(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186185
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】形状計測システムおよび形状計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20221208BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G01B11/24 A
G01C3/06 120S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094275
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 允史
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】大西 義人
【テーマコード(参考)】
2F065
2F112
【Fターム(参考)】
2F065AA02
2F065AA06
2F065AA52
2F065BB05
2F065BB15
2F065DD03
2F065FF01
2F065FF41
2F065FF65
2F065GG04
2F065HH04
2F065LL04
2F065MM06
2F065QQ25
2F112AD10
2F112BA06
2F112CA08
2F112CA12
2F112DA04
2F112DA25
2F112FA35
(57)【要約】
【課題】振動等が発生した場合でも高精度な形状計測が可能な形状計測システムの提供。
【解決手段】形状計測システム1は、所定の方向にビーム光200を出射する基準光源部2と、移動機構5により一体にビーム光軸210に沿って移動される距離計測部3および位置検出部4とを備える。距離計測部3は、ビーム光軸210に対して垂直な面8内において、計測対象までの距離を計測する。位置検出部4は、基準光源部2のビーム光200が入射する検出光学系42と、検出光学系42の焦点面よりも検出光学系42に近い位置に配置され、検出光学系42を介して基準光源部2のビーム光200を受光し、受光位置を相対位置情報として出力する位置検出センサ41とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向にビーム光を出射する基準光源部と、
前記ビーム光のビーム光軸に対して垂直な面内において、計測対象までの距離を計測する距離計測部と、
前記距離計測部に設けられ、前記ビーム光を受光して前記ビーム光軸に対する前記距離計測部の相対位置情報を検出する位置検出部と、
前記距離計測部および前記位置検出部を、一体で前記ビーム光軸に沿って移動させる移動機構と、
前記距離計測部で計測した距離情報と前記位置検出部で検出した前記相対位置情報とに基づいて、前記計測対象の3次元形状を算出する演算部と、を備え、
前記位置検出部は、
前記基準光源部のビーム光が入射する検出光学系と、
前記検出光学系の焦点面よりも前記検出光学系に近い位置に配置され、前記検出光学系を介して前記基準光源部のビーム光を受光し、受光位置を前記相対位置情報として出力する位置検出センサとを備える、形状計測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の形状計測システムであって、
前記位置検出センサと前記焦点面との距離は、前記検出光学系の焦点距離の10%~15%に設定されている、形状計測システム。
【請求項3】
請求項1に記載の形状計測システムにおいて、
前記基準光源部と前記検出光学系との間の距離をH、前記ビーム光の波長をλ、前記ビーム光のビーム径が最も狭まる所のビーム径をω0、前記検出光学系の開口直径をDとしたときに、条件式「D>H×tan(λ/πω0)」を満足している、形状計測システム。
【請求項4】
請求項3に記載の形状計測システムにおいて、
前記距離をH(m)、前記開口直径をD(mm)としたときに、条件式「D>H×0.4」を満足している、形状計測システム。
【請求項5】
請求項1に記載の形状計測システムであって、
前記検出光学系は、2枚以上の球面レンズ、または1枚以上の非球面レンズで構成される、形状計測システム。
【請求項6】
請求項1に記載の形状計測システムであって、
前記基準光源部は略コリメートされたビーム光を出射する、形状計測システム。
【請求項7】
請求項1に記載の形状計測システムであって、
前記基準光源部は、前記ビーム光の断面形状を円形に調整するビームシェイパー光学系を備える、形状計測システム。
【請求項8】
請求項1に記載の形状計測システムであって、
前記基準光源部を移動して、前記基準光源部から出射されるビーム光の方向、および、前記ビーム光軸に垂直な面における前記基準光源部の位置を変更する変更部をさらに備える、形状計測システム。
【請求項9】
請求項1に記載の形状計測システムであって、
前記位置検出部は、前記距離計測部の傾きを検出する傾斜角センサをさらに備え、前記傾斜角センサで検出した傾きと前記位置検出センサの前記受光位置とを前記相対位置情報として出力する、形状計測システム。
【請求項10】
請求項1に記載の形状計測システムにおいて、
前記基準光源部と前記検出光学系との間のビーム光軸方向距離に応じた複数種類の補正データが記憶される記憶部と、
前記ビーム光軸方向距離を計測するビーム光軸方向距離計測部と、
前記ビーム光軸方向距離計測部で計測される距離に基づいて前記複数種類の補正データのいずれか一つを選択し、選択した前記補正データにより前記受光位置を補正して前記検出光学系のビーム入射位置を算出する補正部と、をさらに備え、
前記演算部は、前記補正部で算出される前記ビーム入射位置に基づいて前記3次元形状を算出する、形状計測システム。
【請求項11】
請求項10に記載の形状計測システムによる形状計測方法であって、
前記補正データに対応付けられた距離の範囲内に1以上の停止位置を設定して、設定した停止位置の各々に前記距離計測部および前記位置検出部を停止させ、
前記基準光源部を前記ビーム光軸に対して垂直な方向に所定量だけ移動させ、
前記所定量の移動の前後における前記受光位置の変化量と前記所定量とに基づいて前記補正データを校正し、
前記補正データに代えて校正後の補正データにより前記受光位置を補正して前記ビーム入射位置を算出し、
算出したビーム入射位置に基づいて前記3次元形状を算出する、形状計測方法。
