(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186055
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】錠剤製造システム及び錠剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20221208BHJP
G01N 21/53 20060101ALI20221208BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20221208BHJP
A61J 3/10 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N21/53 Z
G01N33/15 Z
A61J3/10 A
A61J3/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094080
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】田中 勲
(72)【発明者】
【氏名】矢野 慧一
【テーマコード(参考)】
2G043
2G059
4C047
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA14
2G043BA17
2G043CA01
2G043DA02
2G043DA05
2G043EA01
2G043EA14
2G043FA03
2G043HA01
2G043HA03
2G043JA02
2G043JA03
2G043JA04
2G043KA02
2G043KA08
2G043LA01
2G043LA02
2G043MA01
2G043NA01
2G043NA05
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB01
2G059CC19
2G059DD12
2G059EE02
2G059EE07
2G059FF04
2G059FF13
2G059GG08
2G059HH02
2G059JJ02
2G059JJ03
2G059JJ05
2G059JJ11
2G059KK01
2G059KK02
2G059KK03
2G059MM01
2G059MM06
2G059NN01
4C047LL10
4C047LL19
(57)【要約】
【課題】1つの分析装置で、錠剤の製造工程の途中における原料の状況を逐次評価できると共に、作業環境への原料粉体の飛散状況も監視できる錠剤製造システム及び錠剤の製造方法を提供する。
【解決手段】複数種類の原料のいずれかに予め蛍光物質を添加し、蛍光物質を添加した原料を含む複数種類の原料を混合し、混合後の原料の一部を加圧する前に採取し、採取した原料を曝気して採取した原料をエアロゾルとして含むサンプルガスを得、得られたサンプルガス中の蛍光を発するエアロゾルを検出することにより、複数種類の原料の混合が均一になされているか否かを監視する。また、環境雰囲気中の蛍光を発するエアロゾルを検出することにより、原料の環境雰囲気への飛散状況を監視する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の原料のいずれかに蛍光物質を添加して、混合加圧することにより錠剤を製造する錠剤製造システムであって、
錠剤製造装置と、サンプリング装置と、分析装置とを備え、
前記錠剤製造装置は、少なくとも1以上の混合装置と加圧機と、前記1以上の混合装置と前記加圧機とを接続する粉体流路とを有し、
前記サンプリング装置は、前記粉体流路に接続された分岐管と、前記分岐管に設けられたエアレーションチャンバと、前記エアレーションチャンバ内に吸入端が開口する採取管とで構成される1以上の品質管理用のサンプリング流路と、
前記錠剤製造装置が設置された環境雰囲気に吸入端が開口する採取管で構成される1以上の環境管理用のサンプリング流路と、
前記サンプリング流路のいずれかを前記分析装置に接続して、前記いずれかの採取管から導入されたサンプルガスを前記分析装置に順次供給するサンプルチェンジャーとを有し、
前記分析装置は、前記サンプルガスが流通する検出管と、前記検出管内のサンプルガス中のエアロゾルに励起光を照射する励起光源と、前記励起光により前記エアロゾルから発せられる蛍光を検出する蛍光検出部とを有することを特徴とする、錠剤製造システム。
【請求項2】
前記サンプリング装置が、さらに、清浄空気を導入するクリーニング流路を有し、前記サンプルチェンジャーが、前記サンプリング流路のいずれかを前記分析装置に接続した後、他の前記サンプリング流路を前記分析装置に接続する前に、前記クリーニング流路を前記分析装置に接続して、前記清浄空気を前記分析装置に供給する、請求項1に記載の錠剤製造システム。
【請求項3】
前記分析装置が、さらに、前記エアロゾルにより散乱された励起光を検出する散乱光検出部を有する、請求項1又は2に記載の錠剤製造システム。
【請求項4】
さらに、前記分析装置のデータが入力される演算装置を備え、
前記演算装置は、前記サンプルチェンジャーが前記品質管理用のサンプリング流路を前記分析装置に接続している間に得られるデータの経時変化に基づき、前記複数種類の原料の混合が均一になされているか否かを監視し、
前記サンプルチェンジャーが前記環境管理用のサンプリング流路を前記分析装置に接続している間に得られるデータの絶対値に基づき、前記原料の前記環境雰囲気への飛散状況を監視する、請求項1~3のいずれか一項に記載の錠剤製造システム。
【請求項5】
前記演算装置が取得する前記分析装置のデータが、単位時間あたりに検出された蛍光を発するエアロゾルの数である、請求項4に記載の錠剤製造システム。
【請求項6】
前記演算装置が取得する前記分析装置のデータが、単位時間あたりの蛍光強度の積算値である、請求項4に記載の錠剤製造システム。
【請求項7】
さらに、前記分析装置のデータが入力される演算装置を備え、
