(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186174
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 19/06 20060101AFI20221208BHJP
F16C 41/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
F16C19/06
F16C41/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094261
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊勢田 顕市
【テーマコード(参考)】
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
3J217JA02
3J217JC07
3J701AA03
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA77
3J701EA72
3J701FA11
3J701GA01
3J701GA11
(57)【要約】
【課題】保持部材に対する摺接部材の位置決めを簡単な構造で実現することができる転がり軸受を提供する。
【解決手段】外輪21と、内輪22と、外輪21及び内輪22の径方向の間に配設された複数の転動体23と、外輪21及び内輪22の軸方向の端部に設けられ、外輪21と内輪22との間の電路を形成する導電部材25と、を備え、導電部材25は、外輪21に固定される保持部材31と、保持部材31に保持され、内輪22に摺接する摺接部材36と、を有し、保持部材31は、軸方向に突出する係止部34を有し、摺接部材36は、保持部材31の径方向の内端部を嵌合させる嵌合溝37を外周面に有し、かつ、係止部34を係止させる孔又は凹部からなる被係止部38を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪と、内輪と、前記外輪及び前記内輪の径方向の間に配設された複数の転動体と、前記外輪及び前記内輪の軸方向の端部に設けられ、前記外輪と前記内輪との間の電路を形成する導電部材と、を備え、
前記導電部材は、
前記外輪に固定される保持部材と、
前記保持部材に保持され、前記内輪に摺接する摺接部材と、を有し、
前記保持部材は、軸方向に突出する係止部を有し、
前記摺接部材は、前記保持部材の径方向の内端部を嵌合させる嵌合溝を外周面に有し、かつ、前記係止部を挿入させる孔又は凹部からなる被係止部を有している、転がり軸受。
【請求項2】
前記摺接部材が、導電性繊維を含む材料で形成される、請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記係止部が前記保持部材の径方向の内端部に形成され、前記被係止部が、前記嵌合溝の溝内に連通している、請求項1又は2に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記保持部材に、軸方向に貫通する潤滑油の流路が形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記摺接部材が、前記保持部材に接着剤で接着されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電食防止機能を有する転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インバータ制御されるモータの回転軸を支持する軸受として、電食防止機能を有する転がり軸受が記載されている。この転がり軸受は、外輪と、内輪と、外輪及び内輪の間に配置された複数の玉と、外輪と内輪との間を軸方向両側から塞ぐ密閉板とを備えている。密閉板は、外輪に固定されホルダと、ホルダによって保持され内輪の外周部に摺接する摺接部材とを有する。摺接部材は、導電性繊維を含む織物等により構成され、ホルダは、摺接部材を軸方向の両側から挟み込む2枚の金属板により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された密封板のホルダは、摺接部材を保持するために2枚の金属板を必要としているので、部品点数が多くなりコスト高の原因となる。また、ホルダは、2枚の金属板で摺接部材を挟んでいるだけであるので、摺接部材の周方向及び径方向の位置決めが不十分であり、内輪との接触が不安定になる恐れがある。
【0005】
本開示は、導電性を有する摺接部材の保持部材に対する位置決めを簡単な構造で実現し得る転がり軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の転がり軸受は、
外輪と、内輪と、前記外輪及び前記内輪の径方向の間に配設された複数の転動体と、前記外輪及び前記内輪の軸方向の端部に設けられ、前記外輪と前記内輪との間の電路を形成する導電部材と、を備え、
前記導電部材は、
前記外輪に固定される保持部材と、
前記保持部材に保持され、前記内輪に摺接する摺接部材と、を有し、
前記保持部材は、軸方向に突出する係止部を有し、
前記摺接部材は、前記保持部材の径方向の内端部を嵌合させる嵌合溝を外周面に有し、かつ、前記係止部を挿入させる孔又は凹部からなる被係止部を有している。
【発明の効果】
【0007】