【請求項12】
請求項1に記載の形状計測システムにおいて、
前記基準光源部、前記位置検出センサおよび前記検出光学系はそれぞれ2つずつ設けられ、
前記位置検出部は、
第1の基準光源部のビーム光軸上に配置され、前記第1の基準光源部のビーム光が入射する第1の検出光学系、および、前記第1の検出光学系の焦点面よりも前記第1の検出光学系に近い位置に配置され、前記第1の検出光学系を介して前記第1の基準光源部のビーム光を受光する第1の位置検出センサを含む第1の検出部と、
第2の基準光源部のビーム光軸上に配置され、前記第2の基準光源部のビーム光が入射する第2の検出光学系、および、前記第2の検出光学系の焦点面よりも前記第2の検出光学系に近い位置に配置され、前記第2の検出光学系を介して前記第2の基準光源部のビーム光を受光する第2の位置検出センサを含む第2の検出部と、を備え、
前記演算部は、前記距離計測部で計測した前記距離情報と前記第1および第2の検出部の各々で検出した前記相対位置情報に基づいて、前記計測対象の3次元形状を算出する、形状計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状計測システムおよび形状計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーター昇降路内の寸法を自動計測し、作業者の労力を低減する昇降路内計測システムが特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の昇降路内計測システムには、エレベーターの昇降路の天井又は上部の構造物に設置され、最下部に向けてレーザー光を照射する基準レーザー装置と、昇降路内の水平方向の寸法を計測する平面計測装置を有する移動計測装置と、昇降路の天井又は上部の構造物に設置され、移動計測装置を昇降させる移動装置と、を有し、移動計測装置は、基準レーザー装置から照射されるレーザー光を検出する基準レーザー検出装置と、自身の姿勢を検出する姿勢検出装置と、を有することが記載されている。
【0003】
基準レーザー装置から照射されるレーザー光を検出する基準レーザー検出装置により、移動計測装置の昇降路内における三次元座標(位置)を把握している。基準レーザー装置と移動計測装置との間の距離が大きい場合には、レーザー光がその距離の大きさに伴い拡がってしまうので、ビームコンプレッサ等を基準レーザー検出装置の上部に設置することにより、拡がったレーザー光を収束させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移動計測装置は、移動装置として用いられる巻上装置の紐により懸架され、巻上装置により紐を巻き上げる、または、送出することにより昇降路内を上下に昇降移動する。そのため、紐により懸架された移動計測装置が揺れると計測装置による計測精度が悪化するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様による形状計測システムは、所定の方向にビーム光を出射する基準光源部と、前記ビーム光のビーム光軸に対して垂直な面内において、計測対象までの距離を計測する距離計測部と、前記距離計測部に設けられ、前記ビーム光を受光して前記ビーム光軸に対する前記距離計測部の相対位置情報を検出する位置検出部と、前記距離計測部および前記位置検出部を、一体で前記ビーム光軸に沿って移動させる移動機構と、前記距離計測部で計測した距離情報と前記位置検出部で検出した前記相対位置情報とに基づいて、前記計測対象の3次元形状を算出する演算部と、を備え、前記位置検出部は、前記基準光源部のビーム光が入射する検出光学系と、前記検出光学系の焦点面よりも前記検出光学系に近い位置に配置され、前記検出光学系を介して前記基準光源部のビーム光を受光し、受光位置を前記相対位置情報として出力する位置検出センサとを備える。
本発明の第2の態様による形状計測方法は、上記態様の形状計測システムによる形状計測方法であって、前記補正データに対応付けられた距離の範囲内に1以上の停止位置を設定して、設定した停止位置の各々に前記距離計測部および前記位置検出部を停止させ、前記基準光源部を前記ビーム光軸に対して垂直な方向に所定量だけ移動させ、前記所定量の移動の前後における前記受光位置の変化量と前記所定量とに基づいて前記補正データを校正し、前記補正データに代えて校正後の補正データにより前記受光位置を補正して前記ビーム入射位置を算出し、算出したビーム入射位置に基づいて前記3次元形状を算出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振動等が発生した場合でも高精度な形状計測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明に係る形状計測システムの一実施の形態を示す図である。
【
図2】
図2は、位置計測部の要部を示す模式図である。
【
図3】
図3は、検出光学系の構成の他の例を示す図である。
【
図4】
図4は、基準光源部の概要を示す模式図である。
【
図5】
図5は、ビーム光軸に対する位置ずれを説明する図である。
【
図6】
図6は、形状計測システムの機能ブロック図の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、入射位置と受光位置との関係を説明する図である。
【
図8】
図8は、演算部における演算処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、校正処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。そのため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0010】
図1は本発明に係る形状計測システムの一実施の形態を示す図であり、エレベーター昇降路の3次元形状計測を行う形状計測システム1の概略構成を示す模式図である。エレベーター新設の際には、まず始めにエレベーター据付工事全行程における基準位置を決定する作業を行う。そのためには、エレベーター昇降路100の形状計測が必要となり、形状計測システム1を使用してエレベーター昇降路100の3次元形状計測を行う。形状計測システム1は、基準光源部2と、距離計測部3と、位置検出部4と、移動機構5と、データ処理部6と、通信機7とを備える。
【0011】
