(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186139
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】熱電変換パッケージ用封止材、及び、熱電変換パッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 35/32 20060101AFI20221208BHJP
H01L 35/34 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01L35/32 Z
H01L35/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094216
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】村田 光司
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 建人
(57)【要約】
【課題】熱電変換パッケージの製造に際して樹脂からなる封止材の発泡を防ぐことが可能な熱電変換パッケージ用封止材を提供する。
【解決手段】熱電変換パッケージ用封止材30は、分子構造中にアクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を含む樹脂からなり、鉄(Fe)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)からなる金属群より選ばれる金属単体、前記金属群の2つ以上を組み合わせた合金、及び、前記金属群の少なくとも1つを含む金属化合物のいずれかと、空気を遮断した状態で接触することで硬化反応を開始する嫌気性硬化樹脂と、フェノール系酸化劣化防止剤、ホスファイト系酸化劣化防止剤、及び、チオエーテル系酸化劣化防止剤のうち少なくとも1種類を含む酸化劣化防止剤と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換モジュールの熱電素子を気密に封止するための熱電変換パッケージ用封止材であって、
分子構造中にアクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を含む樹脂からなり、鉄(Fe)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)からなる金属群より選ばれる金属単体、前記金属群の2つ以上を組み合わせた合金、及び、前記金属群の少なくとも1つを含む金属化合物のいずれかと、空気を遮断した状態で接触することで硬化反応を開始する嫌気性硬化樹脂と、
フェノール系酸化劣化防止剤、ホスファイト系酸化劣化防止剤、及び、チオエーテル系酸化劣化防止剤のうち少なくとも1種類を含む酸化劣化防止剤と、を含む熱電変換パッケージ用封止材。
【請求項2】
前記酸化劣化防止剤の添加量が、0.01wt%~10wt%である請求項1に記載の熱電変換パッケージ用封止材。
【請求項3】
シリカフィラーをさらに含む請求項1又は2に記載の熱電変換パッケージ用封止材。
【請求項4】
硬化前における粘度が、1Pa・s~100Pa・sである請求項1~3のいずれか一項に記載の熱電変換パッケージ用封止材。
【請求項5】
熱伝導係数が、5W/m・K未満である請求項1~4のいずれか一項に記載の熱電変換パッケージ用封止材。
【請求項6】
複数の熱電素子を有する熱電変換モジュールと、
内部に複数の前記熱電素子を気密に封止するためのケースと、
請求項1~5のいずれか一項に記載の熱電変換パッケージ用封止材と、を備え、
前記ケースは、当該ケースの一部が前記熱電変換パッケージ用封止材で接合されることにより、複数の前記熱電素子を気密に封止している熱電変換パッケージ。
【請求項7】
鉄(Fe)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)からなる金属群より選ばれる金属単体、前記金属群の2つ以上を組み合わせた合金、及び、前記金属群の少なくとも1つを含む金属化合物のいずれかを含む硬化促進剤からなり、互いに接合される前記ケースの2つの部位のうち少なくとも一方と前記熱電変換パッケージ用封止材との間に介在する硬化促進層をさらに備える請求項6に記載の熱電変換パッケージ。
【請求項8】
互いに接合される前記ケースの2つの部位が並ぶ方向における前記熱電変換パッケージ用封止材の厚みが、20μm~500μmである請求項6又は7に記載の熱電変換パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュールの熱電素子が気密に封止された熱電変換パッケージにおいて使用する熱電変換パッケージ用封止材、及び、これを備える熱電変換パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換モジュールとして、熱電材料(熱電素子)のペルチェ効果を利用した冷却モジュールや、熱電材料のゼーベック効果を利用した発電モジュール等が知られている。熱電変換モジュールの用途の拡大などに伴い、熱電変換モジュールの使用環境も多様化している。熱電変換モジュールは、熱電材料が酸化したり腐食したりすると性能が低下する。
【0003】
特許文献1には、熱電材料の酸化や腐食を防止可能な熱電変換モジュールが開示されている。この熱電変換モジュールは、低温側基板を覆う金属製冷却板と、高温側基板を覆う金属製蓋体とから構成されるケースで気密に封止された熱電変換パッケージを構成している。特許文献1に記載の熱電変換モジュールは、熱電材料が外部環境に接触しないため、耐環境性に優れる。特許文献1に記載の熱電変換モジュールでは、ケースを構成する2つのケース部材(金属製冷却板及び金属製蓋体)同士が溶接等の手段で接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な熱電変換パッケージとしては、第一基板と第二基板との間に複数の熱電素子が配列された熱電変換モジュールと、2つのケース部材からなり、熱電素子を気密に封止するケースと、2つのケース部材との間に樹脂からなる封止材と、を有するものがある。熱電変換パッケージの製造において、封止材として液状樹脂を用いる場合には、熱電素子を囲むケース部材の縁に液状樹脂をディスペンサーで描画することで、ケース部材の必要な部分のみに簡単かつ安価に設置できる利点がある。一般的な液状樹脂としては、液状エポキシ樹脂(特に1液化エポキシ樹脂)が用いられる。
【0006】
ところで、熱電変換パッケージの熱電素子は半導体であるため、酸素や水蒸気によって劣化しやすいため、ケース内を真空とすることが好ましい。しかしながら、封止材として液状エポキシ樹脂を用いる場合には、真空封止のために真空雰囲気下で液状エポキシ樹脂の加熱硬化を実施すると液状エポキシ樹脂が発泡してしまう。このため、硬化後の封止材の内部に気泡が残り、熱電変換パッケージの気密性が劣ってしまう、という問題がある。
【0007】
液状エポキシ樹脂の発泡を抑えるためには、封止時における加熱温度を下げることが考えられる。しかしながら、この場合には、液状エポキシ樹脂の硬化反応の進行が遅くなってしまうため、真空雰囲気を非常に長い時間保持する必要がある。その結果として、熱電変換パッケージの製造効率(生産性)が非常に低くなってしまう。また、封止材の厚みのバラツキが大きくなって、ケース内を安定して封止するができない、という問題もある。
【0008】
上記事情を踏まえ、本発明は、樹脂からなる封止材の発泡を防ぐことが可能な熱電変換パッケージ用封止材、及び、これを備える熱電変換パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、熱電変換モジュールの熱電素子を気密に封止するための熱電変換パッケージ用封止材であって、分子構造中にアクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を含む樹脂からなり、鉄(Fe)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)からなる金属群より選ばれる金属単体、前記金属群の2つ以上を組み合わせた合金、及び、前記金属群の少なくとも1つを含む金属化合物のいずれかと、空気を遮断した状態で接触することで硬化反応を開始する嫌気性硬化樹脂と、フェノール系酸化劣化防止剤、ホスファイト系酸化劣化防止剤、及び、チオエーテル系酸化劣化防止剤のうち少なくとも1種類を含む酸化劣化防止剤と、を含む熱電変換パッケージ用封止材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱電変換パッケージの製造に際して樹脂からなる熱電変換パッケージ用封止材の発泡を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施形態による熱電変換パッケージを示す斜視図である。
