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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186056
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】鋼管杭の杭頭構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
E02D27/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094081
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】513062984
【氏名又は名称】株式会社東部
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 郁男
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA03
2D046AA12
2D046AA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】地中に回転貫入された鋼管杭の杭頭部と、建築物の基礎梁とを接合するために前記杭頭部に設けられる杭頭ベースプレートからなる杭頭構造であって、該杭頭構造が、鋼管杭上端に簡易に且つ確実に固定でき、基礎梁との接合を容易にすることができる杭頭構造を提供する。
【解決手段】地盤に貫入された鋼管杭2の所定の高さの上端部2aに、建造物の基礎梁を固定するための杭頭ベースプレート3を溶接固定するための杭頭構造1において、杭頭ベースプレート3は、開口部4周縁に溶接固定され、鋼管杭2と同じ外径及び内径を有する接続管5と、鋼管杭上端部2aと接続管5との溶接部分6の外周面に設ける裏当て金具7で構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に貫入された鋼管杭の所定の高さの先端部に、建造物の基礎梁を固定するための杭頭ベースプレートを溶接固定するための杭頭構造において、
前記杭頭ベースプレートは、中央に開口部を有するとともに、
前記開口部周縁に溶接固定され、前記鋼管杭と同じ外径及び内径を有する接続管と、
前記鋼管杭先端部と前記接続管との溶接部分外周面に設けられる外周側裏当て金具とによって構成されることを特徴とする杭頭構造。
【請求項2】
地盤に貫入された鋼管杭の所定の高さの先端部に、建造物の基礎梁を固定するための杭頭ベースプレートを溶接固定するための杭頭構造において、
前記杭頭ベースプレートの所定の位置に溶接固定され、前記鋼管杭と同じ外径及び内径を有する接続管と、
前記鋼管杭先端部と前記接続管との溶接部分外周面に設けられる内周側裏当て金具とによって構成されることを特徴とする杭頭構造。
【請求項3】
前記接続管は、前記杭頭ベースプレート側に設けられたプレート側開先部と、前記鋼管杭先端側に設けられた鋼管杭側開先とを具備することを特徴とする請求項1又は2記載の杭頭構造。
【請求項4】
前記接続管の外側開先部と前記杭頭ベースプレートとの間の溶接部分内周にはプレート内周側裏当て金具が設けられることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の杭頭構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地盤に貫入された鋼管杭の杭頭に、建築物の梁などを支持するための杭頭ベースプレートを有する鋼管杭の杭頭構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2008-45337号公報)は、鋼管杭の杭頭部と杭頭キャップが形成する空間内部に充填材を充填することにより、該杭頭キャップを鋼管杭の杭頭部に固定する、鋼管杭の杭頭処理方法を開示する。この杭頭処理方法は、地中に埋設された鋼管杭の杭頭部に建造物の荷重を受ける杭頭プレートと該杭頭プレートにその一方端縁が接続された円筒部を有する杭頭キャップを被せ、前記鋼管杭の杭頭部と前記杭頭キャップが形成する空間内部に充填材を充填する鋼管杭の杭頭処理方法において、前記杭頭部の外周面と前記円筒部の内周面が形成する隙間に先端の断面形状が略楔形である楔形部材を該隙間の下方から介在させるものである。
【0003】