本開示の転がり軸受によれば、保持部材に対する摺接部材の位置決めを簡単な構造で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態における転がり軸受の一部の断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る転がり軸受を示す側面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態に係る転がり軸受の導電部材を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1)本開示の実施形態における転がり軸受は、
外輪と、内輪と、前記外輪及び前記内輪の径方向の間に配設された複数の転動体と、前記外輪及び前記内輪の軸方向の端部に設けられ、前記外輪と前記内輪との間の電路を形成する導電部材と、を備え、
前記導電部材は、
前記外輪に固定される保持部材と、
前記保持部材に保持され、前記内輪に摺接する摺接部材と、を有し、
前記保持部材は、軸方向に突出する係止部を有し、
前記摺接部材は、前記保持部材の径方向の内端部を嵌合させる嵌合溝を外周面に有し、かつ、前記係止部を挿入させる孔又は凹部からなる被係止部を有している。
【0010】
上記構成によれば、導電部材の摺接部材には、保持部材の径方向内端部を嵌合させる嵌合溝と、保持部材の係止部を係止させる被係止部とが形成されているので、保持部材に対する摺接部材の軸方向、径方向、及び周方向の位置決めを好適に行うことができる。
【0011】
(2)本実施形態の転がり軸受では、前記摺接部材が、導電性繊維を含む材料で形成される。
このような構成によって、内輪に摺接する摺接部材によって電路を形成することができる。
【0012】
(3)本実施形態の転がり軸受では、前記係止部が前記保持部材の径方向の内端部に形成され、前記被係止部が、前記嵌合溝の溝内に連通している。
このような構成によって、摺接部材の嵌合溝と保持部材との嵌合部分と、摺接部材の被係止部と保持部材の係止部との係止部分とを近接させることができ、前記嵌合部分と前記係止部分との一方が外れるのを他方によって阻止することができる。
【0013】
(4)本実施形態の転がり軸受では、前記保持部材に、軸方向に貫通する潤滑油の流路が形成されている。
このような構成によって、転がり軸受をオイル潤滑する場合に、導電部材が潤滑油の流れを妨げるのを抑制することができる。
【0014】
(5) 本実施形態の転がり軸受では、前記摺接部材が、前記保持部材に接着剤で接着されている。
このような構成によって、保持部材に摺接部材をより強固に位置決めし固定することができる。
【0015】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態における転がり軸受の一部の断面図である。
図2は、転がり軸受の側面図である。
図2は、転がり軸受の側面図である。なお、以下の説明において、「径方向」及び「軸方向」とは、それぞれ転がり軸受の径方向及び軸方向を言うものとする。
【0016】
転がり軸受10は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載されたモータの回転軸Sを支持するために用いられる。転がり軸受10は、外輪21と、内輪22と、転動体23と、導電部材25とを有する。本実施形態の転がり軸受10は、深溝玉軸受である。また、本実施形態の転がり軸受10は、外輪21がハウジングHに固定され、内輪22が回転軸Sに固定される。
【0017】
外輪21は、円環状に形成されている。外輪21の内周面には、転動体23を転動させる軌道21aが形成されている。軌道21aの軸方向両側には肩21bが形成されている。肩21bは、小径部21b1と、大径部21b2と、段差部21b3とを有する。小径部21b1は、転動体23に近い側に位置する。大径部21b2は、小径部21b1よりも転動体23から離れた側に位置する。小径部21b1の内径は、大径部21b2の内径よりも小さい。段差部21b3は、小径部21b1と大径部21b2との境界に配置され、転がり軸受10の径方向に平行な面である。軸方向一方側(
図1における左側)の肩21bの大径部21b2には、導電部材25が装着されている。
【0018】
内輪22は、円環状に形成されている。内輪22は、外輪21の径方向内側に配置されている。内輪22の外周面には、軌道22aが形成されている。軌道22aの軸方向両側には、肩22bが形成されている。肩22bの内周面は、一定の内径を有する円筒面である。内輪22の肩22bは、外輪21の肩21bの径方向内側に対向して配置されている。
【0019】
転動体23は、周方向に間隔をあけて複数設けられている。複数の転動体23は、外輪21の軌道21aと内輪22の軌道22aとの間に配置され、各軌道21a,22a上を転動する。本実施形態の転動体23は玉である。複数の転動体23は、図示しない保持器によって周方向の間隔が保持される。
【0020】
導電部材25は、モータのインバータ回路からの高周波の電流が外輪21、転動体23、及び内輪22を通過して流れることに起因する軌道21a,22aの電食を防止するために、転動体23を通過しない電流の経路(電路)を形成するものである。
【0021】
図3は、導電部材を拡大して示す断面図である。
導電部材25は、円環状に形成されている。保持部材31と、摺接部材36とを有する。保持部材31は、円環状に形成されている。保持部材31は、外輪21の軸方向一端に設けられた肩21b(大径部21b2)に装着されている。保持部材31は、導体により形成されている。具体的に、保持部材31は、例えばスチールやステンレス等の金属製の板材により形成されている。
