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特開2022-186193発泡性スチレン系樹脂粒子、及び、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186193
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】発泡性スチレン系樹脂粒子、及び、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
C08J9/16 CET
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094290
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】落越 忍
(72)【発明者】
【氏名】木口 太郎
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA33
4F074BA37
4F074CA32
4F074CA38
4F074CA46
4F074CA48
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA23
4F074DA32
4F074DA33
(57)【要約】
【課題】
発泡性スチレン系樹脂粒子の流動性を良好な状態に維持し、粉体の剥離を抑制しつつ、予備発泡粒子の帯電性を抑制した、発泡性スチレン系樹脂粒子を提供する。
【解決手段】
発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に、特定の液状物を塗布し、適切な量の粘土鉱物、及び、融着促進剤を前記粒子本体表面に塗布することにより得られる発泡性スチレン系樹脂粒子を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤を含有する発泡性スチレン系樹脂粒子であって、
発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に、前記発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、
ポリエーテル及び流動パラフィンの少なくともいずれか1種を含む液状物(A)が 0.3重量部以下、
粘土鉱物(B)が0.01重量部以上1重量部以下、及び、
融着促進剤(C)が0重量部超0.5重量以下、
が塗布されてなる発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記液状物(A)は、水に難溶であるポリエーテルを含み、
前記ポリエーテルは、ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールの少なくともいずれか1種を含有する、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記粘土鉱物(B)が、平均粒径30μm以下の、タルク、雲母、及び、カオリンよりなる群から選択される少なくともいずれか1種を含む、請求項1~2のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
前記融着促進剤(C)が、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、及び、ヒドロキシ脂肪酸トリグリセライドよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡してなる予備発泡粒子。
【請求項6】
請求項5に記載の予備発泡粒子を成形してなる発泡成形体。
【請求項7】
発泡剤を含有する発泡性スチレン系樹脂粒子本体を得る工程と、
前記発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に、前記発泡性スチレン系樹脂粒子本体 100重量部に対して、
ポリエーテル及び流動パラフィンの少なくともいずれか1種を含む液状物(A)を、0.3重量部以下、
粘土鉱物(B)を、0.01重量部以上1重量部以下、及び、
融着促進剤(C)を、0重量部超0.5重量以下、
塗布する塗布工程と、を含む発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性スチレン系脂粒子と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性スチレン系樹脂粒子は、発泡剤(易揮発性の脂肪族炭化水素、例えばブタン、ペンタン等)を含浸されているので、比較的安価で、特殊な方法を用いずに蒸気等で発泡成形ができ、高い緩衝・断熱の効果が得られる為、社会的に有用な材料である。得られた発泡成形体は、魚箱、農産箱、食品用容器、家電製品等の緩衝材、建材用断熱材等の幅広い用途に使用されている。
【0003】
発泡性スチレン系樹脂成形体を工業的および経済的に製造する方法としては、(1) 発泡性スチレン系樹脂粒子を、水蒸気等の加熱媒体を用いて予備発泡粒子とし、(2) 当該予備発泡粒子を、所望の形状を有する、壁面に多数の小孔が穿設された閉鎖型の金型内に充填し、(3) 当該金型の小孔から水蒸気等の加熱媒体を導入して予備発泡粒子をその軟化点以上の温度に加熱し、予備発泡粒子を互いに融着させて成形し、(4) 冷却した後、金型内から取り出す方法が一般的である。
【0004】
前記予備発泡粒子を得る段階では、発泡性スチレン系樹脂粒子を、ブロッキング抑制剤や融着促進剤等の、粉体状の外添剤で被覆することで、例えば、予備発泡粒子同士が結合した状態(ブロッキングという)となることを解消している。例えば、特許文献1では、樹脂粒子本体表面にポリエーテル、及び、タルクやシリカ等の粉末状無機物又は有機物を塗布することによって、予備発泡工程でのブロッキングを防止することが提案されている。