特許文献2(特開2016-3507号公報)は、現場での施工性が高い上に、大きな引き抜き力や押し込み力に対して英孝可能な杭頭構造を開示する。また、特許文献2は、この杭頭構造が、鋼管杭の外周面を周方向に囲繞するように複数の円弧プレートによって形成されるベースプレート部と、鋼管杭の外周面に取り付けられて円弧プレートをその上に載置させる裏当て金と、円弧プレートの内周縁と鋼管杭の外周面とを接合させる溶接部とを備えることを開示する。
【0004】
特許文献3(特開2016-70047号公報)は、杭の芯ズレ、回転方向へのズレ、傾き、高低のズレ等の位置ズレを簡単な構造で修正でき、現場での穿孔作業をすることなく杭と減築物フレームを強固に接合できる杭と建築物フレームの接合構造およびその接合に用いるアタッチメントを開示する。この特許文献3において、鋼管杭と基礎梁の間に設けられるアタッチメントプレートは、基礎梁と固定プレートにそれぞれ適合する第1取付部と第2取付部を有しており、第2取付部は、鋼管杭の一定の位置ズレ量内にて設定された距離だけ第1取付部の中心に対して平面方向にその中心がずらして設けられ、この接合構造においては、鋼管杭に位置ズレが発生しても、その位置ズレに応じて数種類のアタッチメントプレートの中からその位置ズレに対応可能なものを選定して取り付けるだけで、鋼管杭と基礎梁を接合することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-45337号公報
【特許文献2】特開2016-3507号公報
【特許文献3】特開2016-70047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、地中に回転貫入された鋼管杭の杭頭部と、建築物の基礎梁とを接合するために前記杭頭部に設けられる杭頭ベースプレートからなる杭頭構造であって、該杭頭構造が、鋼管杭上端に簡易に且つ確実に固定でき、基礎梁との接合を容易にすることができる杭頭構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の様相によれば、本発明は、地盤に貫入された鋼管杭の所定の高さの先端部に、建造物の基礎梁を固定するための杭頭ベースプレートを溶接固定するための杭頭構造において、前記杭頭ベースプレートは、中央に開口部を有するとともに、前記開口部周縁に溶接固定され、前記鋼管杭と同じ外径及び内径を有する接続管と、前記鋼管杭先端部と前記接続管との溶接部分外周面に設けられる外周側裏当て金具とによって構成されることにある。
【0008】
本発明の第1の様相において、鋼管杭の杭頭部の周縁の状態が、外側からの溶接が不可能な場合、鋼管杭に対応する杭頭ベースプレートの中央に開口部を形成することによって、鋼管杭と杭頭ベースプレートに溶接固定された接続管との溶接を内側から溶接するようにしたものである。さらに、鋼管杭と接続管との溶接部分の外周側に外周側裏当て金具を設けることによって、鋼管杭と接続管の溶接部分を補強することができるものである。
【0009】
さらに、杭頭ベースプレートと接続管との溶接作業は工場で行い、接続管と鋼管杭の杭頭部との溶接作業は現場で行う。この場合、開口部が形成されていることから、内部から溶接作業を行うことができるものである。
【0010】
また、本発明の第2の様相によれば、本発明は、地盤に貫入された鋼管杭の所定の高さの先端部に、建造物の基礎梁を固定するための杭頭ベースプレートを溶接固定するための杭頭構造において、前記杭頭ベースプレートの所定の位置に溶接固定され、前記鋼管杭と同じ外径及び内径を有する接続管と、前記鋼管杭先端部と前記接続管との溶接部分外周面に設けられる内周側裏当て金具とによって構成されることにある。
【0011】
本発明の第2の様相において、鋼管杭の杭頭部の周縁の状態が、外側からの溶接が可能な場合、鋼管杭に対応する杭頭ベースプレートの中央に開口部を形成する必要がないことから、鋼管杭と杭頭ベースプレートに溶接固定された接続管との溶接を外側から溶接するようにしたものである。この場合、中央に開口部を形成しないことから、杭頭ベースプレートの強度を維持できるという効果がある。また、鋼管杭と杭頭ベースプレートの間の溶接部分の内周側に内周側裏当て金具によって溶接部分の補強を行うことができるものである。
【0012】
さらに、前記接続管は、前記杭頭ベースプレート側に設けられたプレート側開先部と、前記鋼管杭先端側に設けられた鋼管杭側開先とを具備することが好ましい。
