(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186069
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】洗濯用助剤
(51)【国際特許分類】
C11D 3/12 20060101AFI20221208BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20221208BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C11D3/12
A61L9/01 B
A61L9/014
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094098
(22)【出願日】2021-06-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】597021369
【氏名又は名称】日の丸カーボテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(72)【発明者】
【氏名】河尻 義孝
(72)【発明者】
【氏名】高岡 和千代
【テーマコード(参考)】
4C180
4H003
【Fターム(参考)】
4C180AA05
4C180AA10
4C180AA19
4C180BB01
4C180BB11
4C180CC04
4C180CC11
4C180EA02X
4C180EA06X
4C180EA14X
4H003BA18
4H003DA01
4H003EA24
(57)【要約】
【課題】洗濯物のカルキ臭やカビ臭、生乾きによる異臭を抑制し、繰り返し使用においても寿命の長い洗濯用助剤組成物及び洗濯用助剤を提供する。
【解決手段】洗濯用助剤組成物は、マグネシウムと、カーボン系多孔質材料及び銀の少なくとも一方とを備えている。マグネシウムは、粒状、塊状、棒状、線状又は板状である。カーボン系多孔質材料は電気伝導性を有する白炭である。洗濯用助剤は、洗濯用助剤組成物が通水性を有する綿布あるいは多孔性シートで保持されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウムと、カーボン系多孔質材料及び銀の少なくとも一方とを備える、洗濯用助剤組成物。
【請求項2】
前記マグネシウムが、粒状、塊状、棒状、線状又は板状であることを特徴とする請求項1に記載の洗濯用助剤組成物。
【請求項3】
前記カーボン系多孔質材料が電気伝導性を有する白炭であることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗濯用助剤組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の洗濯用助剤組成物が通水性を有する綿布あるいは多孔性シートで保持されていることを特徴とする洗濯用助剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯物のカルキ臭やカビ臭、生乾きによる異臭を抑制し、繰り返し使用においても寿命の長い洗濯用助剤組成物及び洗濯用助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類などの繊維製品を洗濯した際、カルキ臭や水道水由来のカビ臭が残るという問題があった。また、部屋干しなどをした場合には、しばしば、生乾きによる異臭(生乾き臭)が発生するという問題もあった。カルキ臭は水道水に添加されている塩素成分によるもので、これは中性域及びアルカリ域では次亜塩素酸という形態で残留している。特許文献1では冷蔵庫で冷水を作製する際に、水道水由来によるカルキ臭やカビ臭を除去するために、活性炭、カルシウム溶出剤、銀の効果が記載されているが、洗濯用には言及されていなかった。
【0003】
一方、特許文献2、3では、マグネシウムを用いたアルカリイオン水に言及している。マグネシウムは水中ではゆっくりとイオン化して水酸化マグネシウムとなり、これが弱いアルカリ性を示すことから、水中の雑菌やカビの繁殖をある程度抑制できる可能性があるとしている。一方、洗濯・乾燥後の衣服や洗濯機内では、このアルカリイオン水を用いると、脱水後においても、微量の水酸化マグネシウムが衣服に残存し、これが濃縮される過程で、カビや雑菌の繁殖を抑制することが可能であるpH10以上までアルカリ性が高まり、この結果生乾き臭が抑制できる。しかし、マグネシウムを水中に単に投入すると、過剰に生成される水酸化マグネシウムがマグネシウム表面に絶縁層を形成して、次第にマグネシウムの水酸化マグネシウムへの反応を抑制してしまうという問題があった。更に、洗濯時において、一部の洗剤に含まれる長鎖脂肪酸のアルカリ金属塩や、洗濯時にミセルとして除去されるべき食品に含まれる長鎖脂肪酸、リン脂質なども、マグネシウム表面で不溶性のマグネシウム塩を形性して絶縁層となり、その効果が低減していくという問題があった。更に、マグネシウムでは、水道水由来のカルキ臭やカビ臭については、対応できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-248170号公報
