検査システム及び欠陥検査方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、検査対象画像データ75に基づき検査対象物1の良否判定する欠陥検査システム100であって、複数の良品画像データ40及び複数の不良品画像データ30により構築された学習済みモデルを用いて、検査対象画像データ75のスコア値を出力し良否判定する検査処理部146と、スコア値が第3閾値85と第1閾値83との範囲86内か判定する第1判定部147と、スコア値が範囲86内の場合に判定感度を乗じてスコア値を補正する判定感度導入部148と、補正スコア値が第1閾値83以上か判定する第2判定部149と、を備え、検査処理部146は、補正スコア値が第1閾値83以上の場合に不良品判定し、補正スコア値が第1閾値83未満の場合に判定不定とする欠陥検査システム100及び欠陥検査方法に関する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を撮像して取得された検査対象画像データに基づいて当該検査対象物が欠陥を有するか否かの良否判定を行う欠陥検査システムであって、
良品属性が付与された複数の良品画像データおよび不良品属性が付与された複数の不良品画像データにより構築された学習済みモデルを用いて、新たに入力された前記検査対象画像データに対応する前記検査対象物の良否を判定するためのスコア値を出力し、当該スコア値に基づいて前記良否判定を行う検査処理部と、
前記検査処理部により出力された前記スコア値が、不良品判定を確定させる最小スコア値である第1閾値より小さくかつ良品判定を確定させる最大スコア値である第2閾値より大きい第3閾値と、当該第1閾値との範囲内にあるか否かを判定する第1判定部と、
前記スコア値が前記第3閾値と前記第1閾値との範囲内にある場合、前記スコア値を補正する1より大きい係数である判定感度を前記スコア値に乗じて前記スコア値を補正する判定感度導入部と、
前記判定感度を乗じて補正された前記スコア値である補正スコア値が前記第1閾値以上であるか否かを判定する第2判定部と、
を備え、
前記検査処理部は、前記補正スコア値が前記第1閾値以上である場合に当該補正スコア値に対応する前記検査対象物を不良品と判定し、前記補正スコア値が前記第1閾値より小さい場合に当該補正スコア値に対応する前記検査対象物を前記良否判定が不定と判定することを特徴とする欠陥検査システム。
【請求項2】
前記検査処理部は、出力された前記スコア値が前記第1閾値以上である場合に当該スコア値に対応する前記検査対象物を不良品と判定し、出力された前記スコア値が第3閾値より小さい場合に当該スコア値に対応する前記検査対象物を良品と判定することを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査システム。
【請求項3】
前記判定感度は、前記第1閾値に対する前記第3閾値と前記第1閾値との差分の割合に1を加えた値であることを特徴とする請求項1または2に記載の欠陥検査システム。
【請求項4】
前記第3閾値は、前記第1閾値から前記第2閾値までの間の40~60%の位置にあることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の欠陥検査システム。
【請求項5】
前記良品属性が付与された前記良品画像データおよび前記不良品属性が付与された前記不良品画像データからなる学習用データセットを複数組記憶する学習用データセット記憶部と、
前記学習用データセットを複数組入力することにより、新たに入力された画像データから、前記良品属性または前記不良品属性のうち当該画像データに付与すべき属性を推論するために、学習モデルを学習する学習部と、
前記学習部によって学習された前記学習済みモデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、
を備える機械学習装置をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の欠陥検査システム。
【請求項6】
前記検査対象物を支持する支持台と、
前記支持台に支持された前記検査対象物の被検査部位を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像される前記被検査部位を照射する照明部と、
を備える欠陥検出装置を備え、
前記検査処理部は、前記撮像部により撮像された前記検査対象物の前記被検査部位の画像データを前記検査対象画像データとして、当該検査対象画像データの前記スコア値を出力することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の欠陥検査システム。
【請求項7】
前記検査対象物は、
ワイパーアームに固定されるワイパーフレームが取り付けられる基体部と、
ウインドーガラスに付着した被払拭体を払拭するリップ部と、
前記基体部と前記リップ部とを接続する薄肉のネック部と、
を備えるワイパーラバーであって、
前記基体部は、その側面において前記ワイパーフレームと係合可能なストッパー部を備え、
前記欠陥検出装置は、前記リップ部、前記ネック部、および前記ストッパー部の少なくとも1つに対して物理的な負荷を加える負荷部を備え、
前記撮像部は、前記負荷部により物理的な負荷が加えられた状態の前記リップ部、前記ネック部、および前記ストッパー部の少なくとも1つを前記被検査部位として撮像することを特徴とする請求項6に記載の欠陥検査システム。
【請求項8】
検査対象物を撮像して取得された検査対象画像データに基づいて当該検査対象物が欠陥を有するか否かの良否判定を行う欠陥検査方法であって、
良品属性が付与された複数の良品画像データおよび不良品属性が付与された複数の不良品画像データにより構築された学習済みモデルを用いて、新たに入力された前記検査対象画像データに対応する前記検査対象物の良否を判定するためのスコア値を出力し、当該スコア値に基づいて前記良否判定を行う検査処理ステップと、
前記検査処理ステップにより出力された前記スコア値が、不良品判定を確定させる最小スコア値である第1閾値より小さくかつ良品判定を確定させる最大スコア値である第2閾値より大きい第3閾値と、当該第1閾値との範囲内にあるか否かを判定する第1判定ステップと、
前記スコア値が前記第3閾値と前記第1閾値との範囲内にある場合、前記スコア値を補正する1より大きい係数である判定感度を前記スコア値に乗じて前記スコア値を補正する判定感度導入ステップと、
前記判定感度を乗じて補正された前記スコア値である補正スコア値が前記第1閾値以上であるか否かを判定する第2判定ステップと、
を含み、
前記検査処理ステップは、前記補正スコア値が前記第1閾値以上である場合に当該補正スコア値に対応する前記検査対象物を不良品と判定し、前記補正スコア値が前記第1閾値より小さい場合に当該補正スコア値に対応する前記検査対象物を前記良否判定が不定と判定することを特徴とする欠陥検査方法。
【請求項9】
前記良品属性が付与された前記良品画像データおよび前記不良品属性が付与された前記不良品画像データからなる学習用データセットを学習用データセット記憶部に複数組記憶させる学習用データセット記憶ステップと、
前記学習用データセットを複数組入力することにより、新たに入力された画像データから、前記良品属性または前記不良品属性のうち当該画像データに付与すべき属性を推論するために、学習モデルを学習する学習ステップと、
前記学習部によって学習された前記学習済みモデルを学習済みモデル記憶部に記憶させる学習済みモデル記憶ステップと、
をさらに含み、
前記検査処理ステップは、前記学習済みモデル記憶部に記憶された前記学習済みモデルを用いて、新たに入力された前記検査対象画像データに対応する前記スコア値を出力することを特徴とする請求項8に記載の欠陥検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査システムおよび欠陥検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場において製造された製品の外観を撮像手段で撮像し、撮像した画像に基づいて良品(正常品)と傷や欠け等の欠陥を有する不良品(欠陥品)との分類を行う欠陥検査等が行われている(例えば、特許文献1を参照)。このような検査では、例えば、予め用意した基準画像から特徴点を抽出しておき、製品を撮像した画像から抽出された特徴点と比較した結果に基づいて製品の良否判定を行う。
【0003】
