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特開2022-186070位置情報算出装置、および、位置情報算出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186070
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】位置情報算出装置、および、位置情報算出方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20221208BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20221208BHJP
   G08G 1/0962 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G01C21/28
G01C21/26 A
G08G1/0962
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094099
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間嶋 義喜
(72)【発明者】
【氏名】小林 広幸
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 達哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紀康
(72)【発明者】
【氏名】服部 陽平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博章
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129AA08
2F129BB02
2F129BB15
2F129BB34
2F129GG17
2F129GG18
2F129HH20
2F129HH21
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF07
5H181FF32
(57)【要約】
【課題】GNSSのような測位技術を使用しなくても移動体の位置を速く高精度に算出する。
【解決手段】実施形態の位置情報算出装置は、移動体の外部環境をセンサによってセンシングすることで得られるセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、前記センサ情報から、予め設定された所定のランドマークを検出して第1のセンサランドマーク情報を取得するランドマーク検出部と、前記ランドマークと位置情報が紐づけられた第2のセンサランドマーク情報を予め格納しているランドマーク辞書部と、前記ランドマーク辞書部を用いた検索によって、前記第1のセンサランドマーク情報における前記ランドマークに紐づけられた前記位置情報を取得するランドマーク検索部と、前記ランドマークの前記位置情報に基づいて、前記移動体の位置を算出する移動体位置算出部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の外部環境をセンサによってセンシングすることで得られるセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、
前記センサ情報から、予め設定された所定のランドマークを検出して第1のセンサランドマーク情報を取得するランドマーク検出部と、
前記ランドマークと位置情報が紐づけられた第2のセンサランドマーク情報を予め格納しているランドマーク辞書部と、
前記ランドマーク辞書部を用いた検索によって、前記第1のセンサランドマーク情報における前記ランドマークに紐づけられた前記位置情報を取得するランドマーク検索部と、
前記ランドマークの前記位置情報に基づいて、前記移動体の位置を算出する移動体位置算出部と、を備える位置情報算出装置。
【請求項2】
前記センサ情報における前記外部環境の距離情報を取得する距離情報取得部を、さらに備え、
前記移動体位置算出部は、前記ランドマークの前記位置情報と前記距離情報に基づいて、前記移動体の位置を算出する、請求項1に記載の位置情報算出装置。
【請求項3】
前記移動体位置算出部は、前記ランドマークの前記位置情報と、前記距離情報を用いて算出した前記移動体から前記ランドマークまでの距離と、を用いて、前記移動体の位置を算出する、請求項2に記載の位置情報算出装置。
【請求項4】
前記センサ情報取得部は、前記移動体の進行方向あるいは逆方向をセンサによってセンシングすることで得られる前記センサ情報を取得し、
