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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186164
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20221208BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20221208BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20221208BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/40
H01M10/0585
H01M4/13
H01M4/134
H01M4/64 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094250
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】上田 直毅
(72)【発明者】
【氏名】高田 晴美
(72)【発明者】
【氏名】坂本 和幸
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA04
5H017AS02
5H017CC01
5H029AJ02
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ03
5H029DJ07
5H029EJ05
5H029EJ07
5H029HJ00
5H029HJ04
5H029HJ12
5H050AA02
5H050BA16
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB12
5H050DA04
5H050EA12
5H050EA15
5H050GA03
5H050HA00
5H050HA04
5H050HA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】充放電効率をよりいっそう向上させた、リチウム析出型のリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】正極活物質層15を含む正極と、充電時に負極集電体11’上にリチウム金属が析出する負極と、前記正極および前記負極の間に介在し、固体電解質を含有する固体電解質層17とを有する発電要素、ならびに前記発電要素を積層方向に所定の圧力で加圧する加圧部材を備えるリチウム二次電池において、前記固体電解質層が前記負極集電体と対向する主面の少なくとも一部、ならびに前記固体電解質層の側面の少なくとも一部に、電子絶縁性およびリチウムイオン伝導性を有し、前記リチウム金属と接触することによる還元分解について前記固体電解質よりも安定である保護層18を設け、前記保護層のせん断弾性率を2[GPa]以上とし、かつ、前記保護層のせん断弾性率と前記固体電解質層とのせん断弾性率との差を50[GPa]以下とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層が正極集電体の表面に配置されてなる正極と、
負極集電体を有し、充電時に前記負極集電体上にリチウム金属が析出する負極と、
前記正極および前記負極の間に介在し、固体電解質を含有する固体電解質層と、
を有する発電要素、ならびに前記発電要素を積層方向に所定の圧力で加圧する加圧部材を備え、
前記固体電解質層が前記負極集電体と対向する主面の少なくとも一部、ならびに前記固体電解質層の側面の少なくとも一部に、電子絶縁性およびリチウムイオン伝導性を有し、前記リチウム金属と接触することによる還元分解について前記固体電解質よりも安定である保護層が設けられており、
前記保護層のせん断弾性率が2[GPa]以上であり、かつ、前記保護層のせん断弾性率と前記固体電解質層とのせん断弾性率との差が50[GPa]以下である、リチウム二次電池。
【請求項2】
前記発電要素を平面視した際に、前記正極活物質層の外周端の少なくとも一部が前記固体電解質層の外周端より内側に位置している、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記固体電解質層の外周縁部の少なくとも一部が、前記正極活物質層の側面の少なくとも一部まで延在している、請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記発電要素を平面視した際に、前記負極集電体の外周端が前記固体電解質層の外周端より内側に位置し、かつ、前記正極活物質層の外周端より外側に位置する、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記保護層の平均厚さが、前記固体電解質層の平均厚さよりも小さい、請求項1~4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
前記保護層の平均厚さが、5nm~10μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記保護層の表面粗さ(Ra)が1μm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記保護層が、ハロゲン化リチウム、Li-M-O(Mは、Mg、Au、Al、SnおよびZnからなる群より選ばれる1種または2種以上の金属元素である)で表される複合金属酸化物、ならびにLi-Ba-TiO複合酸化物からなる群から選択される1種または2種以上の材料から構成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記発電要素を平面視した際に、前記正極活物質層の外周端の少なくとも一部が前記正極集電体の外周端より内側に位置し、
前記正極活物質層が配置されていない前記正極集電体の前記固体電解質層側の表面に、電子絶縁性の材料から構成される絶縁層が配置されている、請求項1~8のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記固体電解質層に含まれる前記固体電解質がS元素を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
前記固体電解質層に含まれる前記固体電解質がLiS-P、LiPSX(ここで、XはCl、BrまたはIである)、Li11、Li3.20.96SおよびLiPSからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【請求項12】
全固体リチウム二次電池である、請求項1~11のいずれか1項に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池などの非水電解質二次電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、携帯電話やノートパソコン等に使用される民生用リチウムイオン二次電池と比較して極めて高い出力特性、および高いエネルギーを有することが求められている。したがって、現実的な全ての電池の中で最も高い理論エネルギーを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。
【0004】
