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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186211
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】キッチンカウンター
(51)【国際特許分類】
   A47B 96/18 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
A47B96/18 H
A47B96/18 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094321
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 卓司
(72)【発明者】
【氏名】奥山 亮太
(72)【発明者】
【氏名】相川 公彦
(72)【発明者】
【氏名】今里 光志
(57)【要約】
【課題】軽量且つ曲げ剛性及び強度が向上したキッチンカウンターを提供すること。
【解決手段】キッチンカウンター1は、天板2と、天板2の裏側に配置される多孔質性の裏打材31及び裏打材31の下面31bに配置されるガラス繊維32を有する補強板3と、を備える。ガラス繊維32は、下面31bと裏打材31の上面31aの両方に配置されることが好ましい。補強板3の厚さは、12mm以上~18mm以下であることが好ましい。ガラス繊維32は、接着剤に含侵されて裏打材31に接合されていることが好ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板と、
前記天板の裏側に配置される多孔質性の裏打材及び前記裏打材の下面に配置されるガラス繊維を有する補強板と、を備えるキッチンカウンター。
【請求項2】
前記ガラス繊維は、前記下面と前記裏打材の上面の両方に配置される、請求項1に記載のキッチンカウンター。
【請求項3】
前記補強板の厚さは、12mm以上~18mm以下である、請求項1又は2に記載のキッチンカウンター。
【請求項4】
前記ガラス繊維は、接着剤に含侵されて前記裏打材に接合されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のキッチンカウンター。
【請求項5】
前記天板は、セラミック製である、請求項1~4のいずれか1項に記載のキッチンカウンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キッチンカウンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチンカウンターの天板の裏面に発泡樹脂で形成された補強板を配置して、キッチンカウンターの軽量化を図ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-223456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発泡樹脂は、木製等の合板と比べて軽量である反面、剛性が低い。このため、天板と発泡樹脂の補強板で構成されるキッチンカウンター全体の曲げ剛性及び強度が低下するという懸念があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、天板と、前記天板の裏側に配置される多孔質性の裏打材及び前記裏打材の下面に配置されるガラス繊維を有する補強板と、を備えるキッチンカウンターに関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態のキッチンユニットを示す斜視図である。
図2】第1実施形態のキッチンカウンターの部分側面断面図である。
図3A】第1実施形態のキッチンカウンターの部分断面模式図である。
図3B】比較例のキッチンカウンターの部分断面模式図である。
図3C】比較例のキッチンカウンターの部分断面模式図である。
図3D】比較例のキッチンカウンターの部分断面模式図である。
図4】第1実施形態のキッチンカウンターを下から見た部分平面断面図である。
図5】第1実施形態のキッチンカウンターの雌ねじ部材を説明する図である。
図6】第1実施形態の変形例に係る雌ねじ部材の図である。