エレベーター昇降路100の形状計測を行う距離計測部3には、レーザー変位計等の測距センサ31が内蔵され、昇降路内壁101までの距離を計測する。測距センサ31は回転ステージ32の上に載っている。回転ステージ32は、回転ステージ32の回転軸が位置検出部4に設けられた検出光学系42の光軸と一致するように設定されている。回転ステージ32が1回転することで、測距センサ31は、昇降路内壁101における、鉛直方向に垂直な面8と交差する位置の360度全域に亘る形状を計測することができる。距離計測部3の計測データは、後述する位置検出部4に設けられた通信機44から、エレベーター昇降路100内に配置された通信機7を介して昇降路外に設けられたデータ処理部6へ送られる。
【0012】
距離計測部3は、移動機構5によってエレベーター昇降路100の鉛直方向に移動させることができる。移動機構5は、エレベーター昇降路100の上部に固定されるウインチ51と、ウインチ51により巻き上げおよび送り出しされるロープ52とを備えている。エレベーター昇降路100の計測作業はエレベーター新設前に行われるので、エレベーター昇降路100内には乗りかごレール等の構造物が一切取り付けられていない。そのため、エレベーター昇降路100の上部にウインチ51を設置し、ロープ52をウインチ51により巻き上げおよび送り出すことによって、距離計測部3を上下に昇降移動させる。
【0013】
距離計測部3の下部には位置検出部4が設けられていて、移動機構5により距離計測部3を昇降移動させると、位置検出部4も距離計測部3と一体で昇降移動する。エレベーター昇降路100の下部には基準光源部2が配置されている。基準光源部2は、設置位置がウインチ51の鉛直方向の真下となるように設置されている。基準光源部2は、ビーム光200を鉛直方向のウインチ51に向けて出射する。基準光源部2の詳細は後述する。
【0014】
位置検出部4は、昇降移動する距離計測部3の相対位置データを測定する装置である。位置検出部4は、位置検出センサ41、検出光学系42、傾斜角センサ43および通信機44を備えている。ウインチ51の真下に配置された基準光源部2のビーム光200は、基準光源部2から鉛直上方に出射され、位置検出部4の検出光学系42に入射する。検出光学系42で集光されたビーム光200は、位置検出センサ41によって受光される。位置検出センサ41には、例えば、PSD(Position Sensitive Detector)等が用いられる。傾斜角センサ43は、距離計測部3と一体に設けられた位置検出部4の傾き、すなわち、距離計測部3の傾きを計測するセンサである。
【0015】
基準光源部2は、出射直後のビーム径がω0のビーム光200を出射する。ビーム光200は、出射直後にビーム径が最も狭まり、その後、回折の影響でビーム径が拡がっていく。
図1では、基準光源部2と検出光学系42との鉛直方向距離をHとしたとき、基準光源部2から距離Hだけ離れた位置でのビーム径をωとする。一点鎖線で示すライン210は、ビーム径ω0のビームスポットの中心とビーム径ωのビームスポットの中心とを結ぶラインである。以下では、ライン210のことを、ビーム光200のビーム光軸210と称することにする。ロープ52より吊り下げられた距離計測部3および位置検出部4が静止状態にある場合には、ビーム光軸210と検出光学系42の光軸とが一致する。
【0016】
通信機44からは、位置検出センサ41および傾斜角センサ43による相対位置データと距離計測部3による計測データとが送信される。通信機44から送信された相対位置データおよび計測データは、エレベーター昇降路100内に配置された通信機7を介して昇降路外に設けられたデータ処理部6へ送られる。データ処理部6は、例えばパーソナルコンピューターのような計算機で構成される。データ処理部6は、位置検出部4からの相対位置データに基づいて計測データを処理し、エレベーター昇降路100の3次元形状計測データに変換する。なお、
図1に示す例ではデータを無線通信によりデータ処理部6へ送信しているが、有線通信により送信するような構成であってもよい。
【0017】
図2は、
図1に示す位置検出部4の要部を示す模式図である。位置検出部4に設けられた位置検出センサ41および検出光学系42は、鏡筒45に固定されて一体化される。検出光学系42は、2枚の球面レンズ420を備えている。検出光学系42に入射したビーム光200は、2枚の球面レンズ420で集光され、位置検出センサ41により受光される。符号46で示す面は、焦点距離fを有する検出光学系42の焦点面である。位置検出センサ41は、検出光学系42の焦点面46よりも検出光学系42に近い位置に配置される。すなわち、検出光学系42から位置検出センサ41までの距離は、検出光学系42の焦点距離fよりも小さく設定されている。なお、球面レンズ420は3枚以上設けてもよい。
【0018】
図1において説明したように、出射直後のビーム径が最も狭まるときのビーム径がω0であるビーム光200は、回折の影響により、基準光源部2から距離Hだけ鉛直方向に離れた検出光学系42の位置でのビーム径がω(>ω0)に拡がる。ビーム光200の波長をλとすると、距離Hにおけるビーム光200のビーム径ωは次式(1)で表される。
ω=H×tan(λ/πω0) …(1)
【0019】
検出光学系42の開口直径をDとすると、開口直径Dは入射するビーム光200のビーム径ωよりも大きい必要がある。そのため、検出光学系42の開口直径Dに必要となる条件式は次式(2)で表される。
D>H×tan(λ/πω0) …(2)
例えば、ビーム光200に一般的な赤色レーザー光(λ=650nm, ω0=0.5mm)を使用する場合、式(2)は次式(3)のように表される。ただし、開口直径Dはmmで表した時の値で、距離Hはmで表した時の値である。
D(mm)>H(m)×0.4 …(3)
【0020】
式(2)または(3)の条件は、距離計測部3および位置検出部4を、エレベーター昇降路100を鉛直方向の下端から上端まで移動機構5により移動させた場合に、いずれの高さにおいても成立する必要がある。そのため、上端における距離HをHmaxと表した場合、開口直径Dは、式(2)または(3)においてHをHmaxで置き換えた式を満足する必要がある。本実施の形態では、検出光学系42の開口直径Dは、距離Hに対して式(2)または(3)を満足するように設定されている。その結果、ビーム光200に回折の影響による拡がりがあっても、距離計測部3および位置検出部4の昇降範囲の全てにおいて、ビーム光200の全体が検出光学系42に確実に入射して位置検出センサ41により受光されることになる。
