(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018606
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】アイメイクアップ化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20220120BHJP
A61K 8/88 20060101ALI20220120BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/88
A61Q1/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121824
(22)【出願日】2020-07-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000114
【氏名又は名称】株式会社伊勢半
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】龍田 友圭里
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC242
4C083AC842
4C083AC912
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083CC14
4C083DD23
4C083DD28
4C083DD39
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】新規なアイメイクアップ化粧料を提供すること。
【解決手段】アクリル系ポリマーを含有する皮膜を表面に有する繊維を含有するアイメイクアップ化粧料によって上記課題を解決できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーを含有する皮膜を表面に有する繊維を含有する、アイメイクアップ化粧料。
【請求項2】
前記皮膜が疎水性シリコーン化合物を含有する、請求項1に記載のアイメイクアップ化粧料。
【請求項3】
前記皮膜が、前記アクリル系ポリマーとして、疎水性(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体及び親水性(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を含有する、請求項1又は2に記載のアイメイクアップ化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアイメイクアップ化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、睫毛、眉毛に用いられるアイメイクアップ化粧料は毛の流れや形を整えてより美しくみせる効果があり、特に睫毛用化粧料に求められる機能としては、例えば、目をより大きく見せるために睫毛の長さ、ボリューム、及び/又はカール力をアップさせることが挙げられる。よりロングラッシュ感を出すために種々の繊維が配合されることがある。
【0003】
しかしながら、繊維の睫毛及び眉毛への付着は偶発的要素に頼る部分が大きく、使用者の塗布回数や繊維の性質によってはほとんどロングラッシュ感が出ない。また塗布時に繊維が毛の流れに沿わず不均一に付着すると、枝分かれ状になるなど外観上の美しさが損なわれてしまっていた。そのため、繊維の分散性を向上させる試みは繊維への表面処理や配合原料により続けられてきたが、これは不均一な付着の改善には効果的であるものの、繊維をより毛へ付着させるという点でのアプローチとしては不十分であり、ロングラッシュ効果を高めるとは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-179323号公報
【特許文献2】特開2002-255745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように既知のアイメイクアップ化粧料にはまだ改善する余地があり、本願は、睫毛等への付着性を向上した繊維を含有するアイメイクアップ化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、アクリル系ポリマーで表面を処理した繊維が、睫毛等への付着性を向上することを見いだし、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、以下に関するが、それに限定されない。
[発明1]
アクリル系ポリマーを含有する皮膜を表面に有する繊維を含有する、アイメイクアップ化粧料。
[発明2]
前記皮膜が疎水性シリコーン化合物を含有する、発明1に記載のアイメイクアップ化粧料。
[発明3]
前記皮膜が、前記アクリル系ポリマーとして、疎水性(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体及び親水性(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を含有する、発明1又は2に記載のアイメイクアップ化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアイメイクアップ化粧料は、睫毛又は眉毛への付着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明には種々の代替形態が可能であるが、本明細書では本発明の特定の態様について詳述する。しかしながら、本明細書における特定の態様の詳述は、本発明を特定の態様に限定しようと意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に規定した本発明の真意及び範囲に含まれる全ての代替形態を包含する。
本明細書において、数値と共に使用される用語「以上」及び「以下」は、その数値を含む数値範囲として理解されるだけでなく、その数値を含まない数値範囲に読み替えることが可能であり、別の言い方をすると、上記用語をそれぞれ「超」及び「未満」に読み替えることが可能である。
【0010】
アイメイクアップ化粧料
