IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-駆動源制御装置、画像形成装置 図1
  • 特開-駆動源制御装置、画像形成装置 図2
  • 特開-駆動源制御装置、画像形成装置 図3
  • 特開-駆動源制御装置、画像形成装置 図4
  • 特開-駆動源制御装置、画像形成装置 図5
  • 特開-駆動源制御装置、画像形成装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186189
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】駆動源制御装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20221208BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20221208BHJP
【FI】
G03G21/00 500
H02P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094281
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】松林 和範
【テーマコード(参考)】
2H270
5H501
【Fターム(参考)】
2H270LA01
2H270LA64
2H270LA83
2H270MD10
2H270MD12
2H270MH09
2H270NE18
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC05
5H501AA19
5H501EE08
5H501GG03
5H501JJ17
5H501LL22
5H501LL37
5H501LL40
5H501LL60
(57)【要約】
【課題】スティックスリップが発生しているときと発生していないときとの両方で騒音を抑制する駆動源制御装置を提供する。
【解決手段】駆動源制御装置は、定着器109を駆動する定着モータ107を制御する。駆動源制御装置は、定着モータ107に流れる電流の電流値を検知する電流検知部123と、電流値に基づいてスティックスリップの発生を判断し、スティックスリップが発生している場合には定着モータ107の回転速度を上昇させ、スティックスリップが発生していない場合には定着モータ107の回転速度を低下させる駆動制御部102と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を駆動する駆動源を制御する駆動源制御装置であって、
前記駆動源に流れる電流の電流値を検知する電流検知手段と、
前記電流値に基づいてスティックスリップの発生を判断し、前記スティックスリップが発生している場合には前記駆動源の回転速度を上昇させ、前記スティックスリップが発生していない場合には前記駆動源の回転速度を低下させる制御手段と、を備えることを特徴とする、
駆動源制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、第1所定期間に検知した前記電流値に基づいて、前記スティックスリップの発生を判断し、前記第1所定期間よりも長い第2所定期間に検知した前記電流値に基づいて、前記駆動源の回転速度を低下させるか否かを判断することを特徴とする、
請求項1記載の駆動源制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1所定期間に、所定の電流値以下の電流値を所定回数以上検知する場合に、前記スティックスリップが発生したと判断することを特徴とする、
請求項2記載の駆動源制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1所定期間に、負側の電流値を所定回数以上検知する場合に、前記スティックスリップが発生したと判断することを特徴とする、
請求項2又は3記載の駆動源制御装置。
【請求項5】
前記第1所定期間は、前記スティックスリップの1周期よりも長く、前記駆動源のトルク変動による電流値の変動を複数回検知可能な期間であることを特徴とする、
請求項2~4のいずれか1項記載の駆動源制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第1所定期間を整数倍した前記第2所定期間に、前記所定の電流値以下の電流値を検知しない場合に、前記駆動源の回転速度を低下させることを特徴とする、
請求項2~5のいずれか1項記載の駆動源制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第2所定期間に、前記所定の電流値以下の電流値を検知しない場合に、前記駆動源の回転速度を低下させることを特徴とする、
