(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186155
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】フレキシブル基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20221208BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K3/46 G
H05K3/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094239
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】淡路 大輔
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA32
5E316BB02
5E316BB04
5E316CC10
5E316CC12
5E316CC14
5E316CC32
5E316CC41
5E316DD16
5E316DD25
5E316EE01
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5E316EE13
5E316GG17
5E316GG22
5E316GG28
5E316HH40
5E338AA02
5E338AA12
5E338BB54
5E338BB72
5E338EE26
(57)【要約】
【課題】曲げ箇所における導体層の凹凸形成を抑制できるフレキシブル基板を提供する。
【解決手段】フレキシブル基板10は、積層体1と、規制体2と、を備える。積層体1は、1または複数の絶縁基材11と、1または複数の導体層12とを備える。積層体1は、ループ状に折り返された折曲げ部15と、折曲げ部15で折り返されることによって向かい合う対向領域16と、を有する。規制体2は、折曲げ部15の内側に設けられ、折曲げ部15の曲げ内径L2を規制する。曲げ内径L2は、対向領域16における積層体1どうしの距離L1より大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の絶縁基材と1または複数の導体層とを備えた積層体と、
規制体と、を備え、
前記積層体は、
ループ状に折り返された折曲げ部と、
前記折曲げ部で折り返されることによって向かい合う対向領域と、を有し、
前記規制体は、前記折曲げ部の内側に設けられて前記折曲げ部の曲げ内径を規制し、
前記曲げ内径は、前記対向領域における前記積層体どうしの距離より大きい、
フレキシブル基板。
【請求項2】
前記対向領域において前記積層体が備える前記導体層の数は、前記折曲げ部における前記導体層の数より多い、
請求項1記載のフレキシブル基板。
【請求項3】
前記積層体は、少なくとも前記導体層を覆う被覆層をさらに備え、
前記折曲げ部の内周面に形成された前記被覆層は、前記対向領域において前記積層体が備える前記絶縁基材の一つと一体に形成されている、
請求項2記載のフレキシブル基板。
【請求項4】
前記規制体は、前記積層体の前記折曲げ部に沿って延在する柱状とされている、
請求項1~3のうちいずれか1項に記載のフレキシブル基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル基板は、曲げられた形態で使用されることがある(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示されたフレキシブル基板は、屈曲部の内側に、規制フィルムが設けられている。規制フィルムは、屈曲部の曲率半径を規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のフレキシブル基板では、屈曲部において、導体回路の表面に座屈により凹凸が形成されることがある。このフレキシブル基板では、例えば、導体回路に高周波信号を伝送する場合などに、表面凹凸によって、導体回路における伝送損失が大きくなるという課題があった。
【0005】
本発明の一態様は、曲げ箇所における導体層の凹凸形成を抑制できるフレキシブル基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、1または複数の絶縁基材と1または複数の導体層とを備えた積層体と、規制体と、を備え、前記積層体は、ループ状に折り返された折曲げ部と、前記折曲げ部で折り返されることによって向かい合う対向領域と、を有し、前記規制体は、前記折曲げ部の内側に設けられて前記折曲げ部の曲げ内径を規制し、前記曲げ内径は、前記対向領域における前記積層体どうしの距離より大きい、フレキシブル基板を提供する。
【0007】
前記構成によれば、折曲げ部の曲げ内径が大きいことにより、折曲げ部の導体層に、座屈による表面凹凸が形成されにくくなる。そのため、導体層の導体損失を低く抑えることができる。したがって、導体層における高周波信号の伝送損失を抑制することができる。よって、このフレキシブル基板を用いた無線通信機器では、高利得を実現できる。