【0022】
保持部材31は、円筒部32と、円筒部32の軸方向一端部から径方向内方へ延びる円板部33とを有している。円筒部32は、外輪21の肩21bの大径部21b2に嵌合され、外輪21に固定されている。保持部材31は、外輪21の段差部21b3に当接している。これにより、保持部材31に対する摺接部材36の軸方向の位置決めがなされている。
【0023】
保持部材31の円板部33の径方向内端部には、係止部34が形成されている。この係止部34は、円板部33から軸方向に突出する突起である。具体的に、係止部34は、円板部33から転動体23とは反対側へ軸方向に突出している。ただし、係止部34は、円板部33から転動体23側へ突出してもよい。また、係止部34は、円板部33から軸方向の両側に突出していてもよい。
【0024】
本実施形態の保持部材31は、平坦な板材のプレス加工(打ち抜き、曲げ等)によって円筒部32、円板部33、及び係止部34が形成されている。この加工により、係止部34は円筒形状に形成され、軸方向の両端が開口している。ただし、係止部34は、軸方向の先端側が閉じた形状であってもよい。
【0025】
保持部材31の円板部33には、流路35が形成されている。この流路35は、
図2に示すように周方向に間隔をあけて複数形成されている。流路35の径方向外側の縁部35aは、
図3に示すように、肩21bの小径部21b1の内周面と面一に配置されている。流路35は、
図1に示すように、転がり軸受10をオイル潤滑する場合に、潤滑油が矢印Aのように外輪21と内輪22との間を軸方向に通過することを可能にしている。
【0026】
また、潤滑油は内輪22の回転に伴って外輪21の内周面へ向けて流れるため、流路35の縁部35aを外輪21の小径部21b1の内周面と面一に配置することで、小径部21b1の内周面に沿って流れる潤滑油をスムーズに流路35に通すことができる。なお、流路35の縁部35aは、小径部21b1の内周面よりの径方向内側に配置されていてもよい。この場合、潤滑油が流路35を通過する際の抵抗が大きくなるため、外輪21と内輪22との間からの潤滑油の流出量を減少させることができる。
【0027】
摺接部材36は、円環状に形成されている。摺接部材36の外周側は保持部材31に取り付けられ、内周側は内輪22の肩22bに接触している。なお、本実施形態の摺接部材36は、周方向の一箇所(
図2にPで示す位置)で分断されている。ただし、摺接部材36は、周方向に連続した形態であってもよい。
【0028】
摺接部材36は、導体により形成されている。具体的に摺接部材36は、導電性を有する繊維を含む不織布により構成されている。不織布の一例としては、フェルトを挙げることができる。フェルトは、繊維を縮絨させたものであり、弾性変形が可能である。
【0029】
摺接部材36は、不織布に限らず、導電性を有する繊維を含む織物や編物であってもよい。また、摺接部材36は、導電性を有する弾性材料であってもよい。例えば、摺接部材36は、導電性を有する繊維を混入したゴム等であってもよい。導電性を有する繊維としては、炭素繊維、金属繊維等を挙げることができる。
【0030】
摺接部材36の外周面には、周方向に沿って延びる嵌合溝37が形成されている。摺接部材36は、嵌合溝37によって断面形状が略コの字型に形成されている。具体的に、摺接部材36は、径方向内端部に位置する内径部36aと、内径部36aの軸方向両端部から径方向外側へ延びる一対の側板部36bとを有する。
【0031】
摺接部材36の嵌合溝37には、保持部材31の径方向内端部が嵌合している。そのたえ、保持部材31の径方向内端部は、一対の側板部36bによって軸方向両側から挟まれている。これにより、保持部材31に対する摺接部材36の軸方向の位置決めがなされている。
【0032】
摺接部材36には、被係止部38が形成されている。被係止部38は、保持部材31の円板部33から係止部34が突出する側に配置された一方の側板部36bに形成されている。本実施形態の被係止部38は、一方の側板部36bを貫通する孔である。したがって、被係止部38は、嵌合溝37の溝内に連通している。被係止部38は、貫通孔の形態に限らず、摺接部材36の軸方向の外端面において閉じた凹部であってもよい。
【0033】
摺接部材36の被係止部38には、保持部材31の係止部34が挿入されている。これにより、保持部材31の係止部34が摺接部材36の被係止部38に係止し、保持部材31に対する摺接部材36の径方向及び周方向の位置決めがなされている。係止部34は、被係止部38を貫通し、摺接部材36の軸方向の外端面から突出している。
【0034】
保持部材31と摺接部材36とは、接着剤によって接着されている。具体的に、摺接部材36の嵌合溝37の内面と保持部材31の径方向内端部とが接着剤で接着されている。また、摺接部材36の被係止部38の内面と、保持部材31の係止部34の外面も接着剤で接着されている。保持部材31と摺接部材36とは、嵌合溝37おける接着と被係止部38における接着とのいずれか一方のみで接着されていてもよいが、双方において接着されることによって、摺接部材36を保持部材31に強固に固定することができ、保持部材31に対して摺接部材36をより確実に位置決めすることができる。
【0035】
