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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186146
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】中間固定金具ユニット
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
A62B35/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094228
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】森石 航大
(72)【発明者】
【氏名】田原 康浩
(72)【発明者】
【氏名】大國 竜幸
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184KA04
2E184KA11
2E184LA03
2E184LA16
2E184LA20
(57)【要約】
【課題】高所作業時に作業者が装着する安全器をガイドするセーフティーワイヤの中間部位を保持しておくための中間固定金具ユニットを提供する。
【解決手段】作業者の墜落を防止する安全器をガイドするセーフティーワイヤ50を挟持するワイヤ保持部3と、ワイヤ保持部3の開閉状態を切替えるロック構造7と、を備えてなり、セーフティーワイヤ50上に少なくとも一対設けられている中間固定金具2と、個々の中間固定金具2をその設置対象である構造物に固定する固定部材5と、中間固定金具2と別体に設けられ、全てのロック構造7において共用され、かつこのロック構造7を解除してワイヤ保持部3を開状態にする鍵6と、を備えている中間固定金具ユニット1による。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の墜落を防止する安全器をガイドするセーフティーワイヤの中間部位を保持しておくための中間固定金具ユニットであって、
前記中間固定金具ユニットは、
前記セーフティーワイヤを挟持するワイヤ保持部と、前記ワイヤ保持部の開閉状態を切替えるロック構造と、を備えてなり、前記セーフティーワイヤ上に少なくとも一対設けられている中間固定金具と、
個々の前記中間固定金具をその設置対象である構造物に固定する固定部材と、
前記中間固定金具と別体に設けられ、全ての前記ロック構造に対して共用され、かつ前記ロック構造を解除して前記ワイヤ保持部を開状態にする鍵と、を備えていることを特徴とする中間固定金具ユニット。
【請求項2】
前記ワイヤ保持部は、
前記セーフティーワイヤを挟持する一対の挟持アームと、
一対の前記挟持アームにおいて前記セーフティーワイヤを挟持しない側の端部側を回動可能につなぐ回動軸と、を備え、
前記ロック構造は、
一対の前記挟持アームにおいて前記セーフティーワイヤを挟持する側の端部を開状態にすべく付勢する弾性部材と、
一対の前記挟持アーム同士を開状態にしようとする前記挟持アームの回動動作を規制するラチェット機構と、を備え、
前記鍵により前記ラチェット機構を解除して一対の前記挟持アームを閉状態から開状態にすることを特徴とする請求項1に記載の中間固定金具ユニット。
【請求項3】
一対の前記挟持アームにおいて前記セーフティーワイヤを挟持する側の端部は、この端部間に架設されているベルトを備えていることを特徴とする請求項2に記載の中間固定金具ユニット。
【請求項4】
前記ロック構造は、前記中間固定金具に内蔵されるモータ駆動機構であり、
前記中間固定金具は、前記鍵を挿入可能な孔を備え、
前記孔内に、前記モータ駆動機構を動作させるスイッチを備え、
前記孔に前記鍵を挿入して前記スイッチを操作することで前記ワイヤ保持部を開状態にすることを特徴とする請求項1に記載の中間固定金具ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業時に作業者が使用する安全器をガイドするセーフティーワイヤの中間部位を鉄塔等の構造物に保持しておくための中間固定金具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
はじめに、鉄塔等における高所作業時の状況について図12及び図13を参照しながら説明する。
図12はセーフティーワイヤを備えた鉄塔の側面図であり、図13は鉄塔における作業時の様子を示す側面図である。
図12に示すように送電線などを支持する鉄塔51には、作業者57(図13を参照)が昇降する際に使用する鋼製のセーフティーワイヤ50が常設されている。
また、作業者57が鉄塔51上で作業する場合は、安全帯56(安全ベルト) を腰部に着用するとともに、安全器54(いわゆる「ロリップ:登録商標」)に設けたフック58を安全帯56に係合し、さらに、セーフティーワイヤ50に安全器54をスライド自在に係合して作業者57の墜落を防止している。
一般に、安全器54は、バンド55を介して安全帯56に連結されている。このため、高所作業中に作業者57が不用意に落下しても、バンド55を介して安全器54に設けられるロック機構が作動することで墜落事故を防止することができる。
より詳細には、作業者57が鉄塔51の上方側に向かって移動する際は、作業者57の移動に伴いバンド55を介して安全器54が上方に引き上げられることで、セーフティーワイヤ50上を安全器54がスライドする。
他方、作業者57が鉄塔51の下方側に向かって移動する際は、作業者57がバンド55を介して安全器54を吊下げるようにして移動する。
通常、安全器54は、その内部にクサビ状の爪を有している。そして、作業者57がセーフティーワイヤ50上を移動する際に、安全器54に作業者57の体重がかからず、かつ安全器54がそれ自体の自重によってのみセーフティーワイヤ50に吊下がっている場合は、安全器54に内蔵される上記爪は、セーフティーワイヤ50に押入されることなく、安全器54と共にセーフティーワイヤ50上を摺動する。
他方、作業者57が鉄塔51の下方側に向かって移動している最中に、作業者57が意図せずバンド55を介して安全器54に吊下がった状態になると、安全器54に内蔵される上記爪がセーフティーワイヤ50に押入されて、セーフティーワイヤ50上に安全器54が固定される。つまり、安全器54がロック状態になり、セーフティーワイヤ50上における安全器54の摺動が停止する。この結果、作業者57の墜落事故を防ぐことができる。なお、ロック状態になった安全器54は、作業者57による操作でそのロック状態を解除することができる。
【0003】