前記演算装置が取得する前記分析装置のデータが、単位時間あたり検出されたエアロゾルの数に対する単位時間あたり検出された蛍光を発するエアロゾルの数の比であり、
前記演算装置は、前記サンプルチェンジャーが前記品質管理用のサンプリング流路を前記分析装置に接続している間に得られるデータの経時変化に基づき、前記複数種類の原料の混合が均一になされているか否かを監視し、
前記サンプルチェンジャーが前記環境管理用のサンプリング流路を前記分析装置に接続している間に得られるデータの絶対値に基づき、前記原料の前記環境雰囲気への飛散状況を監視する、請求項3に記載の錠剤製造システム。
【請求項8】
さらに、前記分析装置のデータが入力される演算装置を備え、
前記演算装置が取得する前記分析装置のデータが、単位時間あたりに検出されたエアロゾルの数に対する単位時間あたりの蛍光強度の積算値の比であり、
前記演算装置は、前記サンプルチェンジャーが前記品質管理用のサンプリング流路を前記分析装置に接続している間に得られるデータの経時変化に基づき、前記複数種類の原料の混合が均一になされているか否かを監視し、
前記サンプルチェンジャーが前記環境管理用のサンプリング流路を前記分析装置に接続している間に得られるデータの絶対値に基づき、前記原料の前記環境雰囲気への飛散状況を監視する、請求項3に記載の錠剤製造システム。
【請求項9】
複数種類の原料を混合加圧することにより錠剤を得る錠剤の製造方法であって、
前記複数種類の原料のいずれかに予め蛍光物質を添加し、
前記蛍光物質を添加した原料を含む複数種類の原料を混合し、
前記混合後の原料の一部を加圧する前に採取し、
前記採取した原料を曝気して、前記採取した原料をエアロゾルとして含むサンプルガスを得、
得られたサンプルガス中の蛍光を発するエアロゾルを検出することにより、前記複数種類の原料の混合が均一になされているか否かを監視することを特徴とする、錠剤の製造方法。
【請求項10】
前記蛍光物質を添加する原料が賦形剤であり、前記蛍光物質を前記賦形剤の粒子表面に付着させた前記賦形剤を他の原料と混合する、請求項9に記載の錠剤の製造方法。
【請求項11】
さらに、環境雰囲気中の蛍光を発するエアロゾルを検出することにより、前記原料の環境雰囲気への飛散状況を監視する、請求項9又は10に記載の錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤製造システム及び錠剤の製造方法に関する。更に詳しくは、錠剤の製造工程の途中において原料の状況を逐次評価できると共に、作業環境への原料粉体の飛散状況も監視できる錠剤製造システム及び錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品の生産における品質管理はバッチ処理が基本とされており、各工程終了後に得られる中間品は、所定の品質検査に合格した後に次工程に送られていた。
しかし、近年生産性を向上させるため、バッチ処理に代えて、連続生産への移行が検討されつつある。
【0003】
連続生産システムの実現には、各製造工程における原料や中間製品の品質モニタリング(PAT=Process Analytical Technology)が不可欠である。プロセス中の中間製品の品質を逐次監視できれば、最終製品の品質、例えば、錠剤中の主成分の均一性、表面硬度や消化器官での崩壊・溶出性等を管理し、目標の品質に作り込んでいくことが可能となる。
【0004】
PATに利用される分析には、オンラインやインラインでリアルタイムに近い早さでデータを得るという特徴が要求される。また、分析対象の医薬品原料や中間体への影響を排除するため、非接触、かつ非破壊の分析が理想とされる。
斯かる要求を満たす分析装置としては、光を利用した分析装置が注目されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、連続し、かつ封じ込められたライン中に分光測光分析センサを配置して分析を行う錠剤製造モジュールが提案されている。特許文献1の方法によれば、封じ込められたライン中でインライン分析を行うため、分析の際に作業環境に原料を飛散させることにより作業者に健康被害を与えるリスクも生じないとされている。
【0006】
一方、作業環境中に予期せず飛散した医薬品、特に薬理活性の高い医薬品が、作業者に健康被害を与えることを防ぐ観点で、環境雰囲気中への医薬品の飛散状況を監視することも重要である。
例えば、特許文献2では、原料に予め蛍光物質を含むトレーサーを混入しておき、環境雰囲気中の蛍光物質を含む粉体を検出することにより、作業環境における医薬品の飛散状況をモニターすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-221343号公報
【特許文献2】特開2015-194382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のようにインライン分析を行う場合の分析対象は高い密度で存在する原料粉体そのものであるのに対し、特許文献2のように環境雰囲気中の蛍光物質を含む粉体は、空気中に極わずかに存在しているに過ぎない。そのため、錠剤の製造にあたり、両者を1つの分析装置で分析することは困難で、錠剤の製造工程の途中において原料の状況を逐次評価するための分析装置と、作業環境への原料粉体の飛散状況を監視するための分析装置とは、各々別に用意する必要があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、1つの分析装置で、錠剤の製造工程の途中における原料の状況を逐次評価できると共に、作業環境への原料粉体の飛散状況も監視できる錠剤製造システム及び錠剤の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]複数種類の原料のいずれかに蛍光物質を添加して、混合加圧することにより錠剤を製造する錠剤製造システムであって、
錠剤製造装置と、サンプリング装置と、分析装置とを備え、