請求項2~6のいずれか1項記載の駆動源制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第2所定期間に、負側の電流値を検知しない場合に、前記駆動源の回転速度を低下させることを特徴とする、
請求項2~7のいずれか1項記載の駆動源制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記スティックスリップが発生している場合には前記駆動源の回転速度を前記第1所定期間毎に段階的に上昇させることを特徴とする、
請求項2~8のいずれか1項記載の駆動源制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記スティックスリップが発生していない場合には前記駆動源の回転速度を前記第2所定期間毎に段階的に低下させることを特徴とする、
請求項2~9のいずれか1項記載の駆動源制御装置。
【請求項11】
前記駆動源の回転速度の設定速度を記録する記録手段をさらに備えており、
前記制御手段は、前記記録手段に記録された設定速度に基づく速度で前記駆動源を回転させることを特徴とする、
請求項1~10のいずれか1項記載の駆動源制御装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記駆動源の回転速度を上昇させる場合に前記設定速度を所定の速度だけ速い速度に変更して前記記録手段に記録された前記設定速度を更新し、前記駆動源の回転速度を上昇させる場合に前記設定速度を所定の速度だけ遅い速度に変更して前記記録手段に記録された前記設定速度を更新することを特徴とする、
請求項11記載の駆動源制御装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項記載の駆動源制御装置と、
用紙に画像を形成する負荷と、を備えており、
前記駆動源は、前記負荷を駆動することを特徴とする、
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷を駆動するモータなどの駆動源を制御する駆動源制御装置、及びこのような駆動源制御装置を備えた複写機、複合機、プリンタなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスでは、画像形成装置のような人の近くに配置されるオフィス機器のモータにより生じる騒音を不快に感じる人もいる。そのために近年、モータを備えた装置の静音化の需要が高まっている。そこで、オフィス機器には、騒音の低減技術を採用したモータが搭載されることが多くなっている。
【0003】
騒音低減のために、騒音要因の一つであるスティックスリップを回避することが望まれている。スティックスリップは、負荷側の摩擦部の表面が擦れる際に、摩擦部で負荷に接触する物体が負荷との間で滑る状態と停止する状態とを繰り返す現象である。スティックスリップが発生することで摩擦部から異音が生じる。特許文献1は、画像形成装置のスティックスリップの発生を抑制して騒音を低減する技術を開示する。この画像形成装置は、給紙モータの負荷変動を検知すると一定の速度まで給紙モータの回転速度を上げて負荷を駆動することで、スティックスリップの発生を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-64774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スティックスリップの発生を抑制するためには、まず、スティックスリップの発生を検知する必要がある。スティックスリップを機械的な検知装置により検知する場合、例えば振動検知のためのセンサが必要になり、コスト高になってしまう。また、画像形成装置のような装置本体に検知装置を追加で設ける必要があるために、装置全体のサイズが大きくなりがちである。さらに、スティックスリップの抑制のためにモータの回転速度を上げることで、スティックスリップを抑制してもモータ自体の駆動音が大きくなる。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑み、スティックスリップが発生しているときと発生していないときとの両方で騒音を抑制する駆動源制御装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の駆動源制御装置は、負荷を駆動する駆動源を制御する駆動源制御装置であって、前記駆動源に流れる電流の電流値を検知する電流検知手段と、前記電流値に基づいてスティックスリップの発生を判断し、前記スティックスリップが発生している場合には前記駆動源の回転速度を上昇させ、前記スティックスリップが発生していない場合には前記駆動源の回転速度を低下させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スティックスリップが発生しているときと発生していないときとの両方で騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像形成装置の構成図。