ここで、現在一般に普及しているリチウムイオン二次電池は、電解質に可燃性の有機電解液を用いている。このような液系リチウムイオン二次電池では、液漏れ、短絡、過充電などに対する安全対策が他の電池よりも厳しく求められる。
【0005】
そこで近年、電解質に酸化物系や硫化物系の固体電解質を用いた全固体リチウム二次電池に関する研究開発が盛んに行われている。固体電解質は、固体中でイオン伝導が可能なイオン伝導体を主体として構成される材料である。このため、全固体リチウム二次電池においては、従来の液系リチウムイオン二次電池のように可燃性の有機電解液に起因する各種問題が原理的に発生しない。また一般に、高電位・大容量の正極材料、大容量の負極材料を用いると電池の出力密度およびエネルギー密度の大幅な向上が図れる。
【0006】
従来、全固体リチウム二次電池の1種として、充電過程において負極集電体上にリチウム金属を析出させる、いわゆるリチウム析出型のものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。このようなリチウム析出型の全固体リチウム二次電池の充電過程においては、固体電解質層と負極集電体との間にリチウム金属が析出する。特許文献1に記載のリチウム二次電池においては、リチウムを含む正極とリチウムを含む負極との間に介在させる電解質層を、第1電解質からなる電解質層と、前記電解質層と前記負極との間に設けられたヨウ素を含む第2電解質とから構成し、第1電解質のイオン伝導度よりも第2電解質のイオン伝導度のほうが小さくなるように構成されている。特許文献1によれば、このような構成とすることにより、電解質層と負極との界面がたとえ平坦でなくとも、リチウムの不均一な析出が解消され、デンドライトの生成が抑制されるとされている。その結果、リチウムのデンドライトの成長に起因する内部抵抗のバラツキや放電容量の低下が改善され、優れた充放電特性を有するリチウム電池を提供することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-61867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載された技術を用いたとしても、依然として十分な充放電効率が達成できない場合があることが判明した。
【0009】
そこで、本発明は、リチウム析出型のリチウム二次電池において、充放電効率をよりいっそう向上させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、リチウム析出型の発電要素および前記発電要素を積層方向に加圧する加圧部材を備えた二次電池において、固体電解質層が負極集電体と対向する主面の少なくとも一部、および固体電解質層の側面の少なくとも一部に所定の保護層を設けるとともに、当該保護層のせん断弾性率のプロファイルを制御することで上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の一形態は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層が正極集電体の表面に配置されてなる正極と、負極集電体を有し、充電時に前記負極集電体上にリチウム金属が析出する負極と、前記正極および前記負極の間に介在し、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する発電要素、ならびに前記発電要素を積層方向に所定の圧力で加圧する加圧部材を備えるリチウム二次電池に関する。そして、当該リチウム二次電池においては、前記固体電解質層が前記負極集電体と対向する主面の少なくとも一部、ならびに前記固体電解質層の側面の少なくとも一部に、電子絶縁性およびリチウムイオン伝導性を有し、前記リチウム金属と接触することによる還元分解について前記固体電解質よりも安定である保護層が設けられている。また、前記保護層のせん断弾性率が2[GPa]以上であり、かつ、前記保護層のせん断弾性率と前記固体電解質層とのせん断弾性率との差が50[GPa]以下である点にも特徴がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リチウム析出型のリチウム二次電池において、充放電効率をよりいっそう向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態である積層型(内部並列接続タイプ)の全固体リチウム二次電池(積層型二次電池)の全体構造を模式的に表した断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る積層型二次電池の単電池層の拡大断面図である。
図3】本発明に係る積層型二次電池の変形例を示す単電池層の拡大断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る積層型二次電池の斜視図である。
図5図4に示すA方向から見た側面図である。
図6】本発明に係る積層型二次電池の変形例を示す単電池層の拡大断面図である。
図7】本発明に係る積層型二次電池の変形例を示す単電池層の拡大断面図である。
図8】本発明に係る積層型二次電池の変形例を示す単電池層の拡大断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る積層型二次電池の外観を表した斜視図である。
図10】保護層のせん断弾性率と固体電解質層のせん断弾性率との差に対して、100サイクル時の充放電効率の値をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一形態は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層が正極集電体の表面に配置されてなる正極と、負極集電体を有し、充電時に前記負極集電体上にリチウム金属が析出する負極と、前記正極および前記負極の間に介在し、固体電解質を含有する固体電解質層とを有する発電要素、ならびに前記発電要素を積層方向に所定の圧力で加圧する加圧部材を備え、前記固体電解質層が前記負極集電体と対向する主面の少なくとも一部、ならびに前記固体電解質層の側面の少なくとも一部に、電子絶縁性およびリチウムイオン伝導性を有し、前記リチウム金属と接触することによる還元分解について前記固体電解質よりも安定である保護層が設けられており、前記保護層のせん断弾性率が2[GPa]以上であり、かつ、前記保護層のせん断弾性率と前記固体電解質層とのせん断弾性率との差が50[GPa]以下である、リチウム二次電池である。本形態に係るリチウム二次電池によれば、リチウム析出型のリチウム二次電池において、充放電効率をよりいっそう向上させることができる。
【0015】
以下、図面を参照しながら、本形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態である積層型(内部並列接続タイプ)の全固体リチウム二次電池(以下、単に「積層型二次電池」とも称する)の全体構造を模式的に表した断面図である。図1に示す積層型二次電池10aは、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装体であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。なお、図1は充電時の積層型二次電池の断面を示しており、よって、負極集電体11’と固体電解質層17との間にはリチウム金属からなる負極活物質層13が存在している。また、積層型二次電池10aには、加圧部材によって発電要素21の積層方向に拘束圧力が付与されている(図示せず)。そのため、発電要素21の体積は、一定に保たれている。
