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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186081
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】コリオリ式流量計、診断装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/84 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
G01F1/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094124
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】水野 智国
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035AA02
2F035JA02
(57)【要約】
【課題】コリオリ式流量計の異常を適切に診断することが可能な技術を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る振動式測定装置15は、センサチューブ52,53と、センサチューブ52,53における加振器54により加振される箇所の上流側及び下流側に設けられ、センサチューブ52,53の相対変位に応じた信号を出力する振動ピックアップ55,56と、加振器54により一対のセンサチューブ52,53を振動させる際に振動ピックアップ55,56から出力される信号に基づき、センサチューブ52,53内に流れる被測定流体の質量流量を測定する流量演算部92と、加振器54によりセンサチューブ52,53を振動させる際に振動ピックアップ55,56から出力される信号の出力状態と、その信号の基準となる出力状態とに基づき、振動式測定装置15の異常に関する診断を行う自己診断部97と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のセンサチューブと、
前記一対のセンサチューブを相互に近接及び離間する方向に振動させる励振部と、
前記一対のセンサチューブにおける前記励振部により加振される箇所の上流側及び下流側に設けられ、前記一対のセンサチューブの相対変位に応じた信号を出力する振動センサと、
前記励振部により前記一対のセンサチューブを振動させる際に前記振動センサから出力される信号に基づき、前記一対のセンサチューブ内に流れる被測定流体の質量流量を測定する測定部と、
前記励振部により前記一対のセンサチューブを振動させる際に前記振動センサから出力される信号の出力状態と、その信号の基準となる出力状態とに基づき、コリオリ式流量計の異常に関する診断を行う診断部と、を備える、
コリオリ式流量計。
【請求項2】
前記測定部により測定される流体の質量流量に所定基準を超える変動があるか否かを判定する判定部を備え、
前記診断部は、前記判定部により所定基準を超える質量流量の変動がないと判定された場合に、前記診断を行う、
請求項1に記載のコリオリ式流量計。
【請求項3】
前記診断部は、前記測定部により被測定流体の質量流量が測定される際に前記励振部により前記一対のセンサチューブを振動させるための駆動周波数とは異なる駆動周波数を含む所定の駆動周波数帯で、前記一対のセンサチューブを振動させることにより、前記診断を行う、
請求項1又は2に記載のコリオリ式流量計。
【請求項4】
前記励振部及び前記振動センサは、それぞれ、コイルと磁石とを含み、
前記励振部は、そのコイルに通電しそのコイルと磁石とを近接及び離間させることにより、前記一対のセンサチューブを振動させ、
前記振動センサは、そのコイルと磁石とが近接及び離間することによりそのコイルに生じる起電力を信号として出力し、
前記診断部は、前記励振部及び前記振動センサのうちの何れか一方のコイルに通電させることにより前記一対のセンサチューブを振動させた際に他方のコイルから出力される信号の出力状態とその信号の基準となる出力状態とに基づき、前記診断を行う、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のコリオリ式流量計。
【請求項5】
前記何れか一方のコイルが通電したときの他方のコイルの前記基準となる出力状態を表すデータを記憶する記憶部を備え、
前記診断部は、前記記憶部に記憶される前記基準となる出力状態と、実際の前記他方のコイルの出力状態とを比較することにより、前記診断を行う、
請求項4に記載のコリオリ式流量計。
【請求項6】
前記基準となる出力状態には、所定の駆動周波数帯で前記何れか一方のコイルを通電させたときの前記他方のコイルの基準となる出力波形が含まれ、
前記診断部は、前記基準となる出力波形と、前記所定の駆動周波数帯で前記何れか一方のコイルを通電させたときの前記他方のコイルの実際の出力波形とを比較することにより、前記診断を行う、
請求項4又は5に記載のコリオリ式流量計。
【請求項7】
前記基準となる出力状態には、所定の駆動周波数帯で前記何れか一方のコイルを通電させたときの前記他方のコイルの基準となる出力値が含まれ、
前記診断部は、前記基準となる出力値と、前記何れか一方のコイルを前記所定の駆動周波数帯で通電させたときの前記他方のコイルの実際の出力値とを比較することにより、前記診断を行う、
請求項4乃至6の何れか一項に記載のコリオリ式流量計。
【請求項8】
前記基準となる出力状態には、インパルス信号で前記何れか一方のコイルを通電させたときの基準となる時系列での出力波形の振幅が含まれ、
前記診断部は、前記基準となる時系列での出力波形の振幅と、前記インパルス信号で前記何れか一方のコイルを通電させたときの前記他方のコイルの実際の時系列での出力波形の振幅とを比較することにより、前記診断を行う、
請求項4又は5に記載のコリオリ式流量計。
【請求項9】
前記基準となる出力状態には、インパルス信号で前記何れか一方のコイルを通電させたときの基準となる時系列での出力波形の周期が含まれ、
前記診断部は、前記基準となる時系列での出力波形の周期と、前記インパルス信号で前記何れか一方のコイルを通電させたときの前記他方のコイルの実際の時系列での出力波形の周期とを比較することにより、前記診断を行う、
請求項4、5、又は8に記載のコリオリ式流量計。
【請求項10】
前記診断部は、前記励振部及び前記振動センサごとに、そのコイルを通電させると共に、前記励振部及び前記振動センサごとのコイルを通電させたときの前記他方のコイルの出力に基づき、前記励振部及び前記振動センサの異常の有無を判定し、前記励振部及び前記振動センサに異常がある場合に、前記励振部及び前記振動センサの中から異常の箇所を特定する、
請求項4乃至9の何れか一項に記載のコリオリ式流量計。
【請求項11】
一対のセンサチューブと、前記一対のセンサチューブを相互に近接及び離間する方向に振動させる励振部と、前記一対のセンサチューブにおける前記励振部により加振される箇所の上流側及び下流側に設けられ、前記一対のセンサチューブの相対変位に応じた信号を出力する振動センサと、前記励振部により前記一対のセンサチューブを振動させると共に、前記振動センサから出力される信号に基づき、前記一対のセンサチューブ内に流れる被測定流体の質量流量を測定する測定部と、を有するコリオリ式流量計の異常に関する診断を行う診断装置であって、
前記励振部により前記一対のセンサチューブを振動させる際に前記振動センサから出力される信号の出力状態と、その信号の基準となる出力状態とに基づき、前記コリオリ式流量計の異常に関する診断を行う、
診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コリオリ式流量計等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、励振手段により一対のセンサチューブを相互に近接及び離間する方向に振動させ、一対のセンサチューブの相対変位を振動センサで検出し、その相対変位から一対のセンサチューブ内を流れる被測定流体の質量流量を測定するコリオリ式流量計が知られている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-209223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、励振手段や振動センサに含まれるコイルに断線等の異常が生じたり、センサチューブ自体の質量などのバランスをとるためにセンサチューブに取り付けられたカウンタウェイトの脱落等の異常が生じたりすると、質量流量の正確な測定が行えなくなる。また、例えば、仮に、上述のような異常が発生していることが判明したとしても、どの箇所で異常が生じているのかがわからず、異常箇所の特定に時間を要するという問題が生じ得る。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、コリオリ式流量計の異常を適切に診断することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
一対のセンサチューブと、
前記一対のセンサチューブを相互に近接及び離間する方向に振動させる励振部と、
前記一対のセンサチューブにおける前記励振部により加振される箇所の上流側及び下流側に設けられ、前記一対のセンサチューブの相対変位に応じた信号を出力する振動センサと、
前記励振部により前記一対のセンサチューブを振動させる際に前記振動センサから出力される信号に基づき、前記一対のセンサチューブ内に流れる被測定流体の質量流量を測定する測定部と、
前記励振部により前記一対のセンサチューブを振動させる際に前記振動センサから出力される信号の出力状態と、その信号の基準となる出力状態とに基づき、コリオリ式流量計の異常に関する診断を行う診断部と、を備える、
コリオリ式流量計が提供される。
【0007】
また、本開示の他の実施形態では、
一対のセンサチューブと、前記一対のセンサチューブを相互に近接及び離間する方向に振動させる励振部と、前記一対のセンサチューブにおける前記励振部により加振される箇所の上流側及び下流側に設けられ、前記一対のセンサチューブの相対変位に応じた信号を出力する振動センサと、前記励振部により前記一対のセンサチューブを振動させると共に、前記振動センサから出力される信号に基づき、前記一対のセンサチューブ内に流れる被測定流体の質量流量を測定する測定部と、を有するコリオリ式流量計の異常に関する診断を行う診断装置であって、
前記励振部により前記一対のセンサチューブを振動させる際に前記振動センサから出力される信号の出力状態と、その信号の基準となる出力状態とに基づき、前記コリオリ式流量計の異常に関する診断を行う、