図2】スティックスリップ発生時の電流値の例示図。
図3】スティックスリップ発生時の電流値の例示図。
図4】スティックスリップを抑制したときの電流値の例示図。
図5】スティックスリップを抑制したときの電流値の例示図。
図6】定着モータの駆動制御処理を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0011】
(画像形成装置の構成)
図1は、本実施形態の駆動源制御装置を搭載した画像形成装置の構成図である。画像形成装置121は、駆動源制御装置として駆動制御部102を内蔵している。画像形成装置121は、用紙収納庫118、給紙部119、転写部113、及び定着器109を備える。画像形成装置121の上部には操作部122が設けられる。駆動制御部102は、制御部104、検知部105、及び記録部103を備える。制御部104はモータドライバ124を含む。検知部105は電流検知部123を含む。駆動制御部102には、定着モータ107、駆動モータ108、環境センサ106、及び本体制御部101が接続される。
【0012】
操作部122は、入力インタフェース及び出力インタフェースを有するユーザインタフェースである。入力インタフェースは、キーボタンやタッチパネルなどである。出力インタフェースは、ディスプレイやスピーカなどである。画像形成装置121は、操作部122から入力される指示に応じて動作を行う。操作部122には、各種の設定画面や画像形成装置121の状態の通知が表示される。
【0013】
用紙収納庫118は、画像が印刷される用紙を積載する。給紙部119は、用紙収納庫118に積載された用紙を一枚ずつ給送する。給紙部119は、用紙を用紙収納庫118から転写部113へ搬送する。転写部113は、トナー像が形成されるドラム116を備える。転写部113は、給紙部119により搬送されてきた用紙に、ドラム116が担持するトナー像を転写する。ドラム116は、駆動モータ108によりドラム軸を中心に回転駆動される。
【0014】
ドラム116の近傍には、クリーニングブレード115を備えたカートリッジ114がドラム116の表面に接するように設けられる。クリーニングブレード115は、トナー像の転写後にドラム116の表面に残存したトナーを除去する。
【0015】
トナー像が転写された用紙は、転写部113から定着器109へ搬送される。定着器109は、定着ヒータ111を内蔵する定着フィルム112と、加圧ローラ110と、を備える。定着モータ107は、加圧ローラ110を回転させる駆動源である。定着器109は、定着フィルム112と加圧ローラ110とにより用紙を挟持搬送する。その際に、用紙が担持するトナー像は、定着ヒータ111に加熱溶融され、加圧ローラ110により加圧されることで、用紙に定着する。このようにして画像が形成された用紙は、排紙部120へ排出される。
【0016】
両面印刷の場合、一方の面に画像が形成された用紙は、定着器109から両面パス117aへ搬送される。両面パス117aへ搬送された用紙は、反転パス117bまで搬送される。用紙は、反転パス117bで搬送方向が反転されて、再度、転写部113へ搬送される。反転パス117bで搬送方向が反転されることで、用紙は、画像が形成される面が反転される。このように用紙は、両面パス117a及び反転パス117bを介して転写部113へ搬送されることで、画像が形成されていない他方の面への画像形成が行われる。
【0017】
環境センサ106は、画像形成装置121周囲の温度、湿度等の環境条件を検知する。検知した環境条件は、駆動制御部102へ通知される。本体制御部101は、画像形成装置121内の各部の動作を制御して、上記のような用紙への画像形成処理を行う。本体制御部101は、操作部122に接続されており、操作部122から入力される指示などを受け付ける。また本体制御部101は、操作部122に画像形成装置121の状態などを表示する。
【0018】
駆動モータ108及び定着モータ107は、駆動制御部102により駆動制御される。モータドライバ124は、定着モータ107を駆動する。電流検知部123は、定着モータ107及び駆動モータ108に流れる電流の電流値を検知する。例えば、定着モータ107はモータドライバ124から電源電圧が印加される。電流検知部123は、モータドライバ124から定着モータ107へ電源電圧を印加する電源電圧ラインの通電電流を検知する。記録部103は、定着モータ107や駆動モータ108の設定速度を記録しており、定着モータ107や駆動モータ108の駆動制御時に設定速度が読み出される。モータドライバ124は、設定速度に応じた速度で定着モータ107を回転駆動する。