【0013】
前記接続管の前記プレート側開先部は、前記第1の様相及び第2の様相において、外側から溶接されるように外側に開いた形状となっており、前記接続管の鋼管杭側開先部は、第1の様相においては内側に開いた形状となっており、第2の様相においては外側に開いた形状となっている。
【0014】
接続管は、工場において杭頭ベースプレートに溶接固定されるものであり、接続管が溶接固定された杭頭ベースプレートは、現場にて鋼管杭の上端部に溶接固定されるものである。
【0015】
また、前記接続管の外側開先部と前記杭頭ベースプレートとの間の溶接部分内周にはプレート内周側裏当て金具が設けられることが好ましい。これによって、杭頭ベースプレートと接続管との溶接部分を補強することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る鋼管杭の杭頭構造によれば、杭頭ベースプレートと接続管の溶接を工場で確実に行うとともに、現場にて杭頭ベースプレートに溶接された接続管と鋼管杭上端部との溶接を現場で行い、この溶接部の外周に外周側裏当て金具を設けることによって、鋼管杭上端部に杭頭ベースプレートの溶接部分を補強することができる。
【0017】
以上のように、本発明によれば、現場での作業を簡単に行うことができると共に、溶接部分の強度を保持できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1に係る杭頭構造の概略構成図である。
図2】本発明の実施例1に係る杭頭構造の分解斜視図である。
図3】本発明の実施例1に係る杭頭構造の拡大断面図である。
図4】本発明の実施例1に係る杭頭構造の組立構造の説明図である。
図5】本発明の実施例2に係る杭頭構造の概略構成図である。
図6】本発明の実施例2に係る杭頭構造の分解斜視図である。
図7】本発明の実施例2に係る杭頭構造の拡大断面図である。
図8】本発明の実施例2に係る杭頭構造の組立構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例について図面におり説明する。
【実施例0020】
図1乃至3に示される本発明の実施例1に係る杭頭構造1は、地盤に貫入された鋼管杭2の所定の高さの先端部に、図示しない建造物の基礎梁を固定するための杭頭ベースプレート3を溶接固定するためのものである。また、この実施例1では前記杭頭ベースプレート3は、中央に開口部4を有する。接続管5は、前記開口部4の周縁に溶接固定され、前記鋼管杭2と同じ外径及び内径を有することが望ましい。前記鋼管杭2の先端部と前記接続管5との溶接部分6の外周面には、外周側裏当て金具7が設けられ、溶接部分6の裏当てとして溶接部分6の強度を向上させるものである。
【0021】
また、前記接続管5は、前記杭頭ベースプレート4側に、外方に向けて開放されたプレート側開先部5aを有すると共に、前記鋼管杭2先端部側に、内方に向けて開放された鋼管杭側開先部5bを有する。これによって接続管5のプレート側開先部5aは外側から溶接され、接続管5の鋼管杭側開先部5bは内側から溶接される。さらにプレート側開先部5aの溶接部分9の内側には、プレート内周側裏当て金具8が裏当てとして溶接固定され、溶接部分9の強度を向上させる。
【0022】
以上の構造の杭頭構造1は、図4(a)~(e)に示される行程において形成される。図4(a)は、回転貫入等によって地盤内に貫入された鋼管杭2の上部に杭頭ベースプレート2を載置し基礎梁を支持するのに必要なレベルに、鋼管杭2の上端部を合わせるために、不必要な上部2bを切断することを示している。図4(b)は、切断後の鋼管杭2を示したものである。
【0023】
工場において、前記接続管5と杭頭ベースプレート3との溶接部分9の裏に前記開口部4の内側にプレート内周側裏当て金具8を当てて、前記接続管5のプレート側開先部5aに溶接材を流し込みように溶接し、プレート内周側裏当て金具8によって補強して、杭頭ベースプレートユニット30を形成する。そして、図4(c)で示すように、現場に杭頭ベースプレートユニット30を持ち込み、鋼管杭2の上端部に外周側裏当て金具7をはめ込んだ後、外周側裏当て金具7内に接続管5を挿着する形で載置し、図4(d)で示すように、杭頭ベースプレート3の開口部4より先ず4点タック溶接を行う。その後、杭頭ベースプレート3が水平であることを確認した後に、本溶接を行うものである。さらに、図4(e)で示すように、墨出しを行った後、基礎梁を固定するためのボルト孔3aを穿設するものである。
