(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186097
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】埋設物引上げ工法、及び埋設物引上げ装置
(51)【国際特許分類】
E02D 9/02 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
E02D9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094148
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】500435470
【氏名又は名称】有限会社丸高重量
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 節夫
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050DA02
(57)【要約】
【課題】作業スペースを抑える。
【解決手段】本開示は、所定方向に沿って地中に埋設された地中埋設物4を上方へ引き上げる埋設物引上げ工法であって、オーガスクリュー21によって上記所定方向に沿って延びる縦孔6を掘削する掘削工程と、オーガスクリュー21の回転を許容し、かつオーガスクリュー21に対する下方への地中埋設物4の相対移動を規制する状態に、地中埋設物4をオーガスクリュー21に対して接続する接続工程と、地中埋設物4に対して接続され、縦孔6に挿入している状態のオーガスクリュー21を、掘削工程における回転方向とは反対の方向へ回転させる引上げ工程と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って地中に埋設された埋設物を上方へ引き上げる埋設物引上げ工法であって、
スクリューによって前記所定方向に沿って延びる掘削孔を掘削する掘削工程と、
前記スクリューの回転を許容し、かつ前記スクリューに対する下方への前記埋設物の相対移動を規制する状態に、前記埋設物を前記スクリューに対して接続する接続工程と、
前記埋設物に対して接続され、前記掘削孔に挿入している状態の前記スクリューを、前記掘削工程における回転方向とは反対の方向へ回転させる引上げ工程と、を含む、埋設物引上げ工法。
【請求項2】
前記引上げ工程において、前記掘削孔の埋戻し材を前記掘削孔に対して上方から送り込みながら、前記スクリューを前記掘削工程における回転方向とは反対の方向へ回転させる、請求項1に記載の埋設物引上げ工法。
【請求項3】
前記掘削工程において、前記掘削孔を前記埋設物に近接または隣接する位置に掘削する、請求項1又は請求項2に記載の埋設物引上げ工法。
【請求項4】
前記掘削工程において、前記掘削孔を前記埋設物の下端よりも下方まで掘削する、請求項3に記載の埋設物引上げ工法。
【請求項5】
前記埋設物の下端よりも下方への前記掘削孔の深さは、前記掘削孔が1つの場合には、少なくとも前記埋設物の前記所定方向と交叉する方向の長さを有し、前記掘削孔が複数の場合には、少なくとも前記埋設物の前記所定方向と交叉する方向の長さの半分の長さを有する、請求項4に記載の埋設物引上げ工法。
【請求項6】
所定方向に沿って地中に埋設された埋設物を上方へ引き上げる埋設物引上げ工法であって、
スクリューによって前記所定方向に沿って延びる掘削孔を、前記埋設物に近接または隣接する位置に、前記埋設物の下端よりも下方まで掘削する掘削工程と、
前記掘削孔の埋戻し材を前記掘削孔に対して上方から送り込みながら、前記掘削孔に挿入している状態の前記スクリューを、前記掘削工程における回転方向とは反対の方向へ回転させる引上げ工程と、を含み、
前記埋設物の下端よりも下方への前記掘削孔の深さは、前記掘削孔が1つの場合には、少なくとも前記埋設物の前記所定方向と交叉する方向の長さを有し、前記掘削孔が複数の場合には、少なくとも前記埋設物の前記所定方向と交叉する方向の長さの半分の長さを有する、埋設物引上げ工法。
【請求項7】
前記引上げ工程において、前記埋設物を押上げ部材によって地面側から押し上げるとともに、前記スクリューを前記掘削工程における回転方向とは反対の方向へ回転させる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の埋設物引上げ工法。
【請求項8】
前記押上げ部材によって地面側から押し上げ可能な被押上げ部材を前記埋設物に対して取り付ける取付け工程を含み、
前記引上げ工程において、前記押上げ部材は、前記被押上げ部材を地面側から押し上げる、請求項7に記載の埋設物引上げ工法。
【請求項9】
前記引上げ工程において、前記押上げ部材は、前記埋設物を地面側から前記所定方向に沿って押し上げる、請求項7又は請求項8に記載の埋設物引上げ工法。
【請求項10】
前記引上げ工程において、複数の前記押上げ部材によって前記埋設物を上方へ押し上げ、
前記複数の押上げ部材は、前記埋設物の前記所定方向と交叉する方向の両側に配置される、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の埋設物引上げ工法。
【請求項11】
前記所定方向は、鉛直方向である、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の埋設物引上げ工法。
【請求項12】
所定方向に沿って地中に埋設された埋設物を上方へ引き上げる埋設物引上げ装置であって、
前記所定方向に沿って延びる掘削孔を第1方向への回転によって掘削可能なスクリューと、
前記スクリューの回転を許容し、かつ前記スクリューに対する下方への前記埋設物の相対移動を規制する状態に、前記埋設物を前記スクリューに対して接続する接続部材と、を備え、
前記スクリューは、前記第1方向とは反対の第2方向への回転によって、前記掘削孔の埋戻し材を前記掘削孔の上方から下方へ搬送可能である、埋設物引上げ装置。
【請求項13】
内径側にスクリュー挿通孔を区画し、回転によって前記掘削孔の径方向外側を下方へ掘削可能な筒状の外筒部材を備え、
前記スクリューは、前記外筒部材の前記スクリュー挿通孔を挿通する、請求項12に記載の埋設物引上げ装置。
【請求項14】
前記スクリューを前記第2方向へ回転させている際に前記埋設物を地面側から上方へ押し上げ可能な押上げ部材を備える、請求項12又は請求項13に記載の埋設物引上げ装置。
【請求項15】
前記押上げ部材は、前記接続部材を地面側から上方へ押し上げることによって、前記埋設物を地面側から上方へ押し上げる、請求項14に記載の埋設物引上げ装置。
【請求項16】
前記埋設物に対して取り付けられる被押上げ部材を備え、
前記押上げ部材は、前記被押上げ部材を地面側から上方へ押し上げることによって、前記埋設物を地面側から上方へ押し上げる、請求項14に記載の埋設物引上げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、埋設物引上げ工法、及び埋設物引上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、構造物の押上げ工法が記載されている。この工法では、沈下した布基礎の外側地上部から、布基礎の直下に向けて、ボーリングマシンにより斜孔を掘削し、膨張性樹脂を注入するための注入管を斜孔に挿入する。注入管の一端には、折り畳まれた袋体が取り付けられており、また、注入管の他端には、膨張性樹脂の各材料を混合して地盤に注入する混合注入装置が接続されている。膨張性樹脂の各材料を混合注入装置で混合し、注入管を介して袋体に注入すると、膨張性樹脂は、袋体内で膨張、固化しながら周辺地盤を押圧し、その押圧力を布基礎に伝達して沈下した布基礎の一部を上方に押し上げる。
【0003】
特許文献2には、建造物持ち上げ方法が記載されている。この方法では、ロータリパーカッションを用いて斜めに堀り、建物の傾斜して下がった側の基礎の下方位置まで削孔する。注水パイプと排水パイプの先端部に膨張可能な袋を取り付けて、注水パイプと排水パイプを削孔した位置まで、即ち、ロータリパーカッションの先端位置まで挿入する。ウオータジャッキから注水パイプを通して水を注入し、袋を膨張させた後、袋内に注水された水とセメント系固結材とを置き換える。その後、ウオータージャッキによって固結材を圧入し、袋をさらに膨張させることによって、建物を持ち上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-37792号公報