図7】第2実施形態のキッチンカウンターの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の第1実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。第1実施形態のキッチンカウンター1は、キッチンユニット100の上面に配置される。キッチンユニット100は、調理を行うための複合的な設備である。キッチンユニット100は、キッチンカウンター1と、キャビネット10と、を有し、キャビネット10の上にキッチンカウンター1が支持されて構成される。キャビネット10は、略直方体に構成され、内部に調理器具や食材を収納可能な収納空間が形成されるとともに、給水及び排水を行うための配管や、電力を供給する電源部等が配置されている。
【0008】
キッチンカウンター1は、シンク11及び加熱調理器12が配置され、炊事の際に食器や食材を洗浄したり、食材を加熱調理したりする作業台である。図2に示すように、キッチンカウンター1は、天板2と、補強板3と、受け部材としての雌ねじ部材4と、を有する。
【0009】
天板2は、薄い略直方体の板である。図1に示すように、天板2の長手方向の一方側にシンク11が、他方側に加熱調理器12を配置するための開口が形成され、シンク11及び加熱調理器12が固定される。天板2は、キッチンカウンター1の上面に配置される略長方形の板材である。天板2は、例えば、セラミック製であってよい。セラミック製の天板2は、例えば人口大理石製の表面材と比べて高い剛性を有する。天板2の厚さは、5mm以上7mm以下の範囲を例示できる。
【0010】
補強板3は、図2に示すように、天板2の裏側に配置され、天板2を補強する板状の部材である。補強板3は、略長方形に形成され、その外縁は天板2の外縁よりも内側に配置される。補強板3の端部には、補強板3を隠す化粧部材33が配置されている。補強板3は、裏打材31と、ガラス繊維32と、を有する。
【0011】
裏打材31は、多孔質素材で構成され、例えば発泡スチロール製であってよい。多孔質素材には、低比重の素材が好ましく用いられ、ウレタンやPET製であってもよい。多孔質性の板として、ハニカム状の形状を有するものであってもよい。
【0012】
ガラス繊維32は、天板2がキッチンカウンター1に配置された状態における下面31bと上面31aの両方に配置される。下面31bとは、天板2に対して、裏打材31を間に挟んで反対側の面であり、上面31aとは、補強板3と天板2との接合部230側に位置する面である。ガラス繊維32は、織り目が粗く隙間を有する目抜き平織に織られ、マット状に構成されたうえで、シラン処理される。ガラス繊維32は、接着剤に含侵されて裏打材31に接合される。接着剤は、粘度が高く、硬化後被膜の固い二液タイプの硬化性樹脂が好ましく用いられる。裏打材31とガラス繊維32を接合した補強板3の厚さは、12mm以上18mm以下が好ましく、14mm以上17mm以下がより好ましい。
【0013】
図3A図3Dを参照して、第1実施形態に係るキッチンカウンター1の強度を説明する。図3Aは、第1実施形態のキッチンカウンター1を示している。図3B図3Dは、図3Aと比較するための補強板を他の素材により構成した場合を示している。補強板の構成の違いによって、キッチンカウンター1に曲げ荷重がかかった場合に、天板2及び補強板3を合わせた厚さの断面で引張力と圧縮力の釣り合う中立軸Nの位置が異なる。
【0014】
図3Aに示すように、第1実施形態のキッチンカウンター1では、裏打材31の上面31aと下面31bとにガラス繊維32が配置されている。この場合、図3Aに示す矢印方向に天板2に曲げ荷重がかかった際、中立軸Nは、天板2の中に位置している。中立軸Nは、天板2と補強板3との間の接合部230側に近くなっている。一例として、天板2の厚さが6mm、裏打材31とガラス繊維32とを合わせた補強板3の厚さが16mmであった場合、中立軸Nの位置はλ=4.2mmである。
【0015】
図3Bは、補強板がガラス繊維を含まずに、多孔質性の裏打材9Bのみで構成された場合を示す。この場合、中立軸Nは、天板2の中に位置している。中立軸Nは、図3Aに示す位置よりも接合部230から離れて天板2の方へ移動している。一例として、天板2の厚さが6mm、裏打材9Bとガラス繊維32とを合わせた補強板3の厚さが16mmであった場合、中立軸Nの位置はλ=3.1mmである。
【0016】
図3Cは、裏打材9Cとして従来の合板を用いた場合を示す。裏打材9Cとして合板を用いると、中立軸Nは合板の内部にある。一例として、天板2の厚さが6mm、裏打材9Cとガラス繊維32とを合わせた補強板3の厚さが16mmであった場合mm、中立軸Nの位置はλ=7.8mmである。
【0017】
図3Dは、裏打材9Dとして従来の合板を用い、この合板同士を貼り合わせた接合部91に曲げ荷重がかかった場合を示す。合板の接合部91では、局所的に強度が低下し、中立軸Nは、天板2の中に位置している。中立軸Nは、補強板と天板2との接合部230から離れて天板2の方へ移動している。一例として、天板2の厚さが6mm、裏打材9Dとガラス繊維32とを合わせた補強板3の厚さが16mmであった場合、中立軸Nの位置はλ=3.0mmである。