診断装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上述の実施形態によれば、コリオリ式流量計の異常を適切に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ガス供給装置の構成の一例を示す図である。
図2】振動式測定装置の一例を示す外観図である。
図3】振動式測定装置の一例を示す外観図である。
図4】制御回路の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5】診断モードに関する制御処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
図6】振動式測定装置の正常時における振動ピックアップ(センサコイル)の振幅電圧の駆動周波数帯での波形の一例を示す図である。
図7】振動式測定装置の異常時における振動ピックアップの振幅電圧の駆動周波数帯での波形の一例を示す図である。
図8】振動式測定装置の異常時における振動ピックアップの振動電圧の駆動周波数帯での波形の他の例を示す図である。
図9】制御回路の機能構成の他の例を示す機能ブロック図である。
図10】診断モードに関する制御処理の他の例を概略的に示すメインフローチャートである。
図11】診断モードに関する制御処理の他の例を概略的に示すサブフローチャートである。
図12】診断モードに関する制御処理の他の例を概略的に示すサブフローチャートである。
図13】振動式測定装置の正常時において、印加対象のコイルにインパルス信号が印加されたときの出力対象のコイルの時系列での出力(電圧)の波形の一例を示す図である。
図14】振動式測定装置の異常時において、印加対象のコイルにインパルス信号が印加されたときの出力対象のコイルの時系列での出力(電圧)の波形の一例を示す図である。
図15】振動式測定装置の異常時において、印加対象のコイルにインパルス信号が印加されたときの出力対象のコイルの時系列での出力(電圧)の波形の他の例を示す図である。
図16】振動式測定装置の異常に関するアラートの出力方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0011】
[ガス供給装置の概要]
まず、図1を参照して、本実施形態に係る振動式測定装置15が適用されるガス供給装置10の概要について説明する。
【0012】
図1は、ガス供給装置10の構成の一例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、ガス供給装置10は、例えば、自動車11の燃料タンク12に所定のガスを供給するガス供給ステーション等に設置されている。所定のガスは、例えば、都市ガスを所定圧力に圧縮した圧縮天然ガス(CNG:Compressed Natural Gas)や高圧の水素ガス等である。
【0014】
ガス供給装置10は、図示しない、所定のガスを所定圧力に圧縮し加圧されたガスを生成する圧力発生ユニットと、圧力発生ユニットにより圧縮された所定のガスを燃料タンク12に供給するためのディスペンサユニット13と、を含む。
【0015】
ディスペンサユニット13は、ガス供給経路14と、振動式測定装置15と、制御弁17と圧力伝送器18と、充填ホース19と、三方弁20と、脱圧管路21と、ガス充填カップリング22と、を含む。
【0016】
ガス供給経路14は、ディスペンサユニット13の筐体内において、圧力発生ユニットから供給される所定のガスを充填ホース19に向けて供給する。ガス供給経路14には、上流側から順に、振動式測定装置15、ガス供給開閉弁16、制御弁17、及び圧力伝送器18等が配置されている。また、ガス供給経路14の下流側の端部には、充填ホース19が連通されている。
【0017】
振動式測定装置15(コリオリ式流量計の一例)は、ガス供給経路14を流れるガスの供給量(質量流量)を計測する質量流量計である。振動式測定装置15の詳細は後述する(図2図3参照)。
【0018】
ガス供給開閉弁16は、例えば、電磁弁であり、制御装置30の制御下で、ガス供給経路14の開閉を行う。
【0019】
制御弁17は、制御装置30の制御下で、下流側(被充填側)へ供給される所定のガスの流量や圧力を制御する。例えば、制御弁17は、制御装置30からの制御指令に応じて、弁開度を調整し燃料タンク12へ供給されるガス供給量を制御する。
【0020】
圧力伝送器18(圧力トランスミッタ)は、制御弁17により制御された、2次側(下流側)の所定のガスの圧力を測定する。
【0021】
充填ホース19は、ディスペンサユニット13の筐体から延び出すように設けられ、上述の如く、ディスペンサユニット13内のガス供給経路14と連通している。
【0022】
三方弁20は、例えば、制御装置30の制御下で駆動される電磁駆動式であり、充填ホース19の下流側の端部に設けられる。三方弁20は、充填ホース19が接続されたポートaと、脱圧管路21が接続されたポートbと、ガス充填カップリング22が接続されたポートcとを含む。三方弁20は、自動車11(燃料タンク12)への所定のガスの充填時に、ポートaとポートcとが連通された開弁状態に切り替えられる。また、三方弁20は、自動車11(燃料タンク12)への所定のガスの充填完了後の脱圧操作を行う際にポートbとポートcとが連通されるように切り替えられ、ガス充填カップリング22内の圧力が減圧される。
【0023】
圧力伝送器18は、三方弁20がポートaとポートcとが連通された開弁状態に切り替えられることにより、燃料タンク12に連通されたガス供給経路14の圧力を測定することで、間接的に燃料タンク12の残留圧力を測定することができる。
【0024】
脱圧管路21は、三方弁20を通じて、ガス充填カップリング22内の圧力を外部に逃がすために用いられる。
【0025】
ガス充填カップリング22は、自動車11の燃料タンク12と接続される管路41の先端に設けられるレセプタクル40と連結されることにより、三方弁20を通じた充填ホース19から燃料タンク12への燃料供給を可能にする。
【0026】
尚、自動車11の管路41に燃料タンク12から充填ホース19側への所定のガスの逆流を防止する逆止弁42が設けられる。
【0027】
また、ディスペンサユニット13は、制御装置30と、ボタンスイッチ31,32と、流量表示器33とを含む。
【0028】
制御装置30は、ガス供給装置に関する制御を行う。制御装置30の機能は、任意のハードウェア、或いは、任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現されてよい。例えば、制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置、ROM(Read Only Memory)等の補助記憶装置、及び外部との入出力用のインタフェース装置等を含むコンピュータを中心に構成される。制御装置30は、例えば、補助記憶装置にインストールされる各種プログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行することにより各種機能を実現する。
【0029】
制御装置30は、例えば、ボタンスイッチ31がオン操作されると、ガス供給開閉弁16の開制御、三方弁20の開弁状態への切替制御を行う。そして、制御装置30は、振動式測定装置15により測定される流量測定値、及び圧力伝送器18により測定された圧力測定値に基づき、制御弁17の弁開度制御を行うことで、燃料タンク12に所定の目標圧力に調整された所定のガスを充填させる。
【0030】
また、制御装置30は、例えば、振動式測定装置15及び圧力伝送器18から出力される流量及び圧力の検出信号に基づき、燃料タンク12に供給された、所定のガスの供給量及び供給圧力を演算する。
【0031】
また、制御装置30は、例えば、ボタンスイッチ32がオン操作されると、ガス供給装置10における自動車11(燃料タンク12)への所定のガスの充填の動作を停止(終了)させる。
【0032】
ボタンスイッチ31,32は、ユーザ(例えば、作業者等)がガス供給装置10による自動車11(燃料タンク12)への所定のガスの充填を開始及び停止させるために用いられる。ボタンスイッチ31,32によりユーザから受け付けられる入力に応じたオン・オフ状態に対応する信号は、制御装置30に取り込まれる。
【0033】
流量表示器33は、制御装置30の制御下で、ガス供給装置10から自動車11(燃料タンク12)への所定のガスの充填が行われている場合に、ガス供給装置10から自動車11(燃料タンク12)に現在供給されている所定のガスの流量を表示する。
【0034】
自動車11の燃料タンク12にガスを充填する際、まず、作業者は、ディスペンサユニット13の図示しない掛止部からガス充填カップリング22を外して自動車11のレセプタクル40に結合させる。そして、作業者は、ボタンスイッチ31をオン操作する。
【0035】
これにより、制御装置30は、ガス供給開閉弁16及び制御弁17を開弁させて三方弁20より上流のガス供給経路14を最大供給圧力(目標圧力)に昇圧させる。続いて、制御装置30は、ガス供給開閉弁16を閉弁させてから三方弁20を開弁状態(即ち、ポートa,cが連通する状態)に切替えて、ガス供給開閉弁16より下流のガス供給経路14に充填された所定のガスを燃料タンク12に供給する。
【0036】
尚、ガス供給経路14の所定のガスの圧力は、燃料タンク12の上流に設けられた逆止弁42の閉弁力(弁体を付勢する力)より充分大きい圧力値になるように設定される。これにより、逆止弁42の閉弁力に抗して、燃料タンク12に所定のガスを供給することができる。
【0037】
制御装置30は、ガス供給開閉弁16より下流側のガス供給経路14の圧力が燃料タンク12の圧力と均衡した状態になると、圧力伝送器18により測定された圧力測定値をメモリに記憶する。そして、制御装置30は、その圧力測定値に基づき、燃料タンク12の容積及び残留ガス量を演算し、燃料タンク12の容積及び残留ガス量に応じた制御則(一定圧力制御或いは一定流量制御)により制御弁17の弁開度を制御する。
【0038】
燃料タンク12へのガス供給が行われて圧力伝送器18により測定された圧力測定値が目標圧力に達すると、制御装置30は、ガス供給開閉弁16及び制御弁17を閉弁させた後、三方弁20を脱圧状態に切替えてガス充填カップリング22の圧力を減圧させる。これにより、作業者は、軽い力でガス充填カップリング22を自動車11のレセプタクル40から分離させることができる。
【0039】
その後、作業者は、ディスペンサユニット13のガス充填カップリング22を上述の掛止部に掛止させる。そして、ボタンスイッチ32がオンに操作されると、一連のガス充填作業が完了する。