【特許文献2】特開平9-158235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2の工法では、地上における作業位置が布基礎及び建物等の持上げの対象となる埋設物から離れてしまうので、上記埋設物及び作業位置を含む広い作業スペースが地上に必要になってしまう可能性がある。
【0006】
そこで、本開示は、作業スペースを抑えることが可能な埋設物引上げ工法、及び埋設物引上げ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、所定方向に沿って地中に埋設された埋設物を上方へ引き上げる埋設物引上げ工法であって、スクリューによって前記所定方向に沿って延びる掘削孔を掘削する掘削工程と、前記スクリューの回転を許容し、かつ前記スクリューに対する下方への前記埋設物の相対移動を規制する状態に、前記埋設物を前記スクリューに対して接続する接続工程と、前記埋設物に対して接続され、前記掘削孔に挿入している状態の前記スクリューを、前記掘削工程における回転方向とは反対の方向へ回転させる引上げ工程と、を含む。
【0008】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の埋設物引上げ工法であって、前記引上げ工程において、前記掘削孔の埋戻し材を前記掘削孔に対して上方から送り込みながら、前記スクリューを前記掘削工程における回転方向とは反対の方向へ回転させる。
【0009】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様の埋設物引上げ工法であって、前記掘削工程において、前記掘削孔を前記埋設物に近接または隣接する位置に掘削する。
【0010】
本発明の第4の態様は、上記第3の態様の埋設物引上げ工法であって、前記掘削工程において、前記掘削孔を前記埋設物の下端よりも下方まで掘削する。
【0011】
本発明の第5の態様は、上記第4の態様の埋設物引上げ工法であって、前記埋設物の下端よりも下方への前記掘削孔の深さは、前記掘削孔が1つの場合には、少なくとも前記埋設物の前記所定方向と交叉する方向の長さを有し、前記掘削孔が複数の場合には、少なくとも前記埋設物の前記所定方向と交叉する方向の長さの半分の長さを有する。
【0012】
本発明の第6の態様は、所定方向に沿って地中に埋設された埋設物を上方へ引き上げる埋設物引上げ工法であって、スクリューによって前記所定方向に沿って延びる掘削孔を、前記埋設物に近接または隣接する位置に、前記埋設物の下端よりも下方まで掘削する掘削工程と、前記掘削孔の埋戻し材を前記掘削孔に対して上方から送り込みながら、前記掘削孔に挿入している状態の前記スクリューを、前記掘削工程における回転方向とは反対の方向へ回転させる引上げ工程と、を含み、前記埋設物の下端よりも下方への前記掘削孔の深さは、前記掘削孔が1つの場合には、少なくとも前記埋設物の前記所定方向と交叉する方向の長さを有し、前記掘削孔が複数の場合には、少なくとも前記埋設物の前記所定方向と交叉する方向の長さの半分の長さを有する。
【0013】
本発明の第7の態様は、上記第1の態様から上記第6の態様のいずれかの埋設物引上げ工法であって、前記引上げ工程において、前記埋設物を押上げ部材によって地面側から押し上げるとともに、前記スクリューを前記掘削工程における回転方向とは反対の方向へ回転させる。
【0014】
本発明の第8の態様は、上記第7の態様の埋設物引上げ工法であって、前記押上げ部材によって地面側から押し上げ可能な被押上げ部材を前記埋設物に対して取り付ける取付け工程を含み、前記引上げ工程において、前記押上げ部材は、前記被押上げ部材を地面側から押し上げる。
【0015】
本発明の第9の態様は、上記第7の態様又は上記第8の態様の埋設物引上げ工法であって、前記引上げ工程において、前記押上げ部材は、前記埋設物を地面側から前記所定方向に沿って押し上げる。
【0016】
本発明の第10の態様は、上記第7の態様から上記第9の態様のいずれかの埋設物引上げ工法であって、前記引上げ工程において、複数の前記押上げ部材によって前記埋設物を上方へ押し上げ、前記複数の押上げ部材は、前記埋設物の前記所定方向と交叉する方向の両側に配置される。
【0017】
本発明の第11の態様は、上記第1の態様から上記第10の態様のいずれかの埋設物引上げ工法であって、前記所定方向は、鉛直方向である。
【0018】
本発明の第12の態様は、所定方向に沿って地中に埋設された埋設物を上方へ引き上げる埋設物引上げ装置であって、前記所定方向に沿って延びる掘削孔を第1方向への回転によって掘削可能なスクリューと、前記スクリューの回転を許容し、かつ前記スクリューに対する下方への前記埋設物の相対移動を規制する状態に、前記埋設物を前記スクリューに対して接続する接続部材と、を備え、前記スクリューは、前記第1方向とは反対の第2方向への回転によって、前記掘削孔の埋戻し材を前記掘削孔の上方から下方へ搬送可能である。
【0019】
本発明の第13の態様は、上記第12の態様の埋設物引上げ装置であって、内径側にスクリュー挿通孔を区画し、回転によって前記掘削孔の径方向外側を下方へ掘削可能な筒状の外筒部材を備え、前記スクリューは、前記外筒部材の前記スクリュー挿通孔を挿通する。
【0020】
本発明の第14の態様は、上記第12の態様又は上記第13の態様の埋設物引上げ装置であって、前記スクリューを前記第2方向へ回転させている際に前記埋設物を地面側から上方へ押し上げ可能な押上げ部材を備える。
【0021】
本発明の第15の態様は、上記第14の態様の埋設物引上げ装置であって、前記押上げ部材は、前記接続部材を地面側から上方へ押し上げることによって、前記埋設物を地面側から上方へ押し上げる。
【0022】
本発明の第16の態様は、上記第14の態様の埋設物引上げ装置であって、前記埋設物に対して取り付けられる被押上げ部材を備え、前記押上げ部材は、前記被押上げ部材を地面側から上方へ押し上げることによって、前記埋設物を地面側から上方へ押し上げる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、作業スペースを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る埋設物引上げ装置の説明図である。
【
図2】
図1の埋設物引上げ装置の要部の拡大図である。
【
図3】
図2のIII-III矢視断面図であって、接続部材の一例を示す。
【
図5】埋設物引上げ工法の説明図であって、(a)は第1工程を、(b)は第2工程を、(c)は第3工程を、それぞれ示す。
【
図6】埋設物引上げ工法の説明図であって、(a)は第4工程を、(b)は第5工程を、(c)は第6工程を、それぞれ示す。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る埋設物引上げ装置の説明図である。
【
図8】埋設物引上げ工法の変形例を示す図であって、2つの縦孔を掘削している状態を示す。
【
図9】埋設物引上げ工法の変形例を示す図であって、重機のアームに接続部材を接続する態様を示す。
【
図10】埋設物引上げ工法の変形例を示す図であって、接続部材をジャッキで持ち上げる態様を示す。
【
図11】埋設物引上げ工法の変形例を示す図であって、地中埋設物を直接的にジャッキで持ち上げる態様を示す。
【
図12】本発明の第3実施形態に係る埋設物引上げ工法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、UPは鉛直方向に沿った上方を示す。また、
図5及び
図6に示す円弧矢印は、オーガスクリューの回転方向を示す。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態に係る埋設物引上げ装置10の説明図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る埋設物引上げ装置10は、地中に埋設された地中埋設物(埋設物)4を引き上げる装置であって、掘削装置1と押上げ装置30とを含む。