【0019】
定着モータ107の駆動制御について説明する。定着モータ107は、定着器109の駆動源であり、定着器109が負荷となる。定着フィルム112は、定着モータ107により回転駆動される加圧ローラ110に従動して回転する。この際、定着フィルム112に内蔵される定着ヒータ111及び定着ヒータ111の支持部材は、定着フィルム112に当接して摺動している。定着フィルム112と定着ヒータ111とは、摺動時の摩擦力によりスティックスリップが発生することがある。スティックスリップの発生は異音の原因となり、ユーザに不快感を与える。スティックスリップは、摺動部の静摩擦力と動摩擦力との切り替わりによって摺動部が振動することで発生する。
【0020】
駆動制御部102は、スティックスリップの発生を抑制するために定着モータ107の回転速度を制御する。定着モータ107を低速で動作させる場合、負荷側の摺動部(定着フィルム112と定着ヒータ111の接触部)の静止摩擦力が大きくなることで、摺動部分が固着した状態で弾性変化する。その後、摺動部分に所定の力が加わることで摺動部が滑って動作する。低速動作時には、定着フィルム112と定着ヒータ111の接触部でこのような固着状態と滑り状態が繰り返されるために、スティックスリップが発生し、定着器109に振動が生じて異音が発生する。
【0021】
定着モータ107の回転速度が速くなることで、摺動部分が滑り状態後に固着状態にならず滑り続けるため、スティックスリップが解消し、異音が生じなくなる。このようにスティックスリップが発生したときに定着モータ107の回転速度を上昇させることで、スティックスリップが抑制される。スティックスリップが抑制されることで、異音の発生源となる定着器109(負荷)の振動を回避することが可能になる。
【0022】
(スティックスリップの発生判断)
本実施形態では、電流検知部123により検知される定着モータ107の電流に基づいて、スティックスリップの発生が検知される。電流検知部123は、定着モータ107の電源電圧ラインの通電電流を検知する。駆動制御部102は、電流検知部123が検知した通電電流の電流値が所定値以下である場合に、スティックスリップの発生を検知する。
【0023】
図2図3は、スティックスリップ発生時の電流値の例示図である。スティックスリップの発生は、定着モータ107の電流値が所定の電流値以下になることで検知される。図2では、破線の丸で囲った部分で所定の電流値以下の電流値が検知されている。本実施形態では、所定の電流値を0[A]とし、検知した電流値が負側の電流値である場合にスティックスリップが発生したと判断される。なお、負側の電流値は、定着モータ107の制動により生じる逆起電力により発生する。
【0024】
図3に示すように、第1所定期間内に負側の電流値の発生が第1所定回数以上検知された場合、スティックスリップが発生して定着モータ107の負荷トルクが変動したと判断される。例えば、駆動制御部102は、50ミリ秒間に負側の電流値を10回以上検知することで、スティックスリップが発生したと判断する。スティックスリップが発生したと判断した駆動制御部102は、モータドライバ124により定着モータ107の回転速度を上昇させる。これによりスティックスリップが抑制される。第1所定期間は、例えばスティックスリップの1周期(固着状態と滑り状態との周期)よりも長く、定着モータ107のトルク変動による電流値の変動を複数回検知可能な期間である。
【0025】
図4図5は、スティックスリップが発生した状態からスティックスリップを抑制したときの電流値の例示図である。負側の電流(所定の電流値以下の電流)が発生していないために、駆動制御部102はスティックスリップが抑制されていると判断する。定着モータ107の回転速度は、スティックスリップを抑制したために、通常よりも高速のままである。そのために定着モータ107の回転速度が必要以上に速く、回転速度を遅くしてもスティックスリップが発生しない可能性がある。定着モータ107自体の駆動音を減少させるためには、定着モータ107の回転速度はできるだけ遅い方がよい。
【0026】
そのために、スティックスリップが発生していないと判断した駆動制御部102は、モータドライバ124により定着モータ107の回転速度を低下させる。これにより定着モータ107の駆動音が減少する。例えば図5の第2所定期間内で電流値が所定の電流値(例えば0[A])を下回らなかった場合、駆動制御部102は定着モータ107の回転速度を低下させる。第2所定期間は、第1所定期間よりも長く、第1所定期間を所定の整数倍した期間である。図5では、第2所定期間は第1所定期間の4倍である。定着モータ107の回転速度を低下させる条件は、第2所定期間内に電流値が所定の電流値以下になった回数が所定回数以下であればよい。この場合の所定回数は、定着モータ107の駆動トルク変動が、第2所定期間内に何らかの要因で突発的に変動する回数に応じて決定される。