導電部材25の保持部材31と摺接部材36とを組み立てるには、まず、摺接部材36の嵌合溝37の内面と被係止部38の内面に接着剤を塗布しておく。そして、一対の側板部36bの間隔を広げるように摺接部材36を変形させ、嵌合溝37に保持部材31の径方向内端部を挿入する。さらに、被係止部38に係止部34を挿入させながら一対の側板部36bの間隔を狭め、一対の側板部36bで保持部材31を挟み込むことで保持部材31に摺接部材36を取り付ける。
【0036】
摺接部材36は、保持部材31に組み付ける前の状態で円環状に形成されていてもよいが、直線状(棒状)に形成されていてもよい。この場合、摺接部材36を円環状に曲げながら保持部材31に組み付ければよい。円環状に形成された摺接部材36を製造するには、平板状の不織布材料を円環状に打ち抜く必要があり、円環中央の打ち抜かれた部分は廃材となるため、歩留まりが悪化する。摺接部材36が直線状であると、長尺棒状の不織布材料を所定の長さに切断するだけでよいので、歩留まりを向上させることができる。
【0037】
以上のように、本実施形態の導電部材25は、摺接部材36の嵌合溝37に保持部材31の径方向内端部が嵌合され、摺接部材36の被係止部38に保持部材31の係止部34が係止されているので、保持部材31に対する摺接部材36の軸方向、径方向、及び周方向の位置決めを簡単な構造で行うことができる。そのため、摺接部材36を安定して内輪22に接触させることができ、軌道21a,22aの電食を好適に抑制することができる。
【0038】
また、被係止部38は、嵌合溝37の溝内に連通しているので、嵌合溝37と保持部材31との嵌合部分と、係止部34と被係止部38との係止部分とを近接して配置することができる。そのため、例えば、嵌合溝37から保持部材31が外れようとしても、係止部34と被係止部38との係止部分がそれを直接的に阻止することができる。逆に、被係止部38から係止部34が外れようとしても、嵌合溝37と保持部材31との嵌合部分がそれを直接的に阻止することができる。したがって、前記嵌合部分と前記係止部分との一方が外れるのを他方によって阻止することができ、保持部材31に対して摺接部材36をより確実に位置決めすることができる。
【0039】
また、嵌合溝37と保持部材31との嵌合部分と、係止部34と被係止部38との係止部分とが、例えば径方向に離れた位置に配置されていたとすると、必然的に摺接部材36が径方向に大きくする必要がある。嵌合溝37と被係止部38とを連通し、前記嵌合部分と前記係止部分とを近接させることによって摺接部材36を小型化することができる。
【0040】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係る転がり軸受を示す側面図である。
本実施形態の転がり軸受10は、導電部材25における摺接部材36の形態が第1の実施形態とは異なる。本実施形態の摺接部材36は、円環状ではなく、周方向の複数箇所(図示例では4箇所)に分散して設けられている。
【0041】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に保持部材31に対する摺接部材36の位置決めを簡単な構造で確実に行うことができる。また、本実施形態では、第1の実施形態よりも内輪22に対する摺接部材36の接触面積が小さくなるので、摺接部材36が接触することによる回転抵抗(摺動トルク)を小さくすることができる。また、導電部材25の保持部材31の内周縁と、内輪22の肩22bの外周面との間には、隙間39が形成されるので、隙間39を潤滑油の流路として利用することができる。
【0042】
[第3の実施形態]
図5は、本発明の第3の実施形態に係る転がり軸受の導電部材を拡大して示す断面図である。
本実施形態では、導電部材25における摺接部材36の構造が第1の実施形態とは異なっている。本実施形態では、内輪22の肩22bに摺接する摺接部材36の内周面に複数の突起36cが設けられている。複数の突起36cは、それぞれ周方向に延び、軸方向に間隔をあけて配置されている。
【0043】
本実施形態では、第1の実施形態よりも内輪22に対する摺接部材36の接触面積が小さくなるので、摺接部材36が接触することによる回転抵抗(摺動トルク)を小さくすることができる。なお、
図5に示す突起36cは、断面形状が矩形状に形成されているが、これに限定されるものではなく、円弧状、三角形状等に形成されていてもよい。また、
図5には、4個の突起36cが例示されているが、突起36cの個数も限定されるものではない。
【0044】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的ではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0045】
導電部材25は、転がり軸受10の軸方向両端部に設けられていてもよい。この場合、転がり軸受10の内部にグリースを充填し、導電部材25を密封装置として機能させることができる。この場合、グリースの漏れを防止するために保持部材31の流路35は省略することが好ましい。
【0046】
前記実施形態では、転がり軸受10が深溝玉軸受である場合について説明したが、転がり軸受10は、アンギュラ玉軸受、又は円筒ころ軸受等であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 :転がり軸受
21 :外輪
22 :内輪
23 :転動体
25 :導電部材
31 :保持部材
34 :係止部
35 :流路
36 :摺接部材
37 :嵌合溝
38 :被係止部