【0028】
引上げ対象となる地中埋設物4は、本実施形態では、既設杭である。地中埋設物4は、地中に埋設された埋設領域4aと、地上へ露出した露出領域4bとを有する。地中埋設物4の埋設領域4aは、所定方向に沿って地中に埋設されている。本実施形態では、地中埋設物4の埋設領域4aは、鉛直方向(所定方向)に沿って地中に埋設されている。なお、地中埋設物4の露出領域4bは、従前から(引上げ作業に入る前から)地上に露出している領域に限定されない。例えば、引上げ作業に入る前の地中埋設物4は、その全域が地中に埋設されていてもよく、地中埋設物4を引き上げる際に地表を掘ることによって地上に露出させた地中埋設物4の上端側の領域であってもよい。また、本実施形態では、地中埋設物4を既設杭としたが、これに限定されるものではなく、例えば、埋設物は地中に埋設された地下タンクなどであってもよい。
【0029】
図1に示すように、掘削装置1は、地中に掘削孔を掘削可能な装置であって、重機2と回転引上げ装置20とを含む。
【0030】
重機2は、回転引上げ装置20を駆動するための機械であって、回転圧入装置3と、回転圧入装置3から下方へ延びるシャフト7と、回転圧入装置3を上下方向にスライド移動可能に支持するリーダ8とを有する。回転圧入装置3は、シャフト7を回転駆動する。
【0031】
図2は、
図1の埋設物引上げ装置10の要部の拡大図である。
【0032】
図2に示すように、回転引上げ装置20は、オーガスクリュー(スクリュー)21と、接続部材22とを備え、回転圧入装置3を搭載する重機2(
図1参照)に接続されて駆動される。
【0033】
オーガスクリュー21は、地面5から下方へ縦孔(掘削孔)6を掘削可能な掘削部材であって、シャフト23と、連結部24と、複数の切削羽根25とを有する。
【0034】
オーガスクリュー21のシャフト23は、直線状に延びる長尺の部材である。シャフト23は、軸方向の所定の位置よりも一側(
図1及び
図2では下側)の羽有り領域23aと、上記所定の位置よりも他側(
図1及び
図2では上側)の羽なし領域23bとを有する。シャフト23の羽有り領域23aは、切削羽根25が設けられている領域であり、シャフト23の羽なし領域23bは、切削羽根25が設けられていない領域である。シャフト23は、先鋭な先端部23cを軸方向一側に有する。なお、本実施形態では、シャフト23の軸方向一側に先鋭な先端部23cを設けたが、先鋭な先端部23cに代えてオーガヘッドを設けてもよい。
【0035】
オーガスクリュー21の複数の切削羽根25は、シャフト23の羽有り領域23aの外周面に一体的に螺旋状にそれぞれ設けられる。複数の切削羽根25は、シャフト23の軸方向に互いに離間する位置に設けられる。切削羽根25は、オーガスクリュー21を第1方向(例えば、軸方向他側から視た時計回り)に回転させると、土砂を軸方向他側(
図1及び
図2では上側)へ搬送し、第1方向とは反対の第2方向(例えば、軸方向他側から視た反時計回り)に回転させると、土砂を軸方向一側(
図1及び
図2では下側)へ搬送するように形成される。なお、本実施形態では、複数の切削羽根25をシャフト23の軸方向に互いに離間させて設けたが、これに限定されるものではなく、1つの切削羽根25をシャフト23の羽有り領域23aの軸方向の全域に連続して設けてもよい。
【0036】
オーガスクリュー21の連結部24は、シャフト23の軸方向他側の端部(羽なし領域23b側の端部)に一体的に設けられ、重機2の回転圧入装置3側のシャフト7の下端部に連結される。オーガスクリュー21は、連結部24を重機2の回転圧入装置3側のシャフト7の下端部に連結した状態で、回転圧入装置3側から吊り下げられて使用される。重機2の回転圧入装置3側からのトルクは、シャフト7を介してオーガスクリュー21に伝達される。
【0037】
オーガスクリュー21によって地面5から下方へ縦孔6を掘削する場合、オーガスクリュー21のシャフト23の先端部23cを上方から地面5に当接させた状態で重機2の回転圧入装置3を駆動して、オーガスクリュー21を第1方向に回転させる。オーガスクリュー21を回転させると、回転圧入装置3、シャフト7、及びオーガスクリュー21の自重によって回転圧入装置3がリーダ8に沿って下方へ移動しつつ、オーガスクリュー21が土砂を上方へ搬送しながら縦孔6を掘削する。
図1及び
図2には、オーガスクリュー21によって縦孔6を掘削した状態が図示されている。なお、オーガスクリュー21の形状は、上記に限定されるものではなく、第1方向に回転させた際に縦孔6を掘削可能であり、かつ第2方向に回転させた際に土砂29を下方へ搬送可能な形状であれば、様々な形状を適用することができる。
【0038】
図3は、
図2のIII-III矢視断面図であって、接続部材22の一例を示す。
【0039】
図2及び
図3に示すように、接続部材22は、縦孔6に挿入された状態のオーガスクリュー21と地中埋設物4(本実施形態では、露出領域4b)とを接続する部材であって、地中埋設物4を支持する第1支持部26と、オーガスクリュー21を回転可能に支持する第2支持部27とを有する。
【0040】
接続部材22の第1支持部26は、地中埋設物4の露出領域4bに取り付けられて、地中埋設物4を支持する。第1支持部26は、地中埋設物4の露出領域4bに取り付けられた状態で、地中埋設物4に対する上方への移動が規制されている。例えば、第1支持部26は、回転可能に支持される一端側を軸として他端側が傾動可能な2つの傾動部26aを有する。2つの傾動部26aは、ベルト状に形成されて地中埋設物4の露出領域4bの外面(本実施形態では、外周面)に沿って周方向に延びる。2つの傾動部26aの先端側を締付部材(例えば、ボルト9a・ナット9b)で締め付けることによって、第1支持部26は、地中埋設物4の露出領域4bに取り付けられる。なお、地中埋設物4のうち第1支持部26に対して上方から隣接する位置にストッパを固定し、当該ストッパによって地中埋設物4に対する上方への接続部材22の移動を規制してもよい。また、本実施形態では、接続部材22の第1支持部26を、地中埋設物4に直接的に取り付けたが、これに限定されるものではなく、接続部材22を他の部材を介して地中埋設物4に対して間接的に取り付けてもよい。
【0041】
接続部材22の第2支持部27は、オーガスクリュー21(本実施形態では、羽なし領域23b)に取り付けられて、オーガスクリュー21を支持する。第2支持部27は、オーガスクリュー21に取り付けられた状態で、オーガスクリュー21の回転を許容し、かつオーガスクリュー21に対する下方への移動が規制されている。例えば、第2支持部27は、回転可能に支持される一端側を軸として他端側が傾動可能な2つの傾動部27aを有する。2つの傾動部27aは、ベルト状に形成されて、オーガスクリュー21の外周面との間にベアリング28を介在させた状態で、オーガスクリュー21の周方向に延びる。2つの傾動部27aの先端側を締付部材(例えば、ボルト9a・ナット9b)で締め付けることによって、第2支持部27は、オーガスクリュー21に取り付けられる。なお、オーガスクリュー21のうち第2支持部27に対して下方から隣接する位置にストッパを固定し、当該ストッパによってオーガスクリュー21に対する下方への接続部材22の移動を規制してもよい。また、本実施形態では、接続部材22の第2支持部27を、オーガスクリュー21に取り付けたが、これに限定されるものではなく、接続部材22を他の部材を介してオーガスクリュー21に対して間接的に取り付けてもよい。すなわち、接続部材22は、地中埋設物4及びオーガスクリュー21のそれぞれに直接的に取り付けられるものに限定されない。接続部材22は、引上げ対象である埋設物(本実施形態では地中埋設物4)側と、引き上げる部材であるスクリュー(本実施形態ではオーガスクリュー21)側とを、スクリューの回転を許容し、かつスクリューに対する下方への埋設物の移動を規制する状態に接続する部材であればよい。
【0042】
【0043】
