(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186041
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】工程管理システム、工程管理方法及び工程管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20221208BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G06Q10/06 302
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094061
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】杉原 久義
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA13
3C100AA16
3C100AA29
3C100BB03
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB33
3C100EE18
5L049AA06
(57)【要約】
【課題】工程計画の自由度を向上することができる工程管理システム、工程管理方法及び工程管理プログラムを提供することができる。
【解決手段】本開示の工程管理システム1は、複数の工程によって構成されるタスクの工程計画を最適化する。工程管理システム1は、複数の工程のうち少なくとも1つの工程にリソーセスの割当パターンが異なる複数の作業条件を設定したデータを入力する入力部11と、複数の工程に関する制約条件を設定する制約条件設定部132と、複数の作業条件の中から制約条件を満たす作業条件を選択し、複数の工程の作業日に選択した作業条件を割り当てる計算を実行する最適化計算部14と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程によって構成されるタスクの工程計画を最適化する工程管理システムであって、
前記複数の工程のうち少なくとも1つの工程にリソーセスの割当パターンが異なる複数の作業条件を設定したデータを入力する入力部と、
前記複数の工程に関する制約条件を設定する制約条件設定部と、
前記複数の作業条件の中から前記制約条件を満たす作業条件を選択し、前記複数の工程の作業日に前記選択した作業条件を割り当てる計算を実行する最適化計算部と、を備える
工程管理システム。
【請求項2】
前記制約条件は、所定の工程に設定された作業条件が割り当てられる作業日が、当該工程の開始日と当該工程の終了日との間にあるという条件である
請求項1に記載の工程管理システム。
【請求項3】
前記最適化計算部は、前記複数の工程の作業期間が最も短くなるように、前記複数の作業条件の中から前記制約条件を満たす作業条件を選択し、前記複数の工程の作業日に前記選択した作業条件を割り当てる計算を実行する
請求項1又は2に記載の工程管理システム。
【請求項4】
前記最適化計算部は、前記複数の工程において作業期間を最も長くする所定のパスの終了日が前記作業期間の開始日から最短となるように、前記複数の作業条件の中から前記制約条件を満たす作業条件を選択し、前記複数の工程の作業日に前記選択した作業条件を割り当てる計算を実行する
請求項3に記載の工程管理システム。
【請求項5】
前記最適化計算部は、整数線形計画法に基づいて、前記複数の作業条件の中から前記制約条件を満たす作業条件を選択し、前記複数の工程の作業日に前記選択した作業条件を割り当てる計算を実行する
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の工程管理システム。
【請求項6】
前記作業条件は、当該作業条件に対応するリソーセスを用いた際の工程の進捗度合いを含み、
前記制約条件は、前記複数の工程の作業期間において各工程の前記進捗度合いの合計が100%になるという条件を含む
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の工程管理システム。
【請求項7】
前記作業条件は、当該作業条件に対応するリソーセスの数量を含み、
前記制約条件は、前記複数の工程の前記作業日あたりの前記リソーセスの数量の制限を示す条件を含む
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の工程管理システム。
【請求項8】
複数の工程によって構成されるタスクの工程計画を最適化する工程管理方法であって、
前記複数の工程のうち少なくとも1つの工程にリソーセスの割当パターンが異なる複数の作業条件を設定したデータを入力することと、
前記複数の工程に関する制約条件を設定することと、
前記複数の作業条件の中から前記制約条件を満たす作業条件を選択し、前記複数の工程の作業日に前記選択した作業条件を割り当てる計算を実行することと、を含む