【特許文献2】登録実用新案第3096507号公報
【特許文献3】特許第5312663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、洗濯物のカルキ臭やカビ臭、生乾きによる異臭を抑制し、繰り返し使用においても寿命の長い洗濯用助剤組成物及び洗濯用助剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題と背景を鑑みて検討を重ねた結果、マグネシウムと活性炭などのカーボン系多孔質材料、更に銀を併用した、洗濯用助剤を作製し、これを洗濯時に用いることにより、当該課題が解決されることを見いだした。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0007】
本発明の第1の観点に係る洗濯用助剤組成物は、マグネシウムと、カーボン系多孔質材料及び銀の少なくとも一方とを備える。
【0008】
また、前記マグネシウムが、粒状、塊状、棒状、線状又は板状であることが好ましい。
【0009】
また、前記カーボン系多孔質材料が電気伝導性を有する白炭であることが好ましい。
【0010】
本発明の第2の観点に係る洗濯用助剤は、前記洗濯用助剤組成物が通水性を有する綿布あるいは多孔性シートで保持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗濯物のカルキ臭やカビ臭、生乾きによる異臭を抑制し、繰り返し使用においても寿命の長い洗濯用助剤組成物及び洗濯用助剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態に係る洗濯用助剤組成物及び洗濯用助剤について説明する。本発明におけるマグネシウムとは金属マグネシウムである。金属マグネシウムは水中で、水と反応して水酸化マグネシウムとなる。生成した水酸化マグネシウムは弱いアルカリ性を示す。飽和状態の水酸化マグネシウムの溶解度は12mg/リットル、pHは10.5程度であることが知られているが、実際の洗濯槽中ではpH8.5から9.5程度で、これは水酸化マグネシウム濃度0.12mgから1.2mg/リットルに相当する。水道水中に含まれるマグネシウム量は国内平均で3mg/リットル程度であるので、特に過剰となることはない。
【0013】
マグネシウムは粒状、塊状、棒状、線状、板状のいずれの形態でもよいが、比表面積の高い形態では、水との反応が激しくなるので、粉体状や箔状、微細線状は好ましくはない。また大粒子になると、製造時のハンドリングがよくないので、好ましくは粒状、塊状で0.5mmから10mm程度、更に1mmから3mm程度がより好ましいサイズである。線状、棒状の場合は径が0.5mmから5mm程度、更に好ましくは1mmから3mm程度であり、長さで、1mmから30mm程度、更に好ましくは1mmから10mm程度である。板状の場合は厚さが0.5mmから5mm程度が好ましく、更に好ましくは1mmから3mm程度であり、各辺が1mmから30mm、より好ましくは1mmから10mmの正方形あるいは長方形体であることが好ましい。
【0014】
本発明における、カーボン系多孔質材料とは、活性炭、木炭などの多孔質材料であって、水道水中のカルキ臭の除去に用いられる。特に水処理用などに用いられる500m2/g以上の高い比表面積を有する活性炭は好ましい材料であるが、本発明においては、銀を併用するために、電気伝導性に優れた備長炭などの白炭がより好ましい材料である。
【0015】
備長炭は比表面積で200m2/g程度と小さいものの、マグネシウムが接触した状態で、水中に投入すると、備長炭の内部や表面で、遊離している銀イオンを還元して銀コロイドとして保持することができるので、カルキ臭を除去し、かつ抗菌剤である銀イオンの洗濯用助剤組成物中からの流出を防ぐことが可能である。白炭は0.1cmから10cm程度の塊状が好ましく、更に1cmから3cm程度の塊状がより好ましい。
【0016】
更に、カーボン系多孔質材料は、マグネシウムの表面で不溶化して絶縁層を形成し、長鎖脂肪酸アルカリ金属塩や、ミセル化した長鎖脂肪酸、リン脂質などを吸着除去することができ、マグネシウムの寿命を延ばすことができる。
【0017】