また、最近では、良品が撮像された良品画像の特徴と不良品が撮像された不良品画像の特徴とをそれぞれニューラルネットワーク等の公知の機械学習器に学習させ、新たに入力された検査対象物(製品)の画像が良品であるか不良品であるかを機械学習器によって識別する技術が注目されており、開発が進んでいる(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
図16は、従来の欠陥検査方法を説明するための図を示す。
【0005】
機械学習器を用いた欠陥検査方法としては、例えば、
図16に示すように、良品属性が付与された複数の良品画像データおよび不良品属性が付与された複数の不良品画像データにより構築された学習済みモデルを用いて、新たに入力された画像データに対応する検査対象物の良否を判定するためのスコア値を出力し、当該スコア値に基づいて良否判定を行う方法が知られている。
図16に示すグラフ500は、機械学習により構築された学習済みモデルのイメージである。この学習済みモデルでは、不良品画像データのスコア値の方が良品画像データのスコア値に比べて大きな値が算出される。このような方法では、不良品判定を確定させるスコア領域501の最小スコア値である不良品最小閾値503或いは良品判定を確定させるスコア領域502の最大スコア値である良品最大閾値504を用いて良否判定が行われる。不良品最小閾値503を用いた良否判定は、例えば、出力されたスコア値が不良品最小閾値503以上の場合は当該スコア値に対応する検査対象物を不良品と判定し、出力されたスコア値が不良品最小閾値503より小さい場合は当該スコア値に対応する検査対象物を良品と判定する(
図16Aを参照)。また、良品最大閾値504を用いた良否判定は、例えば、出力されたスコア値が良品最大閾値504以下の場合は当該スコア値に対応する検査対象物を良品と判定し、出力されたスコア値が良品最大閾値504より大きい場合は当該スコア値に対応する検査対象物を不良品と判定する(
図16Bを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-140090号公報
【特許文献2】特開2018-005640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、上記のような画像に写る対象物を分類するニューラルネットワークの学習には膨大な量の画像と、それらすべてにアノテーションする工数が必要になる。さらに、当然ながら、学習データに存在しない分類の画像は正しく推定されない。そのため、ニューラルネットワークを用いた画像の分類を製造現場での欠陥検査に適用した場合、例えば、実際には良品であるにも関わらず良品最大閾値504より大きいスコア値が出力されたために不良品と判定される事態や、実際には不良品であるにも関わらず不良品最小閾値503より小さいスコア値が出力されたために良品と判定される事態が生じる虞がある。その結果、良品の過検出や不良品の見逃し(流出)が多くなり、欠陥検査における検査対象物の良否判定精度が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、良品の過検出を低減し、かつ不良品の流出を抑制する欠陥検査システムおよび欠陥検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る欠陥検査システムは、検査対象物を撮像して取得された検査対象画像データに基づいて当該検査対象物が欠陥を有するか否かの良否判定を行う欠陥検査システムであって、良品属性が付与された複数の良品画像データおよび不良品属性が付与された複数の不良品画像データにより構築された学習済みモデルを用いて、新たに入力された前記検査対象画像データに対応する前記検査対象物の良否を判定するためのスコア値を出力し、当該スコア値に基づいて前記良否判定を行う検査処理部と、前記検査処理部により出力された前記スコア値が、不良品判定を確定させる最小スコア値である第1閾値より小さくかつ良品判定を確定させる最大スコア値である第2閾値より大きい第3閾値と、当該第1閾値との範囲内にあるか否かを判定する第1判定部と、前記スコア値が前記第3閾値と前記第1閾値との範囲内にある場合、前記スコア値を補正する1より大きい係数である判定感度を前記スコア値に乗じて前記スコア値を補正する判定感度導入部と、前記判定感度を乗じて補正された前記スコア値である補正スコア値が前記第1閾値以上であるか否かを判定する第2判定部と、を備え、前記検査処理部は、前記補正スコア値が前記第1閾値以上である場合に当該補正スコア値に対応する前記検査対象物を不良品と判定し、前記補正スコア値が前記第1閾値より小さい場合に当該補正スコア値に対応する前記検査対象物を前記良否判定が不定と判定する。
(2)別の実施形態に係る欠陥検査システムにおいて、好ましくは、前記検査処理部は、出力された前記スコア値が前記第1閾値以上である場合に当該スコア値に対応する前記検査対象物を不良品と判定し、出力された前記スコア値が第3閾値より小さい場合に当該スコア値に対応する前記検査対象物を良品と判定しても良い。
(3)別の実施形態に係る欠陥検査システムにおいて、好ましくは、前記判定感度は、前記第1閾値に対する前記第3閾値と前記第1閾値との差分の割合に1を加えた値であっても良い。
(4)別の実施形態に係る欠陥検査システムにおいて、好ましくは、前記第3閾値は、前記第1閾値から前記第2閾値までの間の40%~60%の位置にある値でも良い。
(5)別の実施形態に係る欠陥検査システムにおいて、好ましくは、前記良品属性が付与された前記良品画像データおよび前記不良品属性が付与された前記不良品画像データからなる学習用データセットを複数組記憶する学習用データセット記憶部と、前記学習用データセットを複数組入力することにより、新たに入力された画像データから、前記良品属性または前記不良品属性のうち当該画像データに付与すべき属性を推論するために、学習モデルを学習する学習部と、前記学習部によって学習された前記学習済みモデルを記憶する学習済みモデル記憶部と、を備える機械学習装置をさらに備えても良い。
(6)別の実施形態に係る欠陥検査システムにおいて、好ましくは、前記検査対象物を支持する支持台と、前記支持台に支持された前記検査対象物の被検査部位を撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像される前記被検査部位を照射する照明部と、を備える欠陥検出装置を備え、前記検査処理部は、前記撮像部により撮像された前記検査対象物の前記被検査部位の画像データを前記検査対象画像データとして、当該検査対象画像データの前記スコア値を出力しても良い。
(7)別の実施形態に係る欠陥検査システムにおいて、好ましくは、前記検査対象物は、ワイパーアームに固定されるワイパーフレームが取り付けられる基体部と、ウインドーガラスに付着した被払拭体を払拭するリップ部と、前記基体部と前記リップ部とを接続する薄肉のネック部と、を備えるワイパーラバーであって、前記基体部は、その側面において前記ワイパーフレームと係合可能なストッパー部を備え、前記欠陥検出装置は、前記リップ部、前記ネック部、および前記ストッパー部の少なくとも1つに対して物理的な負荷を加える負荷部を備え、前記撮像部は、前記負荷部により物理的な負荷が加えられた状態の前記リップ部、前記ネック部、および前記ストッパー部の少なくとも1つを前記被検査部位として撮像しても良い。
(8)一実施形態に係る欠陥検査方法は、検査対象物を撮像して取得された検査対象画像データに基づいて当該検査対象物が欠陥を有するか否かの良否判定を行う欠陥検査方法であって、良品属性が付与された複数の良品画像データおよび不良品属性が付与された複数の不良品画像データにより構築された学習済みモデルを用いて、新たに入力された前記検査対象画像データに対応する前記検査対象物の良否を判定するためのスコア値を出力し、当該スコア値に基づいて前記良否判定を行う検査処理ステップと、前記検査処理ステップにより出力された前記スコア値が、不良品判定を確定させる最小スコア値である第1閾値より小さくかつ良品判定を確定させる最大スコア値である第2閾値より大きい第3閾値と、当該第1閾値との範囲内にあるか否かを判定する第1判定ステップと、前記スコア値が前記第3閾値と前記第1閾値との範囲内にある場合、前記スコア値を補正する1より大きい係数である判定感度を前記スコア値に乗じて前記スコア値を補正する判定感度導入ステップと、前記判定感度を乗じて補正された前記スコア値である補正スコア値が前記第1閾値以上であるか否かを判定する第2判定ステップと、を含み、前記検査処理ステップは、前記補正スコア値が前記第1閾値以上である場合に当該補正スコア値に対応する前記検査対象物を不良品と判定し、前記補正スコア値が前記第1閾値より小さい場合に当該補正スコア値に対応する前記検査対象物を前記良否判定が不定と判定する。