【
図2】
図1の熱電変換パッケージにおいてケースを第一ケース部材である第一基板と第二ケース部材とに分離した状態を示す分解斜視図である。
【
図5】本発明の第二実施形態による熱電変換パッケージを示す斜視図である。
【
図6】
図5の熱電変換パッケージを一部透過させて示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第一実施形態〕
本発明の第一実施形態について、
図1から
図4を参照して説明する。
図1から
図4には、必要に応じて相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は
図1から
図4において共通である。各軸において、矢印が延びる方向を「正方向」、正方向と逆の方向を「負方向」と称する。
【0013】
(熱電変換パッケージ1の全体構成)
図1から
図3に示すように、本実施形態による熱電変換パッケージ1は、熱電変換モジュール10と、ケース20と、封止材30(熱電変換パッケージ用封止材)と、を備える。
熱電変換モジュール10は、熱電変換パッケージ1の本体を構成する。
【0014】
(熱電変換モジュール10)
本実施形態の熱電変換モジュール10は、
図2及び
図3に示すように、低温側基板である第一基板12と、高温側基板である第二基板13と、熱電素子11と、リード15と、備える。第一基板12及び第二基板13は相互に対向して配置されている。熱電素子11は、複数対のP型及びN型熱電素子から構成され、第一基板12と第二基板13との間に配列されている。リード15は、一対の導電線として構成され、それぞれ第一基板12に接合されている。図示例のリード15は、帯板状に形成されているが、例えば線状や棒状に形成されてもよい。
【0015】
第一基板12及び第二基板13は、それぞれXY平面に平行な矩形状の平板に形成されている。第一基板12及び第二基板13は、耐熱性に優れる絶縁体材料で形成されている。第一基板12及び第二基板13の熱伝導性が高いほど熱電変換モジュール10の熱電変換効率が向上するため、第一基板12及び第二基板13は熱伝導率が高い材料によって薄く形成されていることが好ましい。第一基板12及び第二基板13を形成する材料としては、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などのセラミック材料を用いることができる。また、第一基板12及び第二基板13は、いわゆるフレキシブル基板などの、樹脂を基材として用いた基板であってもよい。本実施形態における第一、第二基板12,13は、ガラスエポキシ基板である。
【0016】
第一基板12及び第二基板13には、電極14が形成されている。第一基板12においては、
図2及び
図3における上側の面(Z軸正方向側の面)に電極14が形成されている。第二基板13においては、
図2及び
図3の下側の面(Z軸負方向側の面)に電極14が形成されている。このため、第一基板12の電極14と第二基板13の電極14とはZ軸方向に対向している。電極14は、導電性材料で形成され、第一基板12上及び第二基板13上において、それぞれ一対の熱電素子11を電気的に接続している。電極14は、第一基板12と第二基板13との間ですべての熱電素子11を直列接続するようにパターニングされている。
【0017】
第一基板12及び第二基板13の電極14は、例えば、金(Au)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、銅(Cu)や、これらの合金などを用いて構成することができる。第一基板12及び第二基板13の電極14は、単層構造であってもよいし、複数の金属材料を組み合わせた複層構造であってもよい。
第一基板12及び第二基板13における電極14の形成方法は、特定の方法に限定されず、公知の方法から適宜選択可能である。一例として、電極14は、第一基板12及び第二基板13に対して金属めっき処理を施すことにより形成できる。電極14の形成には、必要に応じて多層めっきを用いることができる。金属めっき処理は、第一基板12及び第二基板13が切り出される前の段階で行うことができる。
第一基板12及び第二基板13は、例えば、銅で形成された電極14が直接接合されたDBC(Direct Bonded Copper)基板であってもよい。
【0018】
本実施形態の第一基板12は、電極14が形成されている中央部R1と、中央部R1の周囲を囲む外周縁部R2とを有する。熱電素子11及び第二基板13は、第一基板12の中央部R1上に重ねて配置されている。このため、第一基板12の外周縁部R2は、Z軸方向から見て熱電素子11及び第二基板13の周囲を囲むように位置する。
【0019】
熱電素子11は、P型の熱電素子とN型の熱電素子とで構成される。熱電変換モジュール10は、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ複数列に配列された熱電素子11を有する。第一基板12と第二基板13との間には、P型の熱電素子とN型の熱電素子とが交互に配列されている。
【0020】
熱電素子11は熱電材料により形成されている。P型の熱電素子はP型熱電材料により形成され、N型の熱電素子はN型熱電材料により形成されている。熱電素子11を形成する熱電材料としては、例えば、比較的低温で良好な性能を示すビスマス-テルル系熱電材料を例示できる。その他にも、ハーフホイスラー系熱電材料、シリサイド系熱電材料、鉛-テルル系熱電材料、シリコン-ゲルマニウム系熱電材料、スクッテルダイト系熱電材料、テトラヘドライト系熱電材料等を使用できる。
【0021】
一対のリード15は、第一基板12のY軸正方向側の1辺におけるX軸方向の両端部にそれぞれ接合され、第一基板12の外周縁部R2を通して第一基板12の外側(Y軸正方向)に引き出されている。一対のリード15は、第一基板12のY軸正方向側の1辺におけるX軸方向の両端部に配置された2つの熱電素子11が位置する2ヶ所において、第一基板12の電極14にそれぞれ接続されている。したがって、各リード15は、第一基板12のY軸正方向側の1辺におけるX軸方向の両端部に配置された2つの熱電素子11に対して電極14を介して電気的に接続されている。リード15の第一基板12への接合には、例えば、はんだ、ろう材、導電性ペーストなどの公知の接合材を使用できる。また、各リード15は、電極14と一体に形成されてもよい。
【0022】
以上のような構成により、熱電変換モジュール10では、一対のリード15の間において、すべての熱電素子11が直列接続されている。
なお、熱電変換モジュール10の構成は、上述した実施形態の構成には限られず、用途に応じて様々に変更できることは勿論である。例えば、熱電素子11の数や配列、第一基板12及び第二基板13の形状などについて、上記の構成から適宜変更を加えることが可能である。また、第一基板12及び第二基板13は複数の基板で構成されてもよい。
【0023】
(ケース20)
ケース20は、その内部に熱電素子11を気密に封止するためのものである。本実施形態のケース20は、Z軸方向において熱電素子11の両側に配置される2つのケース部材21,22を有する。
2つのケース部材21,22のうち第一ケース部材21は、熱電素子11のZ軸負方向側に位置する熱電変換モジュール10の第一基板12である。第二ケース部材22は、第二基板13のZ軸正方向側に配置されている。第二ケース部材22は、Z軸正方向側に窪む凹部224を有する形状に形成され、熱電変換モジュール10の第二基板13側を覆っている。
【0024】
第二ケース部材22は、底壁部221と、傾斜壁部222と、フランジ部223と、を有する。底壁部221及び傾斜壁部222は、第二ケース部材22の凹部224を構成する。底壁部221は、凹部224の平坦な底面を構成し、X軸及びY軸方向に沿って延びる矩形の平板状に形成されている。傾斜壁部222は、凹部224の側面を構成し、底壁部221の周縁からZ軸負方向側に延びる矩形の筒状に形成されている。また、傾斜壁部222は、底壁部221の周縁からZ軸負方向に向かうにしたがって、X軸及びY軸方向に沿って底壁部221の外側に延びるテーパー状に形成されている。フランジ部223は、傾斜壁部222のZ軸負方向側の端部(下端部)からX軸及びY軸方向に沿って傾斜壁部222の外側に延びる。
【0025】
第二ケース部材22は、その凹部224に第二基板13及び熱電素子11が収容されるように第一基板12(第一ケース部材21)上に配置されている。