前記錠剤製造装置は、少なくとも1以上の混合装置と加圧機と、前記1以上の混合装置と前記加圧機とを接続する粉体流路とを有し、
前記サンプリング装置は、前記粉体流路に接続された分岐管と、前記分岐管に設けられたエアレーションチャンバと、前記エアレーションチャンバ内に吸入端が開口する採取管とで構成される1以上の品質管理用のサンプリング流路と、
前記錠剤製造装置が設置された環境雰囲気に吸入端が開口する採取管で構成される1以上の環境管理用のサンプリング流路と、
前記サンプリング流路のいずれかを前記分析装置に接続して、前記いずれかの採取管から導入されたサンプルガスを前記分析装置に順次供給するサンプルチェンジャーとを有し、
前記分析装置は、前記サンプルガスが流通する検出管と、前記検出管内のサンプルガス中のエアロゾルに励起光を照射する励起光源と、前記励起光により前記エアロゾルから発せられる蛍光を検出する蛍光検出部とを有することを特徴とする、錠剤製造システム。
[2]前記サンプリング装置が、さらに、清浄空気を導入するクリーニング流路を有し、前記サンプルチェンジャーが、前記サンプリング流路のいずれかを前記分析装置に接続した後、他の前記サンプリング流路を前記分析装置に接続する前に、前記クリーニング流路を前記分析装置に接続して、前記清浄空気を前記分析装置に供給する、[1]に記載の錠剤製造システム。
[3]前記分析装置が、さらに、前記エアロゾルにより散乱された励起光を検出する散乱光検出部を有する、[1]又は[2]に記載の錠剤製造システム。
[4]さらに、前記分析装置のデータが入力される演算装置を備え、
前記演算装置は、前記サンプルチェンジャーが前記品質管理用のサンプリング流路を前記分析装置に接続している間に得られるデータの経時変化に基づき、前記複数種類の原料の混合が均一になされているか否かを監視し、
前記サンプルチェンジャーが前記環境管理用のサンプリング流路を前記分析装置に接続している間に得られるデータの絶対値に基づき、前記原料の前記環境雰囲気への飛散状況を監視する、[1]~[3]のいずれか一項に記載の錠剤製造システム。
[5]前記演算装置が取得する前記分析装置のデータが、単位時間あたりに検出された蛍光を発するエアロゾルの数である、[4]に記載の錠剤製造システム。
[6]前記演算装置が取得する前記分析装置のデータが、単位時間あたりの蛍光強度の積算値である、[4]に記載の錠剤製造システム。
[7]さらに、前記分析装置のデータが入力される演算装置を備え、
前記演算装置が取得する前記分析装置のデータが、単位時間あたり検出されたエアロゾルの数に対する単位時間あたり検出された蛍光を発するエアロゾルの数の比であり、
前記演算装置は、前記サンプルチェンジャーが前記品質管理用のサンプリング流路を前記分析装置に接続している間に得られるデータの経時変化に基づき、前記複数種類の原料の混合が均一になされているか否かを監視し、
前記サンプルチェンジャーが前記環境管理用のサンプリング流路を前記分析装置に接続している間に得られるデータの絶対値に基づき、前記原料の前記環境雰囲気への飛散状況を監視する、[3]に記載の錠剤製造システム。
[8]さらに、前記分析装置のデータが入力される演算装置を備え、
前記演算装置が取得する前記分析装置のデータが、単位時間あたりに検出されたエアロゾルの数に対する単位時間あたりの蛍光強度の積算値の比であり、
前記演算装置は、前記サンプルチェンジャーが前記品質管理用のサンプリング流路を前記分析装置に接続している間に得られるデータの経時変化に基づき、前記複数種類の原料の混合が均一になされているか否かを監視し、
前記サンプルチェンジャーが前記環境管理用のサンプリング流路を前記分析装置に接続している間に得られるデータの絶対値に基づき、前記原料の前記環境雰囲気への飛散状況を監視する、[3]に記載の錠剤製造システム。
[9]複数種類の原料を混合加圧することにより錠剤を得る錠剤の製造方法であって、
前記複数種類の原料のいずれかに予め蛍光物質を添加し、
前記蛍光物質を添加した原料を含む複数種類の原料を混合し、
前記混合後の原料の一部を加圧する前に採取し、
前記採取した原料を曝気して、前記採取した原料をエアロゾルとして含むサンプルガスを得、
得られたサンプルガス中の蛍光を発するエアロゾルを検出することにより、前記複数種類の原料の混合が均一になされているか否かを監視することを特徴とする、錠剤の製造方法。
[10]前記蛍光物質を添加する原料が賦形剤であり、前記蛍光物質を前記賦形剤の粒子表面に付着させた前記賦形剤を他の原料と混合する、[9]に記載の錠剤の製造方法。
[11]さらに、環境雰囲気中の蛍光を発するエアロゾルを検出することにより、前記原料の環境雰囲気への飛散状況を監視する、[9]又は[10]に記載の錠剤の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の錠剤製造システム及び錠剤の製造方法によれば、1つの分析装置で、錠剤の製造工程の途中における原料の状況を逐次評価できると共に、作業環境への原料粉体の飛散状況も監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る錠剤製造システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の錠剤製造システムで用いる分析装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<錠剤製造システム>
本発明の一実施形態に係る錠剤製造システムを
図1に基づいて説明する。
本実施形態の錠剤製造システムは、錠剤製造装置1とサンプリング装置20と分析装置70と演算装置80とから概略構成されている。
【0014】
本実施形態における錠剤製造装置1は、第1混合装置2と造粒機3と第2混合装置4と加圧機5とコーティング機6とを備えている。また、第1混合装置2と造粒機3と第2混合装置4と加圧機5とは、この順で粉体流路7により接続されている。
