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特開2022-186162モノマー混合液の調製方法およびモノマー混合設備
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186162
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】モノマー混合液の調製方法およびモノマー混合設備
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
C08F2/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094247
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三村 康寛
(72)【発明者】
【氏名】木村 隼人
【テーマコード(参考)】
4J011
【Fターム(参考)】
4J011AA01
4J011AA05
4J011AC03
4J011BB01
4J011BB08
4J011BB17
4J011DB12
4J011EC01
(57)【要約】
【課題】共通配管部内のモノマーの滞留を防止することによって共通配管部の閉塞を防止でき、所定のモノマー混合液を得ることが可能な、モノマー混合液の調製方法およびモノマー混合設備を提供する。
【解決手段】モノマー混合液の調製方法は、2成分以上のモノマーのそれぞれをモノマー混合槽に供給配管を介して供給してモノマー混合液を調製する方法である。このモノマー混合液の調製方法においては、前記供給配管のうち前記モノマー混合槽に連通する一の配管の途上に前記2成分以上のモノマーのそれぞれを成分毎に流入させる複数の流入口を有する共通配管部に前記2成分以上のモノマーのそれぞれを流すとき、前記2成分以上のモノマーのうち、Q値が最も高いモノマーを最後のモノマー流体として、かつ、全てのモノマー成分の中で前記共通配管部を流れる距離を最も長くして流す。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2成分以上のモノマーのそれぞれをモノマー混合槽に供給配管を介して供給してモノマー混合液を調製するモノマー混合液の調製方法であって、
前記供給配管のうち前記モノマー混合槽に連通する一の配管の途上に前記2成分以上のモノマーのそれぞれを成分毎に流入させる複数の流入口を有する共通配管部に前記2成分以上のモノマーのそれぞれを流すとき、前記2成分以上のモノマーのうち、Q値が最も高いモノマーを最後のモノマー流体として、かつ、全てのモノマー成分の中で前記共通配管部を流れる距離を最も長くして流して流す、モノマー混合液の調製方法。
【請求項2】
前記共通配管部に3成分以上のモノマーのそれぞれを流すとき、前記Q値が低い値から高い値になる順番に流す、請求項1に記載のモノマー混合液の調製方法。
【請求項3】
前記共通配管部に3成分以上のモノマーのそれぞれを流すとき、前記Q値が低い値から高い値になる順番に前記共通配管部を流れる距離を長くして流す、請求項1または請求項2に記載のモノマー混合液の調製方法。
【請求項4】
2成分以上のモノマーを混合してモノマー混合液を得るモノマー混合設備であって、
2成分以上のモノマーのそれぞれを成分毎に貯留する複数のモノマー貯留槽と、
前記2成分以上のモノマーを混合するモノマー混合槽と、
前記モノマー貯留槽のそれぞれから前記2成分以上のモノマーのそれぞれを前記モノマー混合槽に供給する供給配管と、
前記供給配管を介しての前記2成分以上のモノマーのそれぞれの供給および供給停止を切り替える切り替え部と、を有し、
前記供給配管は、前記モノマー混合槽に連通する一の配管の途上に前記2成分以上のモノマーのそれぞれを成分毎に流入させる流入口を有する共通配管部を含み、Q値が最も高いモノマーを流入させる一の流入口と前記モノマー混合槽に連通する前記共通配管部の先端との間の通路長が他のモノマーを流入させる他の流入口と前記共通配管部の前記先端との間の通路長よりも長く、
前記切り替え部によって、前記Q値が最も高いモノマーを前記共通配管部に最後に流す、モノマー混合設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマー混合液の調製方法およびモノマー混合設備に関する。
【背景技術】
【0002】
モノマーを反応させることによって重合物を製造することは一般的に行われている(特許文献1および特許文献2を参照)。
【0003】
特許文献1には、2成分以上のモノマー混合液を用いて重合する連続重合方法において、重合未反応のモノマーを回収し、モノマー調製部に戻すことが開示されている。
【0004】
特許文献2には、2種類以上の原料液を混合して反応槽に供給するマイクロミキサを有する化学反応装置が開示されている。マイクロミキサは、2種類以上の原料液をそれぞれ導入する複数の管路であって管路径がマイクロオーダの微細導入路と、原料液が合流するように微細導入路同士を接合することによって原料液同士を混合する混合部と、混合された混合液を混合部から導出する1本の管路であって管路径がマイクロオーダの微細導出路と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-292503号公報
【特許文献2】特開2007-307440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
重合における重合条件などは種々検討されている。しかしながら、2成分以上のモノマーを含むモノマー混合液を調製する方法については、ほとんど検討されていない。特に、2成分以上のモノマーを用いた重合反応においては、重合槽に各モノマーをそれぞれ供給してもよいが、一旦モノマー混合槽で各モノマーを均一に混合し、モノマー混合液として重合に用いることが重合反応の安定、品質の安定につながる。
【0007】
一方、工業規模では、これらモノマー混合液を調製するにあたり、各モノマー(含有液)を配管を通してモノマー混合槽に供給する。この場合において、モノマーの種類にもよるものの、配管内あるいは配管壁に滞留したモノマーが重合し、モノマー混合槽へのモノマーの円滑な供給が阻害される不具合が発生する虞がある。特に重合性の高いモノマーを用いた場合、上記の不具合が発生しやすい。
【0008】
また、モノマーが滞留することによって、モノマー混合液の成分濃度等に差異が生じる。その結果、厳密なコントロールが必要となるような重合反応において、所定の重合物を得ることができない虞がある。さらには、配管内の壁面等に析出した重合物が、別ロットや別品種の製造時に混入し、想定外の反応が起こったり、所定の重合物が得られなくなったりする虞もある。
【0009】
そこで、本発明は、共通配管部内のモノマーの滞留を防止することによって共通配管部の閉塞を防止でき、所定のモノマー混合液を得ることが可能な、モノマー混合液の調製方法およびモノマー混合設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の一様相は、2成分以上のモノマーのそれぞれをモノマー混合槽に供給配管を介して供給してモノマー混合液を調製するモノマー混合液の調製方法である。このモノマー混合液の調製方法においては、前記供給配管のうち前記モノマー混合槽に連通する一の配管の途上に前記2成分以上のモノマーのそれぞれを成分毎に流入させる複数の流入口を有する共通配管部に前記2成分以上のモノマーのそれぞれを流すとき、前記2成分以上のモノマーのうち、Q値が最も高いモノマーを最後のモノマー流体として、かつ、全てのモノマー成分の中で前記共通配管部を流れる距離を最も長くして流す。
【0011】