第二ケース部材22の底壁部221(凹部224の底面)は、Z軸方向において第二基板13の上側の面(Z軸正方向側の面)に対向するように位置する。底壁部221(第二ケース部材22)は、第二基板13の上側の面に直接接触してもよい。
図3に示すように、本実施形態では、第二基板13と底壁部221との間に熱伝達層42が介在している。熱伝達層42は、第二基板13及び底壁部221に密着している。熱伝達層42は、第二基板13と底壁部221との間の熱抵抗を低減させることにより、第二基板13と第二ケース部材22との間の熱伝達性を向上させる。なお、熱伝達層42は、本実施形態の熱電変換パッケージ1に必須でないため、省略されてもよい。
【0026】
第二ケース部材22のフランジ部223は、第二基板13及び熱電素子11の周囲全体において、Z軸方向に関して第一基板12の外周縁部R2に対向するように位置する。第一基板12の外周縁部R2上を通るリード15は、Z軸方向において第一基板12の外周縁部R2と第二ケース部材22のフランジ部223との間に位置する。
第二基板13及び熱電素子11の周囲全体において、第一基板12の外周縁部R2と第二ケース部材22のフランジ部223とが、後述する封止材30によって接合される。これにより、熱電素子11がケース20の内部に気密に封止される。
【0027】
第二ケース部材22が傾斜壁部222を有することで、封止材30を第二ケース部材22の底壁部221からZ軸負方向に離して配置することができる。これにより、熱電変換パッケージ1の使用時において、使用中に高温となる第二基板13の熱が封止材30に伝わりにくくなるため、封止材30が損傷を受けにくくなり、高い耐久性及び信頼性を得ることができる。
【0028】
第二ケース部材22がフランジ部223を有することで、第一基板12に対する第二ケース部材22の接着面積を広く確保することができる。これにより、第二ケース部材22では、フランジ部223と第一基板12との間に隙間が生じにくくなる。これにより、ケース20の内部に熱電素子11を確実に気密に封止することができる。
【0029】
第二ケース部材22は、任意の材料によって形成されてよい。ただし、第二ケース部材22は、ケース20内に配置される第二基板13とケース20の外部との間で熱が効率よく伝わるように、熱伝導率が高い材料によって形成されることがより好ましい。
本実施形態の第二ケース部材22は、鉄(Fe)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)からなる金属群(以下、「所定金属群」とも呼ぶ。)より選ばれる金属単体や、所定金属群の2つ以上を組み合わせた合金、所定金属群の少なくとも1つを含む金属化合物のいずれかを含む金属材料によって形成されている。すなわち、第二ケース部材22をなす金属材料は、例えばステンレス鋼(SUS)であってもよい。
なお、第二ケース部材22は、他の金属材料や導電性材料によって形成されてもよい。また、第二ケース部材22は、絶縁体材料によって形成されてもよいし、セラミック材料や樹脂材料によって形成されてもよい。
【0030】
(封止材30)
封止材30は、熱電変換モジュール10の熱電素子11をケース20内に気密に封止するためのものである。封止材30は、Z軸方向から見た熱電変換モジュール10の平面視における熱電素子11及び第二基板13の周囲に設けられ、第二ケース部材22と第一基板12(第一ケース部材21)とを気密に接合している。具体的に、封止材30は、第一基板12の外周縁部R2と第二ケース部材22のフランジ部223との間に介在し、これら外周縁部R2とフランジ部223とを気密に接合している。
【0031】
封止材30は、嫌気性硬化樹脂と、酸化劣化防止剤と、を含む。
嫌気性硬化樹脂は、分子構造中にアクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を含む樹脂からなる。嫌気性硬化樹脂は、鉄(Fe)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)からなる所定金属群より選ばれる金属単体、所定金属群の2つ以上を組み合わせた合金、及び、所定金属群の少なくとも1つを含む金属化合物のいずれかと、空気を遮断した状態で接触することで硬化反応を開始する特性を有する。
【0032】
酸化劣化防止剤は、フェノール系酸化劣化防止剤、ホスファイト系酸化劣化防止剤、及び、チオエーテル系酸化劣化防止剤のうち少なくとも1種類を含む。酸化劣化防止剤の添加量は、0.01wt%~10wt%であることが好ましい。
【0033】
本実施形態の封止材30は、シリカフィラーをさらに含む。封止材30には、シリカフィラーが1%~40%含有されていることが好ましい。なお、シリカフィラーは、本実施形態の熱電変換パッケージ1に必須でないため、省略されてもよい。
【0034】
封止材30は、硬化前の状態において流動性を有する液状となっている。硬化前における封止材30の粘度は、1Pa・s~100Pa・sであることが好ましい。また、硬化前における封止材30のチキソトロピックインデクスは、1~6であることが好ましい。
【0035】
封止材30の熱伝導係数は、任意であってよいが、5W/m・K未満であることがより好ましい。
【0036】
Z軸方向(互いに接合される第一基板12の外周縁部R2と第二ケース部材22のフランジ部223とが並ぶ方向)における封止材30の厚みは、任意であってよいが、例えば20μm~500μmであることが好ましい。また、封止材30の厚みは、熱電変換モジュール10のリード15の厚みよりも大きく設定されることが好ましい。
【0037】
図3に示すように、第一基板12の外周縁部R2と第二ケース部材22のフランジ部223との間に介在する封止材30(硬化後の封止材30)には、熱電変換モジュール10のリード15を第二ケース部材22の外側に引き出すための挿通部31が設けられている。リード15は、挿通部31において封止材30の気密状態を保持しつつ封止材30を貫通している。
【0038】
(硬化促進層50)
図4に示すように、本実施形態の熱電変換パッケージ1は、硬化促進層50をさらに備える。硬化促進層50は、鉄(Fe)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)からなる所定金属群より選ばれる金属単体、所定金属群の2つ以上を組み合わせた合金、及び、所定金属群の少なくとも1つを含む金属化合物のいずれかを含む硬化促進剤からなる。硬化促進層50は、所定金属群を含まない第一基板12(外周縁部R2)と封止材30との間に介在している。なお、封止材30のより一層の硬化を促進するために、硬化促進層50は、例えば第二ケース部材22のフランジ部223と封止材30との間に介在してもよい。
【0039】
次に、上記の構成を備える熱電変換パッケージ1の製造に際して、封止材30によって第一基板12と第二ケース部材22とを接合する(ケース20の一部を接合する)方法の一例について説明する。
【0040】
まず、熱電素子11及び第二基板13を囲むように、第一基板12の外周縁部R2の上側の面に、硬化促進剤を塗布することで硬化促進層50(
図4参照)を形成する。硬化促進剤を塗布する具体的な方法は、任意であってよいが、例えばディスペンサーを用いて塗布する方法が好ましい。硬化促進剤は、第一基板12の外周縁部R2の上側の面全体に形成されてもよいが、第一基板12の外周縁部R2に位置するリード15(
図3参照)と電気的に絶縁されるように形成されることがより好ましい。
【0041】
次いで、熱電素子11及び第二基板13を囲むように、硬化促進層50上に、液状(硬化前)の封止材30を塗布する。封止材30を塗布する方法は、任意であってよいが、例えばディスペンサーを用いて塗布する方法が好ましい。硬化促進剤及び封止材30は、同じ領域に塗布されるため、同じ塗布方法(例えばディスペンサーを用いた方法)を採用することで、硬化促進剤及び封止材30を効率的に塗布できる利点がある。
封止材30の塗布は、硬化促進剤を塗布した直後に実施されてもよいが、例えば硬化促進剤の塗布した後、硬化促進剤を乾燥させた後に実施されてもよい。また、封止材30は、例えば第二ケース部材22のフランジ部223の下側の面(Z軸負方向側の面)に塗布されてもよい。
【0042】
硬化促進剤及び封止材30の塗布後には、第二ケース部材22の凹部224に第二基板13及び熱電素子11が収容されるように第一基板12(第一ケース部材21)上に第二ケース部材22を配置する。これにより、封止材30が第一基板12の外周縁部R2と第二ケース部材22のフランジ部223との間に介在する。また、硬化促進剤からなる硬化促進層50が第一基板12と封止材30との間に介在する(