【0040】
[振動式測定装置の詳細]
次に、図2図3を参照して、振動式測定装置15の詳細について説明する。
【0041】
図2図3は、振動式測定装置15の一例を示す外観図である。具体的には、図2は、振動式測定装置15の一例を示すの正面図であり、図3は、振動式測定装置15の一例を示す左側面図である。
【0042】
振動式測定装置15は、被測定流体の密度、及び密度を利用して質量流量を求めることができる。そのため、振動式測定装置15は、振動式密度計及びコリオリ式質量流量計として用いられる。振動式密度計とコリオリ式質量流量計とは、構成が同じであるため、本例では、コリオリ式質量流量計として利用する場合について詳細に説明する。
【0043】
図3図4に示すように、振動式測定装置15は、マニホルド51と、センサチューブ52,53と、加振器54と、振動ピックアップ55,56と、温度センサ57と、制御回路60とを含む。
【0044】
マニホルド51は、例えば、一の軸方向(左右方向)に細長い直方体形状の金属ブロックで構成され、一方の端部(右端部)の上面に流入口51aが設けられ、他方の端部(左端部)の上面に流出口51bが設けられる。そして、センサチューブ52,53における被測定流体の流入側の端部52a,53aが流入口51aに連通され、センサチューブ52,53における被測定流体の流出側の端部52b,53bが流出口51bに連通される。これにより、流入口51aから流入される被測定流体は、センサチューブ52,53を通過して流出口51bより外部に流出される。
【0045】
センサチューブ52,53は、マニホルド51の上面に接続される。センサチューブ52,53は、それぞれ、マニホルド51から略平行に延びる2本の管路(端部52a,52b、及び端部53a,53b)が先端部で曲線状(円弧状)の管路(中間部52c及び中間部53c)より接続される態様の逆U字形状を有する。
【0046】
加振器54(励振部の一例)は、センサチューブ52,53の円弧状の中間部52c,53c間に取り付けられる。センサチューブ52の先端に取り付けられる励振コイル54a(コイルの一例)と、センサチューブ53の先端に取り付けられるマグネット54b(磁石の一例)とを含む。加振器54は、制御回路60の制御下で、センサチューブ52,53を相互に近接・離間する方向に振動させる。
【0047】
具体的には、加振器54は、励振コイル54aに正負のある交番電圧(交流信号)が印加されて生じる磁界に対してマグネット54bが吸引或いは反発することで、センサチューブ52の中間部52cを水平方向(前後方向)に振動させる。一方、センサチューブ53には、その反力として同じ大きさの力が働き、センサチューブ53は、反対方向に振動する。
【0048】
振動ピックアップ55(振動センサの一例)は、センサチューブ52,53との流入側における相対的な振動状態を計測(検出)する。振動ピックアップ55は、例えば、変位検出器に相当し、センサチューブ52,53の流入側における相対変位を検出信号として検出する。振動ピックアップ55は、センサチューブ52に取り付けられるセンサコイル55a(コイルの一例)と、センサチューブ53に取り付けられるマグネット55b(磁石の一例)とを含む。振動ピックアップ55(センサコイル55a)により検出された検出信号は、制御回路60に入力される。
【0049】
振動ピックアップ55は、そのセンサコイル55a及びマグネット55bが流入側のセンサチューブ52及びセンサチューブ53の振動と共に近接及び離間する。そのため、センサコイル55aからは、流入側におけるセンサコイル55aとマグネット55bの変位量(変位速度)に応じて生じる起電力が検出信号として出力される。
【0050】
振動ピックアップ56(振動センサの一例)は、センサチューブ52,53の流出側における振動状態を計測(検出)する。振動ピックアップ56は、例えば、変位検出器に相当し、センサチューブ52,53の流出側における相対変位を検出する。振動ピックアップ56は、センサチューブ52に取り付けられるセンサコイル56aと、センサチューブ53に取り付けられるマグネット56bとを含む。振動ピックアップ56(センサコイル56a)により検出される検出信号は、制御回路60に入力される。
【0051】
振動ピックアップ56は、振動ピックアップ55と同様、センサコイル56a及びマグネット56bが流出側のセンサチューブ52,53の振動と共に、近接及び離間する。そのため、センサコイル56aからは、流出側におけるセンサコイル56aとマグネット56bの変位量(変位速度)に応じて生じる起電力が検出信号として出力される。
【0052】
図3に示すように、加振器54、振動ピックアップ55、及び振動ピックアップ56は、正面(前)から見て、センサチューブ52,53の中間位置を横切る縦線に対して対称に配置される。また、振動ピックアップ55、振動ピックアップ56は、加振器54を中心に対称に配置される。
【0053】
温度センサ57は、センサチューブ52,53の流入側の端部52a,53a或いはマニホルド51の流入口51a付近の温度を測定する。
【0054】
尚、温度センサ57は、省略されてもよい。
【0055】
制御回路60(診断装置の一例)は、振動式測定装置15に関する制御を行う。制御回路60の機能は、任意のハードウェア、或いは、任意のハードウェア及びソフトウェアの組み合わせ等により実現されてよい。例えば、制御回路60は、上述の制御装置30と同様、CPU、RAM等のメモリ装置、ROM等の補助記憶装置、及び外部との入出力用のインタフェース装置を含むコンピュータを中心に構成される。
【0056】
[制御回路の機能構成の一例]
次に、図4を参照して、振動式測定装置15の制御回路60の機能構成の一例について説明する。
【0057】
図4は、制御回路60の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0058】
図4に示すように、制御回路60は、ハードウェア構成として、バリア回路70と、信号処理回路80と、演算回路90と、電源回路110と、を含む。
【0059】
信号処理回路80は、振幅検出・励振検出部81と、励振制御部82と、温度測定部83とを含む。
【0060】
演算回路90は、機能部として、時間差演算部91と、流量演算部92と、アナログ出力部93と、パルス出力部94と、ヤング率演算部95と、診断モード判定部96と、自己診断部97と、記憶部98と、を含む。時間差演算部91、流量演算部92、アナログ出力部93、パルス出力部94、ヤング率演算部95、診断モード判定部96、及び自己診断部97等の機能は、例えば、補助記憶装置にインストールされるプログラムをメモリ装置にロードしCPU上で実行させることにより実現される。また、記憶部98は、例えば、補助記憶装置に規定される記憶領域により実現される。
【0061】
尚、記憶部98の機能は、演算回路90の外部記憶装置により実現されてもよい。
【0062】
電源回路110は、外部電源100から得られる電圧を制御し、信号処理回路80や演算回路90に電源電圧Vccを供給する。また、電源回路110は、演算回路90に対し所定のタイミングでリセット信号やリセット解除信号を出力することにより、適切なタイミングで演算回路90による流量演算処理等を行わせる。
【0063】
バリア回路70は、加振器54の励振コイル54a、振動ピックアップ55,56のセンサコイル55a,56a、温度センサ57等との間の各種信号に関する本質安全防爆構造を実現する。バリア回路70は、例えば、ツェナーダイオードや抵抗等の電圧・電流制限素子を含む。
【0064】
振幅検出・励振検出部81は、センサコイル55a,56aから取り込まれる検出信号(例えば、出力電圧)に基づき、センサチューブ52,53の振幅を検出する。また、振幅検出・励振検出部81は、振幅の検出結果に基づき、センサチューブ52,53が共振状態の振幅まで増幅されたか否かを検出したり、振幅検出結果等に応じて共振状態の振幅に制御するための励振信号を検出したりする。
【0065】
また、振幅検出・励振検出部81は、検出した励振信号を励振制御部82に出力する。
【0066】
また、振幅検出・励振検出部81は、検出結果からバリア回路70における電圧電流制限状態を制御したり、電源回路110からの電力供給を制御したりするための制御信号を生成し出力する。具体的には、振幅検出・励振検出部81は、センサチューブ52,53の振動を監視し、共振状態の振幅まで増幅されたか否かを判断する。その結果、振幅検出・励振検出部81は、充分な振幅が得られている場合、ハイレベル(H:High)信号を出力し、充分な振幅が得られていない場合、ローレベル(L:Low)信号を電源回路110に出力する。
【0067】
励振制御部82は、例えば、振幅検出・励振検出部81から入力される励振信号に応じて、加振器54の励振コイル54aに正負のある交番電圧を印加するための信号を生成し、バリア回路70を介して励振コイル54aに出力する。これにより、制御回路60は、加振器54を通じて、センサチューブ52,53を振動させることができる。
【0068】
温度測定部83は、温度センサ57により検出された温度信号から温度を測定し、測定された温度データを演算回路90(ヤング率演算部95)に出力する。
【0069】
尚、温度センサ57が省略される場合、温度測定部83は、省略される。
【0070】
時間差演算部91は、センサコイル55a,56aの検出信号に基づき、コリオリ力によって生じる流入側と流出側の信号の時間差を計測する。また、時間差演算部91は、ヤング率演算部95から得られるヤング率に基づいて、時間差を補正してもよい。時間差演算部91は、得られた時間差情報を流量演算部92に出力する。
【0071】
流量演算部92(測定部の一例)は、時間差演算部91から入力される時間差情報を流量に換算する。また、流量演算部92は、得られた流量情報をアナログ出力部93、診断モード判定部96、及び自己診断部97等に出力する。また、流量演算部92は、後述する電源回路110からのリセット解除信号の入力に応じて、流量演算処理を行う。
【0072】
アナログ出力部93は、流量演算部92から入力される瞬時流量に相当するアナログ信号111を生成する。また、アナログ出力部93は、瞬時流量をパルス出力部94に出力すると共に、得られたアナログ信号を、バリア回路70を介してアナログ信号111として出力する。
【0073】
パルス出力部94は、アナログ出力部93から入力される瞬時流量から積算流量に相当する流量パルスを生成する。また、パルス出力部94は、得られた流量パルスを、バリア回路70を介して流量パルス信号112として出力する。
【0074】