工程管理方法。
【請求項9】
複数の工程によって構成されるタスクの工程計画を最適化する工程管理プログラムであって、
前記複数の工程のうち少なくとも1つの工程にリソーセスの割当パターンが異なる複数の作業条件を設定したデータを入力する処理と、
前記複数の工程に関する制約条件を設定する処理と、
前記複数の作業条件の中から前記制約条件を満たす作業条件を選択し、前記複数の工程の作業日に前記選択した作業条件を割り当てる計算を実行する処理と、をコンピュータに実行させる
工程管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程管理システム、工程管理方法及び工程管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、複数の工程を含む工程計画を作成するように構成された工程計画作成システムが開示されている。ここで、特許文献1では、工程計画において、タスク(工事)の各工程に割り当てるリソーセス(人、重機)は、リソーセスの制約を超えないように再配分される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、工程計画においてリソーセスの平準化を行うが、工程計画の自由度が低いという課題があった。例えば、特許文献1では、工期の短縮などの目的に応じた工程計画ができない。
本開示は、そのような課題を鑑みることによって、工程計画の自由度を向上することができる工程管理システム、工程管理方法及び工程管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の工程管理システムは、
複数の工程によって構成されるタスクの工程計画を最適化する工程管理システムであって、
前記複数の工程のうち少なくとも1つの工程にリソーセスの割当パターンが異なる複数の作業条件を設定したデータを入力する入力部と、
前記複数の工程に関する制約条件を設定する制約条件設定部と、
前記複数の作業条件の中から前記制約条件を満たす作業条件を選択し、前記複数の工程の作業日に前記選択した作業条件を割り当てる計算を実行する最適化計算部と、を備える。
【0006】
本開示の工程管理方法は、
複数の工程によって構成されるタスクの工程計画を最適化する工程管理方法であって、
前記複数の工程のうち少なくとも1つの工程にリソーセスの割当パターンが異なる複数の作業条件を設定したデータを入力することと、
前記複数の工程に関する制約条件を設定することと、
前記複数の作業条件の中から前記制約条件を満たす作業条件を選択し、前記複数の工程の作業日に前記選択した作業条件を割り当てる計算を実行することと、を含む。
【0007】
工程管理プログラムは、
複数の工程によって構成されるタスクの工程計画を最適化する工程管理プログラムであって、
前記複数の工程のうち少なくとも1つの工程にリソーセスの割当パターンが異なる複数の作業条件を設定したデータを入力する処理と、
前記複数の工程に関する制約条件を設定する処理と、
前記複数の作業条件の中から前記制約条件を満たす作業条件を選択し、前記複数の工程の作業日に前記選択した作業条件を割り当てる計算を実行する処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によって、工程計画の自由度を向上することができる工程管理システム、工程管理方法及び工程管理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る工程管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る工程管理システムの動作を示すフローチャートである。
【
図3】第1の実施形態に係る工程管理システムにおける作業条件データを示す表である。
【
図4】第1の実施形態に係る工程管理システムにおける工程順序データを示す模式図である。
【
図5】第1の実施形態に係る工程管理システムにおける作業条件データの記憶方法を示す表である。
【
図6】第1の実施形態に係る工程管理システムにおける最適化された工程計画を示す表である。
【
図7】第1の実施形態に係る工程管理システムにおける最適化された工程計画に必要なリソーセスを示す表である。
【
図8】第1の実施形態に係るコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、
図1を用いて、第1の実施形態に係る工程管理システム1の構成について説明する。工程管理システム1は、入力部11、記憶部12、設定部13、最適化計算部14及び出力部15(以下、各構成要素と称する)を備える。なお、工程管理システム1において各構成要素は複数の装置で実現されてもよいし、単体の装置として実現されてもよい。
【0012】