【0017】
図1に示すように、本形態の積層型二次電池10aの発電要素21は、負極集電体11’の両面にリチウム金属を含む負極活物質層13が配置された負極と、固体電解質層17と、正極集電体11”の両面にリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質層15が配置された正極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの負極活物質層13とこれに隣接する正極活物質層15とが、固体電解質層17を介して対向するようにして、負極、固体電解質層および正極がこの順に積層されている。これにより、隣接する負極、固体電解質層、および正極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、図1に示す積層型二次電池10aは、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。
【0018】
負極集電体11’および正極集電体11”には、各電極(負極および正極)と導通される負極集電板25および正極集電板27がそれぞれ取り付けられ、ラミネートフィルム29の端部に挟まれるようにしてラミネートフィルム29の外部に導出される構造を有している。負極集電板25および正極集電板27は、それぞれ必要に応じて負極端子リードおよび正極端子リード(図示せず)を介して、各電極の負極集電体11’および正極集電体11”に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
【0019】
なお、上記の説明では、積層型(内部並列接続タイプ)の全固体リチウム二次電池を例に挙げて本発明の一形態に係るリチウム二次電池の一実施形態を説明した。しかしながら、本発明が適用可能なリチウム二次電池の種類は特に制限されず、双極型(バイポーラ型)のリチウム二次電池にも適用可能である。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係る積層型二次電池の単電池層19の拡大断面図である。図2に示すように、本形態に係る積層型二次電池10aを構成する単電池層19は、正極集電体11”およびその表面に配置された正極活物質層15から構成される正極を有している。また、正極活物質層15の正極集電体11”とは反対側の面には、固体電解質を含む固体電解質層17が配置されている。ここで、図2に示す実施形態において、固体電解質層17の外周縁部は、その全周にわたって正極活物質層15の側面まで延在している。これにより結果的に、正極活物質層15は固体電解質層17よりも一回り小さく構成されている。すなわち、発電要素21を平面視した際には、正極活物質層15の外周端の全周が、固体電解質層17の外周端より内側に位置するように構成されている。このような構成とすることで、加圧部材による拘束圧力によって負極活物質層13を構成するリチウム金属が固体電解質層17の外周端から正極活物質層15側へと押し出されたとしても、正極活物質層15の側面にリチウム金属が接触しにくくなる。その結果、短絡を防止する効果がよりいっそう高いものとなる。なお、「正極活物質層の側面」とは、正極活物質層が正極集電体と接していない面のうち、負極集電体と対向しない面を意味する。ここで、図3に示すように、固体電解質層17の外周縁部は正極活物質層15の側面まで延在していなくともよい。ただし、この場合であっても、図3に示すように、発電要素21を平面視した際には、正極活物質層15の外周端の少なくとも一部が、固体電解質層17の外周端より内側に位置するように構成されていることが好ましい。これは、加圧部材による拘束圧力によって負極活物質層13を構成するリチウム金属が固体電解質層17の外周端から正極活物質層15側へと押し出されたとしても、正極活物質層15の側面にリチウム金属が接触しにくくなり、短絡がより効果的に防止されうるためである。
【0021】
また、図2に示す実施形態において、固体電解質層17が負極集電体11’と対向する主面の全面、および固体電解質層17の側面の全面には、保護層18が設けられている。なお、「固体電解質層の側面」とは、リチウム金属からなる負極活物質層13が存在しない放電時において、固体電解質層が正極活物質層および負極集電体のいずれとも対向しない面を意味する。この保護層18は、電子絶縁性およびリチウムイオン伝導性を有する層である。また、保護層18は、リチウム金属と接触することによる還元分解について、固体電解質層17を構成する固体電解質よりも安定である点に特徴がある。なお、図2に示す実施形態において、保護層18は、臭化リチウム(LiBr)から構成されている。このような保護層が固体電解質層の側面にも配置されていることで、充電時に負極集電体の表面に析出したリチウム金属が、加圧部材の拘束圧力によって固体電解質層の外周端から押し出されたときにも、固体電解質層と負極活物質層との接触が防止されて固体電解質層の還元分解による劣化が抑制される。また、保護層および固体電解質層を介して正極活物質層と対向するリチウム金属の実効面積がより大きくなることから、充放電効率のより一層の向上も図られるという利点がある。
【0022】
さらに、図2に示す実施形態において、負極集電体11’は、固体電解質層17よりも一回り小さく構成されている。また、負極集電体11’は、正極活物質層15よりも一回り大きく構成されている。すなわち、発電要素21を平面視した際には、負極集電体11’の外周端の全周が固体電解質層17の外周端より内側に位置し、かつ、正極活物質層15の外周端より外側に位置するように構成されている。このような構成とすることで、負極の端部におけるリチウム金属からなるデンドライトの発生を抑制しつつ、リチウム金属からなる負極活物質層13が固体電解質層17の外周端を超えて正極活物質層15側へ回り込むことによる短絡の発生を防止することができる。ただし、場合により、負極集電体11’は、固体電解質層17と同サイズまたはこれよりも一回り大きく構成されていてもよいし、正極活物質層15と同サイズまたはこれよりも一回り小さく構成されていてもよい。
【0023】
図4は、本発明の一実施形態に係る積層型二次電池の斜視図である。図5は、図4に示すA方向から見た側面図である。
【0024】
図4および図5に示すように、本実施形態に係る積層型二次電池100は、図1に示すラミネートフィルム29に封止された発電要素21と、ラミネートフィルム29に封止された発電要素21を挟持する2枚の金属板200と、締結部材としてのボルト300およびナット400と、を有している。この締結部材(ボルト300およびナット400)は金属板200がラミネートフィルム29に封止された発電要素21を挟持した状態で固定する機能を有している。これにより、金属板200および締結部材(ボルト300およびナット400)は発電要素21をその積層方向に加圧(拘束)する加圧部材として機能する。なお、加圧部材は発電要素21をその積層方向に加圧することができる部材であれば特に制限されない。加圧部材として、典型的には、金属板200のように剛性を有する材料から形成された板と上述した締結部材との組み合わせが用いられる。また、締結部材についても、ボルト300およびナット400のみならず、発電要素21をその積層方向に拘束するように金属板200の端部を固定するテンションプレートなどが用いられてもよい。