図4に示すように、押上げ装置30は、埋設物支持部材(被押上げ部材)31と、複数(本実施形態では、4つ)のジャッキ(押上げ部材)32とを有する。
【0044】
埋設物支持部材31は、地面5よりも上方に配置されて地中埋設物4を支持する部材である。本実施形態では、埋設物支持部材31は、4本の棒状部材33a~33dを井桁状に組み合わせて形成され、地中埋設物4の露出領域4bに固定される。本実施形態では、埋設物支持部材31は、接続部材22よりも上方の高さ位置に配置されて地中埋設物4に固定される。2本の棒状部材33a,33bは、互いに平行に配置されて略水平方向に延びる。棒状部材33a,33bは、地中埋設物4を上下方向と交叉する方向の両側から挟んだ状態で地中埋設物4に固定される。また、他の2本の棒状部材33c,33dは、互いに平行に配置されて棒状部材33a,33bと交叉する方向に略水平方向に延びる。棒状部材33c,33dは、地中埋設物4を上下方向と交叉する方向の両側から挟んだ状態で地中埋設物4及び棒状部材33a,33bに固定される。埋設物支持部材31は、地中埋設物4に固定されることによって、地中埋設物4に対する上方への移動が規制されている。なお、地中埋設物4のうち埋設物支持部材31に対して上方から隣接する位置にストッパを固定し、当該ストッパによって地中埋設物4に対する上方への埋設物支持部材31の移動を規制してもよい。また、本実施形態では、埋設物支持部材31の形状を井桁状としたが、これに限定されるものではなく、様々な形状を適用することができる。例えば、埋設物支持部材31の形状は、地中埋設物4を囲むリング状であってもよい。
【0045】
複数のジャッキ32は、上下方向に伸縮可能な部材であって、埋設物支持部材31を介して地中埋設物4を地面5側から押し上げ可能である。ジャッキ32は、地面5と棒状部材33c,33dの両端部の下面との間に、鉛直方向に沿って配置される。すなわち、本実施形態では、複数のジャッキ32は、埋設物支持部材31を鉛直方向(上記所定方向)に沿って押し上げ可能である。ジャッキ32の下端は、地面5側から支持される。ジャッキ32の上端は、棒状部材33c,33dの両端部を下方から支持する。4つのジャッキ32は、対角線上の中心に地中埋設物4が位置するように配置される。すなわち、4つのジャッキ32のうち対角に位置するジャッキ32は、地中埋設物4の両側(鉛直方向と交叉する方向の両側)に配置される。なお、ジャッキ32は、油圧ジャッキ、エアージャッキ、機械式ジャッキ等の様々なジャッキを適用することができる。また、埋設物支持部材31又は地面5とジャッキ32との間に他の部材を介在させてもよい。また、ジャッキ32の設置数は、4つに限定されるものではない。
【0046】
図5及び
図6は、埋設物引上げ工法の説明図であって、
図5(a)は第1工程を、
図5(b)は第2工程を、
図5(c)は第3工程を、
図6(a)は第4工程を、
図6(b)は第5工程を、
図6(c)は第6工程を、それぞれ示す。
【0047】
本実施形態に係る埋設物引上げ工法は、地中埋設物4を上方へ引き上げる工法であって、第1工程~第6工程を含む。
【0048】
図5(a)に示すように、第1工程(掘削工程)では、掘削装置1の回転引上げ装置20のオーガスクリュー21によって、地中埋設物4の外面に近接する位置に縦孔6を掘削する。具体的には、オーガスクリュー21のシャフト23の先端部23cを地面5の地中埋設物4に近接する位置に当接させた状態で、重機2の回転圧入装置3(
図1参照)を駆動して、オーガスクリュー21を第1方向に回転させる。第1方向に回転するオーガスクリュー21は、地面5の土を削り、土砂(埋戻し材)29を切削羽根25によって上方へ搬送しつつ下方の地中へ進入し、縦孔6を掘削する。本実施形態では、1つのオーガスクリュー21によって1つの縦孔6を掘削する。縦孔6の深さは、縦孔6の下端の高さ位置の水平線HLからの立ち上がり角度θが45度の仮想線VLよりも上方の範囲内に地中埋設物4を含むように、地中埋設物4の下端よりも下方の位置まで掘削する(
図2参照)。すなわち、地中埋設物4の下端よりも下方への縦孔6の深さL1(地中埋設物4の下端と縦孔6の底との間の上記所定方向に沿った距離L1)は、少なくとも縦孔6を地中埋設物4に密接させた状態で地中埋設物4を上記範囲内に含むために必要となる長さL2を有する。縦孔6を地中埋設物4に密接させた状態で地中埋設物4を上記範囲内に含むために必要となる長さL2は、地中埋設物4の上記所定方向と交叉する方向の長さ(水平方向の長さ)L2である。縦孔6を掘削した際に発生する土砂29は、後述する引上げ工程において、縦孔6を埋戻し可能な埋戻し材として利用される。
【0049】
図5(b)に示すように、第2工程(接続工程)では、オーガスクリュー21の回転を許容し、かつオーガスクリュー21に対する下方への地中埋設物4の移動を規制する状態に、地中埋設物4をオーガスクリュー21に対して接続部材22によって接続する。具体的には、接続部材22の第1支持部26を、地中埋設物4の露出領域4bに取り付ける。また、接続部材22の第2支持部27を、縦孔6に挿入された状態のオーガスクリュー21の羽なし領域23bにベアリング28を介して取り付ける。地中埋設物4とオーガスクリュー21とを接続部材22によって接続した接続状態では、接続部材22の第1支持部26は、地中埋設物4に対する上方への移動が規制される。また、接続状態では、接続部材22の第2支持部27は、オーガスクリュー21に対する下方への移動が規制される。これにより、接続部材22は、オーガスクリュー21に対する下方への地中埋設物4の移動を規制する。すなわち、オーガスクリュー21が上方へ移動する際には、地中埋設物4に対して上方への力が接続部材22を介して作用する。
【0050】
図5(c)に示すように、第3工程(取付け工程)では、押上げ装置30の埋設物支持部材31を、地中埋設物4に対して取り付ける。埋設物支持部材31は、複数のジャッキ32によって地面5側から押し上げ可能な部材である。埋設物支持部材31を地中埋設物4に固定した状態で、埋設物支持部材31は、地中埋設物4に対する上方への移動が規制されている。
【0051】
図6(a)に示すように、第4工程(引上げ工程)では、オーガスクリュー21を第2方向へ回転させる。本実施形態では、押上げ装置30の埋設物支持部材31を複数のジャッキ32によって地面5側から押し上げつつ、オーガスクリュー21を第2方向へ回転させる。オーガスクリュー21を第2方向へ回転させると、縦孔6内の土砂29が切削羽根25によって縦孔6の下方へ搬送される。土砂29を縦孔6の下方へ搬送し、縦孔6の下部が土砂29によって埋め戻されると、土砂29からの圧力によってオーガスクリュー21が縦孔6に対して上方へ移動する。オーガスクリュー21が上方へ移動する際には、上方への力が接続部材22を介して地中埋設物4に対して作用し、地中埋設物4がオーガスクリュー21とともに上方へ引き上げられる。地中埋設物4が上方へ引き上げられると、地中埋設物4の下方に空間35が発生する。すなわち、本実施形態に係る埋設物引上げ装置10では、埋設物引上げ装置10の接続部材22によってオーガスクリュー21と地中埋設物4とを接続した状態で、押上げ装置30のジャッキ32で地中埋設物4を上方へ押し上げるとともに、オーガスクリュー21を第2方向へ回転させて縦孔6の土砂29を縦孔6の上方から下方へ搬送する。
【0052】
図6(b)に示すように、第5工程(引上げ工程)では、オーガスクリュー21を第2方向へ回転させながら、土砂29を縦孔6の上方の開口から縦孔6内へ送り込む。これにより、オーガスクリュー21が更に上昇し、地中埋設物4が上方へ更に引き上げられる。また、オーガスクリュー21を第2方向へ回転させて縦孔6の下方の土砂29に圧力をかけると、土砂29が上記仮想線VLよりも上方の範囲に広がり、縦孔6から地中埋設物4の下方の空間35へ流れ込み、当該空間35が土砂29によって埋め戻される(
図6(b)参照)。なお、オーガスクリュー21によって下方へ搬送させる土砂29は、縦孔6の上方の開口から縦孔6内に、作業員によって送り込まれてもよいし、あるいは、装置によって送り込まれてもよい。
【0053】
