(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186033
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】内燃機関の動弁機構
(51)【国際特許分類】
F01L 1/20 20060101AFI20221208BHJP
F01L 1/26 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
F01L1/20 A
F01L1/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094049
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】山口 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】柵木 清史
【テーマコード(参考)】
3G016
【Fターム(参考)】
3G016BB09
3G016BB18
3G016BB22
3G016BB24
3G016BB26
3G016CA34
3G016CA45
3G016DA11
3G016GA01
(57)【要約】
【課題】2本のバルブの軸端面の高低差をロッカアームの移動により吸収してミスアライメントの発生を防止し、調整部材の寸法種類と選択作業が増加しないようにする。
【解決手段】1つのロッカアーム4の相互に離間した第1押圧面8及び第2押圧面9により、それぞれ第1バルブ10の軸端面14及び第2バルブ20の軸端面24を押圧する。第1押圧面8と第1バルブ10の軸端面14は、前記離間方向に高さが変化するテーパー状の傾斜が付けられていて互いに当接し、第2押圧面9と第2バルブ20の軸端面24は、前記離間方向に高さが前記変化とは対称に変化するテーパー状の傾斜が付けられていて互いに当接し、ロッカアーム4が前記離間方向に移動可能に支持され、該移動により第1バルブ10の軸端面14及び第2バルブ20の軸端面24の高低差を吸収する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのロッカアーム(4)の相互に離間した第1押圧面(8)及び第2押圧面(9)により、それぞれ第1バルブ(10)の軸端面(14)及び第2バルブ(20)の軸端面(24)を押圧する内燃機関の動弁機構において、
第1押圧面(8)と第1バルブ(10)の軸端面(14)は、前記離間方向に高さが変化するテーパー状の傾斜が付けられていて互いに当接し、
第2押圧面(9)と第2バルブ(20)の軸端面(24)は、前記離間方向に高さが前記変化とは対称に変化するテーパー状の傾斜が付けられていて互いに当接し、
ロッカアーム(4)が前記離間方向に移動可能に支持され、該移動により第1バルブ(10)の軸端面(14)及び第2バルブ(20)の軸端面(24)の高低差を吸収することを特徴とする内燃機関の動弁機構。
【請求項2】
第1バルブ(10)の軸端面(14)及び第2バルブ(20)の軸端面(24)は、それぞれステムキャップ(13,23)の端面である請求項1記載の内燃機関の動弁機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の動弁機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1気筒あたり2本の吸気(又は排気)バルブを持つ内燃機関の動弁機構において、1つのロッカアームで2本のバルブを同時に押圧する場合、2本のバルブの軸端面に高低差があると、ロッカアームにミスアライメントが発生してしまう。すなわち、各バルブの開弁時期とリフト量に差が生じ、不正なバルブ運動(ジャンプ、バウンス)、打音による騒音、機関性能の不安定等が発生してしまう。そのため、2本のバルブの軸端面の高さを揃えて高低差を無くす調整が必要である。
【0003】
特許文献1には、2本のバルブを駆動するロッカアームを2つの腕部を有する構成とし、各腕部と各弁の弁軸端部との当接面間にそれぞれ調整部材(実施例ではステムキャップ)を介在させ、調整部材の端面をバルブの軸端面の高さとすることにより、2本のバルブの軸端面の高さを揃えて高低差を無くすことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の動弁機構においては、調整部材の厚さ(ステムキャップの場合は端壁の厚さ)が種々のものを用意して、弁軸端部と腕部とのクリアランスに応じて選択し使用するため、調整部材の寸法種類と選択作業が増加するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、2本のバルブの軸端面の高低差を(無くすのではなく)ロッカアームの移動により吸収してミスアライメントの発生を防止し、調整部材の寸法種類と選択作業が増加しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]1つのロッカアームの相互に離間した第1押圧面及び第2押圧面により、それぞれ第1バルブの軸端面及び第2バルブの軸端面を押圧する内燃機関の動弁機構において、