【0008】
前記対向領域において前記積層体が備える前記導体層の数は、前記折曲げ部における前記導体層の数より多くてもよい。
【0009】
前記積層体は、少なくとも前記導体層を覆う被覆層をさらに備え、前記折曲げ部の内周面に形成された前記被覆層は、前記対向領域において前記積層体が備える前記絶縁基材の一つと一体に形成されていてもよい。
【0010】
前記規制体は、前記積層体の前記折曲げ部に沿って延在する柱状とされていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、曲げ箇所における導体層の凹凸形成を抑制できるフレキシブル基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態のフレキシブル基板の模式的な斜視図である。
【
図2】第1実施形態のフレキシブル基板の模式的な側面図である。
【
図3】第2実施形態のフレキシブル基板の模式的な側面図である。
【
図4】第3実施形態のフレキシブル基板の模式的な側面図である。
【
図5】第4実施形態のフレキシブル基板の模式的な側面図である。
【
図6】第5実施形態のフレキシブル基板の模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[フレキシブル基板](第1実施形態)
図1は、第1実施形態のフレキシブル基板10の模式的な断面図である。
図2は、フレキシブル基板10の模式的な側面図である。
図1および
図2において、X方向、Y方向およびZ方向は、以下のように定義される。Z方向は、折曲げ部15の延在方向である。Z方向は、
図2において紙面と直交する方向である。Y方向は、対向領域16における積層体1の厚さ方向である。Y方向は、対向領域16において積層体1(第1領域17および第2領域18)が重なる方向である。X方向は、Y方向およびZ方向に直交する方向である。-X方向は、第1領域17および第2領域18の延出方向である。-X方向は「後方」である。+X方向は、-X方向と反対の方向である。+X方向は「前方」である。
【0014】
図1および
図2に示すように、フレキシブル基板10は、積層体1と、規制体2とを備える。積層体1は、層状の絶縁基材11と、2つの導体層12と、2つの被覆層13とを備える。絶縁基材11は、誘電体である。絶縁基材11は、ポリイミド、ポリエステル、液晶ポリマーおよびフッ素系樹脂などの絶縁性材料で構成される。絶縁基材11は、高周波信号に対応可能であることが好ましい。フレキシブル基板10は、可撓性を有する。フレキシブル基板は、フレキシブルプリント配線板ともいう。
【0015】
導体層12は、絶縁基材11の一方および他方の面にそれぞれ形成されている。導体層12は、銅、銀、金などの金属を含む導電性材料で構成される。導体層12は、例えば、銅箔などの金属箔により形成される。銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔を使用できる。導体層12は、メッキ、蒸着などによって形成することもできる。導体層12は、パターニングにより回路が形成された配線層であってもよい。
【0016】
導体層12は、例えば、高周波信号の伝送用に設計されている。導体層12は、マイクロストリップ線路を構成してもよい。2つの導体層12のうち一方は、高周波信号の伝送用の配線(信号線路)となる。2つの導体層12のうち他方は、グランドプレーン層である。
【0017】
被覆層13は、絶縁基材11と2つの導体層12とで構成される積層構造物の一方および他方の面にそれぞれ形成されている。被覆層13は、少なくとも導体層12を覆う。被覆層13は、ポリイミド、ポリエステル、液晶ポリマーおよびフッ素系樹脂などの絶縁性材料で構成される。被覆層13は、例えば、絶縁基材11と同じ材料で形成されている。被覆層13は、いわゆる「カバーレイ」である。
【0018】
積層体1は、折曲げ部15と、対向領域16とを有する。
対向領域16は、第1領域17と、第2領域18とを備える。第1領域17と第2領域18とは、積層体1が折曲げ部15で折り返されることによって、向かい合って配置される。第1領域17は、Z方向から見て折曲げ部15の一方の端部から-X方向に延出する。第2領域18は、折曲げ部15の他方の端部から-X方向に延出する。第1領域17と第2領域18とは互いに平行である。第1領域17と第2領域18とはY方向から見て重なり合う。対向領域16は、重なり領域ともいう。対向領域16は、折曲げ部15に比べて曲げが小さいため、非曲げ領域ともいう。
【0019】
第1領域17と第2領域18とは、例えば、間隔をおいて配置されている。第1領域17と第2領域18との距離(対向領域16における積層体1どうしの距離)を「L1」という。距離L1は、折曲げ部15の曲げ内径L2より小さい。第1領域17および第2領域18は、互いに近づく方向の押圧力を加えることによって、距離L1を定めてもよい。