工程管理システム1では、整数線形計画法を用いて複数の工程から構成されるタスク(工事)における工程計画を最適化する。例えば、工程管理システム1では、工期を短縮する工程計画を生成する。
具体的には、工程管理システム1は、整数線形計画法のアルゴリズム(以下、最適化アルゴリズム)を用いて工程計画を最適化するための最適化計算を実行する。最適化アルゴリズムは、以下の不等式又は等式によって示される制約条件を満たし、かつ、目的関数fT・xが最小値となる変数xを計算するものである。制約条件は、例えばA・x≦b(不等式条件)、等式としてAeq=beq(等式条件)、lb≦x≦ub(変数の範囲)である。ここで、変数xは列ベクトルの変数であり整数値をとる。また、f、b、beq、lb、ubは列ベクトルで定数である。A、Aaq、は行列で定数である。
【0013】
入力部11は、工程データ120を入力する。工程データ120は、作業条件データ121、工程順序データ122を含む。
具体的には、入力部11は、作業条件データ121を入力し、入力された作業条件データ121を記憶部12に記憶する。作業条件データ121は、複数の工程のうち少なくとも1つの工程にリソーセスの割当パターンが異なる複数の作業条件を設定したデータである。ここで、作業条件は、各工程において工程の進捗に必要な人・重機等のリソーセスの数量及び当該リソーセスを用いた場合の日当たり進捗を含む。
【0014】
また、入力部11は、工程順序データ122を入力し、入力された工程順序データ122を記憶部12に記憶する。工程順序データ122は、工程と工程との前後関係、すなわち工事における工程のパスを示すデータである。
【0015】
設定部13は、最適化アルゴリズムに各種の設定を実行する。設定部13は、変数設定部131、制約条件設定部132及び目的関数設定部133を備える。
変数設定部131は、最適化アルゴリズムに変数を設定する。具体的には、変数設定部131は、作業日の1日ごとにいずれの工程の作業条件を適用するかを示す変数を設定する。また、変数設定部131は、工程の開始日及び終了日を示す変数を設定する。
【0016】
制約条件設定部132は、最適化アルゴリズムに制約条件を設定する。例えば、制約条件設定部132は、制約条件の一つとして、所定の工程に設定された作業条件が割り当てられる作業日が、当該工程の開始日と当該工程の終了日との間にあるという条件を設定する。
【0017】
目的関数設定部133は、最適化アルゴリズムにおける目的関数を最適化アルゴリズムに設定する。目的関数設定部133は、複数の工程の作業期間が最も短くなるように目的関数を設定する。目的関数設定部133は、複数の工程において作業期間を最も長くする所定のパスの終了日が作業期間の開始日から最短となるように、当該所定のパスの終了日を目的関数に設定する。
【0018】
最適化計算部14は、工程データ120と設定された最適化アルゴリズムに基づいて、
前記複数の作業条件の中から前記制約条件を満たす作業条件を選択し、前記複数の工程の作業日に前記選択した作業条件を割り当てる。そうすることによって、最適化計算部14は、最適化された工程計画を生成する。具体的には、最適化計算部14は、制約条件を満たし、かつ目的関数を最小化するように、複数の作業条件より適切な作業条件を選択した上で、複数の工程の作業日に適切な作業条件を割り当てる。例えば、最適化計算部14は、複数の工程において作業期間を最も長くする所定のパスの終了日が目的関数に設定された場合、当該パスの終了日が作業の開始日から最短となるため、工期を短縮する工程計画を生成できる。
【0019】
出力部15は、最適化計算部14によって最適化された工程計画を出力する。出力部15は、例えばディスプレイなどに表形式で当該工程計画を出力してもよい。
【0020】
続いて、
図2-
図7を用いて、第1の実施形態に係る工程管理システム1の動作について説明する。以下では、
図2を中心に説明するが、適宜、
図3-
図7を用いて説明する。
まず、
図2に示すように、入力部11は、ユーザの操作などによって工程データ120を入力する(ステップS101)。工程データ120は、後述する
図3-
図4に示す作業条件データ121及び工程順序データ122を含む。記憶部12は、後述する
図5に示すように工程データ120を記憶する。
【0021】
図3は、第1の実施形態に係る作業条件データ121の一例について示す表である。
図3に示すように、作業条件データ121は、工程#1から工程#10までの10工程のデータを含み、各工程において少なくとも1つの作業条件を含んでいるデータである。
例えば、工程#1には、作業条件は、作業条件#1の1種類存在する。工程#1の作業条件#1は、重機#1が1個、重機#2が0個、人が6人であるリソーセスが用いられた場合に工程#1が日当たりに20%進捗する条件を示す。
【0022】