本発明において、錠剤製造装置1は1以上の混合装置を有していればよいが、本実施形態では2つの例を示している。
錠剤製造装置1が複数の混合装置を有する場合、粉体流路7の上流端は、最も上流側の混合装置であり、下流端は加圧機5である。
【0015】
第1混合装置2には、複数の原料タンク、本実施形態では、原料タンク12a、原料タンク12b、原料タンク12cから、各々原料投入路8a、原料投入路8b、原料投入路8cを経由して複数種類の原料が供給されるようになっている。
原料タンク12a、原料タンク12b、原料タンク12cのいずれかの原料には、予め蛍光物質が添加されている。
【0016】
第1混合装置2に供給された複数の原料は、第1混合装置2で混合された後、造粒機3で造粒されるようになっている。
第2混合装置4には、造粒機3で造粒された粉体(造粒体)と原料タンク12dから原料投入路8dを経由して追加原料が供給されるようになっている。
第2混合装置4に供給された造粒体と追加原料は、第2混合装置4で混合された後、加圧機5で加圧されて錠剤となり、その後コーティング機6でコーティンされて、ストッカー13に製品として貯蔵されるようになっている。
【0017】
本実施形態のサンプリング装置20は、第1サンプリング流路30と、第2サンプリング流路40と、第3サンプリング流路50と、クリーニング流路60と、これらの流路のいずれかを分析装置70に接続するサンプルチェンジャー21とで構成されている。
【0018】
第1サンプリング流路30と、第2サンプリング流路40は、品質管理用のサンプリング流路である。本発明において、品質管理用のサンプリング流路は1以上であればよいが、本実施形態では2つとされている。
品質管理用のサンプリング流路は、以下に説明するように、各々粉体流路7に接続された分岐管と分岐管に設けられたエアレーションチャンバと、エアレーションチャンバ内に吸入端が開口する採取管を有している。
【0019】
第1サンプリング流路30は、第1分岐管31と、第1分岐管31に設けられた第1エアレーションチャンバ32と、第1エアレーションチャンバ32のエア出口32bに設けられたフィルタ33と、第1エアレーションチャンバ32の下流側において、第1分岐管31に設けられたエアポンプ34と、第1エアレーションチャンバ32とエアポンプ34との間に設けられたフィルタ35と、第1エアレーションチャンバ32内に吸入端が開口する第1採取管36とで構成されている。
【0020】
第1分岐管31は、錠剤製造装置1の粉体流路7の第1サンプリングポイント31aに接続されている。本実施形態における第1サンプリングポイント31aは、粉体流路7の第1混合装置2の下流側であって、造粒機3の上流側とされている。すなわち、第1混合装置2で混合された後の原料をサンプリングできるようになっている。
【0021】
第1エアレーションチャンバ32は、第1サンプリングポイント31aよりも下方に配置されている。
第1エアレーションチャンバ32には、第1分岐管31を通じて、第1サンプリングポイント31aを通過する原料の一部が導入されるようになっている。
第1サンプリングポイント31aから第1エアレーションチャンバ32へ原料の導入方法に特に限定はないが、重力による落下や、ポンプによる吸引等が利用できる。本実施形態では、重力による落下とエアポンプ34による吸引を併用した例を示している。
【0022】
第1エアレーションチャンバ32のエア入口32aには、図示を省略するエア供給源から、清浄空気が供給され、第1エアレーションチャンバ32内に導入された原料を曝気した後、エア出口32bから排気されるようになっている。
フィルタ33は、第1エアレーションチャンバ32内に導入された原料が、曝気後のエアと共に環境雰囲気中に排出されることを防ぐ役割を担っている。
フィルタ35は、第1エアレーションチャンバ32内に導入され、曝気された後の原料を補足し、環境雰囲気中に排出されることを防ぐ役割を担っている。
【0023】
第1採取管36は、第1エアレーションチャンバ32内に吸入端が開口しているので、第1エアレーションチャンバ32内のガスをサンプルガスとして採取するようになっている。第1エアレーションチャンバ32内のガスには、第1サンプリングポイント31aから導入した原料がエアロゾルとして含まれている。
【0024】
第2サンプリング流路40は、第2分岐管41と、第2分岐管41に設けられた第2エアレーションチャンバ42と、第2エアレーションチャンバ42のエア出口42bに設けられたフィルタ43と、第2エアレーションチャンバ42の下流側において、第2分岐管41に設けられたエアポンプ44と、第2エアレーションチャンバ42とエアポンプ44との間に設けられたフィルタ45と、第2エアレーションチャンバ42内に吸入端が開口する第2採取管46とで構成されている。
【0025】
第2分岐管41は、錠剤製造装置1の粉体流路7の第2サンプリングポイント41aに接続されている。本実施形態における第2サンプリングポイント41aは、粉体流路7の第2混合装置4の下流側であって、加圧機5の上流側とされている。すなわち、第2混合装置4で混合された後の原料をサンプリングできるようになっている。
【0026】
第2エアレーションチャンバ42は、第2サンプリングポイント41aよりも下方に配置されている。
第2エアレーションチャンバ42には、第2分岐管41を通じて、第2サンプリングポイント41aを通過する原料の一部が導入されるようになっている。
第2サンプリングポイント41aから第2エアレーションチャンバ42へ原料の導入方法に特に限定はないが、重力による落下や、ポンプによる吸引等が利用できる。本実施形態では、重力による落下とエアポンプ44による吸引を併用した例を示している。
【0027】
第2エアレーションチャンバ42のエア入口42aには、図示を省略するエア供給源から、清浄空気が供給され、第2エアレーションチャンバ42内に導入された原料を曝気した後、エア出口42bから排気されるようになっている。