【0021】
なお、赤色レーザー光(λ=650nm, ω0=0.5mm)よりも波長の短いビーム光200を用いる場合、式(2)のtan(λ/πω0)の値は、式(3)における0.4よりも小さくなる。すなわち、波長λ≦650nmのビーム光200を用いる場合には、言い換えれば、λ=650nmよりも波長の長いビーム光200を用いない限り、式(3)の条件を満足していれば、ビーム光200の全体が検出光学系42に確実に入射すると言える。
【0022】
図3は、検出光学系42の構成の他の例を示す図である。
図3に示す例では、検出光学系42の構成を1枚の非球面レンズ421とすることで、レンズ周辺部で発生する収差の影響を低減し、位置検出精度の向上を図っている。
図2の場合と同様に、位置検出センサ41は、検出光学系42の焦点面46よりも検出光学系42に近い位置に配置される。なお、非球面レンズ421を2枚以上用いる構成でもよい。
【0023】
図4は、基準光源部2の概要を示す模式図である。
図4のZ軸方向が鉛直方向で、X軸およびY軸が水平面内の座標軸である。基準光源部2の発光部21からビーム光200が出射される。出射直後のビーム光200のビームスポット形状(ビーム断面形状)は楕円形をしているが、ビームシェイパー光学系22によって略円形のビームスポット形状に補正される。さらに、ビーム光200は、コリメート光学系23によって略平行光にコリメートされる。位置検出センサ41で受光するビームスポット形状が楕円にゆがんでいると位置検出精度が悪化するが、ビームシェイパー光学系22によって略円形に補正することで、位置検出精度が向上する。加えて、コリメート光学系23によりビーム光200を略平行光にコリメートすることで、ビーム光200の幾何光学的な広がりが抑制され、位置検出センサ41の受光面におけるビームスポットの照射域の拡大が抑えられる。
【0024】
さらに、基準光源部2は、ビーム光軸210の傾きを調整する傾き調整部24と、ビーム光軸210の水平方向位置を調整する位置調整部25とを備えている。傾き調整部24は、自身の傾きを変更することによって、ビーム光200の出射方向を鉛直上向き(Z軸正方向)に調整することができる。
図4に示す例では、支持部材240の底面に設けられた複数のねじ241を回転させることで、ビーム光軸210の傾きを調整する。他の例としては、ジンバル方式の構成が考えられ、例えば、電動駆動により光軸の傾きを自動制御することにより、外乱等によって基準光源部2が振動するような場合でも、ビーム光200を鉛直方向に照射することが可能となる。
【0025】
傾き調整部24は、位置調整部25のXYステージ250上に載置されている。XYステージ250は、ベース251上をX方向およびY方向に移動可能に構成されている。XYステージ250の駆動方法は、電動駆動または手動駆動のいずれでもよい。XYステージ250の移動により、ビーム光軸210を鉛直方向に維持したまま、ビーム光軸210のXY位置を変更することができる。
【0026】
エレベーター昇降路100内の形状計測作業では、昇降路延在方向の長距離に亘って高精度な形状計測を要求される。例えば、位置検出部4を設けずに距離計測部3のみで形状計測を行った場合、ロープ52に吊り下げられた距離計測部3が揺れた際に計測誤差が増えて、計測精度が悪化するという問題がある。高精度計測の実現には、計測データにおける、距離計測部3が揺れた際の距離計測部3の静止状態位置からの位置ずれの影響を、補正する必要がある。そのため、本実施の形態の形状計測システム1では、ビーム光軸210に対する距離計測部3の相対位置を検出するための位置検出部4を備えている。位置検出部4でビーム光軸210に対する自身の相対位置を検出し、その相対位置情報に基づいてデータ処理部6で計測データの補正処理を行う。
【0027】
図5は、揺れによって、距離計測部3および位置検出部4がビーム光軸210から位置ずれした場合を示す図である。なお、
図5では、分かりやすいように揺れの大きさを実際よりも大きく描写しているので、ビーム光軸210が検出光学系42から外れてしまっているが、実際には揺れが小さい状態で形状計測動作が行われる。距離計測部3および位置検出部4が揺れた際には、
図5に示すように、距離計測部3および位置検出部4の全体が水平方向に位置ずれするだけでなく、距離計測部3および位置検出部4の全体の傾きも生じる。
図5のd1は、ビーム光軸210に対する検出光学系42の光軸位置の水平方向への位置ずれ量、すなわち、検出光学系42におけるビーム光200の入射位置を表している。
【0028】
前述したように、回転ステージ32の回転軸は、位置検出部4に設けられた検出光学系42の光軸と一致するように設定されている。そのため、測距センサ31は鉛直方向に垂直な面8内において、昇降路内壁101までの距離を検出する。すなわち、距離計測部3は、回転ステージ32の回転軸を基準とした距離、すなわち、検出光学系42の光軸を基準とした距離を計測する。
図5に示すように距離計測部3および位置検出部4がチルトずれおよびシフトずれしていると、計測すべき距離が正しく計測されないことになる。そのため、計測データにおけるチルトずれおよびシフトずれの影響を、位置検出部4が検出した相対位置データに基づいて補正処理することにより、正確な3次元形状計測を行うようにしている。
【0029】
ところで、位置検出センサ41の受光面におけるビーム光200のビームスポットはある程度の拡がりを有するが、以下では、ビーム光軸210に対応する位置を受光位置とする。そして、受光面におけるビームスポットの移動量を、受光面におけるビーム光軸210の移動量すなわち受光位置の移動量で表すことにする。また、
図1に示すように位置検出部4がビーム光軸210上に静止している状態では、受光位置は受光面の原点に位置する。
【0030】
受光面における受光位置は、
図1に示す静止状態で位置検出部4が傾いただけでも変化し、位置検出部4が傾かずに水平方向に位置ずれしただけでも変化する。
図5に示す場合、受光位置の変化には、位置検出部4の傾きに起因する位置変化と、位置検出部4の水平方向の位置ずれに起因する位置変化とが含まれている。以下では、位置検出部4の傾きをチルトずれと称し、位置検出部4の水平方向の位置ずれをシフトずれと称することにする。
【0031】