上記目的を達成するための本発明の別の一様相は、2成分以上のモノマーを混合してモノマー混合液を得るモノマー混合設備である。モノマー混合設備は、2成分以上のモノマーのそれぞれを成分毎に貯留する複数のモノマー貯留槽と、前記2成分以上のモノマーを混合するモノマー混合槽と、前記モノマー貯留槽のそれぞれから前記2成分以上のモノマーのそれぞれを前記モノマー混合槽に供給する供給配管と、前記供給配管を介しての前記2成分以上のモノマーのそれぞれの供給および供給停止を切り替える切り替え部と、を有する。前記供給配管は、前記モノマー混合槽に連通する一の配管の途上に前記2成分以上のモノマーのそれぞれを成分毎に流入させる流入口を有する共通配管部を含み、Q値が最も高いモノマーを流入させる一の流入口と前記モノマー混合槽に連通する前記共通配管部の先端との間の通路長が他のモノマーを流入させる他の流入口と前記共通配管部の前記先端との間の通路長よりも長い。そして、前記切り替え部によって、前記Q値が最も高いモノマーを前記共通配管部に最後に流す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、共通配管部内のモノマーの滞留を防止することによって共通配管部の閉塞を防止でき、所定のモノマー混合液を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】実施形態に係るモノマー混合設備を有する重合設備を示す概略構成図である。
図1B】実施形態に係るモノマー混合設備の動作を説明する説明図である。
図1C】実施形態に係るモノマー混合設備の他の動作を説明する説明図である。
図2A】変形例1に係るモノマー混合設備を有する重合設備を示す概略構成図である。
図2B】変形例1に係るモノマー混合設備の動作を説明する説明図である。
図3A】変形例2に係るモノマー混合設備を有する重合設備を示す概略構成図である。
図3B】変形例2に係るモノマー混合設備の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。
【0015】
図1Aは、実施形態に係るモノマー混合設備10を有する重合設備を示す概略構成図である。図示するように、重合設備は、2成分以上のモノマーを混合してモノマー混合液を得るモノマー混合設備10と、重合開始剤を貯留する重合開始剤槽80と、モノマー混合液および重合開始剤によって重合反応を行う重合槽90と、を有する。図1Aにおいて、モノマー混合設備10は2点鎖線によって囲まれる。モノマー混合液は、コントロールバルブ71を開くことによって、重合槽90に供給される。重合開始剤は、バルブ81を開くことによって、重合槽90に供給される。重合反応によって得られた重合体は、バルブ91を開くことによって、図示しない次工程の設備に供給される。モノマー混合設備10は、特定の重合設備に備える場合に限定されるものではなく、種々の形態の重合設備に備えることができる。
【0016】
モノマー混合設備10は、概説すると、2成分以上(図示例では3成分)のモノマー31、41、51のそれぞれを成分毎に貯留する複数(図示例では3つ)のモノマー貯留槽30、40、50と、3成分のモノマー31、41、51を混合するモノマー混合槽70と、モノマー貯留槽30、40、50のそれぞれから3成分のモノマー31、41、51のそれぞれをモノマー混合槽70に供給する供給配管100と、供給配管100を介しての3成分のモノマー31、41、51のそれぞれの供給および供給停止を切り替える切り替え部32、42、52と、を有する。供給配管100は、モノマー混合槽70に連通する一の配管120の途上に3成分のモノマー31、41、51のそれぞれを成分毎に流入させる流入口131、132、133を有する共通配管部130を含んでいる。Q値が最も高いモノマー51を流入させる一の流入口133とモノマー混合槽70に連通する共通配管部130の先端120aとの間の通路長は、他のモノマー31、41を流入させる他の流入口131、132と共通配管部130の先端120aとの間の通路長よりも長い。そして、モノマー混合設備10は、切り替え部32、42、52によって、Q値が最も高いモノマー51を共通配管部130に最後に流すことができる。
【0017】
モノマーのQ値については後述するが、Q値はラジカル重合のしやすさを表す一般的パラメータである。Q値は、低いほどラジカル重合が生じやすく、高いほどラジカル重合が生じにくいことを示す尺度である。
【0018】
以下、実施形態に係るモノマー混合設備10の構成を詳述する。なお、説明の便宜上、3成分のモノマー31、41、51のそれぞれを、「第1モノマー31」、「第2モノマー41」、および「第3モノマー51」という。各部材に付した「第1」、「第2」、および「第3」の接頭語は、それぞれ、第1モノマー31用の部材、第2モノマー41用の部材、および第3モノマー51用の部材であることを表している。3つのモノマー貯留槽30、40、50を総称して、「モノマー貯留槽」ともいう。
【0019】
モノマー貯留槽は、第1モノマー31を貯留する第1モノマー貯留槽30と、第2モノマー41を貯留する第2モノマー貯留槽40と、第3モノマー51を貯留する第3モノマー貯留槽50と、を有する。第1モノマー貯留槽30は、第1ポンプ33および第1配管35を備える。第2モノマー貯留槽40は、第2ポンプ43および第2配管45を備える。第3モノマー貯留槽50は、第3ポンプ53および第3配管55を備える。
【0020】
モノマー混合設備10は、モノマー混合槽70に連通する一の配管120を有する。一の配管120は、第1流入口131、第2流入口132、および第3流入口133を有する。第1モノマー貯留槽30は、第1配管35を介して第1流入口131に接続される。第1モノマー31は、第1配管35を通って第1流入口131から一の配管120に流入し、モノマー混合槽70に供給される。第2モノマー貯留槽40は、第2配管45を介して第2流入口132に接続される。第2モノマー41は、第2配管45を通って第2流入口132から一の配管120に流入し、モノマー混合槽70に供給される。第3モノマー貯留槽50は、第3配管55を介して第3流入口133に接続される。第3モノマー51は、第3配管55を通って第3流入口133から一の配管120に流入し、モノマー混合槽70に供給される。
【0021】
モノマー混合設備10の供給配管100は、複数の配管によって構成される。供給配管100は、第1~第3の配管35、45、55、および一の配管120などを含んでいる。上述したように、一の配管120は、第1モノマー31を流入させる第1流入口131、第2モノマー41を流入させる第2流入口132、および第3モノマー51を流入させる第3流入口133を有する。供給配管100は、一の配管120の途上に第1~第3の流入口131、132、133を有する共通配管部130を含んでいる。より詳しくは、共通配管部130は、図1Aに太線によって示されるように、一の配管120のうち、モノマー混合槽70に連通する先端120aから、第1~第3の流入口131、132、133を少なくとも含む範囲の配管部分と定義される。図示例では、共通配管部130は、先端120aから第3流入口133までの範囲の配管部分である。
【0022】
一の配管120は、バルブ140が末端に配置される。バルブ140は、重合設備の定期保守などのときに、窒素ガスなどの不活性ガスによって共通配管部130などをパージするために使用される。なお、バルブ140に代えて、着脱自在な封止フランジを末端に接続してもよい。重合設備の定期保守などのときには、封止フランジを取り外し、ガス導入ライン等を配管接続することもできる。
【0023】
第3流入口133と先端120aとの間の通路長は、第2流入口132と先端120aとの間の通路長よりも長い。第2流入口132と先端120aとの間の通路長は、第1流入口131と先端120aとの間の通路長よりも長い。ここに、「通路長」は、3成分のモノマー31、41、51のそれぞれが共通配管部130を流れる距離に等しい。モノマー混合設備10に含まれる機器および配管のレイアウトによっては、第3流入口133とモノマー混合槽70との間の直線的な離間距離が、第1と第2の流入口132、133とモノマー混合槽70との間の直線的な離間距離よりも短い場合も生じる。通路長は、レイアウトされた配管の実際の長さである。
【0024】
共通配管部130のうち第1流入口131と先端120aとの間は、第1モノマー31、第2モノマー41、および第3モノマー51のそれぞれが流れる。共通配管部130のうち第2流入口132と第1流入口131との間は、第2モノマー41および第3モノマー51のそれぞれが流れることができる。共通配管部130のうち第3流入口133と第2流入口132との間は、第3モノマー51のみが流れることができる。