一般に、図12に示すように鉄塔51に設けられるセーフティーワイヤ50は、数十mにおよぶ長さがあり、風による振動等によって損傷、断線することを防止すべくその中間部位が中間支持金具52によって保持されている。なお、セーフティーワイヤ50上において中間支持金具52が設置される箇所を作業者57が通過する場合、作業者57はセーフティーワイヤ50から安全器54を取り外す必要はない。
その一方で、セーフティーワイヤ50の設置エリアにおいて、セーフティーワイヤ50を曲げた状態にしておく必要がある箇所、すなわちセーフティーワイヤ50の「曲げ点」(ベント点)では、作業者57が通過する際に安全器54をセーフティーワイヤ50から取り外す必要がある中間固定金具(図示せず)によりセーフティーワイヤ50が保持されている。
また、図12中に示す中間支持金具52や上述の「曲げ点」に設置される中間固定金具(図示せず)、は、固定部材53によって鉄塔51等の構造物に設置されている。
そして、セーフティーワイヤ50において中間固定金具が設置されている「曲げ点」では、この中間固定金具が障害となってセーフティーワイヤ50上を安全器54をスライドさせることができない。このため、作業者57は鉄塔51の昇降時に、セーフティーワイヤ50から安全器54を一旦取り外して中間固定金具を避けた後、再度安全器54をセーフティーワイヤ50に取付ける作業を行う必要があった。
この場合は、セーフティーワイヤ50から安全器54を取り外した際に、作業者57が墜落事故を起こす恐れがあり極めて危険であった。
このような事情に鑑み、必要に応じてセーフティーワイヤ50を開放して安全器54をセーフティーワイヤ50から取り外すことなく通過させることができる中間固定金具に関する先願が知られている。
【0004】
特許文献1には「鉄塔のガードワイヤの屈曲部固定金具」という名称で、鉄塔を上り下りする作業者が命綱を係止するため主柱に沿って付設されるガードワイヤを、主柱が下部の急傾斜状態から上部の略直立する状態へと変わる屈曲部において、主柱と適度の間隔を保ったままで固定する鉄塔のガードワイヤの屈曲部固定金具に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示される鉄塔のガードワイヤの屈曲部固定金具は、同文献中の図1~4に記載される符号をそのまま用いて説明すると、鉄塔(1)の主柱(2)が傾斜状態からほぼ直立状態へと変わる屈曲部でガードワイヤ(3)を固定する屈曲部固定金具(4)において、主柱(2)の屈曲部に固定する脚部材(5)の外側に縦長の連結部材(6)を取付け、連結部材(6)の上下端部に夫々ガードワイヤ(3)を挟持する金具本体(7、7)を設置してあり、各金具本体(7)が、一対の挟持部材(8、8)をその一端で開閉可能に枢支し、一方の挟持部材(8)の他端に孔部(9)を形成すると共に、他方の挟持部材(8)の対応する端部に上記孔部(9)に挿通する錠杆(10)を回動可能に設け、錠杆(10)の先端にその回動で孔部(9)から離脱不能となる係止片(11)を付設し、錠杆(10)の基端に錠杆(10)回動用頭部(12)を設けてなるものである。
特許文献1に開示される発明は、ガードワイヤ(3)を保持する金具本体(7)を一対備えているので、ガードワイヤ(3)に沿って安全器をスライドさせようとして一方の金具本体を開放しても、もう一方の金具本体(7)によりガードワイヤ(3)はしっかりと保持される。
このため、特許文献1に開示される屈曲部固定金具の設置位置において、ガードワイヤ(3)上をスライドさせながら安全器を通過させる場合でも、ガードワイヤ(3)が風等により揺動する心配がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4-124386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に開示される発明の場合は、ガードワイヤ(3)を挟持する金具本体(7)の開閉は、レバー(22)の操作によりなされる。
このため、特許文献1に開示される発明では、その構造上一対の金具本体(7,7)の両方を開いた状態にしておくことが可能である。
つまり、特許文献1に開示される発明では、作業者の意図しない誤操作により一対の金具本体(7,7)の両方が開いた状態になった場合、ガードワイヤ(3)を一対の金具本体(7)のいずれにおいても保持しておくことができなくなるといった不具合が生じる懸念がある。
この場合、特許文献1に開示される発明は、目的とする作用・効果を発揮させることができない。
【0007】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、セーフティーワイヤを中間固定金具で保持する場合で、かつ中間固定金具の設置位置に安全器を通過させる必要がある場合に、安全器をセーフティーワイヤから取り外す必要がなく、しかもセーフティーワイヤを常時中間固定金具で保持しておくことができる中間固定金具ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、作業者の墜落を防止する安全器をガイドするセーフティーワイヤの中間部位を保持しておくための中間固定金具ユニットであって、この中間固定金具ユニットは、セーフティーワイヤ上に少なくとも一対設けられている中間固定金具と、個々の中間固定金具をその設置対象である構造物に固定する固定部材と、中間固定金具と別体に設けられ、全てのロック構造に対して共用され、かつこのロック構造を解除してワイヤ保持部を開状態にする鍵と、を備え、中間固定金具は、セーフティーワイヤを挟持するワイヤ保持部と、このワイヤ保持部の開閉状態を切替えるロック構造と、を備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第1の発明において、中間固定金具は、セーフティーワイヤの中間位置の所望位置を保持してセーフティーワイヤを保定するという作用を有する。さらに、固定部材は、個々の中間固定金具をその設置対象である構造物に固定するという作用を有する。
また、中間固定金具におけるワイヤ保持部は、セーフティーワイヤを挟持して保持するとともに、必要に応じてセーフティーワイヤを保持状態(ロック状態)から開放するという作用を有する。加えて、中間固定金具におけるロック構造は、鍵を用いる操作によってのみワイヤ保持部の閉状態を開状態に切替えられるという作用を有する。
さらに、第1の発明では、少なくとも一対設けられる中間固定金具の全てのロック構造の解除操作が鍵によって行われる。このことは、一人の作業者が作業時に使用する鍵を1つにすることで、対をなす中間固定金具のうちの一方が開放されている場合に、他方の中間固定金具については開放することができないことを意味している。このため、第1の発明では、対をなす中間固定金具の両方を同時に開放することができない。
【0009】