フィルタ43は、第2エアレーションチャンバ42内に導入された原料が、曝気後のエアと共に環境雰囲気中に排出されることを防ぐ役割を担っている。
フィルタ45は、第2エアレーションチャンバ42内に導入され、曝気された後の原料を補足し、環境雰囲気中に排出されることを防ぐ役割を担っている。
【0028】
第2採取管46は、第2エアレーションチャンバ42内に吸入端が開口しているので、第2エアレーションチャンバ42内のガスをサンプルガスとして採取するようになっている。第2エアレーションチャンバ42内のガスには、第2サンプリングポイント41aから導入した原料がエアロゾルとして含まれている。
【0029】
第3サンプリング流路50は環境管理用のサンプリング流路である。本発明において、環境管理用のサンプリング流路は1以上であればよいが、本実施形態では1つとされている。
第3サンプリング流路50は、第3採取管51から構成されている。第3採取管51は、吸入端が、錠剤製造装置1を設置した環境雰囲気中の第3サンプリングポイント51aに開口している。
環境管理用のサンプリング流路の採取管の吸入端(サンプリングポイント)の具体的位置に特に限定はないが、原料粉体の飛散が生じる可能性が高い位置とすることが好ましい。本実施形態の第3サンプリングポイント51aは、第1混合装置2の近傍とされている。
【0030】
クリーニング流路60は、分析装置70に清浄空気を導入するための流路である。クリーニング流路60は、清浄空気ボンベ61と清浄空気ボンベ61に接続された清浄空気道入管62で構成されている。
サンプルチェンジャー21は、以上説明した各流路のいずれかを分析装置70に接続して、いずれかの採取管から導入されたサンプルガスを分析装置70に順次供給するようになっている。
【0031】
分析装置70は、
図2に示すように、サンプルガスが流通する検出管71と、検出管71内のサンプルガス中のエアロゾルに励起光を照射する励起光源72と、検出管71内のサンプルガス中のエアロゾルから発せられる蛍光を検出する蛍光検出部73とを有している。本実施形態の分析装置70はさらに、検出管71内のサンプルガス中のエアロゾルにより散乱された励起光を検出する散乱光検出部74を備えている。また、蛍光検出部73と散乱光検出部74から得られる信号を処理して演算装置80に出力するデータを得るための信号処理装置(図示省略)を有している。
【0032】
励起光源72から発せられる励起光の波長は、原料に添加された蛍光物質の種類に応じて適宜選択される。例えば、蛍光物質としてリボフラビンを使用する場合の励起光の波長は、400nm前後とすることができる。また、励起光源72は、必要な波長の励起光を発せられるものが適宜選択される。例えば、Xeフラッシュランプ(キセノン放電管)、D2ランプ(重水素放電管)等を用いることができる。
【0033】
蛍光検出部73の検出波長は、原料に添加された蛍光物質の種類に応じて適宜選択される。例えば、蛍光物質としてリボフラビンを使用する場合の蛍光の検出波長は、420~600nmの波長帯とすることができる。
蛍光検出部73としては、光電子増倍管、フォトダイオード、フォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオードなどを適宜用いることができる。また、蛍光以外の光、例えば励起光の波長をカットするため、カットフィルター、回折格子等の光学部材を適宜組み合わせて使用することができる。
【0034】
蛍光検出部73はMie散乱光(エアロゾルにより散乱された励起光)が到達しない位置に設置されていることが好ましい。本実施形態では、蛍光検出部73は、検出管71を挟んで励起光源72と反対側における斜め方向に配置されている。検出管71内で発せられた蛍光は、全方位的に発せられるので、本実施形態では集光ミラー75を用い、蛍光検出部73とは異なる方向に向かう蛍光を捉えて蛍光検出部73に集めるようにしている。
【0035】
散乱光検出部74の検出波長は、励起光源72から発せられる励起光の波長とされる。
散乱光検出部74としては、光電子増倍管、フォトダイオード、フォトトランジスタ、アバランシェフォトダイオードなどを適宜用いることができる。また、散乱された励起光以外の光をカットするため、カットフィルター、回折格子等の光学部材を適宜組み合わせて使用することができる。
【0036】
励起光源72に対する散乱光検出部74の位置関係に特に限定はないが、本実施形態の散乱光検出部74は、検出管71を挟んで励起光源72と反対側における励起光源72の光軸上に配置されている。すなわち、Mie散乱による前方散乱を検出するようになっている。
【0037】
励起光源72から散乱されることなく励起光源72の光軸上を直進してきた励起光が散乱光検出部74に到達することを防ぐため、遮蔽板76が配置されている。
また、遮蔽板76の前方の光軸上には、遮蔽板76に隣接してコリメートレンズ77が配置され、コリメートレンズ77からやや離間した位置にコンデンサーレンズ78が配置されている。エアロゾルにより散乱されて光軸から逸れた励起光は、遮蔽板76の外側を通過してコリメートレンズ77により平行光とされた後、コンデンサーレンズ78により散乱光検出部74に集められるようになっている。
【0038】
散乱光検出部74がMie散乱による前方散乱を検出することにより、エアロゾルが、検出管71内を通過したことを検出できる。そのため、分析装置70は、散乱光検出部74からの信号を処理することにより、検出管71内を単位時間あたりに通過するサンプルガス中のエアロゾルの数に比例した数をデータとして求めることができるようになっている。
【0039】
また、蛍光検出部73が蛍光を検出することにより、蛍光を発するエアロゾルが、検出管71内を通過したことを検出できる。そのため、分析装置70は、蛍光検出部73からの信号を処理することにより、検出管71内を単位時間あたりに通過するサンプルガス中の蛍光を発するエアロゾルの数に比例した数を求めることができるようになっている。