【0005】
ここで、発泡性スチレン系樹脂粒子から、粉状の添付剤が剥離することにより、当該樹脂粒子の空気輸送に用いられる装置のフィルターの詰まりや、成形時に金型の小孔が詰まる等の不具合や、発泡成形体の強度低下等の問題が生じることがある。
【0006】
このような問題を解決する方法として、特許文献2では、樹脂粒子本体に、酸化マグネシウムやタルク等の難水溶性無機物、及び、液状の脂肪酸トリグリセリドを塗布することで、予備発泡工程でのブロッキングを防止し、かつ、塗布剤の剥がれを防止することが提案されている。
特許文献3には、樹脂粒子本体表面にメチルフェニルシリコーンオイル、および高級脂肪酸の金属塩を塗布することで、予備発泡工程でのブロッキングを防止、塗布剤の剥がれを防止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭50-48067号公報
【特許文献2】特開平6-128405号公報
【特許文献3】特開昭60-203647公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1~3に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、下記改善の余地がある。特許文献1においては、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子にポリエーテル及びシリカを塗布しているが、最終製品である発泡成形体の融着率が低いといった課題がある。特許文献2においては、液状の脂肪酸トリグリセリド(ひまし油)を塗布しているため、予備発泡粒子表面が侵食し、連泡率(表面に穴が多数存在)が高くなり、発泡成形体の実用強度が低下する。
又、特許文献3においては、メチルフェニルポリシロキサンの塗布により、予備発泡粒子の帯電が多く、ネットホッパー等に付着して、取り扱いが困難である。
【0009】
本発明の一態様は、発泡性スチレン系樹脂粒子の流動性を良好な状態に維持し、粉体の剥離、ブロッキング量を抑制しつつ、予備発泡粒子の帯電性を抑制し、良好な融着性および表面性を有する発泡成形体を得ることに適した発泡性スチレン系樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に、特定の液状物、適切な量の粘土鉱物、及び、融着促進剤を前記表面に塗布することにより、樹脂粒子の流動性を良好な状態に維持し、粉体の剥離を抑制しつつ、ブロッキングを防止し、さらに良好な融着性および表面性を有する発泡成形体を得ることに適した発泡性スチレン系樹脂粒子を得ることができることを確認して、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
[1] 発泡剤を含有する発泡性スチレン系樹脂粒子であって、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に、前記発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、ポリエーテル及び流動パラフィンの少なくともいずれか1種を含む液状物(A)が0.3重量部以下、粘土鉱物(B)が0.01重量部以上1重量部以下、及び、融着促進剤(C)が0重量部超0.5重量部以下が塗布されてなる発泡性スチレン系樹脂粒子。
[2] 前記液状物(A)は、水に難溶であるポリエーテルを含み、
前記ポリエーテルは、ポリプロピレングリコール及びポリエチレングリコールの少なくともいずれか1種を含有する、[1]に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
[3] 前記粘土鉱物(B)が、平均粒径30μm以下の、タルク、雲母、及び、カオリンよりなる群から選択される少なくともいずれか1種を含む、[1]~[2]のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
[4] 前記融着促進剤(C)が、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、及び、ヒドロキシ脂肪酸トリグリセライドよりなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の発泡性スチレン系樹脂粒子。
[5] [1]から[4]のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡してなる予備発泡粒子。
[6][5]に記載の予備発泡粒子を成形してなる発泡成形体。
[7]発泡剤を含有する発泡性スチレン系樹脂粒子本体を得る工程と、前記発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に、前記発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、ポリエーテル及び流動パラフィンの少なくともいずれか1種を含む液状物(A)を、0.3重量部以下、粘土鉱物(B)を、0.01重量部以上1重量部以下、及び、融着促進剤(C)を、0重量部超0.5重量以下、塗布する塗布工程と、を含む発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、樹脂粒子の流動性を良好な状態に維持し、粉体の剥離を抑制しつつ、ブロッキングを防止し、さらに良好な融着性および表面性を有する発泡成形体を得ることに適した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得ることができる。また、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなるポリスチレン系予備発泡粒子、並びに、ポリスチレン系予備発泡粒子を成形してなる発泡成形体は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子から粉体が剥離することが抑制されるので、その生産性が向上される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0014】
