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特開2022-186158締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造
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  • 特開-締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造 図1
  • 特開-締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造 図2
  • 特開-締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造 図3
  • 特開-締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造 図4
  • 特開-締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造 図5
  • 特開-締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造 図6
  • 特開-締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造 図7
  • 特開-締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造 図8
  • 特開-締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造 図9
  • 特開-締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186158
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 31/00 20060101AFI20221208BHJP
   F16B 29/00 20060101ALI20221208BHJP
   H05K 7/14 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
F16B31/00 Z
F16B29/00
H05K7/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094243
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】飯田 慧太
【テーマコード(参考)】
5E348
【Fターム(参考)】
5E348AA32
(57)【要約】
【課題】上方から着座判定が可能な締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造を提供する。
【解決手段】本発明の締結部材は、ネジと、ワッシャーと、を備える。
そして、上記ワッシャーが、被締結物と当接する座面部と、該座面部の外縁から立ち上がる立設部とを有し、上記座面部が、上記外縁から中心方向に向けて上り勾配を有する傾斜部を備え、上記立設部が、その上端に上記ネジの頭部方向に向けて突出した庇を備えており、締結前は、上記ワッシャーが開いて上記ネジの頭部の全部が露出し、締結後は、上記座面部が上記ネジの頭部と上記被締結物とに挟まれて変形し、上記立設部の庇が上記ネジの頭部の少なくとも一部を覆うこととしたため、上方から着座判定が可能である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジと、ワッシャーと、を備える締結部材であって、
上記ワッシャーが、被締結物と当接する座面部と、該座面部の外縁から立ち上がる立設部とを有し、
上記座面部が、上記外縁から中心方向に向けて上り勾配を有する傾斜部を備え、
上記立設部が、その上端に上記ネジの頭部方向に向けて突出した庇を備えており、
締結前は、上記ワッシャーが開いて上記ネジの頭部の全部が露出し、
締結後は、上記座面部が上記ネジの頭部と上記被締結物とに挟まれて変形し、
上記立設部の庇が上記ネジの頭部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする締結部材。
【請求項2】
上記請求項1に記載の締結部材を用いて、タップ部を有する部材に上記被締結物を固定した締結構造であって、
上記ネジの軸が、上記ワッシャーと上記被締結物とを貫通して上記タップ部を有する部材と螺合し、
上記ワッシャーの座面部が、上記被締結物に当接して少なくとも一部が平坦をなし、
上記立設部の庇が、上記ネジの頭部の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする締結構造。
【請求項3】
上記被締結物が、電子基板であり、
上記タップ部を有する部材が、インバータの電子基板固定部材であることを特徴とする請求項2に記載の締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造に係り、更に詳細には、着座判定を締結部材の上方から行うことができる締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)に用いられるインバータは、モータなどからの振動を繰り返し受けるので、モータ駆動基板などの基板を固定する締結部の信頼性が求められる。
【0003】
通常、モータ駆動回路基板は、樹脂製の部材にセルフタッピングにより締結固定されるため、締結部材が着座している(締め付けが完了している)か否か確認する必要がある。
【0004】