前記距離情報取得部は、前記センサ情報と同範囲をセンサによってセンシングすることで得られる前記距離情報を取得する、請求項2に記載の位置情報算出装置。
【請求項5】
前記ランドマーク検索部は、前記ランドマーク辞書部を用いた検索によって、前記第1のセンサランドマーク情報における前記ランドマークに最も類似したランドマークに紐づけられた前記位置情報を取得する、請求項2に記載の位置情報算出装置。
【請求項6】
前記ランドマーク検索部は、前記ランドマーク辞書部を用いた検索によって、前記第1のセンサランドマーク情報における前記ランドマークに紐づけられた前記位置情報を取得する場合に、前記距離情報を用いて、前記センサ情報において前記移動体からの距離が一定である範囲を検出対象候補とする、請求項2に記載の位置情報算出装置。
【請求項7】
前記ランドマーク検索部は、前記ランドマーク辞書部を用いた検索によって、前記第1のセンサランドマーク情報における前記ランドマークに紐づけられた前記位置情報を取得する場合に、現在時刻よりひとつ前の時刻の位置情報から、所定の範囲内の位置情報を持つ前記センサ情報を検索対象とする、請求項1に記載の位置情報算出装置。
【請求項8】
所定の位置測位技術に基づいて前記移動体の位置を測位する位置測位部を、さらに備え、
前記移動体位置算出部は、前記ランドマークの前記位置情報と、前記位置測位部によって得られた位置情報と、を用いて所定の四則演算をすることにより、前記移動体の位置を算出する、請求項2に記載の位置情報算出装置。
【請求項9】
前記移動体位置算出部は、前記ランドマークの前記位置情報と、前記位置測位部によって得られた位置情報と、に基づいて、前記移動体から前記ランドマークまでの距離を算出することで、前記距離情報取得部から取得した前記距離情報を補正する、請求項8に記載の位置情報算出装置。
【請求項10】
移動体の外部環境をセンサによってセンシングすることで得られるセンサ情報を取得するセンサ情報取得ステップと、
前記センサ情報から、予め設定された所定のランドマークを検出して第1のセンサランドマーク情報を取得するランドマーク検出ステップと、
前記ランドマークと位置情報が紐づけられた第2のセンサランドマーク情報を予め格納しているランドマーク辞書部を用いた検索によって、前記第1のセンサランドマーク情報における前記ランドマークに紐づけられた前記位置情報を取得するランドマーク検索ステップと、
前記ランドマークの前記位置情報に基づいて、前記移動体の位置を算出する移動体位置算出ステップと、を備える位置情報算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、位置情報算出装置、および、位置情報算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道車両や自動車、ロボットなどの移動体の自動運転、自動走行に向けて、移動体の位置(以下、「自己位置」ともいう。)を高精度に検知することが求められている。
【0003】
自己位置を精度良く検知する技術として、例えば、保守の必要な地上設備を設置せず、GNSS(Global Navigation Satellite System)を用いて位置を測位する技術がある。また、トンネルや地下などのGNSS情報を取得できない環境では、車輪径と車輪回転数などに基づいて移動距離を求めることで自己位置を検知する技術が提案されている。また、車両に搭載された撮像部により走行車両の前方、後方、または周囲を撮影した画像を、位置情報が紐づいた参照用画像と照合し、自己位置を推定する技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-98363号公報
【特許文献2】特開2012-208525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、例えば、膨大な参照用画像を絞り込むためにGNSSや自律航法を併用する場合、高精度な位置測位技術が必須となる。また、車輪径と車輪回転数などに基づいて移動距離を求めることで自己位置を検知する技術では、車輪の空転時に誤差が大きくなるという問題がある。