図6(c)に示すように、第6工程では、オーガスクリュー21の回転を止めて、接続部材22を地中埋設物4及びオーガスクリュー21から取り外して、地中埋設物4及びオーガスクリュー21のうち第2工程で取り付けた位置よりも更に低い位置に接続部材22を取り付ける。また、押上げ装置30の埋設物支持部材31を地中埋設物4から取り外して、地中埋設物4のうち第3工程で取り付けた位置よりも更に低い位置に埋設物支持部材31を取り付ける。その後、第4工程~第6工程を繰り返すことによって、地中埋設物4の下方の空間35を土砂29によって埋め戻しつつ、地中埋設物4を更に上方へ引き上げることができる。
【0054】
上記構成では、地中埋設物4が埋設されている方向(上記所定方向)に沿って縦孔6を掘削するので、地中埋設物4が埋設されている方向に対して傾斜した状態に縦孔6を掘削する場合とは異なり、縦孔6を地中埋設物4の近い位置に掘削することができる。このため、地中埋設物4の引上げ作業の作業スペースを抑えることができる。
【0055】
また、縦孔6を、地中埋設物4に近接する位置に掘削するので、地中埋設物4の引上げ作業の作業スペースを確実に抑えることができる。
【0056】
また、地中埋設物4とオーガスクリュー21とを接続部材22によって接続し、オーガスクリュー21を上方へ移動させることによって、地中埋設物4をオーガスクリュー21とともに上方へ引き上げるので、オーガスクリュー21を地中埋設物4から離間させる必要がない。このため、縦孔6を地中埋設物4の近い位置に掘削することができるので、地中埋設物4の引上げ作業の作業スペースを抑えることができる。
【0057】
したがって、本実施形態によれば、地中埋設物4の引上げ作業の作業スペースを抑えることができる。
【0058】
また、接続部材22が、オーガスクリュー21に対する下方への地中埋設物4の相対移動を規制した状態で、オーガスクリュー21を掘削工程(第1工程)における回転方向(第1方向)とは反対の方向(第2方向)へ回転させる。このため、下方へ移動する土砂29からの圧力によってオーガスクリュー21を縦孔6に対して上方へ移動させて、地中埋設物4を上方へ引き上げることができる。
【0059】
地中埋設物4が埋設されている方向(上記所定方向)に沿って縦孔6が延びているので、オーガスクリュー21の移動方向は、地中埋設物4が埋設されている方向となる。このため、オーガスクリュー21を上方へ移動させる際にオーガスクリュー21側から地中埋設物4に対して効率よく力を伝達して、地中埋設物4を上方へ引き上げることができる。
【0060】
また、縦孔6を、地中埋設物4の下端よりも下方まで掘削するので、地中埋設物4の下方に発生する空間35と縦孔6とを近接又は連通させることができる。このため、オーガスクリュー21を第2方向に回転させて縦孔6の下方の土砂29に圧力をかけることによって、土砂29を縦孔6から地中埋設物4の下方の空間35へ流し込むことができ、上記空間35を土砂29によって埋め戻すことができる。これにより、地中埋設物4を上方へ引き上げた際に地中埋設物4の下方に空間35が生じても、土砂29によって埋め戻されるので、地中埋設物4の周囲の地盤の緩みを抑えることができる。
【0061】
また、オーガスクリュー21を第2方向に回転させて、縦孔6の下方の土砂29に圧力をかけると、土砂29は、上記仮想線VLよりも上方の範囲に広がり易い。本実施形態では、地中埋設物4の下端よりも下方への縦孔6の深さL1は、少なくとも地中埋設物4の上記所定方向と交叉する方向の長さ(水平方向の長さ)L2を有し、地中埋設物4を上記仮想線VLよりも上方の範囲内に含むように設定される。このため、上記仮想線VLよりも上方の範囲に広がる土砂29によって地中埋設物4を下方から押し上げるとともに、地中埋設物4の下方に生じる空間35を埋め戻すことができる。これにより、地中埋設物4を上方へ引き上げた際に地中埋設物4の下方に空間35が生じても、土砂29によって埋め戻されるので、地中埋設物4の周囲の地盤の緩みを抑えることができる。
【0062】
また、地中埋設物4をジャッキ32によって地面5側から押し上げるとともに、オーガスクリュー21を第2方向に回転させるので、オーガスクリュー21側からの力、及びジャッキ32からの力の双方によって地中埋設物4を引き上げることができる。
【0063】
また、ジャッキ32によって地面5側から押し上げ可能な埋設物支持部材31を地中埋設物4に対して取り付けるので、ジャッキ32によって直接的に押し上げ可能な部分が地中埋設物4にない場合であっても、地中埋設物4をジャッキ32によって地面5側から押し上げることができる。
【0064】
また、ジャッキ32が、埋設物支持部材31を地面5側から上記所定方向に沿って押し上げるので、ジャッキ32からの力を地中埋設物4に対して効率よく伝達して、地中埋設物4を上方へ引き上げることができる。
【0065】
また、4つのジャッキ32のうち対角に位置するジャッキ32は、地中埋設物4の鉛直方向と交叉する方向の両側に配置される。すなわち、複数のジャッキ32が、地中埋設物4の上記所定方向と交叉する方向の両側に配置されるので、複数のジャッキ32からの力を地中埋設物4に対して効率よく伝達して、地中埋設物4を上方へ引き上げることができる。
【0066】
また、複数のジャッキ32によって地中埋設物4を上方へ押し上げるので、1つのジャッキ32で押し上げる場合とは異なり、強い力で地中埋設物4を押し上げることができる。
【0067】
また、縦孔6を鉛直方向に掘削するので、略水平の地盤に対してオーガスクリュー21を直交させることができる。このため、地盤に対してオーガスクリュー21が傾斜している場合とは異なり、掘削時にオーガスクリュー21の先端(シャフト23の先端部23c)が地中の硬い地盤に到達しても、オーガスクリュー21の先端が硬い地盤の表面から逃げ難いので、掘削作業の作業性を向上させることができる。
【0068】
また、縦孔6が鉛直方向に沿って延びるので、オーガスクリュー21を第2方向へ回転させて土砂29を縦孔6の下方へ搬送する際に、土砂29を容易に下方へ搬送することができる。
【0069】
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の埋設物引上げ装置40は、外筒部材52を有する点で第1実施形態と相違する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0070】
図7は、本実施形態に係る埋設物引上げ装置40の説明図である。
【0071】
図7に示すように、本実施形態に係る埋設物引上げ装置40は、地中に埋設された地中埋設物(埋設物)4を引き上げる装置であって、掘削装置1(
図1参照)と押上げ装置30とを含む。掘削装置1は、地中に掘削孔を掘削可能な装置であって、重機2と回転引上げ装置50とを含む。
【0072】
回転引上げ装置50は、オーガスクリュー(スクリュー)51と、接続部材22と、外筒部材52とを有する。
【0073】
オーガスクリュー51は、地面5から下方へ縦孔(掘削孔)6を掘削可能な掘削部材であって、シャフト53と、切削羽根55と、オーガヘッド56とを有する。シャフト53は、直線状に延びる長尺の部材である。シャフト53の上端側には、重機2の回転圧入装置3側へ連結される連結部(図示省略)が設けられる。シャフト53の先端(下端)側には、オーガヘッド56が設けられる。切削羽根55は、シャフト53の外周面に一体的に螺旋状に設けられる。切削羽根55は、オーガスクリュー51を第1方向に回転させると、土砂を上側へ搬送し、第2方向に回転させると、土砂を下側へ搬送するように形成される。オーガスクリュー51は、重機2のリーダ8に上下方向にスライド移動可能に支持される。なお、オーガスクリュー51の形状は、上記に限定されるものではなく、第1方向に回転させた際に縦孔6を掘削可能であり、且つ第2方向に回転させた際に土砂29を下方へ搬送可能な形状であればよい。
【0074】