第2の発明である中間固定金具ユニットは、上述の第1の発明であって、ワイヤ保持部は、セーフティーワイヤを挟持する一対の挟持アームと、この一対の挟持アームにおいてセーフティーワイヤを挟持しない側の端部側を回動可能につなぐ回動軸と、を備え、ロック構造は、一対の挟持アームにおいてセーフティーワイヤを挟持する側の端部を開状態にすべく付勢する弾性部材と、一対の挟持アーム同士を開状態にしようとする挟持アームの回動動作を規制するラチェット機構と、を備え、鍵によりラチェット機構を解除して一対の挟持アームを閉状態から開状態にすることを特徴とするものである。
上記構成の第2の発明において、一対の挟持アームは、セーフティーワイヤを挟持して保定するという作用を有する。また、回動軸は一対の挟持アームにおいてセーフティーワイヤを挟持しない側の端部側を回動可能につなぐという作用を有する。
さらに、ロック構造における弾性部材は、一対の挟持アームにおいてセーフティーワイヤを挟持する側の端部を開状態にすべく付勢するという作用を有する。加えて、ラチェット機構は、一対の挟持アーム同士を開放しようとする回動動作を規制して、一対の挟持アーム同士の閉回動を段階的に維持するという作用を有する。
また、鍵はラチェット機構を解除して一対の挟持アームを開状態にするという作用を有する。
したがって、第2の発明では、開状態となった一対の挟持アームに外力を作用させてこれらを閉じるように回動させた際に、ラチェット機構によりその閉状態が維持される。さらに、一対の挟持アームが完全に閉じた場合は、その閉状態がそのまま維持される。この場合、一対の挟持アームはロック状態になる。
このように第2の発明では、対の挟持アームが完全に閉じてその状態をロックするために特別な操作(鍵を用いたロック操作等)を行う必要がない。
【0010】
第3の発明である中間固定金具ユニットは、上述の第2の発明であって、一対の挟持アームにおいてセーフティーワイヤを挟持する側の端部は、この端部間に架設されているベルトを備えていることを特徴とするものである。
上記構成の第3の発明は、上述の第2の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、上記構成の第3の発明では、セーフティーワイヤを用いてベルトをワイヤ保持部の回動軸側に押圧することで、一対の挟持アームを閉じるように動作させることができる。
【0011】
第4の発明である接地端子操作ユニットは、上述の第1の発明であって、ロック構造は、中間固定金具に内蔵されるモータ駆動機構であり、中間固定金具は、鍵を挿入可能な孔を備え、この孔内に、モータ駆動機構を動作させるスイッチを備え、孔に鍵を挿入してスイッチを操作することでワイヤ保持部を開状態にすることを特徴とするものである。
上記構成の第4の発明は、上述の第1の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、上記構成の第4の発明においてモータ駆動機構は、上述の第2の発明における弾性部材及びラチェット機構に対応する構成である。また、モータ駆動機構は、スイッチを操作することでワイヤ保持部を開状態又は閉状態にするという作用を有する。また、スイッチは、鍵により操作されてモータ駆動機構を作動させるという作用を有する。
さらに、第4の発明において、スイッチを中間固定金具に形成され、かつ鍵を挿入可能な孔内に設けることで、鍵の挿入動作によってのみスイッチの操作が可能になる。
つまり、第4の発明では、鍵を用いることなくスイッチを操作することができないので、スイッチの誤操作が起こらない。このため、意図せず中間固定金具のワイヤ保持部が開状態になるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
上述のような第1の発明によれば、セーフティーワイヤを保持する一対の中間固定金具のうちの鍵で操作した中間固定金具のみを開放(開状態)することができる。
このことは、鍵で操作されていない中間固定金具を確実にロック(閉状態)にしておくことができることを意味している。
このため、第1の発明では、一対の中間固定金具のうちの一方を鍵で操作して開放し(開状態にし)、開放された中間固定金具の設置位置であるセーフティーワイヤ上をスライドさせて安全器を通過させることができる。この後、開放されている一方の中間固定金具を閉状態に(ロック)してから、一対の中間固定金具のうちの他方を同じ鍵で操作して開放し、開放された他方の中間固定金具の設置位置であるセーフティーワイヤ上をスライドさせて安全器を通過させることができる。さらに、開放されている他方の中間固定金具を閉状態(ロック)することで、セーフティーワイヤを保持する一対の中間固定金具の両方の保持位置において安全器を取り外すことなく通過させることができる。
つまり、第1の発明においてセーフティーワイヤを保持する一対の中間固定金具のいずれか一方は鍵による開操作を行うことができないため、閉状態(ロックされた状態)が維持される。このため、セーフティーワイヤ上の中間固定金具による保持位置を、安全器を通過させる際に、一対の中間固定金具のいずれかでセーフティーワイヤを保持しておくことができる。このため、セーフティーワイヤが一対の中間固定金具の両方から外れてしまう心配がない。
よって、第1の発明によれば、セーフティーワイヤを保持する一対の中間固定金具の両方が意図せず開状態になって、セーフティーワイヤが中間固定金具から完全に外れてしまうのを好適に防ぐことができる。
また、第1の発明によれば、セーフティーワイヤ上の中間固定金具の設置位置に安全器を通過させる際に、セーフティーワイヤから安全器を取り外す必要がない。このため、セーフティーワイヤに沿って移動する作業者の安全を確保することができる。
【0013】
第2の発明は、上述の第1の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第2の発明は、一対の挟持アームを閉動させた際に、ラチェット機構によりその閉状態が維持される。さらに、第2の発明によれば、ラチェット機構を備えていることで、一対の挟持アームが完全に閉じられた状態が、ワイヤ保持部がロックされた状態になる。このため、第2の発明では、ワイヤ保持部をロック状態にするために鍵を用いたロック操作を行う必要がない。
さらに、第2の発明によれば、鍵による操作によりラチェット機構を解除した際に、弾性部材により瞬時に一対の挟持アームを開状態になるので、ワイヤ保持部の開放作業が極めて容易である。
よって、第2の発明によれば操作性が優れた中間固定金具ユニットを提供することができる。
【0014】
第3の発明は、上述の第2の発明による効果と同じ効果を有する。さらに、第3の発明では、挟持アームにおいてセーフティーワイヤを挟持する側の端部にベルトを備えていることで、このベルトをセーフティーワイヤにより中間固定金具の回動軸側に向かって押圧するだけで容易に一対の挟持アームを閉状態に(ロック)することができる。