【0025】
第1モノマー31、第2モノマー41、および第3モノマー51は、Q値が異なる。本実施形態においては、第3モノマー51のQ値が最も高く、次に第2モノマー41のQ値が高く、第1モノマー31のQ値が最も低いとする。したがって、Q値が最も高い第3モノマー51を流入させる第3流入口133(一の流入口に相当する)と共通配管部130の先端120aとの間の通路長は、第1と第2のモノマー31、41(他のモノマーに相当する)を流入させる第1と第2の流入口131、132(他の流入口に相当する)と共通配管部130の先端120aとの間の通路長よりも長い。
【0026】
共通配管部130は、モノマー混合槽70に向けて1/200以上で下降傾斜していることが好ましい。第1~第3のモノマー31、41、51を共通配管部130に滞留させないためである。一の配管120のうちバルブ140が配置された末端から第3流入口133までの範囲の配管部分も、上記の末端から第3流入口133に向けて1/200以上で下降傾斜していることが好ましい。第3のモノマー51を上記の末端に向かう配管部分に滞留させないためである。
【0027】
切り替え部32、42、52は、例えば、開閉制御される第1~第3のバルブから構成される。第1バルブ32は、第1配管35に配置される。第1バルブ32を開くと、第1モノマー貯留槽30の第1モノマー31は、第1流入口131から共通配管部130を流れてモノマー混合槽70に供給される。第1バルブ32を閉じると、第1モノマー31は、モノマー混合槽70への供給が停止される。第2バルブ42は、第2配管45に配置される。第2バルブ42を開くと、第2モノマー貯留槽40の第2モノマー41は、第2流入口132から共通配管部130を流れてモノマー混合槽70に供給される。第2バルブ42を閉じると、第2モノマー41は、モノマー混合槽70への供給が停止される。第3バルブ52は、第3配管55に配置される。第3バルブ52を開くと、第3モノマー貯留槽50の第3モノマー51は、第3流入口133から共通配管部130を流れてモノマー混合槽70に供給される。第3バルブ52を閉じると、第3モノマー51は、モノマー混合槽70への供給が停止される。
【0028】
モノマー混合設備10は、第1~第3のバルブ32、42、52によって、Q値が最も高い第3モノマー51を共通配管部130に最後に流すように構成される。第1~第3のバルブ32、42、52は、例えば空気圧によって作動される制御弁から構成される。コントローラ150は、第1~第3のバルブ32、42、52のそれぞれに開閉制御信号を出力する。第1~第3のバルブ32、42、52を手動操作して、Q値が最も高い第3モノマー51を共通配管部130に最後に流すようにしてもよい。
【0029】
(Q値について)
Q値(「アルフレイ-プライスのQ値」とも呼ばれる)は、ラジカル重合性モノマーの二重結合とその置換基との共役の程度を表す指標として、当該二重結合の電子密度の指標であるe値とともに、1948年にT.AlfreyとC.C.Priceによって提出されており、スチレンを基準(Q=1.0)として、数多くのモノマーについてQ値が実験的に求められている。
【0030】
代表的なモノマーのQ値は、J.Brandrup、E.H.Immergut、E.A.Grulke著、「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」、(米国)、第4版、ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley & Sons Inc)、1999年、p.II/181~II/319などにまとめられており、これを参照することができる。
【0031】
また、Q値は、文献1(M.Fineman他、ジャーナル・オブ・ポリマーサイエンス、5巻、p269、ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley & Sons Inc)、1950年)や、文献2(改訂高分子合成の化学、p111~116、大津隆行著、化学同人、1992年)に記載の方法により導出してもよい。
【0032】
代表的なモノマーのQ値を下記表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
(実施形態のモノマー混合設備10の動作)
図1Bは、実施形態に係るモノマー混合設備10の動作を説明する説明図である。
【0035】
図1Bに示すように、第1モノマー31のQ値はQaであり、第2モノマー41のQ値はQbであり、第3モノマー51のQ値はQcである。Q値の値は、Qa<Qb<Qcであり、第3モノマー51のQ値が最も高い。また、共通配管部130の第1流入口131と先端120aとの間の通路長、すなわち第1モノマー31が共通配管部130を流れる距離はLaであり、同様に、第2モノマー41が共通配管部130を流れる距離はLbであり、第3モノマー51が共通配管部130を流れる距離はLcである。距離の値は、La<Lb<Lcであり、第3モノマー51が共通配管部130を流れる距離が最も長い。
【0036】
第1~第3のモノマー31、41、51のそれぞれをモノマー混合槽70に供給配管100を介して供給してモノマー混合液を調製するとき、第1~第3のモノマー31、41、51のそれぞれは、次のようにして供給配管100の共通配管部130に流され、モノマー混合槽70に供給される。
【0037】
図1Bには、第1~第3のバルブ32、42、52の開閉を示すタイムチャートが示される。まず、Q値が最も低いQaである第1モノマー31用の第1バルブ32を開く。第1モノマー貯留槽30の第1モノマー31は、第1流入口131から共通配管部130を流れてモノマー混合槽70に供給される。予め定められた規定量の第1モノマー31がモノマー混合槽70に供給されると、第1バルブ32を閉じ、第1モノマー31の供給を停止する。第1モノマー31が共通配管部130を流れる距離は最も短いLaである。
【0038】
次に、Q値がQb(Qa<Qb)である第2モノマー41用の第2バルブ42を開く。第2モノマー貯留槽40の第2モノマー41は、第2流入口132から共通配管部130を流れてモノマー混合槽70に供給される。予め定められた規定量の第2モノマー41がモノマー混合槽70に供給されると、第2バルブ42を閉じ、第2モノマー41の供給を停止する。第2モノマー41が共通配管部130を流れる距離はLb(La<Lb)である。
【0039】
最後に、Q値が最も高いQc(Qa<Qb<Qc)である第3モノマー51用の第3バルブ52を開く。第3モノマー貯留槽50の第3モノマー51は、第3流入口133から共通配管部130を流れてモノマー混合槽70に供給される。予め定められた規定量の第3モノマー51がモノマー混合槽70に供給されると、第3バルブ52を閉じ、第3モノマー51の供給を停止する。第3モノマー51が共通配管部130を流れる距離は最も長いLc(La<Lb<Lc)である。
【0040】
上記のように、共通配管部130に第1~第3のモノマー31、41、51のそれぞれを流すとき、Q値が最も高い第3モノマー51を最後に、かつ、Q値が最も高い第3モノマー51が共通配管部130を流れる距離Lcを最も長くして流している。
【0041】
また、共通配管部130に第1~第3のモノマー31、41、51のそれぞれを流すとき、Q値が低い値から高い値になる順番(第1モノマー31、第2モノマー41、第3モノマー51の順)に流している。
【0042】
さらにまた、共通配管部130に第1~第3のモノマー31、41、51のそれぞれを流すとき、Q値が低い値から高い値になる順番(第1モノマー31、第2モノマー41、第3モノマー51の順)に共通配管部130を流れる距離を長くして流している(La<Lb<Lc)。
【0043】