(9)別の実施形態に係る欠陥検査方法において、好ましくは、前記良品属性が付与された前記良品画像データおよび前記不良品属性が付与された前記不良品画像データからなる学習用データセットを学習用データセット記憶部に複数組記憶させる学習用データセット記憶ステップと、前記学習用データセットを複数組入力することにより、新たに入力された画像データから、前記良品属性または前記不良品属性のうち当該画像データに付与すべき属性を推論するために、学習モデルを学習する学習ステップと、前記学習部によって学習された前記学習済みモデルを学習済みモデル記憶部に記憶させる学習済みモデル記憶ステップと、をさらに含み、前記検査処理ステップは、前記学習済みモデル記憶部に記憶された前記学習済みモデルを用いて、新たに入力された前記検査対象画像データに対応する前記スコア値を出力しても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良品の過検出を低減し、かつ不良品の流出を抑制する欠陥検査方法および欠陥検査システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムの検査対象物の一例である結合成形品の斜視図(1A)、平面図および当該平面図におけるA-A線断面図(1B)、および当該A-A線断面図の拡大図をそれぞれ示す。
【
図2】
図2は、
図1Aの結合成形品の一部拡大図およびその一部Fの拡大図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムが備える欠陥検出装置の斜視図を示す。
【
図4】
図4は、
図3の欠陥検出装置の一部拡大図(4A)および回転ユニットの拡大斜視図(4B)をそれぞれ示す。
【
図5】
図5は、
図3の欠陥検出装置を用いたストッパー部の欠陥検出処理を説明するための写真(5A)および当該欠陥検出処理を施したストッパー部の欠陥箇所の具体例を表す写真(5B)をそれぞれ示す。
【
図6】
図6は、
図3の欠陥検出装置を用いたネック部の欠陥検出処理を説明するための写真(6A)および当該欠陥検出処理を施したネック部の欠陥箇所の具体例を表す写真(6B)をそれぞれ示す。
【
図7】
図7は、
図3の欠陥検出装置を用いたリップ部の欠陥検出処理を説明するための写真を示す。
【
図8】
図8は、
図7の欠陥検出処理を施したリップ部の欠陥箇所の具体例を表す写真を示す。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムの概略的なハードウェア構成図を示す。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムの概略的な機能ブロック図を示す。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムにおいて実施される機械学習を説明するための図を示す。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムにおいて実施される欠陥検査方法を説明するための図を示す。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムにおいて実施される欠陥検査方法を説明するための図を示す。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムにおける機械学習処理のフローチャート(14A)および欠陥検査処理のフローチャート(14B)をそれぞれ示す。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムにおいて実施される欠陥検査方法の具体例を説明するための図を示す。
【
図16】
図16は、従来の欠陥検査方法を説明するための図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
1.欠陥検査システム
本発明の実施形態に係る欠陥検査システムは、検査対象物を撮像して取得された検査対象画像データに基づいて当該検査対象物が欠陥を有するか否かの良否判定を行うシステムである。この実施形態において、欠陥検査システムは、検査対象物の一例である結合成形品1(
図1を参照)の被検査部位を欠陥検出装置10(
図3を参照)にて撮像し、撮像された当該被検査部位の画像データを検査対象画像データとして、機械学習を用いて当該検査対象画像データに対応する検査対象物の良否を判定するシステムである。
【0014】
(1)結合成形品
まず、検査対象物の一例である結合成形品について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムの検査対象物の一例である結合成形品の斜視図(1A)、平面図および当該平面図におけるA-A線断面図(1B)、および当該A-A線断面図の拡大図をそれぞれ示す。
図2は、
図1Aの結合成形品の一部拡大図およびその一部Fの拡大図を示す。
【0016】
この実施形態において、結合成形品1は、2つのワイパーラバー1a,1bがリップ部L(
図2の一部Fの拡大図を参照)の先端面同士で突き合わされて一体に成形された成形品である。すなわち、結合成形品1は、2つのワイパーラバー1a,1bが対向するようにリップ部Lの先端面で接続されている。結合成形品1は、リップ部Lの先端面の位置の中央線C(
図1を参照)で切断されることにより、2つのワイパーラバー1a,1bが形成される。
【0017】
ワイパーラバー1a,1bは、自動車、電車等の車両、船舶、航空機等の輸送機器に備えられ、窓に付着した雨滴等を払拭するワイパー装置の一部である。ワイパー装置は、駆動手段に接続されたワイパーアーム(不図示)と、ワイパーアームに取り付けられたワイパーブレードとを備える。ワイパーブレードは、窓に接触するワイパーラバー1a,1bと、ワイパーラバー1a,1bを固定するとともにワイパーアームに取り付けられる金属製または樹脂製のワイパーフレーム(不図示)とを備える。ワイパーラバー1a,1bは、好ましくは、ワイパーアーム(不図示)に固定されるワイパーフレーム(不図示)が取り付けられる基体部Bと、ウインドーガラスに付着した被払拭体を払拭するリップ部Lと、基体部Bとリップ部Lとを接続する薄肉のネック部Nと、を備える(
図2の一部Fの拡大図を参照)。基体部Bは、好ましくは、その側面においてワイパーフレーム(不図示)と係合可能なストッパー部Sを備える。ストッパー部Sは、好ましくは、基体部Bの側面視(結合成形品1の平面視)において略H字形状に窪む部位である(
図2を参照)。ワイパーラバー1a,1bは、ストッパー部Sとワイパーフレームとが嵌合することにより、ワイパーフレームに保持される。ネック部Nは、基体部Bから突設された板状の部材である。リップ部Lは、ネック部Nの先端に設けられ、ネック部Nより幅広の板状部材L1と、板状部材L1から離れるに従い縮幅する基台L2と、基台L2の先端から突設する先端部L3と、を備える(
図2の一部Fの拡大図を参照)。
【0018】
基体部B、ネック部Nおよびリップ部Lは、好ましくは、一体に成形されている。基体部B、ネック部Nおよびリップ部Lの材質としては、従来からワイパーラバーに用いられるものであれば特に制約されず、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、エチレン・プロピレン・共役ジエン共重合体ゴム等のゴム基材を主成分として含むゴム材料が挙げられる。その中でも、耐候性や化学的安定性に優れており、変色や破損(ひび割れ等)を生じにくい点から、エチレン・プロピレン・共役ジエン共重合体ゴム、シリコーンゴムが好ましく、払拭性により優れる点でシリコーンゴムがより好ましい。これらのゴム材料は1種単独で用いられても良いし、2種以上が組み合わせて用いられても良い。また、これらのゴム材料は、例えば、白金触媒、加硫剤、有機顔料、無機顔料、着色剤、充填剤等の各種添加剤を含有していても良い。ただし、ゴム材料の硬度は、ゴム材料の種類、加硫剤の種類や量、添加剤の種類や量等により適宜調節されることが好ましい。
【0019】
