(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186075
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】発光装置および測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20221208BHJP
H01S 5/183 20060101ALI20221208BHJP
H01S 5/02257 20210101ALI20221208BHJP
【FI】
G01S7/481 A
H01S5/183
H01S5/02257
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094115
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】曽根 秀倫
【テーマコード(参考)】
5F173
5J084
【Fターム(参考)】
5F173AC52
5F173MA10
5F173MB02
5F173MC17
5F173MD82
5F173ME02
5F173ME22
5F173ME31
5F173ME62
5F173ME86
5F173MF03
5F173MF28
5F173MF40
5J084AA05
5J084AA10
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA20
5J084BA36
5J084BA39
5J084BA40
5J084BA48
5J084BA49
5J084BB02
5J084BB27
5J084BB28
5J084EA01
(57)【要約】
【課題】発光装置の側方に出射するレーザ光を抑制する新たな構成を提供する。
【解決手段】発光装置10は、基板12と、基板上に載置された、レーザ光を発する光源14と、光源を囲むように設けられている枠部12cと、枠部の上部開口12dを覆い、レーザ光を透過させるカバー部材16と、枠部12cとカバー部材16とを接合する接合部材18と、を備える。接合部材18は、レーザ光を反射する光反射物質又はレーザ光を吸収する光吸収物質を有し、カバー部材の外周側面16aを覆っている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
基板上に載置された、レーザ光を発する光源と、
前記光源を囲むように設けられている枠部と、
前記枠部の上部開口を覆い、前記レーザ光を透過させるカバー部材と、
前記枠部と前記カバー部材とを接合する接合部材と、を備え、
前記接合部材は、レーザ光を反射する光反射物質又はレーザ光を吸収する光吸収物質を有し、前記カバー部材の外周側面を覆っている発光装置。
【請求項2】
前記光吸収物質は、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記光反射物質は、金属ハンダであることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記光源は、赤外光を発することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記光源は、VCSEL素子を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光装置と、
前記発光装置から出射され、対象物で反射されたレーザ光を受光する受光装置と、
を備える測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置に用いられる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、周囲に存在する物体までの距離を測定する装置として、LiDAR(Light Detection And Ranging)と呼ばれるシステムが考案されている。LiDARは、光源から物体に向かって光を照射し、物体からの反射光を計測し、物体までの距離や方向を測定する。また、LiDARに用いられる光源としてはレーザが知られている。例えば、特許文献1には、980nm帯の波長の光を放出する化合物半導体により構成されたVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のVCSEL素子は、カバー部材の内部をレーザ光の一部が伝播し、カバー部材の側面から側方に出射する可能性がある。そのため、VCSEL素子を光源として利用する場合にグレアが発生するおそれがある。また、VCSEL素子の側方に隣接して受光センサを配置したシステムでは、カバー部材の側面から側方に出射するレーザ光により受光センサの誤検知が発生するおそれがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところの一つは、発光装置の側方に出射するレーザ光を抑制する新たな構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の発光装置は、基板と、基板上に載置された、レーザ光を発する光源と、光源を囲むように設けられている枠部と、枠部の上部開口を覆い、レーザ光を透過させるカバー部材と、枠部とカバー部材とを接合する接合部材と、を備える。接合部材は、レーザ光を反射する光反射物質又はレーザ光を吸収する光吸収物質を有し、カバー部材の外周側面を覆っている。
【0007】
この態様によると、カバー部材から側方に出射するレーザ光を抑制できる。
【0008】
光吸収物質は、カーボンブラックであってもよい。これにより、カバー部材の外周側面からレーザ光が出射したとしても、接合部材が有するカーボンブラックで吸収されるため、発光装置の外部に漏れ出るレーザ光を抑制できる。
【0009】