なお、距離L1はゼロであってもよい。すなわち、第1領域17と第2領域18とは互いに接していてもよい。第1領域17と第2領域18との間には、板状のスペーサ(図示略)を設置してもよい。
【0020】
折曲げ部15は、積層体1がループ状に折り返された箇所である。折曲げ部15は、+X方向に凸となる湾曲凸状とされている。折曲げ部15の少なくとも一部は、例えば、Z方向から見て円弧状、楕円弧状、放物線状、双曲線状などであってよい。「ループ状」は、例えば、半周以上の周回形状(部分環状)をいう。
【0021】
折曲げ部15は、例えば、Z方向から見て、円弧状または楕円弧状(例えば、C字形状)の弧状部15aと、湾曲形状の連結部15bとを有する。弧状部15aは、半周を越える弧長を有する円弧状または楕円弧状とされている。連結部15bは、弧状部15aの両端からそれぞれX方向に対する傾斜角度を減じつつ後方に向かう。弧状部15aは、連結部15bによって滑らかに領域17,18に連なっている。
【0022】
折曲げ部15の内周面のうち一部の領域は、規制体2の外周面2aの一部の領域に接している。本実施形態では、折曲げ部15の外周面2aに接している領域は、外周面2aに沿って円弧状に湾曲している。
【0023】
折曲げ部15における曲げ内径を「L2」という。曲げ内径L2は、折曲げ部15のY方向の内径である。折曲げ部15の曲げ内径L2は、第1領域17と第2領域18との距離L1より大きい。曲げ内径L2が距離L1より大きいことにより、折曲げ部15の導体層12には、座屈による表面凹凸が形成されにくくなる。
折曲げ部15のY方向の外径は、対向領域16のY方向の寸法(第1領域17の外面から第2領域18の外面までの距離)より大きくてもよい。
【0024】
規制体2は、折曲げ部15の内側に設けられている。規制体2は、例えば、円柱状に形成されている。規制体2は、折曲げ部15に沿ってZ方向に延在する。規制体2の外周面2aのうち少なくとも積層体1に接する領域は湾曲凸状とされている。折曲げ部15の、規制体2の外周面2aに接している領域は外周面2aに沿う形状となるため、規制体2は、折曲げ部15の曲げ内径L2を規制する。
【0025】
フレキシブル基板10は、例えば、無線通信機器に使用することができる。無線通信機器は、例えば、ミリ波等の高周波信号を用いて無線通信を行うことができる。
【0026】
図1に示す形態のフレキシブル基板10は、次のようにして作製できる。広げた状態の積層体1の表面に規制体2を設置し、規制体2を包囲するように積層体1を折り返す。第1領域17および第2領域18には、互いに近づく方向の押圧力を外面側から加えてもよい。
【0027】
[第1実施形態のフレキシブル基板が奏する効果]
フレキシブル基板の高周波信号における導体損失は、表皮効果の影響を受ける。そのため、導体層における表面凹凸は、伝送損失の原因となり得る。
フレキシブル基板10は、前述のように、曲げ内径L2が大きいことにより、折曲げ部15の導体層12に、座屈による表面凹凸が形成されにくくなる。そのため、導体層12の導体損失を低く抑えることができる。したがって、導体層12における高周波信号の伝送損失を抑制することができる。よって、フレキシブル基板10を用いた無線通信機器では、高利得を実現できる。
【0028】
規制体2は、折曲げ部15に沿って延在するため、折曲げ部15の長さ範囲(Z方向の範囲)にわたって折曲げ部15の形状を安定的に維持できる。
【0029】
[フレキシブル基板](第2実施形態)
図3は、第2実施形態のフレキシブル基板110の模式的な側面図である。他の実施形態と共通の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0030】
図3に示すように、フレキシブル基板110は、積層体101と、規制体102とを備える。積層体101は、多層基板である。積層体101は、3つの絶縁基材11A,11B,11Cと、4つの導体層12A~12Dと、2つの被覆層13A,13Bと、2つの接着層14A,14Bとを備える。
【0031】
フレキシブル基板110は、第1被覆層13Aと、第1導体層12Aと、第1絶縁基材11Aと、第2導体層12Bと、第1接着層14Aと、第2絶縁基材11Bと、第3導体層12Cと、第2接着層14Bと、第3絶縁基材11Cと、第4導体層12Dと、第2被覆層13Bとが、この順に積層されて構成されている。
【0032】
第1絶縁基材11A、第2絶縁基材11B、および第3絶縁基材11Cは、第1実施形態における絶縁基材11(
図1および
図2参照)と同様に、ポリイミド、ポリエステル、液晶ポリマーおよびフッ素系樹脂などの絶縁性材料で構成される。
【0033】
第1導体層12A、第2導体層12B、第3導体層12C、および第4導体層12Dは、第1実施形態における導体層12(
図1および