図4参照)。封止材30と第二ケース部材22のフランジ部223とは、これらの間に空気(気泡)が介在しないように密着する。同様に、封止材30と硬化促進層50とは、これらの間に空気(気泡)が介在しないように密着する。
【0043】
この状態においては、封止材30に含まれる嫌気性硬化樹脂が、第一基板12側に設けられた硬化促進層50に含まれる所定金属群と反応して硬化する。また、封止材30に含まれる嫌気性硬化樹脂は、第二ケース部材22に含まれる所定金属群と反応して硬化する。これにより、封止材30が硬化し、第一基板12と第二ケース部材22とを封止材30によって気密に接合することができる。また、本実施形態では、Z軸方向における両側から封止材30の硬化反応が進むため、片側のみから硬化反応が進む場合と比較して、短時間で封止材30を硬化させることができる。また、封止材30の厚みが大きくても、封止材30全体をより確実に硬化させることができる。
【0044】
上記したように第一基板12と第二ケース部材22とを封止材30によって接合する際には、封止材30の硬化反応が開始する前に、封止材30の厚さを予め適切に調整することが好ましい。封止材30の厚さの調整は、例えば封止材30の厚さが均一となるように封止材30を塗布することで実施されてもよいし、例えば封止材30の硬化反応が開始する前に、封止材30を第一基板12と第二ケース部材22との間に挟んで押し潰すことで実施されてもよい。ディスペンサーを用いて封止材30を塗布する場合には、封止材30を第一基板12と第二ケース部材22との間に挟んで押し潰すことで、封止材30の厚さを調整する方がより簡単である。
【0045】
また、封止材30による第一基板12と第二ケース部材22との接合は、ケース20内に気密に封止される熱電素子11が酸素や水蒸気によって劣化しないように、真空雰囲気下(減圧雰囲気下)や非酸化性雰囲気下において実施されることが好ましい。具体的には、第一基板12と第二ケース部材22との重ね合わせが、真空雰囲気下(減圧雰囲気下)や非酸化性雰囲気下において実施されることが好ましい。この場合、ケース20内を真空状態(減圧状態)あるいは非酸化性の状態とすることができ、酸素や水蒸気による熱電素子11の劣化を抑制又は防止することができる。
【0046】
また、第一基板12と第二ケース部材22とを封止材30によって接合する際には、封止材30を加熱してもよい。この場合には、封止材30の硬化反応を加速させることができ、封止材30による第一基板12と第二ケース部材22との接合する工程に要する時間の短縮を図ることができる。
【0047】
また、第一基板12と第二ケース部材22とを封止材30によって接合した後に、通常雰囲気下(大気と同じ状態の雰囲気下)において追加加熱(キュア)を実施してもよい。この場合には、封止材30の材料を適宜選択することによって、より強靭な封止材30を得ることも可能である。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、熱電変換パッケージ1の製造過程において、液状(硬化前)の封止材30が、第一基板12と所定金属群の少なくとも一つを含む第二ケース部材22との間に設けられることで、空気を遮断した状態で封止材30の嫌気性硬化樹脂と第二ケース部材22の所定金属群とが反応して封止材30が硬化する。これにより、第一基板12と第二ケース部材22とを封止材30によって気密に接合することができる。この際、真空雰囲気下で液状の封止材30を硬化させても、液状の封止材30の発泡を防ぐことができる。したがって、製造後の熱電変換パッケージ1では、第一基板12と第二ケース部材22とを気密に接合する封止材30の内部に気泡が残ることを抑制又は防止することができる。
【0049】
また、封止材30の硬化速度を加速させるために、第一基板12と第二ケース部材22との間に設けた状態で封止材30を加熱しても、液状の封止材30の発泡を防ぐことができる。
【0050】
なお、封止材30の発泡の発生を回避する手法としては、封止材30として、樹脂をシート状に加工したシート状封止材を用いることも考えられる。シート状封止材は、所定金属群と反応して硬化する特性を有していなくてもよく、例えばエポキシ樹脂などの樹脂材料で形成されてよい。シート状封止材を用いる場合には、熱電素子11を囲むようにシート状封止材を設けるために、シート状封止材の中央部分をくり抜いて使用したり、シート状封止材を細かく切断して熱電素子11の周りに配置したりする。このため、液状の封止材30を用いる本実施形態は、シート状封止材を用いる場合と比較して、製造コストや製造効率の点で有利である。
【0051】
また、本実施形態の封止材30に含まれる嫌気性硬化樹脂は、分子構造中にアクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方を含む良好な耐熱性を有するアクリル樹脂である。耐熱性の高い封止材30によってケース20を接合することで、熱電変換パッケージ1における熱電素子11の保護機能を長期間にわたって維持することができる。したがって、熱電変換パッケージ1の信頼性向上を図ることができる。
【0052】
また、封止材30が酸化劣化防止剤を含むことで、封止材30の劣化を抑えて、熱電変換パッケージ1の長期間の信頼性向上を図ることができる。以下、この点について説明する。
封止材30の嫌気性硬化樹脂が所定金属群と反応する際には、所定金属群の少なくとも一つを含む金属単体、合金、金属化合物等の金属が封止材30に溶け出す。このため、硬化後の封止材30には、金属が含まれる。ここで、封止材30が酸化劣化防止剤を含むことで、硬化後の封止材30に含まれる金属の酸化を抑制して、封止材30の劣化を抑えることができる。
【0053】
また、酸化劣化防止剤が液状であるチオエーテル系酸化劣化防止剤を含む場合には、液状の酸化劣化防止剤と液状(硬化前)の嫌気性硬化樹脂とを攪拌により混合して、液状の封止材30を簡単に生成することができる。
【0054】
さらに、本実施形態では、封止材30における酸化劣化防止剤の添加量を0.01wt%以上とすることで、前述した封止材30の劣化(酸化)を確実に抑制することができる。また、酸化劣化防止剤の添加量を10wt%以下とすることで、互いに接合される第一基板12及び第二ケース部材22に対する封止材30の密着性を十分に確保することができる。
【0055】
さらに、本実施形態の封止材30がシリカフィラーを含む場合には、封止材30の耐熱性をさらに向上することができる。したがって、当該封止材30を使用した熱電変換パッケージ1の信頼性向上をさらに図ることができる。
また、封止材30にシリカフィラーを1%以上含ませることで、封止材30の耐熱性を確実に向上することができる。また、封止材30にシリカフィラーを40%以下含ませることで、封止材30が脆くなることを抑制又は防止して、封止材30の封止性能を確保することができる。
【0056】
また、本実施形態では、硬化前における封止材30の粘度を1Pa・s以上としたり、硬化前における液状の封止材30のチキソトロピックインデクスを1以上としたりすることで、液状の封止材30を第一基板12あるいは第二ケース部材22の所定部位にディスペンサーで描画した際に、液状の封止材30を第一基板12あるいは第二ケース部材22の所定部位に保持することができる。すなわち、液状の封止材30が第一基板12あるいは第二ケース部材22の所定部位以外の部分に流れ出て、ケース20が封止材30によって不要に汚染されることを抑制することができる。
また、液状の封止材30の粘度を100Pa・s以下としたり、液状の封止材30のチキソトロピックインデクスを6以下としたりすることで、ディスペンサーから液状の封止材30を吐出させる速度の低下を抑えて、液状の封止材30を第一基板12あるいは第二ケース部材22の所定部位に形成する工程のタクトタイムを短く抑えることができる。
【0057】
また、本実施形態では、封止材30の熱伝導係数を5W/m・K未満とすることで、封止材30よって接合される第一基板12と第二ケース部材22との間における熱流動を小さく抑えるあるいは無くすことができる。この点について説明すれば、本実施形態では、第一基板12が熱電変換モジュール10の低温熱源側に位置し、第二ケース部材22が熱電変換モジュール10の高温熱源側に位置する。このため、これら第一基板12と第二ケース部材22とを封止材30によって接合しても、低温熱源側の第一基板12と高温熱源側の第二ケース部材22との間で熱流動が発生し難くなる。これにより、熱電変換モジュール10の性能(発電性能や冷却性能)の低下を抑制又は防止することができる。
【0058】