ヤング率演算部95は、上述の如く、時間差演算部91における時間差に補正を行うために、温度測定部83で測定された温度からヤング率を演算する。また、ヤング率演算部95は、得られたヤング率を時間差演算部91に出力する。
【0075】
尚、温度センサ57及び温度測定部83が省略される場合、ヤング率演算部95は省略される。
【0076】
流量計測時において、制御回路60によって加振器54が駆動され、センサチューブ52,53の振動特性(固有振動数)に応じた周期、振幅でセンサチューブ52,53の中間部52c,53cを振動させる。そして、センサチューブ52,53は、マニホルド51に固定された両端を支点として円弧状の中間部52c,53cが相互に近接方向及び離間方向(図3の前後方向)に振動する。
【0077】
このとき、振動するセンサチューブ52と53に流体が流れると、その流量に応じた大きさのコリオリ力が発生する。そのため、センサチューブ52の流入側と流出側で動作遅れが生じ、流入側の振動ピックアップ55のセンサ信号と流出側の振動ピックアップ56のセンサ信号との間に位相差が生じる。流入側のセンサ信号と流出側のセンサ信号との位相差は、流量に比例することから、制御回路60(流量演算部92)は、この位相差に基づき流量を演算することができる。つまり、センサチューブ52,53の変位が振動ピックアップ55,56により検出されると、センサチューブ52,53の振動に伴う位相差が制御回路60により質量流量に変換される。
【0078】
診断モード判定部96(判定部の一例)は、振動式測定装置15の自己診断を行う診断モードへの移行の可否を判定する。具体的には、診断モード判定部96は、流量演算部92により測定される流体の質量流量に所定基準を超える変動がない場合、診断モードに移行可能と判定する。所定基準とは、センサチューブ52,53に流れる流体に質量流量の変動がないと判断可能な非常に小さい質量流量の変動値として予め規定される。例えば、診断モード判定部96は、センサチューブ52,53に被測定流体が流れていない状態である場合、診断モードに移行可能と判定する。具体的には、診断モード判定部96は、制御装置30から入力される信号(例えば、ガス供給ステーションの営業時間外であることを示す信号等)に基づき、センサチューブ52,53に被測定流体が流れていない状態であるか否かを判定してよい。また、例えば、診断モード判定部96は、センサチューブ52,53の被測定流体の質量流量がゼロの状態である場合、診断モードに移行可能と判定する。質量流量がゼロである場合とは、質量流量の測定結果がゼロである場合だけでなく、質量流量の測定結果がゼロでなくても、測定誤差等を考慮して、被測定流体に流れがないと判断可能な場合も含む概念である。例えば、診断モード判定部96は、流量演算部92から出力される流量情報に基づき、センサチューブ52,53の被測定流体の質量流量がゼロの状態であるか否かを判定する。また、例えば、診断モード判定部96は、流量演算部92により測定される流体の質量流量が略一定の状態が一定時間以上継続している場合、診断モードに移行可能と判定する。
【0079】
尚、診断モードへの移行の有無は、ユーザからの所定の入力の有無に基づき、判定されてもよい。即ち、振動式測定装置15は、ユーザからの所定の入力に応じて、診断モードへ移行してもよい。この場合、例えば、ガス供給装置10の入力部やガス供給装置と通信可能に接続される端末装置等で受け付けられる所定の入力に応じて、演算回路90(診断モード判定部96)は、振動式測定装置15の異常に関する診断を行う。また、後述の如く、自己診断モードでは、通常の質量流量の測定時の駆動周波数とは異なる駆動周波数で加振器54を振動させる。そのため、演算回路90は、被測定流体が通流している状態等、センサチューブ52,53内の流体の質量流量に所定基準を超える変動が存在する状態(所定値以上の質量流量の変動がある状態)では、異常に関する診断を適切に行うことができない。
【0080】
自己診断部97(異常診断部の一例)は、診断モード判定部96により診断モードに移行可能と判定される場合に、振動式測定装置15を診断モードに移行させて、振動式測定装置15の異常に関する自己診断を行う。具体的には、自己診断部97は、振幅検出・励振検出部81及び励振制御部82を通じて、流量測定時における加振器54(励振コイル54a)の駆動周波数(以下、「測定周波数」)FDを含む周波数帯(以下、「駆動周波数帯」)で駆動周波数FSを変化させながら、加振器54(励振コイル54a)を振動させる。そして、自己診断部97は、その際に得られるセンサコイル55a,56aの検出信号の出力状態に基づき、振動式測定装置15の異常に関する診断を行う。詳細は、後述する(図5図8参照)。
【0081】
記憶部98には、自己診断部97が振動式測定装置15の自己診断を行う場合に利用する各種データが記憶される。
【0082】
尚、振動式測定装置15の診断モードに関する機能構成、即ち、診断モード判定部96、自己診断部97、及び記憶部98の機能は、振動式測定装置15の外部、例えば、制御装置30(診断装置の一例)やガス供給装置10と通信可能な外部のサーバ装置や端末装置等の情報処理装置(診断装置の一例)に移管されてもよい。
【0083】
[診断モードに関する制御処理の一例]
次に、図5図8を参照して、制御回路60による診断モードに関する制御処理の一例について説明する。
【0084】
図5は、自己診断に関する制御処理の一例を概略的に示すフローチャートである。図6は、予め記憶された正常時における振動ピックアップ55,56(センサコイル55a,56a)の検出信号の振幅電圧の波形(基準波形)の一例を示す図である。図7は、異常時における振動ピックアップ55,56(センサコイル55a,56a)の振幅電圧の波形の一例を示す図である。図8は、異常時における振動ピックアップ55,56(センサコイル55a,56a)の振幅電圧の波形の他の例を示す図である。
【0085】
図5のフローチャートは、例えば、後述の異常のアラートが出力されていない状態で、所定の制御周期ごとに繰り返し実行されてよい。
【0086】
図5に示すように、ステップS102にて、診断モード判定部96は、自己診断モードに移行可能か否かを判定する。診断モード判定部96は、自己診断モードに移行可能な場合、ステップS104に進み、自己診断モードに移行不可の場合、ステップS122に進む。
【0087】
ステップS104にて、自己診断部97は、加振器54(励振コイル54a)の駆動周波数FS及びカウンタiに初期値を設定する。具体的には、自己診断部97は、駆動周波数FSの初期値を測定周波数FDから所定値αを減じた値に設定する。また、自己診断部97は、カウンタiの初期値を"0"(ゼロ)に設定する。以下、カウンタiのときの駆動周波数FSを「駆動周波数FS」と称し、駆動周波数FSが測定周波数FDに後述の所定値αを加えた値であるとき(FS=FD+α)のカウンタiの値を所定数mと称する場合がある。また、本例では、所定数mは、偶数である。
【0088】
演算回路90は、ステップS104の処理が完了すると、ステップS106に進む。
【0089】
ステップS106にて、自己診断部97は、振幅検出・励振検出部81及び励振制御部82を介して、励振コイル54aに駆動周波数FSの正弦波の電圧を印加する。
【0090】
演算回路90は、ステップS106の処理が完了すると、ステップS108に進む。
【0091】
ステップS108にて、自己診断部97は、バリア回路70を介して、センサコイル55a,56aからその振幅電圧SA,SBに相当する検出信号を取得し、記憶部98に保存する。
【0092】
演算回路90は、ステップS108の処理が完了すると、ステップS110に進む。
【0093】
ステップS110にて、自己診断部97は、駆動周波数FSが測定周波数FDに所定値αを加えた値であるか否かを判定する。自己診断部97は、この判定条件が成立しない場合、ステップS112に進み、判定条件が成立する場合、ステップS114に進む。
【0094】
ステップS112にて、自己診断部97は、駆動周波数FSを現在の駆動周波数FSに所定値β(<α)に設定する(FS=FS+β)と共に、カウンタiを1だけインクリメントする(i=i+1)。
【0095】
尚、所定値βは、固定値であってもよいし、可変値であってもよい。具体的には、所定値βは、カウンタiが所定数mの半分のときに、駆動周波数FSが測定周波数FD(FSm/2=FD)となるように予め設定される。また、所定値βは、カウンタiが所定数mの半分のときの駆動周波数FSを中心として、駆動周波数FSが前後で対称に配置されるように予め規定される。
【0096】
演算回路90は、ステップS112の処理が完了すると、ステップS104に戻り、ステップS104~S110の処理を繰り返す。
【0097】
これにより、自己診断部97は、ステップS104~S112の処理を通じて、駆動周波数FSが測定周波数FDを中心とする幅が所定値αの2倍の駆動周波数帯において、所定値β刻みの駆動周波数FSごとの振幅電圧SA,SBを取得することができる。
【0098】
尚、振動式測定装置15の自己診断用の駆動周波数FSの範囲(駆動周波数帯)は、センサチューブ52,53内の流体の質量流量に応じて、可変されてよい。具体的には、センサチューブ52,53内の流体の質量流量と、自己診断用の駆動周波数帯との関係を表すマップ、関係式、テーブル等が予め準備されてよい。そして、流量演算部92による測定される被測定流体の質量流量に基づき、これらのマップ等から自己診断用の駆動周波数帯が決定されてよい。
【0099】
ステップS114にて、自己診断部97は、振幅電圧SA,SBの上述の駆動周波数帯での波形の形状と、基準となるセンサコイル55a,56aの振幅電圧SA0,SB0の上述の駆動周波数帯での波形の形状とを比較する。基準となるセンサコイル55a,56aの振幅電圧SA0,SB0の上述の駆動周波数帯での波形とは、加振器54、振動ピックアップ55,56を含む振動式測定装置15の正常時におけるセンサコイル55a,56aの振幅電圧の駆動周波数帯での波形に相当する。基準となるセンサコイル55a,56aの振幅電圧SA0,SB0の上述の駆動周波数帯での波形は、例えば、振動式測定装置15の新品時(即ち、工場出荷時)のセンサコイル55a,56aの振幅電圧の上述の駆動周波数帯での波形である。
【0100】
例えば、図6に示すように、振動式測定装置15の正常時において、センサコイル55a,56aの振幅電圧の波形は、駆動周波数FSが測定周波数FDのときが最大となり、測定周波数FDのときを基準として、前後で対称に近い形状を有する。
【0101】
一方、図7に示すように、振動式測定装置15の異常時において、センサコイル55a,56aの振幅電圧の波形は、駆動周波数FSが測定周波数FDのときを基準として、前後で対称の形状から大きく乖離する場合がある。例えば、カウンタウェイトの脱落等、センサチューブ52,53に異常が生じると、センサチューブ52、53の振動状態に変化が生じるからである。