本明細書においては、発泡性スチレン系樹脂粒子そのもの(それ自体)を「発泡性スチレン系樹脂粒子本体」と称し、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に、外添剤(帯電防止剤、融着阻害剤)等が塗布されたものを「発泡性スチレン系樹脂粒子」と称し、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡(一次発泡)させてなる粒子を「予備発泡粒子」と称する。
【0015】
〔1.発泡性スチレン系樹脂粒子〕
〔本発明の一実施形態の概要〕
本発明の一実施形態は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に、前記発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、ポリエーテル及び流動パラフィンの少なくともいずれか1種を含む液状物Aが0.3重量部以下、粘土鉱物Bが0.01重量部1重量部以下、融着促進剤Cが0重量部超0.5重量部以下が塗布してなる発泡性スチレン系樹脂粒子である。
【0016】
〔発泡性スチレン系樹脂粒子本体〕
発泡性スチレン系樹脂粒子本体は、基材樹脂及び発泡剤、必要に応じて添加剤を含む発泡性樹脂からなる粒子である。
【0017】
(基材樹脂)
本明細書における基材樹脂は、スチレン系樹脂があげられ、適宜添加剤とのブレンドで、押出機による溶融混錬による樹脂粒子や、又、耐圧容器によるスチレン系単量体を、水系懸濁重合法やシード重合法で重合した樹脂粒子でも構わない。
単量体を重合法で製造するスチレン系樹脂としては、スチレンの単独重合体、スチレン単量体と、スチレン単量体以外の単量体との共重合体であってもよい。スチレン単量体以外の単量体としては、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン系誘導体、アクリル酸エステル等が挙げられる。上記スチレン系誘導体としては、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレンおよびクロルスチレン等が挙げられる。上記アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらのスチレン単量体以外の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(発泡剤)
発泡剤を樹脂粒子に含浸する方法は、押出機で溶融混錬した樹脂中に発泡剤を圧入する方法(クエンチ法)や、押出機で得られた樹脂粒子を、耐圧容器内で樹脂融点より低い温度で、発泡剤を含浸する方法(ミニペレ後含浸法)等の、公知の方法が知られている。一方、重合法で製造する場合は、耐圧容器内で、重合後の樹脂粒子に発泡剤を含浸する等の、公知の方法が知られている。
【0019】
発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素;メチルクロライド、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素;等が挙げられる。その中でも、発泡力が良好である点から、ブタンがより好ましい。これら発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
発泡性スチレン系樹脂粒子本体における発泡剤の含有量は、最終製品である発泡成形体の所望する倍率で適時選定されるが、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対し、3.0重量部以上であることが好ましく、3.5重量部以上であることがより好ましく、また、7.0重量部以下であることが好ましく、5.0重量部以下であることがより好ましい。発泡剤の含有量が上記範囲であれば、予備発泡工程において加熱時間が長くなることを防ぎ、ブロッキングを抑制すると共に、発泡成形体の製造にかかる時間を短縮し、成形工程の成形サイクルを短くすることができる。
【0021】
(添加剤)
基材樹脂に適宜添加する添加剤としては、溶剤、可塑剤、造核剤、難燃剤、難燃助剤等が挙げられる。
【0022】
溶剤および可塑剤の具体例としては、へキサン、ヘプタン等の炭素数6以上の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロオクタン等の炭素数6以上の脂環族炭化水素、ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、グリセリントリステアレート、グリセリントリカプリレート、ヤシ油、パーム油、菜種油;等が挙げられる。
造核剤の具体例としては、メタクリル酸メチル系共重合体、ポリエチレンワックス、タルク、脂肪酸ビスアマイド、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。脂肪酸ビスアマイドの具体例としては、例えば、メチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスステアリルアマイド、ヘキサメチレンビスパルミチン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド等が挙げられる。
【0023】