光反射物質は、金属ハンダであってもよい。これにより、カバー部材の外周側面からレーザ光が出射したとしても、接合部材が有する金属ハンダで反射されるため、発光装置の外部に漏れ出るレーザ光を抑制できる。
【0010】
光源は、赤外光を発してもよい。これにより、全天候型のカメラの光源として利用し易くなる。
【0011】
光源は、VCSEL素子を有してもよい。これにより、比較的安価でレーザ光を遠方まで照射できる発光装置を実現できる。
【0012】
本発明の他の態様は測距装置である。この測距装置は、前述の発光装置と、発光装置から出射され、対象物で反射されたレーザ光を受光する受光装置と、を備えている。
【0013】
この態様によると、発光装置のカバー部材から側方に出射するレーザ光が抑制されるため、発光装置から出射したレーザ光がそのまま受光装置に入射することで発生する受光装置の誤検知を低減できる。
【0014】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を製造方法、灯具や照明などの装置、発光モジュール、光源などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発光装置の側方に出射するレーザ光を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態に係る発光装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】本実施の形態に係る測距装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る発光装置の概略構成を示す模式図である。発光装置10は、凹部12aが形成された基板12と、凹部12aの底部12bに載置された光源14と、光源14を囲むように設けられている矩形の枠部12cと、枠部12cの上部開口12dを覆うカバー部材16と、枠部12cとカバー部材16とを接合する接合部材18と、を備える。
【0019】
基板12は、窒化アルミニウムや酸化アルミニウムといった焼成が可能なセラミック基板が好ましい。また、本実施の形態に係る基板12は、板状の部材の一部に凹部が形成されており、底部12bと枠部12cとが一部品で構成されている。また、基板12の底部12bの表面や裏面には電極パターンが形成されている。この電極パターンと光源14の電極とが金などの給電用ワイヤ20で結合されている。
【0020】
光源14は、レーザ光を発する半導体発光素子であり、チップ接合材15により基板12の所定位置に固定されている。本実施の形態では、近赤外線から赤外線の波長の赤外光、具体的には、ピーク波長が780~2000nmの範囲にある赤外光を発する光源14であり、例えば、VCSEL素子が用いられる。VCSEL素子を用いることで、比較的安価でレーザ光を遠方まで照射できる発光装置を実現できる。また、赤外光を発する光源14は、全天候型のカメラの光源としての利用に適している。
【0021】
どのようなピーク波長の光を出射する半導体発光素子が好ましいかは、発光装置10の用途によって変わり得る。例えば、後述する測距装置の受光装置と一緒に発光装置10を用いる場合、光源14が発するレーザ光のピーク波長が850~950nmの範囲にある半導体発光素子を採用することで、受光装置が備える受光センサに比較的安価なシリコンデバイスを採用できる。なお、ピーク波長が1500~1600nmの範囲にある光を実現できる化合物半導体発光素子を光源として用いてもよい。
【0022】
カバー部材16は、レーザ光が透過する材料で構成されており、例えば、波長が780~2000nmの範囲にある光の透過率が80%以上、好ましくは85%以上の材料が好ましい。具体的には、サファイヤ、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスといった近赤外線や赤外線に対して透光性の材料が好ましい。
【0023】
接合部材18は、枠部12cとカバー部材16とを接合するとともに、カバー部材16の外周側面16aの少なくとも一部を覆っている。好ましくは、外周側面16aの全体が接合部材18に覆われているとよい。光源14から出射したレーザ光L1は、透光性のカバー部材16を透過する際に、一部のレーザ光L2がカバー部材16の内部を外周側面16aに向かって伝播する。そこで、外周側面16aを覆っている接合部材18は、レーザ光を反射する光反射物質又はレーザ光を吸収する光吸収物質を含有している。これにより、カバー部材16から側方に出射するレーザ光を抑制できる。
【0024】
接合部材18は、光吸収物質を母材に分散させたものであってもよい。母材は、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、低融点ガラス等である。また、光吸収物質は、波長が780~2000nmの範囲にある光の透過率が80%以下、好ましくは50%以下の材料であり、例えば、カーボンブラック、酸化タングステン、スズ添加酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)、アンチモン添加酸化スズ(ATO:Antimony Tin Oxide)、六ホウ化ランタン(LaB6)等である。これにより、カバー部材16の外周側面16aからレーザ光L2が出射したとしても、接合部材18が有するカーボンブラック等で吸収されるため、発光装置10の外部に漏れ出るレーザ光を抑制できる。
【0025】
また、接合部材18は、光反射物質として金属ハンダを有してもよい。金属ハンダは、例えば、金スズ(Au-Sn)ハンダ、スズ銀銅(Sn-Ag-Cu)ハンダ等である。これにより、カバー部材16の外周側面16aからレーザ光L2が出射したとしても、接合部材18が有する金属ハンダで反射されるため、発光装置10の外部に漏れ出るレーザ光を抑制できる。
【0026】
なお、