昨今、インバータの小型化に伴い、モータ駆動回路基板の角に配置されていた締結穴がオフセットした位置に配置されたり、締結穴の周囲に部品が固定されていたりする場合が多くなっている。このため、締結部材の側方から、目視や隙間ゲージにより締結部材がきちんと着座しているか否かを確認することは困難である。
【0005】
特許文献1には、プリント基板の締結穴の近傍に2つの電極を設け、これらの電極間が締結部材を介して導通しているか否かにより締結部材の着座判定を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-112423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の着座判定においては、締結穴のそれぞれに設けられた電極に計測器を当てる必要があり、着座判定に検査時間と労力を費やしてしまう。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上方から着座判定が可能な締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、締結前は、ネジ頭部に締結工具が篏合可能であり、締結完了後は、ネジ頭部を覆い篏合不可能にするワッシャーを用いることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の締結部材は、ネジと、ワッシャーと、を備える。
そして、上記ワッシャーが、被締結物と当接する座面部と、該座面部の外縁から立ち上がる立設部とを有し、上記座面部が、上記外縁から中心方向に向けて上り勾配を有する傾斜部を備え、上記立設部が、その上端に上記ネジの頭部方向に向けて突出した庇を備えており、締結前は、上記ワッシャーが開いて上記ネジの頭部の全部が露出し、締結後は、上記座面部が上記ネジの頭部と上記被締結物とに挟まれて変形し、上記立設部の庇が上記ネジの頭部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の締結構造は、上記締結部材を用いて、タップ部を有する部材に上記被締結物を固定した締結構造である。
そして、上記ネジの軸が、上記ワッシャーと上記被締結物とを貫通して上記タップ部を有する部材と螺合し、上記ワッシャーの座面部が、上記被締結物に当接して少なくとも一部が平坦をなし、上記立設部の庇が、上記ネジの頭部の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、締結前は、ネジ頭部に締結工具が篏合可能であり、締結完了後は、ネジ頭部を覆い篏合不可能にするワッシャーを用いることとしたため、上方から着座判定が可能な締結部材、及び該締結部材を用いた締結構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の締結部材の一例を示す図である。
図2】本発明の締結部材の他の一例を示す図である。
図3】本発明の締結部材を用いて締結する状態を説明する図である。
図4】本発明の締結部材を用いて締結する状態を説明する図である。
図5】本発明の締結部材で締結した締結構造を説明する図である。
図6】着座検出を工具穴の形状で行う状態を説明する図である。
図7】着座検出をワッシャーの面積で行う状態を説明する図である。
図8】本発明の締結部材のワッシャーの他の一例を示す図である。
図9】本発明の締結部材のワッシャーのさらに他の一例を示す図である。
図10】実施例で用いたワッシャーの寸形状・寸法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<締結部材>
本発明の締結部材について詳細に説明する。
この締結部材は、ネジとワッシャーとを備えている。
【0015】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の締結部材の平面図と側面図とを図1に示す。
この締結部材のワッシャーは、被締結物と当接する座面部と、該座面部の外縁から立ち上がる立設部とを有する。
【0016】
上記座面部は、図1に示すように四角形をしており、その対向する2辺から中心方向に向けて上り勾配を有する2つの傾斜部と、該2つの傾斜部の間に平坦部とを有し、この平坦部の中心にはネジの軸が通る貫通孔が設けられている。
なお、2つの傾斜部と平坦部とは、図2に示すように、その境目で折れ曲がらずに連続して弧を描いた形状であってもよい。
【0017】
上記立設部は、座面部外縁の対向する2辺から上記傾斜部に対してほぼ垂直に立ち上がる壁と、その上端に、ネジの頭方向におよそ90°折れ曲がってネジの頭部方向に突出した庇とを有している。
【0018】
上記締結部材は、締結前においては、図3に示すように、座面部の外縁と被締結部材とが当接しており、中心側(ネジ側)では座面部と被締結部材との間に隙間が形成される。
【0019】
そして、2つ立設部の壁はそれぞれ傾斜部に対して垂直に設けられており、上に開いているので、上記ネジの頭部の全部が露出し、締結工具を頭部に篏合させてネジを締めることができる。
【0020】
また、ネジ締めることによって、座面部がネジの頭部で被締結部材に押し付けられて傾斜部が変形するので、座面部が略平坦になり、座面部の外縁だけでなく座面部の全体が被締結物に当接するようになる。
【0021】
すると、立設部の壁は、傾斜部の傾斜が緩くなるのに従って、被締結部材に対して垂直になるように立ち上がるので庇がネジの頭部方向に移動する。このとき、立設部の庇は、図4に示すように、締結工具に当接して弾性変形するので締結工具による締結が可能である。
【0022】
そして、締結工具を取り去ると、図5に示すように、弾性変形していた庇が元に戻り、ネジの頭部の少なくとも一部を覆い締結工具の篏合を不能にする。
【0023】
このように、本発明においては、締結前は庇間の隙間が広く、ネジの頭部の全部が露出し、締結後においては2つの庇間の隙間が狭くなってネジの頭部が覆われる。