また、位置情報が紐づいた参照用画像を用いる技術では、参照用画像が多く、高速に走行している車両の位置情報を遅延なく算出することが困難な場合があるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、GNSSのような測位技術を使用しなくても移動体の位置を速く高精度に算出可能な位置情報算出装置、および、位置情報算出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の位置情報算出装置は、移動体の外部環境をセンサによってセンシングすることで得られるセンサ情報を取得するセンサ情報取得部と、前記センサ情報から、予め設定された所定のランドマークを検出して第1のセンサランドマーク情報を取得するランドマーク検出部と、前記ランドマークと位置情報が紐づけられた第2のセンサランドマーク情報を予め格納しているランドマーク辞書部と、前記ランドマーク辞書部を用いた検索によって、前記第1のセンサランドマーク情報における前記ランドマークに紐づけられた前記位置情報を取得するランドマーク検索部と、前記ランドマークの前記位置情報に基づいて、前記移動体の位置を算出する移動体位置算出部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態にかかる鉄道用位置情報算出装置の概要構成ブロック図の一例を示す図である。
図2】第1実施形態にかかる鉄道用位置情報算出装置の機能構成ブロック図の一例を示す図である。
図3】第1実施形態にかかる鉄道用位置情報算出装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態にかかる鉄道用位置情報算出装置のセンサ情報から検出対象である設備を検出する処理の一例の説明図である。
図5】第1実施形態にかかる鉄道用位置情報算出装置の設備辞書部の一例を示す図である。
図6】第1実施形態にかかる鉄道用位置情報算出装置の設備辞書部から各抽出領域の位置情報を検索する処理の一例の説明図である。
図7】第1実施形態にかかる鉄道用位置情報算出装置の距離情報の一例の説明図である。
図8】第1実施形態の変形例にかかる鉄道用位置情報算出装置の処理の流れの一例を示す図である。
図9】第2実施形態にかかる鉄道用位置情報算出装置の機能構成ブロック図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の位置情報算出装置、および、位置情報算出方法の実施形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および、縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある場合がある。また、図において情報の流れを示す矢印がある場合、その矢印は主な情報の流れを示すものであり、矢印のない部分を情報が流れてもよい。
【0010】
また、以下の実施形態では、移動体として、鉄道車両を例にとるが、これに限定されない。本発明は、自動車やロボットなどの他の移動体にも適用できる。また、移動体の位置算出のためのランドマークとして、鉄道施設及び設備を例にとるが、これに限定されない。ランドマークとして、山や陸橋などの鉄道施設及び設備以外のものを採用してもよい。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の鉄道用位置情報算出装置1の概要構成ブロック図である。鉄道車両RV(以下、単に「車両」ともいう。)に搭載された鉄道用位置情報算出装置1は、センサ10と、位置情報算出装置20と、インターフェイス30と、を備える。
【0012】
センサ10は、走行線路Rを走行する鉄道車両RVの進行方向あるいは逆方向の車両外部環境をセンシングするセンサ機器の一例である。位置情報算出装置20は、センサ10によるセンシングによって取得した車両外部環境のセンサ情報と距離情報に基づき車両の自己位置を算出する。インターフェイス30は、位置情報算出装置20によって算出された車両の自己位置を外部に出力する。
【0013】
図2は、第1実施形態の鉄道用位置情報算出装置1の機能構成ブロック図である。位置情報算出装置20は、処理部210と、記憶部220と、を備える。処理部210は、各種情報処理を実行する。処理部210は、機能構成として、センサ情報取得部20Aと、設備検出部20B(ランドマーク検出部)と、設備検索部20C(ランドマーク検索部)と、距離情報取得部20Eと、自己位置算出部20Fと、を備える。記憶部220は、例えば、設備辞書部20D(ランドマーク辞書部)を備える。
【0014】
センサ情報取得部20Aは、鉄道車両RVの外部環境をセンサ10によってセンシングすることで得られるセンサ情報を取得する。例えば、センサ情報取得部20Aは、鉄道車両RVの進行方向あるいは逆方向をセンサによってセンシングすることで得られるセンサ情報を取得する。
【0015】
設備検出部20Bは、センサ情報から、予め設定された所定の設備を検出してセンサ設備情報(第1のセンサランドマーク情報)を取得する。
【0016】