【0018】
図3Cに示すように、裏打材9Cとして合板を用いると、中立軸Nが合板の内部に位置する。合板は多孔性の素材と比べると引っ張り強度が高く、天板2には圧縮強度しかかからないこととなる。このため、曲げ荷重に対してキッチンカウンター1全体の強度は向上する。しかし、合板は多孔質性の素材と比べて重量が大きいので、運搬や設置の取り扱いが困難である。
【0019】
図3Dに示すように、合板は寸法が限定されているので、キッチンカウンターの寸法によっては貼り合わせが必要な場合が生じる。合板を貼り合わせた接合部91では、中立軸Nが天板2側へ図3Bの場合と同程度まで移動する。このため、キッチンカウンターの一部で、局所的に合板本来の剛性が得られず、キッチンカウンターの重量のみが増加する。
【0020】
図3Bに示すように、裏打材9Bとして多孔質性の素材、例えば発泡スチロールを採用すると、大幅な軽量化が実現できる。しかし、裏打材9Bが発泡スチロールのみで構成されると、中立軸Nは、天板2の内部で図3Aと比べて天板2側へ移動する。このため、天板2に図3Aの場合よりも高い引っ張り応力が生じる。天板2が例えばセラミックのような引張強度の高くない素材で構成されている場合、キッチンカウンターの強度が低下する。
【0021】
図3Aに示すように、裏打材31として多孔質性の素材にガラス繊維32を用いた場合は、中立軸が補強板3と天板2との接合部230側に寄ってくるため、軽量化と強度の向上の両方を実現することができる。
【0022】
雌ねじ部材4は、裏打材31に取り付けられ、裏打材31に締結する雄ねじ5が係合する。雌ねじ部材4は、図2に示すように、雌ねじ部材4の軸方向が補強板3の厚さ方向に沿うように配置される。図4は、天板2を下側から見た図である。雌ねじ部材4は、図4に示すように、予め設計上固定された位置、例えば、キッチンカウンター1のシンク11を配置する開口部11aの周辺等に配置される。雌ねじ部材4は、筒部41と、フランジ部42と、を有する。
【0023】
筒部41は、図5に示すように、雄ねじ5に係合可能なねじ溝が、内周に形成されている。筒部41は、一端側が塞がっており、筒部41の内部に接着剤が入らないように構成されている。筒部41は、軸方向の長さ寸法が、補強板3の厚さ方向の寸法と同程度となるように構成されている。すなわち、筒部41の一端側の端面が補強板3の接合部230側の面に、筒部41の他端側の端面が補強板3の接合部230と反対側の面に沿うように位置する。筒部41の長さと補強板3の厚さが同程度となることで、筒部41に雄ねじを締結した際に裏打材31に亀裂が入ることを防止することができる。
【0024】
フランジ部42は、筒部41の軸方向に直交する方向の外寸よりも大きな外寸を有し、筒部41の一端から放射状に広がる。フランジ部42は、裏打材31と天板2との接合部230側に配置される。図5に示すように、フランジ部42における筒部41と接合される側の面には、筒部41の軸方向に沿ってと突出する爪部421が形成されている。爪部421は、先端が基端よりも細くなるように尖って形成される。爪部421は、裏打材31に係合する。
【0025】
キッチンカウンター1の施工時には、天板2を下側に、シンク11を逆さに配置して作業が行われる。図5に示すように、雌ねじ部材4は、雄ねじ5の位置を予め決められた位置で、補強板3に対して、ガラス繊維32側から裏打材31に向かって爪部421を突き刺すようにして固定される。雌ねじ部材4が補強板3に取り付けられた状態で、天板2と補強板3とを接合する。
【0026】
雌ねじ部材4が配置された補強板3と、補強板3が接合された天板2に対して、シンク11を補強板3側に重ねる。そして、雌ねじ部材4が配置されている位置に雄ねじ5を挿入してシンク11を固定する。
【0027】
第1実施形態によれば、以下の効果が奏される。キッチンカウンター1を、天板2と、天板2の裏側に配置される多孔質性の裏打材31及び裏打材31の下面31bに配置されるガラス繊維32を有する補強板3と、を含んで構成した。多孔質性の裏打材31の下面31bにガラス繊維32を配置することで、キッチンカウンター1に曲げ荷重がかかった場合、ガラス繊維32が引っ張り応力を負担するので、天板2に発生する引っ張り応力の度合いを低下させることが可能になる。このため、多孔質性の裏打材31によってもたらされる軽量性を損なうことなく、補強板3の厚さの変化を最小限に押えながら、曲げ剛性の向上、強度の向上を実現することができる。さらに、仮に補強板が合板等で構成された場合には、キッチンカウンターの寸法に合わせるために、補強板に継ぎ目が生じる場がある。継ぎ目があると、剛性が局所的に低下し、天板2への接合にも手間がかかる。第1実施形態の場合、裏打材31を多孔性の素材、例えば発泡スチロールで構成し、これにガラス繊維32を接着することで、いかなる寸法のキッチンカウンター1であっても一枚の補強板3を形成して接着することが可能になる。このため、上記の効果に加えて施工性も向上する。