結合成形品1は、好ましくは、先述のゴム材料を加熱圧縮成形等により成形される。このように成形された結合成形品1は、金型が開く際および金型から離型させる際に、金型に引っ張られることによりストレスが加わり、その一部分に微小な亀裂等の欠陥が発生する虞がある。結合成形品1は、特に、ストッパー部S、ネック部Nおよびリップ部Lに亀裂等の欠陥が発生しやすい。そのため、結合成形品1は、出荷前に欠陥の有無を検査する必要がある。例えば、作業員が結合成形品1を1つずつ指で広げて欠陥の有無を検査する場合、工数がかかり生産性が低下する。また、指で広げる等の負荷を加えずに欠陥の有無を検査する場合、微小な亀裂のために欠陥の検出が困難である。そこで、結合成形品1は、結合成形品1に負荷を加えて欠陥の有無を検査可能な欠陥検出装置10を用いて検査されることが好ましい。
【0020】
(2)欠陥検出装置
図3は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムが備える欠陥検出装置の斜視図を示す。
図4は、
図3の欠陥検出装置の一部拡大図(4A)および回転ユニットの拡大斜視図(4B)をそれぞれ示す。
【0021】
欠陥検出装置10は、好ましくは、検査対象物である結合成形品1を支持する支持台14,15と、支持台14,15に支持された結合成形品1の被検査部位を撮像する撮像部11と、撮像部11により撮像される被検査部位を照射する照明部13と、を備える。欠陥検出装置10は、好ましくは、撮像部11と被検査部位との間に配置されるレンズ12と、少なくともネック部Nおよびストッパー部Sに対して物理的な負荷を加える負荷ユニット16(本発明の負荷部の一例)と、を備える。また、欠陥検出装置10は、好ましくは、負荷ユニット16に代えて、少なくともリップ部Lに対して物理的な負荷を加える回転ユニット19(本発明の負荷部の一例)を装着可能に構成される。
【0022】
撮像部11は、負荷ユニット16または回転ユニット19により物理的な負荷が加えられた状態のストッパー部S、ネック部Nおよびリップ部Lの少なくとも1つを被検査部位として撮像するカメラである。撮像部11は、レンズ12を介して、照明部13に照射された被検査部位を撮像する。撮像部11は、レンズ12を介して物理的な負荷が加えられた状態の被検査部位を撮像可能なカメラであれば特に制約されないが、エリアスキャンカメラが好ましい。ただし、撮像部11は、ラインスキャンカメラであっても良い。照明部13は、負荷ユニット16または回転ユニット19により物理的な負荷が加えられた状態の被検査部位を照射可能な照明であれば特に制約されないが、例えば、同軸照明やドーム照明が好ましい。この実施形態において、照明部13は、同軸照明である。支持台14,15は、好ましくは、照明部13の下方に配置され、結合成形品1の長手方向の少なくとも一端を支持する支持台15と、支持台15と所定距離離間して配置され、結合成形品1の長手方向の少なくとも他端を支持する支持台14と、から構成される。欠陥検出装置10において、結合成形品1は、支持台14と支持台15とを橋渡しするように載置される。支持台14,15は、少なくとも検査対象物の一例である結合成形品1を支持可能な形態であれば特に制約されず、例えば、支持台14と支持台15とが離間せずに連接していても良いし、1つの部材から構成されていても良い。
【0023】
負荷ユニット16は、好ましくは、結合成形品1のうち支持台15に載置されている一端部を挟持する一対の挟持部17,17と、結合成形品1を引張り可能な一対の引張り部18,18と、を備える(
図4Aを参照)。挟持部17,17は、好ましくは、結合成形品1の基体部Bをそれぞれ挟持する。また、挟持部17,17は、好ましくは、上下方向に摺動可能な部材である。引張り部18,18は、好ましくは、挟持部17,17を引張り部18,18に近接させる方向(
図4Aの矢印P方向)へ摺動可能な部材である。回転ユニット19は、好ましくは、結合成形品1の基体部Bを挟持して回転可能な一対の回転部21,21と、回転部21,21を支持する支持部20と、を備える(
図4Bを参照)。回転部21,21は、好ましくは、その長手方向に沿って並んで配置され、互いに近接する一端部同士が支持部20に支持されている。回転部21,21は、好ましくは、支持部20に支持された一端部を支点として、それぞれ矢印R方向(
図4Bを参照)に回動する。
【0024】
負荷ユニット16および回転ユニット19によるストッパー部S、ネック部N、およびリップ部Lの欠陥検出処理について説明する。まず、ストッパー部Sの欠陥検出処理について説明する。
【0025】
図5は、
図3の欠陥検出装置を用いたストッパー部の欠陥検出処理を説明するための写真(5A)および当該欠陥検出処理を施したストッパー部の欠陥箇所の具体例を表す写真(5B)をそれぞれ示す。
【0026】
ストッパー部Sの欠陥検出処理は、結合成形品1の支持台15に載置されている一端部が挟持部17,17に挟持された状態で、挟持部17,17が下方(矢印D方向)に摺動することにより、ストッパー部Sを折り曲げる(
図5Aを参照)。撮像部11は、このストッパー部Sが折り曲げられた状態(
図5Aの右図を参照)において、当該ストッパー部Sを少なくとも含む領域を撮像する。そして、撮像部11による撮像後に、挟持部17,17が上方(矢印Dの反対方向)に摺動することにより、ストッパー部Sが折り曲げられていない状態に戻る(
図5Aの左図を参照)。このような欠陥検出処理により、ストッパー部Sに発生していた亀裂等の欠陥は、折り曲げ動作により大きくなるため、欠陥の検出が容易となる(
図5Bを参照)。
【0027】
次に、ネック部Nの欠陥検出処理について説明する。
【0028】
図6は、
図3の欠陥検出装置を用いたネック部の欠陥検出処理を説明するための写真(6A)および当該欠陥検出処理を施したネック部の欠陥箇所の具体例を表す写真(6B)をそれぞれ示す。
【0029】
ネック部Nの欠陥検出処理は、結合成形品1の支持台15に載置されている一端側の基体部Bが挟持部17,17にそれぞれ挟持された状態で、引張り部18により挟持部17,17を引張り部18,18に近接させる方向(矢印P方向)へ摺動させることにより、ネック部Nを引っ張る(
図6Aを参照)。撮像部11は、このネック部Nが引っ張られた状態(
図6Aを参照)において、当該ネック部Nを少なくとも含む領域を撮像する。そして、撮像部11による撮像後に、引張り部18により挟持部17,17を引張り部18,18から離間させる方向(矢印Pの反対方向)に摺動することにより、ネック部Nが引っ張られていない状態に戻る。このような欠陥検出処理により、ネック部Nに発生していた亀裂等の欠陥は、引っ張り動作により大きくなるため、欠陥の検出が容易となる(
図6Bを参照)。
【0030】
次に、リップ部Lの欠陥検出処理について説明する。
【0031】
図7は、
図3の欠陥検出装置を用いたリップ部の欠陥検出処理を説明するための写真を示す。
図8は、
図7の欠陥検出処理を施したリップ部の欠陥箇所の具体例を表す写真を示す。
【0032】
リップ部Lの欠陥検出処理は、まず、欠陥検出装置10の負荷ユニット16を回転ユニットに取り換える。そして、結合成形品1の支持台15に載置されている一端側の基体部Bが回転部21,21にそれぞれ挟持された状態(
図7のaを参照)で、回転部21,21をそれぞれ矢印R方向に回動する(
図7のbを参照)。これにより、結合成形品1は、2つの基体部Bが互いに離間するように回転して曲げられ、その結果、リップ部Lが引き延ばされる。撮像部11は、このリップ部Lが引き延ばされた状態(
図7のcを参照)において、当該リップ部Lを少なくとも含む領域を撮像する。そして、撮像部11による撮像後に、回転部21,21をそれぞれ矢印Rと反対方向に回動することにより、基体部Bが回転かつ曲げられていない状態、すなわち、リップ部Lが引き延ばされていない状態に戻る(
図7のaを参照)。このような欠陥検出処理により、リップ部Lに発生していた亀裂等の欠陥は、回転曲げ動作により大きくなるため、欠陥の検出が容易となる(
図8を参照)。
【0033】
(3)欠陥検査システムのハードウェア構成
図9は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムの概略的なハードウェア構成図を示す。
【0034】