【0025】
なお、発電要素21に印加される荷重(発電要素の積層方向における拘束圧力)の下限は、例えば0.1MPa以上であり、好ましくは1MPa以上であり、より好ましくは3MPa以上であり、さらに好ましくは5MPa以上である。発電要素の積層方向における拘束圧力の上限は、例えば100MPa以下であり、好ましくは70MPa以下であり、より好ましくは40MPa以下であり、さらに好ましくは10MPa以下である。
【0026】
以下、上述した積層型二次電池10aの主な構成要素について説明する。
【0027】
[正極集電体]
正極集電体は、電池反応(充放電反応)の進行に伴って正極から外部負荷に向かって放出され、または電源から正極に向かって流入する電子の流路として機能する導電性の部材である。正極集電体を構成する材料に特に制限はない。正極集電体の構成材料としては、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
【0028】
具体的には、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材などが用いられてもよい。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。また、後者の導電性を有する樹脂としては、非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。
【0029】
なお、集電体は、単独の材料からなる単層構造であってもよいし、あるいは、これらの材料からなる層を適宜組み合わせた積層構造であっても構わない。集電体の軽量化の観点からは、少なくとも導電性を有する樹脂からなる導電性樹脂層を含むことが好ましい。また、単電池層間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、集電体の一部に金属層を設けてもよい。
【0030】
正極集電体の厚さについて特に制限はないが、一例としては10~100μmである。
【0031】
[正極活物質層]
本形態に係るリチウム二次電池を構成する正極は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含有する正極活物質層を有する。正極活物質層15は、図1に示すように正極集電体11”の表面に配置されたものである。
【0032】
正極活物質としては、二次電池の充電過程においてリチウムイオンを放出し、放電過程においてリチウムイオンを吸蔵しうる物質であれば特に制限されない。このような正極活物質の一例として、M1元素およびO元素を含有し、前記M1元素はLi、Mn、Ni、Co、Cr、FeおよびPからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有するものが挙げられる。このような正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、Li(Ni-Mn-Co)O等の層状岩塩型活物質、LiMn、LiNi0.5Mn1.5等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO等のオリビン型活物質、LiFeSiO、LiMnSiO等のSi含有活物質等が挙げられる。また上記以外の酸化物活物質としては、例えば、LiTi12、LiVOが挙げられる。
【0033】
場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0034】
好ましい実施形態において、本形態に係るリチウム二次電池を構成する正極活物質層15は、出力特性の観点から、正極活物質としてリチウムとコバルトとを含有する層状岩塩型活物質(例えば、Li(Ni-Mn-Co)O)を含む。
【0035】
正極活物質の形状は、例えば、粒子状(球状、繊維状)、薄膜状等が挙げられる。正極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径(D50)は、例えば、1nm~100μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10nm~50μmの範囲内であり、さらに好ましくは100nm~20μmの範囲内であり、特に好ましくは1~20μmの範囲内である。なお、本明細書において、正極活物質の平均粒径(D50)の値は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
【0036】
正極活物質層における正極活物質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、30~99質量%の範囲内であることが好ましく、40~90質量%の範囲内であることがより好ましく、45~80質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0037】
本形態に係るリチウム二次電池において、正極活物質層15は、固体電解質をさらに含むことが好ましい。固体電解質としては、硫化物固体電解質、樹脂固体電解質および酸化物固体電解質が挙げられる。なお、固体電解質としては、使用する電極活物質の充放電に伴う体積膨張の程度に応じて、所望の体積弾性率を有する材料を適宜選択することができる。
【0038】
本形態に係る二次電池の好ましい一実施形態において、固体電解質は、充放電に伴う電極活物質の体積変化に対してより追従できるとの観点から、好ましくは樹脂固体電解質を含む。このような樹脂固体電解質としては、フッ素樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレートおよびこれらの誘導体ならびにこれらの共重合体などが挙げられる。
【0039】
フッ素樹脂の例としては、フッ化ビニリデン(VdF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)およびこれらの誘導体などを構成単位として含むフッ素樹脂が挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのホモポリマー、VdFとHFPとの共重合体のような2元共重合体などが挙げられる。
【0040】
本形態に係る二次電池の他の好ましい実施形態において、固体電解質は、優れたリチウムイオン伝導性を示すとともに、充放電に伴う電極活物質の体積変化に対してより追従できるとの観点から、好ましくはS元素を含む硫化物固体電解質であり、より好ましくはLi元素、M元素およびS元素を含み、前記M元素はP、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Nb、Al、Sb、Br、ClおよびIからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有する硫化物固体電解質であり、さらに好ましくはS元素、Li元素およびP元素を含む硫化物固体電解質である。
【0041】