位置検出部4のチルトずれおよびシフトずれと受光面における受光位置の変化量との関係は、チルトずれとシフトずれとでは異なっている。チルトずれに伴う受光位置の変化量は、位置検出センサ41が検出光学系42に近ければ近いほど小さくなる。一方、シフトずれに伴う受光位置の変化量は、位置検出センサ41が焦点面46(
図2参照)付近に配置されると小さくなり、焦点面46から検出光学系42側またはその反対側に遠ざかるにつれて大きくなる。
【0032】
位置検出部4では、位置検出部4の傾きすなわちチルトずれは傾斜角センサ43で検出し、位置検出部4のシフトずれは位置検出センサ41により検出する。位置検出センサ41の検出信号は、検出光学系42の光軸に対するビーム光軸210の位置ずれに対して線形的な応答を示すことが好ましい。しかし、受光面における受光位置の変化が小さいと、ビーム光軸210の位置ずれに対する検出信号の線形性が悪化し、ビーム光軸210の位置ずれを正しく検知するのが難しくなる。また、位置検出センサ41が検出光学系42の焦点面46より遠い位置に配置されると、チルトずれによるビームスポットの移動量が増加してビームスポットが位置検出センサ41から外れ、正常な信号検出が困難となる。
【0033】
よって、本実施の形態では、
図2,3に示すように、位置検出センサ41を、検出光学系42の焦点面46よりも検出光学系42に近い位置に配置するようにした。それにより、受光位置変化におけるシフトずれの寄与が大きくなるとともにチルトずれの寄与が小さくなり、検出信号の線形性の改善が図れる。また、受光位置変化におけるチルトずれの寄与が小さくなるので、チルトずれの影響でビームスポットが受光面から外れてしまうのを防止できる。その結果、位置検出部4のチルトずれおよびシフトずれに対するロバスト性が高められ、位置検出精度の向上を図ることができる。
【0034】
なお、位置検出センサ41を検出光学系42側に近づけすぎると、位置検出センサ41上でのスポットサイズが大きくなる為に、距離計測部3および位置検出部4が揺れた際にビームスポットの一部が位置検出センサ12から外れ、正常な信号検出が困難となる。従って、位置検出センサ41には検出光学系42と焦点面46との間に最も好適な位置が存在することとなる。光学シミュレーションによれば、位置検出センサ41を、検出光学系42の焦点距離fの10%~15%程度の距離だけ、焦点面46から検出光学系42へ近づけて配置することで、スポットサイズの増大が適度に抑えられ、良好な信号検出を行えることが判明した。例えば、検出光学系42の焦点距離が83mmである場合、焦点面46から位置検出センサ41までの距離は8.3mm~12.5mmとなる。
【0035】
図6は、形状計測システム1の機能ブロック図の一例を示す図である。前述したように、位置検出部4に設けられた通信機44は、距離計測部3で取得した計測データと、位置検出部で取得した相対位置データとを計測信号として通信機7へ送信する。計測信号は、通信機7を経由してデータ処理部6へ送信される。相対位置データには、位置検出センサ41の受光位置データと傾斜角センサ43の傾斜角データとが含まれる。このように通信機7を介して計測信号をデータ処理部6へ送信する構成とすることで、通信機44に電力消費の少ない短距離通信を採用することができる。もちろん、通信機7を介さず、計測信号を通信機44からデータ処理部6へと直接送信するようにしても構わない。
【0036】
移動機構5のウインチ51は、移動量Hmを検出する検出するロータリエンコーダ等を備えている。移動機構5で検出された移動量Hmはデータ処理部6へ送られる。なお、移動機構5で移動量Hmを検出する代わりに、位置検出部4にレーザー測距計等を設けて位置検出部4と昇降路底部との距離を測距する構成としてもよい。データ処理部6は、CPU等で構成される演算部61と、RAM,ROM等のメモリやハードディスクやCD-ROM等の記録媒体で構成される記憶部62とを備える。演算部61は、記憶部62に格納されているデータ処理プログラムを実行することにより、計測データを対象物の3次元形状計測データに変換する処理等を行う。
【0037】
ところで、位置検出センサ41に用いられるPSDは、受光したビームスポットの光量の重心位置を求めることができるセンサである。この重心位置が受光位置に相当する。データ処理部6の演算部61では、得られた受光位置と傾斜角センサ43で検出された傾斜角とに基づいて距離計測部3の位置(XY位置および傾き)を求め、この位置に基づいて計測データを補正して正確な3次元形状計測用のデータとする。
【0038】
図7は、検出光学系42におけるビーム光200の入射位置と、受光面における受光位置との関係を説明する図である。ここでは、入射位置に対して受光位置が線形的な応答すると仮定し、入射位置と受光位置との相関関係が直線で表せる場合を例に説明する。なお、相関関係のことを補正係数ラインと呼ぶことにする。
図7において、横軸の入射位置は検出光学系42の光軸からの距離を表し、縦軸の受光位置は受光面の原点位置からの距離を表す。
【0039】
補正係数ラインL1は、検出光学系42の基準光源部2からの距離がH1である場合の補正係数ラインを示す。受光位置がd0である場合には入射位置はd1となる。この入射位置d1は、
図2に示した、ビーム光軸210に対する検出光学系42の光軸の位置ずれ量である。補正係数ラインL1が直線で表せる場合、すなわち、線形的な応答の場合には、補正係数ラインL1と横軸との角度をβとすれば、入射位置d1はd1=d0/tanβで算出される。1/tanβが、受光位置d0を入射位置d1に補正するための補正係数である。
【0040】
図1に示したように、ビーム光200は、回折の影響により、基準光源部2から距離Hにおいてはビーム径ωの拡がりを有している。このようにビーム光200に拡がりがある場合、受光面におけるビームスポットの光量の重心位置は、ビーム径ωの大きさによって異なる。すなわち、検出光学系42におけるビーム光200の入射位置が同じであっても、距離Hに応じて受光面におけるビームスポットの光量の重心位置が異なる。
図7において、補正係数ラインL2は距離H2の場合を示し、補正係数ラインL3は距離H3の場合を示す。ここで、H3>H2>H1である。すなわち、位置検出センサ41で検出される受光位置が同じd0であっても、補正係数ラインを用いて算出される入射位置は、距離H1の場合にはd1となり、距離H2の場合にはd2となり、距離H3の場合にはd3となる。