本発明の実施形態に係る欠陥検査システム100は、好ましくは、欠陥検査装置110と、撮像部(CAMERA)11と、入力装置101と、表示装置130と、を備える。欠陥検査装置110の好適な例は、下記の各種プログラムをインストールしたコンピュータである。欠陥検査装置110は、好ましくは、CPU112と、ROM113と、RAM114と、不揮発性メモリ115と、グラフィック制御回路116と、インターフェース111,118と、を備える。これらの構成要素は、バス117を介して互いに通信可能に構成されている。インターフェース111は、撮像部11、およびキーボードやマウス等の入力装置101との通信を行うインターフェースである。CPU112は、欠陥検査装置110を全体的に制御するプロセッサである。CPU112は、ROM113に格納されたシステムプログラムをバス117経由で読み出し、当該システムプログラムに従って欠陥検査装置110全体を制御する。CPU112に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)を用いても良い。ROM113は、当該システムプログラムおよび後述の機械学習装置120とのやりとりを制御するためのシステムプログラムを含む各種プログラムを記憶する読み出し専用の記憶装置である。当該各種プログラムは、欠陥検査装置110の動作を制御するためのものである。RAM114は、一時的な計算データや表示データ等の各種データを一時的に記憶する読み書き可能な記憶装置である。
【0035】
不揮発性メモリ115は、例えばバッテリ(不図示)でバックアップされる等して、欠陥検査装置110の電源がオフされても記憶状態が保持される記憶装置である。不揮発性メモリ115には、インターフェース111を介して入力装置101から入力されたデータ、インターフェース11を介して撮像部11から入力された被検査部位の画像データ、図示しない外部メモリやネットワーク等を介して取得された各種データ等が記憶されている。不揮発性メモリ115に記憶されたプログラムや各種データは、実行時/利用時にはRAM114に展開されても良い。グラフィック制御回路116は、数値データおよび図形データ等のデジタル信号を表示用のラスタ信号に変換し、表示装置130に送信する制御回路である。表示装置130は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)等の、グラフィック制御回路116から受信した数値および図形を表示する装置である。インターフェース118は、欠陥検査装置110と機械学習装置120とを接続するためのインターフェースである。なお、インターフェース111,118は、その通信形態は特に制約されず、例えば、インターネット、イントラネット、LAN、USB、赤外線、Bluetooth(登録商標)等を介して通信を行うインターフェースであっても良い。
【0036】
機械学習装置120は、好ましくは、CPU122と、ROM123と、RAM124と、不揮発性メモリ125と、を備える。これらの構成要素は、バス127を介して互いに通信可能に構成されている。CPU122は、機械学習装置120全体を制御するプロセッサである。CPU122に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)を用いても良い。ROM123は、システムプログラムを含む各種プログラムを記憶する読み出し専用の記憶装置である。当該各種プログラムは、、機械学習装置120の動作を制御するためのものである。RAM124は、機械学習に係る各処理における一時的な記憶を行うための読み書き可能な記憶装置である。不揮発性メモリ125は、学習モデル、学習済みモデル等を記憶する記憶装置である。ここで、「学習モデル」は、学習前のモデル(または学習用モデルともいう)を意味し、「学習済みモデル」は、学習を済ませたモデルを意味する。機械学習装置120は、好ましくは、インターフェース118を介して欠陥検査装置110にて取得可能な各種データ(被検査部位の画像データ等)を観測することができる。また、欠陥検査装置110は、機械学習装置120から出力されるスコア値等の検査対象物の良否判定結果に係る情報を表示装置130等に表示する。なお、欠陥検査装置110は、機械学習装置120から出力される当該検査対象物の良否判定結果に係る情報を表示装置130とは異なる表示装置(不図示)に表示しても良い。
【0037】
(4)欠陥検査システムの機能的構成
図10は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムの概略的な機能ブロック図を示す。
図11は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムにおいて実施される機械学習を説明するための図を示す。
図12および
図13は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムにおいて実施される欠陥検査方法を説明するための図を示す。
図10に示す各機能ブロックは、
図9に示す欠陥検査装置110のCPU112および機械学習装置120のCPU122が、それぞれシステムプログラムを実行し、欠陥検査装置110および機械学習装置120の各部の動作を制御することにより実現される機能の観点で表したものである。
【0038】
本発明の実施形態に係る欠陥検査システム100において、欠陥検査装置110は、好ましくは、機械学習装置120と、入力受付部145と、検査処理部146と、第1判定部147と、判定感度導入部148と、第2判定部149と、を備える。機械学習装置120は、好ましくは、学習用データセット記憶部141と、学習部142と、プログラム・パラメータ記憶部143と、学習済みモデル記憶部144と、を備える。
【0039】
学習用データセット記憶部141は、良品属性が付与された良品画像データ40および不良品属性が付与された不良品画像データ30からなる学習用データセットを複数組記憶するための記憶領域である。この実施形態において、良品画像データ40および不良品画像データ30は、予め準備された被検査部位を含むテスト画像データに良品属性または不良品属性が付与されて作成された画像データである。このテスト画像データは、例えば、撮像部11により事前に撮像された被検査部位を含む画像データ、外部メモリ(不図示)から読み込まれた被検査部位を含む画像データ、ネットワーク(不図示)を介して取得された被検査部位を含む画像データ等であることが好ましい。また、後述の欠陥検査処理が実行された欠陥検査済みの検査対象画像データを新たにテスト画像データとして記憶しても良い。テスト画像データへの良品属性または不良品属性の付与方法は、特に制約されないが、例えば、作業者がテスト画像データを目視することにより入力装置101等を介して良品属性または不良品属性を入力する方法や、コンピュータ等がテスト画像データを解析して良品属性または不良品属性を付与する方法等であっても良い。学習用データセット記憶部141は、好ましくは、ストッパー部S、ネック部N、およびリップ部Lの被検査部位ごとに作成された学習用データセットを複数組記憶する。学習用データセット記憶部141に記憶される学習用データセットの数は、特に制約されないが、例えば、ストッパー部S、ネック部N、およびリップ部Lそれぞれについて、50枚の良品画像データ40と50枚の不良品画像データ30とからなる学習用データセットが記憶されていることが好ましい。学習用データセット記憶部141は、好ましくは、不揮発性メモリ125に確保された記憶領域である。ただし、学習用データセット記憶部141は、RAM124等の他の記憶装置に確保された記憶領域であっても良い。
【0040】
学習部142は、好ましくは、学習用データセットを複数組入力することにより学習済みモデルを構築する構成部である。学習部142は、新たに入力された画像データから、良品属性または不良品属性のうち当該画像データに付与すべき属性を推論する学習済みモデルを構築する。学習部142は、好ましくは、学習用データセット記憶部141に記憶された複数組のデータセットを用いて機械学習を実行する構成部である。プログラム・パラメータ記憶部143は、好ましくは、学習モデルを含む各種プログラムおよび当該プログラム中の初期パラメータ(重み等を含む)、および学習部142が学習を通じて算出したパラメータを記憶するための記憶領域である。学習済みモデル記憶部144は、好ましくは、学習部142において学習モデルの学習により生成された学習済みモデルを記憶するための記憶領域である。プログラム・パラメータ記憶部143および学習済みモデル記憶部144は、好ましくは、不揮発性メモリ125に確保された記憶領域である。ただし、プログラム・パラメータ記憶部143および学習済みモデル記憶部144は、RAM124等の他の記憶装置に確保された記憶領域であっても良い。この実施形態では、機械学習装置120において使用される学習済みモデル構築用のディープラーニングプログラムとして、Preferred Networks社の「Visual Inspection」という教師なし学習プログラムを好適に用いることができる。このプログラムでは、欠陥の箇所を明示せずに、単に、良品フォルダに良品画像を、不良品フォルダに不良品画像を、それぞれ複数読み込ませることによって、学習済みモデルを構築できる。欠陥箇所を明示しないで学習させるという意味で、このプログラムは、教師なし学習用プログラムの範疇に入る。学習部142で実行される機械学習について、以下に説明する。