また、工程#2において、作業条件は、作業条件#1、作業条件#2、作業条件#3の3種類存在する。工程#2の作業条件#1は、重機#1が1個、重機#2が1個、人が2人であるリソーセスが用いられた場合に工程#2が日当たりに25%進捗する条件を示す。工程#2の作業条件#2は、重機#1が2個、重機#2が2個、人が4人であるリソーセスが用いられた場合に工程#2が日当たりに50%進捗する条件を示す。工程#2の作業条件#3は、重機#1が3個、重機#2が3個、人が6人であるリソーセスが用いられた場合に工程#2が日当たりに100%進捗する条件を示す。
【0023】
また、各作業条件における重機#1、重機#2、人のリソーセスの数量は、定められた最大数量を超えない。例えば、各作業条件における重機#1の最大数量は5個である。また、各作業条件における重機#2の最大数量は3個である。各作業条件における人の最大数量は10人である。なお、当該最大数量は、上述した一例に限られず、各々設定できる。
【0024】
図4は、第1の実施形態に係る工程順序データ122の一例を示す表である。
図4に示すように、工程順序データ122は、工程#1から工程#10のそれぞれで前後関係を設定したデータである。例えば、「工程#1、工程#2、工程#3、工程#4」の工程の前後関係が示される。「工程#1、工程#2、工程#5」の工程の前後関係が示される。「工程#6、工程#7、工程#8」の工程の前後関係が示される。「工程#6、工程#9」の工程の前後関係が示される。
【0025】
図5は、第1の実施形態に係る作業条件データ121の記憶方法の一例を示す表である。
図3及び
図5に示すように、記憶部12は、
図3に示す作業条件データ121を記憶する。例えば、記憶部12は、
図3の「人」の数を
図5のような対応の表記にして、工程#1から工程#10まで順番に並べて[[6 0 0];[2 4 6];[4 6 8];[2 4 5];[2 4 6];[2 4 6];[4 6 8];[2 4 5];[2 4 6];[1 0 0]]のような形式で記憶する。
また、記憶部12は、
図4に示す工程順序データ122を[1 2;2 3;3 4;2 5;6 7;7 8;6 9」のような形式で記憶する。
【0026】
次に、
図2に示すように、変数設定部131は、最適化アルゴリズムにおける日ごとに最適な作業条件を選択する変数(以下、最適化変数)を設定する(ステップS102)。
図3に示す作業条件データ121では、作業条件は全工程で合計すると26個である。つまり、作業条件が26個、日にちがN日あるので、変数の数は26N個となる。変数設定部131は、以下の式(1)のように最適化変数を変数(ベクトル)xで表す。
【0027】
【数1】
式(1)において、iは工程番号、jは作業条件、kは作業日である。ここで、x
ijkは、0又は1の値をとる。つまり、後述する最適化計算部14による最適化計算の結果では、工程i、作業条件j及び作業日kの作業をやる場合はx
ijk=1となる。一方、工程i、作業条件j及び作業日kの作業をやらない場合はx
ijk=0となる。
【0028】
次に、変数設定部131は、最適化アルゴリズムにおける工程の開始日及び終了日を示す変数を設定する(ステップS103)。
図3に示す作業条件データ121において、工程#1から工程#10のそれぞれが開始日及び終了日を持つので、変数の数は全部で20個である。変数設定部131は、以下の式(2)のように当該変数を変数(ベクトル)wで表す。
【数2】
式(2)において、
startW
iは工程iの開始日を示し、
endW
iは工程iの終了日を示す。
startW
i及び
endW
iのいずれも1からNまでの間の整数をとる。
【0029】
次に、制約条件設定部132は、最適化アルゴリズムにおける制約条件を設定する(ステップS104)。制約条件は、例えば不等式条件として、(A)各工程の作業条件から一つ選ぶ制約条件、(B)重機#1の台数の制約条件、(C)重機#2の台数の制約条件、(D)人の数の制約条件、(E)工程終了日が工程開始日より後にある制約条件、(F)作業日が工程開始日より後ろにある制約条件、(G)作業日が工程終了日より前にある制約条件、(H)ある工程が終わってから次の工程をやる制約条件、(I)ある工程より前にある工程が終わる制約条件である。また、制約条件は、例えば等式条件として、(J)各工程の進捗の合計が100%になる制約条件である。
【0030】
以下では、制約条件(F)及び制約条件(G)、つまり、作業日が開始日と終了日の間にある制約条件について具体的に説明する。工程iの開始日が
startW
i、工程iの終了日が
endW
i、工程iかつk日目の作業日がW
i,kとする。そうすると、作業日が開始日と終了日の間にある制約条件は以下の式(3)で表される。
【数3】
式(1)に示す変数xを用いるとW
i,kは以下の式(4)で表される。
【0031】
【数4】
式(4)では、x
ikjは、k日目の工程iの作業条件jをすること、又はk日目の工程iの作業条件jをしないことを示す変数である。当該作業をする場合はW