【0041】
記憶部62には、距離Hに応じた複数の補正係数ラインに関する補正係数データが予め記憶されている。演算部61は、移動機構5から入力された移動量Hmに基づいて、距離Hを算出する。演算部61は、複数の補正係数ラインから算出した距離Hに応じた補正数ラインを選択し、選択した補正係数ラインと検出した受光位置とに基づいて入射位置を求める。
図7に示す3種類の補正係数ラインL1~L3を用いて距離Hの下端Hminから上端Hmaxまで計測する場合、例えば、Hmin~{Hmin+(Hmax-Hmin)/3}では補正係数ラインL1を使用し、{Hmin+(Hmax-Hmin)/3}~{Hmin+2(Hmax-Hmin)/3}では補正係数ラインL2を使用し、{Hmin+2(Hmax-Hmin)/3}~Hmaxでは補正係数ラインL3を使用する。
【0042】
図8は、演算部61における演算処理手順、すなわち、距離計測部3および位置検出部4から計測データおよび相対位置データを取得し3次元形状計測用のデータを求めるまでの処理手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、距離Hの大きさに応じた2種類の補正係数ラインL1,L2を用いる場合を例に説明する。具体的には、可能な最大距離Hmaxに関して距離Hが0<H≦Hmax/2を満たす場合には補正係数ラインL1を使用し、Hmax/2<H≦Hmaxである場合には補正係数ラインL2を使用する。
【0043】
ステップS101では、演算部61はデータを取得する。ここで取得するデータは、距離計測部3で計測された計測データ、位置検出部4で検出された相対位置データおよび移動機構5による移動量Hmである。ステップS102では、傾斜角センサ43で検出した傾斜角に基づいて、位置検出センサ41により検出された受光位置からチルトずれ寄与分を除去し、シフトずれのみに依存する受光位置の原点からのずれ、すなわち受光位置を算出する。ステップS103では、移動量Hmから距離Hを算出する。
【0044】
ステップS104では、算出された距離HがHmax/2以下であるか否かを判定する。ステップS104でH≦Hmax/2と判定された場合には、ステップS105へ進んで使用する補正係数ラインとして補正係数ラインL1を選択する。ステップS105の処理が終了したらステップS107へ進む。一方、ステップS104でH>Hmax/2と判定された場合には、ステップS106へ進んで使用する補正係数ラインとして補正係数ラインL2を選択する。ステップS106の処理が終了したらステップS107へ進む。
【0045】
ステップS107では、選択した補正係数ラインに算出した受光位置を適用して、入射位置を算出する。ステップS108では、算出された入射位置および傾斜角センサ43で検出された傾斜角に基づいて、距離計測部3で取得された計測データを補正する。その結果、エレベーター昇降路内の形状をより正確に表す補正後計測データが、3次元形状計測用のデータとして得られる。
【0046】
なお、
図8のフローチャートでは、補正係数ラインが2種類の場合について説明したが、エレベーター昇降路100の高さやビーム光200の拡がりに応じて、使用する補正係数ラインの数を設定すればよい。補正係数ラインが1種類の場合や3種類以上の場合も、2種類の場合と同様に考えればよい。
【0047】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0048】
(C1)
図1および2に示すように、形状計測システム1は、所定の方向にビーム光200を出射する基準光源部2と、ビーム光200のビーム光軸210に対して垂直な面8内において、計測対象までの距離を計測する距離計測部3と、距離計測部3に設けられ、ビーム光200を受光してビーム光軸210に対する距離計測部3の相対位置情報を検出する位置検出部4と、距離計測部3および位置検出部4を、一体でビーム光軸210に沿って移動させる移動機構5と、距離計測部3で計測した距離情報と位置検出部4で検出した相対位置情報とに基づいて、計測対象であるエレベーター昇降路100の3次元形状を算出する演算部61と、を備える。そして、位置検出部4は、基準光源部2のビーム光200が入射する検出光学系42と、検出光学系42の焦点面46よりも検出光学系42に近い位置に配置され、検出光学系42を介して基準光源部2のビーム光200を受光し、受光位置を相対位置情報として出力する位置検出センサ41とを備える。
【0049】
位置検出センサ41を、検出光学系42の焦点面46よりも検出光学系42に近い位置に配置にしたことで、受光位置変化におけるシフトずれの寄与が大きくなるとともにチルトずれの寄与が小さくなり、検出信号の線形性の改善が図れる。また、受光位置変化におけるチルトずれの寄与が小さくなるので、チルトずれの影響でビームスポットが受光面から外れてしまうのを防止できる。その結果、位置検出部4のチルトずれおよびシフトずれに対するロバスト性が高められ、位置検出精度の向上を図ることができる。
【0050】
(C2)さらに、位置検出センサ41と焦点面46との距離を、検出光学系42の焦点距離fの10%~15%に設定することで、位置検出センサ41の受光面におけるスポットサイズの増大が適度に抑えられ、ビーム光200の良好な検出を行うことができる。
【0051】
(C3)また、形状計測システム1は、
図1に示す基準光源部2と検出光学系42との間の距離をH、ビーム光200の波長をλ、ビーム光200のビーム径が最も狭まる所のビーム径をω0、検出光学系13の開口直径をDとしたときに、条件式「D>H×tan(λ/πω0)」が満足するのが好ましい。このように構成することにより、回折の影響で長距離伝搬時にビーム光200のビーム径ωが拡がる状況においても、ビーム光200の全体を検出光学系42に確実に入射させることができる。
【0052】
(C4)特に、条件式「D>H×0.4」を満足させることで、一般的な赤色レーザー光(λ=650nm, ω0=0.5mm)や、それよりも波長の短いビーム光200に対して、ビーム光200の全体を検出光学系42に確実に入射させることができる。すなわち、広い波長範囲のビーム光200を用いることができ、汎用性に優れている。
【0053】
(C5)また、
図2,3に示すように、検出光学系42は、2枚以上の球面レンズ420、または1枚以上の非球面レンズ421で構成するのが好ましい。このような構成とすることで、周辺部で発生する収差の影響を低減し、長距離に渡って形状計測を行う際の位置検出精度の向上を図ることができる。