【0041】
学習部142は、好ましくは、機械学習と総称される任意の学習アルゴリズムに従い、良品画像データ40および不良品画像データ30と良品属性および不良品属性との相関性を暗示する特徴量を抽出する。この結果、新たに入力された画像データ75(検査対象画像データ75)(
図12を参照)が学習済みモデルに入力された際に、良品か不良品かの属性の推定が可能となる。学習部142は、当該学習モデルの学習を反復実行することができる。このような学習サイクルを繰り返すことにより、学習済みモデルをより精度の高いものとすることができる。
【0042】
機械学習装置120において、上述のような教師なし学習を進める際には、ニューラルネットワークを用いることができる。ニューラルネットワークは、例えば、ニューロンのモデルを模した演算装置や記憶装置等によって構成できる。
図11のbに示すニューラルネットワーク45は、学習前のモデルであって、入力層の複数個のニューロン50と、第1中間層の複数個のニューロン51と、第m中間層の複数のニューロン55と、第n中間層の複数のニューロン60と、出力層の複数のニューロン61と、から構成されている。ただし、mは1≦m≦nの自然数とする。中間層は、隠れ層とも呼ばれており、その数は1以上であれば特に制約されない。この実施形態では、n個の中間層を有する。また、入力層または出力層と中間層との間には、層間のニューロンを接続するエッジ70が張られており、それぞれのエッジ70には、重みW
i(W
1~W
n)が対応付けられている。
【0043】
この実施形態におけるニューラルネットワーク45は、学習用データセット記憶部141に記憶された複数組の学習用データセットを用いて、良品画像データ40および不良品画像データ30と良品属性および不良品属性との相関関係を学習する。具体的には、状態変数としての良品画像データ40および不良品画像データ30をそれぞれ入力層のニューロンに対応付け、一般的なニューラルネットワークの出力値の算出方法、すなわち、出力側のニューロンの値を、当該ニューロンに接続される入力側のニューロンの値と、出力側のニューロンと入力側のニューロンとを接続するエッジ70に対応付けられた重みWiとの乗算値の数列の和として算出することを、入力層にあるニューロン以外のすべてのニューロンに対して行う方法が用いられる。なお、状態変数を入力層のニューロンに対応付けるに際し、状態変数として取得した情報をどのような形式として対応付けるかは、生成される学習済みモデルの精度等を考慮して適宜設定することができる。例えば、入力データそれぞれに対応させるニューロンの数を調整するため、或いはニューロンに対応可能な値に調整するために、特定の入力データに対して前処理を実行しても良い。
【0044】
学習部142では、特徴量の設定および重みWiの調整が行われ、学習済みモデルが生成される。この実施形態において、良品属性や不良品属性を区別する指標はスコア値である。より具体的には、この実施形態において、スコア値は、検査対象物に欠陥が含まれているか否かを峻別可能な値であって、欠陥が含まれている検査対象物のスコア値の方が、欠陥が含まれていない検査対象物のスコア値に比べて大きい。
【0045】
この実施形態において、学習部142は、好ましくは、入力された複数の画像データを学習用データとテスト用データとに分割し、学習用データから典型的な特徴を抽出して推論モデルを出力する。そして、学習部142は、好ましくは、テスト用データを推論モデルと照合し、期待結果の違いを誤差として計算する。例えば、テスト用データと推論モデルとの誤差が大きい場合、不良品判定を確定させるスコア領域81の一部と良品判定を確定させるスコア領域82の一部とが重なり、欠陥が含まれている検査対象物のスコア値の方が、欠陥が含まれていない検査対象物のスコア値に比べて小さくなる事態が生じる。このような場合であっても、学習部142は、計算された誤差を用いて重みWiを調整してニューラルネットワークモデルを更新し、推論モデルの出力およびテスト用データと推論モデルの照合等を誤差が小さくなるまで反復実行して最適な推論モデルである学習済みモデルを出力することができる。
【0046】
学習が終了すると、ニューラルネットワークモデルのノードのそれぞれに対応付けられた全ての重みW
iを調整した学習済みモデルが学習済みモデル記憶部144に記憶される。
図12に示すグラフ80は、このようにして作成された学習済みモデルのイメージである。この実施形態において、学習済みモデルでは、不良品画像データ30のスコア値の方が良品画像データ40のスコア値に比べて大きな値である。また、不良品判定を確定させるスコア領域81の最小スコア値である第1閾値83は、良品判定を確定させるスコア領域82の最大スコア値である第2閾値84より大きな値である(
図12のグラフ80を参照)。欠陥検査システム100に対する学習済みモデルの具体的な適用態様については、後述する。なお、学習済みモデルは、良品属性が付与された複数の良品画像データのスコア値の集合と、不良品属性が付与された複数の不良品画像データのスコア値の集合とが分離されたモデルであれば良く、ディープラーニングによって構築されたか、あるいは教師なし機械学習若しくは教師あり機械学習によって構築されたかは問わない。
【0047】
入力受付部145は、好ましくは、作業者から入力装置101を介して、例えば、スコア値を補正する係数である判定感度等の各種設定値の入力を受け付ける。判定感度は、スコア値を第1閾値83に近づく方向に補正する必要から、1より大きな係数である。検査処理部146は、学習済みモデル記憶部144に記憶された学習済みモデルを用いて、新たに入力された検査対象画像データ75に対応する検査対象物の良否を判定するためのスコア値を出力し、当該スコア値に基づいて良否判定を行う。第1判定部147は、検査処理部146により出力されたスコア値が、第1閾値83より小さくかつ第2閾値84より大きい第3閾値85(
図13を参照)と、第1閾値83との範囲86(
図13のcを参照)内にあるか否かを判定する。第3閾値85は、第1閾値83より小さくかつ第2閾値84より大きい値であれば特に制約はなく、機械学習の精度等を考慮して適宜設定可能である。第3閾値85は、好ましくは、第1閾値83から第2閾値84までの間の40~60%の位置にある。この結果、良品の過検出の低減および不良品流出の低減を、より高精度に実行することができる。この実施形態において、第3閾値85は、第1閾値83と第2閾値84とのおおよそ中間値(約50%)に設定されている(
図13のbを参照)。
【0048】
判定感度導入部148は、スコア値が第3閾値85と第1閾値83との範囲86内にある場合に、スコア値を補正する係数である判定感度をスコア値に乗じて当該スコア値を補正する。判定感度は、好ましくは、第1閾値83に対する第3閾値85と第1閾値83との差分の割合に1を加えた値である。ただし、判定感度は、1より大きければ、第3閾値85と無関係に設定されても良い。以後、判定感度導入部148において判定感度を用いて補正されたスコア値を、「補正スコア値」とも称する。判定感度によるスコア値の補正方法については、その詳細を後述する。第2判定部149は、補正スコア値が第1閾値83以上であるか否かを判定する。
【0049】
検査処理部146は、補正スコア値が第1閾値83以上である場合に補正スコア値に対応する検査対象物を不良品と判定し、補正スコア値が第1閾値83より小さい場合に補正スコア値に対応する検査対象物を良否判定が不定と判定する。また、検査処理部146は、好ましくは、出力されたスコア値が第1閾値83以上である場合にスコア値に対応する検査対象物を不良品と判定し、出力されたスコア値が第3閾値85より小さい場合にスコア値に対応する検査対象物を良品と判定する。
【0050】
2.欠陥検査方法