図2参照)と同様に、金属を含む導電性材料で構成される。
【0034】
導体層12A~12Dは、例えば、高周波信号の伝送用に設計されている。例えば、導体層12A~12Dは、マイクロストリップ線路を構成する。この場合、4つの導体層のうち隣り合う2つの導体層の一方は信号線路となり、他方はグランドプレーン層となる。導体層12A~12Dは、ストリップ線路を構成していてもよい。この場合、4つの導体層のうち隣り合う3つの導体層が、それぞれ第1のグランドプレーン層、信号線路、第2のグランドプレーン層となる。
【0035】
第1被覆層13Aおよび第2被覆層13Bは、第1実施形態における被覆層13(
図1および
図2参照)と同様に、絶縁性材料で構成される。第1被覆層13Aは、絶縁基材11A~11Cと導体層12A~12Dと接着層14A,14Bとで構成される積層構造物の一方の面を覆う。第1被覆層13Aは、少なくとも第1導体層12Aを覆う。第2被覆層13Bは、前記積層構造物の他方の面を覆う。第2被覆層13Bは、少なくとも第4導体層12Dを覆う。
第1接着層14Aおよび第2接着層14Bは、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤などの接着剤で形成されている。
【0036】
積層体101は、折曲げ部115と、対向領域116とを有する。
対向領域116は、第1領域117と、第2領域118とを備える。第1領域117と第2領域118とは、積層体101が折曲げ部115で折り返されることによって、向かい合って配置される。第1領域117および第2領域118は、互いに平行である。第1領域117と第2領域118とはY方向から見て重なり合う。
【0037】
第1領域117と第2領域118とは、例えば、間隔をおいて配置されている。第1領域117と第2領域118との距離(積層体1どうしの距離)を「L11」という。
【0038】
折曲げ部115は、積層体101が第1被覆層13Aを外側にしてループ状に折り返された箇所である。折曲げ部115は、+X方向に凸となる湾曲凸状とされている。折曲げ部115の内周面のうち一部の領域は、規制体102の外周面102aのうち一部の領域に接している。折曲げ部115の外周面102aに接している領域は、外周面102aに沿って湾曲している。
【0039】
折曲げ部115における曲げ内径を「L12」という。曲げ内径L12は、折曲げ部115のY方向の内径である。折曲げ部115の曲げ内径L12は、第1領域117と第2領域118との距離L11より大きい。
【0040】
規制体102は、折曲げ部115の内側に設けられている。規制体102は、例えば、円柱状に形成されている。規制体102は、折曲げ部115の曲げ内径L12を規制する。
【0041】
[第2実施形態のフレキシブル基板が奏する効果]
フレキシブル基板110は、第1実施形態のフレキシブル基板10(
図1および
図2参照)と同様に、曲げ内径L12が大きいことにより、折曲げ部115の導体層12A~12Dに、座屈による表面凹凸が形成されにくくなる。そのため、導体層12A~12Dの導体損失を低く抑えることができる。したがって、高周波信号の伝送損失を抑制することができる。よって、フレキシブル基板110を用いた無線通信機器では、高利得を実現できる。
【0042】
フレキシブル基板110は、導体層12A~12Dの数が多いため、多機能化を図るうえで有利となる。例えば、高周波用ICなどの部品を実装するのが容易となる。
【0043】
[フレキシブル基板](第3実施形態)
図4は、第3実施形態のフレキシブル基板210の模式的な側面図である。他の実施形態と共通の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0044】
図4に示すように、フレキシブル基板210は、積層体201と、規制体202とを備える。積層体201は、折曲げ部215と、対向領域116とを有する。
積層体201は、折曲げ部215において、第3導体層12Cと、第2接着層14Bと、第3絶縁基材11Cと、第4導体層12Dと、第2被覆層13Bとが除去されている点で、第2実施形態における積層体101(
図3参照)と異なる。
【0045】
積層体201の折曲げ部215は、第1被覆層13Aと、第1導体層12Aと、第1絶縁基材11Aと、第2導体層12Bと、第1接着層14Aと、第2絶縁基材11Bとによって構成される。
折曲げ部215では、第2絶縁基材11Bは、最も内周側に位置する。そのため、第2絶縁基材11Bは、折曲げ部215の内周面に形成された被覆層として機能する。
【0046】
折曲げ部215は、積層体201が第1被覆層13Aを外側にしてループ状に折り返された箇所である。折曲げ部215は、湾曲凸状とされている。折曲げ部215の内周面のうち一部の領域は、規制体202の外周面202aのうち一部の領域に接している。折曲げ部215の外周面202aに接している領域は、外周面202aに沿って湾曲している。
【0047】