【0054】
(C6)また、
図4に示すように、基準光源部2にコリメート光学系23を設けて、略コリメートされたビーム光200を出射する構成とするのが好ましい。それにより、ビーム光200の幾何光学的な広がりを抑制し、ビーム光200の照射域の拡大を抑えることができる。
【0055】
(C7)さらにまた、
図4に示すようにビームシェイパー光学系22を設けるのが好ましい。ビームシェイパー光学系22によってビーム光200の断面形状すなわちビームスポット形状が略円形に補正され、位置検出精度の向上を図ることができる。
【0056】
(C8)また、
図4に示すように、基準光源部2を移動して、基準光源部2から出射されるビーム光の方向、および、ビーム光軸210に垂直な面における基準光源部2の位置を変更する変更部としての傾き調整部24および位置調整部25をさらに備えるのが好ましい。変更部を設けることで、基準光源部2の姿勢および位置が適切な状態となるように調整することが容易にできる。
【0057】
(C9)
図1に示すように、位置検出部4は、距離計測部3の傾きを検出する傾斜角センサ43をさらに備え、傾斜角センサ43で検出した傾きと位置検出センサ41の受光位置とを相対位置情報として出力するのが好ましい。傾斜角センサ43で検出した傾きを考慮することで、より高精度に形状計測を行うことができる。
【0058】
(変形例1)
記憶部62に記憶されている複数の補正係数ラインのデータは、同一構成の位置検出部4に共通したデータである。しかし、位置検出部4の機台差等により入射位置と受光位置との相関に微妙な差が生じる場合や、補正係数ラインが適用される距離範囲の上端と下端とで微妙に異なる場合がある。より正確な3次元形状計測を行うためには、実際に使用する位置検出部4に対して補正係数ラインが正しく機能するかを確認し、正しく機能していない場合には校正処理を行う必要がある。変形例1では、補正係数ラインの校正処理について説明する。
【0059】
図9は、校正処理の一例を説明するためのフローチャートである。補正係数ラインの校正処理は、距離計測部3および位置検出部4を移動機構5で昇降移動させ、補正係数ラインが適用される距離範囲の複数の距離Hについて行うのが好ましく、少なくとも、距離Hの範囲の上端付近および下端付近で行うのが好ましい。校正処理は複数の距離Hのいずれの場合も同様の処理であり、
図9のフローチャートは任意の一か所の距離Hにおける校正処理を示したものである。校正処理は、データ処理部6の演算部61において行われる。以下では、補正係数ラインとして、
図7の補正係数ラインL1(補正係数=1/tanβ)を用いると仮定して説明する。
【0060】
ステップS201では、校正処理を行うべき所定距離H0に、距離計測部3および位置検出部4を移動する。距離計測部3および位置検出部4が揺れたりせずに静止状態にあれば、位置検出センサ41で検出されるビームスポットの受光位置は、受光面の原点に位置する。ステップS202では、
図4に示した位置調整部25を駆動して、基準光源部2を水平方向に、例えばX方向に、一定量dだけ移動させる。ステップS203では、位置検出センサ41の受光位置d0を取得する。ステップS204では、補正係数ラインL1を用いて受光位置から入射位置d1を算出する。
【0061】
ステップS205では、算出された入射位置d1の値が、ステップS202における基準光源部2の移動量dと等しいか否かを判定する。ステップS205でd=d1と判定された場合(YES)には、補正係数ラインL1は適正なので、補正係数ラインL1を校正せず校正処理を終了する。一方、ステップS205でd≠d1と判定された場合(NO)には、ステップS206において、d0に対する応答がdとなるように補正係数ラインL1を校正する。校正後の補正係数ラインL11は記憶部62に記憶され、計測データから3次元形状計測用のデータを求める際の補正係数ラインとして用いられる。例えば、補正係数ラインL1が
図7に示すような傾きβの直線である場合には、補正係数は1/tanβ(=d1/d0)となる。校正後の補正係数ラインL11の補正係数(1/tanα)は、受光位置d0および移動量dを用いて、d/d0=(1/tanα)より与えられる。
【0062】
なお、複数の補正係数ラインを用いる場合には、各補正係数ラインのそれぞれについて校正処理を行う。このように、補正係数ラインの校正を行うことにより、3次元形状計測をより高精度に行うことがでる。
【0063】
上述した変形例1によれば、以下の作用効果を奏する。
(C10)
図6~8に示すように、基準光源部2と検出光学系42との間のビーム光軸方向距離すなわち鉛直方向距離Hに応じた複数種類の補正データ(すなわち、補正データ係数ラインL1、L2)が記憶される記憶部62と、ビーム光軸方向距離Hを計測するビーム光軸方向距離計測部である移動機構5と、移動機構5で計測される距離に基づいて複数種類の補正データのいずれか一つ(例えば、補正データ係数ラインL1)を選択し、選択した補正データにより受光位置d0を補正して検出光学系42のビーム入射位置d1を算出する補正部である演算部61と、をさらに備え、演算部61は、算出されるビーム入射位置d1に基づいて3次元形状を算出する。鉛直方向距離Hに応じた複数種類の補正データを用意し、移動機構5で計測される距離に基づいて複数種類の補正データのいずれか一つ用いることで、補正データを用いた補正をより精度良く行うことができる。その結果、3次元形状の算出精度の向上を図ることができる。
【0064】
(C11)
図9に示すように、補正データに対応付けられた距離の範囲内に1以上の停止位置を設定して、設定した停止位置の各々に距離計測部3および位置検出部4を停止させ(ステップS201)、基準光源部2をビーム光軸210に対して垂直な方向に所定量dだけ移動させ(ステップS202)、所定量dの移動の前後における受光位置の変化量(受光位置d0)と所定量dとに基づいて補正データを校正する(ステップS206)のが好ましい。そして、データ処理部6の演算部61は、補正データに代えて校正後の補正データにより受光位置を補正してビーム入射位置を算出し、算出したビーム入射位置に基づいて3次元形状を算出する。このような補正データの校正を行うことにより、実際の測定状況に応じたより高精度な形状計測を行うことができる。
【0065】
(変形例2)