難燃剤としては、公知の難燃剤を使用することができる。具体例としては、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモブタン、ヘキサブロモシクロヘキサン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系化合物;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、2,4,6-トリブロモフェノール等の臭素化フェノール類;テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス[4’-(2”,3”-ジブロモアルコキシ)-3’,5’-ジブロモフェニル]-プロパン等の臭素化フェノール誘導体;臭素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、臭素化ランダムスチレン-ブタジエン共重合体、臭素化スチレン-ブタジエングラフト共重合体等の臭素化ブタジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体(例えば、Chemtura社製のEMERALD3000、若しくは、特表2009-516019号公報に記載されている共重合体);等が挙げられる。
難燃助剤としては、公知の難燃助剤を使用することができる。具体例としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等が挙げられる。
【0024】
これら添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
又、上記の発泡性スチレン系樹脂粒子本体に、非イオン界面活性剤を塗布、乾燥することにより、樹脂粒子表面にクラック構造を形成した発泡性スチレン系樹脂粒子本体を用いても構わない。クラック構造を形成することによって、液状物Aの添付力が増大する傾向がある。液状物非イオン界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンパルミテート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレエート等が挙げられる。これら非イオン界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
〔発泡性スチレン系樹脂粒子本体の体積平均粒子径〕
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子本体の体積平均粒子径は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の平均粒子径ともいえる。本発泡性スチレン系樹脂粒子の体積平均粒子径は、発泡成形体の用途等に応じて適宜に設定することができるが、一般に、懸濁重合法で製造された樹脂粒子の体積平均粒子径は、0.5mm以上1.2mm以下であり、シ-ド重合法で製造された粒子径は、0.2mm以上0.5mm以下である。又、押出機によるクエンチ法で製造された粒子径は、1.0mm以上1.5mm以下である。本願明細書において、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の体積平均粒子径は、画像処理方式マイクロトラックJPAを使用して測定される値である。
【0026】
〔発泡性スチレン系樹脂粒子〕
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の製造により得られたものである。上記〔発泡性スチレン系樹脂粒子本体〕にて述べた通り、発泡性スチレン系樹脂粒子本体を得る工程は特に限定されず、クエンチ法に採用される工程、ミニペレ後含浸法に採用される工程及び重合法に採用される工程等の公知の工程が含まれる。
【0027】
〔発泡性スチレン系樹脂粒子の製造〕
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、前記発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に、前記発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、ポリエーテル及び流動パラフィンの少なくともいずれか1種を含む液状物Aを、0.3重量部以下、粘土鉱物Bを0.01重量部以上1重量部以下、及び、融着促進剤Cを0重量部超0.5重量以下塗布する塗布工程とすることにより、製造することができる。
【0028】
発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に対して液状物Aが塗布される場合には、液状物Aが塗布された後に、粘土鉱物B、及び、融着促進剤Cが塗布されることが好ましい。なお、粘土鉱物B及び融着促進剤Cは同時に塗布されてもよく、それぞれ別々に塗布されてもよい。以下では、本発明の一実施形態として、液状物A、粘土鉱物B、及び、融着促進剤Cを、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に塗布した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法であって、液状物Aが塗布された後に、粘土鉱物B、及び、融着促進剤Cが塗布される態様を説明する。また、以下では、説明の便宜上、液状物Aを塗布する工程を第1塗布工程と称し、粘土鉱物B、及び、融着促進剤Cを塗布する工程を第2工程と称する。
【0029】
(第1塗布工程)
第1塗布工程は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に、ポリエーテル及び流動パラフィンの少なくともいずれか1種を含む液状物Aを塗布する工程である。ポリエーテル及び流動パラフィンは、いずれも、常温(25℃)で水に難溶である。
ポリエーテルは、アルキレンオキシドからの誘導体であり、具体的に、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン-グリコールエーテル、ポリオキシプロピレン-ジグリセリエーテル、ポリプロピレン-ジグリコール・シルビトールエーテル、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレン・ペンタエリスリトールエーテル、ポリエチレングリコール等々が挙げられる。特に、好ましくは、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールが、安価であり、かつ、取り扱いやすい。