また、検出管71内からの単位時間あたりの蛍光強度の積算値をデータとして求めることもできるようになっている。
【0040】
分析装置70は、散乱光検出部74からの信号を処理することにより、検出管71内を単位時間あたりに通過するサンプルガス中のエアロゾルの数に比例した数を求め、かつ、蛍光検出部73からの信号を処理することにより、検出管71内を単位時間あたりに通過するサンプルガス中の蛍光を発するエアロゾルの数に比例した数を求めるようになっている。そして、前者に対する後者の比を求めることにより、単位時間あたり検出されたエアロゾルの数に対する単位時間あたり検出された蛍光を発するエアロゾルの数の比をデータとして求めることができるようになっている。
【0041】
分析装置70は、散乱光検出部74からの信号を処理することにより、検出管71内を単位時間あたりに通過するサンプルガス中のエアロゾルの数に比例した数を求め、かつ、蛍光検出部73からの信号を処理することにより、検出管71内からの単位時間あたりの蛍光強度の積算値を求め、前者に対する後者の比を求めることにより、サンプルガス中のエアロゾルに占める蛍光を発するエアロゾルの割合と相関する値をデータとして求めることができるようになっている。
【0042】
分析装置70として使用できる市販の装置としては、例えば、Bio Vigilant System社製のリアルタイム細菌ディテクタ(Instantaneous Microbial DetectionTM)、TSI社製のウルトラバイトレット空気動力学的パーティクルサイザー(Model 3314)、TSI社製のリアルタイム微生物測定器BioTrak(Model 9510-BD)、などが挙げられる。
中でも、Bio Vigilant System社製のリアルタイム細菌ディテクタは、ラクトース粒子表面に付着した0.7フェムトg(0.7×10-15g)のリボフラビンを検出することが可能であり、極めて精度の高い分析ができるので好ましい。
【0043】
分析装置70で得られたデータは、演算装置80に送られる。
演算装置80は、サンプリング装置20のサンプルチェンジャー21が品質管理用のサンプリング流路である第1サンプリング流路30又は第2サンプリング流路40を分析装置70に接続している間に得られるデータの経時変化に基づき、複数種類の原料の混合が均一になされているか否かを監視するようになっている。
【0044】
また、サンプリング装置20のサンプルチェンジャー21が環境管理用のサンプリング流路、本実施形態では、第3サンプリング流路50を分析装置70に接続している間に得られるデータの絶対値に基づき、原料の環境雰囲気への飛散状況を監視するようになっている。
【0045】
<錠剤の製造方法>
本発明の錠剤の製造方法は、複数種類の原料を混合加圧することにより錠剤を得る錠剤の製造方法である。
複数種類の原料のいずれかには予め蛍光物質を添加しておく。そして、蛍光物質を添加した原料を他の原料と混合した後、加圧する前に、混合後の原料の一部を採取する。
【0046】
本発明の錠剤の製造方法では、採取した原料を曝気して、この採取した原料をエアロゾルとして含むサンプルガスを得る。そして、得られたサンプルガス中の蛍光を発するエアロゾルを検出することにより、前記複数種類の原料の混合が均一になされているか否かを監視する。
【0047】
本発明の錠剤の製造方法によれば、環境雰囲気と同等に原料をエアロゾルとして含むサンプルガスを用いるので、環境管理用と別途に品質管理用の分析装置を用意する必要がない。
本発明の錠剤の製造方法では、さらに、環境雰囲気中の蛍光を発するエアロゾルを検出することで、原料の環境雰囲気への飛散状況を監視することが好ましい。
【0048】
以下に、本発明の一実施形態に係る錠剤の製造方法を、上記実施形態に係る錠剤製造システムを用いた場合を例にとって説明する。
複数種類の原料を、複数の混合装置で多段的に混合する場合、蛍光物質は、最初の混合装置で混合される原料に添加しておくことが好ましい。これにより、最初の混合装置による混合後から、複数種類の原料の混合が均一になされているか否かを監視することができる。
そのため、
図1の実施形態に係る錠剤製造システムでは、原料タンク12a、原料タンク12b、原料タンク12cのいずれかの原料に、予め蛍光物質を添加する。
【0049】
蛍光物質としては、励起光の照射により蛍光を発する物質であり、かつ、人体等に害を及ぼさず、錠剤の原料に影響を与えない物質であれば特に限定はない。例えば、リボフラビン(ビタミンB2)は、水溶性のビタミンであり人体に無害であるので好ましい。
【0050】
蛍光物質を添加する原料は薬効に直接影響しないので賦形剤であることが好ましい。賦形剤は、医薬品や農薬などの取扱いあるいは成形の向上や服用を便利にするために加える添加剤である。錠剤では、通常有効成分の量は少なく、一定の大きさや濃度にする目的で賦形剤が添加される。
【0051】
錠剤の製造に通常使用される賦形剤としては、ラクトース(乳糖)、デンプン、デキストリン、サッカロース(蔗糖)、グルコース(ブドウ糖)、沈降シリカ等が挙げられる。蛍光物質を添加する賦形剤としては、錠剤の製造に通常使用される賦形剤であれば特に限定はないが、一般的に使用されているラクトースが好ましい。
蛍光物質と、蛍光物質を添加する原料(賦形剤)との組み合わせとしては、リボフラビンとラクトースの組み合わせが好ましい。
【0052】
賦形剤に添加された蛍光物質は賦形剤の粒子表面に付着していることが好ましい。ラクトースの粒子表面にリボフラビンを付着させる場合、ラクトースの質量に対するリボフラビンの質量は、0.001~1質量%であることが好ましく、0.01~0.1質量%であることがより好ましい。
【0053】
ラクトースの質量に対するリボフラビンの質量が好ましい範囲の下限値以上であれば、上述の市販の分析装置により充分に蛍光を検出することができる。ラクトースの質量に対するリボフラビンの質量が好ましい範囲の上限値以下であれば、高価な蛍光物質の使用量が過大とならず、錠剤の製造コストを抑制しながら、本発明の製造方法を実施することができる。