マグネシウム単独、あるいはマグネシウムと備長炭が接触した状態で、銀イオン濃度5ppmから500ppm程度の水溶液中に浸漬、あるいは銀水溶液を噴霧するなどの方法で銀コロイドを、これらに担持することができる。また、予め同様の方法で銀イオンを担持させ、後にマグネシウムと接触させることにより銀コロイドとして担持することができる。
【0018】
析出した銀コロイドは黒化銀と呼ばれる。黒化銀は大気下で酸素と反応して徐々にイオン化して酸化銀となるが、水中では水酸化マグネシウムの生成により還元され、黒化銀に戻る。この銀コロイドの表面は特に活性でタンパク質などを捕捉することが可能であり、雑菌の繁殖を抑制することができる。
【0019】
更に、マグネシウム表面に担持された黒化銀は、水酸化マグネシウムあるいは長鎖脂肪酸のマグネシウム塩等による絶縁性表面層中に、導電性のバイパスを形性することになり、水酸化マグネシウムの供給を促し、その結果、洗濯用助剤組成物としてのマグネシウムの寿命を延ばすことができる。
【0020】
銀が担持された当該マグネシウム及びカーボン系多孔質材料は、洗濯用助剤用原料として、通水性の綿布、多孔性シート中に保持されて、洗濯用助剤となり、洗濯時に洗剤、披洗濯物と一緒に洗濯槽に投入される。洗濯中、洗濯用助剤は洗濯槽中で撹拌、披洗濯物の衝突などの衝撃を受けるので、強靱でなければならず、また、内容物であるカーボン系多孔質材料が洗濯用助剤から流失すると、披洗濯物を汚染することになるので、衝撃等に強い形態が好ましい。このような方法としては、洗濯用助剤組成物が洗濯用助剤中で動かないように固定して、洗濯時の衝撃を低減するよう、繊維状物やスポンジ状物を詰め込む形態がより好ましい。
【0021】
通水性の綿布、多孔性シートとしては、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン等で形成されたスパンボンド等の不織布、更に連続孔を有するセルロースやウレタンシートを用いることができる。繊維状物としては、コットン、再生セルロース、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン等の短繊維、スポンジ状物としては、連続孔を有するセルロースやウレタンスポンジ片等を用いることができる。
【0022】
以下、実験例、比較例を挙げてさらに詳細に内容を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0023】
(銀担持マグネシウムの作製)
銀イオン濃度50ppmの水溶液30重量部に蒸留水170重量部を加え、これに径2mmの粒状マグネシウム100重量部を加えて、マグネシウム表面に黒化銀を形成させ、これを銀担持マグネシウムとした。
【0024】
(実施例1)
塊状備長炭60重量部と銀担持マグネシウム40重量部を中心にして、これを20重量部の綿(コットン)で包み、これを更に袋状のPPスパンボンド不織布で包み込み、端を縛り、これを洗濯用助剤1とした。
【0025】
(実施例2)
塊状備長炭60重量部と粒状マグネシウム40重量部に、銀イオン濃度50ppmの水溶液を1.2重量部噴霧し、これを20重量部のPP短繊維で包み、実施例1と同様にして洗濯用助剤を作製し、これを洗濯用助剤2とした。
【0026】
(実施例3)
粒状活性炭60重量部と粒状マグネシウム40重量部に、これを20重量部の綿(コットン)で包み、これを袋状のナイロン不織布で包み、これを洗濯用助剤3とした。
【0027】
(比較例1)
粒状マグネシウム40重量部を袋状のPPスパンボンド不織布で包み、これを比較洗濯用助剤1とした。
【0028】
(比較例2)
粒状活性炭60重量部を、20重量部のPP短繊維で包み、更に袋状のPPスパンボンド不織布で縛り、これを比較洗濯用助剤2とした。
【0029】
(洗濯比較)
作製された洗濯用助剤を用いて、市販の洗濯機を用い、以下の条件で洗濯物を洗濯し、洗濯後のカルキ臭気と9畳の部屋で陰干しした場合の一日後の生乾き臭を調べ、その結果を表1に示した。また、洗濯用助剤はその繰り返し使用適正を調べるために、初回と15回後の比較を行った。
洗濯物 投入時の重量 1.6kg
脱水後の重量 2.1kg
洗濯に用いた水量 50リットル
市販の液体中性洗剤 50g
【0030】
【0031】
表1より、洗濯用助剤1及び洗濯用助剤2を併用した場合では、初回及び繰り返し使用によっても、カルキ臭および生乾き臭は抑制されることが判明した。洗濯用助剤3では、カルキ臭は防止できているが、繰り返し使用における生乾き臭に問題を残した。一方、比較洗濯用助剤1では、カルキ臭が残りかつ繰り返し使用により生乾き臭の抑制効果が薄れて、問題である。また比較洗濯用助剤2では、カルキ臭は抑制できるものの、生乾き臭には効果が無かった。
本発明によって、洗濯物のカルキ臭やカビ臭、生乾きによる異臭を抑制し、繰り返し使用においても寿命の長い洗濯用助剤組成物及び洗濯用助剤を提供することができた。