【0102】
よって、自己診断部97は、振幅電圧SA,SBの上述の駆動周波数帯での波形の測定周波数FDを基準とする前後の対称性(以下、単に「対称性」)が相対的に低い場合、振動式測定装置15に異常があると判断することができる。具体的には、自己診断部97は、以下の式(1)が成立する場合、振幅電圧SAの上述の駆動周波数帯での波形の対称性が相対的に高く、正常時の波形に対する乖離は相対的に小さいと判定してよい。一方、自己診断部97は、以下の式(1)が成立しない場合、振幅電圧SAの上述の駆動周波数帯での波形の対称性が相対的に低く、正常時の波形に対する乖離は相対的に大きいと判定してよい。同様に、自己診断部97は、以下の式(2)が成立する場合、振幅電圧SBの上述の駆動周波数帯での波形の対称性が相対的に高く、正常時の波形に対する乖離は相対的に小さいと判定してよい。一方、自己診断部97は、以下の式(2)が成立しない場合、振幅電圧SBの上述の駆動周波数帯での波形の対称性が相対的に低く、正常時の波形に対する乖離は相対的に大きいと判定してよい。
【0103】
【数1】
【0104】
ここで、所定値γ(>0)は、予め規定される適合値である。
【0105】
演算回路90は、ステップS114の処理が完了すると、ステップS116に進む。
【0106】
ステップS116にて、自己診断部97は、取得した振幅電圧SA,SBの波形の形状の少なくとも一方が正常時から相対的に大きく乖離しているか否かを判定する。即ち、自己診断部97は、上述の式(1),(2)の少なくとも一方が成立しない状態であるか否かを判定する。自己診断部97は、取得した振幅電圧SA,SBの波形の形状が共に正常時の波形に対して相対的に小さい乖離である場合、ステップS118に進む。一方、自己診断部97は、少なくとも一方が正常時から相対的に大きく乖離している場合、振動式測定装置15に異常があると判断し、ステップS124に進む。
【0107】
ステップS118にて、自己診断部97は、振幅電圧SA,SBの上述の駆動周波数帯での波形の出力値(出力の大きさ)と、基準となるセンサコイル55a,56aの振幅電圧SA0,SB0の上述の駆動周波数帯での波形の出力値(出力の大きさ)とを比較する。
【0108】
例えば、図8に示すように、振動式測定装置15の異常時において、センサコイル55a,56aの振幅電圧の波形は、出力値(電圧値)が正常時(図中の破線)に対してある程度小さくなる場合がある。例えば、センサコイル55a,56aが劣化すると、センサコイル55a,56aの出力状態(電圧振幅)に変化が生じるからである。
【0109】
よって、自己診断部97は、振幅電圧SA,SBの上述の駆動周波数帯での波形の出力値が、正常時の振幅電圧SA0,SB0の波形の出力値よりもある程度低下している場合、振動式測定装置15に異常があると判断することができる。具体的には、自己診断部97は、以下の式(3)が成立する場合、振幅電圧SAの上述の駆動周波数帯での波形の出力値が、正常時の波形の出力値に対して相対的に小さい乖離で収まっていると判定してよい。一方、自己診断部97は、以下の式(3)が成立しない場合、振幅電圧SAの上述の駆動周波数帯での波形の出力値が、正常時の波形の出力値に対して相対的に大きく乖離していると判定してよい。同様に、自己診断部97は、以下の式(4)が成立する場合、振幅電圧SBの上述の駆動周波数帯での波形の出力値が、正常時の波形の出力値に対して相対的に小さい乖離で収まっていると判定してよい。一方、自己診断部97は、以下の式(4)が成立しない場合、振幅電圧SBの上述の駆動周波数帯での波形の出力値が、正常時の波形の出力値に対して相対的に大きく乖離していると判定してよい。
【0110】
【数2】
【0111】
ここで、所定値δ(>0)は、予め規定される適合値である。
【0112】
尚、最大値SAMAX,SBMAXは、それぞれ、振幅電圧SA,SBの最大値である。また、最大値SA0MAX,SBMAXは、それぞれ、振幅電圧SA0,SB0の最大値である。最大値SA0MAX,SBMAXのデータは、記憶部98に記憶され、自己診断部97は、記憶部98のデータを参照することにより、ステップS118の処理を実施することができる。例えば、最大値SA0MAX,SBMAXのデータは、工場出荷時、具体的には、工場出荷前の検査時に取得され、記憶部98に予め格納(登録)される態様であってよい。
【0113】
演算回路90は、ステップS118の処理が完了すると、ステップS120に進む。
【0114】
ステップS120にて、自己診断部97は、取得した振幅電圧SA,SBの波形の出力値の少なくとも一方が正常時の出力値から相対的に大きく乖離しているか否かを判定する。即ち、自己診断部97は、上述の式(3),(4)の少なくとも一方が成立しない状態であるか否かを判定する。自己診断部97は、取得した振幅電圧SA,SBの波形の出力値が共に正常時の出力値に対して相対的に小さい乖離である場合、振動式測定装置15に異常がないと判断し、ステップS122に進む。一方、自己診断部97は、少なくとも一方が正常時から相対的に大きく乖離している場合、振動式測定装置15に異常があると判断し、ステップS124に進む。
【0115】
尚、自己診断部97は、式(3),(4)の少なくとも一方が成立しない場合、何れか一方だけが不成立なのか、両方共に不成立なのかによって、異常の箇所を特定(推定)してもよい。例えば、式(3),(4)の何れか一方だけが不成立の場合、振動ピックアップ55,56(センサコイル55a,56a)のうち、不成立の式(3)或いは式(4)に対応する振幅電圧が取得された振動ピックアップ(センサコイル)に異常があると推定してよい。一方、式(3),(4)の双方が不成立の場合、加振器54(励振コイル54a)に異常があると推定してよい。振動ピックアップ55,56(センサコイル55a,56a)が共に異常になる可能性は低いと考えられるからである。
【0116】
ステップS122にて、演算回路90は、被測定流体の質量流量を測定するための測定モードに移行する。
【0117】
ステップS122の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0118】
一方、ステップS124にて、自己診断部97は、振動式測定装置15に異常がある旨のアラートを外部(例えば、制御装置30)に出力する。これにより、制御装置30は、異常のアラートを受信すると、流量表示器33や警告灯等を通じて、作業者やメンテナンス担当者等に振動式測定装置15の異常を通知することができる。
【0119】
演算回路90は、ステップS124の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0120】
尚、自己診断部97は、振動式測定装置15の異常の有無を判定するだけでなく、ステップS116の条件が成立したのか、ステップS120の条件が成立したのかによって、振動式測定装置15の異常箇所を特定(推定)してもよい。具体的には、ステップS116の条件が成立する場合、異常箇所をセンサチューブ52,53と特定し、ステップS120の条件が成立する場合、異常箇所を加振器54及び振動ピックアップ55,56の少なくとも一つと特定してよい。この場合、ステップS116の条件が成立する場合についても、更に、ステップS120の条件が成立するか否かが判定されるようにフローチャートが変更されてもよい。センサチューブ52,53の異常と、加振器54及び振動ピックアップ55,56の異常の双方が同時に発生している可能性もあるからである。また、ステップS120の条件が成立する場合に、上述の如く、更に、加振器54に異常があるのか、振動ピックアップ55,56の何れか一方に異常があるのかが特定(推定)されてもよい。
【0121】
このように、本例では、自己診断部97は、取得したセンサコイル55a,56aの振幅電圧SA,SBと、基準となる正常時のセンサコイル55a,56aの振幅電圧SA0,SB0との比較により、振動式測定装置15の異常の有無を判定することができる。
【0122】
尚、本例では、後述の他の例の場合と同様、励振コイル54aにインパルス信号を印加したときのセンサコイル55a,56aの時系列での残響振動波形に基づき、振動式測定装置15の異常の有無が判定されてもよい。また、本例では、後述の他の例の場合と同様、励振コイル54aに代えて、センサコイル55a,56aの何れか一方に所定の信号を印加し、そのときの残りの2つのコイルの出力状態に基づき、振動式測定装置15の異常の有無が判定されてもよい。
【0123】
[制御回路の機能構成の他の例]
次に、図9を参照して、振動式測定装置15の制御回路60の機能構成の他の例について説明する。以下、上述の一例(図4)と異なる部分を中心に説明する。
【0124】
図9は、制御回路60の機能構成の他の例を示す機能ブロック図である。
【0125】
本例では、制御回路60がセンサコイル55a,56aの何れか一方に励振信号を出力することにより、センサチューブ52,53を振動させることが可能に構成される点で上述の一例と異なる。また、本例では、制御回路60がセンサコイル55a,56aの何れか一方に励振信号が出力し、センサチューブ52,53を振動させる際に、センサチューブ52,53の振動に伴う励振コイル54aの出力電圧を検出可能である点で上述の一例と異なる。
【0126】
励振制御部82は、上述の一例の場合と同様、測定モードにおいて、振幅検出・励振検出部81から入力される励振信号に応じて、加振器54でセンサチューブ52,53を加振させるための信号を生成し、バリア回路70を介して励振コイル54aに出力する。
【0127】
また、励振制御部82は、診断モードにおいて、所定の信号(例えば、後述のインパルス信号)を生成し、バリア回路70を通じて励振コイル54a、センサコイル55a、及びセンサコイル56aの何れかに出力する。
【0128】
自己診断部97は、上述の一例の場合と同様、診断モード判定部96により診断モードに移行可能と判定される場合に、振動式測定装置15を診断モードに移行させて、振動式測定装置15の異常に関する自己診断を行う。具体的には、自己診断部97は、励振制御部82を通じて、所定の信号(例えば、インパルス信号)を任意の順番で励振コイル54a、センサコイル55a、及びセンサコイル56aのそれぞれに印加する。そして、自己診断部97は、励振コイル54a、センサコイル55a、及びセンサコイル56aのそれぞれに所定の信号を印加したときの残りの2つのコイルの出力状態に基づき、振動式測定装置15の異常に関する診断を行う。詳細は、後述する(図10図16参照)。
【0129】
[診断モードに関する制御処理の他の例]