本実施形態の熱電変換パッケージ1では、内部に気泡が無い、あるいは、内部の気泡が非常に少ない封止材30によって第一基板12と第二ケース部材22とが気密に接合されている。これにより、熱電変換パッケージ1がその動作時に加熱されても、上記気泡に基づいて封止材30に不具合が生じてケース20の密封性が損なわれることを抑制又は防止することができる。したがって、信頼性の高い熱電変換パッケージ1を提供することができる。
【0059】
また、本実施形態の熱電変換パッケージ1では、所定金属群を含まない第一基板12と封止材30との間に所定金属群の少なくとも一つを含む硬化促進層50が介在している。これにより、第一基板12が封止材30を硬化させるための所定金属群を含まなくても、封止材30を第一基板12側において硬化させることができる。
【0060】
また、本実施形態の熱電変換パッケージ1において、封止材30の厚みを20μm以上とすることで、ケース20(第二ケース部材22)が導電性を有していても、ケース20(特に第二ケース部材22)と熱電変換モジュール10のリード15との電気的な絶縁性を、封止材30によって確保することができる。
また、封止材30の厚みを500μm以下とすることで、接合される第一基板12と第二ケース部材22との間に介在する封止材30を速やかにかつ確実に硬化させることができる。また、封止材30の使用量を低く抑えて、無駄な材料コストがかからない熱電変換パッケージ1を得ることもできる。
【0061】
第一実施形態において、硬化促進層50は、例えば所定金属群の少なくとも一つを含む第二ケース部材22(フランジ部223)と封止材30との間に介在してもよい。この場合には、封止材30の硬化をより一層促進させることができる。
また、硬化促進層50は、例えば第一ケース部材21をなす第一基板12(外周縁部R2)と封止材30との間、及び、第二ケース部材22(フランジ部223)と封止材30との間の両方に介在してもよい。すなわち、硬化促進層50は、互いに接合されるケース20の2つの部位のうち少なくとも一方と封止材30との間に介在してよい。
【0062】
第一実施形態において、Z軸方向において第二ケース部材22のフランジ部223に対向する第一基板12の外周縁部R2の上側の面には、例えば電極14と同様に、金属めっき処理等によって形成された導体部が形成されてもよい。この導体部は、鉄(Fe)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)からなる所定金属群より選ばれる金属単体、所定金属群の2つ以上を組み合わせた合金、及び、所定金属群の少なくとも1つを含む金属化合物のいずれかを含む。この場合には、第二ケース部材22のフランジ部223と第一基板12の外周縁部R2の導体部との間に介在する封止材30が、空気を遮断した状態で第一基板12の導体部に接触することでも硬化反応する。なお、導体部は、第一基板12の外周縁部R2を通るリード15に対して間隔をあけて配置され、当該リード15と電気的に絶縁されることが好ましい。
また、第一基板12の外周縁部R2に形成された導体部と封止材30との間には硬化促進層50が介在してもよい。この場合には、封止材30の硬化をより一層促進することができる。
【0063】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態について、
図5から
図8を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図5から
図8には、必要に応じて相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は
図5から
図8において共通である。各軸において、矢印が延びる方向を「正方向」、正方向と逆の方向を「負方向」と称する。
【0064】
(熱電変換パッケージ1Aの全体構成)
図5から
図7に示すように、熱電変換パッケージ1Aは、第一実施形態と同様に、熱電変換モジュール10Aと、ケース20Aと、封止材30(熱電変換パッケージ用封止材)と、を備える。
熱電変換モジュール10Aは、熱電変換パッケージ1Aの本体を構成する。ケース20Aは、熱電変換モジュール10Aを気密に封止している。
【0065】
(熱電変換モジュール10A)
図6及び
図7に示すように、本実施形態の熱電変換モジュール10Aは、第一実施形態の熱電変換モジュール10と同様の第一基板12A、第二基板13、熱電素子11、電極14及びリード15Aを備える。ただし、本実施形態の第一基板12Aは、Z軸方向から見た形状及び大きさが第二基板13と同じになるように形成されている。
【0066】
本実施形態のリード15Aは、帯板状ではなく、線状に形成されている。一対のリード15AはY軸正方向側に位置する第一基板12Aの端部において、X軸方向における第一基板12Aの両端部分に接合されることで電極14に接続されている。リード15Aの第一基板12Aへの接合には、例えば、はんだ、ろう材、導電性ペーストなどの公知の接合材を使用できる。各リード15Aは、第一基板12AからY軸正方向に外側に引き出されている。
【0067】
(ケース20A)
図5及び
図7に示すように、本実施形態のケース20Aは、第一実施形態と同様に、Z軸方向において熱電素子11の両側に配置される2つのケース部材21A,22Aを有する。
【0068】
2つのケース部材21A,22Aのうち第一ケース部材21Aは、第一基板12AのZ軸負方向側に配置されている。第一ケース部材21は、Z軸負方向側に窪む凹部214Aを有する形状に形成され、熱電変換モジュール10Aの第一基板12A側を覆っている。
図7に示すように、第一ケース部材21Aは、底壁部211Aと、側壁部212Aと、フランジ部213Aと、を有する。底壁部211A及び側壁部212Aは、第一ケース部材21Aの凹部214Aを構成する。底壁部211Aは、凹部214Aの平坦な底面を構成し、X軸及びY軸方向に沿って延びる矩形の平板状に形成されている。側壁部212Aは、凹部214Aの側面を構成し、底壁部211Aの周縁からZ軸正方向側に延びる矩形の筒状に形成されている。底壁部211Aの周縁から側壁部212Aが延びる方向は、X軸及びY軸方向に延びる方向に直交している、すなわちZ軸正方向である。なお、側壁部212Aは、第一実施形態の第二ケース部材22の傾斜壁部222(
図3参照)と同様に、例えば底壁部211Aの周縁からZ軸正方向に向かうにしたがって、X軸及びY軸方向に沿って底壁部211Aの外側に延びるテーパー状に形成されてもよい。フランジ部213Aは、側壁部212AのZ軸正方向側の端部(上端部)からX軸及びY軸方向に沿って側壁部212Aの外側に延びる。
【0069】
第二ケース部材22Aは、第一実施形態の第二ケース部材22と同様に、Z軸正方向側に窪む凹部224を有する形状に形成され、熱電変換モジュール10Aの第二基板13側を覆っている。
第二ケース部材22Aは、第一ケース部材21Aと同じ形状に形成され、第一ケース部材21Aに対して上下反転した状態で配置される。すなわち、第二ケース部材22Aは、第一ケース部材21Aと同様に、第二ケース部材22Aの凹部224を構成する底壁部221及び側壁部222Aと、側壁部222AのZ軸負方向側の端部(下端部)からX軸及びY軸方向に沿って側壁部222Aの外側に延びるフランジ部223と、を有する。
【0070】
第一ケース部材21Aの凹部214Aには、第一基板12A及び熱電素子11(そのZ軸負方向側の部分)が収容される。この状態において、第一ケース部材21Aの底壁部211A(凹部214Aの底面)は、Z軸方向において第一基板12Aの下側の面(Z軸負方向側の面)に対向するように位置する。底壁部211Aは、第一基板12Aの下側の面に直接接触してもよい。本実施形態において、第一基板12Aと底壁部211Aとの間には、熱伝達層41Aが介在している。熱伝達層41Aは、第二基板13及び底壁部211Aに密着している。熱伝達層41Aは、第一基板12Aと第一ケース部材21Aの底壁部211Aとの間の熱抵抗を低減させることにより、第一基板12Aと第一ケース部材21Aとの間の熱伝達性を向上させる。なお、熱伝達層41Aは、本実施形態の熱電変換パッケージ1Aに必須でないため、省略されてもよい。
第一ケース部材21Aのフランジ部213Aは、第一基板12A、第二基板13及び熱電素子11の周囲全体に位置する。
【0071】