【0030】
流動パラフィンの具体例としては、炭素数15~35の飽和炭化水素が挙げられる。
【0031】
液状物Aは、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を侵食し難い物質であることが好ましい。スチレン系樹脂のSP値(溶解度パラメータ)8であるから、離れたSP値をもつ物質が好適であり、例えば、ポリエーテル及び流動パラフィンのSP値は、各々10、16であり、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面を侵食し難く、予備発泡粒子の連泡率の増加を抑制し、最終製品の機械的強度の低下が少ない。流動パラフィンのように、SP値が大きくかけ離れると、スチレン系樹脂粒子の添着性が少なくなる傾向であるため、液状物Aとしては、ポリエーテルが特に好ましい。
【0032】
液状物Aは水に難溶であることが重要で、予備発泡工程、成形工程で、使用される加熱水蒸気による液状物Aの溶解等が生じにくいため、第2塗布工程で塗布する粘土鉱物B、融着促進剤Cが剥がれることを防止することができる。例えば、分子量1000以上のポリプロピレングリコールは、水に難溶である。
又、液状物Aの動粘度(25℃)は、100mm/S以上500mm/S以下の範囲が好ましく、100mm/S未満であると、樹脂粒子本体から流れてしまう傾向があり、500mm/Sを超えると、樹脂粒子との混合に長時間を要する傾向である。
【0033】
液状物Aの塗布量は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、0.3重量以下(0重量部を含む)であることがより好ましく、0.25重量部以下であり、0.2重量部以下であることがより好ましい。また、
液状物Aは塗布されていなくてもよく、液状物Aが塗布される場合には、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、0重量部以上であることが好ましく、0.01重量部以上であることがより好ましく、0.02重量部以上であることが更に好ましい。
【0034】
液状物Aの塗布量が上記範囲であれば、樹脂粒子本体との均一混合ができ、樹脂粒子の流動性が良好で、取り扱いが容易である。液状物Aが0重量部の場合、第2塗布工程で塗布する粘土鉱物B、融着促進剤Cが容易に剥がれてしまう傾向はあるものの、正帯電する粘土鉱物Bと負帯電するポリスチレン系樹脂との静電吸引で、粉はく離は抑制される。塗布量が0.3重量部を超えると、樹脂粒子の流動性(安息角)が悪化し、予発時のブロッキングが増加する。
【0035】
(第2塗布工程)
第2塗布工程は、前記第1塗布工程後に実施する工程であって、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に、粘土鉱物B及び融着促進剤Cを塗布する工程である。
粘土鉱物Bとは、具体的にはケイ酸塩鉱物であり、帯電列表の正帯電に位置する物質が好ましい。粘土鉱物Bが正帯電する物質であることで、負帯電するポリスチレン系樹脂粒子本体と静電吸引し、剥がれ難くなるためである。一方、負帯電するケイ酸塩鉱物ではないシリカ(SiO2)や一般的にブロッキング防止剤として使用される脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛)は、ポリスチレン系樹脂粒子本体と静電反発するために、剥がれ易い傾向にある。
【0036】
また、発明者らは、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に粘土鉱物Bを塗布することで、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させた予備発泡粒子の帯電が抑制されることを新たに見出した。ここで、予備発泡粒子が帯電していると、ネットホッパー等に付着して取り扱いが困難であるだけでなく、予備発泡粒子は、空気輸送により運搬若しくは乾燥しつつ配管内を移動するところ、スチレン系樹脂を含む予備発泡粒子は電気絶縁性が高いために、摩擦によって帯電しやすい特徴を持つ。このため、帯電に由来する静電気の放電により、発泡剤としての炭化水素に着火、爆発する可能性がある。本発明においては、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に粘土鉱物Bが塗布されていることで、ブロッキングが抑制されるだけでなく、予備発泡粒子の帯電を抑制することができる。
粘土鉱物Bの具体例として、平均粒径30μm以下、好ましくは20μm以下、 1μm以上の粉状の、カオリナイト、雲母、タルク、ゼオライト、クロライト、グローコナイト、スメクタイト等のケイ酸塩鉱物が挙げられ、更に好ましくは、安価で容易に入手可能なカオリナイト、雲母、タルクである。これらの粘土鉱物は単独で用いても良いし、2種以上を混合しても良い。
【0037】
粘土鉱物Bの平均粒径が、上記範囲であれば、予発発泡時のブロッキングが抑制することができるが、平均粒径30μmを超えると、樹脂粒子本体表面の粘土鉱物Bの被覆率が小さくなり、ブロッキング量が増加する傾向であり、1μm未満であれば、被覆率が増加し、ブロッキング量は減少するものの、発泡成形体の強度が低下する傾向がある。
粘土鉱物Bの塗布量は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、0.01重量部以上1重量部以下であり、0.05重量以上0.6重量部以下が好ましく、0.05重量部以上0.4重量部以上がより好ましい。