外筒部材52は、筒状(本実施形態では、円筒状)の長尺の掘削部材であって、径方向内側(内径側)にオーガスクリュー51を挿通するためのスクリュー挿通孔58を区画する。外筒部材52の上端部は、掘削装置1の重機2に設けられるモータ57に接続される。外筒部材52は、上記モータ57の駆動力によって回転可能となっている。すなわち、本実施形態では、外筒部材52は、オーガスクリュー51とは独立して回転可能となっている。外筒部材52は、重機2のリーダ8に上下方向にスライド移動可能に支持される。外筒部材52の下端部には、周方向に沿って掘削刃59が設けられる。掘削刃59は、外筒部材52の回転によって縦孔6の径方向外側を下方へ掘削可能である。外筒部材52は、オーガスクリュー51に対する下方への相対移動が規制された状態で、オーガスクリュー51に対して支持される。すなわち、外筒部材52は、オーガスクリュー51が上方へ移動する際に、オーガスクリュー51とともに上方へ移動する。外筒部材52の軸方向の長さは、縦孔6の深さよりも長く設定される。なお、外筒部材52とオーガスクリュー51とは、一体的に回転してもよい。なお、
図7では、外筒部材52の一部を部分断面にしている。
【0075】
実施形態に係る埋設物引上げ工法では、第1工程(掘削工程)において、掘削装置1のオーガスクリュー51及び外筒部材52の双方の掘削部材によって、地中埋設物4の外面に近接する位置に縦孔6を掘削する。本実施形態では、1組のオーガスクリュー51及び外筒部材52によって1つの縦孔6を掘削する。外筒部材52は、重機2のモータ57の駆動力によって回転する。縦孔6の深さは、縦孔6の下端の高さ位置の水平線HLからの立ち上がり角度θが45度の仮想線VLよりも上方の範囲内に地中埋設物4を含むように、地中埋設物4の下端よりも下方の位置まで掘削する。すなわち、地中埋設物4の下端よりも下方への縦孔6の深さL1(地中埋設物4の下端と縦孔6の底との間の上記所定方向に沿った距離L1)は、少なくとも縦孔6を地中埋設物4に密接させた状態で地中埋設物4を上記範囲内に含むために必要となる長さL2を有する。縦孔6を地中埋設物4に密接させた状態で地中埋設物4を上記範囲内に含むために必要となる長さL2は、地中埋設物4の上記所定方向と交叉する方向の長さ(水平方向の長さ)L2である。
【0076】
第2工程(接続工程)では、オーガスクリュー51の回転を許容し、かつオーガスクリュー51に対する下方への地中埋設物4の移動を規制する状態に、地中埋設物4をオーガスクリュー51に対して接続部材22によって接続する。具体的には、地中埋設物4と外筒部材52とを接続部材22によって接続する。地中埋設物4と外筒部材52とを接続部材22によって接続した接続状態では、接続部材22の第1支持部26は、地中埋設物4に対する上方への移動が規制される。また、接続状態では、接続部材22の第2支持部27は、外筒部材52に対する下方への移動が規制される。外筒部材52は、オーガスクリュー51に対する下方への相対移動が規制された状態で、オーガスクリュー51に対して支持される。これにより、接続部材22は、オーガスクリュー51に対する下方への地中埋設物4の移動を規制する。すなわち、本実施形態では、接続部材22は、引き上げ対象である地中埋設物4と、引き上げる部材であるオーガスクリュー51側の外筒部材52とを、オーガスクリュー51の回転を許容し、かつオーガスクリュー51に対する下方への地中埋設物4の移動を規制する状態に接続する。オーガスクリュー51が上方へ移動する際には、地中埋設物4に対して上方への力が外筒部材52及び接続部材22を介して作用する。なお、本実施形態では、外筒部材52と地中埋設物4とを接続部材22によって接続したが、これに限定されるものではなく、オーガスクリュー51と地中埋設物4とを接続部材22によって接続してもよい。
【0077】
第3工程(取付け工程)では、上記第1実施形態と同様に、押上げ装置30の埋設物支持部材31を地中埋設物4に固定する。
【0078】
第4工程(引上げ工程)では、オーガスクリュー51を第2方向へ回転させる。オーガスクリュー51を第2方向へ回転させると、土砂29は、オーガスクリュー51の切削羽根55によって外筒部材52のスクリュー挿通孔58内を下方へ搬送される。土砂29が縦孔6の下方へ搬送されると、上記第1実施形態と同様に、オーガスクリュー51が縦孔6に対して上方へ移動する。オーガスクリュー51が上方へ移動する際には、上方への力が外筒部材52及び接続部材22を介して地中埋設物4に対して作用し、地中埋設物4がオーガスクリュー51とともに上方へ引き上げられる。すなわち、本実施形態に係る埋設物引上げ装置40では、回転引上げ装置50の接続部材22によって外筒部材52と地中埋設物4とを接続した状態で、押上げ装置30のジャッキ32で地中埋設物4を上方へ押し上げるとともに、オーガスクリュー51を第2方向へ回転させて縦孔6の土砂29を縦孔6の上方から下方へ搬送する。
【0079】
第5工程(引上げ工程)では、オーガスクリュー51を第2方向へ回転させながら、土砂29を外筒部材52の上方の開口(
図7の白抜き矢印参照)からスクリュー挿通孔58内(縦孔6内)へ送り込む。これにより、オーガスクリュー51が更に上昇し、地中埋設物4が上方へ更に引き上げられる。また、オーガスクリュー51を第2方向へ回転させて縦孔6の下方の土砂29に圧力をかけると、土砂29が上記仮想線VLよりも上方の範囲に広がって縦孔6から地中埋設物4の下方の空間(図示省略)へ流れ込み、当該空間が土砂29によって埋め戻される。
【0080】
第6工程では、オーガスクリュー51及び外筒部材52の回転を止めて、接続部材22の取り付け位置を下方へ移動する。その後、第4工程~第6工程を繰り返す。
【0081】
上記構成では、地中埋設物4と外筒部材52とを接続部材22によって接続し、オーガスクリュー51を上方へ移動させることによって、地中埋設物4をオーガスクリュー51とともに上方へ引き上げるので、オーガスクリュー51を地中埋設物4から離間させる必要がない。このため、縦孔6を地中埋設物4の近い位置に掘削することができるので、地中埋設物4の引上げ作業の作業スペースを抑えることができる。
【0082】
したがって、本実施形態によれば、地中埋設物4の引上げ作業の作業スペースを抑えることができる。
【0083】
また、第4工程において、土砂29が、オーガスクリュー51の切削羽根55によって外筒部材52のスクリュー挿通孔58内を下方へ搬送される。すなわち、外筒部材52によって区画されるスクリュー挿通孔58内を土砂29が移動するので、地中に水脈等の緩い地盤が存在する場合であっても、土砂29が水等によって拡散されることなく、目的の深さまで土砂29を搬送することができる。このため、地中に緩い地盤が存在する場合であっても、好適に土砂29を下方へ搬送することができ、地中埋設物4の下方に発生する空間35や縦孔6を埋め戻すことができる。
【0084】
なお、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、縦孔6を掘削した際に発生する土砂29を、埋戻し材として機能させたが、埋戻し材はこれに限定されるものではない。例えば、建設残土に水・セメントを混ぜて人工的に作られた流動化処理土を埋戻し材として機能させてもよい。
【0085】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、地中埋設物4が埋設される方向(上記所定方向)を、鉛直方向としたが、これに限定されるものではなく、例えば、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。この場合であっても、第1工程では、地中埋設物4が埋設される上記所定方向に沿って縦孔6を掘削する。
【0086】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、縦孔6を地中埋設物4の下端よりも下方まで掘削したが、これに限定されるものではない。
【0087】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、縦孔6を地中埋設物4に近接する位置に掘削したが、これに限定されるものではなく、例えば、縦孔6を地中埋設物4に隣接する位置に掘削してもよい。この場合、オーガスクリュー21,51を第2方向に回転させた際に、土砂29が縦孔6から地中埋設物4の下方の空間35へ流れ易くなるので、上記空間35を土砂29によって埋め戻し易くなる。