設備検索部20Cは、設備辞書部20Dを用いた検索によって、センサ設備情報における設備に紐づけられた位置情報を取得する。例えば、設備検索部20Cは、設備辞書部20Dを用いた検索によって、センサ設備情報における設備に最も類似した設備に紐づけられた位置情報を取得する。
【0017】
また、例えば、設備検索部20Cは、設備辞書部20Dを用いた検索によって、センサ設備情報における設備に紐づけられた位置情報を取得する場合に、距離情報を用いて、センサ情報において鉄道車両RVからの距離が一定である範囲を検出対象候補とする。
【0018】
また、例えば。設備検索部20Cは、設備辞書部20Dを用いた検索によって、センサ設備情報における設備に紐づけられた位置情報を取得する場合に、現在時刻よりひとつ前の時刻の位置情報から、所定の範囲内の位置情報を持つセンサ情報を検索対象とする。
【0019】
距離情報取得部20Eは、センサ情報における外部環境の距離情報を取得する。つまり、距離情報取得部20Eは、センサ10によってセンシングされた情報に含まれる車両から設備までの距離情報を取得する。また、例えば、距離情報取得部20Eは、センサ情報と同範囲をセンサによってセンシングすることで得られる距離情報を取得する。
【0020】
自己位置算出部20Fは、設備の位置情報に基づいて、鉄道車両RVの位置を算出する。例えば、自己位置算出部20Fは、設備の位置情報と設備までの距離情報から車両の自己位置を算出する。また、例えば、自己位置算出部20Fは、設備の位置情報と、距離情報を用いて算出した鉄道車両RVから設備までの距離と、を用いて、鉄道車両RVの位置を算出する。
【0021】
インターフェイス30は、車両の自己位置を出力する装置の一例である。ここで、車両の自己位置を視覚的に判別するためにセンサ情報取得部20Aのセンサ情報や距離情報取得部20Eの距離情報を一部若しくは全て併用して各種情報の表示を行っても良い。
【0022】
各部20A、20B、20C、20E、20Fのうち一部若しくは全ては、例えば、鉄道車両RVが有するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサによって鉄道車両RVが有する記憶装置に記憶されたソフトウェアが実行されることによって実現される。
【0023】
また、各部20A、20B、20C、20E、20Fのうち一部若しくは全ては、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路基板であるハードウェアによって実現されても良い。または、プロセッサによって実行されるソフトウェア、および、ハードウェアの協働によって実現されても良い。
【0024】
記憶部220は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)、SDカード等の不揮発性の記憶媒体、および、RAM(Random Access Memory)、レジスタ等の揮発性の記憶媒体を含む。そして、記憶部220は、鉄道車両RVが有するプロセッサが実行するプログラム等の各種情報を記憶する。
【0025】
次に、図3を用いて、第1実施形態にかかる鉄道用位置情報算出装置1の処理の流れの一例について説明する。図3は、第1実施形態にかかる鉄道用位置情報算出装置1の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0026】
ステップS1では、センサ情報取得部20Aは、センサ10によりセンシングされたセンサ情報を取得する。取得されるセンサ情報は、例えば、可視光画像(RGB(Red,Green,Blue)画像、グレースケール画像等)や距離情報などが挙げられる。可視光画像は、例えば、単眼カメラや単眼カメラを組み合わせた複眼カメラ、ステレオカメラから取得される。また、距離情報は、複眼カメラやステレオカメラ、レーザを投光し受光位置や光が返ってくる時間を計測することで対象物の位置情報を取得するレーザセンサ、LiDAR(Light Detection And Ranging)等から取得される。
【0027】
また、可視光画像を入力として距離情報を取得するアンサンブル学習やSVM(Support Vector Machine)等の機械学習手法、DNN(Deep Neural Network)やGNN(Graph Neural Network)、GAN(Generative Adversarial Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、metric learningを活用した深層学習手法、強化学習手法およびそれらを組み合わせた手法等を使用しても良い。
【0028】