硫化物固体電解質は、LiPS骨格を有していてもよく、Li骨格を有していてもよく、Li骨格を有していてもよい。LiPS骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-LiPS、LiI-LiBr-LiPS、LiPSが挙げられる。また、Li骨格を有する硫化物固体電解質としては、例えば、LPSと称されるLi-P-S系固体電解質が挙げられる。また、硫化物固体電解質として、例えば、Li(4-x)Ge(1-x)(xは、0<x<1を満たす)で表されるLGPS等を用いてもよい。より詳細には、例えば、LPS(LiS-P)、Li11、Li3.20.96S、Li3.25Ge0.250.75、Li10GeP12、またはLiPSX(ここで、XはCl、BrもしくはIである)等が挙げられる。なお、「LiS-P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。中でも、硫化物固体電解質は、高イオン電導度であり、かつ低体積弾性率であるため充放電に伴う電極活物質の体積変化により追従できるとの観点から、好ましくはLPS(LiS-P)、LiPSX(ここで、XはCl、BrもしくはIである)、Li11、Li3.20.96SおよびLiPSからなる群から選択される。
【0042】
正極活物質層における固体電解質の含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、1~70質量%の範囲内であることが好ましく、10~60質量%の範囲内であることがより好ましく、20~55質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0043】
正極活物質層は、正極活物質および固体電解質に加えて、導電助剤およびバインダの少なくとも1つをさらに含有していてもよい。
【0044】
正極活物質層の厚さは、目的とするリチウム二次電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは40~100μmである。
【0045】
[固体電解質層]
固体電解質層は、放電時には正極活物質層と負極集電体との間に介在する層であり、固体電解質を(通常は主成分として)含有する。固体電解質層に含有される固体電解質の具体的な形態については上述したものと同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0046】
固体電解質層における固体電解質の含有量は、固体電解質層の合計質量に対して、例えば、10~100質量%の範囲内であることが好ましく、50~100質量%の範囲内であることがより好ましく、90~100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0047】
固体電解質層は、上述した固体電解質に加えて、バインダをさらに含有していてもよい。
【0048】
固体電解質層の厚さは、目的とするリチウム二次電池の構成によっても異なるが、例えば、0.1~1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~40μmである。
【0049】
なお、図2を参照しつつ上述したように、負極活物質層と正極活物質層とが接触することによる短絡を防止するという観点から、固体電解質層の外周縁部の少なくとも一部(好ましくは全周)は、正極活物質層の側面まで延在していることが好ましい。また、より好ましい実施形態では、固体電解質層の外周縁部は、正極集電体まで延在することにより、正極活物質層の側面の全体を覆うように配置されると、特に短絡の防止効果が高いものとなる。また、この際、正極活物質層の側面を覆う固体電解質層の外周端は、正極活物質層の側面と略平行になるように配置されてもよいし、これに対して一定の角度をもって傾斜するようにテーパー形状に配置されてもよい(例えば、図6を参照)。
【0050】
[負極集電体]
負極集電体は、電池反応(充放電反応)の進行に伴って負極から電源に向かって放出され、または外部負荷から負極に向かって流入する電子の流路として機能する導電性の部材である。負極集電体を構成する材料に特に制限はない。負極集電体の構成材料としては、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。負極集電体の厚さについて特に制限はないが、一例としては10~100μmである。
【0051】
[負極活物質層]
本形態に係るリチウム二次電池は、充電過程において負極集電体上にリチウム金属を析出させる、いわゆるリチウム析出型のものである。この充電過程において負極集電体上に析出するリチウム金属からなる層が、本形態に係るリチウム二次電池の負極活物質層である。したがって、充電過程の進行に伴って負極活物質層の厚さは大きくなり、放電過程の進行に伴って負極活物質層の厚さは小さくなる。完全放電時には負極活物質層は存在していなくともよいが、場合によってはある程度のリチウム金属からなる負極活物質層を完全放電時において配置しておいてもよい。また、完全充電時における負極活物質層(リチウム金属層)の厚さは特に制限されないが、通常は0.1~1000μmである。
【0052】
[保護層]
本形態に係るリチウム二次電池においては、固体電解質層が負極集電体と対向する主面の少なくとも一部(好ましくは当該主面の全体)、ならびに固体電解質層の側面の少なくとも一部(好ましくは当該側面の全体)に、保護層が設けられている。この保護層は、電子絶縁性およびリチウムイオン伝導性を有する層である。また、保護層は、リチウム金属と接触することによる還元分解について、固体電解質よりも安定であることが必要である。ここで、「リチウム金属と接触することによる還元分解について、固体電解質よりも安定である」とは、固体電解質層を構成する固体電解質がリチウム金属と接触することによって還元分解を受ける傾向と、保護層の構成材料がリチウム金属と接触することによって還元分解を受ける傾向とを比較したときに、後者の傾向の方が小さいことを意味する。なお、保護層の構成材料がこの条件を満たしているか否かは、作用極として固体電解質層および保護層のそれぞれを用い、対極としてリチウム金属を用いたサイクリックボルタンメトリー法により、0V[vs.Li/Li+]付近において電圧を掃引したときに、保護層を流れる電流が固体電解質層を流れる電流よりも小さいか否かによって判定することができる。
【0053】
このような保護層が固体電解質層の側面にも配置されていることで、充電時に負極集電体の表面に析出したリチウム金属が、加圧部材の拘束圧力によって固体電解質層の外周端から押し出されたときにも、固体電解質層と負極活物質層との接触が防止されて固体電解質層の還元分解による劣化が抑制される。また、保護層および固体電解質層を介して正極活物質層と対向するリチウム金属の実効面積がより大きくなることから、充放電効率のより一層の向上も図られるという利点がある。ここで、本形態に係るリチウム二次電池の保護層が配置されているか否かについては、例えば、リチウム二次電池の断面についてのSEM-EDX観察により固体電解質層の主面および側面に保護層に相当する層が存在するか否かを確認した後、元素分析等によってその組成を解析することにより判定することができる。また、保護層が薄いなどの理由により上記の手法での判定が困難である場合には、XPS法によりエッチングを行いながら保護層に相当する層を分析することによっても判定することが可能である。
【0054】