折曲げ部215における曲げ内径を「L22」という。曲げ内径L22は、折曲げ部215のY方向の内径である。折曲げ部215の曲げ内径L22は、第1領域117と第2領域118との距離L11より大きい。
【0048】
対向領域116(第1領域117および第2領域118)において、積層体201は、4つの導体層12A~12Dを備える。折曲げ部215は、2つの導体層12A,12Bを有する。そのため、対向領域116において積層体201が備える導体層の数は、折曲げ部215における導体層の数より多い。
【0049】
規制体202は、折曲げ部215の内側に設けられている。規制体202は、例えば、円柱状に形成されている。規制体202は、折曲げ部215の曲げ内径L22を規制する。
【0050】
[第3実施形態のフレキシブル基板が奏する効果]
フレキシブル基板210は、第1実施形態のフレキシブル基板10(
図1および
図2参照)と同様に、曲げ内径L22が大きいことにより、折曲げ部215の導体層12A,12Bに、座屈による表面凹凸が形成されにくくなる。そのため、導体層12A,12Bの導体損失を低く抑えることができる。したがって、高周波信号の伝送損失を抑制することができる。よって、フレキシブル基板210を用いた無線通信機器では、高利得を実現できる。
【0051】
フレキシブル基板210では、折曲げ部215における導体層12A,12Bの数が少ないため、折曲げ部215を薄く形成することができる。そのため、折曲げ部215に生じる応力を小さくできる。したがって、折曲げ部215の導体層12A,12Bにおいて、座屈による表面凹凸は形成されにくくなる。したがって、高周波信号の伝送損失を抑制することができる。
【0052】
フレキシブル基板210は、対向領域116(第1領域117および第2領域118)において導体層12A~12Dの数が多いため、多機能化を図るうえで有利となる。例えば、高周波用ICなどの部品を領域117,118に実装するのが容易となる。
【0053】
フレキシブル基板210では、折曲げ部215において最内周側に位置する第2絶縁基材11Bは、折曲げ部215の内周面に形成された被覆層として機能する。そのため、折曲げ部215の内周面に形成された被覆層は、対向領域116において領域117,118が備える第2絶縁基材11Bと一体に形成されているといえる。
フレキシブル基板210は、折曲げ部215の内周面を覆う構造として第2絶縁基材11Bを使用できるため、折曲げ部215の内周面に、第2絶縁基材11Bに代えて新たな被覆層(カバーレイ)を設ける場合に比べて、製造が容易となる。
【0054】
[フレキシブル基板](第4実施形態)
図5は、第4実施形態のフレキシブル基板310の模式的な側面図である。他の実施形態と共通の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0055】
図5に示すように、フレキシブル基板310は、積層体301と、規制体2とを備える。積層体301は、折曲げ部15と、対向領域316とを有する。
積層体301は、対向領域316(第1領域317および第2領域318)における層構成が第1実施形態における積層体1(
図2参照)と異なる。
【0056】
第1領域317は、被覆層13の外面に、第1被覆層13Aと、第1導体層12Aと、第1絶縁基材11Aと、第1接着層14Aと、第2導体層12Bと、が付加されている。第2領域318は、被覆層13の外面に、第1被覆層13Aと、第1導体層12Aと、第1絶縁基材11Aと、第1接着層14Aと、第2導体層12Bと、が付加されている。
【0057】
対向領域316(第1領域317および第2領域318)において、積層体301は、4つの導体層を備える。折曲げ部15は、2つの導体層12を有する。そのため、対向領域316において積層体301が備える導体層の数は、折曲げ部15における導体層の数より多い。
折曲げ部15の曲げ内径L2は、第1領域317と第2領域318との距離L31より大きい。
【0058】
[第4実施形態のフレキシブル基板が奏する効果]
フレキシブル基板310は、第1実施形態のフレキシブル基板10(
図1および
図2参照)と同様に、曲げ内径L2が大きいことにより、折曲げ部15の導体層12に、座屈による表面凹凸が形成されにくくなる。そのため、導体層12の導体損失を低く抑えることができる。したがって、高周波信号の伝送損失を抑制することができる。よって、フレキシブル基板310を用いた無線通信機器では、高利得を実現できる。
【0059】
フレキシブル基板310では、折曲げ部15における導体層の数が少ないため、折曲げ部15を薄く形成することができる。そのため、折曲げ部15に生じる応力を小さくできる。したがって、折曲げ部15において、座屈による表面凹凸は形成されにくくなる。したがって、高周波信号の伝送損失を抑制することができる。
【0060】