可視光画像は、所定の解像度(VGA(Video Graphics Array)、HD(High definition)、フルHD、2k、4kなど)で取得され、画素ごとに所定のビットカラー(8ビットカラー、24ビットカラー、48ビットカラーなど)で表現された値が格納されている。複眼カメラを用いて可視光画像を取得した場合、片方のカメラから取得した可視光画像を用いてもよく、また、両方の画像を合成することで得られる可視光画像を用いてもよい。
【0029】
距離情報は、可視光画像と同様の解像度を持つ距離画像で取得してもよく、また、距離を表す単位として所定の長さの単位(cm,m、kmなど)に変換された値を用いても良い。レーザを投光して距離計測する装置を用いた距離情報では、投光位置によって一部の画素が獲得できないことがある。その場合、得られた周辺の画素情報を用いて画素を獲得してもよい。例えば、周辺画素の平均値や中央値などを代わりの画素として用いてもよい。第1実施形態では、複眼カメラで撮影され合成されたRGB画像と、複眼カメラで取得されたRGB画像と同解像度の距離画像を前提に説明を行う。
【0030】
次に、ステップS2では、設備検出部20Bは、ステップS1で取得したセンサ情報から検出対象となっている設備の検出を試み、検出できなかった場合は(No)、ステップS8に移行する。検出できた場合は(Yes)、ステップS3に移行する。図4(a)~(c)は、取得したセンサ情報C1から検出対象となっている設備を発見し、対象設備のセンサ情報を抽出する処理の一例の説明図である。ここで、発見とは、センサ情報を入力とすることで、多次元平面における対象設備の範囲あるいは領域の座標情報と、その設備の名称を取得する処理を指す。また、抽出とは、取得した座標情報に基づき、その対象設備の範囲のセンサ情報を取得する処理を指す。さらに、検出とは、発見処理した後に抽出処理を行う処理を指す。
【0031】
また、センサ情報C1とは、鉄道車両RVの進行方向あるいは逆方向の車両外部環境をセンシングした情報である。ここでは、RGB画像を例に挙げているため、センサ情報の次元は2次元で、センサ情報は2次元平面の情報となる。検出対象は、一例としてトンネルT、標識Sを設定し、センサ情報取得部20Aに備えられたアルゴリズムを用いてそれらの対象設備を発見している。
【0032】
センサ設備座標情報DC1、DC2は、センサ情報を構成する最小単位(ここでは画素)の座標軸(ここではx軸X、y軸Y)に従って取得したトンネルTと標識Sの座標情報である。取得される座標情報の形式は座標軸に依存し、例えば2次元平面上の矩形により発見する場合、矩形の左上位置のx座標、y座標、矩形の右下位置のx座標、y座標をセンサ設備情報として取得する。
【0033】
また、矩形の右下位置の座標の代わりに、矩形の左上位置の各座標からの縦幅の長さhと横幅の長さwを取得しても良い。また、2次元平面上のポリゴンを用いた領域により発見する場合、ポリゴンを構成する点ごとにx座標とy座標を取得してもよい。また、矩形や領域を発見するアルゴリズムとして、アンサンブル学習やSVM等の機械学習手法、DNNやGNN、GAN、RNN、metric learningを活用した深層学習手法、強化学習手法およびそれらを組み合わせた手法等を使用しても良い。ここでは、矩形での取得結果を一例として示している。
【0034】
なお、検出対象に含まれる設備を検出する場合、複数検出した内一つだけ後段に結果を入力しても良く、全ての検出結果を入力しても良い。その場合、例えば、DNNの使用時等で、検出の信頼度が0%~100%の範囲で得られるのであれば、その信頼度に基づいて、閾値や比較によって、後段に結果を入力する設備を選ぶようにすればよい。
【0035】
ステップS3では、設備検索部20Cは、ステップS2で取得したセンサ設備情報の位置情報を、センサ設備情報と位置情報が紐づいた辞書データから取得する。図5は、設備辞書部20Dにある辞書データ(第2のセンサランドマーク情報)の一例を示す図である。設備辞書部20Dは、センサ設備情報とそれに紐づけられた位置情報を格納している。
【0036】
図6(a)~(c)は、設備辞書部20Dにある辞書データを用いて、取得したセンサ設備情報を入力とし、センサ設備情報の位置情報を取得する検索処理の一例を示す説明図である。ここで、検索にかけるセンサ設備情報は、抽出した一つのセンサ設備情報の一部分でもよく、複数抽出した場合はそのうちの一部でもよい。また、検索結果として得られる抽出領域ごとの位置情報は、緯度情報および経度情報でも良く、あるいは、キロ程情報でも良い。
【0037】