Q値に基づいて最後に流すモノマー成分および共通配管部130を流す距離の大小を決定することによって、ラジカル重合が生じやすいモノマー(Q値が低い)を用いる場合であっても、最後に最もラジアル重合が生じにくい第3モノマー51を供給することによって、配管内あるいは配管壁にラジカル重合がより生じやすい第1、第2のモノマー31、41が残存しない。滞留したモノマーが重合することを低減できる結果、共通配管部130の閉塞を防止でき、モノマー混合槽70への第1~第3のモノマー31、41、51の円滑な供給を確保できる。モノマーが滞留しないため、モノマー混合液の成分濃度等に差異が生じることがなく、所定のモノマー混合液を得ることができる。その結果、厳密なコントロールが必要となるような重合反応において、所定の重合物を得ることができる。さらには、配管内の壁面等に析出した重合物が、別ロットや別品種の製造時に混入する事態が発生せず、所定の重合物を得ることができる。
【0044】
重合設備の中には、複数のモノマーのそれぞれを個別に重合槽90に直接導入する形態がある。この形態の場合、複数のモノマーのそれぞれのモノマーライン毎に流量をコントロールするバルブが必要になる。一方、本実施形態は、複数のモノマーをモノマー混合槽70において混合してモノマー混合液を調製し、その後に、モノマー混合液を重合槽90に導入する。この形態の場合、1つのコントロールバルブ71を配置すればよい。また、1つのコントロールバルブ71の開閉制御を管理すればよいため、制御自体も容易であり、より安定した重合反応と、より高い品質の安定性とに寄与できる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態のモノマー混合液の調製方法は、供給配管100のうちモノマー混合槽70に連通する一の配管120の途上に3成分のモノマー31、41、51のそれぞれを成分毎に流入させる複数の流入口131、132、133を有する共通配管部130に3成分のモノマー31、41、51のそれぞれを流すとき、3成分のモノマー31、41、51のうち、Q値が最も高い第3モノマー51を最後のモノマー流体として、かつ、全てのモノマー成分の中で共通配管部130を流れる距離Lcを最も長くして流している。このように構成すれば、共通配管部130内のモノマーの滞留を防止することによって共通配管部130の閉塞を防止でき、所定のモノマー混合液を得ることができる。
【0046】
また、共通配管部130に第1~第3のモノマー31、41、51のそれぞれを流すとき、Q値が低い値から高い値になる順番(第1モノマー31、第2モノマー41、第3モノマー51の順)に流している。このように構成すれば、Q値が低い、すなわちラジカル重合が生じやすいモノマーから先にモノマー混合槽70に供給していくことによって、共通配管部130内にラジカル重合が生じやすいモノマーをより残存させないことができる。この結果、共通配管部130の閉塞をより防止でき、より高品質のモノマー混合液を得ることができる。
【0047】
また、共通配管部130に第1~第3のモノマー31、41、51のそれぞれを流すとき、Q値が低い値から高い値になる順番(第1モノマー31、第2モノマー41、第3モノマー51の順)に共通配管部130を流れる距離を長くして流している。このように構成すれば、Q値が低い、すなわちラジカル重合が生じやすいモノマーは、その後に供給されるラジアル重合がより生じにくいモノマーによって、共通配管部130内に残存し難くなる。この結果、共通配管部130の閉塞をより防止でき、より高品質のモノマー混合液を得ることができる。
【0048】
(実施形態のモノマー混合設備10の他の動作)
図1Cは、実施形態に係るモノマー混合設備10の他の動作を説明する説明図である。
【0049】
図1Cには、第1~第3のバルブ32、42、52の開閉を示すタイムチャートが示される。他の動作においては、上述した動作と異なり、まず、Q値がQb(Qa<Qb)である第2モノマー41用の第2バルブ42を開く。予め定められた規定量の第2モノマー41がモノマー混合槽70に供給されると、第2バルブ42を閉じ、第2モノマー41の供給を停止する。第2モノマー41が共通配管部130を流れる距離はLbである。
【0050】
次に、Q値が最も低いQaである第1モノマー31用の第1バルブ32を開く。予め定められた規定量の第1モノマー31がモノマー混合槽70に供給されると、第1バルブ32を閉じ、第1モノマー31の供給を停止する。第1モノマー31が共通配管部130を流れる距離は最も短いLa(La<Lb)である。
【0051】
最後に、Q値が最も高いQc(Qa<Qb<Qc)である第3モノマー51用の第3バルブ52を開く。予め定められた規定量の第3モノマー51がモノマー混合槽70に供給されると、第3バルブ52を閉じ、第3モノマー51の供給を停止する。第3モノマー51が共通配管部130を流れる距離は最も長いLc(La<Lb<Lc)である。
【0052】
他の動作においても、共通配管部130に3成分のモノマー31、41、51のそれぞれを流すとき、3成分のモノマー31、41、51のうち、Q値が最も高い第3モノマー51を最後のモノマー流体として、かつ、全てのモノマー成分の中で共通配管部130を流れる距離Lcを最も長くして流している。このように構成すれば、共通配管部130内のモノマーの滞留を防止することによって共通配管部130の閉塞を防止でき、所定のモノマー混合液を得ることができる。
【0053】
(変形例1)
図2Aは、変形例1に係るモノマー混合設備11を有する重合設備を示す概略構成図である。実施形態と共通する部材には同じ符号を付し、その説明を一部省略する。
【0054】
変形例1のモノマー混合設備11は、共通配管部230に溶媒61を流すことができる点において、実施形態のモノマー混合設備10と相違する。なお、説明の便宜上、各部材に付した「第4」の接頭語は、溶媒61用の部材であることを表している。
【0055】
変形例1のモノマー混合設備11は、モノマー貯留槽(第1モノマー貯留槽30、第2モノマー貯留槽40、および第3モノマー貯留槽50)のほかに、溶媒61を貯留する溶媒貯留槽60を有する。溶媒貯留槽60は、第4ポンプ63および第4配管65を備える。
【0056】
モノマー混合設備11は、モノマー混合槽70に連通する一の配管220を有する。一の配管220は、第1流入口231、第2流入口232、第3流入口233、および第4流入口234を有する。第1モノマー貯留槽30は、第1配管35を介して第1流入口231に接続される。第1モノマー31は、第1配管35を通って第1流入口231から一の配管220に流入し、モノマー混合槽70に供給される。第2モノマー貯留槽40は、第2配管45を介して第2流入口232に接続される。第2モノマー41は、第2配管45を通って第2流入口232から一の配管220に流入し、モノマー混合槽70に供給される。第3モノマー貯留槽50は、第3配管55を介して第3流入口233に接続される。第3モノマー51は、第3配管55を通って第3流入口233から一の配管220に流入し、モノマー混合槽70に供給される。溶媒貯留槽60は、第4配管65を介して第4流入口234に接続される。溶媒61は、第4配管65を通って第4流入口234から一の配管220に流入し、モノマー混合槽70に供給される。
【0057】
供給配管100は、一の配管220の途上に第1~第4の流入口231、232、233、234を有する共通配管部230を含んでいる。共通配管部230は、図2Aに太線によって示されるように、一の配管220のうち、モノマー混合槽70に連通する先端120aから、第1~第4の流入口231、232、233、234を少なくとも含む範囲の配管部分と定義される。図示例では、共通配管部230は、先端120aから第4流入口234までの範囲の配管部分である。
【0058】
第4流入口234と先端120aとの間の通路長は、第3流入口233と先端120aとの間の通路長よりも長い。第3流入口233と先端120aとの間の通路長は、第2流入口232と先端120aとの間の通路長よりも長い。第2流入口232と先端120aとの間の通路長は、第1流入口231と先端120aとの間の通路長よりも長い。
【0059】
共通配管部230のうち第1流入口231と先端120aとの間は、第1モノマー31、第2モノマー41、第3モノマー51、および溶媒61のそれぞれが流れる。共通配管部230のうち第2流入口232と第1流入口231との間は、第2モノマー41、第3モノマー51、および溶媒61のそれぞれが流れることができる。共通配管部230のうち第3流入口233と第2流入口232との間は、第3モノマー51および溶媒61が流れることができる。共通配管部230のうち第4流入口234と第3流入口233との間は、溶媒61のみが流れることができる。