【0027】
図2図5で説明したように、本実施形態の駆動制御部102は、定着モータ107に流れる電流の電流値の検知結果に基づいてスティックスリップの発生の有無を判断し、定着モータ107の回転速度を制御する。スティックスリップが発生している場合、駆動制御部102は、定着モータ107の回転速度を高速に変更してスティックスリップを抑制する。スティックスリップが発生していない場合、駆動制御部102は、定着モータ107の回転速度をできるだけ低下させることで駆動音を低減する。これにより定着モータ107は、駆動音をできるだけ低減させた状態でスティックスリップが発生しないように動作することが可能となる。このように駆動制御部102は、ユーザが不快に感じる騒音をできるだけ低減したモータ制御を実現する。
【0028】
(定着モータ107の駆動制御処理)
図6は、駆動制御部102による定着モータ107の駆動制御処理を表すフローチャートである。この処理は、画像形成装置121が用紙への画像形成処理を行う際に実行される。
【0029】
駆動制御部102は、まず、電流検知のループ回数X及び負側の電流が流れなかった回数Yを、初期値「0」に設定する(S601)。ループ回数Xは、第1所定期間の繰り返し回数を表す。次いで駆動制御部102は、記録部103から定着モータ107の設定速度Vnを取得する(S602)。設定速度Vnは、用紙の種類や定着処理の内容に応じて設定されており、加圧ローラ110の回転速度に対応している。駆動制御部102は、定着モータ107を設定速度Vnで駆動開始する(S603)。駆動制御部102は、定着モータ107が設定速度Vnに応じた速度で安定して回転するまで待機する(S604)。
【0030】
駆動制御部102は、定着モータ107が設定速度Vnに応じた速度で安定して回転駆動している状態で、定着モータ107の電流を電流検知部123により検知する。駆動制御部102は、検知した電流値が負側になった回数が、第1所定期間で第1所定回数以上であるか否かを判断する(S605)。本実施形態では、駆動制御部102は、負側になった電流値の検知回数が50ミリ秒間に10回以上であるか否かを判断する。
【0031】
負側になった電流値の検知回数が50ミリ秒間に10回以上である場合(S605:Y)、駆動制御部102は、定着モータ107にトルク変動が発生していると判断する。これにより駆動制御部102は、定着器109でスティックスリップが発生していると判断する。この場合、駆動制御部102は、設定速度Vnを、設定速度Vnよりも速度aだけ速い速度V(n+1)に変更する(S606)。つまり速度V(n+1)=Vn+aである。速度aは、定着モータ107の回転速度を第1所定期間毎に段階的に上げるために予め設定されている値である。速度aは、画像形成装置121の種類に応じて設定される値である。駆動制御部102は、定着モータ107の設定速度V(n+1)を記録部103の設定速度Vnに上書きして更新する(S607)。これにより、次回の処理では、定着モータ107が更新後の設定速度V(n+1)で回転駆動される。
【0032】
負側になった電流値の検知回数が50ミリ秒間に10回未満である場合(S605:N)、駆動制御部102は、定着器109でスティックスリップが発生していないと判断する。この場合、駆動制御部102は、定着モータ107の回転速度の変更を行わない(S608)。定着モータ107の電流値は、定着モータ107の制御により負側の値になることがある。スティックスリップが発生する場合には、負側の電流値が定常的に発生する。定常的に負側の電流値が発生しない場合には、定着モータ107の回転速度の変更は不要である。駆動制御部102は、S605の処理で負側になった電流値の検知回数が1回以上であるか否かにより、定着モータ107のトルク変動の有無を判断する(S609)。処理で負側になった電流値の検知回数が1回未満である場合(S609:N)、駆動制御部102は、定着モータ107のトルク変動がなかったと判断し、負側の電流が流れなかった回数Yを1増加する(S610)。処理で負側になった電流値の検知回数が1回以上である場合(S609:Y)、駆動制御部102は、S610の処理をスキップする。
【0033】
S607の処理、S609の処理、或いはS610の処理後、駆動制御部102は、画像形成処理を終了するか否かを判断する(S611)。終了する場合(S611:Y)、駆動制御部102は、定着モータ107の動作を停止して処理を終了する(S620)。
【0034】