【0054】
蛍光物質が賦形剤の粒子表面に付着した粒子(以下「複合粒子」という)は、分析装置70において、蛍光を発するエアロゾルとして検出される。
賦形剤の表面に蛍光物質を均一に付着させる方法としては、賦形剤の表面全体に蛍光物質をコーティングする方法、コーティング以外の方法で賦形剤の表面に蛍光物質を付着させる方法が挙げられる。
【0055】
賦形剤の表面全体に蛍光物質をコーティングする方法においては、コーティングした蛍光物質の一部が、賦形剤の内部に含浸されてもよい。
賦形剤の表面全体に蛍光物質をコーティングするには、まず、蛍光物質が所定の濃度で溶媒に溶解された溶液を準備し、その溶液を賦形剤の表面に均一に塗布する。塗布方法は特に制限されず、例えば、蛍光物質が所定の濃度で溶解された溶液と賦形剤とを混合する方法、蛍光物質が所定の濃度で溶解された溶液を賦形剤に噴霧する方法等が適用できる。
コーティングに使用する蛍光物質の量は、賦形剤に対して0.001~1質量%とすることが好ましく、0.01~0.1質量%とすることがより好ましい。
【0056】
次に、前記溶液の溶媒を除去して、賦形剤の表面に前記溶液の溶質である蛍光物質を残留させることによって、目的の複合粒子を得ることができる。
蛍光物質が所定の濃度で溶解された溶液と賦形剤とを混合し、その後溶媒を除去するための装置としては、例えば、パン・コーティング装置、転動コーティング装置、流動層コーティング装置が挙げられる。
【0057】
賦形剤の表面にコーティング以外の方法で蛍光物質を付着させる方法においては、賦形剤の表面に蛍光物質を比較的強く付着(固着)させることが好ましい。
賦形剤の表面に蛍光物質が比較的弱く付着した状態で複合粒子を製造する方法としては、賦形剤と蛍光物質をミル等で撹拌しながら混合する混合方法、流動層法による混合方法、高速圧縮・せん断型混合機を用いた混合方法等が挙げられる。
【0058】
賦形剤の表面に蛍光物質を比較的強く付着させることが可能な方法として、乾式粒子複合化技術が挙げられる。この技術によれば、高速気流中に分散させた賦形剤と蛍光物質とを互いに衝突させて、主にその衝突時の衝撃力により賦形剤と蛍光物質とを乾式で固着(固定)し、賦形剤の表面の全部又は少なくとも一部を被覆するように、蛍光物質を付着させることができる。
【0059】
乾式粒子複合化技術を用いれば、衝突時の条件を適宜調整することにより、賦形剤の表面に蛍光物質からなる膜を成膜することも可能である。この成膜時には、衝突前の蛍光物質の形状を維持させることもできるし、衝突エネルギーによって蛍光物質の形状を変形させることもできる。基本的には、衝突後(複合化後)においても、衝突前の賦形剤の形状及び粒子径を維持させることができる。
乾式粒子複合化技術を用いる場合、子粒子として使用する蛍光物質は予め微粉砕して所定の大きさに調整しておくことが好ましい。粉砕後の蛍光物質の粒径は、1μm以下とすることが好ましく、0.01~0.1μmとすることがより好ましい。
【0060】
乾式粒子複合化技術による複合粒子の形成において、賦形剤と蛍光物質を衝突させるチャンバーを乾燥及び冷却し、チャンバー内を窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気にすることにより、子粒子を構成する蛍光物質の熱分解や酸化分解を抑制し、複合粒子の検出感度が損なわれることを防止できる。このような複合化方法は、公知の市販装置(例えば、奈良機械製作所製のハイブリダイザー、ホソカワミクロン社製のメカノフュージョンシステム等)により、実施することができる。
【0061】
蛍光物質を添加した原料を含む複数種類の原料を混合した後、加圧する前に、混合後の原料の一部を採取して分析する。
図1の装置では、第1混合装置2で混合した後の第1サンプリングポイント31aと第2混合装置4で混合した後の第2サンプリングポイント41aで原料の一部を採取する。いずれの採取も加圧機5で加圧する前に行う。
【0062】
上述したように、各品質管理用のサンプリング流路(第1サンプリング流路30及び第2サンプリング流路40)において、採取した原料を曝気して、この採取した原料をエアロゾルとして含むサンプルガスを得て、各々の採取管で採取して分析装置70に供給する。
また、環境管理用のサンプリング流路(第3サンプリング流路50)においては、環境雰囲気のサンプルガスを、そのまま採取管で採取して分析装置70に供給する。
また、クリーニング流路60からは、分析装置70内を清浄にする清浄空気を分析装置70に供給する。
【0063】
サンプルチェンジャー21は、以上説明した各流路のいずれか1つを分析装置70に順次接続し、いずれかの採取管から採取したサンプルガスを分析装置70に供給する。
サンプルチェンジャー21が、分析装置70に対して、どの流路をどのような順番で接続するかは特に限定はないが、第1サンプリング流路30、第2サンプリング流路40、及び第3サンプリング流路50のいずれかを接続した後は、クリーニング流路60に接続してから、他のサンプリング流路に接続することが好ましい。
【0064】
クリーニング流路60に接続して、分析装置70内に清浄空気を通過させることにより、その後再度第1サンプリング流路30、第2サンプリング流路40、及び第3サンプリング流路50のいずれかを接続した時の分析精度を向上させることができる。
サンプルチェンジャー21による切替は、例えば以下の順番の繰り返しとすることができる。
【0065】
1)第1サンプリング流路30
2)クリーニング流路60
3)第2サンプリング流路40
4)クリーニング流路60
5)第3サンプリング流路50
6)クリーニング流路60
【0066】
サンプルチェンジャー21の切替のタイミングに特に限定はないが、例えば上記1)~6)を各10分ずつとすることができる。
その場合、第1サンプリング流路30と、第2サンプリング流路40と第3サンプリング流路50とから採取したサンプルガスを各々1時間に一度分析できることとなる。