さらに、本形態に係るリチウム二次電池においては、保護層のせん断弾性率も制御されている。具体的に、保護層のせん断弾性率は2[GPa]以上であり、かつ、当該保護層のせん断弾性率と固体電解質層とのせん断弾性率との差は50[GPa]以下であることが必要である。ここで、「せん断弾性率」とは、せん断弾性係数、剛性率または横弾性係数などとも称され、せん断ひずみに対するせん断応力の比の値として定義される物質固有の物性値であり、せん断力による変形のしにくさを表す。ここで、保護層のせん断弾性率の値が2[GPa]未満であると、充電時に負極集電体の表面にリチウム金属のデンドライトが発生した場合に、当該デンドライトが保護層を貫通してしまい内部短絡が発生する虞がある。また、保護層のせん断弾性率と固体電解質層とのせん断弾性率との差が50[GPa]を超えると、充放電の繰り返しに伴う負極におけるリチウム金属の析出/溶解の際の応力に保護層が十分に追従することができず、保護層に割れが生じる場合がある。その結果、析出したリチウム金属が固体電解質層と接触してしまい、固体電解質の還元分解等によってサイクル耐久性が低下することとなる。なお、このようなサイクル耐久性の低下は、特にリチウム金属が活性部位から優先的に不均一に析出しやすい急速充電を実施した場合などに顕著であることも判明している。これに対し、保護層のせん断弾性率が上記のような規定を満たすものであれば、リチウム金属のデンドライトの貫通を防止しつつ、充放電サイクルの繰り返しに起因する応力にも十分に追従することができる結果、サイクル耐久性の向上に寄与することができるのである。なお、保護層のせん断弾性率と固体電解質層とのせん断弾性率との差の値は、上述したように50[GPa]以下であるが、好ましくは43[GPa]以下であり、より好ましくは20[GPa]以下であり、特に好ましくは13[GPa]以下であり、最も好ましくは5[GPa]以下である。また、通常は保護層のせん断弾性率の値の方が固体電解質層のせん断弾性率の値よりも大きいが、このような場合に制限されるわけではない。保護層のせん断弾性率の値について特に制限はないが、好ましくは51[GPa]以下であり、より好ましくは30[GPa]以下であり、さらに好ましくは21[GPa]以下であり、最も好ましくは10[GPa]以下である。下限値は上述したように2[GPa]以上である。また、固体電解質層のせん断弾性率の値についても特に制限はないが、好ましくは20[GPa]以下であり、より好ましくは15[GPa]以下であり、さらに好ましくは10[GPa]以下である。下限値は1[GPa]以上程度あればよい。なお、固体電解質層および保護層のせん断弾性率の値については、リチウム二次電池の製造時においてこれらの層を作製した時点において、文献(Kunkun Fu et al., Vacuum, Volume 112, February 2015, Pages 29-32)に記載されているナノインデンデーション法により測定した値を採用するものとする。
【0055】
なお、上述したような保護層の構成材料について特に制限はなく、上述の条件を満たす材料であればいずれも好適に用いられうる。保護層の構成材料の一例としては、例えば、ハロゲン化リチウム(フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI))、Li-M-O(Mは、Mg、Au、Al、SnおよびZnからなる群より選ばれる1種または2種以上の金属元素である)で表される複合金属酸化物、ならびにLi-Ba-TiO複合酸化物からなる群から選択される1種または2種以上の材料が挙げられる。これらの材料はいずれも、リチウム金属との接触による還元分解について特に安定であることから、保護層の構成材料として好適である。
【0056】
保護層の平均厚さについて特に制限はなく、上述した機能を発現可能な厚さで配置されていればよい。ただし、保護層の平均厚さが大きすぎると内部抵抗を上昇させることで充放電効率を低下させる要因となる。このため、保護層の平均厚さは、固体電解質層の平均厚さよりも小さいことが好ましい。また、保護層の平均厚さが小さすぎると、保護層を設けることによる保護効果が十分に得られない可能性がある。これらの観点から、保護層の平均厚さは、好ましくは0.5nm~20μmであり、より好ましくは5nm~10μmである。なお、保護層の「平均厚さ」とは、リチウム二次電池を構成する保護層について異なる数~十数か所についてそれぞれ厚さを測定し、それらの算術平均値として算出される値を意味するものとする。
【0057】
さらに、保護層の表面粗さは小さいほど好ましい。具体的には、JIS B 0601:2013に準拠して測定される保護層の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下であり、いっそう好ましくは50nm以下であり、特に好ましくは10nm以下であり、最も好ましくは5nm以下である。保護層の表面粗さ(Ra)が1μm以下であれば、負極に析出したリチウム金属と固体電解質層(保護層)との界面が良好な接触状態を長期間にわたって維持することが可能となり、サイクル耐久性の維持に効果的に寄与しうる。
【0058】
[絶縁層]
本形態に係るリチウム二次電池においては、図7に示すように、発電要素21を平面視した際に、正極活物質層15の外周端の少なくとも一部が正極集電体11”の外周端より内側に位置し、正極活物質層15が配置されていない正極集電体11”の固体電解質層17側の表面に、電子絶縁性の材料から構成される絶縁層20が配置されていることが好ましい。このような構成とすることにより、充電時に負極集電体の表面に析出したリチウム金属が、加圧部材の拘束圧力によって固体電解質層の外周端から押し出されたときにも、正極活物質層15と負極活物質層13との接触が防止されて短絡の発生が抑制されるという利点がある。なお、図7に示す実施形態では、正極活物質層15の側面の全体が絶縁層20によって覆われるように絶縁層20が配置されている。ただし、図8に示す実施形態のように、正極活物質層15の側面の一部が露出するように絶縁層20が配置されていてもよい。
【0059】
なお、上述したような絶縁層の構成材料について特に制限はなく、上述の条件を満たす材料であればいずれも好適に用いられうる。絶縁層の構成材料の一例としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、S-B-Na系のガラスフリット等の無機粉末を固体電解質層を構成する固体電解質に分散させた材料が挙げられる。ただし、絶縁層の構成材料は樹脂材料またはゴム材料であることが好ましい。これらの材料は耐久性が高く、弾性を有することから、例えば絶縁層が形成されている領域において内部応力が発生したとしても、絶縁層が破断することなく伸びることによって短絡の発生を効果的に防止することが可能となる。このような樹脂材料としては、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、アルキルレゾルシン樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等の熱硬化性樹脂が挙げられる。また、ゴム材料の例としては、ラテックスゴム、クロロプレンゴム(CR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
【0060】
[正極集電板および負極集電板]
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、カーボン被覆アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、負極集電板25と正極集電板27とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0061】
[正極リードおよび負極リード]