次に、図10図16を参照して、制御回路60による診断モードに関する制御処理の他の例について説明する。
【0130】
図10は、自己診断に関する制御処理の他の例を概略的に示すメインフローチャートである。図11図12は、自己診断に関する制御処理の他の例を概略的に示すサブフローチャートである。具体的には、図11,12は、後述の出力異常判定処理の具体例を示すフローチャートである。図13は、振動式測定装置15の正常時において、印加対象のコイルにインパルス信号が印加されたときの出力対象のコイルの時系列での出力波形の一例を示す図である。図14は、振動式測定装置15の異常時において、印加対象のコイルにインパルス信号が印加されたときの出力対象のコイルの時系列での出力(電圧)の波形の一例を示す図である。図15は、振動式測定装置15の異常時において、印加対象のコイルにインパルス信号が印加されたときの出力対象のコイルの時系列での出力(電圧)の波形の他の例を示す図である。図16は、振動式測定装置15の異常箇所の特定方法の一例を説明する図である。
【0131】
尚、図10図16では、センサコイル55a、及びセンサコイル56aを便宜的に"センサコイルA"、"センサコイルB"と表現される。
【0132】
図10のフローチャートは、例えば、後述の異常のアラートが出力されていない状態で、所定の制御周期ごとに繰り返し実行されてよい。
【0133】
図10に示すように、ステップS202は、図5のフローチャートのステップS102の処理と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0134】
ステップS202にて、診断モード判定部96は、自己診断モードに移行可能な場合、ステップS204に進み、自己診断モードに移行不可能な場合、ステップS220にすすむ。
【0135】
ステップS204にて、自己診断部97は、励振コイル54aに所定の信号を印加し、そのときのセンサコイル55aの出力に関する異常の有無を判定する処理(以下、「出力異常判定処理」)を行う。
【0136】
演算回路90は、ステップS204の処理が完了すると、ステップS206に進む。
【0137】
ステップS206にて、自己診断部97は、励振コイル54aに所定の信号を印加したときのセンサコイル56aの出力に関する出力異常判定処理を行う。
【0138】
演算回路90は、ステップS206の処理が完了すると、ステップS208に進む。
【0139】
ステップS208にて、自己診断部97は、センサコイル55aに所定の信号を印加するときの励振コイル54aの出力に関する出力異常判定処理を行う。
【0140】
演算回路90は、ステップS208の処理が完了すると、ステップS210に進む。
【0141】
ステップS210にて、自己診断部97は、センサコイル55aに所定の信号を印加するときのセンサコイル56aの出力に関する出力異常判定処理を行う。
【0142】
演算回路90は、ステップS210の処理が完了すると、ステップS212に進む。
【0143】
ステップS212にて、自己診断部97は、センサコイル56aに所定の信号を印加するときの励振コイル54aの出力に関する出力異常判定処理を行う。
【0144】
演算回路90は、ステップS212の処理が完了すると、ステップS214に進む。
【0145】
ステップS214にて、自己診断部97は、センサコイル56aに所定の信号を印加するときのセンサコイル55aの出力に関する出力異常判定処理を行う。
【0146】
演算回路90は、ステップS214の処理が完了すると、ステップS216に進む。
【0147】
ここで、出力異常判定処理(図11図12)について、具体的に説明する。
【0148】
図11に示すように、ステップS302にて、自己診断部97は、カウンタi,sを初期値"0"にそれぞれ設定する(k=0,s=0)。
【0149】
演算回路90は、ステップS302が完了すると、ステップS304に進む。
【0150】
ステップS304にて、自己診断部97は、印加対象のコイルにインパルス信号を印加する。印加対象のコイルとは、ステップS204,S206では、励振コイル54aに対応し、ステップS208,S210では、センサコイル55aに対応し、ステップS212,S214では、センサコイル56aに対応する。
【0151】
演算回路90は、ステップS304の処理が完了すると、ステップS306に進む。
【0152】
ステップS306にて、自己診断部97は、バリア回路70を介して、出力対象のコイルの電圧SV、及びインパルス信号の印加からの経過時間STを取得する。出力対象のコイルの電圧SVは、印加対象のコイルに対するインパルス信号の印加によりセンサチューブ52,53に生じる残響振動に対応する。出力対象のコイルとは、ステップS204,S214では、センサコイル55aに対応し、ステップS206,S210では、センサコイル56aに対応し、ステップS208,S212では、励振コイル54aに対応する。
【0153】
演算回路90は、ステップS306の処理が完了すると、ステップS308に進む。
【0154】
ステップS308にて、自己診断部97は、カウンタsが"0"であるか否かを判定する。自己診断部97は、カウンタsが"0"でない場合、ステップS310に進み、カウンタsが"0"である場合、ステップS312に進む。
【0155】
ステップS310にて、自己診断部97は、今回取得した電圧SVから前回取得した電圧SVs-1を減じた値が0より大きいか否かを判定する。即ち、自己診断部97は、出力対象のコイルの電圧が増加しているか否かを判定する。自己診断部97は、出力対象のコイルの電圧が増加している場合、ステップS312に進み、増加していない場合、ステップS316に進む。
【0156】
ステップS312にて、自己診断部97は、出力対象のコイルの電圧の正のピーク値(以下、「ピーク電圧」)PV、及びそのときの経過時間(以下、「ピーク時間」)PTを、それぞれ、今回取得した電圧SV及び経過時間STで更新する(PV=SV,PT=ST)。これにより、出力対象のコイルの電圧が増加している状態で、ピーク電圧PV及びピーク時間PTが最新の電圧SV及び経過時間STで更新され、出力対象のコイルの電圧が増加しなくなると、更新が停止される。そのため、自己診断部97は、センサチューブ52,53の残響振動におけるピーク電圧PV及びピーク時間PTを適切に取得することができる。
【0157】
演算回路90は、ステップS312の処理が完了すると、ステップS314に進む。
【0158】
ステップS314にて、カウンタsを"1"だけインクリメントする(s=s+1)。
【0159】
演算回路90は、ステップS314の処理が完了すると、ステップS306に戻る。
【0160】
一方、ステップS316にて、自己診断部97は、カウンタkを"1"だけインクリメントする(k=k+1)。
【0161】
演算回路90は、ステップS316の処理が完了すると、ステップS318に進む。
【0162】
ステップS318にて、自己診断部97は、カウンタkが所定値nより大きいか否かを判定する。所定値nは、正の整数である。自己診断部97は、カウンタkが所定値nより大きくない場合、ステップS320に進み、カウンタkが所定値nより大きい場合、ステップS326(図12参照)に進む。これにより、自己診断部97は、0番目からn番目までのピーク電圧PV及びピーク時間PTを取得し、記憶部98に保存することができる。
【0163】
ステップS320にて、自己診断部97は、カウンタsを"1"だけインクリメントする(s=s+1)。
【0164】
演算回路90は、ステップS320の処理が完了すると、ステップS322に進む。
【0165】
ステップS322にて、自己診断部97は、バリア回路70を介して、出力対象のコイルの電圧SV、及びインパルス信号の印加からの経過時間STを取得する。
【0166】
演算回路90は、ステップS322の処理が完了すると、ステップS324に進む。
【0167】
ステップS324にて、自己診断部97は、今回取得した電圧SVから前回取得した電圧SVs-1を減じた値が0より大きいか否かを判定する。即ち、自己診断部97は、出力対象のコイルの電圧が増加しているか否かを判定する。自己診断部97は、出力対象のコイルの電圧が増加していない場合、ステップS320に戻り、増加している場合、ステップS306に戻る。これにより、自己診断部97は、出力対象のコイルの電圧が負のピーク値に到達した後に増加し始めたタイミングで、正のピーク値を取得するための処理(ステップS306~S314)を開始することができる。
【0168】
一方、ステップS326にて、自己診断部97は、カウンタj、振幅異常カウンタC1、及び周期異常カウンタC2を初期値"0"にそれぞれ設定する。
【0169】
ステップS328にて、自己診断部97は、本フローチャートで取得したj番目のピーク電圧PVと、基準となる残響振動波形のj番目のピーク電圧PVcとを比較する。基準となる残響振動波形とは、振動式測定装置15の正常時において、印加対象のコイルにインパルス信号を印加したときの出力対象のコイルの出力(電圧)の波形に相当する。基準となる残響振動波形は、例えば、振動式測定装置15の新品時(即ち、工場出荷時)において、印加対象のコイルにインパルス信号を印加したときの出力対象のコイルの電圧の波形である。
【0170】
例えば、図13に示すように、振動式測定装置15の正常時において、印加対象のコイルにインパルス信号を印加したときの出力対象のコイルの残響振動の電圧の振幅(ピーク電圧PVc)は相対的に大きくなる。
【0171】
一方、図14に示すように、振動式測定装置15の異常時において、印加対象のコイルにインパルス信号を印加したときの出力対象のコイルの残響振動の電圧の振幅(ピーク電圧PV)は、相対的に小さくなる場合がある。印加対象のコイル或いは出力対象のコイルに劣化が生じると、出力対象のコイルの出力状態(電圧振幅)に変化が生じるからである。
【0172】
よって、自己診断部97は、本フローチャートで取得(測定)したピーク電圧PVが基準となる残響振動波形のピーク電圧PVcよりもある程度低下している場合、振動式測定装置15に異常があると判断することができる。具体的には、自己診断部97は、以下の式(5)が成立する場合、本フローチャートで測定したピーク電圧PVが基準となる残響振動波形のピーク電圧PVcに対して相対的に小さい低下で収まっており、正常であると判定してよい。一方、自己診断部97は、以下の式(5)が成立しない場合、本フローチャートで測定したピーク電圧PVが基準となる残響振動波形のピーク電圧PVcに対して相対的に大きい低下が生じており、異常であると判定してよい。
【0173】
【数3】
【0174】
ここで、所定値ε(0<ε<1)は、予め規定される適合値である。