【0067】
分析装置70は、演算装置80に対して、以下のいずれか1以上のデータを入力し、演算装置80は当該データを取得する。
1)単位時間あたりに検出された蛍光を発するエアロゾルの数(検出管71内を単位時間あたりに通過するサンプルガス中の蛍光を発するエアロゾルの数に比例した数)。
2)単位時間あたりの蛍光強度の積算値(検出管71内からの単位時間あたりの蛍光強度の積算値)。
3)単位時間あたり検出されたエアロゾルの数に対する単位時間あたり検出された蛍光を発するエアロゾルの数の比(検出管71内を単位時間あたりに通過するサンプルガス中のエアロゾルの数に比例した数に対する検出管71内を単位時間あたりに通過するサンプルガス中の蛍光を発するエアロゾルの数に比例した数の比)。
4)単位時間あたりに検出されたエアロゾルの数に対する単位時間あたりの蛍光強度の積算値の比(検出管71内を単位時間あたりに通過するサンプルガス中のエアロゾルの数に比例した数に対する検出管71内からの単位時間あたりの蛍光強度の積算値の比)。
【0068】
演算装置80は、サンプリング装置20のサンプルチェンジャー21が品質管理用のサンプリング流路である第1サンプリング流路30又は第2サンプリング流路40を分析装置70に接続している間に得られるデータの経時変化に基づき、複数種類の原料の混合が均一になされているか否かを監視する。
【0069】
原料の混合が均一になされていれば、予め原料に添加した蛍光物質は、一定の割合で、混合後の原料中に存在することになる。そのため、分析装置70により得られるデータの変動が一定の範囲内であれば、複数種類の原料の混合が均一になされていると判断できる。
また、仮に、分析装置70により得られるデータの変動が大きければ、複数種類の原料の混合が正常に行われていないと判断することができる。
混合が正常に行われていないと判断した場合は、警報出力、錠剤製造装置1の停止等の処置をとり、作業者に、原因の排除を求めることが好ましい。
【0070】
データの経時変化の監視は、その品質管理用のサンプリング流路につないでいる間、例えば10分間の間の経時変化を監視してもよいし、サンプルチェンジャー21がその品質管理用のサンプリング流路を分析装置70に接続する都度、例えば1時間に1回監視してもよいし、両者の監視を併用してもよい。
【0071】
サンプルチェンジャー21が第1サンプリング流路30を分析装置70に接続している際に得られるデータの経時変化に基づき、第1混合装置2による混合が正常に行われているか否かを監視することができる。
サンプルチェンジャー21が第2サンプリング流路40を分析装置70に接続している際に得られるデータの経時変化に基づき、第2混合装置4による混合が正常に行われているか否かを監視することができる。
【0072】
演算装置80は、サンプリング装置20のサンプルチェンジャー21が環境管理用のサンプリング流路、本実施形態では、第3サンプリング流路50を分析装置70に接続している間に得られるデータの絶対値に基づき、原料の環境雰囲気への飛散状況を監視する。
【0073】
原料が環境雰囲気中に飛散していれば、予め原料に添加した蛍光物質も、環境雰囲気中に飛散する。そのため、分析装置70により得られるデータの絶対値がゼロ又は低ければ、原料が環境雰囲気中に飛散していない、又はほぼ抑制されていると判断できる。
また、仮に、分析装置70により得られるデータの絶対値が大きければ、原料が環境雰囲気中に無視し得ない程度飛散していると判断することができる。
【0074】
データの絶対値がどの程度大きければ原料が環境雰囲気中に無視し得ない程度飛散していると判断するかは、原料中に添加する蛍光物質の量や、必要な作業安全性等を考慮して適宜決定することができる。
原料が環境雰囲気中に無視し得ない程度飛散していると判断した場合は、警報出力、錠剤製造装置1の停止等の処置をとり、作業者に、原因の排除を求めることが好ましい。
【0075】
上記実施形態では、分析装置70が蛍光検出部73と共に散乱光検出部74を有する態様としたが、本発明における分析装置は、蛍光検出部を有し、散乱光検出部を有さないものであっても差し支えない。その場合、サンプルガス中のエアロゾル全体の数に比例した数を求めることができないので、検出管71内を通過させるサンプルガスの流量や、各サンプリング流路におけるサンプリング条件を変動させないことが重要である。
【0076】
また、上記実施形態では錠剤製造装置1として混合装置を2つ有するものを示したが、混合装置は1つ以上あればよく、その数に限定はない。また、各混合装置で混合される原料の種類(数)にも限定はない。造粒機等、他の製造設備の配置も適宜変更できる。
また、上記実施形態では、品質管理用のサンプリング流路が2つ、環境管理用のサンプリング流路が1つの例を示したが、各サンプリング流路は、各々1つ以上であれば、その数に限定はない。
【0077】
また、上記実施形態では、演算装置80に送るデータを得るための作業を分析装置70に内蔵された信号処理装置で行うこととしたが、信号処理の一部又は全部は、分析装置70と有線又は無線で接続された外部のコンピュータ等で行ってもよい。また、信号処理の一部又は全部を演算装置80が行うようにしてもよい。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 錠剤製造装置
2 第1混合装置
3 造粒機
4 第2混合装置
5 加圧機
6 コーティング機
7 粉体流路
13 ストッカー
20 サンプリング装置
21 サンプルチェンジャー
30 第1サンプリング流路
31 第1分岐管
32 第1エアレーションチャンバ
36 第1採取管
40 第2サンプリング流路
41 第2分岐管
42 第2エアレーションチャンバ
46 第2採取管
50 第3サンプリング流路
51 第3採取管
60 クリーニング流路
61 清浄空気ボンベ
62 清浄空気道入管
70 分析装置
71 検出管
72 励起光源
73 蛍光検出部
74 散乱光検出部
80 演算装置