図10は、変形例2における形状計測システム1の概略構成を示す模式図である。エレベーター昇降路100内には、2つの基準光源部2a,2bが水平方向に所定距離だけ離間して設けられている。位置検出部4には、位置検出センサ41aおよび検出光学系42aを含む第1の検出部4aと、位置検出センサ41bおよび検出光学系42bを含む第2の検出部4bとが設けられている。その他の構成は、
図1に示した構成と同様であり説明を省略する。
【0066】
第1および第2の検出部4a,4bのそれぞれにおける位置検出センサ41a,41bおよび検出光学系42a,42bの構成は、
図1に示した位置検出部4における位置検出センサ41および検出光学系42の構成と同様に設定されている。例えば、位置検出センサ41a,41bは、検出光学系42a,42bの焦点面よりも検出光学系42a,42bに近い位置に配置されている。また、ビーム径ωに関する式(1)も満足するように構成されている。
【0067】
データ処理部6へは、距離計測部3による計測データと位置検出部4による相対位置データとが送られる。相対位置データには、第1および第2の検出部4a,4bの位置検出センサ41a,41bの各受光位置と傾斜角センサ43による傾斜角とが含まれる。データ処理部6は、受信した計測データおよび相対位置データに基づいて、エレベーター昇降路100の3次元形状を算出する。その際、データ処理部6は、位置検出センサ41a,41bの各受光位置に基づいて距離計測部3および位置検出部4のヨー方向の回転ずれ、すなわち、鉛直方向に関する回転ずれを算出し、算出したヨー方向の回転ずれも考慮して3次元形状を算出する。
【0068】
図11は、ヨー方向の回転ずれを説明する図である。X1-Y1座標は第1の検出部4aの受光位置を表す座標系で、X2-Y2座標は第1の検出部4aの受光位置に関する座標系である。L10は、位置検出センサ41aと位置検出センサ41bとの間の水平方向の距離である。
図11では、位置検出センサ41aおよび位置検出センサ41bはX方向に離間している。
図10の基準光源部2a,2bもX方向に距離L10だけ離間して設けられている。
【0069】
位置検出部4にヨー方向回転ずれが無い場合、位置検出センサ41aの受光位置は丸印P1aで表され、位置検出センサ41bの受光位置は丸印P1bで表される。受光位置P1aはX1-Y1座標の原点にあり、受光位置P1bはX2-Y2座標の原点にある。位置検出部4にヨー方向回転ずれがある場合には、例えば、位置検出センサ41aの受光位置は四角印P2aのようになり、位置検出センサ41bの受光位置は四角印P2bのようになる。
【0070】
距離計測部3は、例えば、X1,X2軸正方向を計測開始の基準として回転ステージ32を360度回転させ、水平な面8における360度全周の距離を計測する。受光位置P1a,P1bが検出される場合にはヨー方向回転ずれが無いので、X1,X2軸正方向の距離データが基準位置の距離データとして取得される。一方、受光位置P2a,P2bのように距離計測部3および位置検出部4に角度θのヨー方向回転ずれがある場合、計測開始時の距離データは、X1,X2軸に対して角度θだけずれた方向の距離データとなる。
【0071】
データ処理部6の演算部61は、受光位置P2a,P2bの座標データに基づいて角度θを算出する。そして、演算部61は、360度全周の距離データの内、角度(360-θ)において計測された距離データを基準位置の距離データとする。このような補正を行って基準位置の距離データを鉛直方向に沿って一致させることで、位置検出精度の向上を図ることが可能となり、高精度な3次元形状計測を行うことができる。
【0072】
上述した変形例2によれば、以下の作用効果を奏する。
(C12)
図10に示すように、基準光源部、位置検出センサおよび検出光学系はそれぞれ2つずつ設けられ、位置検出部4は、第1の検出部4aと第2の検出部4bとを備える。第1の検出部4aは、第1の基準光源部2aのビーム光軸上に配置され、第1の基準光源部2aのビーム光が入射する第1の検出光学系42a、および、第1の検出光学系42aの焦点面よりも第1の検出光学系42aに近い位置に配置され、第1の検出光学系42aを介して第1の基準光源部2aのビーム光200を受光する第1の位置検出センサ41aを含む。第2の検出部4bは、第2の基準光源部2bのビーム光軸上に配置され、第2の基準光源部2bのビーム光200が入射する第2の検出光学系42b、および、第2の検出光学系42bの焦点面よりも第2の検出光学系42bに近い位置に配置され、第2の検出光学系42aを介して第2の基準光源部2bのビーム光200を受光する第2の位置検出センサ41bを含む。そして、演算部61は、距離計測部3で計測した距離情報と第1および第2の検出部4a,4bの各々で検出した相対位置情報に基づいて、計測対象の3次元形状を算出する。
【0073】
第1および第2の検出部4a,4bを備えたことにより、距離計測部3および位置検出部4にヨー方向回転ずれが生じた場合でも、第1および第2の検出部4a,4bの各々で検出した相対位置情報に基づいてヨー方向回転ずれの影響を補正することができ、3次元形状計測の精度向上を図ることができる。
【0074】
なお、以上の説明において、構成における機能部、例えば、データ処理部6等は、電気回路、電子回路、論理回路、およびそれらを内蔵した集積回路のほか、マイコン、プロセッサ、及びこれらに類する演算装置と、ROM、RAM、フラッシュメモリ、ハードディスク、SSD、メモリカード、光ディスク及びこれらに類する記憶装置と、バス、ネットワーク及びこれらに類する通信装置、及び周辺の諸装置の組み合わせによって実行されるプログラムによって実現してもよく、いずれの実現態様でも本発明は成立し得る。
【0075】
以上説明した各実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1…形状計測システム、2…基準光源部、3…距離計測部、4…位置検出部、4a…第1の検出部、4b…第2の検出部、5…移動機構、6…データ処理部、7,44…通信機、22…ビームシェイパー光学系、23…コリメート光学系、24…傾き調整部、25…位置調整部、31…測距センサ、32…回転ステージ、41,41a,41b…位置検出センサ、42,42a,42b…検出光学系、43…傾斜角センサ、46…焦点面、61…演算部、62…記憶部、100…エレベーター昇降路、200…ビーム光、210…ビーム光軸、420…球面レンズ、421…非球面レンズ