【0175】
演算回路90は、ステップS328の処理が完了すると、ステップS330に進む。
【0176】
ステップS330にて、自己診断部97は、測定したピーク電圧PVが異常であるか否かを判定する。具体的には、自己診断部97は、上述の式(5)が不成立であるか否かを判定する。自己診断部97は、上述の式(5)が成立せず、ピーク電圧PVが異常である場合、ステップS332に進み、上述の式(5)が成立し、ピーク電圧PVが正常である場合、ステップS334に進む。
【0177】
ステップS332にて、自己診断部97は、振幅異常カウンタC1を"1"だけインクリメントする。
【0178】
演算回路90は、ステップS332の処理が完了すると、ステップS334に進む。
【0179】
ステップS334にて、本フローチャートで取得したj番目のピーク電圧PVの直近の出力周期と、基準となる残響振動波形のj番目のピーク電圧PVcの直近の出力周期とを比較する。j番目のピーク電圧PVの直近の出力周期とは、(j-1)番目のピーク電圧PVj-1からj番目のピーク電圧PVまでの間の経過時間に相当し、ピーク時間PTからピーク時間PTj-1を減じることにより求められる。同様に、j番目のピーク電圧PVcの直近の出力周期とは、(j-1)番目のピーク電圧PVcj-1からj番目のピーク電圧PVcまでの間の経過時間に相当し、ピーク時間PTcからピーク時間PTcj-1を減じることにより求められる。
【0180】
例えば、図13に示すように、振動式測定装置15の正常時において、印加対象のコイルにインパルス信号を印加したときの出力対象のコイルの残響振動の出力周期は、相対的に長くなる。
【0181】
一方、図15に示すように、振動式測定装置15の異常において、印加対象のコイルにインパルス信号を印加したときの出力対象のコイルの残響振動の出力周期は、相対的に短くなる場合がある。例えば、カウンタウェイトの脱落等、センサチューブ52,53に異常が生じると、センサチューブ52、53の振動状態に変化が生じるからである。
【0182】
よって、自己診断部97は、本フローチャートで取得(測定)した残響振動波形の出力周期が基準となる残響振動波形の出力周期よりもある程度短くなっている場合、振動式測定装置15に異常があると判断することができる。具体的には、自己診断部97は、以下の式(6)が成立する場合、測定した残響振動波形の出力周期が基準となる残響振動波形の出力周期からそれほど短くなっておらず、正常であると判定してよい。一方、自己診断部97は、以下の式(6)が成立していない場合、測定した残響振動波形の出力周期が基準となる残響振動波形の出力周期からある程度短くなっており、異常であると判定してよい。
【0183】
【数4】
【0184】
ここで、所定値δ(>0)は、予め規定される適合値である。
【0185】
尚、基準となる残響振動波形に関するデータ、即ち、ピーク電圧PVc及びピーク時間PTcに関するデータは、記憶部98に記憶されている。例えば、ピーク電圧PVc及びピーク時間PTcに関するデータは、工場出荷時、具体的には、工場出荷時の検査時に取得され、記憶部98に予め格納(登録)される態様であってよい。
【0186】
演算回路90は、ステップS334の処理が完了すると、ステップS336に進む。
【0187】
ステップS336にて、自己診断部97は、測定したピーク電圧PVの直近の出力周期が異常であるか否かを判定する。具体的には、自己診断部97は、上述の式(6)が不成立であるか否かを判定する。自己診断部97は、上述の式(6)が成立せず、出力周期に異常がある場合、ステップS338に進み、上述の式(6)が成立し、出力周期に異常がない場合、ステップS340に進む。
【0188】
ステップS338にて、自己診断部97は、周期異常カウンタC2を"1"だけインクリメントする(C2=C2+1)。
【0189】
演算回路90は、ステップS338の処理が完了すると、ステップS340に進む。
【0190】
ステップS340にて、自己診断部340は、カウンタjが所定値nであるか否かを判定する。自己診断部340は、カウンタjが所定値nでない場合、ステップS342に進み、カウンタjが所定値nである場合、ステップS344に進む。
【0191】
ステップS342にて、自己診断部97は、カウンタjを"1"だけインクリメントする(j=j+1)。
【0192】
演算回路90は、ステップS342の処理が完了すると、ステップS328に戻る。
【0193】
一方、ステップS344にて、自己診断部97は、振幅異常カウンタC1が所定の閾値C1thより小さく、且つ、周期異常カウンタC2が所定の閾値C2thより小さいか否かを判定する。自己診断部97は、当該条件が成立する場合、ステップS346に進み、当該条件が成立しない場合、ステップS348に進む。閾値C1thは、本フローチャートで測定される残響振動波形の振幅が異常であるか否かを判定するために予め規定される適合値である。閾値C2thは、本フローチャートで測定される残響振動波形の周期が異常であるか否かを判定するために予め規定される適合値である。
【0194】
ステップS346にて、自己診断部97は、本フローチャートで測定された出力対象のコイルの残響振動波形が正常であると判定する。
【0195】
演算回路90は、ステップS346の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0196】
一方、ステップS348にて、自己診断部97は、振幅異常カウンタC1が閾値C1th以上であり、且つ、周期異常カウンタC2が閾値C2th以上であるか否かを判定する。自己診断部97は、当該条件が成立する場合、ステップS350に進み、当該条件が成立しない場合、ステップS352に進む。
【0197】
ステップS350にて、自己診断部97は、本フローチャートで測定された出力対象のコイルの残響振動波形の振幅及び周期の双方に異常がある"振幅異常"及び"周期異常"と判定する。
【0198】
演算回路90は、ステップS350の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0199】
一方、ステップS352にて、自己診断部97は、振幅異常カウンタC1が閾値C1th以上であるか否かを判定する。自己診断部97は、振幅異常カウンタC1が閾値C1th以上である場合、ステップS354に進み、振幅異常カウンタC1が閾値C1th以上でない場合、即ち、周期異常カウンタC2が閾値C2th以上である場合、ステップS356に進む。
【0200】
ステップS354にて、自己診断部97は、本フローチャートで測定された出力対象のコイルの残響振動波形の振幅に異常がある"振幅異常"と判定する。
【0201】
演算回路90は、ステップS354の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0202】
一方、ステップS356にて、自己診断部97は、本フローチャートで測定された出力対象のコイルの残響振動波形の周期に異常がある"周期異常"と判定する。
【0203】
演算回路90は、ステップS356の処理が完了すると、今回のフローチャートの処理を終了する。
【0204】
図10に戻り、ステップS216にて、自己診断部97は、前段(ステップS204,S206,S208,S210,S212,S214)の出力異常判定処理にて、出力対象のコイルの残響振動波形に異常があったか否かを判定する。自己診断部97は、前段の出力異常判定処理にて、出力対象のコイルの残響振動波形に異常があった場合、ステップS218に進み、異常が全くなかった場合、ステップS220に進む。
【0205】
ステップS218にて、自己診断部97は、振動式測定装置15に異常がある旨のアラートを外部(例えば、制御装置30)に出力する。この際、自己診断部97は、前段の出力異常判定処理のそれぞれで出力された判定結果に基づき、異常箇所を特定し、異常箇所に関する情報を含めたアラートを出力してよい。これにより、制御装置30は、異常のアラートを受信すると、流量表示器33や警告灯等を通じて、作業者やメンテナンス担当者等に振動式測定装置15の異常箇所を通知することができる。
【0206】
例えば、図16に示すように、自己診断部97は、印加対象或いは出力対象に励振コイル54aが含まれる出力異常判定処理の判定結果が"振幅異常"を表し、他の判定結果が"振幅正常"を表す場合、異常箇所を励振コイル54aと特定(推定)してよい。
【0207】
また、自己診断部97は、印加対象或いは出力対象にセンサコイル55aが含まれる出力異常判定処理の判定結果が"振幅異常"を表し、他の判定結果が"振幅正常"を表す場合、異常箇所をセンサコイル55aと特定(推定)してよい。
【0208】
また、自己診断部97は、印加対象或いは出力対象にセンサコイル56aが含まれる出力異常判定処理の判定結果が"振幅異常"を表し、他の判定結果が"振幅正常"を表す場合、異常箇所をセンサコイル56aと特定(推定)してよい。
【0209】
また、自己診断部97は、全ての出力異常判定処理の中に、上記と異なる組み合わせで、"振幅異常"の判定結果が存在する場合、異常箇所を励振コイル54a、センサコイル55a,56aのうちの少なくとも一つであると特定(推定)してよい。
【0210】
また、自己診断部97は、全ての出力異常判定処理のうちで、"周期異常"と判定された数が所定数Nth(1以上且つ6以下の整数)以上である場合、センサチューブ52,53に異常があると特定(推定)してよい。
【0211】
このように、本例では、自己診断部97は、励振コイル54aに電圧を印加した場合だけでなく、センサコイル55a,56aのそれぞれに電圧を印加したときの残りの2つのコイルの出力を取得することができる。そして、自己診断部97は、励振コイル54a及びセンサコイル55a,56aのそれぞれに電圧を印加したときの残りの2つのコイルの出力状態に基づき、異常の有無だけでなく、励振コイル54a及びセンサコイル55a,56aの中での異常箇所を特定することができる。
【0212】
尚、本例では、上述の一例の場合と同様、印加対象のコイルに所定の駆動周波数帯で正弦波を印加したときのセンサチューブ52,53の振動に伴う出力対象のコイルの出力状態を用いて、出力異常判定処理が行われてもよい。
【0213】
[作用]
次に、本実施形態に係る振動式測定装置15の作用について説明する。
【0214】
振動式測定装置15は、それぞれのセンサチューブ52,53を同じ駆動信号に基づき共振させ、流体の慣性力による相対変位を生じさせている。そのため、例えば、加振器54や振動ピックアップ55,56に含まれる励振コイル54aやセンサコイル55a,56aに断線等の異常が生じたり、センサチューブ52,53にカウンタウェイトの脱落等の異常が生じたりしている場合、センサチューブ52,53内を流れる質量流量に変動が生じていると、質量流量を測定する際に用いられる駆動信号による測定結果として得られる相対変位が、流体の慣性力によるものなのか、加振器54や振動ピックアップ55,56やセンサチューブ52,53に発生した異常によるものかを判定できない可能性がある。