【0060】
実施形態と同様に、第1モノマー31、第2モノマー41、および第3モノマー51は、Q値が異なり、第3モノマー51のQ値が最も高く、次に第2モノマー41のQ値が高く、第1モノマー31のQ値が最も低いとする。したがって、Q値が最も高い第3モノマー51を流入させる第3流入口233(一の流入口に相当する)と共通配管部230の先端120aとの間の通路長は、第1と第2のモノマー31、41(他のモノマーに相当する)を流入させる第1と第2の流入口231、232(他の流入口に相当する)と共通配管部230の先端120aとの間の通路長よりも長い。変形例1においては、溶媒61を流入させる第4流入口234と共通配管部230の先端120aとの間の通路長は、Q値が最も高い第3モノマー51を流入させる第3流入口233と共通配管部230の先端120aとの間の通路長よりも長い。
【0061】
変形例1のモノマー混合設備11は、切り替え部としての第1~第3のバルブ32、42、52のほかに、供給配管100を介しての溶媒61の供給および供給停止を切り替える溶媒用切り替え部を有する。溶媒用切り替え部は、例えば、開閉制御される第4バルブ62から構成される。第4バルブ62は、第4配管65に配置される。第4バルブ62を開くと、溶媒貯留槽60の溶媒61は、第4流入口234から共通配管部230を流れてモノマー混合槽70に供給される。第4バルブ62を閉じると、溶媒61は、モノマー混合槽70への供給が停止される。
【0062】
変形例1のモノマー混合設備11は、第1~第4のバルブ32、42、52、62によって、溶媒61を共通配管部230に最後に流すように構成される。第4バルブ62も、例えば空気圧によって作動される制御弁から構成される。コントローラ150は、第1~第4のバルブ32、42、52、62のそれぞれに開閉制御信号を出力する。第1~第4のバルブ32、42、52、62を手動操作して、溶媒61を共通配管部230に最後に流すようにしてもよい。
【0063】
(変形例1のモノマー混合設備11の動作)
図2Bは、変形例1に係るモノマー混合設備11の動作を説明する説明図である。
【0064】
図2Bに示すように、第1~第3のモノマー31、41、51のQ値は、実施形態と同様に、Qa<Qb<Qcであり、第3モノマー51のQ値が最も高い。また、第1~第3のモノマー31、41、51が共通配管部230を流れる距離は、実施形態と同様に、La<Lb<Lcであり、第3モノマー51が共通配管部230を流れる距離が最も長い。共通配管部230の第4流入口234と先端120aとの間の通路長、すなわち溶媒61が共通配管部230を流れる距離はLdであり、第3モノマー51が共通配管部230を流れる距離Lcより長い(Lc<Ld)。したがって、第1~第3のモノマー31、41、51および溶媒61の中では、溶媒61が共通配管部230を流れる距離が最も長い。
【0065】
第1~第3のモノマー31、41、51および溶媒61のそれぞれをモノマー混合槽70に供給配管100を介して供給してモノマー混合液を調製するとき、第1~第3のモノマー31、41、51および溶媒61のそれぞれは、次のようにして供給配管100の共通配管部230に流され、モノマー混合槽70に供給される。
【0066】
図2Bには、第1~第4のバルブ32、42、52、62の開閉を示すタイムチャートが示される。第1~第3のモノマー31、41、51については、実施形態と同様に、Q値が最も低いQaである第1モノマー31が最初に供給され、次に、Q値がQb(Qa<Qb)である第2モノマー41が供給され、次に、Q値が最も高いQc(Qa<Qb<Qc)である第3モノマー51が供給される。共通配管部230を流れる距離は、第1モノマー31、第2モノマー41、第3モノマー51の順に長い(La<Lb<Lc)。
【0067】
最後に、溶媒61用の第4バルブ62を開く。溶媒貯留槽60の溶媒61は、第4流入口234から共通配管部230を流れてモノマー混合槽70に供給される。予め定められた規定量の溶媒61がモノマー混合槽70に供給されると、第4バルブ62を閉じ、溶媒61の供給を停止する。溶媒61が共通配管部230を流れる距離は最も長いLd(La<Lb<Lc<Ld)である。
【0068】
上記のように、共通配管部230に第1~第3のモノマー31、41、51および溶媒61のそれぞれを流すとき、Q値が最も高い第3モノマー51および溶媒61のうちの溶媒61(「一方の流体」とする)を最後に、かつ、溶媒61(上記の「一方の流体」)が共通配管部230を流れる距離Ldを最も長くして流している。3成分のモノマー31、41、51に関しては、実施形態と同様に、Q値が最も高い第3モノマー51を最後のモノマー流体として、かつ、全てのモノマー成分の中で共通配管部230を流れる距離Lcを最も長くして流している。
【0069】
また、実施形態と同様に、共通配管部230に第1~第3のモノマー31、41、51のそれぞれを流すとき、Q値が低い値から高い値になる順番(第1モノマー31、第2モノマー41、第3モノマー51の順)に流している。
【0070】
さらにまた、実施形態と同様に、共通配管部230に第1~第3のモノマー31、41、51のそれぞれを流すとき、Q値が低い値から高い値になる順番(第1モノマー31、第2モノマー41、第3モノマー51の順)に共通配管部230を流れる距離を長くして流している(La<Lb<Lc)。
【0071】
Q値に基づいて第1~第3のモノマー31、41、51のうち最後に流すモノマー成分を決定し、Q値が最も高い第3モノマー51を流した後に、溶媒61を流している。さらに溶媒61が共通配管部230を流れる距離Ldを最も長くしている。実施形態と同様に、ラジカル重合が生じやすいモノマー(Q値が低い)を用いる場合であっても、最後に溶媒61を供給することによって、配管内あるいは配管壁に第1~第3のモノマー31、41、51が残存しない。滞留したモノマーが重合することを低減できる結果、共通配管部230の閉塞を防止でき、モノマー混合槽70への第1~第3のモノマー31、41、51の円滑な供給を確保できる。モノマーが滞留しないため、モノマー混合液の成分濃度等に差異が生じることがなく、所定のモノマー混合液を得ることができる。その結果、厳密なコントロールが必要となるような重合反応において、所定の重合物を得ることができる。さらには、配管内の壁面等に析出した重合物が、別ロットや別品種の製造時に混入する事態が発生せず、所定の重合物を得ることができる。
【0072】
(変形例2)
図3Aは、変形例2に係るモノマー混合設備12を有する重合設備を示す概略構成図である。実施形態および変形例1と共通する部材には同じ符号を付し、その説明を一部省略する。
【0073】
変形例2のモノマー混合設備12は、Q値が最も高い第3モノマー51と溶媒61とを流す順番、および第3モノマー51が共通配管部330を流れる距離Lcを最も長くした点において、変形例1のモノマー混合設備11と相違する。
【0074】
変形例2のモノマー混合設備12は、モノマー混合槽70に連通する一の配管320を有する。一の配管320は、第1流入口331、第2流入口332、第3流入口333、および第4流入口334を有する。第1モノマー貯留槽30は、第1配管35を介して第1流入口331に接続される。第2モノマー貯留槽40は、第2配管45を介して第2流入口332に接続される。第3モノマー貯留槽50は、第3配管55を介して第3流入口333に接続される。溶媒貯留槽60は、第4配管65を介して第4流入口334に接続される。
【0075】
供給配管100は、一の配管320の途上に第1~第4の流入口331、332、333、334を有する共通配管部330を含んでいる。共通配管部330は、図3Aに太線によって示されるように、一の配管320のうち、モノマー混合槽70に連通する先端120aから、第1~第4の流入口331、332、333、334を少なくとも含む範囲の配管部分と定義される。図示例では、共通配管部330は、先端120aから第3流入口333までの範囲の配管部分である。