粘土鉱物Bの添加量が上記範囲であれば、予備発泡時のブロッキング及び、予備発泡粒子の帯電性を抑制し、容易に割れない実用強度のある発泡成形体が得られる。粘土鉱物Bは融着阻害物質として働くため、0.6重量部を超えると、発泡成形体が容易にわれてしまう。0.01部未満であれば、ブロッキングが増加すると共に、得られる予備発泡粒子の帯電してしまうため貯槽ホッパー壁面に付着し、取り扱いが困難である。
【0038】
融着促進剤Cとしては、常温(25℃)で、粉状の、融点上限120℃以下、より好ましくは100℃以下の脂肪酸グリセリドが挙げられる。融点上限の120℃を超えると、成形加工時に融着せず、融着促進効果を損なう傾向がある。
具体的には、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、リノール酸トリグリセライド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドなどの脂肪酸トリグリセライド;ラウリン酸ジグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、リノール酸ジグリセライドなどの脂肪酸ジグリセライド;ラウリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、リノール酸モノグリセライドなどの脂肪酸モノグリセライド;ヒマシ硬化油(ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド)などの植物油(ヒドロキシ脂肪酸トリグリセライド)などが挙げられ、これら脂肪酸グリセリドは単独で用いても良いし、2種以上を混合しても良い。中でも、ヒマシ硬化油(融点84℃)は、ポリスチレン系樹脂粒子表面の侵食を抑制し、発泡成形体の融着を促進するために好適である。
【0039】
融着促進剤Cの塗布量は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部に対して、0重量部超0.5重量以下であり、0重量以上0.1重量部以下がより好ましく、0.5重量以上0.4重量部以下がより好ましい。融着促進剤の添加量が上記範囲であれば、予備発泡時にブロッキングを抑制できると共に、発泡成形体の実用強度を発現する。融着促進剤0.5重量部を超えると、予発時のブロッキング量が増加し、予発粒子の表面膜の破泡を促進する。
【0040】
第2塗布工程で使用する、粘土鉱物B、及び、融着促進剤Cは、水に難溶の粉状物質であることが好ましい。これにより、予備発泡工程、成形工程で、使用される加熱水蒸気による、溶解、剥がれを防止することができる。
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造の第1塗布工程及び/又は第2塗布工程において、求められる性能に応じて更なる添付剤が発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に塗布されてもよい。さらに、発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、第1塗布工程及び第2塗布工程以外にも、求められる性能に応じて更なる塗布工程を備えていてもよい。なお、第1塗布工程の液状物Aを塗布した後に、第2塗布工程の粉状の粘土鉱物B、融着促進剤Cを塗布されることが、発泡性スチレン系樹脂粒子本体表面に塗布する剤(添付剤)をより均一に塗布することができる。
【0041】
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法において、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に、液状物A、粘土鉱物B及び融着促進剤Cを塗布する方法としては、発泡性スチレン系樹脂粒子本体と各種添付剤とを混合できればよく、種々の公知の方法を用いることができる。発泡性スチレン系樹脂粒子本体と各種添付剤とを均一に混合するためには、第1塗布工程、及び第2塗布工程において混合機器を用いることが好ましい。本発明の製造方法で用いる混合機器としては、例えば、スーパーミキサー、ナウタミキサー、ユニバーサルミキサー、プロシェアミキサー、アペックスミキサー、ヘンシェルミキサー、レーディゲーミキサー等のミキサー;リボンブレンター、タンブラー型ブレンター等のブレンター;が挙げられる。混合機器は、添加物の塗布量等を考慮して、適宜に選択され得る。
【0042】
上記各工程における混合時間としては、特に限定されず、混合機器の混合能力で、適宜に調整することができる。
【0043】
〔2.予備発泡粒子〕
本発明の一実施形態に係る予備発泡粒子は、上述した発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡(一次発泡)させることによって得られる。
【0044】
予備発泡させる方法としては、例えば、円筒形の予備発泡装置を使用し、水蒸気等の加熱媒体を用いて発泡性熱可塑性樹脂粒子を加熱して発泡させる等の、通常の方法を採用することができる。
【0045】
予備発泡装置、および予備発泡工程の条件は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の基材樹脂種類、所望する予備発泡倍率等に応じて適宜に設定すればよく、特に限定されない。
【0046】
〔3.発泡成形体〕
本発明の一実施形態に係る発泡成形体は、上述した予備発泡粒子を加熱発泡(二次発泡)させて、成形することによって得られる。
【0047】
予備発泡粒子を加熱発泡させて、成形する方法としては、例えば、金型内に予備発泡粒子を充填し、水蒸気等の加熱媒体を吹き込んで加熱する型内発泡成形法等の、通常の方法を採用することができる。
【0048】
具体的な型内発泡成形方法としては、閉鎖し得るが密閉し得ない金型内に、予備発泡粒子を充填し、加熱媒体により予備発泡粒子を加熱および融着することで型内発泡成形体とする方法が挙げられる。