【0215】
また、振動式測定装置15がディスペンサユニット13の筐体内に収容されてしまうと、メンテナンスの際に、外部に取り出すのは、非常に手間が掛かる作業になる。そのため、ディスペンサユニット13の筐体の中から振動式測定装置15を取り出して、メンテナンスする頻度が相対的に低くなる。その結果、振動式測定装置15の異常の有無をオンボードで判定できない場合、ガス供給装置10が稼働中に、突然、振動式測定装置15に異常が発生し、ガス供給装置10の稼働に大きな影響が生じる可能性がある。
【0216】
これに対して、本実施形態では、一対のセンサチューブ52,53と、加振器54と、振動ピックアップ55,56と、測定部と、自己診断部97と、を備える。具体的には、加振器54は、一対のセンサチューブ52,53を相互に近接及び離間する方向に振動させる。また、振動ピックアップ55,56は、一対のセンサチューブ52,53における加振器54により加振される箇所の上流側及び下流側に設けられ、一対のセンサチューブ52,53の相対変位に応じた信号を出力する。また、測定部は、加振器54により一対のセンサチューブ52,53を振動させる際に振動ピックアップ55,56から出力される検出信号に基づき、一対のセンサチューブ52,53内に流れる被測定流体の質量流量を測定する。そして、自己診断部97は、加振器54により一対のセンサチューブ52,53を振動させる際に振動ピックアップ55,56から出力される検出信号の出力状態と、その信号の基準となる出力状態とに基づき、コリオリ式流量計の異常に関する診断を行う。
【0217】
これにより、振動式測定装置15は、自己の異常に関する診断を適切に行うことができる。また、オンボードで異常に関する診断を行うことができることから、ガス供給装置10が稼働中に、突然、振動式測定装置15に異常が発生し、ガス供給装置10の稼働に大きな影響が生じるような事態の発生を抑制することができる。
【0218】
また、本実施形態では、振動式測定装置15は、診断モード判定部96を備えてよい。具体的には、診断モード判定部96は、流量演算部92により測定される流体の質量流量に所定基準を超える変動があるか否かを判定してよい。そして、自己診断部97は、診断モード判定部96により所定基準を超える質量流量の変動がないと判定された場合に、振動式測定装置15の異常に関する診断を行ってよい。
【0219】
これにより、振動式測定装置15は、一対のセンサチューブ52,53の流体に質量流量の変動がほとんどない状態(質量流量の変動が一定である等、質量流量が安定している状態)を利用して、自己の異常に関する診断を適切に行うことができる。
【0220】
また、本実施形態では、自己診断部97は、流量演算部92により被測定流体の質量流量が測定される際に加振器54により一対のセンサチューブ52,53を振動させる際の駆動周波数とは異なる駆動周波数を含む所定の駆動周波数帯で、一対のセンサチューブ52,53を振動させることにより、振動式測定装置15の異常に関する診断を行ってもよい。
【0221】
これにより、振動式測定装置15は、被測定流体の質量流量を測定する場合とは異なる駆動周波数を用いることで、異常による変化を判断し易くなり、結果として、異常に関する診断の精度を向上させることができる。
【0222】
また、本実施形態では、加振器54及び振動ピックアップ55,56は、それぞれ、コイルと磁石とを含んでもよい。具体的には、加振器54は、そのコイル(励振コイル54a)に通電しそのコイルと磁石(マグネット54b)とを近接及び離間させることにより、一対のセンサチューブ52,53を振動させてもよい。また、振動ピックアップ55,56は、そのコイル(センサコイル55a,56a)と磁石(マグネット55b,56b)とが近接及び離間することによりそのコイルに生じる起電力を検出信号として出力してもよい。そして、自己診断部97は、加振器54及び振動ピックアップ55,56のうちの何れか一方のコイルに通電させることにより一対のセンサチューブ52,53を振動させた際に他方のコイルから出力される検出信号の出力状態とその検出信号の基準となる出力状態とに基づき、診断を行ってもよい。
【0223】
これにより、振動式測定装置15は、具体的に、自己の異常に関する診断を行うことができる。
【0224】
また、本実施形態では、振動式測定装置15は、記憶部98を備えてもよい。具体的には、記憶部98は、加振器54、及び振動ピックアップ55,56のうちの何れか一方のコイルが通電したときの他方のコイルの基準となる出力状態を表すデータを記憶してよい。そして、自己診断部97は、上述の基準となる出力状態と、他方のコイルの実際の出力状態とを比較することにより、振動式測定装置15の異常に関する診断を行ってもよい。
【0225】
これにより、振動式測定装置15は、具体的に、自己の異常に関する診断を行うことができる。
【0226】
また、本実施形態では、上述の基準となる出力状態には、所定の駆動周波数帯で加振器54、及び振動ピックアップ55,56の何れか一方のコイルを通電させたときの基準となる出力波形が含まれてもよい。そして、自己診断部97は、基準となる出力波形と、所定の駆動周波数帯で加振器54、及び振動ピックアップ55,56の何れか一方のコイルを通電させたときの他方のコイルの実際の出力波形とを比較することにより、振動式測定装置15の異常に関する診断を行ってもよい。
【0227】
これにより、振動式測定装置15は、基準となる出力波形と、実際の出力波形との間の比較によって、具体的に、自己の異常に関する診断を行うことができる。
【0228】
また、本実施形態では、上述の基準となる出力状態には、所定の駆動周波数帯で加振器54、及び振動ピックアップ55,56の何れか一方のコイルを通電させたときの基準となる出力値が含まれてよい。そして、自己診断部97は、基準となる出力値と、所定の駆動周波数帯で加振器54、及び振動ピックアップ55,56の何れか一方のコイルを通電させたときの実際の出力値とを比較することにより、自己の異常に関する診断を行ってもよい。
【0229】
これにより、振動式測定装置15は、基準となる出力値と、実際の出力値との間の比較によって、具体的に、自己の異常に関する診断を行うことができる。
【0230】
また、本実施形態では、上述の基準となる出力状態には、インパルス信号で加振器54、及び振動ピックアップ55,56の何れか一方のコイルを通電させたときの基準となる時系列での出力波形の振幅が含まれてよい。そして、自己診断部97は、基準となる時系列での出力波形の振幅と、インパルス信号で加振器54、及び振動ピックアップ55,56の何れか一方のコイルを通電させたときの他方のコイルの実際の時系列での出力波形の振幅とを比較することにより、振動式測定装置15の異常に関する診断を行ってもよい。
【0231】
これにより、振動式測定装置15は、基準となる時系列での出力波形の振幅と、実際の時系列での出力波形の振幅との間の比較によって、具体的に、自己の異常に関する診断を行うことができる。
【0232】
また、本実施形態では、上述の基準となる出力状態には、インパルス信号で加振器54、及び振動ピックアップ55,56の何れか一方のコイルを通電させたときの基準となる時系列での出力波形の周期が含まれてもよい。そして、自己診断部97は、基準となる時系列での出力波形の周期と、インパルス信号で加振器54、及び振動ピックアップ55,56のうちの何れか一方のコイルを通電させたときの実際の時系列での出力波形の周期とを比較することにより、振動式測定装置15の異常に関する診断を行ってもよい。
【0233】
これにより、振動式測定装置15は、基準となる時系列での出力波形の周期と、実際の時系列での出力波形の周期との間の比較によって、具体的に、自己の異常に関する診断を行うことができる。
【0234】
また、本実施形態では、自己診断部97は、加振器54及び振動ピックアップ55,56ごとに、そのコイルを通電させると共に、加振器54及び振動ピックアップ55,56ごとのコイルを通電させたときの他方のコイルの出力に基づき、加振器54及び振動ピックアップ55,56の異常の有無を判定し、加振器54及び振動ピックアップ55,56に異常がある場合に、加振器54及び振動ピックアップ55,56の中から異常の箇所を特定してもよい。
【0235】
これにより、振動式測定装置15は、加振器54及び振動ピックアップ55,56に異常がある場合に、その中から異常の箇所を特定することができる。
【0236】
[変形・変更]
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0237】
例えば、上述した実施形態では、2本のセンサチューブ52,53を有するコリオリ式流量計(振動式測定装置15)の異常に関する診断方法を説明したが、同様の方法は、センサチューブが1本或いは3本以上のコリオリ式流量計の異常に関する診断に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0238】
10 ガス供給装置
13 ディスペンサユニット
14 ガス供給経路
15 振動式測定装置(コリオリ式流量計)
16 ガス供給開閉弁
17 制御弁
18 圧力伝送器
19 充填ホース
20 三方弁
21 脱圧管路
22 ガス充填カップリング
30 制御装置(診断装置)
31 ボタンスイッチ
32 ボタンスイッチ
33 流量表示器
51 マニホルド
51a 流入口
51b 流出口
52 センサチューブ
52a 端部
52b 端部
52c 中間部
53 センサチューブ
53a 端部
53b 端部
53c 中間部
54 加振器(励振部)
54a 励振コイル(コイル)
54b マグネット(磁石)
55 振動ピックアップ(振動センサ)
55a センサコイル(コイル)
55b マグネット(磁石)
56 振動ピックアップ(振動センサ)
56a センサコイル(コイル)
56b マグネット(磁石)
57 温度センサ
60 制御回路(診断装置)
70 バリア回路
80 信号処理回路
81 振幅検出・励振検出部
82 励振制御部
83 温度測定部
90 演算回路
91 時間差演算部
92 流量演算部(測定部)
93 アナログ出力部
94 パルス出力部
95 ヤング率演算部
96 診断モード判定部(判定部)
97 自己診断部(診断部)
98 記憶部
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