また、図示は省略するが、集電体(11”、11’)と集電板(27、25)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウム二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
【0062】
[電池外装体]
電池外装体としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、図1に示すように発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルム29を用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができることから、外装体はアルミニウムを含むラミネートフィルムがより好ましい。
【0063】
図9は、本発明の一実施形態に係る積層型二次電池の外観を表した斜視図である。図9に示すように、扁平な積層型二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素57は、積層型二次電池50の電池外装体(ラミネートフィルム52)によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素57は、先に説明した図1に示す積層型二次電池10aの発電要素21に相当するものである。発電要素57は、正極(正極集電体11”および正極活物質層15)、固体電解質層17、並びに負極(負極集電体11’)で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
【0064】
なお、本形態に係るリチウム二次電池は、扁平な形状のものに制限されるものではない。巻回型のリチウム二次電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装体に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。また、図9に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではない。正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図9に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウム二次電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0065】
以上、本形態に係る二次電池が全固体リチウム二次電池である場合を例に挙げて説明したが、本形態に係るリチウム二次電池は、全固体型でなくてもよい。すなわち、固体電解質層は、従来公知の液体電解質(電解液)をさらに含有していてもよい。固体電解質層に含まれうる液体電解質(電解液)の量について特に制限はないが、固体電解質により形成された固体電解質層の形状が保持され、液体電解質(電解液)の液漏れが生じない程度の量であることが好ましい。なお、液体電解質(電解液)としては、従来公知の有機溶媒に従来公知のリチウム塩が溶解した形態を有する溶液が用いられる。液体電解質(電解液)は、有機溶媒およびリチウム塩以外の添加剤をさらに含有してもよい。これらの添加剤は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、添加剤を電解液に使用する場合の使用量は、適宜調整することができる。
【0066】
[組電池]
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
【0067】
電池が複数、直列にまたは並列に接続して装脱着可能な小型の組電池を形成することもできる。そして、この装脱着可能な小型の組電池をさらに複数、直列にまたは並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池を形成することもできる。何個の電池を接続して組電池を作製するか、また、何段の小型組電池を積層して大容量の組電池を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0068】
[車両]
本形態に係るリチウム二次電池は、体積あたりのエネルギー密度が高い。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められる。したがって、本形態に係るリチウム二次電池は、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0069】
具体的には、電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を車両に搭載することができる。本発明では、出力特性に優れた高容量の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより、走行距離の長い自動車とすることができるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【実施例0070】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、以下において、操作はグローブボックス内で行った。また、グローブボックス内で用いた器具および装置等は、事前に十分に乾燥処理を行った。
【0071】
<実施例1>
[評価用セルの作製]
(正極の作製)
まず、正極活物質としてのLiNi0.8Mn0.1Co0.1、導電助剤としてのアセチレンブラック、および硫化物固体電解質(LPS(LiS-P))を、50:30:20の質量比となるように秤量し、グローブボックス内でメノウ乳鉢で混合した後、遊星ボールミルでさらに混合撹拌した。得られた混合粉体100質量部に対してスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を2質量部加え、メシチレンを溶媒として加えて正極活物質スラリーを調製した。次いで、上記で調製した正極活物質スラリーを正極集電体としてのアルミニウム箔の表面に塗工し、乾燥し、プレス処理を施すことにより正極活物質層(厚さ50μm)を形成して、正極を作製した。
【0072】
(固体電解質層および保護層の作製)
硫化物固体電解質(LPS(LiS-P))100質量部に対してスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を2質量部加え、メシチレンを溶媒として加えて固体電解質スラリーを調製した。次いで、上記で調製した固体電解質スラリーを支持体としてのステンレス箔の表面に塗工し、乾燥して、自立膜としての固体電解質層(厚さ30μm)を得た。ここで、得られた固体電解質層のせん断弾性率の値を文献(Kunkun Fu et al., Vacuum, Volume 112, February 2015, Pages 29-32)に記載されているナノインデンデーション法により測定したところ、8[GPa]であった。
【0073】
その後、得られた固体電解質層の一方の主面および側面の全体に、スパッタリングにより臭化リチウム(LiBr)からなる保護層(厚さ20nm)を形成した。ここで、得られた保護層のせん断弾性率の値を上記と同様の手法により測定したところ、8[GPa]であった。すなわち、本実施例において、保護層のせん断弾性率と固体電解質層とのせん断弾性率との差は0[GPa]であった。また、JIS B 0601:2013に準拠して、得られた保護層の算術平均粗さ(Ra)を測定したところ、5nm未満であった。