【0024】
上記2つの庇間の隙間は、座面部が被締結物側に押し付けられるにつれて、すなわち、座面部の変形が進み平坦になるにつれて狭くなるので、ネジの頭部に設けられた工具穴の見え具合や、庇間の隙間から見える座面部の面積などによって着座検出を行うことが可能であり、着座判定を締結部材の上方から行うことができる。
【0025】
着座検出方法としては、ネジ頭部の工具穴の形状をパターンマッチングセンサで検出し、図6に示すように、予め登録した工具穴の着座形状(OK形状)とマッチングするか否かにより着座検出する方法や、図7に示すように、庇の隙間から見えるネジの頭部や座面部を画像処理によって検出できる面積センサによって、それらの面積の大小によって着座検出する方法を挙げることができる。
【0026】
上記パターンマッチングセンサとしては、AI-B100(KEYENCE社製)を挙げることができ、面積センサとしては、IV2-G500CA(KEYENCE社製)を挙げることができる。
【0027】
上記ネジの工具穴や、上記ワッシャーの座面部に着色すると、着色した部分と庇とのコントラスト差や色相の差を大きくすることができるので、画像処理による検出精度を向上させることができる。
【0028】
そして、締結後には、ネジの頭部と被締結部材との間に座面部が介在し、座面部の外縁のみで被締結部材と線接触しているのではなく被締結部材と面で接触しているので、被締結部材にかかるネジの軸力を分散させて被締結部材の陥没を防ぎネジの緩みを防止できる。
【0029】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のワッシャーの平面図と側面図とを図8に示す。
この締結部材は、ワッシャーが、円形をした平坦部と該平坦部の外側に3つの傾斜部とを有する座面部と、上記3つの傾斜部のそれぞれから立ち上がる立設部を有している他は上記第1の実施形態と同様である。
なお、平坦部の外側に設けられた傾斜部の数は、3つに限らず2つ以上であればよい。
【0030】
この締結部材も上記第1の実施形態と同様に、ネジを締めることによって、座面部が被締結部材に押し付けられ、傾斜部が変形して略平坦になる。したがって、立設部が立ち上がり、庇がネジの頭部を覆うので、着座判定を締結部材の上方から行うことができる。
【0031】
(第3の実施形態)
第3の実施形態のワッシャーの平面図と側面図とを図9に示す。
この締結部材は、ワッシャーが四角形をした座面部を有しており、この座面部は、その辺に対して角度をもった2つの平行な山折れ線によって傾斜した傾斜部が平坦部の両側に形成されている。
【0032】
そして、傾斜部から立ち上がる立設部の庇の先端が、上記山折れ線に平行になるように一辺が斜めにカットされた台形をしている他は上記第1の実施形態と同様である。
【0033】
上記傾斜部を形成する2つの山折れ線は、図9に示すように平行であるので、傾斜部から立ち上がる立設部の庇は、締結前は、座面部に対して側方にずれて位置し、締結後は、座面部に重なるように移動してネジの頭部を覆う。
【0034】
第3の実施形態の締結部材は、第1、第2の実施形態の締結部材とは異なり、立設部の庇が上方に開くのではなく、側方にずれて開くので、締結穴の近傍に部品が設置されている場合など、締結スペースが限られる場合に有効に用いることができる。
【0035】
<締結構造>
本発明の締結構造は、上記締結部材を用いて、タップ部を有する部材に上記被締結物を固定した締結構造である。
【0036】
この締結構造は、図5に示すように、本発明の締結部材のネジの軸が、ワッシャーの穴とタップ部を有する部材に載置された被締結物の締結穴を通ってタップ部を有する部材と螺合している。
【0037】
そして、ネジの軸がタップ部を有する部材と螺合しているので、ワッシャーの座面部が、上記被締結物に当接して少なくとも一部が平坦をなしており、座面部から立ち上がる立設には、被締結物に対してほぼ垂直に立って、庇がネジの頭部の少なくとも一部を覆った構造をしている。
【0038】
上記タップ部を有する部材としては、筐体などのインバータの電子基板固定部材を挙げることができ、被締結物としては、モータ駆動回路基板などの電子基板を挙げることができる。
【0039】
また、上記ネジとしては、軸部分にらせん状の溝が入ったボルト(雄ネジ)や、雌ネジがなくてもタップ部を有する部材にねじ立てしながら螺合できるタッピングネジを使用できる。タッピングネジは、予めタップ部を有する部材に雌ネジを形成しておく必要がなく、作業工程を減らすことができるので好ましく使用できる。
【実施例0040】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0041】
ステンレス板を、ボルトの呼び径に応じて下記表1に示す寸法で図10に示す形状に成形してワッシャーを作製し、このワッシャーの穴に六角穴付きボルトを通して締結部材とした。
【0042】
【表1】
【0043】
アルミ製のインバータ筐体にモータ駆動回路基板を載置し、該基板の締結穴に上記締結部材のボルトを通し、締結工具でボルトを締めて締結した。
【0044】
締結後のワッシャーの庇間の開口面積は、締結前に比べて小さくなっており、ボルトの頭部はワッシャーの庇で覆われて締結工具が通るスペースがなくなっていた。
【0045】
上記の結果から、締結部材の着座判定を上方から行うことができることが確認できた。
【符号の説明】
【0046】
1 締結部材
2 ネジ
21 頭部
210 工具穴
22 軸
3 ワッシャー
31 座面部
310 平坦部
311 傾斜部
312 貫通孔
32 立設部
320 壁
321 庇
4 被締結部材
5 タップ部を有する部材
6 締結工具
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10