第1押圧面と第1バルブの軸端面は、前記離間方向に高さが変化するテーパー状の傾斜が付けられていて互いに当接し、
第2押圧面と第2バルブの軸端面は、前記離間方向に高さが前記変化とは対称に変化するテーパー状の傾斜が付けられていて互いに当接し、
ロッカアームが前記離間方向に移動可能に支持され、該移動により第1バルブの軸端面及び第2バルブの軸端面の高低差を吸収することを特徴とする内燃機関の動弁機構。
【0008】
[2]上記[1]において、第1バルブの軸端面及び第2バルブの軸端面は、それぞれステムキャップの端面である態様を例示できる。
【0009】
[作用]
2本のバルブの軸端面に高低差が有る場合、ロッカアームが2本のバルブを押圧するときに、第1押圧面が第1バルブの軸端面に対し前記テーパー状の傾斜に沿ってスライドし、第2押圧面が第2バルブの軸端面に対し前記対称に変化するテーパー状の傾斜に沿ってスライドすることにより、ロッカアームが前記離間方向に移動し、該移動により前記軸端面の高低差が吸収される。ロッカアームはその移動後の位置で2本のバルブを押圧し、第1押圧面と第1バルブの軸端面との当接時期と、第2押圧面と第2バルブの軸端面との当接時期とに差が生じない。すなわち、ミスアライメントが発生せず、各バルブの開弁時期とリフト量に差が生じず、不正なバルブ運動(ジャンプ、バウンス)、打音による騒音、機関性能の不安定等が発生しない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の内燃機関の動弁機構によれば、2本のバルブの軸端面の高低差を(無くすのではなく)ロッカアームの移動により吸収してミスアライメントの発生を防止することができ、調整部材の寸法種類と選択作業が増加しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は第1実施例1の動弁機構を示し、(a)は上方からみた斜視図、(b)は下方からみた斜視図である。
【
図2】
図2は同動弁機構を示し、(a)は側面図、(b)はバルブのステムとステムキャップの分解斜視図である。
【
図3】
図3は同動弁機構を示し、(a)は軸端面の高低差が無いときの正面図、(b1)は軸端面の高低差が有るときの正面図、(b2)はロッカアームが移動して該高低差を吸収したときの正面図である。
【
図4】
図4は第2実施例の動弁機構を示し、(a)は軸端面の高低差が無いときの正面図、(b1)は軸端面の高低差が有るときの正面図、(b2)はロッカアームが移動して該高低差を吸収したときの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.テーパー状の傾斜について
第1押圧面及び第1バルブの軸端面と、第2押圧面及び第2バルブの軸端面とは、正面視で山形状に配されるように前記高さが変化している態様と、正面視で谷形状に配されるように前記高さが変化している態様を例示できる。
【0013】
2.ロッカアームについて
ロッカアームを前記離間方向に移動可能に支持する手段としては、特に限定されないが、ロッカアームに設けられた支持穴又はベアリングにロッカシャフトを挿通させ、ロッカアームをロッカシャフトに対してスライド移動可能とする構成を例示できる。
ロッカアームのカムが当接する部位は、回転可能なローラでもよいし、固定式のスリッパでもよい。
【実施例0014】
次に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。なお、実施例の各部の構造、形状、数等は例示であり、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0015】
[実施例1]
まず、
図1~
図3に示す実施例1の内燃機関の動弁機構を説明すると、シリンダヘッドのカムサポート(図示略)にはカムシャフト1が回転可能に支持されている。カムシャフト1にはベース円及びノーズからなるカム2が設けられている。
【0016】
同カムサポートにはカムシャフトと平行に延びるロッカシャフト3が支持されている。
【0017】
ロッカアーム4は1つで2本のバルブ10,20を同時に押圧するものであり、長さ方向の基端部に幅方向に延びる支持穴5が形成され、長さ方向の中間部にローラ6が幅方向に延びるローラ軸7により回転可能に軸着され、長さ方向の先端部の下面に幅方向に相互に離間した第1押圧面8及び第2押圧面9が設けられている。
支持穴5にロッカシャフト3が挿通することにより、ロッカアーム4はロッカシャフト長方向(前記離間方向と同じ)にスライド移動可能に、ロッカシャフト回りに揺動可能に支持されている。
カム2がローラ6を押圧することにより、
図2(a)に示すように、ロッカアーム4はロッカシャフト回りに揺動する。