【0028】
第1実施形態によれば、ガラス繊維32を、下面31bと裏打材31の上面31aの両方に配置した。これにより、ガラス繊維32により得られる引っ張り強度の向上の度合いが増加する。
【0029】
第1実施形態によれば、補強板3の厚さを、12mm以上~18mm以下で構成した。補強板3がこの厚さの範囲に収まることにより、キッチンカウンター1を構成する他の部品や部材を好適に利用することができるので、汎用性が高まる。
【0030】
第1実施形態によれば、ガラス繊維32を、接着剤に含侵されて裏打材31に接合させた。これにより、ガラス繊維32が補強板3の表面から飛び出して作業者の指に刺さったり、触れたりすることを防止することができる。よって作業性が向上する。
【0031】
第1実施形態によれば、天板2を、セラミック製により構成した。
天板2がセラミック製であることにより、樹脂による人工大理石製の天板と比べて高い圧縮強度を得、同時にガラス繊維32が配置された裏打材31により好適な曲げ剛性を得ることができる。
【0032】
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれる。第1実施形態では、雌ねじ部材4の爪部421は、フランジ部42における筒部41と接合される側の面から突出して形成されている。第1実施形態の変形例として、図6に示すように、爪部421Aは、筒部41Aの外面から外側に突出するように形成された、いわゆる鬼目ナットであってよい。爪部は、多孔質の裏打材31に係合可能であれば、突出する位置や形状は特に限定されない。
【0033】
第1実施形態では、ガラス繊維32は、裏打材31の上面31a及び下面31bの両方に配置されている。しかし、ガラス繊維32は、裏打材31の少なくとも下面31bに配置されていればよい。
【0034】
図7に示すように、第2実施形態では、雄ねじの受け部材として、板状部材6が用いられる。第2実施形態では、雌ねじ部材は補強板3に配置されていなくてよい。板状部材6は、雄ねじ5を締結する位置に配置可能な面積の薄い直方体の板材で構成され、裏打材31に重ねて配置される。板状部材6は、裏打材31と同じ素材により構成されてよい。あるいは、板状部材6Aは、裏打材31と異なる素材により構成されてよい。例えば、板状部材6Aは、MDF(繊維板)、合板、木っ端等であってよく、雄ねじ5が締結可能な素材であればよい。雄ねじ5は、シンク11を固定するため、シンク11の周縁を押圧する押え金具7を固定する。
【0035】
キッチンカウンター1にシンク11等の構成部材を取り付ける際、天板2及び裏打材31の下面31b側から、シンク11を固定するように雄ねじ5を締結する。この際、施工現場で、裏打材31の余った部分や、裏打材31と同じ素材から切断して板状部材6とする。そして、雄ねじ5を締結する位置に、裏打材31と同じ素材から用意した板状部材6を裏打材31に重ねて接着する。雄ねじ5は、裏打材31と板状部材6とをともに締結する。雄ねじ5は、裏打材31の厚さと、板状部材6の厚さを合わせた厚さの分、雄ねじ5の軸部51を回転させて締結される。雄ねじ5の軸部51を支持する厚さ方向の距離が長くなると、裏打材31が多孔質性の素材であっても固定することが可能になる。
【0036】
板状部材6が裏打材31と同じ素材の場合、裏打材31の余った切れ端等を施工現場で調達して容易に施工することができる。
【0037】
板状部材6Aが裏打材31と異なる素材の場合、施工現場等で入手が容易なMDF(繊維板)、合板、木っ端等の素材を、雄ねじ5を締結可能な面積に切断して用意する。そして、上記と同様に板状部材6Aを裏打材31に重ねて雄ねじ5を締結する。板状部材6Aが裏打材31と異なる部材で構成される場合、板状部材6Aを多孔質性の素材ではなく、木製等にすることにより、雄ねじ5が締結される固定強度は向上する。
【0038】
第2実施形態によれば、予め補強板3の内部に位置決めして受け部材を配置する必要がないので、施工時に必要な箇所で受け部材を配置することができる。このため、設計及び施工が容易になる。
【符号の説明】
【0039】
1 キッチンカウンター、 2 天板、 3 補強板、 31 裏打材、 31a 上面、 31b 下面、 32 ガラス繊維
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7