よって、第3の発明によれば上述の第2の発明と比べて、一層操作性が優れた中間固定金具ユニットを提供することができる。
【0015】
第4の発明は、上述の第1の発明による効果と同じ効果を有する。また、モータ駆動機構を作動させるスイッチが、中間固定金具に形成され、かつ鍵を挿入可能な孔内に設けられていることで、このスイッチを中間固定金具の外側面上に突設する場合に比べて、スイッチの誤操作が起こるリスクを大幅に低減することができる。
また、ロック構造としてモータ駆動機構を備えていることで、ロック構造として弾性部材とラチェット機構とからなる組み合わせ(上述の第2,第3の発明を参照)を備える場合に比べて、ワイヤ保持部を開閉するための人による作業を大幅に減らすことができる。
よって、第4の発明によれば、上述の第2又は第3の発明と比べて一層操作性が優れた中間固定金具ユニットを提供することができる。
さらに、第4の発明では、中間固定金具に対して作業者がすべき操作は、鍵を用いたスイッチ操作のみである。このため、作業者が中間固定金具に対する煩雑な作業を行っている最中に誤って墜落事故等を起こすリスクを大幅に軽減することができる。よって、第4の発明によれば、作業者の作業時の安全性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る中間固定金具ユニットの要部を拡大して示すイメージ図である。
図2】(a),(b)はいずれも本実施形態に係る中間固定金具ユニットの使用手順を説明するためのイメージ図である。
図3】本実施形態に係る中間固定金具を分解した状態を示す斜視図である。
図4】本実施形態に係る中間固定金具の一対の挟持アームを一体化した状態を示す斜視図である。
図5】本実施形態に係る中間固定金具の水平方向断面図である。
図6】本実施形態に係る中間固定金具のワイヤ保持部が開放された状態を示す水平方向断面図である。
図7】本実施形態に係る中間固定金具のワイヤ保持部の閉動を開始する直前の状態を示す水平方向断面図である。
図8】本実施形態に係る中間固定金具のワイヤ保持部を閉動している途中の状態を示す水平方向断面図である。
図9】(a)本実施形態に係る中間固定金具がロックされている状態を示す斜視図であり、(b)同中間固定金具が開放されている状態を示す斜視図である。
図10】(a)本実施形態に係る中間固定金具の閉動作を開始する前の状態を示す斜視図であり、(b)同中間固定金具を閉動している途中の状態を示す斜視図である。
図11】(a)本実施形態の変形例1に係る中間固定金具が閉じられた状態を示す斜視図であり、(b)同中間固定金具が開放された状態を示す斜視図である。
図12】セーフティーワイヤを備えた鉄塔の側面図である。
図13】鉄塔における作業時の様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る中間固定金具ユニットについて図1乃至図11を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
<1;本発明の基本構成について>
[1-1;基本構成の構造について]
はじめに、図1を参照しながら本実施形態に係る中間固定金具ユニットの概要について説明する。
図1は本実施形態に係る中間固定金具ユニットの要部を拡大して示すイメージ図である。なお、先の図12,13に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
本実施形態に係る中間固定金具ユニット1は、作業者57の墜落を防止する安全器54(先の図13を参照)をガイドするセーフティーワイヤ50の中間部位(=セーフティーワイヤ50の端部を除く全域)を保持しておくための複数の支持具を備えるユニットであって、例えば図1に示すように、セーフティーワイヤ50の中間部分の主に「曲げ点」(ベント点)を保持する少なくとも一対の中間固定金具2と、この中間固定金具2の閉状態(セーフティーワイヤ50を保持している状態)を開状態(セーフティーワイヤ50の取り外しが可能な状態)にする操作を行うための鍵6と、個々の中間固定金具2をその設置対象である構造物(例えば図12に示すような鉄塔51等)に固定しておくための固定部材5を備えてなるものである。
【0019】
さらに、本実施形態に係る中間固定金具ユニット1の中間固定金具2は、図1に示すように、セーフティーワイヤ50を挟持するワイヤ保持部3と、ワイヤ保持部3の基部Qの内部に格納されて、鍵6による操作でワイヤ保持部3を開状態にするロック構造7を備えている。
なお、本実施形態に係る中間固定金具ユニット1では、対をなす中間固定金具2,2(図1を参照)が、セーフティーワイヤ50に沿って少なくとも一組設けられており、中間固定金具2に内蔵されるロック構造7を解除するのに用いられる鍵6は、全ての中間固定金具2に対して共通である。
さらに、本実施形態に係る中間固定金具ユニット1では、セーフティーワイヤ50上に一対の中間固定金具2,2を配置する場合、中間固定金具2同士の空隙Lは、この空隙Lに先の図13に示す安全器54を配置しておくことができる程度に設定しておく必要がある。
なお、本実施形態に係る中間固定金具ユニット1において、セーフティーワイヤ50に沿って設けられる一対の中間固定金具2を「一組」以上としているのは、セーフティーワイヤ50上に「曲げ点」が一箇所以上存在する場合があるためである。
【0020】
[1-2;基本構成の使用方法について]
ここで本実施形態に係る中間固定金具ユニット1の使用方法について図2を参照しながら説明する。
図2(a),(b)はいずれも本実施形態に係る中間固定金具ユニットの使用手順を説明するためのイメージ図である。なお、図1,12,13に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
ここでは先の図13に示す安全器54を備えた作業者57(図2中には示していない)が、セーフティーワイヤ50の鉛直下方側から上方側に移動する場合を想定して説明する。さらに、図2では、対をなす2つの中間固定金具2は、同じ構造を有しているが、これらを互いに区別するために鉛直上方側に配される中間固定金具に符号「2’」を付している。
【0021】
図示しない作業者57(図13を参照)は、はじめに、腰部に巻回固定した安全帯56にフック58を介して接続される安全器54を、図2(a)中の符号Aで示す位置(中間固定金具2の鉛直下方)に移動させた状態で、中間固定金具2のワイヤ保持部3に設けられている鍵挿入孔19aに鍵6を挿入してワイヤ保持部3の開放操作を行う。
作業者57による上記操作により、図2(a)中に示す中間固定金具2に内蔵されるロック構造7が解除されて、ワイヤ保持部3が開いた状態となり、中間固定金具2からセーフティーワイヤ50の取り外しが可能になる。
そして、この状態で作業者57は、図2(a)中の符号Aで示す位置に配されている安全器54を同図中の符号Bで示す位置にスライドさせる。