第二ケース部材22Aの凹部224には、第二基板13及び熱電素子11(そのZ軸正方向側の部分)が収容される。この状態において、第二ケース部材22Aの底壁部221(凹部224の底面)は、Z軸方向において第二基板13の上側の面(Z軸正方向側の面)に対向するように位置する。底壁部221は、第二基板13の上側の面に直接接触してもよい。本実施形態において、第二基板13と底壁部221との間には、熱伝達層42Aが介在している。熱伝達層42Aは、第二基板13及び底壁部221に密着している。熱伝達層42Aは、第二基板13と第二ケース部材22Aの底壁部221との間の熱抵抗を低減させることにより、第二基板13と第二ケース部材22Aとの間の熱伝達性を向上させる。なお、熱伝達層42Aは、本実施形態の熱電変換パッケージ1Aに必須でないため、省略されてもよい。
【0072】
第二ケース部材22Aのフランジ部223は、第一基板12A、第二基板13及び熱電素子11の周囲全体において、Z軸方向において第一ケース部材21Aのフランジ部213Aに対向するように位置する。第一基板12Aから外側に引き出されるリード15Aは、Z軸方向において2つのケース部材21A,22Aのフランジ部213A,223の間を通ってケース20Aの外側に引き出される。
第一基板12A、第二基板13及び熱電素子11の周囲全体において、2つのケース部材21A,22Aのフランジ部213A,223が、封止材30によって互いに接合される。これにより、熱電変換モジュール10Aの熱電素子11、第一基板12A、第二基板13がケース20の内部に気密に封止される。
【0073】
2つのケース部材21A,22Aは、任意の材料によって形成されてよい。ただし、2つのケース部材21A,22Aは、ケース20A内に配置される第一基板12Aや第二基板13とケース20A外部との間で熱が効率よく伝わるように、熱伝導率が高い材料によって形成されることがより好ましい。
本実施形態の各ケース部材21A,22Aは、第一実施形態の第二ケース部材22と同様に、鉄(Fe)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)からなる所定金属群より選ばれる金属単体、所定金属群の2つ以上を組み合わせた合金、及び、所定金属群の少なくとも1つを含む金属化合物のいずれかを含む金属材料によって形成されている。
なお、ケース部材21A,22Aは、所定金属群を含まない他の金属材料や導電性材料によって形成されてもよい。また、ケース部材21A,22Aは、絶縁体材料によって形成されてもよいし、セラミック材料や樹脂材料によって形成されてもよい。
【0074】
(封止材30)
封止材30は、第一実施形態と同じである。本実施形態において、封止材30は、2つのケース部材21A,22Aのフランジ部213A,223の間に介在し、これら2つのフランジ部213A,223を気密に接合している。
図7に示すように、封止材30には、熱電変換モジュール10Aのリード15Aをケース20Aの外側に引き出すための挿通部31Aが設けられている。リード15Aは、挿通部31Aにおいて封止材30の気密状態を保持しつつ封止材30を貫通している。
【0075】
(硬化促進層50)
図8に示すように、本実施形態の熱電変換パッケージ1Aは、第一実施形態と同様の硬化促進層50を備える。本実施形態において、硬化促進層50は、第一ケース部材21A(フランジ部213A)と封止材30との間、及び、第二ケース部材22A(フランジ部223)と封止材30との間にそれぞれ介在している。なお、第一ケース部材21Aや第二ケース部材22Aが金属である場合には、例えば、硬化促進層50が第一ケース部材21Aや第二ケース部材22Aと封止材30との間に介在しなくてもよい。
【0076】
次に、上記の構成を備える第二実施形態の熱電変換パッケージ1Aの製造に際して、封止材30によって2つのケース部材21A,22Aを互いに接合する(ケース20Aの一部を接合する)方法の一例について説明する。
【0077】
まず、第一ケース部材21Aのフランジ部213Aの上側の面(Z軸正方向側の面)、及び、第二ケース部材22Aのフランジ部223の下側の面(Z軸負方向側の面)に、硬化促進剤を塗布することで硬化促進層50(
図8参照)をそれぞれ形成する。硬化促進剤を塗布する具体的な方法は、例えばディスペンサーを用いて塗布する方法であってよい。硬化促進剤は、互いに対向する2つのケース部材21A,22Aのフランジ部213A,223の面全体に形成されてもよいが、2つのケース部材21A,22Aのフランジ部213A,223の間を通るリード15A(
図7参照)と電気的に絶縁されるように形成されることがより好ましい。
【0078】
次いで、第一基板12A、第二基板13及び熱電素子11を囲むように、第一ケース部材21Aのフランジ部213Aに形成された硬化促進層50上に、液状(硬化前)の封止材30を塗布する。封止材30を塗布する方法は、例えばディスペンサーを用いて塗布する方法であってよい。
封止材30の塗布は、硬化促進剤を塗布した直後に実施されてもよいが、例えば硬化促進剤の塗布した後、硬化促進剤を乾燥させた後に実施されてもよい。また、封止材30は、例えば第二ケース部材22Aのフランジ部223に形成された硬化促進層50上に塗布されてもよい。
【0079】
硬化促進剤及び封止材30の塗布後には、第一ケース部材21Aの凹部214Aに第一基板12A及び熱電素子11を収容した上で、第二ケース部材22の凹部224に第二基板13及び熱電素子11が収容されるように第一ケース部材21A上に第二ケース部材22Aを配置する。これにより、封止材30が第一ケース部材21Aのフランジ部213Aと第二ケース部材22Aのフランジ部223との間に介在する。また、硬化促進層50が第一ケース部材21Aと封止材30との間、及び第二ケース部材22Aと封止材30との間にそれぞれ介在する。封止材30と硬化促進層50とは、これらの間に空気(気泡)が介在しないように密着する。
【0080】
この状態において、封止材30に含まれる嫌気性硬化樹脂は、各ケース部材21A,22Aのフランジ部213A,223上に設けられた硬化促進層50に含まれる所定金属群と反応して硬化する。これにより、封止材30が硬化し、第一ケース部材21Aと第二ケース部材22Aとを封止材30によって気密に接合することができる。本実施形態では、第一実施形態と同様に、Z軸方向における両側から封止材30の硬化反応が進むため、片側のみから硬化反応が進む場合と比較して、短時間で封止材30を硬化させることができる。
【0081】
上記したように第一ケース部材21Aと第二ケース部材22Aとを封止材30によって接合する際には、第一実施形態の場合と同様に、封止材30の硬化反応が開始する前に、封止材30の厚さを予め適切に調整することが好ましい。
また、封止材30による第一ケース部材21Aと第二ケース部材22Aとの接合は、ケース20A内に気密に封止される熱電素子が酸素や水蒸気によって劣化しないように、真空雰囲気下(減圧雰囲気下)や非酸化性雰囲気下において実施されることが好ましい。具体的には、第一ケース部材21Aと第二ケース部材22Aとの重ね合わせが、真空雰囲気下(減圧雰囲気下)や非酸化性雰囲気下において実施されることが好ましい。
【0082】
また、第一ケース部材21Aと第二ケース部材22Aとを封止材30によって接合する際には、封止材30を加熱してもよい。
また、第一ケース部材21Aと第二ケース部材22Aとを封止材30によって接合した後に、通常雰囲気下において追加加熱(キュア)を実施してもよい。
【0083】
第二実施形態によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【0084】
第二実施形態において、硬化促進層50は、例えば所定金属群の少なくとも一つを含む2つのケース部材21A,22Aの一方と封止材30との間にだけ介在してもよい。また、第二実施形態の熱電変換パッケージ1Aは、硬化促進層50を備えなくてもよい。
【0085】
上記した実施形態の熱電変換パッケージについて、実験例を用いてさらに説明する。本発明の技術思想は、実験例の具体的内容により何ら限定されない。
【0086】
表1,2に示す32個の実験例について、それぞれ第一サンプルと第二サンプルとを作製した。
【0087】
【0088】
【0089】
(第一サンプル)
第一サンプルは、平板状に形成された第一ケース部材としての第一部材と、平板状に形成された第二ケース部材としての第二部材とを、封止材によって接合したものである。第一サンプルにおいて、第一部材の厚さは、ガラスエポキシ基板(ガラエポ基板)の場合に100μmであり、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)の場合に200μmである。また、第一サンプルにおいて、第二部材の厚さはステンレス鋼(SUS)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)のいずれであっても200μmである。
【0090】
第一サンプルは、以下の工程を経て製造される。