ikj=1、当該作業をしない場合はW
ikj=0である。ここで、jの値は工程iにある作業条件の数だけ存在する。工程#1と工程#10は作業条件が1個なのでj=1、他の工程では作業条件が3個なのでj=3である。ベクトル[1 ・・・ 1]はjの数だけ1を並べたものである。前述の「(A)各工程の作業の条件から一つ選ぶ制約条件」があるので、X
ikjのうち一つだけ1なる。g
kは、k日目を表すスカラーの数字でk日目はkである。[1 ・・・ 1]は、ベクトル[X
ik1 ・・・ X
ikj]
TからスカラーW
i,kを計算するための係数である。
【0032】
例えば、作業開始日から5日目に工程#2の作業#3をする場合、g
5=5、x
251=0、x
252=0、x
253=1となり、以下の式(5)で表される。
【数5】
つまり、X
ikjのうちどれが1になっても作業日が計算される。作業しない場合はすべてのX
ikjは0であり、W
i,kは0である。
【0033】
ここで改めてU
i=[1 ・・・ 1]、X
ik=[X
ik1 ・・・ X
ikj]
Tとすると、W
i,kは以下の式(6)で表される。
【数6】
そして、式(6)を用いると、式(3)は以下の式(7)で表される。
【数7】
【0034】
続いて、式(7)についての成立性を検証する。
まず、式(7)の右側の不等式のである以下の式(8)についての成立性を検証する。
【数8】
作業がある場合、式(8)は、g
k≦
endW
iとなり、作業日が工程終了日以下であれば成り立つ。一方、作業がない場合、式(8)は、0≦
endW
iとなるが、1≦
endW
i≦Nであるので成り立つ。つまり、工程終了日以前であれば作業の有り無しにかかわらず成り立ち、工程終了日より後ろに作業があれば成り立たないので、「工程終了日より後ろに作業日がない」ことを保証することになる。
【0035】
続いて、式(7)の左側の不等式のである以下の式(9)についての成立性を検証する。
【数9】
作業がある場合、式(9)は、
startW
i≦g
kとなり、作業日が工程開始日以上であれば時に成り立つ。一方、作業がない場合、式(9)は、
startW
i≦0となるが、1≦
startW
i≦Nであるので、式(9)は成り立たず、作業がないにも関わらず条件を満たしていないことになり都合が悪い。
【0036】
そこで、作業がない場合は制約条件を満たすようにしたいため、式(9)は以下の式(10)ように変形される。
【数10】
【0037】
ここで、U
i*X
ikは0か1しかとらないので、式(10)は以下の式(11)ように変形される。
【数11】
したがって、U
i*X
ik=1の場合、式(11)は式(8)と同じである。また、U
i*X
ik=0の場合、式(11)の右辺が0となって都合がよい。実際、式(11)は、作業がある日は、
startW
i≦g
kとなり、式(8)と同じである。一方、式(11)は、作業がない日は、
startW
i≦Nとなり、1≦
startW
i≦Nであるので、作業がない場合も式(11)は成り立つ。
【0038】
つまり、工程開始日以後であれば作業の有り無しにかかわらず成り立ち、工程開始日より前で作業があれば成り立たないので、「工程開始日より前に作業がない」ことを保証することになる。結局「作業日が開始日と終了日の間にある条件」は「開始日と終了日の間以外の日に作業が行われていない」ということを保証している。「作業は必ずどこかの日で行われる」という前提であるので「開始日と終了日の間以外に作業がなければ、間にあるはず。」ということになる。したがって、式(7)についての成立性が検証された。
【0039】
次に、目的関数設定部133は、最適化アルゴリズムにおける目的関数を設定する(ステップS105)。例えば、
図4に示す工程順序データ122において「工程#1、工程#2、工程#3、工程#4」のパスが最も日数を必要とすると仮定する。その場合、目的関数設定部133は、「工程#1、工程#2、工程#3、工程#4」のパスをクリティカルパスと考えて、当該クリティカルパスに必要な日数を最小化することを目的とする。つまり、目的関数設定部133は、最適化の目的関数f・xを工程#4の終了日、すなわち
endW
4と設定する。なお、最小化するパスはクリティカルパス以外のパスでもよい。
【0040】
次に、最適化計算部14は、入力部11が入力した工程データ120、変数設定部131が設定した変数、制約条件設定部132が設定した制約条件、目的関数設定部133が設定した目的関数及び最適化アルゴリズムに基づいて工程計画の最適化計算を実行する(ステップS106)。つまり、最適化計算部14は、制約条件(A)~制約条件(G)を満たし、かつ目的関数f
T・x=
endW
4が最小値となる式(1)に示す変数xを計算する。そして、出力部15は、最適化された
図6に示す工程計画を出力する(ステップS107)。
【0041】
図6は、第1の実施形態に係る最適化された工程計画の一例を示す表である。