【0076】
第3流入口333と先端120aとの間の通路長は、第4流入口334と先端120aとの間の通路長よりも長い。第4流入口334と先端120aとの間の通路長は、第2流入口332と先端120aとの間の通路長よりも長い。第2流入口332と先端120aとの間の通路長は、第1流入口331と先端120aとの間の通路長よりも長い。
【0077】
共通配管部330のうち第1流入口331と先端120aとの間は、第1モノマー31、第2モノマー41、第3モノマー51、および溶媒61のそれぞれが流れる。共通配管部330のうち第2流入口332と第1流入口331との間は、第2モノマー41、第3モノマー51、および溶媒61のそれぞれが流れることができる。共通配管部330のうち第4流入口334と第2流入口332との間は、溶媒61および第3モノマー51が流れることができる。共通配管部330のうち第3流入口333と第4流入口334との間は、第3モノマー51のみが流れることができる。
【0078】
変形例1と同様に、第1モノマー31、第2モノマー41、および第3モノマー51は、Q値が異なり、第3モノマー51のQ値が最も高く、次に第2モノマー41のQ値が高く、第1モノマー31のQ値が最も低いとする。したがって、Q値が最も高い第3モノマー51を流入させる第3流入口333(一の流入口に相当する)と共通配管部330の先端120aとの間の通路長は、第1と第2のモノマー31、41(他のモノマーに相当する)を流入させる第1と第2の流入口331、332(他の流入口に相当する)と共通配管部330の先端120aとの間の通路長よりも長い。変形例2においては、Q値が最も高い第3モノマー51を流入させる第3流入口333と共通配管部330の先端120aとの間の通路長は、溶媒61を流入させる第4流入口334と共通配管部330の先端120aとの間の通路長よりも長い。
【0079】
(変形例2のモノマー混合設備12の動作)
図3Bは、変形例2に係るモノマー混合設備12の動作を説明する説明図である。
【0080】
図3Bに示すように、第1~第3のモノマー31、41、51のQ値は、変形例1と同様に、Qa<Qb<Qcであり、第3モノマー51のQ値が最も高い。また、第1~第3のモノマー31、41、51が共通配管部330を流れる距離は、変形例1と同様に、La<Lb<Lcであり、第3モノマー51が共通配管部330を流れる距離が最も長い。共通配管部330の第3流入口333と先端120aとの間の通路長、すなわち第3モノマー51が共通配管部330を流れる距離はLcであり、溶媒61が共通配管部330を流れる距離Ldより長い(Ld<Lc)。したがって、第1~第3のモノマー31、41、51および溶媒61の中では、第3モノマー51が共通配管部330を流れる距離が最も長い。
【0081】
第1~第3のモノマー31、41、51および溶媒61のそれぞれをモノマー混合槽70に供給配管100を介して供給してモノマー混合液を調製するとき、第1~第3のモノマー31、41、51および溶媒61のそれぞれは、次のようにして供給配管100の共通配管部330に流され、モノマー混合槽70に供給される。
【0082】
図3Bには、第1~第4のバルブ32、42、52、62の開閉を示すタイムチャートが示される。第1と第2のモノマー31、41については、変形例1と同様に、Q値が最も低いQaである第1モノマー31が最初に供給され、次に、Q値がQb(Qa<Qb)である第2モノマー41が供給される。
【0083】
次に、溶媒61用の第4バルブ62を開く。溶媒貯留槽60の溶媒61は、第4流入口334から共通配管部330を流れてモノマー混合槽70に供給される。予め定められた規定量の溶媒61がモノマー混合槽70に供給されると、第4バルブ62を閉じ、溶媒61の供給を停止する。溶媒61が共通配管部330を流れる距離Ldは、第1と第2のモノマー31、41が共通配管部330を流れる距離よりも長い(La<Lb<Ld)。
【0084】
最後に、Q値が最も高いQc(Qa<Qb<Qc)である第3モノマー51用の第3バルブ52を開く。第3モノマー貯留槽50の第3モノマー51は、第3流入口333から共通配管部330を流れてモノマー混合槽70に供給される。予め定められた規定量の第3モノマー51がモノマー混合槽70に供給されると、第3バルブ52を閉じ、第3モノマー51の供給を停止する。第3モノマー51が共通配管部330を流れる距離は最も長いLc(La<Lb<Ld<Lc)である。
【0085】
上記のように、共通配管部330に第1~第3のモノマー31、41、51および溶媒61のそれぞれを流すとき、Q値が最も高い第3モノマー51および溶媒61のうちの第3モノマー51(「一方の流体」とする)を最後に、かつ、第3モノマー51(上記の「一方の流体」)が共通配管部330を流れる距離Lcを最も長くして流している。3成分のモノマー31、41、51に関しては、実施形態および変形例1と同様に、Q値が最も高い第3モノマー51を最後のモノマー流体として、かつ、全てのモノマー成分の中で共通配管部330を流れる距離Lcを最も長くして流している。
【0086】
また、実施形態および変形例1と同様に、共通配管部330に第1~第3のモノマー31、41、51のそれぞれを流すとき、Q値が低い値から高い値になる順番(第1モノマー31、第2モノマー41、第3モノマー51の順)に流している。
【0087】
さらにまた、実施形態および変形例1と同様に、共通配管部330に第1~第3のモノマー31、41、51のそれぞれを流すとき、Q値が低い値から高い値になる順番(第1モノマー31、第2モノマー41、第3モノマー51の順)に共通配管部330を流れる距離を長くして流している(La<Lb<Lc)。
【0088】
Q値に基づいて第1~第3のモノマー31、41、51のうち最後に流すモノマー成分を決定し、溶媒61を流した後に、Q値が最も高い第3モノマー51を流している。さらに第3モノマー51が共通配管部330を流れる距離Lcを最も長くしている。実施形態および変形例1と同様に、ラジカル重合が生じやすいモノマー(Q値が低い)を用いる場合であっても、最後にラジアル重合が比較的生じにくい第3モノマー51を供給することによって、配管内あるいは配管壁にラジカル重合がより生じやすい第1、第2のモノマー31、41が残存しない。滞留したモノマーが重合することを低減できる結果、共通配管部330の閉塞を防止でき、モノマー混合槽70への第1~第3のモノマー31、41、51の円滑な供給を確保できる。モノマーが滞留しないため、モノマー混合液の成分濃度等に差異が生じることがなく、所定のモノマー混合液を得ることができる。その結果、厳密なコントロールが必要となるような重合反応において、所定の重合物を得ることができる。さらには、配管内の壁面等に析出した重合物が、別ロットや別品種の製造時に混入する事態が発生せず、所定の重合物を得ることができる。
【0089】
変形例2では、溶媒61を流した後に第3モノマー51を流しているが、第3モノマー51のQ値が十分に高く、置換基の共鳴安定性が十分に高いときには、共通配管部330の閉塞を支障なく防止でき、所定のモノマー混合液を支障なく得ることができる。
【0090】
(その他の変形例)
3成分のモノマー31、41、51を混合するモノマー混合液の調製方法およびモノマー混合設備10、11、12について説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではない。本発明は、2成分のモノマーを混合したり、4成分以上のモノマーを混合したりするモノマー混合液の調製方法およびモノマー混合設備に適用できる。Q値に基づいてモノマーの供給順番や共通配管部を流れる距離を決める場合には、4成分以上のモノマーを混合するモノマー混合液の調製方法およびモノマー混合設備にも適用できる。
【0091】
(製品、モノマー、および溶媒の例示)
上述したモノマー混合液の調製方法、およびこれを具現化したモノマー混合設備は、特定の製品を製造するためのモノマー混合液を調製する場合に限定されるものではなく、種々の製品を製造するためのモノマー混合液を得るために適用できる。以下、製品、モノマー、および溶媒について一例を挙げて説明する。