はじめに、第一部材と第二部材との間に液状の封止材を配置する配置工程を実施する。なお、一部の実験例(実験例1~7,15~17)では、配置工程において、第一部材と封止材との間や、第二部材と封止材との間に硬化促進層を形成しておく。
次いで、真空チャンバー内においてヒートシールバーで封止材の厚さが所定の厚さとなるように第一部材と第二部材とのギャップを調整しながら加熱することで、封止材を硬化させる硬化工程を実施する。硬化工程におけるヒートシールの条件は、封止材が嫌気性硬化樹脂を含む実験例1~28の場合に80℃で60秒間とし、封止材がエポキシ樹脂を含む実験例29~32の場合に120℃で60秒間としている。
その後、通常雰囲気下において追加加熱(キュア)する追加加熱工程を実施する。追加加熱工程における条件は、実験例1~28の場合に80℃で24時間とし、実験例29~32の場合に150℃で8時間としている。
最後に、上記のようにして第一部材と第二部材とを接合した構造体を、幅10mmに切断したものを第一サンプルとした。
【0091】
(第二サンプル)
第二サンプルは、平板状に形成された第一ケース部材としての第一部材と、中央部分に凹部(外側から見て凸部)が形成され、周縁部分にフランジ部が形成された第二ケース部材としての第二部材とを用意し、第二部材の凹部の開口(空間)が第一部材によって覆われるように、第一部材の周縁部分と第二ケース部材のフランジ部とを封止材によって接合したものである。
第二サンプルにおいて、第一部材は、1辺5cmの正方形で厚さが100μmの平板状に形成されている。一方、第二部材は、1辺5cmの正方形で厚さが200μmであり、フランジ部の幅寸法が5mmとなる形状に形成されている。
【0092】
第二サンプルは、第一サンプルと同じ配置工程、硬化工程、追加加熱工程を経て製造される。ただし、第二サンプルにおける第一部材と第二部材との接合部分は、凹部を囲む四角環状であるため、硬化工程においては、四角環状(口の字型)のヒートシールバーを用いることで、四角環状の四辺に設置された封止材を同時に硬化させた。
製造後の第二サンプルでは、製造前には平板状であった第一部材のうち第二部材の凹部に対応する中央部分が、第二部材の凹部側(内側)に少し窪んでいた。
【0093】
(実験例1)
表1に示す実験例1の第一、第二サンプルでは、第一部材としてガラスエポキシ基板(ガラエポ基板)を使用し、第二部材としてステンレス鋼(SUS)を使用した。実験例1の封止材は、嫌気性硬化樹脂を含み、硬化前における粘度が14Pa・sとなる「封止材A」である。実験例1の「封止材A」には、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)として0.20wt%のフェノール系酸化劣化防止剤(酸化防止剤A)を添加したが、シリコンフィラー(Siフィラー)は添加していない。また、実験例1では、封止材の厚さを200μmとした。また、実験例1では、第一部材と封止材との間にのみ、銅化合物を含む硬化促進層を設けた。
【0094】
(実験例2)
実験例2の第一、第二サンプルは、「封止材A」に、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)として0.10wt%のホスファイト系酸化劣化防止剤(酸化防止剤B)を添加したことを除いて、実験例1と同じである。
【0095】
(実験例3)
実験例3の第一、第二サンプルは、「封止材A」に、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)として0.20wt%のホスファイト系酸化劣化防止剤(酸化防止剤C)を添加したこと、及び、5%のシリコンフィラーを添加したことを除いて、実験例1,2と同じである。
【0096】
(実験例4)
実験例4の第一、第二サンプルは、「封止材A」に、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)として1.00wt%のホスファイト系酸化劣化防止剤(酸化防止剤D)を添加したことを除いて、実験例1,2と同じである。
【0097】
(実験例5)
実験例5の第一、第二サンプルは、「封止材A」に、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)として3.00wt%のホスファイト系酸化劣化防止剤(酸化防止剤E)を添加したことを除いて、実験例3と同じである。
【0098】
(実験例6)
実験例6の第一、第二サンプルは、「封止材A」に、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)として5.00wt%のホスファイト系酸化劣化防止剤(酸化防止剤F)を添加したことを除いて、実験例3,5と同じである。
【0099】
(実験例7)
実験例7の第一、第二サンプルは、「封止材A」に、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)として0.40wt%のチオエーテル系酸化劣化防止剤(酸化防止剤G)を添加したことを除いて、実験例3,5,6と同じである。
【0100】
(実験例8)
実験例8の第一、第二サンプルは、第一部材としてステンレス鋼(SUS)を使用し、「封止材A」に5%のシリコンフィラーを添加し、硬化促進層を使用しないことを除き、実験例1と同じである。
【0101】
(実験例9)
実験例9の第一、第二サンプルは、「封止材A」に、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)として実験例2と同様の「酸化防止剤B」を添加したことを除いて、実験例8と同じである。
【0102】
(実験例10)
実験例10の第一、第二サンプルは、「封止材A」に、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)として実験例3と同様の「酸化防止剤C」を添加したことを除いて、実験例8,9と同じである。
【0103】
(実験例11)
実験例11の第一、第二サンプルは、「封止材A」に、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)として実験例4と同様の「酸化防止剤D」を添加したことを除いて、実験例8~10と同じである。
【0104】
(実験例12)
実験例12の第一、第二サンプルは、「封止材A」に、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)として実験例5と同様の「酸化防止剤E」を添加したことを除いて、実験例8~11と同じである。
【0105】
(実験例13)
実験例13の第一、第二サンプルは、「封止材A」に、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)として実験例6と同様の「酸化防止剤F」を添加したことを除いて、実験例8~12と同じである。
【0106】
(実験例14)
実験例13の第一、第二サンプルは、「封止材A」に、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)として実験例7と同様の「酸化防止剤G」を添加したことを除いて、実験例8~12と同じである。
【0107】
(実験例15)
実験例15の第一、第二サンプルは、「封止材A」に、5%のシリコンフィラーを添加し、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)を添加しないことを除き、実験例1と同じである。
【0108】
(実験例16)
実験例16の第一、第二サンプルは、第一部材と封止材との間、及び、第二部材と封止材との間の両方に、銅化合物を含む硬化促進層を設けたことを除き、実験例15と同じである。
【0109】
(実験例17)
表2に示す実験例17の第一、第二サンプルは、第一部材としてステンレス鋼(SUS)を使用したことを除き、実験例16と同じである。
【0110】
(実験例18)
実験例18の第一、第二サンプルは、硬化促進層を使用しないことを除き、実験例15,16と同じである。
【0111】
(実験例19)
実験例19の第一、第二サンプルは、第一部材としてステンレス鋼(SUS)を使用し、封止材の厚さを600μmとしたことを除き、実験例18と同じである。
【0112】
(実験例20)
実験例20の第一、第二サンプルは、封止材の厚さを20μmとしたことを除き、実験例19と同じである。
【0113】
(実験例21)
実験例21の第一、第二サンプルは、封止材が、嫌気性硬化樹脂を含み、硬化前における粘度が7Pa・sとなる「封止材B」であることを除き、実験例18と同じである。
【0114】
(実験例22)