設備辞書部20Dに格納される辞書データとして、関係データベースやオブジェクト関係データベース、ドキュメント指向データベース、グラフ指向データベース等を使用しても良く、また、検索処理にDNNやGNNを活用した深層学習手法等を使用しても良く、また、センサ設備情報同士の特徴点マッチング手法を使用しても良い。例えば、辞書データに格納されているセンサ設備情報をDNNやGNNを活用した深層学習手法を用いて、高次元に圧縮して保存しても良い。また、入力するセンサ設備情報と比較する際にDNNやGNNを活用した深層学習手法を用いて、ユークリッド距離やマハラノビス距離、グラフ距離、コサイン類似度等の特定の距離空間における尺度を使用しても良い。
【0038】
設備辞書部20Dに格納される辞書データを用いて検索する際、辞書データに含まれる全てのデータを検索対象としても良く、また、所定の基準に従う位置情報を持つセンサ設備情報に限定しても良い。例えば、緯度情報と経度情報を位置情報として持つ辞書データを使用し、現在時刻をt=1とすると、ひとつ前の時刻であるt=0での位置情報から緯度0.xx、経度0.yy以内の位置情報を持つセンサ設備情報を、検索範囲とする。また、キロ程情報を位置情報として持つ辞書データを使用する場合、同様に現在時刻をt=1とすると、ひとつ前の時刻であるt=0での位置情報からzzkm以内の位置情報を持つセンサ設備情報を、検索範囲とする。このとき、検索結果として位置情報を得られなかった場合、基準範囲を拡大することで検索範囲を広げても良い。
【0039】
図3に戻って、ステップS4では、距離情報取得部20Eは、センサ10によりセンシングされた距離情報を取得する。図7は、センサ10から取得した距離情報の一例を示す図である。ここでは、トンネルの奥ほど自車からの距離が遠く、トンネルの奥から離れている部分ほど自車からの距離が近い。なお、黒色ほど自車からの距離が遠く、白色ほど自車からの距離が近い表示としてもよい。また、距離の区別を距離d1~d4と4段階で示し、距離d1が自車から一番遠い領域であることを表し、距離d4が自車に一番近い領域であることを表す。また、図にあるトンネルTの出入口や標識Sは、垂直に設置されているため自車からの距離が一定(ほぼ一定を含む。)であることを表す。
【0040】
図3に戻って、ステップS5では、自己位置算出部20Fは、ステップS4で取得した距離情報を用いて、自車から発見した設備までの距離を算出する。例えば、可視光画像と距離情報が同解像度の画像で構成される場合、発見したセンサ設備情報の座標位置と同じ座標位置を距離情報から取得し、その範囲内にある距離値の平均値や中央値、最頻値などの代表値を用いて、自車から設備までの距離を算出する。
【0041】
ステップS6では、自己位置算出部20Fは、ステップS3で取得したセンサ設備情報の位置情報と、ステップS5で算出した自車からセンサ設備情報までの距離を用いて、自車の位置情報を算出する。位置情報が緯度情報と経度情報の場合、自車からセンサ設備情報までの距離を緯度情報と経度情報に変換し、四則演算を行う。位置情報がキロ程情報の場合、予め路線の始発駅停車中に鉄道車両RVの位置を初期位置として車両停止位置のキロ程に設定する。始発駅出発後は、前記車両停止位置のキロ程に、移動距離を加算して車両位置を算出する。いずれの駅に停車しているかの情報は、例えば、運転士による入力操作によって取得しても良く、また、鉄道車両RVの列車番号と運行ダイヤの情報を取得し、時刻情報に基づいて特定しても良い。これを踏まえて、自車からセンサ設備情報までの距離をキロ程に変換し、四則演算を行う。
【0042】
ステップS7では、ステップS6で算出した自車の位置情報を外部装置であるインターフェイス30に出力する。このとき、予めセンサ情報とセンサ設備情報と距離情報を保存しておき、自車の位置情報と合わせてその一部分あるいは全てをインターフェイス30に出力しても良い。
【0043】
ステップS8では、処理部210は、自車の位置情報を算出する処理の終了が指示されたか否かを判断する。処理の終了が指示された場合(ステップS8:Yes)、新たなセンサ情報の取得を行わず、処理を終了させる。一方、処理の継続が指示された場合(ステップS8:No)、ステップS1に戻り、新たなセンサ情報を取得する。
【0044】
このように、第1実施形態にかかる鉄道車両RVによれば、GNSSのような測位技術を使用しなくても移動体の位置を速く高精度に算出できる。具体的には、鉄道車両RVの進行方向あるいは逆方向をセンシングして得られるセンサ情報を用いて、発見したセンサ設備情報の位置情報を辞書データにより取得し、設備までの距離情報と併用することで、自車の自己位置を算出することが可能となる。
【0045】
また、従来技術で、位置情報が紐づいた参照用画像を用いる手法では、参照用画像が多く、高速に走行している車両の位置情報を遅延なく算出することが困難な場合があるという問題がある。一方、本実施形態の手法によれば、設備を検出すること等により、処理が軽く済み、高速かつ高精度な自己位置算出を実現できる。