この後、作業者57が中間固定金具2のワイヤ保持部3を手で操作して閉じることで、ワイヤ保持部3により再びセーフティーワイヤ50を挟持して保持することができる。つまり、中間固定金具2がロックされる。この後、作業者57は閉状態(ロック状態)の中間固定金具2から鍵6を取り外す。
なお、本実施形態に係る個々の中間固定金具(例えば、中間固定金具2,2’)は、ワイヤ保持部3が開いた状態で鍵6を鍵挿入孔19aから取り外しできなくするインターロック機構を備えている。つまり、本実施形態に係る中間固定金具ユニット1では、中間固定金具(例えば、中間固定金具2,2’)を構成する一対のワイヤ保持部3が閉状態(ロック状態)である場合にのみ、鍵挿入孔19aから鍵6を抜き取ることができる。
【0022】
次に、作業者57が中間固定金具2の開放操作に使用した鍵6を、中間固定金具2’の鍵挿入孔19aに差し込んで再び開放操作することで、中間固定金具2’に内蔵されるロック構造7が解除される。そして、この操作により中間固定金具2’のワイヤ保持部3が開いた状態となり、図2(b)に示すように、中間固定金具2’からセーフティーワイヤ50の取り外しが可能になる。
そして、この状態で作業者57は、図2(b)中の符号Bで示す位置に配されている安全器54を同図中の符号Cで示す位置にスライドさせる。
この後、作業者57が中間固定金具2’のワイヤ保持部3を手で操作して閉じることで、ワイヤ保持部3により再びセーフティーワイヤ50を挟持して保持することができる。つまり、中間固定金具2’がロックされる。この後、作業者57は閉状態(ロック状態)の中間固定金具2’から鍵6を取り外す。
したがって、上述の一連の動作により、作業者57はセーフティーワイヤ50上における中間固定金具2,2’による支持位置に、安全器54を通過させることができる。
なお、作業者57が安全器54とともにセーフティーワイヤ50の鉛直下方側から上方側に移動する場合は、上記手順の逆を行えばよい。
【0023】
[1-3;基本構成による作用・効果について]
上述のような本実施形態に係る中間固定金具ユニット1では、セーフティーワイヤを保持する一対の中間固定金具2,2’のうちの一方を鍵6で操作している時に、他方に対して操作することができないので、対をなす中間固定金具2,2’のいずれか一方は閉状態(ロックされた状態)が維持される。
このため、セーフティーワイヤ50上の中間固定金具2,2’による保持位置に安全器54を通過させる際に、一対の中間固定金具2,2’のいずれかでセーフティーワイヤ50を保持しておくことができる。
つまり、本実施形態に係る中間固定金具ユニット1によれば、セーフティーワイヤ50を保持する一対の中間固定金具2,2’の両方を同時に開放することができない。このため、セーフティーワイヤ50上の中間固定金具2,2’による保持位置に安全器54を通過させる際に、セーフティーワイヤ50が意図せず中間固定金具2,2’の両方から外れてしまうのを好適に防ぐことができる。
また、本実施形態に係る中間固定金具ユニット1によれば、セーフティーワイヤ50上の中間固定金具2,2’の設置位置に安全器を通過させる際に、セーフティーワイヤ50から安全器54を取り外す必要がない。このため、セーフティーワイヤ50に沿って移動する作業者57の移動時の安全性を大幅に向上させることができる。
【0024】
<2;本発明の細部構造について>
続いて、本実施形態に係る中間固定金具2の細部構造について図3乃至図10を参照しながら説明する。
本実施形態に係る中間固定金具2は、ワイヤ保持部3を構成する一対の挟持アーム4a,4bの開閉状態を切替えるロック構造7を備えており、このロック構造7は一対の挟持アーム4a,4bの基部Qに内蔵されている。
さらに、ロック構造7は、一対の挟持アーム4a,4bを開いた状態にしておくための開放構造と、一対の挟持アーム4a,4bの閉動状態を段階的に維持するためのラチェット機構とを備えている。
さらに、本実施形態に係る中間固定金具2では、先に述べた鍵6を用いた操作により上記ラチェット機構が解除されることで、一対の挟持アーム4a,4bが開放されて、ワイヤ保持部3からセーフティーワイヤ50を取り外すことができるよう構成されている。
【0025】
[2-1;ワイヤ保持部の開放構造について]
本実施形態に係る中間固定金具2のワイヤ保持部3を開いた状態にしておくための開放構造について図3,4を参照しながら説明する。
図3は本実施形態に係る中間固定金具を分解した状態を示す斜視図であり、図4は同中間固定金具の一対の挟持アームを一体化した状態を示す斜視図である。なお、図1,2,12,13に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。さらに、図3,4では、後段において説明するラチェット機構の記載を省略している。
図3,4に示すように、本実施形態に係る中間固定金具2のワイヤ保持部3は、対をなす挟持アーム4a,4bにより構成されている。
さらに、この挟持アーム4aは、セーフティーワイヤ50外側面を保持するアーム本体9aと、このアーム本体9aの基部Qに設けられる中空容器状のケーシング11aを備えている。さらに、アーム本体9aは、セーフティーワイヤ50と対向する面に凹溝状のワイヤ収容溝10aを備えている。
また、挟持アーム4bも同様に、セーフティーワイヤ50外側面を保持するアーム本体9bと、このアーム本体9bの基部Qに設けられる中空容器状のケーシング11bを備えている。さらに、アーム本体9b、セーフティーワイヤ50と対向する面に凹溝状のワイヤ収容溝10bを備えている。
なお、上述のような挟持アーム4a,4bを組み合わせて一体化した状態を示しているのが図4である。
【0026】
図3,4に示すように、挟持アーム4aの基部Qに形成されるケーシング11aと、挟持アーム4bの基部Qに形成されるケーシング11bが互に対向しながら重なることで、挟持アーム4a,4bの基部Q内に1つの中空部が形成される。
さらに、上記中空部内には、挟持アーム4a,4bを互いに回動可能に連結する回動軸8と、対をなす挟持アーム4a,4bを互いに離間させるように付勢するトーションスプリング14が収容される。
【0027】
より詳細には、回動軸8は例えば図3に示すように、中心軸上に挿入孔8dを備えた中空管状の嵌合部8bと、この嵌合部8bに形成される挿入孔8dに挿入可能な軸本体8cと、この軸本体8cにおいて挿入孔8dに挿入されない側の端部に固設される嵌合部8aを備えている。
このような回動軸8では、嵌合部8bに形成される挿入孔8dに軸本体8cが挿設されることで、嵌合部8bに対して軸本体8cが回動可能になる。
さらに、この回動軸8は、嵌合部8bに軸本体8cが挿設された状態で、嵌合部8bの端部(図3中における鉛直下方側の端部)を、ケーシング11aの中空部内の底面に突設される嵌合軸受12aに嵌設するとともに、嵌合部8aをケーシング11bの中空部の底面(天井面)に突設される嵌合軸受12bに嵌設して用いられる。