終了しない場合(S611:N)、駆動制御部102は、第1所定期間による電流値の検知を所定回数繰り返すために、ループ回数Xを確認する(S612)。本実施形態では、電流値の検知を繰り返す回数(第1所定期間の繰返し回数)を40回に設定している。そのために駆動制御部102は、ループ回数Xが「40」であるか否かを確認する。ループ回数Xが「40」ではない場合(S612:N)、駆動制御部102は、ループ回数Xに1加算してS602以降の処理を再度行う(S613)。ここで、S605の処理の第1所定期間が50ミリ秒であり、電流値の検知を繰り返す回数を40回に設定しているために、第2所定期間は50ミリ秒と40回の積で2秒となる。
【0035】
ループ回数Xが「40」である場合(S612:Y)、駆動制御部102は、負側の電流が流れなかった回数Yが電流値の検知を繰り返す回数である40回に等しいか否かを判定する(S614)。回数Yが40回に等しくない場合(S614:N)、駆動制御部102は、定着モータ107のトルク変動が発生したと判断して定着モータ107の回転速度の変更を行わない(S617)。つまり、駆動制御部102は、第2所定期間内に負側の電流が1回でも流れた場合に、定着モータ107の回転速度の変更を行わない。
【0036】
回数Yが40回に等しい場合(S614:Y)、第2所定期間内に負側の電流が発生していないことになるために、駆動制御部102は、定着モータ107のトルク変動がなく、定着モータ107の回転速度を下げてもよいと判断する。そのために駆動制御部102は、定着モータ107の設定速度Vnを、設定速度Vnよりも速度bだけ遅い速度V(n-1)に変更する(S615)。
【0037】
つまり速度V(n-1)=Vn-aである。速度bは、定着モータ107の回転速度を第2所定期間毎に段階的に下げるために予め設定されている値である。速度bは、画像形成装置121の種類に応じて設定される値である。駆動制御部102は、定着モータ107の設定速度V(n-1)を記録部103の設定速度Vnに上書きして更新する(S616)。これにより、次回の処理では、定着モータ107が更新後の設定速度V(n-1)で回転駆動される。
【0038】
S616の処理或いはS617の処理後、駆動制御部102は、画像形成処理を終了するか否かを判断する(S618)。終了する場合(S618:Y)、駆動制御部102は、定着モータ107の動作を停止して処理を終了する(S620)。終了しない場合(S618:N)、駆動制御部102は、電流検知のループ回数X及び負側の電流が流れなかった回数Yを「0」にリセットする(S619)。リセット後に駆動制御部102は、S602以降の処理を画像形成処理が終了するまで繰り返し行う。
【0039】
(駆動モータ108の駆動制御)
ドラム116の駆動源である駆動モータ108についても、定着モータ107と同様の制御が行われることで、スティックスリップの発生を抑制しつつ、駆動音の低減を行うことができる。ドラム116は、クリーニングブレード115が摺動する箇所でスティックスリップが発生する。ドラム116とクリーニングブレード115との間の摩擦力により駆動モータ108の負荷トルクが変化する。駆動モータ108は、駆動源として負荷であるドラム116を回転駆動する。
【0040】
駆動制御部102は、駆動モータ108の負荷トルクの変化を駆動モータ108の電流値を測定することで検出する。駆動制御部102は、駆動モータ108の電流値を第1所定期間内に第1所定回数以上検知したときに、スティックスリップが発生していると判断して、駆動モータ108の回転速度を加速させる。駆動制御部102は、駆動モータ108の電流検知を第2所定期間になるまで所定回数繰り返し、その間、負側の電流値を検知しなかったときに、駆動モータ108の回転速度を低減して、駆動モータ108の駆動音を減少させる。
【0041】
以上のように、ドラム116を回転駆動する駆動モータ108においても、スティックスリップが発生する際には、駆動モータ108の回転速度を速くしてスティックスリップを解消して騒音を低減する。スティックスリップが発生していない際には、駆動モータ108の回転速度を遅くして駆動音を低減する。このような制御により、スティックスリップの発生の有無にかかわらず、駆動モータ108により発生する駆動音を極力低減することができる。
【0042】
以上のように本実施形態の駆動源制御装置を搭載する画像形成装置121は、定着モータ107や駆動モータ108等の駆動源に流れる電流の電流値により、スティックスリップの発生を検知する。スティックスリップが発生している場合、画像形成装置121は、駆動源の回転速度を速くすることで、スティックスリップにより発生する騒音を抑制する。スティックスリップが発生していない場合、画像形成装置121は、駆動源の回転速度を遅くすることで、駆動源の駆動音を抑制する。このような駆動源の制御により、画像形成装置121のようなオフィス機器から発生する騒音を抑制することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6