アイメイクアップ化粧料とは、目の周りに用いる化粧料を意味し、好ましくは睫毛用化粧料、及び、眉毛用化粧料を意味する。睫毛(まつげ)用化粧料とは、マスカラとも呼ばれ、睫毛を濃く、長く、及び/又はカールしているように見せるためのものである。眉毛用化粧料とは、アイブロウとも呼ばれ、眉毛の流れや形を整え、時には色を重ねて眉色を変えるためのものである。
【0011】
本発明のアイメイクアップ化粧料(以下、「本発明の化粧料」という)は、アクリル系ポリマーを含有する皮膜を表面に有する繊維を含有する。本発明の化粧料の形態は特に限定されない。例えば液状、乳液状、ジェル状、クリーム状、固形状等が挙げられる。
【0012】
繊維
アクリル系ポリマーを含有する皮膜を表面に形成させる繊維としては、例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸等の合成繊維;セルロース、綿、絹、羊毛等の天然繊維;レーヨン等の再生繊維等が挙げられるが、化粧品上許容されるものならば、特に限定されない。繊維の太さについては特に限定されないが、1~13デニール(以下Dと記す)が好ましく、4~8Dがより好ましい。繊維の長さについては特に限定されないが、0.2~6mmが好ましく、1~3mmがより好ましい。これらの繊維は材質、太さ又は長さにおいて1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
皮膜
繊維の表面に形成させる皮膜は、繊維の一部に形成されていてもよいし、全体に形成されていてもよい。当該皮膜はアクリル系ポリマーを含む組成物で繊維の表面を処理することにより形成される。
【0014】
アクリル系ポリマー
上記繊維に形成させる皮膜に含まれるアクリル系ポリマーは、繊維の表面処理に用いられ、繊維の表面に皮膜を形成する。アクリル系ポリマーとは下式(1)で表される構造を有する(共)重合体を意味する。式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を表す。式(1)中、R2はカルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、ニトリル基等を表すが、これらに制限されるものではない。なお、アクリル系ポリマーは、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩であってもよい。アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、炭素数1~20のアルコキシ基であれば特に制限されるものではないが、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~6のアルコキシ基がより好ましい。炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。なお、本明細書において、「(共)重合体」とは、単重合体及び共重合体の両方を意味する。「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの両方を意味する。「(メタ)アクリロ」、「(メタ)アクリロイル」、及び「(メタ)アクリレート」についても同様に、アクリロとメタクリロ、アクリロイルとメタクリロイル、及びアクリレートとメタクリレートをそれぞれ意味する。
【0015】
【0016】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、疎水性のアクリル系ポリマー、親水性のアクリル系ポリマー等が挙げられる。より具体的には、疎水性の(メタ)アクリル酸(共)重合体又はその塩、親水性の(メタ)アクリル酸(共)重合体又はその塩、疎水性の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、親水性の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、疎水性の(メタ)アクリル酸アミド(共)重合体、親水性の(メタ)アクリル酸アミド(共)重合体、疎水性の(メタ)アクリロニトリル(共)重合体、親水性の(メタ)アクリロニトリル(共)重合体等が挙げられる。アクリル系ポリマーの分子量は特に限定されない。アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが25℃以下が好ましく、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは-40℃以下である。これらのポリマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、2種以上のアクリル系ポリマーを組み合わせて繊維の表面処理に用いる場合には、疎水性のアクリル系ポリマーと親水性のアクリル系ポリマーを組み合わせて用いることが好ましい。
【0017】
より具体的には、疎水性の(メタ)アクリル酸(共)重合体又はその塩と、親水性の(メタ)アクリル酸(共)重合体又はその塩との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリル酸(共)重合体又はその塩と、親水性の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリル酸(共)重合体又はその塩と、親水性の(メタ)アクリル酸アミド(共)重合体との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリル酸(共)重合体又はその塩と、親水性の(メタ)アクリロニトリル(共)重合体との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体と、親水性の(メタ)アクリル酸(共)重合体又はその塩との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体と、親水性の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体と、親水性の(メタ)アクリル酸アミド(共)重合体との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体と、親水性の(メタ)アクリロニトリル(共)重合体との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリル酸アミド(共)重合体と、親水性の(メタ)アクリル酸(共)重合体又はその塩との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリル酸アミド(共)重合体と、親水性の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリル酸アミド(共)重合体と、親水性の(メタ)アクリル酸アミド(共)重合体との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリル酸アミド(共)重合体と、親水性の(メタ)アクリロニトリル(共)重合体との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリロニトリル(共)重合体と、親水性の(メタ)アクリル酸(共)重合体又はその塩との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリロニトリル(共)重合体と、親水性の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリロニトリル(共)重合体と、親水性の(メタ)アクリル酸アミド(共)重合体との組み合わせ;疎水性の(メタ)アクリロニトリル(共)重合体と、親水性の(メタ)アクリロニトリル(共)重合体との組み合わせ;等が挙げられる。
【0018】
疎水性のアクリル系ポリマーと親水性のアクリル系ポリマーとを組み合わせて用いる場合には、疎水性のアクリル系ポリマーの質量(o)と、親水性のアクリル系ポリマーの質量(w)の比[w/o]が、0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましく、0.25以上であることが特に好ましい。また、比[w/o]は、4.00以下であることが好ましく、2.00以下であることがより好ましく、1.00以下であることが特に好ましい。
【0019】
各種共重合体としては、式(1)で表される構造を2種以上有するものであってもよいし、少なくとも1種の式(1)で表される構造と、少なくとも1種の他の重合性不飽和結合含有モノマーの残基を有するものであってもよい。これらの共重合体は、2種以上の、式(1)で表される構造を有するモノマー(以下、「アクリルモノマー」という)を用いて重合したり、少なくとも1種のアクリルモノマーと、少なくとも1種の他の重合性不飽和結合含有モノマーとを用いて重合したりすることにより製造することができる。共重合体の製造に用いられうる各モノマーの比率は特に限定されない。なお、各種単重合体は、アクリルモノマーを重合することにより製造することができる。
【0020】
アクリル系ポリマーの製造に用いられるアクリルモノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸又はその塩、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数1~20のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、リン酸基、スルホ基等の親水基を有する炭素数1~20のアルキル(メタ)アクリレート;等が挙げられる。より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸s-ペンチル、(メタ)アクリル酸1-エチルプロピル、(メタ)アクリル酸2-メチルブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸t-ペンチル、(メタ)アクリル酸3-メチルブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸4-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸2-エチルブチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-ヘプチル、(メタ)アクリル酸3-ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸3,3,5-トリメチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸テトラコシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3-ジヒドロキシプロピル、((メタ)アクリロイルオキシ)酢酸、コハク酸1-[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ホスファート、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0021】
重合性不飽和結合含有モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1,3-ブタジエン等の末端に重合性不飽和結合を有する炭化水素化合物;マレイン酸、フマル酸等のα,β-不飽和多価カルボン酸、無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸無水物;N-メチルマレイミド等のマレイミド基含有化合物;スチレン、ビニル安息香酸等の芳香族ビニル化合物;等が挙げられる。
【0022】
アクリル系ポリマーが共重合体である場合、それはブロック共重合体でもランダム共重合体でもよい。共重合体中にブロック共重合部分及びランダム共重合部分の両方が存在してもよい。
【0023】
本明細書において、アクリル系ポリマーのガラス転移温度[Tg(K:ケルビン)]は、Foxの式(1/Tg=Σ(Wi/Tgi))によって算出される値を示す(式中、iは1以上の整数であり、Wi(i=1、2、・・・i)は各モノマーの質量分率、Tgi(i=1、2、・・・i)は各モノマーのiホモポリマーのガラス転移温度(ケルビン)を示す。)。
【0024】
アクリル系ポリマーの製造において、各種モノマーの重合は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等の方法によって行われる。なお、重合後に変性剤を用いてアクリル系ポリマーを変性させてもよい。重合反応温度は特に制限されるものではないが、通常70℃以上200℃以下の範囲内である。反応時間は特に制限されるものではないが、通常10分間以上24時間以内の範囲内である。