【0088】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、埋設物引上げ装置10,40は、掘削装置1と押上げ装置30とを含む埋設物引上げ装置10,40としたが、これに限定されるものではなく、少なくとも、回転引上げ装置20,50のオーガスクリュー(スクリュー)21,51及び接続部材22を備えていればよい。
【0089】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、第1工程から第6工程まで行い、その後、第4工程~第6工程を繰り返す場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、1回の引上げで地中埋設物4を十分な高さまで引き上げられる場合には、第1工程(掘削工程)から第4工程(引上げ工程)又は第5工程(引上げ工程)までであってもよい。
【0090】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、第2工程(接続工程)の後、第3工程(取付け工程)を行ったが、これに限定されるものではなく、例えば、取付け工程(本実施形態における第3工程)を行ってから、接続工程(本実施形態における第2工程)を行ってもよい。
【0091】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、埋設物引上げ装置10,40に、押上げ装置30を含めたが、これに限定されるものではなく、少なくとも回転引上げ装置20,50を含んでいればよい。この場合の埋設物引上げ工法では、第1工程(掘削工程)と第2工程(接続工程)の後、第3工程(取付け工程)を行うことなく、第4工程(引上げ工程)を行う。
【0092】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、第1工程(掘削工程)において、1つの縦孔6を掘削したが、複数のオーガスクリュー21(又は、複数組のオーガスクリュー51及び外筒部材52)によって複数の縦孔6を掘削してもよい。この場合、複数のオーガスクリュー21(又は、複数組のオーガスクリュー51及び外筒部材52)側からの力によって地中埋設物4を引き上げることができるので、地中埋設物4を容易に引き上げることができる。
【0093】
図8は、埋設物引上げ工法の変形例を示す図であって、2つの縦孔6を掘削している状態を示す。
【0094】
例えば、
図8に示す埋設物引上げ工法では、第1工程(掘削工程)において、複数(
図8では2つ)のオーガスクリュー21によって複数(
図8では2つ)の縦孔6を掘削する。この場合、2つの縦穴6を、地中埋設物4の上記所定方向と交叉する方向の両側、かつ地中埋設物4に近接する位置に掘削することが好ましい。2つの縦孔6の深さは、略同じ深さに設定される。また、2つの縦孔6の深さは、一方の縦孔6の下端の高さ位置の水平線HLからの立ち上がり角度θが45度の仮想線VLよりも上方の範囲、及び他方の縦孔6の下端の高さ位置の水平線HLからの立ち上がり角度θが45度の仮想線VLよりも上方の範囲の少なくとも一方の範囲内に地中埋設物4を含むように、地中埋設物4の下端よりも下方の位置まで掘削する。すなわち、地中埋設物4の下端よりも下方への各縦孔6の深さL1(地中埋設物4の下端と縦孔6の底との間の上記所定方向に沿った距離L1)は、2つの縦孔6を地中埋設物4の両側、かつ地中埋設物4に密接する位置に掘削する場合に、地中埋設物4を上記少なくとも一方の範囲内に含むために必要となる長さL3を少なくとも有する。2つの縦孔6を地中埋設物4の両側、かつ地中埋設物4に密接する位置に掘削する場合に、地中埋設物4を上記少なくとも一方の範囲内に含むために必要となる長さL3は、地中埋設物4の上記所定方向と交叉する方向の長さ(水平方向の長さ)L2の半分の長さL3である。係る構成では、オーガスクリュー21を第2方向に回転させて、縦孔6の下方の土砂29に圧力をかけると、土砂29は、上記仮想線VLよりも上方の範囲に広がり易いので、上記仮想線VLよりも上方の範囲に広がる土砂29によって地中埋設物4を下方から押し上げるとともに、地中埋設物4の下方に生じる空間(図示省略)を埋め戻すことができる。これにより、地中埋設物4を上方へ引き上げた際に地中埋設物4の下方に空間が生じても、土砂29によって埋め戻されるので、地中埋設物4の周囲の地盤の緩みを抑えることができる。
【0095】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、第2工程(接続工程)において、掘削部材(オーガスクリュー21,51又は外筒部材52)と地中埋設物4とを接続部材22によって接続したが、これに限定されるものではない。第2工程では、引き上げ対象である地中埋設物4側と引き上げる部材であるオーガスクリュー21,51側とを、オーガスクリュー21,51の回転を許容し、かつオーガスクリュー21,51に対する下方への地中埋設物4の移動を規制する状態に、接続すればよい。すなわち、掘削装置1のうちの掘削部材又は掘削部材とともに上下に移動可能な部分に対して地中埋設物4を接続部材22によって接続すればよい。
【0096】
例えば、
図9に示すように、掘削装置1の重機2は、掘削部材(
図9ではオーガスクリュー21)を支持するアーム62を有する。アーム62は、オーガスクリュー21の上下の移動に伴って、上下に傾動する。すなわち、オーガスクリュー21が上方へ移動すると、アーム62も上方へ傾動する。第2工程(接続工程)では、アーム62のうち地中埋設物4の上方に位置する部分と地中埋設物4とを、接続部材61(例えば、チェーン)によって接続する。接続部材61は、オーガスクリュー21に対する下方への地中埋設物4の相対移動を規制する。すなわち、接続部材61は、引き上げ対象である地中埋設物4と、引き上げる部材であるオーガスクリュー21側のアーム62とを、オーガスクリュー21の回転を許容し、かつオーガスクリュー21に対する下方への地中埋設物4の移動を規制する状態に接続する。これにより、第4工程(引上げ工程)及び第5工程(引上げ工程)において、オーガスクリュー21が上方へ移動して、アーム62が上方へ傾動すると、地中埋設物4が接続部材61を介して上方へ引き上げられる。
【0097】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、押上げ装置30に、埋設物支持部材(被押上げ部材)31とジャッキ(押上げ部材)32とを設け、ジャッキ32で埋設物支持部材31を押し上げることによって地中埋設物4を押し上げたが、これに限定されるものではない。すなわち、第4工程(引上げ工程)及び第5工程(引上げ工程)において、押上げ装置30のジャッキ32は、埋設物支持部材31とは異なる他の部材を介して地中埋設物4を押し上げてもよく、あるいは、地中埋設物4を直接的に押し上げてもよい。
【0098】
例えば、
図10に示すように、押上げ装置30に埋設物支持部材(被押上げ部材)31を設けなくてもよく、接続部材22を地面5から上方へ離間させて配置し、接続部材22の下方に押上げ装置30のジャッキ(押上げ部材)32を配置してもよい。ジャッキ32は、第4工程(引上げ工程)及び第5工程(引上げ工程)において、接続部材22を地面5側から上方へ押し上げる。すなわち、ジャッキ32は、接続部材22を介して地中埋設物4を押し上げる。なお、この場合、オーガスクリュー21に対して地中埋設物4を接続する接続部材22を、上述した埋設物支持部材31のように、井桁状やリング状に形成してもよい。
【0099】
あるいは、
図11に示すように、ジャッキ(押上げ部材)32によって押し上げ可能な部分(
図11において、横に張り出している部分)を地中埋設物4が有している場合には、押上げ装置30に埋設物支持部材(被押上げ部材)31を設けることなく、地中埋設物4の上記押し上げ可能な部分の下方に押上げ装置30のジャッキ(押上げ部材)32を配置してもよい。ジャッキ32は、第4工程(引上げ工程)及び第5工程(引上げ工程)において、地中埋設物4を地面5側から上方へ押し上げる。すなわち、ジャッキ32は、地中埋設物4を直接的に押し上げる。なお、
図11では、回転引上げ装置20,50の図示を省略している。