実験例22の第一、第二サンプルは、封止材が、嫌気性硬化樹脂を含み、硬化前における粘度が23Pa・sとなる「封止材C」であることを除き、実験例18,21と同じである。
【0115】
(実験例23)
実験例23の第一、第二サンプルは、封止材が、嫌気性硬化樹脂を含み、硬化前における粘度が0.9Pa・sとなる「封止材D」であることを除き、実験例18,21,22と同じである。
【0116】
(実験例24)
実験例24の第一、第二サンプルは、封止材が、嫌気性硬化樹脂を含み、硬化前における粘度が7Pa・sとなる「封止材B」であること、また、封止材の厚さを200μmとしたことを除き、実験例19と同じである。
【0117】
(実験例25)
実験例25の第一、第二サンプルは、第二部材としてアルミニウム(Al)を使用し、硬化促進層を使用しないことを除き、実験例17と同じである。
【0118】
(実験例26)
実験例26の第一、第二サンプルは、第二部材として銅(Cu)を使用したことを除き、実験例25と同じである。
【0119】
(実験例27)
実験例27の第一、第二サンプルは、第一部材としてアルミニウム(Al)を使用したことを除き、実験例25と同じである。
【0120】
(実験例28)
実験例28の第一、第二サンプルは、第一部材として銅(Cu)を使用したことを除き、実験例26と同じである。
【0121】
(実験例29)
実験例29の第一、第二サンプルでは、実験例1と同様に、第一部材としてガラスエポキシ基板(ガラエポ基板)を使用し、第二部材としてステンレス鋼(SUS)を使用した。実験例29の封止材は、エポキシ樹脂を含み、硬化前における粘度が55Pa・sとなる「封止材E」である。実験例29の「封止材E」には、5%のシリコンフィラー(Siフィラー)を添加したが、酸化劣化防止剤(酸化防止剤)を添加していない。
【0122】
(実験例30)
実験例30の第一、第二サンプルでは、実験例1と同様に、第一部材としてガラスエポキシ基板(ガラエポ基板)を使用し、第二部材としてステンレス鋼(SUS)を使用した。実験例29の封止材は、エポキシ樹脂を含み、硬化前における粘度が115Pa・sとなる「封止材F」である。
【0123】
(実験例31)
実験例31の第一、第二サンプルは、封止材が、エポキシ樹脂を含み、硬化前における粘度が95Pa・sとなる「封止材G」であることを除き、実験例30と同じである。
【0124】
(実験例32)
実験例32の第一、第二サンプルは、封止材が、エポキシ樹脂を含み、硬化前における粘度が48Pa・sとなる「封止材H」であることを除き、実験例30,31と同じである。
【0125】
(第一サンプルによる評価)
実験例1~32の第一サンプルでは、封止材における気泡の有無の評価、及び、第一部材と第二部材との密着強度の評価を実施した。
封止材における気泡の有無の評価は、目視によって行った。表3,4において、「○」は封止材に気泡が無いことを示し、「×」は封止材に気泡があることを示している。
【0126】
【0127】
【0128】
第一部材と第二部材との密着強度の評価は、引張強度試験機を用いて第一部材と第二部材とを剥離させる剥離試験を実施することで行った。第一部材と第二部材とが剥離したときの強度(N/cm)を、密着強度(N/cm)とした。密着強度を評価するための剥離試験は、製造された第一サンプルそのもの、及び、150℃で500時間の耐熱試験を実施した後の第一サンプルに対して、それぞれ行った。製造された第一サンプルそのものにおける密着強度は、表3,4において「初期強度」で示している。耐熱試験を実施した後の第一サンプルにおける密着強度は、表3,4において「耐熱後強度」で示している。密着強度(N/cm)の評価は、5N/cm以上の場合に合格とし、5N/cm未満の場合に不合格とした。
【0129】
(気泡の有無の評価)
表3,4によれば、封止材がエポキシ樹脂を含む実験例29~32では、いずれも封止材に気泡があった。これは、第一サンプルの製造において、真空チャンバー内で封止材を加熱硬化する際に液状(硬化前)のエポキシ樹脂が発砲したためだと考えられる。
一方、封止材が嫌気性硬化樹脂を含む実験例1~28では、いずれも封止材に気泡が無かった。これは、真空チャンバー内で封止材を加熱硬化する際、封止材に含まれる嫌気性硬化樹脂が空気を遮断した状態で第一、第二部材や硬化促進層に含まれる所定金属群と反応することで封止材が硬化するためだと考えらえる。
【0130】
(密着強度の評価)
表3,4によれば、封止材がエポキシ樹脂を含む実験例29~32では、いずれも封止材に気泡があったため、密着強度の評価(剥離試験)を実施することができなかった。
一方、封止材が嫌気性硬化樹脂を含む実験例1~28では、「初期強度」、「耐熱後強度」がともに5N/cm以上であり、合格であった。
また、実験例1~28では、いずれも「耐熱後強度」が「初期強度」よりも低下していた。ただし、封止材に酸化劣化防止剤(酸化防止剤)を添加した実験例1~14では、「初期強度」と「耐熱後強度」との差が、封止材に酸化劣化防止剤(酸化防止剤)を添加していない実験例15~28よりも小さかった。これは、封止材に添加した酸化劣化防止剤によって封止材の耐熱性や耐酸化性が向上したためであることが考えられる。
【0131】
(第二サンプルによる評価)
実験例1~32の第二サンプルでは、その密封性の評価を実施した。
密封性の評価に際しては、製造された第二サンプルを150℃で500時間保管した後に、第二サンプルを真空チャンバー内に設置して真空度を徐々に上げ(すなわち大気圧から徐々に減圧し)、第一部材の中央部分が外側に膨らんだときの真空度を測定した。そして、測定された真空度が-80kPa以上である場合に密封性があると判定し、測定された真空度が-80kPa未満である場合に密封性がないと判定することで、第二サンプルの密封性の評価を行った。表3,4において、「○」は密封性があることを示し、「×」は密封性がないことを示している。
【0132】
(密封性の評価)
表3,4によれば、封止材がエポキシ樹脂を含む実験例29~32では、いずれも密封性がなかった。これは、封止材に気泡があったことが原因であると考えられる。
一方、封止材が嫌気性硬化樹脂を含む実験例1~28では、いずれも密封性があった。これは、封止材に気泡がなく、また「耐熱後強度」が5N/cm以上であったことが要因であると考えられる。
【0133】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更が2以上適宜組み合わされてもよい。
【0134】
本発明の熱電変換パッケージにおいて、ケースは、上記した実施形態のように2つのケース部材によって構成されることに限らず、例えば1つのケース部材によって構成されてもよい。1つのケース部材は、例えば、ケース部材を構成する1つの板材に折り曲げ加工を施してケース部材の2つの部位が重ね合わせると共に、これら2つの部位の少なくとも一方に熱電変換モジュールを収容するための凹部を形成することで構成されてよい。この場合には、同一のケース部材の2つの部位(ケースの一部)を封止材によって接合することで、熱電素子を気密に封止することができる。
ケースが1つのケース部材によって構成される場合、熱電素子に接続されたリードは、互いに接合されるケース部材の2つの部位の間を通してケースの外側に引き出されればよい。
【0135】
本発明において、互いに接合されるケースの2つの部位の両方が、所定金属群を含まない場合、嫌気性硬化樹脂を含む封止材がこれらケースの2つの部位に単純に設けられるだけでは、封止材は硬化しない。このため、ケースの2つの部位が所定金属群を含まない場合には、ケースの少なくとも一方の部位に、硬化促進層が設けられていればよい。すなわち、接合すべきケースの2つの部位が所定金属群を含まなくても、接合すべきケースの部位と封止材との間に硬化促進層が設けられることで、封止材を硬化させて、ケースの2つの部位を気密に接合することができる。
【0136】
本発明において、互いに接合されるケースの2つの部位のうち少なくとも一方が、所定金属群の少なくとも一つを含む場合には、ケースの少なくとも一方の部位に含まれる所定金属群と封止材の嫌気性硬化樹脂とが反応して、封止材を硬化させることができる。このため、接合されるケースの部位と封止材との間には硬化促進層が設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0137】
1,1A 熱電変換パッケージ
10,10A 熱電変換モジュール
11 熱電素子
12,12A 第一基板
13,13A 第二基板
20,20A ケース
21,21A 第一ケース部材
22,22A 第二ケース部材
30 封止材(熱電変換パッケージ用封止材)
50 硬化促進層