【0049】
加熱発泡に使用する装置、および加熱発泡の条件は、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の組成、所望する発泡倍率等に応じて適宜に設定すればよく、特に限定されない。
【0050】
上記発泡成形体、特に型内発泡成形体は、所望の形状の成形体を作製し易い等の利点から、例えば、食品容器等の包装材料(トレー)、魚函等の輸送用梱包材、特に、低帯電性能を必要とする家電製品や精密部品の緩衝材等には好適である。
【実施例0051】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0052】
実施例および比較例における、発泡性スチレン系樹脂粒子、および発泡成形体の、各種測定方法並びに評価方法は、以下の通りである。
【0053】
<発泡性スチレン系樹脂粒子の流動性の評価>
発泡性スチレン系樹脂粒子の流動性は、安息角測定機の評価装置を利用して、下記5段階で評価した。数値の大きい方が流動性に優れた状態であり、「3」以上を合格と判定した。
【0054】
前記安息角の測定方法は、以下の方法で測定した。先ず、一面が堰になっている箱を用意し、発泡性スチレン系樹脂粒子を箱に、擦切り一杯になるように投入した。投入後、前記堰を取り外して、発泡性スチレン系樹脂粒子を自然にこぼれさせた。そして、箱に残った発泡性スチレン系樹脂粒子の角度を測定し、その角度を安息角(度)とした。
【0055】
5:安息角が25度以下で、流動性が良く、樹脂粒子がよく転がる状態
4:安息角が25度を超え、30度以下で、樹脂粒子が転がるが、流れが遅い状態
3:安息角が30度を超え、35度以下で、流動性が良く、樹脂粒子が転がるものの、斜面の一部に凹凸が残る状態
2:安息角が35度を超え、40度以下で、流動性は良いものの、樹脂粒子を転がすためにバイブレーターが必要な状態
1:安息角が40度を超え、流動性が非常に悪く、樹脂粒子が転がらない状態。
安息角が35度以下を合格とした。
【0056】
<発泡性スチレン系樹脂粒子の粉はく離評価>
発泡性スチレン系樹脂粒子1kgを秤量し、電動篩(DY-50)に取り付けた網(目開き:355μm、42メッシュ、φ750mm)で、2分間篩い分けを行った。その後、網を通過した粉体を回収し(但し、樹脂が混じっている場合は当該樹脂を除去)、その重量を計量して剥離量とした。そして、下記算出式 (剥離率[重量%])=(剥離量[g])/(発泡性スチレン系樹脂粒子に添加した外添剤の全量[g])×100 に基づいて外添剤の剥離率を算出し、剥離率が10重量%以下である発泡性スチレン系樹脂粒子を合格と評価した
【0057】
<ブロッキング率の測定>
攪拌機を備えた加圧式予備発泡機(大開工業(株)製、CH-100)に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を投入し、加熱媒体として水蒸気を用い、吹き込み蒸気圧を0.1MPaとして加熱することによって予備発泡(一次発泡)させ、嵩倍率(見掛け倍率)が65倍のポリスチレン系予備発泡粒子を得た。そして、予備発泡機からポリスチレン系予備発泡粒子を取り出すときに、当該予備発泡粒子を目開きが1cmの網に通過させ、網を通過しなかった予備発泡粒子を回収し、その重量を計量してブロッキング量とした。そして、下記算出式 ブロッキング率[重量%]=ブロッキング量[g]/ポリスチレン系予備発泡粒子の全量[g]×100 に基づいてブロッキング率を算出し、ブロッキング率が2.0重量%以下であるポリスチレン系予備発泡粒子を合格と評価した。
【0058】
<予備発泡粒子の帯電量>
上記で得られた予備発泡粒子を、ポリエチレン袋に10g投入し、乾燥機40℃×1時間静置後、約100回の手振を実施した。手振後、ハ゛ットに払出、静電気測定器スタチロンDZ4型(シシド静電気株式会社製)にて、帯電量を測定した。
【0059】
<発泡成形体の評価>
後述する実施例1に記載の製造方法にて得られた発泡成形体を、室温で24時間乾燥させた後、融着率および表面伸びの評価を行った。
【0060】
(1)融着率の評価
得られた発泡成形体を破断してその破断面を観察し、発泡粒子界面ではなく発泡粒子が破断している割合(融着率)を求めた。融着率が80%以上である場合を合格と評価した。
【0061】
(2)表面のび
得られた発泡成形体の4か所部分の表面の状態を目視で観察して、下記5段階で評価した。その4か所部分の平均値を表面伸びの点数とした。数値の大きい方が発泡粒子同士の隙間が少ない、表面が美麗な状態であり、「4」以上を合格と判定した。
【0062】
5:隙間が見当たらない
4:部分的に隙間があるものの、殆ど分からない
3:所々に隙間があるものの、全体としては許容することができる
2:隙間が目立つ
1:隙間が多い。
【0063】
以下に、実施例、比較例において使用した塗布剤を記載する。
【0064】
<液状物A>
・A(1);ポリプロピレングリコール:D-2000、日本油脂株式会社製
・A(2);流動パラフィン:K-350、カネダ株式会社製
・A(3);メチルフェニルポリシロキサン:KF50、信越化学工業株式会社製
【0065】
<粘土鉱物B>
・B(1);タルク:PK-S、粒径11μm、林化成株式会社製、
・B(2);雲母(マイカ):AB-25S、粒径10μm、株式会社ヤマグチマイカ製
・B(3);カオリン:ASP170、粒径0.4μm、サンエス石膏株式会社製
【0066】
<融着阻害剤(脂肪酸金属)>
・B(4)ステアリン酸亜鉛:粒径12μm、日本油脂株式会社製
【0067】
<融着促進剤>
・C:ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド(ひまし硬化油):カスターワックス、日本油脂株式会社製
【0068】
〔実施例1〕
(発泡性スチレン系樹脂粒子本体)