【0100】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態の埋設物引上げ装置10,40では、2つの装置(回転引上げ装置20,50及び押上げ装置30)を互いに別体の装置としたが、これに限定されるものではなく、例えば、回転引上げ装置20,50と押上げ装置30とが一体化された1つの埋設物引上げ装置10,40であってもよい。
【0101】
次に、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の埋設物引上げ工法は、オーガスクリュー21側と地中埋設物4側とを接続しない点で、第1実施形態と相違する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0102】
図12は、本発明の第3実施形態に係る埋設物引上げ工法の説明図である。
【0103】
本実施形態では、引上げ対象となる地中埋設物4は、地下タンクである。地中埋設物4は、所定方向(本実施形態では、鉛直方向)に沿って地中に埋設されている。本実施形態では、地中埋設物4の幅(上記所定方向と交叉する方向の長さL2)が広いので、2つのオーガスクリュー21によって2つの縦孔6を地中埋設物4の上記所定方向と交叉する方向の両側に掘削し、地中埋設物4を両側から引き上げる。
【0104】
実施形態に係る埋設物引上げ工法は、地中埋設物4を上方へ引き上げる工法であって、第1工程及び第2工程を含む。
【0105】
第1工程(掘削工程)では、2つのオーガスクリュー21によって2つの縦孔6を上記所定方向に沿って掘削する。2つの縦穴6は、地中埋設物4の上記所定方向と交叉する方向の両側、かつ地中埋設物4に近接する位置に掘削する。2つの縦孔6の深さは、略同じ深さに設定される。また、2つの縦孔6の深さは、一方の縦孔6の下端の高さ位置の水平線HLからの立ち上がり角度θが45度の仮想線VLよりも上方の範囲、及び他方の縦孔6の下端の高さ位置の水平線HLからの立ち上がり角度θが45度の仮想線VLよりも上方の範囲の少なくとも一方の範囲内に地中埋設物4を含むように、地中埋設物4の下端よりも下方の位置まで掘削する。すなわち、地中埋設物4の下端よりも下方への各縦孔6の深さL1(地中埋設物4の下端と縦孔6の底との間の上記所定方向に沿った距離L1)は、2つの縦孔6を地中埋設物4の両側、かつ地中埋設物4に密接する位置に掘削する場合に、地中埋設物4を上記少なくとも一方の範囲内に含むために必要となる長さL3を少なくとも有する。2つの縦孔6を地中埋設物4の両側、かつ地中埋設物4に密接する位置に掘削する場合に、地中埋設物4を上記少なくとも一方の範囲内に含むために必要となる長さL3は、地中埋設物4の上記所定方向と交叉する方向の長さ(水平方向の長さ)L2の半分の長さL3である。なお、オーガスクリュー21は、上記第1実施形態と同様に、重機2の回転圧入装置3を駆動して、オーガスクリュー21を第1方向に回転させる。
【0106】
第2工程(引上げ工程)では、土砂29を2つの縦孔6の上方の開口から縦孔6内へ送り込みながら、2つのオーガスクリュー21を第2方向へ回転させる。オーガスクリュー21を第2方向へ回転させると、土砂29が切削羽根25によって縦孔6の下方へ搬送される。土砂29を縦孔6の下方へ搬送し、縦孔6の下部が土砂29によって埋め戻されると、土砂29がオーガスクリュー21側から上記仮想線VLの上方の範囲へ広がって地中埋設物4を下方から押し上げるとともに、地中埋設物4の下方に発生する空間(図示省略)を埋め戻す。そして、土砂29を2つの縦孔6の上方の開口から縦孔6内へ送り込みながら、2つのオーガスクリュー21を継続して第2方向へ回転させることによって、地中埋設物4が徐々に上方へ押し上げられるので、最終的に地中埋設物4を上方から引き上げることができる。なお、オーガスクリュー21によって下方へ搬送させる土砂29は、縦孔6の上方の開口から縦孔6内に、作業員によって送り込まれてもよいし、あるいは、装置によって送り込まれてもよい。
【0107】
上記構成では、縦孔6を地中埋設物4が埋設されている方向(上記所定方向)に沿って掘削するので、縦孔6を地中埋設物4が埋設されている方向に対して傾斜した状態に掘削する場合とは異なり、縦孔6を地中埋設物4の近い位置に掘削することができる。また、縦穴6を地中埋設物4に近接する位置に掘削するので、地中埋設物4の引上げ作業の作業スペースを確実に抑えることができる。
【0108】
また、2つのオーガスクリュー21側からの土砂29によって地中埋設物4を押し上げるので、1つのオーガスクリュー21の場合に比べて、地中埋設物4を容易に押し上げることができる。
【0109】
また、オーガスクリュー21を第2方向に回転させて、縦孔6の下方の土砂29に圧力をかけると、土砂29は、オーガスクリュー21の先端側から上方へ45度の角度で移動する。このため、2つのオーガスクリュー21の先端側から上方へ45度の角度で移動する土砂29によって地中埋設物4を下方から押し上げるとともに、地中埋設物4の下方に生じる空間(図示省略)を埋め戻すことができる。これにより、地中埋設物4を上方へ押し上げた際に地中埋設物4の下方に空間が生じても、土砂29によって埋め戻されるので、地中埋設物4の周囲の地盤の緩みを抑えることができる。
【0110】
また、2つの工程(第1工程及び第2工程)によって地中埋設物4を押し上げることができるので、シンプルな作業で地中埋設物4を引き上げることができる。
【0111】
なお、本実施形態では、2つのオーガスクリュー21によって2つの縦孔6を掘削したが、3つ以上のオーガスクリュー21によって3つ以上の縦孔6を掘削してもよい。この場合であっても、地中埋設物4の下端よりも下方への各縦孔6の深さL1が、少なくとも地中埋設物4の上記所定方向と交叉する方向の長さ(水平方向の長さ)L2の半分の長さL3を有するように縦孔6を掘削する。
【0112】
また、本実施形態では、複数(2つ)のオーガスクリュー21によって複数(2つ)縦孔6を掘削したが、1つのオーガスクリュー21によって1つの縦孔6を掘削してもよい。この場合、地中埋設物4の下端よりも下方への各縦孔6の深さL1が、少なくとも地中埋設物4の上記所定方向と交叉する方向の長さ(水平方向の長さ)L2を有するように縦孔6を掘削する。
【0113】
また、本実施形態では、縦孔6を地中埋設物4に近接する位置に掘削したが、地中埋設物4に隣接する位置に掘削してもよい。
【0114】
また、本実施形態では、地中埋設物4の下方の土砂29からの力によって地中埋設物4を押し上げたが、これに限定されるものではなく、地中埋設物4の下方の土砂29からの力によって地中埋設物4を押し上げるとともに、他の装置によって地中埋設物4を引き上げてもよい。例えば、地中埋設物4が地上に露出してきた段階で、被押上げ部材(例えば、上記第1実施形態に記載の埋設物支持部材31等)を地中埋設物4に取り付け、係る被押上げ部材又は地中埋設物4を押上げ部材(上記第1実施形態に記載のジャッキ32等)で押し上げながら、オーガスクリュー21を第2方向に回転させて地中埋設物4を土砂29によって押し上げてもよい。
【0115】
また、本実施形態では、土砂29を、埋戻し材として機能させたが、埋戻し材はこれに限定されるものではない。例えば、建設残土に水・セメントを混ぜて人工的に作られた流動化処理土を埋戻し材として機能させてもよい。
【0116】
また、本実施形態では、地中埋設物4が埋設される方向(上記所定方向)を、鉛直方向としたが、これに限定されるものではなく、例えば、鉛直方向に対して傾斜していてもよい。この場合であっても、第1工程では、地中埋設物4が埋設される上記所定方向に沿って縦孔6を掘削する。
【0117】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0118】
1:掘削装置
2:重機
4:地中埋設物(埋設物)
5:地面
6:縦孔(掘削孔)
10,40:埋設物引上げ装置
20,50:回転引上げ装置
21,51:オーガスクリュー(スクリュー)
22,61:接続部材
29:土砂(埋戻し材)
30:押上げ装置
31:埋設物支持部材(被押上げ部材)
32:ジャッキ(押上げ部材)
52:外筒部材
58:スクリュー挿通孔