【0074】
(評価用セルの作製)
上記で作製した正極の正極活物質層側に、同様に上記で作製した保護層が形成された固体電解質層を、固体電解質層の露出表面が正極活物質層と向き合うように冷間等方圧プレス(CIP)により転写した。この際、固体電解質層の外周縁部が全周にわたって正極活物質層の側面の途中まで延在するように、CIP処理の際のプレス圧を制御した。最後に、負極集電体としてのステンレス箔を保護層の露出表面に積層して、負極活物質層が存在しないこと以外は図2に示す形態の評価用セル(リチウム析出型の全固体リチウム二次電池)を作製した。
【0075】
[評価用セルの評価(充放電効率の測定)]
上記で作製した評価用セルの正極集電体および負極集電体のそれぞれに正極リードおよび負極リードを接続し、以下の充放電試験条件に従って100サイクルの充放電を行った。この際、加圧部材を用いて評価用セルの積層方向に5[MPa]の拘束圧力を印加しながら以下の充放電試験を行った。
【0076】
(充放電試験条件)
1)充放電条件
[電圧範囲]3.0~4.3V
[充電過程]CCCV
[放電過程]CC
[充放電レート]0.2C
(充放電後、それぞれ30分休止)
2)評価温度:298K(25℃)。
【0077】
評価用セルは、充放電試験機を使用して、上記評価温度に設定された恒温槽中にて、充電過程(負極集電体上へリチウム金属が析出する)では、定電流・定電圧(CCCV)モードとし、0.2Cにて3.0Vから4.3Vまで充電した。その後、放電過程(負極集電体上のリチウム金属が溶解する)では、定電流(CC)モードとし、0.2Cにて4.3Vから3.0Vまで放電した。なお、1Cとは、その電流値で1時間充電すると、ちょうどその電池が満充電(100%充電)状態になる電流値のことである。ここで、評価用セルの充放電処理の際に、充電容量(充電時の電池容量)および放電容量(放電時の電池容量)をそれぞれ測定した。そして、100サイクル目の充電時の電池容量に対する放電時の電池容量の割合として、充放電効率(クーロン効率)を算出した。その結果、本実施例における100サイクル時の充放電効率は99%であった。
【0078】
<実施例2>
保護層の形成材料を塩化リチウム(LiCl)に変更したこと、および、保護層の厚さを5nmとしたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本実施例の評価用セル(リチウム析出型の全固体リチウム二次電池)を作製した。また、保護層のせん断弾性率の値を上記と同様の手法により測定したところ、21[GPa]であった。すなわち、本実施例において、保護層のせん断弾性率と固体電解質層とのせん断弾性率との差は13[GPa]であった。さらに、JIS B 0601:2013に準拠して、得られた保護層の算術平均粗さ(Ra)を測定したところ、測定限界以下であった。そして、上記と同様の手法により充放電効率(クーロン効率)を算出したところ、本実施例における100サイクル時の充放電効率は99%であった。
【0079】
<実施例3>
保護層の形成材料をフッ化リチウム(LiF)に変更したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本実施例の評価用セル(リチウム析出型の全固体リチウム二次電池)を作製した。また、保護層のせん断弾性率の値を上記と同様の手法により測定したところ、51[GPa]であった。すなわち、本実施例において、保護層のせん断弾性率と固体電解質層とのせん断弾性率との差は43[GPa]であった。さらに、JIS B 0601:2013に準拠して、得られた保護層の算術平均粗さ(Ra)を測定したところ、5nm未満であった。そして、上記と同様の手法により充放電効率(クーロン効率)を算出したところ、本実施例における100サイクル時の充放電効率は94%であった。
【0080】
<比較例1>
保護層の形成材料を、リチウム含有酸化物固体電解質であるLiLaZr12(LLZO)に変更したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本比較例の評価用セル(リチウム析出型の全固体リチウム二次電池)を作製した。また、保護層のせん断弾性率の値を上記と同様の手法により測定したところ、64[GPa]であった。すなわち、本比較例において、保護層のせん断弾性率と固体電解質層とのせん断弾性率との差は56[GPa]であった。さらに、JIS B 0601:2013に準拠して、得られた保護層の算術平均粗さ(Ra)を測定したところ、5nm未満であった。そして、上記と同様の手法により充放電効率(クーロン効率)を算出したところ、本実施例における100サイクル時の充放電効率は76%であった。
【0081】
<比較例2>
保護層の形成材料を、酸化リチウム(LiO)に変更したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本比較例の評価用セル(リチウム析出型の全固体リチウム二次電池)を作製した。また、保護層のせん断弾性率の値を上記と同様の手法により測定したところ、70[GPa]であった。すなわち、本比較例において、保護層のせん断弾性率と固体電解質層とのせん断弾性率との差は62[GPa]であった。さらに、JIS B 0601:2013に準拠して、得られた保護層の算術平均粗さ(Ra)を測定したところ、5nm未満であった。そして、上記と同様の手法により充放電効率(クーロン効率)を算出したところ、本実施例における100サイクル時の充放電効率は72%であった。
【0082】
<比較例3>
保護層の形成材料を、ポリエチレングリコール(PEG(ポリエチレンオキシド;PEO);数平均分子量200,000)に変更したこと、および、保護層の厚さを500nmとしたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本比較例の評価用セル(リチウム析出型の全固体リチウム二次電池)を作製した。また、保護層のせん断弾性率の値を上記と同様の手法により測定したところ、0.1[GPa]であった。すなわち、本比較例において、保護層のせん断弾性率と固体電解質層とのせん断弾性率との差は50[GPa]以下であったが、保護層自体のせん断弾性率の値は2[GPa]未満であった。さらに、JIS B 0601:2013に準拠して、得られた保護層の算術平均粗さ(Ra)を測定したところ、100nmであった。そして、上記と同様の手法により充放電試験を実施したが、リチウム金属のデンドライトが保護層および固体電解質層を貫通したことによるセルの内部短絡が発生してしまい、100サイクルの充放電を実施することができなかった。
【0083】
なお、保護層のせん断弾性率と固体電解質層のせん断弾性率との差に対して、100サイクル時の充放電効率の値をプロットしたグラフを図10に示す。
【符号の説明】
【0084】
10a、50、100 積層型二次電池、
11’ 負極集電体、
11” 正極集電体、
13 負極活物質層、
15 正極活物質層、
17 固体電解質層、
18 保護層、
19 単電池層、
20 絶縁層、
21、57 発電要素、
25 負極集電板(負極タブ)、
27 正極集電板(正極タブ)、
29、52 ラミネートフィルム、
58 正極タブ、
59 負極タブ、
200 金属板、
300 ボルト、
400 ナット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10