【0092】
[製品例]
このようなモノマー混合液を用いて製造される製品の例としては、例えば、株式会社日本触媒製のエポクロス(登録商標)シリーズ(例えば、K-2010E、K-2020E、K-2030E、WS-0300、WS-500、WS-700など)を挙げることができる。
【0093】
[モノマーの種類]
モノマー(単量体)の種類としては、ラジカル重合性モノマーが挙げられる。具体的には、例えば、α-オレフィン化合物、共役ジエン化合物、ハロゲン含有α、β-不飽和脂肪族炭化水素化合物、ビニルエステルモノマー、ビニルエーテルモノマー、脂肪族(メタ)アクリレート、脂環族モノマー(脂環構造を有するモノマー)、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、芳香族系モノマー、カルボキシ基含有モノマー、ケイ素原子含有モノマー、フッ素原子含有モノマー、窒素原子含有モノマー、エポキシ基含有モノマーなどが挙げられる。
【0094】
これらモノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
(α-オレフィン化合物)
α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどが挙げられる。
【0096】
(共役ジエン化合物)
共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、2-メチル-3-エチルブタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2-メチル-1,3-ヘキサジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、1,3-ヘプタジエン、3-メチル-1,3-ヘプタジエン、1,3-オクタジエン、シクロペンタジエン、クロロプレンなどが挙げられる。
【0097】
(ハロゲン含有α、β-不飽和脂肪族炭化水素化合物)
ハロゲン含有α、β-不飽和脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0098】
(ビニルエステルモノマー)
ビニルエステルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、ケイ皮酸ビニルなどが挙げられる。
【0099】
(ビニルエーテルモノマー)
ビニルエーテルモノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0100】
(脂肪族(メタ)アクリレート)
脂肪族(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのC1-20アルキル(メタ)アクリレート]、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレートのC1-12アルコキシC1-12アルキルメタクリレートなど)など]などが挙げられる。
【0101】
(脂環構造を有するモノマー)
脂環構造を有するモノマーとしては、脂環構造(例えば、炭素数が4~20のシクロアルキル基、好ましくは炭素数が4~10のシクロアルキル基)を有するモノマーが挙げられる。具体的な脂環構造を有するモノマーとしては、例えば、脂環式(メタ)アクリレート[例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのC4-20シクロアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC4-10シクロアルキル(メタ)アクリレート)、シクロアルキルアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、4-メチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのC4-10シクロアルキルC1-4アルキル(メタ)アクリレート)、架橋環式(メタ)アクリレート(例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートなど)など]が挙げられる。
【0102】
なお、脂環構造を有するモノマーは、置換基(例えば、メチル基、tert-ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子など)を有していてもよい。
【0103】
(ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート)
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2-10アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC2-6アルキル(メタ)アクリレート、さらに好ましくはC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど]、3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの(メタ)アクリレート[例えば、グリセリンモノ(メタ)アクリレートなどのトリ乃至ヘキサヒドロキシC3-10ポリオールの(メタ)アクリレート]などが挙げられる。
【0104】
(芳香族系モノマー)
芳香族系モノマーとしては、例えば、スチレン系モノマー[例えば、スチレン、α-アルキルスチレン(例えば、α-メチルスチレンなどのα-C1-4アルキルスチレン)、アルキルスチレン(例えば、ビニルトルエンなどのC1-4アルキルスチレン)、ハロスチレン(例えば、クロロスチレンなど)など、アルコキシスチレン(例えば、p-メトキシスチレンなど)]、芳香族(メタ)アクリレート[例えば、アリール(メタ)アクリレート(例えば、フェニル(メタ)アクリレートなどのC6-10アリール(メタ)アクリレート)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレートなどのC6-10アリールC1-4アルキル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキルメタクリレート(例えば、フェノキシエチルメタクリレートなどのC6-10アリールオキシC1-4アルキルメタクリレート)など]などが挙げられる。
【0105】
(カルボキシ基含有モノマー)
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、不飽和モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸)、不飽和ジカルボン酸およびその無水物(例えば、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸)などが挙げられる。
【0106】
(ケイ素原子含有モノマー)
ケイ素原子含有モノマーとしては、例えば、ビニル基含有シラン[例えば、ビニル基を有するハロシラン(例えば、ビニルトリクロロシランなどのビニルモノ乃至トリハロシラン)、ビニル基を有するアルコキシシラン[ビニルアルコキシシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルモノ乃至トリアルコキシシラン、好ましくはビニルモノ乃至トリC1-4アルコキシシラン)、ビニルアルコキシアルコキシシラン(例えば、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シランなどのビニルモノ乃至トリ(C1-4アルコキシC1-4アルコキシ)シランなど)など]、(メタ)アクリロイル基含有シラン[例えば、(メタ)アクリロイル基を有するアルコキシシラン(例えば、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルモノ乃至トリアルコキシシラン、好ましくは(メタ)アクリロイルオキシC2-4アルキルモノ乃至トリC1-4アルコキシシラン)、トリアルキルシロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレートなどのトリC1-4アルキルシロキシC2-4アルキル(メタ)アクリレートなど)など]などが挙げられる。