フレキシブル基板310は、対向領域316(第1領域317および第2領域318)において導体層の数が多いため、多機能化を図るうえで有利となる。例えば、高周波用ICなどの部品を領域317,318に実装するのが容易となる。
【0061】
[フレキシブル基板](第5実施形態)
図6は、第5実施形態のフレキシブル基板410の模式的な側面図である。他の実施形態と共通の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
図6に示すように、フレキシブル基板410は、積層体401と、規制体2とを備える。積層体401の層構成は、積層体1(
図1および
図2参照)の層構成と同様である。積層体401は、折曲げ部415と、対向領域416(第1領域417および第2領域418)とを有する。
折曲げ部415は、積層体401がループ状に折り返された箇所である。折曲げ部415は、例えば、Y方向から見て規制体2の後端(-X方向の端)と重なる位置を後端とする。
【0063】
第1領域417および第2領域418は、折曲げ部415の後端を起点(前端)として後方に延びる領域である。第1領域417と第2領域418とは、後方に向かって徐々に互いに近づく。
図6において、第1領域417は、後方に行くほど下降するよう(-Y方向)に傾斜しつつ直線的に延出する。第2領域418は、後方に行くほど上昇するよう(+Y方向)に傾斜しつつ直線的に延出する。第1領域417と第2領域418とは、Y方向から見て重なり合う。
【0064】
第1領域417および第2領域418は、例えば、互いの離間距離がゼロとなる箇所19を後端とする。第1領域417と第2領域418との距離L41は、第1領域417と第2領域418との平均距離である。例えば、距離L41は、第1領域417と第2領域418との、X方向の中央における離間距離である。
【0065】
第1領域417と第2領域418との互いの離間距離はゼロにならなくてもよい。その場合は、第1領域417の内面の延在方向に沿う延長線と、第2領域418の内面の延在方向に沿う延長線との交点を定め、Y方向から見てこの交点と重なる箇所を領域417,418の後端とする。第1領域417および第2領域418は湾曲していてもよい。第1領域417および第2領域418が湾曲している場合は、第1領域417の前端の内面における接線と、第2領域418の前端の内面における接線との交点を定め、Y方向から見てこの交点と重なる箇所を領域417,418の後端としてもよい。
【0066】
折曲げ部415の曲げ内径L42は、第1領域417と第2領域418との距離L41より大きい。
【0067】
[第5実施形態のフレキシブル基板が奏する効果]
フレキシブル基板410は、第1実施形態のフレキシブル基板10(
図1および
図2参照)と同様に、曲げ内径L42が大きいことにより、導体層12の導体損失を低く抑えることができる。したがって、高周波信号の伝送損失を抑制することができる。よって、フレキシブル基板410を用いた無線通信機器では、高利得を実現できる。
【0068】
以上、本発明のフレキシブル基板について説明してきたが、本発明は前記の例に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
図1に示すフレキシブル基板10では、導体層12は、絶縁基材11の一方および他方の面にそれぞれ形成されているが、導体層の構成は、特に限定されない。例えば、導体層は、絶縁基材11の内面側のみに設けてもよいし、絶縁基材11の外面側のみに設けてもよい。
【0069】
図1に示すフレキシブル基板10は、2つの導体層12を備えるが、導体層の数は特に限定されない。導体層の数は、1または複数(2以上の任意の数)であってよい。
図1に示すフレキシブル基板10は、1つの絶縁基材11を備えるが、絶縁基材の数は特に限定されない。絶縁基材の数は、1または複数(2以上の任意の数)であってよい。
【0070】
図1に示すフレキシブル基板10は、円柱状の規制体2を備えるが、規制体の形状は特に限定されない。規制体は、折曲げ部と接する領域が湾曲凸状となればよい。例えば、規制体は、折曲げ部と接する領域が湾曲凸状に形成された半円柱状であってもよい。規制体は、折曲げ部と接する領域が湾曲凸状に形成された半パイプ状であってもよい。規制体は、折曲げ部の内周面に貼り付けられるフィルムであってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1,101,201,301,401…積層体、2,102,202…規制体、10,110,210,310,410…フレキシブル基板、11…絶縁基材、11A…第1絶縁基材、11B…第2絶縁基材、11C…第3絶縁基材、12…導体層、12A…第1導体層、12B…第2導体層、12C…第3導体層、12D…第4導体層、13…被覆層、13A…第1被覆層、13B…第2被覆層、15,115,215,415…折曲げ部、16,116,216,316,416…対向領域、L1,L11,L31,L41…積層体どうしの距離、L2,L12,L22,L42…曲げ内径。