【0046】
(第1実施形態の変形例1)
以上の第1実施形態においては、鉄道車両RVの進行方向あるいは逆方向をセンシングして得られるセンサ情報を用いて、発見したセンサ設備情報の位置情報を辞書データにより取得し、設備までの距離情報と併用することで、自車の自己位置を算出した。そして、可視光画像内からセンサ設備情報を発見する際、取得したセンサ情報をそのまま入力させていたが、この変形例1では、距離情報を事前に取得し、その情報に基づいた検出範囲の絞り込みを行うことで計算効率を向上させることができる。
【0047】
図8に、センサ情報から対象設備を検出する際に検出範囲を絞り込む場合のフローチャートを示す。ステップS11は、図3のステップS1と同様である。
【0048】
次に、ステップS12では、距離情報取得部20Eは、センサ10によりセンシングされた距離情報を取得する。
【0049】
次に、ステップS13では、設備検出部20Bは、ステップS11で取得したセンサ情報とステップS12で取得した距離情報を併用して、検出対象となっている設備の検出を試み、検出できなかった場合は(No)、ステップS18に移行する。検出できた場合は(Yes)、ステップS14に移行する。
【0050】
センサ情報と距離情報が同解像度の画像である場合、距離情報内で表現される設備の座標範囲の距離値は一定であるため、その座標範囲を用いてセンサ情報の検出範囲を限定する。それによって、距離情報によってセンサ情報内の検出範囲を絞り込むことができる。
【0051】
また、センサ情報から対象設備を検出する際のアルゴリズムとして、座標範囲を絞り込んだ距離情報を用いても良い。
【0052】
ステップS14~S18は、図3のステップS3、S5~S8と同様である。
【0053】
(第1実施形態の変形例2)
自己位置算出部20Fは、上述の距離情報を用いずに、設備検索部20Cによって取得された設備の位置情報と、参照用画像を用いて予め作成された自己位置算出用のAI(Artificial Intelligence)学習モデルと、に基づいて、自己位置を算出するようにしてもよい。
【0054】
これによれば、設備の位置情報を用いないでAI学習モデルに基づいて自己位置を算出する手法と比べて、処理が有意に軽く済むとともに、高精度な処理結果を得ることができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、鉄道用位置情報算出装置1に含まれる位置情報算出装置20内に位置測位部20Gを更に備え、位置測位技術との併用によりさらに高精度に自己位置を算出する例である。以下の説明では、第1実施形態と同様の事項については説明を適宜省略する。
【0056】
背景として、搭載する車両に応じて、より高精度に自己位置を同定したい場合がある。例えば、鉄道車両や自動車などの安全を第一とする車両の自動運転等の場合、走行車両の自己位置を常に精度良く監視しておく必要がある。第2実施形態では、位置情報算出装置20内に位置測位部20Gを更に備えることで、車両の自己位置の精度をさらに向上させる一例を示す。
【0057】
図9は、第2実施形態にかかる鉄道用位置情報算出装置1(図1)の機能構成ブロック図の一例を示す図である。図9に示すように、第2実施形態では、鉄道車両RVは、センサ10、位置情報算出装置20、インターフェイス30を備え、位置情報算出装置20内には、鉄道車両RVの走行位置を測位する位置測位部20Gを更に備える。ここで、位置測位部20Gには、速度発電機(TG)や衛星測位システム(GNSS)等の位置測位技術を用いる。
【0058】
つまり、位置測位部20Gは、所定の位置測位技術に基づいて鉄道車両RVの位置を測位する。そして、自己位置算出部20Fは、設備の位置情報と、位置測位部20Gによって得られた位置情報と、を用いて所定の四則演算をすることにより、鉄道車両RVの位置を算出する。以下、具体的に説明する。
【0059】
図9の自己位置算出部20Fと位置測位部20Gによって、車両の位置情報を複数取得することができる。第2実施形態では、それぞれの位置情報を四則演算等によって合成することで、より高精度に車両の位置情報を算出する。四則演算とは例えば、平均値や中央値を算出しても良く、所定の基準以上の位置情報を棄却しても良い。その場合、事前に所定の基準を設定する。所定の基準とは、例えば、現在時刻よりひとつ前の時刻の車両の位置情報が緯度xx°、経度yy°であり、現在時刻の自己位置算出部20Fによる位置情報が緯度xx+20°、経度yy+20°、位置測位部20Gによる位置情報が緯度xx+1°、経度yy+1°、である場合を想定する。また、所定の基準を、現在時刻の位置情報とひとつ前の時刻の位置情報の誤差が緯度5°、経度5°以内とする。このとき、自己位置算出部20Fによる位置情報が所定の基準より著しく逸脱しているため棄却され、位置測位部20Gによる位置情報をインターフェイス30に出力する位置情報とする。