発泡性スチレン系樹脂粒子(カネパールTG、体積平均粒子径0.9mm、株式会社カネカ製)の未塗布品を、発泡性スチレン系樹脂粒子本体(基材樹脂)として用いた。当該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子本体は、スチレンとアクリル酸ブチルとを重量比95:5で共重合してなるスチレン-アクリル酸ブチル共重合体である。
【0069】
(発泡性スチレン系樹脂粒子の製造)
上記の発泡性スチレン系樹脂粒子本体100重量部をユニバーサルミキサー((株)TSMS製、EM-15B型)に投入し、液状物A(1)0.06重量部を6秒間かけて投入し、30秒間撹拌し、第1塗布工程を終了した。次いで、粘土鉱物B(1)を0.15重量部、融着促進剤Cを0.05重量部投入し、さらに30秒間撹拌し、第2塗布工程を終了し、発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。
【0070】
(予備発泡粒子の製造)
上記で得られた発泡性スチレン系樹脂粒子を、撹拌機を備えた加圧式予備発泡機(大開工業(株)製、CH-100)に投入し、加熱媒体として水蒸気(吹き込み蒸気圧60kPa)を用い、予備発泡(一次発泡)させ、嵩倍率(見掛け倍率)が65倍の予備発泡粒子を得た。次いで、得られた予備発泡粒子を室温で24時間放置して、養生乾燥を行った。
【0071】
(発泡成形体の製造)
養生乾燥後の予備発泡粒子を、成形機((株)ダイセン製、KR-57)、金型(縦450mm×横300mm×深さ25mmの箱型)を使用して、加熱媒体として水蒸気(吹き込み蒸気圧80kPa)を用い、金型内の予備発泡粒子を10秒間加熱した。次いで、2秒間水冷し、真空放冷し、金型内に設けた面圧計(発泡成形体の圧力)が30kPaに到達した時点で、金型を開けて発泡成形体を取り出した。
【0072】
上記で得られた発泡性スチレン系樹脂粒子の樹脂流動性(安息角)及び、粉はく離評価を実施し、かつ、予備発泡粒子の帯電量、発泡成形体の融着率、表面伸びの評価試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0073】
〔実施例2~9,比較例1~3、6~8〕
実施例1で製造した発泡性スチレン系樹脂粒子本体(カネパールTG、株式会社カネカ製)を用い、液状物A、粘土鉱物B、融着促進剤C、融着阻害剤(ステアリン酸亜鉛)を表1、2に示す添加量で、実施例1の方法と同様の方法を用いて、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子および発泡成形体を得た。評価結果を表1(実施例)、表2(比較例)に示す。
【0074】
〔実施例10~11、比較例4、9〕
発泡性スチレン系樹脂粒子(カネパールNSG、体積平均粒子径0.9mm、株式会社カネカ製)の未塗布品を、発泡性スチレン系樹脂粒子本体(基材樹脂)として用いた。当該樹脂粒子本体は、スチレン単独重合体であり、樹脂粒子本体に、非イオン界面活性剤ポリオキシエチレン-モノオレート(O-3、日本油脂株式会社製)の水溶液を塗布して、乾燥させたもので、樹脂粒子本体の表面にクラックが形成されている。
【0075】
この樹脂粒子本体に、粘土鉱物B、融着促進剤C、融着阻害剤を、表1、2に示す添加量で、実施例1の方法と同様の方法を用いて、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子および発泡成形体を得た。評価結果を表1(実施例)、表2(比較例)に示す。
【0076】
〔実施例12,比較例5,10〕
発泡性スチレン系樹脂粒子(カネパールFQ、体積平均粒子径0.9mm、株式会社カネカ製)の未塗布品を発泡性スチレン系樹脂粒子本体(基材樹脂)として用いた。当該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、スチレン、アクリロニトリル、及びαメチルスチレンを重量比71:24:5で共重合してなるスチレン-アクリロニトリル-αメチルスチレンの3元共重合体である。当該樹脂粒子本体に、液状物A、粘土鉱物B、融着促進剤C、融着阻害剤を、表1に示す添加量で、実施例1の方法と同様の方法を用いて、発泡性熱可塑性樹脂粒子、予備発泡粒子および発泡成形体を得た。評価結果を表1(実施例)、表2(比較例)に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
表1に示されるとおり、実施例1~12の発泡性スチレン系樹脂粒子は、良好な流動性(安息角)を示し、かつ、粉はく離の抑制された優れものである。また、予備発泡粒子の製造でのブロッキング率は少なく、予備発泡粒子の帯電性も抑制され、発泡成形体は、良好な融着性および表面伸びを有するものであった。
【0080】
これに対し、融着促進剤Cが無塗布の比較例1は、発泡成形体の融着率が劣る。液状物Aを0.4重量部塗布した比較例2は、樹脂の流動性が悪く、ブロッキング率は高くなる。
【0081】
粘土鉱物の代わりにステアリン酸亜鉛を用いた比較例3~5は、粘土鉱物Bを用いた実施例8,9,10に比べて、粉はく離率が高く、予備発泡粒子は大きく負に帯電している。これは、ポリスチレン系樹脂粒子及びステアリン酸亜鉛の負帯電性による、静電反発による粉はく離増加と考えている。又、実施例1のタルクの代わりにステアリン酸亜鉛を用いた比較例6では、予備発泡粒子は負に大きく帯電している。
液状物Aにシリコーンオイルを用いた比較例7~10は、予備発泡粒子は負に帯電している。シリコーンオイル自体が大きく負帯電しているためと考えている。
【0082】
これらの結果から、発泡性スチレン系樹脂粒子本体の表面に、ポリエーテル及び流動パラフィンの少なくともいずれか1種を含む液状物A、粘土鉱物B、及び、融着促進剤Cを塗布してなる発泡性スチレン系樹脂粒子は、流動性を良好な状態に維持し、かつ粉はく離が抑制された発泡性スチレン系樹脂粒子を得ることができ、更に、予備発泡粒子の帯電性を抑制することができる。