【0028】
この場合、挟持アーム4bと軸本体8cが連動する。つまり、挟持アーム4bは、軸本体8cを基軸に図3中の符号Dで示す方向に回動する。
また、挟持アーム4aと嵌合部8bが連動する。つまり、挟持アーム4aは、軸本体8bを基軸に図3中の符号Eで示す方向に回動する。
よって、挟持アーム4aと挟持アーム4bを回動軸8で一体に連結することで、回動軸8を基軸に挟持アーム4a,4bを互いに開くように、あるいは、閉じるように回動させることができる。
【0029】
さらに、ケーシング11a,11bからなる中空部内にトーションスプリング14を収容するとともに、このトーションスプリング14の係止端14aをケーシング11aの中空部に連通して形成されるスプリング係止部13aに係止するとともに、他方の係止端14bをケーシング11bの中空部に連通して形成されるスプリング係止部13bに係止することで、トーションスプリング14の弾性力を利用して挟持アーム4a,4b(アーム本体9a,9b)が常時開いた状態になるように付勢することができる。
つまり、本実施形態に係る中間固定金具2において、回動軸8とトーションスプリング14の組み合わせが、挟持アーム4a,4bの開放構造である。
【0030】
なお、特に図示しないが、挟持アーム4a,4bを回動軸8で連結する際に、軸本体8cにおいて嵌合部8aが固設されない側の端部(図3中の鉛直下方側の端部)を、ケーシング11bの底面を貫通させてケーシング11bの外に導出し、この導出部分に図示しないナットを設けることで、挟持アーム4a,4bを分離不可に一体化することができる。この場合、中間固定金具2の使用中に挟持アーム4a,4bが意図せず分離してしまうのを防止することができる。
【0031】
[2-2;ワイヤ保持部のラチェット機構(閉構造)について]
続いて、本実施形態に係る中間固定金具2におけるロック構造を構成するラチェット機構について図5を参照しながら説明する。
本実施形態に係る中間固定金具2は、その内部にラチェット機構を備えている。
ここで、図5を参照しながら本実施形態に係る中間固定金具2におけるワイヤ保持部3のラチェット機構の構造について説明する。
図5は、本実施形態に係る中間固定金具の水平方向断面図である。なお、図1乃至図4、及び、図12,13に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
本実施形態に係る中間固定金具2に内蔵されるラチェット機構は、例えば図5に示すように、ケーシング11a,11bを組み合わせてなる中空部内に収容され、回動軸8を構成する嵌合部8bに嵌設されて、嵌合部8bの回動動作と連動して回動するラチェット歯車15と、このラチェット歯車15の外周に形成されている鋸歯状のラチェット歯15aと、このラチェット歯15aに着脱可能に係止する係止端16aを備えた遊動爪16と、この遊動爪16をラチェット歯車15側に常時付勢するコイルバネ21を備えてなるものである。
【0032】
また、上述のラチェット機構を構成する遊動爪16は、係止端16aを備えない側の端部に略円形の基部16bを備えるとともに、この基部16bはケーシング11a,11bを組み合わせてなる中空部と連通する基部収容孔17内に収容されている。
また、ケーシング11a,11bを組み合わせてなる中空部と、基部収容孔17の連通部分は、中空部側に向かって広がっており、遊動爪16の遊動動作(図5中の符号Fで示す方向への回動動作)を妨げない構造となっている。
さらに、ケーシング11a,11bを組み合わせてなる中空部と基部収容孔17の連通部分と交差するようにバネ収納孔20が形成されており、このバネ収納孔20にコイルバネ21が収容されるとともに、コイルバネ21の端部が遊動爪16に常時接触することで、遊動爪16がラチェット歯車15側に常時押圧されている。
加えて、上述のラチェット機構を構成する遊動爪16は、鍵挿入孔19bを備え、この鍵挿入孔19bは、挟持アーム4bの外側面に形成される鍵挿入孔19a(先の図1,2を参照)と連通している。
したがって、本実施形態に係る中間固定金具2では、挟持アーム4bの外側面に形成される鍵挿入孔19aに鍵6(先の図1,2を参照)を挿入した際に、鍵6の先端側が遊動爪16に形成される鍵挿入孔19bに挿入される。
よって、本実施形態に係る中間固定金具2では、鍵6によりラチェット機構を構成する遊動爪16を直接操作することができる。
つまり、本実施形態に係る中間固定金具2では、鍵6を用いて図5に示される遊動爪16を時計回り方向(図5中の符号Fで示す方向)に回動させることで、ラチェット歯車15のラチェット歯15aから遊動爪16の係止端16aを離間させることができ、この動作により本実施形態に係る中間固定金具2のラチェット機構が解除される。
なお、先の図3及び図4、並びに図5には特に示していないが、本実施形態に係る中間固定金具2は、一対のワイヤ保持部3が閉状態(ロック状態)の場合にのみ、鍵挿入孔19aから鍵6を取り外し可能にするインターロック機構を備えている。
なお、このようなインターロック機構として、従来公知のインターロック機構を支障なく使用できる。より具体的には、例えば中間固定金具2を構成する一対のワイヤ保持部3が開状態である場合に、鍵6に何らかの係止構造が係合して、挿入孔19aから鍵6を抜き取れなくするような構造を備えていてもよい。
【0033】
[2-3;中間固定金具の動作について]
ここで、図5乃至図10を参照しながら本実施形態に係る中間固定金具2の一連の動作についてより詳細に説明する。
図6は本実施形態に係る中間固定金具のワイヤ保持部が開放された状態を示す水平方向断面図である。また、図7は本実施形態に係る中間固定金具のワイヤ保持部の閉動を開始する直前の状態を示す水平方向断面図である。さらに、図8は本実施形態に係る中間固定金具のワイヤ保持部が開放された状態を示す水平方向断面図である。加えて、図9(a)は本実施形態に係る中間固定金具がロックされている状態を示す斜視図であり、(b)は同中間固定金具が開放されている状態を示す斜視図である。また、図10(a)は本実施形態に係る中間固定金具の閉動作を開始する前の状態を示す斜視図であり、(b)は同中間固定金具を閉動している途中の状態を示す斜視図である。なお、図1乃至図5、及び、図12,13に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
【0034】
図5及び図9(a)には、閉状態(ロック状態)の本実施形態に係る中間固定金具2が示されている。
この時、一対の挟持アーム4a,4b(アーム本体9a,9b)には、トーションスプリング14によりこれらを押し広げるように力が作用している。