【0025】
溶媒
溶媒としては、化粧品上許容されるものであれば限定されず、例えば、水、イソドデカン等の揮発性油剤、不揮発性油剤、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0026】
上記組成物は、アクリル系ポリマーの他に、溶媒、疎水性シリコーン化合物、添加剤等の他の成分を含んでもよい。
【0027】
疎水性シリコーン化合物
上記組成物は、睫毛又は眉毛に対する繊維の付着性、付着均一性、及び/又は分散性を向上又は調整するために、1種又は2種以上の疎水性シリコーン化合物を含んでもよい。疎水性シリコーン化合物としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン,環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン;アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、高級アルコール変性シリコーン、アクリル酸アルキル・メチルシロキサン共重合体等の変性シリコーンもしくはオルガノシロキサン共重合体、トリメチルシロキシケイ酸等のシリコーン樹脂;架橋型メチルポリシロキサンが挙げられる。これらのうち1種又は2種以上が任意に選択できるが、それに限定されずその誘導体でも構わない。
【0028】
上記疎水性シリコーン化合物は、1分子中に-SiR1R2R3(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に、炭素数1~4のアルキル基、アルコキシ基、又は水酸基を表す)で示される官能基(a)を2個以上有しているが、この官能基(a)の1個あたりの分子量(重量平均分子量/官能基数)が100~5000の範囲内にあるものが好ましい。なお、上記重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GFC)により測定でき、ポリエチレングリコールで換算した値である。
【0029】
添加剤
添加剤としては、例えば、界面活性剤、ジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト等の増粘剤、パルミチン酸デキストリン等のゲル化剤、抗ケーキング剤、乳化剤、分散化剤、安定剤、保湿剤、炭酸プロピレン等の粘度調節剤、ミツロウ・セレシン等の固形化剤、結合剤、タルク等の増量剤、不透明化剤、滑沢剤、顔料、紫外線散乱剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、抗酸化剤、抗菌剤、防腐剤、スキンケア剤、潤滑剤、収斂剤、エモリエント剤、ツヤ出し剤、光沢剤、消泡剤、トリメチルシロキシケイ酸等の撥水性皮膜剤、保護剤等が挙げられるが、化粧品上許容されるものであれば特に制限されない。これら2つ以上の用途・効果が重複しているものを含有してもよい。
【0030】
繊維表面の皮膜成分として、アクリル系ポリマーの含有量は、皮膜に含有される成分の総量に対して50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。アクリル系ポリマーの含有量は、100質量%以下であり、好ましくは97質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは92質量%以下であり、特に好ましくは90質量%以下である。アクリル系ポリマーとして疎水性のアクリル系ポリマーと親水性のアクリル系ポリマーとが皮膜に含有される場合には、親水性のアクリル系ポリマーの含有量は、アクリル系ポリマーの総量に対して5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上である。親水性のアクリル系ポリマーの含有量は、85質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下であり、さらに好ましくは65質量%以下である。疎水性シリコーン化合物が皮膜に含有される場合には、疎水性シリコーン化合物の含有量は、皮膜に含有される成分の総量に対して3質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは8質量%以上であり、特に好ましくは10質量%以上である。疎水性シリコーン化合物の含有量は、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以下である。
【0031】
本発明の化粧料において、アクリル系ポリマーを含有する皮膜を表面に有する繊維の配合量は、繊維の種類によっても異なるが、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.1~5質量%である。繊維の表面に形成される皮膜中のアクリル系ポリマーの量(質量)は、付着性の点から、アクリル系ポリマーを含有する皮膜を表面に形成させる繊維の量(質量)に対して0.0035%以上が好ましく、また、分散性の点から、アクリル系ポリマーを含有する皮膜を表面に形成させる繊維の量に対して20%以下が好ましい。すなわち、繊維表面に形成される皮膜中のアクリル系ポリマーの量は、好ましくは、アクリル系ポリマーを含有する皮膜を表面に形成させる繊維の量に対して0.0035~20%であり、より好ましくは0.005~5%であり、さらに好ましくは0.007~0.2%である。
【0032】
本発明の化粧料において、上記皮膜が疎水性シリコーン化合物を含有する場合、その量(質量)は、滑らかな使用感が得られる点から、アクリル系ポリマーを含有する皮膜を表面に形成させる繊維の量(質量)に対して0.0005%以上が好ましく、付着性及び/又は付着均一性の点から、アクリル系ポリマーを含有する皮膜を表面に形成させる繊維の量に対して5%以下が好ましい。すなわち、好ましくは0.0005~5%であり、より好ましくは0.0005~1%であり、さらに好ましくは0.0009~0.1%である。また、繊維表面に形成される皮膜中の疎水性シリコーン化合物の量と、繊維表面に形成される皮膜中のアクリル系ポリマーの量との質量比(疎水性シリコーン化合物の量/アクリル系ポリマーの量)で決定してもよく、好ましくは0.04~2であり、より好ましくは0.05~1であり、さらに好ましくは0.06~0.5であり、一層さらに好ましくは0.1~0.3である。