図6に示すように、工事日(作業日)k(k=1~10)の1日ごとに工程(工程#1~工程#10)の作業条件が選択されている。ここで、工程計画は、制約条件(A)~制約条件(G)を満たしている。
【0042】
例えば、工事の1日目(k=1)には工程#1の作業条件#1の作業と工程#6の作業条件#2の作業とが行われる。したがって、工程管理システム1は、工事日に異なる工程の作業を実行できる。また、工程#1の作業条件#1の作業は1日目(k=1)から4日目(k=4)まで連続して行われるが、5日目(k=5)には、工程#1の作業条件#1の作業を中断して工程#7の作業条件#3の作業が行われる。したがって、工程管理システム1は、工程の作業のやる日又はやらない日を細やかに設定できる。また、工程#8では、6日目(k=6)には作業条件#2の作業が、8日目(k=8)は作業条件#1の作業が行われる。したがって、工程管理システム1は、同じ工程の作業でも、用いるリソーセスの数量や進捗の度合いを日ごとに変更できる。
【0043】
図7は、第1の実施形態に係る最適化された工程計画で用いられるリソーセスの数量を示す表である。
図7に示すように、各工事日kに用いられる人、重機#1及び重機#2などのリソーセスは合計される。ここで、各工事日kに用いられるリソーセスは、制約条件(B)、(C)、(D)で表されるリソーセスの制限数内に収められている。例えば、工事の2日目(k=2)に用いられるリソーセスは、人の数量が10、重機#1の数量が3及び重機#2の数量が2である。当該リソーセスは、予め設定されたリソーセスの制限である人の数量の制限「10」、重機#1の数量の制限「5」及び重機#2の数量の制限「2」に収まっている。
【0044】
第1の実施形態に係る工程管理システム1は、各工程に作業条件を設けることで、これまでは工程の進捗を日単位としてきたものを時間単位、半日単位、週単位などに変更できる。そして、工程管理システム1は、作業日に異なる工程の作業条件を割り当てることができ、リソーセスの制約の中で工程の作業の効率的な配分ができる。したがって、工程管理システム1は、工程計画の自由度を向上し、工程計画において工期の短縮をすることができる。
【0045】
また、工程管理システム1は、上述の実施例では工期最短を目的として工程計画を算出したが、目的関数を変更すれば人、重機などのリソーセスの数最小の工程も算出できる。また、工程管理システム1は、同様に作業条件ごとの金額がわかれば金額が最小になる工程も算出できる。
【0046】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0047】
<ハードウェア構成>
続いて、
図8を用いて、工程管理システム1を実現するコンピュータ1000のハードウェア構成例を説明する。
図8においてコンピュータ1000は、プロセッサ1001と、メモリ1002及びストレージデバイス1003とを有している。プロセッサ1001は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。プロセッサ1001は、複数のプロセッサを含んでもよい。メモリ1002は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ1002は、プロセッサ1001から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ1001は、図示されていないI/Oインターフェースを介してメモリ1002にアクセスしてもよい。ストレージデバイス1003は、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又は ROM(Read Only Memory)などを用いて実現される補助記憶装置である。
【0048】
また、上述の実施形態における各装置は、ハードウェア又はソフトウェア、もしくはその両方によって構成され、1つのハードウェア又はソフトウェアから構成してもよいし、複数のハードウェア又はソフトウェアから構成してもよい。上述の実施形態における各装置の機能(処理)を、コンピュータにより実現してもよい。例えば、メモリ1002に実施形態における方法を行うためのプログラムを格納し、各機能を、メモリ1002に格納されたプログラムをプロセッサ1001で実行することにより実現してもよい。
【0049】
これらのプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【符号の説明】
【0050】
1 工程管理システム
11 入力部
12 記憶部
131 変数設定部
132 制約条件設定部
133 目的関数設定部
14 最適化計算部
15 出力部
120 工程データ
121 作業条件データ
122 工程順序データ
1000 コンピュータ
1001 プロセッサ
1002 メモリ
1003 ストレージデバイス