【0107】
(フッ素原子含有モノマー)
フッ素原子含有モノマーとしては、例えば、フッ素原子含有アクリル系モノマー[例えば、フルオロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのフルオロC1-10アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはフルオロC2-6アルキル(メタ)アクリレートなど)など]などが挙げられる。
【0108】
(窒素原子含有モノマー)
窒素原子含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド系化合物{例えば、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド[例えば、N-アルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N-ジC1-4アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなど)など]など}、窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物{例えば、N-置換アミノアルキル(メタ)アクリレート[例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのN,N-ジC1-4アルキルアミノC2-4アルキル(メタ)アクリレート]など}、不飽和ニトリル化合物(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-シアノ(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。
【0109】
(エポキシ基含有モノマー)
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレート[例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレートなどのグリシジルオキシC2-4アルキル(メタ)アクリレート)など]、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0110】
(官能基を有するモノマー)
また、ラジカル重合性モノマーとして、官能基を有するモノマーを用いることもできる。官能基としては、例えば、カルボニル基(またはカルボニル基含有基、例えば、ケトン基、アルデヒド基、アシル基など)、カルボキシ基、酸無水物基、酸ハライド基、カーボネート基、イソシアネート基、オキサゾリン基、オキサゾリジン基、ヒドラジノ基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基などが挙げられる。
【0111】
官能基を有するモノマーは、これらの官能基を単独でまたは2種以上組み合わせて有していてもよい。
【0112】
具体的な官能基を有するモノマーとしては、例えば、カルボニル基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、オキサゾリン基含有モノマー、ヒドロキシ基含有モノマーなどが挙げられる。
【0113】
カルボニル基含有モノマーとしては、例えば、不飽和アルデヒド[例えば、アルケナール(例えば、アクロレイン、メタクロレインなどのC3-10アルケナール)、(メタ)アクリロキシアルキルアルケナール(例えば、アクリルオキシアルキルプロペナール、メタクリルオキシアルキルプロペナール)、ホルミルスチロールなど]、不飽和ケトン[例えば、アルケノン(例えば、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ビニルブチルケトンなど)、(メタ)アクリロイルオキシアルカノン(例えば、アセトニルアクリレート、アセトニルメタクリレートなど)、N-(メタ)アクリロイルアミノアルカノン(例えば、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミドなど)、アルカンジオール(メタ)アクリレートアセチルアセテート(例えば、2-ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール-1,4-アクリレートアセチルアセテートなどのC2-6アルカンジオール(メタ)アクリレートアセチルアセテート)、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2-(アセトアセトキシ)エチルアクリレート、2-(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート)など]などが挙げられる。
【0114】
カルボキシ基含有モノマーとしては、上記で例示したモノマー、例えば、不飽和モノカルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸)、不飽和ジカルボン酸(例えば、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸)などが挙げられる。
【0115】
オキサゾリン基含有モノマーとしては、例えば、アルケニルオキサゾリン(例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンなどのC2-6アルケニルオキサゾリン、好ましくはビニルまたはイソプロペニルオキサゾリン)、アルケニル-アルキルオキサゾリン(例えば、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンなどのC2-6アルケニル-C1-10アルキルオキサゾリン、好ましくはビニルまたはイソプロペニル-C1-4アルキルオキサゾリンなど)などが挙げられる。
【0116】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、上記で例示したモノマー(例えば、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート)などが挙げられる。
【0117】
上記の官能基を有するモノマーは、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。
【0118】
[溶媒の種類]
溶媒としては、特に制限されず、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒などの有機溶媒が挙げられる。また、水、水を含む溶媒[水とアルコール(メタノール、エタノールなどのC1-4アルコールなど)との混合溶媒など]などの水性溶媒を用いてもよい。
【0119】
これら溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0120】
10、11、12 モノマー混合設備、
30 第1モノマー貯留槽、
31 第1モノマー、
32 切り替え部(第1バルブ)、
33 第1ポンプ、
35 第1配管、
40 第2モノマー貯留槽、
41 第2モノマー、
42 切り替え部(第2バルブ)、
43 第2ポンプ、
45 第2配管、
50 第3モノマー貯留槽、
51 第3モノマー、
52 切り替え部(第3バルブ)、
53 第3ポンプ、
55 第3配管、
60 溶媒貯留槽、
61 溶媒、
62 溶媒用切り替え部(第4バルブ)、
63 第4ポンプ、
65 第4配管、
70 モノマー混合槽、
80 重合開始剤槽、
90 重合槽、
100 供給配管、
120、220、320 一の配管、
120a 共通配管部の先端、
130、230、330 共通配管部、
131、231、331 第1流入口、
132、232、332 第2流入口、
133、233、333 第3流入口、
150 コントローラ、
234、334 第4流入口。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B