【0060】
位置測位部20Gにおいて併用して取得される速度、あるいは加速度の精度は、取得環境に大きく依存する。そのため、ふたつ前の時刻に算出された自己位置と、ひとつ前の時刻に算出された自己位置と、センサ情報C1から取得した各時刻をもとに加速度、あるいは速度を算出し、それらを現在時刻の自己位置を算出する際の補正値として使用しても良い。例えば、走行車両のふたつ前の時刻と位置情報をt=0と緯度x0°、経度y0°とし、ひとつ前の時刻と位置情報をt=1と緯度x1°、経度y1’°とし、現在時刻をt=2とする。このとき、ふたつ前の時刻とひとつ前の時刻とそれぞれの位置情報から移動時間t’と移動距離dを求め、それらから速度v、あるいは加速度aを算出することで、現在時刻t=2の位置測位部20Gの速度、あるいは加速度を補正する値として使用することができる。補正値としての利用は、自己位置が算出される度に使用しても良く、所定の基準に基づき使用の可否を判断しても良い。また、平均値や中央値などの四則演算を用いて算出した速度、あるいは加速度、またはその両方を使用しても良い。
【0061】
(第2実施形態の変形例)
また、例えば、自己位置算出部20Fは、設備の位置情報と、位置測位部20Gによって得られた位置情報と、に基づいて、鉄道車両RVから設備までの距離を算出することで、距離情報取得部20Eから取得した距離情報を補正するようにしてもよい。以下、具体的に説明する。
【0062】
以上の第2実施形態においては、位置情報算出装置20内に位置測位部20Gを更に備え、位置測位技術との併用により、さらに高精度な位置情報を算出した。一方で、設備検索部20Cから取得したセンサ情報に含まれるセンサ設備情報の位置情報と、位置測位部20Gから取得した位置情報を用いて、距離情報取得部20Eから取得した距離情報を補正することが可能となる。例えば、設備検索部20Cから取得した位置情報と、位置測位部20Gから取得した位置情報を四則演算することにより、自車から検出した設備までの距離情報を算出する。この距離情報を用いることで、距離情報取得部20Eから取得した距離情報を補正することができる。
【0063】
また、自車の停止状態を判定するために、位置測位技術の速度、加速度、あるいは位置情報を用いることがある。その場合、ある時刻間において継続的に速度、加速度、あるいは位置情報を測位し、所定の基準に基づき停止しているかを判定するため、自車が停止していても精度良く測位することが求められる。そこで、第1実施形態および、第2実施形態で示した、ある時刻間における自車の速度、加速度、あるいは位置情報を用いることで、自車の停止状態を判定する。このとき、停止判定を実施する位置測位技術の速度、加速度、あるいは位置情報の補正値として使用しても良く、ある時刻間における自車の自己位置と四則演算することで判断しても良い。
【0064】
以上の説明のように、各実施形態の技術によれば、GNSSのような位置測位技術を併用せずとも自車の位置情報を算出することができる。また、位置測位技術と併用することで、複合的に自己位置を算出することができるようになるため、自車の位置情報をより高精度に算出することができる。さらに、位置測位技術の内部で使用される速度、加速度、または出力値である位置情報の補正、あるいは、フェールセーフ(位置算出手法が2つ以上あれば、1つ故障しても残りで対応可)として使用することも可能となる。
【0065】
なお、本実施形態で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供されるが、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良い。また、本実施形態で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。さらに、本実施形態で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
10…センサ、20…位置情報算出装置、20A…センサ情報取得部、20B…設備検出部、20C…設備検索部、20D…設備辞書部、20E…距離情報取得部、20F…自己位置算出部、20G…位置測位部、30…インターフェイス、210…処理部、220…記憶部、RV…鉄道車両
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9