【0024】
以上の構成により、本発明の実施例1に係る鋼管杭2の杭頭構造1によれば、杭頭ベースプレート3と接続管5の溶接を工場で確実に行うとともに、現場にて杭頭ベースプレート3に溶接された接続管5と鋼管杭上端部2aとの溶接を現場で行い、この溶接部分6の外周に外周側裏当て金具7を設けることによって、鋼管杭上端部2aと接続管5の溶接部分6を補強することができる。
【0025】
以上のように、本発明によれば、現場での作業を簡単に行うことができると共に、溶接部分の強度を保持できるものである。
【実施例0026】
図5乃至7に示される本発明の実施例2に係る杭頭構造1’は、地盤に貫入された鋼管杭2の所定の高さの先端部に、図示しない建造物の基礎梁を固定するための杭頭ベースプレート3’を溶接固定するためのものである。また、この実施例2では前記杭頭ベースプレート3’は、中央に開口部4を有さない。これは、鋼管杭2の先端部の周縁に外部から溶接作業を行うのに十分な空間が得られる場合には、開口部4を開けず、杭頭ベースプレート3’の強度を保持した方が有効であるとの考えである。また、接続管5’は、杭頭ベースプレート3’の対応する箇所に溶接固定され、前記鋼管杭2と同じ外径及び内径を有することが望ましい。前記鋼管杭2の先端部と前記接続管5’との溶接部分6の内周面には、内周側裏当て金具7’が設けられ、溶接部分6’の裏当てとして溶接部分6’の強度を向上させるものである。
【0027】
また、前記接続管5’は、前記杭頭ベースプレート4側に、外方に向けて開放されたプレート側開先部5a’を有すると共に、前記鋼管杭2先端部側に、同様に外方に向けて開放された鋼管杭側開先部5b’を有する。これによって接続管5’のプレート側開先部5a’は外側から溶接され、接続管5の鋼管杭側開先部5b’も同様に内側から溶接される。さらにプレート側開先部5a’の溶接部分9’の内側には、プレート内周側裏当て金具8’が裏当てとして溶接固定され、溶接部分9’の強度を向上させる。
【0028】
以上の構造の杭頭構造1’は、図8(a)~(e)に示される行程において形成される。図8(a)は、回転貫入等によって地盤内に貫入された鋼管杭2の上部に杭頭ベースプレート2を載置し基礎梁を支持するのに必要なレベルに、鋼管杭2の上端部を合わせるために、不必要な上部2bを切断することを示している。図8(b)は、切断後の鋼管杭2を示したものである。
【0029】
工場において、前記接続管5’と杭頭ベースプレート3’との溶接部分9’の裏にプレート内周側裏当て金具8’を当てて、前記接続管5’のプレート側開先部5a’に溶接材を流し込みように溶接し、プレート内周側裏当て金具8’によって補強して、杭頭ベースプレートユニット30’を形成する。そして、図8(c)で示すように、現場に杭頭ベースプレートユニット30’を持ち込み、鋼管杭2の上端部に内周側裏当て金具7’をはめ込んだ後、内周側裏当て金具7’の外側に接続管5’を挿着する形で載置し、図8(d)で示すように、杭頭ベースプレート3’の外側より先ず4点タック溶接を行う。その後、杭頭ベースプレート3’が水平であることを確認した後に、本溶接を行うものである。さらに、図8(e)で示すように、墨出しを行った後、基礎梁を固定するためのボルト孔3a’を穿設するものである。
【0030】
以上の構成により、本発明の実施例2に係る鋼管杭の杭頭構造によれば、杭頭ベースプレート3’と接続管5’の溶接を工場で確実に行うとともに、現場にて杭頭ベースプレート3’に溶接された接続管5’と鋼管杭上端部2aとの溶接を現場で行い、この溶接部分6’の外周に内周側裏当て金具7’を設けることによって、鋼管杭上端部2aと接続管5’の溶接部分6’を補強することができる。
【0031】
以上のように、本発明によれば、現場での作業を簡単に行うことができると共に、溶接部分の強度を保持できるものである。
【符号の説明】
【0032】
1,1’ 杭頭構造
2 鋼管杭
2a 上端部
3,3’ 杭頭ベースプレート
3a,3a’ ボルト孔
4 開口部
5,5’ 接続管
5a,5a’ プレート側開先部
5b,5b’ 鋼管杭側開先部
6,6’ 溶接部分
7 外周側裏当て金具
7’ 内周側裏当て金具
8,8’ プレート内周側裏当て金具
30 杭頭ベースプレートユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8