図1に示す発光装置10では、基板12の底部12bと枠部12cとが一部品で構成されている。この場合、電極パターンを基板12の底部12bに形成する必要があることから、キャビティ形状(凹部)を形成してから基板を焼成する必要がある。そのため、基板焼成時の収縮により寸法精度が低下する傾向がある。
【0027】
そこで、発光装置10の変形例として、平板状の基板を作成した後に基板の上に別部品の枠部を搭載して一体化した発光装置としてもよい。この場合、平板状の基板の材料は、窒化アルミニウムや酸化アルミニウムが好ましく、枠部の材料は、窒化アルミニウムや酸化アルミニウム、シリコンが好ましい。枠部と基板を別部品とすることで、焼成後に電極パターンを形成できるので、電極パターンの寸法精度が向上する。
【0028】
(測距装置)
次に、前述の発光装置の用途の一例として測距装置について説明する。本実施の形態に係る測距装置は、光を偏向して走査を実現する光偏向デバイスとしてのLiDARである。
図2は、本実施の形態に係る測距装置の概略構成を示す模式図である。
【0029】
図2に示す測距装置30は、筐体31の内部に、投光部32と、スキャン部34と、受光部36とを備える。スキャン部34は、ミラーモジュール38と、遮光板40と、モータ42とを有する。ミラーモジュール38は、光を反射する一対の偏向ミラーが両面に取り付けられた平板状の部材である。ミラーモジュール38は、回転中心がモータ42の回転軸Rに沿って固定されており、モータ42の駆動に従って回転する。なお、スキャン部は、回転タイプのミラーモジュール38だけでなく、揺動や振動するタイプの機構であってもよい。
【0030】
遮光板40は、ミラーモジュール38の上下方向の中心付近に、ミラーモジュール38と一体、かつ、板面が回転運動の回転軸Rと直行するように設けられた円形かつ板状の部材である。遮光板40には、光の透過を阻止する材料が用いられる。
【0031】
以下、ミラーモジュール38のうち、遮光板40より上側の反射部位を投光偏向部40a、遮光板40より下側の反射部位を受光偏向部40bという。また、ミラーモジュール38の反射面は、受光偏向部40bの方が投光偏向部40aより幅広に形成され、受光偏向部40bは、遮光板40の直径と等しい幅に、投光偏向部40aは、その半分程度の幅に設定されている。
【0032】
投光部32は、発光モジュール44を備える。発光モジュール44は、前述の発光装置10とレンズ46とが対向して配置されている。レンズ46は、発光装置10から発せられるレーザ光のビーム幅を絞るレンズである。発光モジュール44は、当該発光モジュール44から出力されるレーザ光Lが、直接、投光偏向部40aに入射されるように配置されている。
【0033】
受光部36は、受光素子48と、受光レンズ50と、折り返しミラー52とを備えている。受光素子48は、複数のフォトダイオードがアレイ状に配置されたものである。受光レンズ50は、受光偏向部40bで反射されたレーザ光を絞るレンズである。折り返しミラー52は、レーザ光の進行方向を変化させるミラーである。受光素子48は、折り返しミラー52の下部に配置される。
【0034】
折り返しミラー52は、受光偏向部40bから、受光レンズ50を介して入射する光が受光素子48に到達するように、光の経路を下方に略90°屈曲させるように配置されている。受光レンズ50は、受光偏向部40bと折り返しミラー52との間に配置される。受光レンズ50は、受光素子48に入射する光ビームのビーム径が、フォトダイオードの素子幅程度となるように絞る。
【0035】
本実施の形態に係る測距装置30は、筐体31の内部空間において、スキャン部34の遮光板40により、投光部32が設置される上側の投光用空間101と、受光部36が設置される下側の受光用空間102とに区分けされている。
【0036】
投光用空間101に配置されている発光モジュール44から出射したレーザ光Lは、投光偏向部40aに入射する。投光偏向部40aに入射したレーザ光Lは、ミラーモジュール38の回転角度に応じた方向に向けて反射し、
図2の紙面から手前の方向に出射される。ミラーモジュール38を介してレーザ光Lが照射される範囲が走査範囲である。
【0037】
ミラーモジュール38の回転位置に応じた所定方向(即ち、投光偏向部40aからの光の出射方向)に位置する物体で反射したレーザ光L'は、受光偏向部40bで反射し、受光レンズ50及び折り返しミラー52を介して受光素子48で受光される。
【0038】
そして、発光モジュール44から出射したレーザ光Lが物体で反射し、反射光(レーザ光L')として受光素子48に到達するまでの時間や、ミラーモジュール38の回転位置の情報に基づいて、計測回路にて演算することで物体までの距離や方向が算出される。そのため、発光モジュール44において迷光が発生し、レーザ光Lの一部がミラーモジュール38で反射されずに受光用空間102に直接到達してしまうと、実際には存在しない物体が至近距離で検出されたり、実際に存在しない方向で物体が検出されたりすることによる、検出性能の低下が起こり得る。
【0039】
しかしながら、本実施の形態に測距装置30は、
図1に示すように、発光装置10のカバー部材16から側方に出射するレーザ光が抑制されるため、発光装置10から出射したレーザ光がそのまま受光素子48に入射することで発生する受光部36の誤検知を低減できる。換言すると、投光用空間101と受光用空間102との間に隔壁を設けなくても、投光用空間101から受光用空間102へ迷光が向かわないようにできる。
【0040】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0041】
10 発光装置、 12 基板、 12a 凹部、 12b 底部、 12c 枠部、 12d 上部開口、 14 光源、 16 カバー部材、 16a 外周側面、 18 接合部材、 30 測距装置。