次に、本発明の実施形態に係る欠陥検査方法について説明する。
【0051】
図14は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムにおける機械学習処理のフローチャート(14A)および欠陥検査処理のフローチャート(14B)をそれぞれ示す。
【0052】
この実施形態に係る欠陥検査方法は、好ましくは、欠陥検査システム100において実行される機械学習処理(
図14Aを参照)および欠陥検査処理(
図14Bを参照)を含む。また、この実施形態に係る欠陥検査方法は、欠陥検査装置110のCPU112および機械学習装置120のCPU122がそれぞれシステムプログラムを実行することにより、機械学習処理および欠陥検査処理が実行される。なお、以下の説明において、欠陥検査装置110のCPU112が実行する処理は、CPU112に代えて機械学習装置120のCPU122が実行しても良い。また、CPU122が実行する処理は、CPU122に代えてCPU112が実行しても良い。
【0053】
(1)機械学習処理
まず、機械学習処理について説明する。この実施形態において、入力装置101等から学習用データセットを作成するための撮像指示を受信すると、システムプログラムに従って
図14Aに示す機械学習処理が開始される。
【0054】
まず、ステップS200(以下、ステップを省略)において、CPU112は、学習用データセットを作成するための被検査部位の画像を撮像する。より具体的には、CPU112は、欠陥検出装置10を用いて、検査対象物の一例である結合成形品1のストッパー部S、ネック部N、およびリップ部Lの少なくとも1つを被検査部位として撮像部11に撮像させる。欠陥検出装置10において、撮像部11は、好ましくは、負荷ユニット16または回転ユニット19により物理的な負荷が加えられた状態のストッパー部S、ネック部N、およびリップ部Lの少なくとも一部を被検査部位として撮像する。S200において、好ましくは、被検査部位に亀裂等の欠陥を有さない結合成形品1の当該被検査部位の画像を撮像し、不良品画像データ30と良品画像データ40とを作成する。S200において、CPU112は、少なくとも学習用データセットを作成するために必要なテスト画像データ数の被検査部位の画像を撮像することが好ましい。
【0055】
S210において、画像データに良品属性または不良品属性のいずれかが付与される。この実施形態では、作業者が、良品画像データ40のみを格納するフォルダ内に当該画像データ40を入れることによって、当該画像データ40に良品という属性が付与される。同様に、作業者が、不良画像データ30のみを格納するフォルダ内に当該画像データ30を入れることによって、当該画像データ30に不良品という属性が付与される。ただし、良品属性や不良品属性の付与は、上記手法に限定されない。例えば、作業者が入力装置101等を介して良品属性または不良品属性を入力しても良いし、CPU112等がテスト画像データを解析して良品属性または不良品属性を付与しても良い。S210では、CPU112は、S200により作成された複数の良品画像データ40および複数の不良品画像データ30を学習用データセットして学習用データセット記憶部141に記憶させる。S210は、本発明の学習用データセット記憶ステップの一例である。学習用データセットは、少なくとも良品画像データ40および不良品画像データ30を含むものであれば、その構成は特に制約されず、機械学習に用いる学習アルゴリズムに応じて適宜作成されることが好ましい。そして、CPU122は、学習用データセット記憶部141に記憶されている学習用データセットを複数組入力することにより、新たに入力された画像データから、良品属性または不良品属性のうち当該画像データに付与すべき属性を推論するための学習済みモデルを構築するべく、学習前のモデル(ニューラルネットワークモデル45)を学習する(S220)。この学習前のモデルは、任意の初期値の重みを備えている。特徴量は、好ましくは、学習部142として機能するCPU122によって画像データから抽出される。学習部142は、画像データから特徴量を抽出し、かつ重みの調整を行いながら、学習済みモデルを作成する。重みの調整は、例えば、不良品画像データ30のスコア値の集合と、良品画像データ40のスコア値の集合とが明確に分離できるように行われる。S220において、CPU122は、例えば、S210により学習用データセット記憶部141に学習用データセットが記憶されたことを契機として機械学習を実施しても良いし、S210の処理が実行された後にCPU112により機械学習の指示を受信したことを契機として機械学習を実施しても良い。後者の場合、CPU112は、入力装置101等を介して機械学習の指示を受け付けても良い。そして、CPU122は、S220における機械学習により構築された学習済みモデルを学習済みモデル記憶部144に記憶させ(S230)、本機械学習処理を終了する。S230は、本発明の学習済みモデル記憶ステップの一例である。なお、機械学習処理において、例えば、学習用データセットに用いる良品画像データ40および不良品画像データ30が外部メモリ等に予め格納されている場合には、S200において、撮像部11による被検査部位の撮像を行う代わりに、当該外部メモリ等に格納されている良品画像データ40および不良品画像データ30を取得しても良い。
【0056】
(2)欠陥検査処理
次に、欠陥検査処理について説明する。この実施形態において、入力装置101等から欠陥検査処理を開始させる指示を受信すると、システムプログラムに従って
図14Bに示す欠陥検査処理が開始される。
【0057】
まず、S300において、CPU112は、検査対象物の被検査部位の画像を撮像する。より具体的には、CPU112は、欠陥検出装置10を用いて、検査対象物の一例である結合成形品1のストッパー部S、ネック部N、およびリップ部Lの少なくとも1つを被検査部位として撮像部11に撮像させる。そして、CPU122は、学習済みモデル記憶部144に記憶されている学習済みモデルを用いて、S300において撮像部11の撮像により生成された検査対象画像データ75に対応する検査対象物の良否を判定するためのスコア値を出力する(S310;
図12を参照)。S310は、本発明の検査処理ステップの一例である。S310において、CPU122は、例えば、S300により新たな検査対象画像データが生成されたことを契機として機械学習を実施しても良いし、S300の処理が実行された後にCPU112により機械学習の指示を受信したことを契機として機械学習を実施しても良い。後者の場合、CPU112は、入力装置101等を介して機械学習の指示を受け付けても良い。
【0058】
S320において、CPU112は、入力装置101等を介して判定感度の入力を受け付ける。判定感度は、S310により出力されたスコア値を補正する補正係数である。判定感度は、好ましくは、第1閾値83に対する第3閾値85と第1閾値83との差分の割合である(
図13を参照)。この実施形態において、例えば、
図13に示すように、第1閾値83のスコア値が53.77、第3閾値85のスコア値が34.4である場合、判定感度は、(53.77-34.4)/53.77=0.36の計算と、0.36に1を加える計算により、136%(1.36)となる。S320において、入力装置101等を介して入力される判定感度の形態は特に制約されず、例えば、1.36等の数値であっても良いし、136%等の%値であっても良い。また、欠陥検査処理において、S320は、少なくともS330の処理より前に実行されていれば良く、例えば、S300の処理よりも前に実行されても良いし、S300の処理とS310の処理との間に実行されても良い。
【0059】
S330において、CPU112は、S310により出力されたスコア値が判定感度の範囲86内か否かを判断する。より具体的には、CPU112は、S310により出力されたスコア値が第3閾値85と第1閾値83との範囲86内であるか否かを判定する。S310は、本発明の第1判定ステップの一例である。例えば、
図13に示すように、第1閾値83のスコア値が53.77、第3閾値85のスコア値が34.4である場合、S320において、S310により出力されたスコア値が、34.4以上53.77未満であるか否か判定される。この実施形態において、第3閾値85は、先述の通り、好ましくは、第1閾値83と第2閾値84との中間値に設定されている。
図13に示すように、第1閾値83のスコア値が53.77および第2閾値84のスコア値が15.09である場合、第3閾値85のスコア値は、53.77-(53.77-15.09)/2=34.4の計算により34.4と算出される。