【0033】
製造方法
本発明の化粧料は、当業者の技術常識に従い慣用の処方例に従って製造出来る。各成分を配合する方法、順序等は当業者の技術常識に従い任意である。例えば、溶媒及びアクリル系ポリマーを混合し、必要に応じて、疎水性シリコーン化合物、添加剤等をさらに混合した組成物を調製し、当該組成物を繊維に接触させた後、溶媒等を乾燥し、所定の皮膜を有する繊維を得る。次いで、得られた、所定の皮膜を有する繊維と、溶媒、添加剤等の他の化粧料成分とを配合することにより本発明の化粧料を製造することができる。なお、疎水性シリコーン化合物は、アクリル系ポリマーを含有する組成物に含ませないで、アクリル系ポリマーを含有する組成物を繊維へ接触させる前又は接触させた後、疎水性シリコーン化合物を含有する組成物を当該繊維へ接触させてもよい。
【0034】
組成物と繊維との接触方法としては、特に制限されるものではなく、組成物を塗布又は噴霧する方法、それらを混合する方法(浸漬方法を含む)等が挙げられる。
【0035】
組成物と繊維との接触前に、任意に、繊維表面の油分や汚れを除去する目的で、繊維に前処理を施してもよい。前処理を施すことにより繊維表面を清浄化でき、それにより、組成物によって繊維表面が均一に濡れやすくなる。
なお、前処理の方法としては、特に限定されず、湯洗、溶媒洗浄、脱脂洗浄等の方法が挙げられる。
【0036】
繊維に対する組成物の接触温度及び接触時間は、均一に繊維表面に当該組成物を接触できれば特に制限されず、繊維の種類や形状、使用される組成物中の溶媒や成分の種類等によって適宜最適な条件が選択される。
接触温度は、例えば、10~40℃であってもよい。
接触時間は、例えば、0.1秒~10分であってもよい。
【0037】
前記接触後、前記乾燥前に、任意に、繊維に対して中間処理を施してもよい。中間処理としては、特に限定されず、例えば洗浄が挙げられる。前記洗浄の方法としては、特に限定されず、例えば、湯洗、溶媒洗浄等の方法が挙げられる。
【0038】
溶媒等の乾燥温度、乾燥方法、及び乾燥時間は、溶媒等が揮発し、アクリル系ポリマーを含有する皮膜を形成できる条件であれば特に制限されず、繊維の種類や形状、使用される組成物中の溶媒や成分の種類等によって適宜最適な条件が選択される。
乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、風乾、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、及びこれらの任意の組み合わせ等が挙げられる。
加熱方法としては、例えば、熱風、インダクションヒーター、赤外線、近赤外線等が挙げられる。
乾燥温度は、例えば、25~250℃であってもよい。
乾燥時間は、例えば、1秒~1時間であってもよい。
【実施例0039】
以下、具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。当業者は要求される耐久性、カール力、その他の条件に応じて適宜配合を調整できる。なお、以下の実施例及び比較例における配合量(含有量)は全て質量%である。
【0040】
処方
表2の各成分を水に混合し、表面処理剤を作製した。各表面処理剤に、ナイロンファイバー(以下繊維)を5~10分間浸漬した。その後、繊維を取り出し、オーブンにて繊維の表面を十分乾燥させた。表面処理を行った、又は未処理の、繊維、及び表1に示す原料を用いて化粧料を調製した。表2に記載の割合は、繊維表面に形成された皮膜に含有する全ての成分の総量に対する各成分の質量%を示す。
【0041】
【0042】
評価
各実施例若しくは比較例の化粧料、又は各実施例で用いた繊維について、以下の方法で評価した。
【0043】
付着性
睫毛化粧料を使用し、5人のパネラーにより付着性(睫毛への繊維の付着のしやすさ)の官能評価を1(とても悪い)~5(とても良い)で判定し、その平均値を以下の基準で評価した。その結果を表3に示す。
◎:4.0以上
○:3.0以上4.0未満
△:2.0以上3.0未満
×:2.0未満
【0044】
【0045】
表3から明らかなように、本発明のアイメイクアップ化粧料は、繊維の付着性において特に優れたものであることが実証された。
【0046】
付着均一性
睫毛化粧料を使用し、5人のパネラーにより付着均一性(毛の流れに沿って偏りなく付着しているか)の官能評価を1(とても悪い)~5(とても良い)で判定し、その平均値を以下の基準で評価した。その結果を表4に示す。
○:3.5以上
△:2.0以上3.5未満
×:2.0未満
【0047】
繊維の分散性
水、イソドデカン20mlそれぞれに繊維0.1gを分散させ、5人のパネラーにより分散の度合いを1(とても悪い)~5(とても良い)で判定し、その平均値を以下の基準で評価した。その結果を表4に示す。
◎:4.5以上
〇:3.0以上4.5未満
△:2.0以上3.0未満
×:2.0未満
【0048】
【0049】
ロングラッシュ効果
つけ睫毛(ガールズシークレット01、発売元(株)エリザベス)を用意し、デジタルマイクロスコープ(VHX-7000、(株)キーエンス)を用いて、つけ睫毛を撮影した。次に、つけ睫毛に実施例6の睫毛化粧料を30回塗布した。5分乾燥ののち、再度30回塗布し完全に乾燥させた。塗布前と同様に、塗布後のつけ睫毛を撮影した。つけ睫毛から無作為に6ヶ所を選び、デジタルマイクロスコープを用いて、塗布前及び塗布後の毛の長さを測定した。その後、睫毛化粧料を除去し、同様の測定を2回(計3回)行い、塗布前と塗布後の毛の長さの平均値を求め、伸長値を求めた。同様に、比較例1の睫毛化粧料についても塗布前と塗布後の毛の長さの差の平均値を求めた。測定結果を表5に示す。
【0050】
前記皮膜が、前記アクリル系ポリマーとして、疎水性(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体及び親水性(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体を含有する、請求項1又は2に記載のアイメイクアップ化粧料。