この時さらに、図5に示すように、回動軸8における嵌合部8bの回動動作と連動するラチェット歯車15のラチェット歯15aに、遊動爪16の係止端16aが係止している。このため、トーションスプリング14による挟持アーム4a,4bを開放しようとする動作が妨げられて、一対の挟持アーム4a,4bの閉状態が維持される。つまり、図9(a)に示すように、一対の挟持アーム4a,4bは、閉じた状態でロックされている。
【0035】
この状態で中間固定金具2の外側面に形成される鍵挿入孔19aに鍵6を挿入すると、鍵6の先端側が遊動爪16に形成される鍵挿入孔19bにも挿入される(図6を参照)。
そして、この状態で鍵6を時計回り方向(図5中の符号Fで示す方向)に回動させると、図6に示すように、遊動爪16と、ラチェット歯車15の係止関係が解除される。また、この動作にともなって、トーションスプリング14により付勢されている挟持アーム4b(アーム本体9b)が半時計回り方向(図6中の符号Gで示す方向)に回動し、これにより挟持アーム4a,4b(アーム本体9a,9b)が開放される(図6及び図9(b)を参照)。
この場合、先の図2(a),(b)に示すように、対をなす挟持アーム4a,4bで保持されるセーフティーワイヤ50を、中間固定金具2から取り外すことが可能になる。
【0036】
さらに、図9(b)に示す中間固定金具2の鍵挿入孔19a(鍵挿入孔19b;図6を参照)に挿入される鍵6が作業者による回動操作から解放された状態を示しているのが図7及び図10(a)である。
この時、ラチェット機構の遊動爪16は、コイルバネ21の押圧力に抗うよう作用するに外力から開放される。この結果、コイルバネ21により再び遊動爪16の係止端16aがラチェット歯車15側に押圧されることになり、遊動爪16の係止端16aとラチェット歯15aが係合する。これにより、挟持アーム4a,4bの間を押し広げようとする回動動作がラチェット機構により再び規制される。つまり、図7及び図10(a)に示すように挟持アーム4a,4bは、開いた状態のままロックされる。
【0037】
さらに、この状態から挟持アーム4a,4bが完全に閉じられた状態にするには、図10(a)に示す挟持アーム4bを、図10(b)に示すように挟持アーム4a側に向かって押圧して回動させればよい。
この時、遊動爪16とラチェット歯車15が係合するため、挟持アーム4bの挟持アーム4a側への回動動作が妨げられるが、さらに強く挟持アーム4bを挟持アーム4a側に押圧することで、この押圧力によってバネ収納孔20に収容されるコイルバネ21が弾性収縮してする。この結果、遊動爪16とラチェット歯車15の係合関係が一時的に解除されて挟持アーム4bが挟持アーム4a側に回動するが、その際、遊動爪16とラチェット歯車15が係合することで挟持アーム4a,4bの回動状態がそのまま維持される。
そして、上述の動作を続けることで、対をなす挟持アーム4a,4bは徐々に閉じられていき、最終的に完全に閉じられた状態となり、その状態が維持される。
なお、挟持アーム4a,4bが完全に閉じられてロックされている状態を示したものが先の図5及び図9(a)である。また、図5及び図9(a)に示す状態で、挿入孔19aから鍵6を抜き取ることができる。
【0038】
なお、図5乃至図8では、ラチェット歯車15の外周上の全域にラチェット歯15aを設ける場合を例に挙げて説明しているが、ラチェット歯車15の外周上の所望領域にのみラチェット歯15aを設けるとともに、このラチェット歯15aに隣接する位置にラチェット歯車15の回り止め構造を設けておいてもよい(図示せず、任意選択構成要素)。
この場合、ラチェット歯車15の外周上に形成されるラチェット歯15aの総数(又はラチェット歯15aの形成領域の長短)により挟持アーム4bの回動量を所望に決めることができる。この場合は、例えば挟持アーム4a,4bを開放した際に、挟持アーム4a,4bの間の空隙を所望に設定することが容易になる。
【0039】
さらに、本実施形態に係る中間固定金具2では、中間固定金具2にラチェット機構を内蔵する場合を例に挙げて説明しているが、ラチェット機構の一部(例えば遊動爪16及びその付勢手段であるコイルバネ21等)を中間固定金具2の外に配設してもよい(任意選択構成要素)。
より詳細には、本発明に係る中間固定金具2を構成する遊動爪16及びその付勢手段であるコイルバネ21を、中間固定金具2の固定部材5との連結部の間に図示しない専用の収納ケースを別途設けてそこに収納してもよい。
この場合は、中間固定金具2を構成する挟持アーム4a,4bの構造をシンプルにできる上、遊動爪16や、この遊動爪16を操作する鍵6の鍵挿入孔19a(及び鍵挿入孔19b)のサイズを本願の図に示すものより大きく設定することができる。
この場合、中間固定金具2への鍵6を用いた作業者57による操作を一層容易にすることができる。
【0040】
[2-4;上記ロック構造を有する中間固定金具の作用・効果について]
上述のようなロック構造7を備える本実施形態に係る中間固定金具2によれば、鍵6による操作により挟持アーム4a,4bを容易に開放することができる。
また、上述のようなロック構造7を備える中間固定金具2によれば、挟持アーム4a,4bが完全に閉じられた状態を維持するために、特別な操作を何ら行う必要がない。
したがって、上述のようなロック構造7を備える中間固定金具2によれば、操作性に優れた中間固定金具を提供することができる。
また、中間固定金具2を開放する、あるいは閉状態にしてロックするのに手間がかからないということは、中間固定金具2の支持位置に安全器54を通過させる際の作業者57の負担を大幅に軽減できることを意味している。
この場合は、中間固定金具2の支持位置を通過する際に、作業者57の墜落事故が起きるリスクを軽減することができる。
よって、本実施形態に係る中間固定金具ユニット1によれば、作業者57の作業時の安全性を一層向上させることができる。
【0041】
<3;基本構成の変形例について>
先の図5乃至図10に示す中間固定金具2を用いる場合で、かつ中間固定金具2の支持位置に安全器54を通過させた後に中間固定金具2を閉じる際に、作業者57は、セーフティーワイヤ50を片手で把持して固定しながら、もう片方の手で挟持アーム4bを操作して挟持アーム4a側に押圧して回動させる必要がある。
この場合、対をなす挟持アームを、例えばハンドル等を操作して開閉する場合に比べて、作業者57の身体的な負担を大幅に軽減することができると考えられるものの、対をなす挟持アームによるセーフティーワイヤ50の固定作業に両手を使用する必要があるため、作業者57の身体的な負担は依然として大きい。
このような事情に鑑み、中間固定金具2の閉動作をより簡易に行うことができるよう改良されたものが後段に示す変形例1に係る中間固定金具である。
【0042】
[3-1;変形例1に係る中間固定金具について]