【0060】
S310により出力されたスコア値が判定感度の範囲86内にない場合(S330:NO)、CPU112は、S310により出力されたスコア値が第3閾値85を下回っているか否かを判定する(S340)。そして、S310により出力されたスコア値が第3閾値85を下回っている場合(S340:YES)、CPU112は、S300にて撮像された被検査部位において検査対象物を良品(合格)と判定し(S350)、本欠陥検査処理を終了する。一方、S310により出力されたスコア値が第3閾値85を下回っていない場合(S340:NO)、CPU112は、S300にて撮像された被検査部位において検査対象物を不良品(不合格)と判定し(S360)、本欠陥検査処理を終了する。S350およびS360は、本発明の検査処理ステップの一例である。
【0061】
S310により出力されたスコア値が判定感度の範囲86内である場合(S330:YES)、CPU112は、判定感度を用いて、S310により出力されたスコア値を補正する(S370)。より具体的には、CPU112は、S310により出力されたスコア値に判定感度を乗じることによりスコア値を補正する。例えば、S310により出力されたスコア値が40.0および判定感度136%とする場合、スコア値40.0に判定感度として1.36を乗じた値(40.0×1.36=54.4)を補正スコア値とする(
図15Bを参照)。なお、S370におけるスコア値の補正方法は、判定感度を用いて補正する方法であれば特に制約されず、適宜、検査対象物、学習アルゴリズム、判定感度等に応じた補正方法を採用することが好ましい。S370は、本発明の判定感度導入ステップの一例である。
【0062】
S380において、CPU112は、S370において判定感度を用いて補正された補正スコア値が第1閾値83以上であるか否かを判定する。S380は、本発明の第2判定ステップの一例である。補正スコア値が第1閾値83以上の場合、すなわち、補正スコア値が判定感度の範囲86内(
図13を参照)でない場合(S380:YES)、CPU112は、S300にて撮像された被検査部位において検査対象物を不良品(不合格)と判定し(S360)、本欠陥検査処理を終了する。一方、補正スコア値が第1閾値83を下回る場合、すなわち、補正スコア値が判定感度の範囲86内(
図13を参照)である場合(S380:NO)、CPU112は、S300にて撮像された被検査部位において検査対象物を良否判定が不定(再検査)であると判定し(S390)、再度S310からの処理を繰り返す。S390は、本発明の検査処理ステップの一例である。なお、欠陥検査処理は、S390の処理後に再度S310からの処理を繰り返さずに終了しても良いし、S390の処理後に再度S310からの処理を所定回数繰り返した場合は、それ以上処理を繰り返さずに終了しても良い。
【0063】
図15は、本発明の実施形態に係る欠陥検査システムにおいて実施される欠陥検査方法の具体例を説明するための図を示す。
図15に示す各具体例は、いずれも、第1閾値83を53.77、第3閾値85を34.4、および判定感度を136%とした場合における具体例である。
【0064】
図15Aに示す例は、S310(
図14Bを参照)において検査対象物のスコア値(Scr値)として30.0が出力された場合における欠陥検査方法の例である。この場合、検査対象物のスコア値は、判定感度の範囲86(スコア値が34.4以上53.77未満の範囲)内でなく(S330:NO)、第3閾値85を下回っている(S340:YES)。このため、
図15Aに示す例では、検査対象物のスコア値が判定感度を適用して補正されることなく、検査対象物は良品(合格)と判定される(S350)。
【0065】
図15Bに示す例は、S310(
図14Bを参照)において検査対象物のスコア値(Scr値)として40.0が出力された場合における欠陥検査方法の例である。この場合、検査対象物のスコア値は、判定感度の範囲86内であるため(S330:YES)、検査対象物のスコア値が判定感度を適用して補正される(S370)。この例では、補正スコア値(Scr’値)は、スコア値としての40.0に判定感度として1.36を乗じた値(40.0×1.36)である54.4となる。算出された補正スコア値は第1閾値83以上のため(S380:YES)、検査対象物は不良品(不合格)と判定される(S360)。
【0066】
図15Cに示す例は、S310(
図14Bを参照)において検査対象物のスコア値(Scr値)として35.0が出力された場合における欠陥検査方法の例である。この場合、検査対象物のスコア値は、判定感度の範囲86内であるため(S330:YES)、検査対象物のスコア値が判定感度を適用して補正される(S370)。この例では、補正スコア値(Scr’値)は、スコア値としての35.0に判定感度として1.36を乗じた値(35.0×1.36)である47.6となる。算出された補正スコア値は第1閾値83を下回るため(S380:NO)、検査対象物は良否判定が不定(再検査)であると判定される(S390)。
【0067】
このような欠陥検査システム100および欠陥検査方法によれば、出力されたスコア値が判定感度の範囲(第3閾値85と第1閾値83との範囲)86内である場合(S330:YES)には、当該スコア値が不良品判定を確定させる最小スコア値である第1閾値83を下回っていても良品と判定せず、判定感度を適用して補正した補正スコア値に基づき再度良否判定を行う(S370,S380)。そして、補正スコア値が第1閾値83以上の場合(S380:YES)に不良品と判定し、補正スコア値が判定感度の範囲86内の場合(S380:NO)に良否判定が不定と判定して再検査を行う。このため、良品の過検出や不良品の見逃し(流出)を低減することができ、欠陥検査における検査対象物の良否判定精度を向上させることができる。
【0068】
3.その他実施形態
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0069】
例えば、上述の実施形態において、欠陥検査処理(
図14Bを参照)は、判定感度が入力装置101等を介して入力されていたが(
図14のS320)、本発明はこれに限定されず、例えば、CPU112が所定の公式や法則に基づいて第1閾値83および/または第2閾値84から判定感度を算出しても良い。
【0070】
また、機械学習処理(
図14Aを参照)は、欠陥検査処理(
図14Bを参照)により判定された検査対象画像データ75とその良否判定結果(良品または不良品)とを、学習用データセット記憶部141に追加して再度機械学習を行い(
図14のS220)、学習済みモデルを適宜更新しても良い。
【0071】
また、欠陥検出装置10は、検査対象物の被検査部位を撮像して検査対象画像データを生成可能な装置であれば、特に制約されない。例えば、検査対象物が負荷を加えずに欠陥の有無を検査可能なものである場合、欠陥検出装置10は、負荷ユニット16および回転ユニット19等の検査対象物に負荷を加える構成を備えていなくても良い。
【0072】
また、検査対象物は、結合成形品1のみならず、例えば、ワイパーラバー1a,1b単体であっても良いし、工場等で製造されたその他自動車用部品、電子部品等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、検査対象物を撮像して取得された検査対象画像データに基づいて当該検査対象物が欠陥を有するか否かの良否判定を行う分野にて利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1・・・結合成形品(検査対象物の一例)、1a,1b・・・ワイパーラバー、10・・・欠陥検出装置、11・・・撮像部、13・・・照明部、14,15・・・支持台、16・・・負荷ユニット(負荷部の一例)、17・・・回転ユニット(負荷部の一例)、30・・・不良品画像データ、40・・・良品画像データ、83・・・第1閾値、84・・・第2閾値、85・・・第3閾値、86・・・第3閾値と第1閾値との範囲(判定感度の範囲)、100・・・欠陥検査システム、110・・・欠陥検査装置、120・・・機械学習装置、141・・・学習用データセット記憶部、142・・・学習部、144・・・学習済みモデル記憶部、146・・・検査処理部、147・・・第1判定部、148・・・判定感度導入部、149・・・第2判定部、L・・・リップ部、N・・・ネック部、S・・・ストッパー部。