第1押圧面8及び第2押圧面9は、それぞれ次に述べる第1バルブ10の軸端面14及び第2バルブ20の軸端面24を押圧するものであり、後述する傾斜が付けられている。
【0018】
シリンダヘッドには、1気筒あたり2本の吸気用(又は排気用)の第1バルブ10及び第2バルブ20が、前記離間方向と同じ方向に相互に離間して、挿着されている。各バルブ10,20は、傘状のヘッド11,21と、ヘッド11,21から延びる棒状のステム12,22と、ステム12,22の端部に冠着されたステムキャップ13,23とを含み構成されている。
図2(b)に示すように、ステムキャップ13,23は、筒壁と端壁とからなる有底筒状の部材であり、その内側に下からステム12,22の端部が回転可能に挿入されることにより、ステム12,22の端部に冠着されている。従って、第1バルブ10と第2バルブ20の各軸端面14,24は、各ステムキャップ13,23の端面であり、次に述べる傾斜が付けられている。
【0019】
第1押圧面8と第1バルブ10の軸端面14は、前記離間方向に高さが変化するテーパー状の傾斜が付けられていて互いに当接する。
第2押圧面9と第2バルブ20の軸端面24は、前記離間方向に高さが前記変化とは対称に変化するテーパー状の傾斜が付けられていて互いに当接する。
実施例1では、第1押圧面8及び第1バルブ10の軸端面14と、第2押圧面9及び第2バルブ20の軸端面24とが、正面視で山形状に配されるように前記高さが変化している。
【0020】
なお、ステムキャップ13,23は部品としては同一寸法形状のものであり、ステム12,22の端部に対して回転可能であることから、第1押圧面8又は第2押圧面9の傾斜に対応して端面の傾斜の向きを変えることができる。
【0021】
図3(a)に示すように、2本のバルブ10,20の軸端面14,24に高低差が無い場合、ロッカアーム4が2本のバルブ10,20を押圧するときに、第1押圧面8が第1バルブ10の軸端面14に対し当接すると同時に、第2押圧面9が第2バルブ20の軸端面24に当接するため、ロッカアーム4は前記離間方向に移動することなく、2本のバルブ10,20を等しく正常に押圧する。
【0022】
また、
図3(b1)に示すように、2本のバルブ10,20の軸端面14,24に高低差が有る場合、同図(b2)に示すように、ロッカアーム4が2本のバルブ10,20を押圧するときに、第1押圧面8が第1バルブ10の軸端面14に対し前記テーパー状の傾斜に沿ってスライドし、第2押圧面9が第2バルブ20の軸端面24に対し前記対称に変化するテーパー状の傾斜に沿ってスライドすることにより、ロッカアーム4が前記離間方向に移動し、該移動により前記軸端面14,24の高低差が吸収される。ロッカアーム4はその移動後の位置で2本のバルブ10,20を押圧し、第1押圧面8と第1バルブ10の軸端面14との当接時期と、第2押圧面9と第2バルブ20の軸端面24との当接時期とに差が生じない。すなわち、ミスアライメントが発生せず、各バルブ10,20の開弁時期とリフト量に差が生じず、不正なバルブ運動(ジャンプ、バウンス)、打音による騒音、機関性能の不安定等が発生しない。
【0023】
このように、本実施例によれば、2本のバルブ10,20の軸端面14,24の高低差を(無くすのではなく)ロッカアーム4の移動により吸収してミスアライメントの発生を防止することができ、ステムキャップ13,23は端面に前記傾斜を付けた1種類を用意すればよい(端壁の厚さに種類を持たせる必要がない)ため、従来のように調整部材の寸法種類と選択作業が増加することはない。
【0024】
[実施例2]
まず、
図4に示す実施例2の内燃機関の動弁機構は、第1押圧面8及び第1バルブ10の軸端面14と、第2押圧面9及び第2バルブ20の軸端面24とが、正面視で谷形状に配されるように前記高さが変化している点においてのみ実施例1と相違し、その他は実施例1と共通である。
【0025】
本実施例においても、
図4(a)に示すように、2本のバルブ10,20の軸端面14,24に高低差が無い場合、ロッカアーム4は前記離間方向に移動することなく、2本のバルブ10,20を等しく正常に押圧する。また、
図4(b1)に示すように、2本のバルブ10,20の軸端面14,24に高低差が有る場合、同図(b2)に示すように、ロッカアーム4が前記離間方向に移動し、該移動により前記軸端面14,24の高低差が吸収される。よって、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0026】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば次のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(1)ロッカシャフト3を、複数のラッシュアジャスタ(図示略)の可動部に取り付けたリングに通して支持すること。
(2)ローラ6に代えて、固定式のスリッパーにすること。