図11(a)は本実施形態の変形例1に係る中間固定金具が閉じられた状態を示す斜視図であり、(b)は同中間固定金具が開放された状態を示す斜視図である。なお、図1乃至図10及び図12,13に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
本実施形態の変形例1に係る中間固定金具24は、図11(a),(b)に示すように、先の図5乃至図10示す中間固定金具2における挟持アーム4a,4bの先端P,P間に架設されるベルト22を備えてなるものである。
なお、図11(a),(b)では、変形例1に係る中間固定金具24の挟持アーム4a,4bの先端P,Pのそれぞれに固定具23である例えばネジでベルト22を固定している場合を例に挙げているが、ベルト22の固定具23はネジ以外の固定具を用いてもよい。
【0043】
また、変形例1に係る中間固定金具24では、図11(a)に示すように、ワイヤ保持部3を構成する挟持アーム4a,4bを閉じた際に、セーフティーワイヤ50の周側面上にベルト22が巻き付いた状態でワイヤ保持部3によりセーフティーワイヤ50が挟持される。
さらに、変形例1に係る中間固定金具24では、図11(b)に示すように、鍵6を操作してワイヤ保持部3を開放した際に、ワイヤ収容溝10a,10b内に収容されていたセーフティーワイヤ50が、挟持アーム4a,4bによって引っ張られたベルト22によりワイヤ収容溝10a,10bから押出される。
【0044】
そして、上述のような変形例1に係る中間固定金具24では、図11(b)に示す状態において、セーフティーワイヤ50を把持してベルト22とともに回動軸8側に押し込むことで容易に、図11(a)に示すように挟持アーム4a,4bが閉じられた状態にすることができる。
よって、図11(a),(b)に示すような変形例1に係る中間固定金具24によれば、先の図5乃至図10に示す中間固定金具2と比較して、挟持アーム4a,4bを閉じる動作を片手のみで行うことが可能になる。
したがって、変形例1に係る中間固定金具24によれば、より操作性が一層優れた中間固定金具24を備えた中間固定金具ユニットを提供することができる。
なお、特に図示しないが変形例1に係る中間固定金具24においても、挟持アーム4a,4bが閉じている場合にのみ鍵6の抜き取りを可能にするインターロック機構を備えている。
【0045】
[3-2;変形例2に係る中間固定金具について]
本実施形態に係る中間固定金具ユニット1では、トーションスプリング14を用いた挟持アーム4a,4bの開放構造(先の図3を参照)と、ラチェット機構(先の図6乃至図8を参照)とを有するロック構造7を備える場合を例に挙げて説明してきたが、ロック構造7の態様は上述の形態に特定される必要はなく、上述したもの以外の構造をロック構造7として採用してもよい。
より具体的には、ロック構造7として図示しないモータ駆動機構を用いてもよい(任意選択構成要素)。
この場合は、先の図3,4に示すケーシング11a,11bからなる中空部内に、挟持アーム4b及び軸本体8cと連動する歯車(図示せず)を備えるとともに、挟持アーム4a及び嵌合部8bと連動する内歯車(図示せず)を備え、さらに上記歯車と内歯車の間に別の歯車を介設し、この別の歯車を中間固定金具2に内蔵されるモータと連結することで、モータ駆動機構により挟持アーム4a及び挟持アーム4bの開閉動作を行えるよう構成してもよい(任意選択構成要素)。
【0046】
さらに、変形例2に係る中間固定金具において挟持アーム4a,4bをモータ駆動機構により作動させる場合は、このモータを動作させるスイッチを変形例2に係る中間固定金具に設けておく必要がある。
この場合、変形例2に係る中間固定金具の外側面上にスイッチを設けると、作業者57が意図せずスイッチに触れてしまう可能性があり、モータが誤作動する懸念がある。
このような事情に鑑み、変形例2に係る中間固定金具では、中間固定金具を構成する部材(例えば挟持アーム4a,4b等)の外側面上に鍵を挿入可能な孔(図示せず)を形成しておき、この孔内にモータを動作させるスイッチを設けておいてもよい。
この場合、変形例2に係る中間固定金具と別体に設けられる鍵を上記孔内に挿入することによってのみスイッチを操作することが可能になり、スイッチの誤操作を防止することができる。
なお、変形例2に係る中間固定金具においても、挟持アーム4a,4bが閉じている場合にのみ鍵の抜き取りを可能にするインターロック機構を備えている。
【0047】
さらに、上述のような変形例2に係る中間固定金具を備えた中間固定金具ユニットは、その作動に電力が必要になる点や、雨水にさらされることで故障が起こり易くなる等のデメリットが想定されるものの、作業者57による作業を鍵によるスイッチ操作のみにできるという独自の効果を有する。
このため、上述のような変形例2に係る中間固定金具を備えた中間固定金具ユニットは、中間固定金具を作動させるための電力の供給が可能であり、かつ中間固定金具が雨水にさらされる心配がない屋内での設置及び使用に特に適している。
この場合、変形例2に係る中間固定金具を用いることで、作業者57が中間固定金具に対して行う作業を一層軽減することができるので、より操作性の優れた中間固定金具ユニットを提供することができる。
なお、変形例2に係る中間固定金具を用いた中間固定金具ユニットによる効果は、上述の基本構成に係る中間固定金具ユニット1による効果と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように本発明は、高所作業時に作業者が装着する安全器をガイドするセーフティーワイヤの中間部位を保持しておくための中間固定金具ユニットであり、送電設備や建築物等に対する保守点検やメンテナンスのための設備に関する技術分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…中間固定金具ユニット 2,2’…中間固定金具 3…ワイヤ保持部 4a,4b…挟持アーム 5…固定部材 6…鍵 7…ロック構造 8…回動軸 8a,8b…嵌合部 8c…軸本体 8d…挿入孔 9a,9b…アーム本体 10a,10b…ワイヤ収容溝 11a,11b…ケーシング 12a,12b…嵌合軸受 13a,13b…スプリング係止部 14…トーションスプリング 14a,14b…係止端 15…ラチェット歯車 15a…ラチェット歯 16…遊動爪 16a…係止端 16b…基部 17…基部収容孔 19a,19b…鍵挿入孔 20…バネ収納孔 21…コイルバネ 22…ベルト 23…固定具 24…中間固定金具 50…セーフティーワイヤ 51…鉄塔(構造物) 52…中間支持金具 53…固定部材 54…安全器 55…バンド 56…安全帯 57…作業者 58…フック P…先端 Q…基部 L…空隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13