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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186214
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】光励起磁気センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/26 20060101AFI20221208BHJP
   A61B 5/245 20210101ALI20221208BHJP
【FI】
G01R33/26
A61B5/245
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094324
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 右典
(72)【発明者】
【氏名】森谷 隆広
(72)【発明者】
【氏名】笈田 武範
(72)【発明者】
【氏名】須山 本比呂
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲生
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA10
(57)【要約】
【課題】小型化が可能な光励起磁気センサを提供する。
【解決手段】光励起磁気センサ1は、測定対象上に第1のセル領域及び第2のセル領域を形成するセル2,2rと、ポンプレーザ7と、プローブレーザ8と、第1の方向に沿って、ポンプ光を第1のセル領域に入射させるための第1光学系と、第1の方向に沿って、第1のセル領域を通過したポンプ光を第2のセル領域に入射させるための第2光学系と、第1の方向に直交する第2の方向に沿って、第1のプローブ光を第1のセル領域に入射させるための第3光学系と、第2の方向に沿って、第2のプローブ光を第2のセル領域に入射させるための第4光学系と、第1のセル領域を通過した第1のプローブ光、及び、第2のセル領域を通過した第2のプローブ光を検出する検出部18,18rと、検出部18,18rの検出結果に基づいて、磁場の強度を導出する導出部19と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属の蒸気が封入され、測定対象に沿った第1の方向に沿って配置され、前記測定対象上に第1のセル領域及び第2のセル領域を形成する少なくとも一つのセルと、
アルカリ金属原子を励起するためのポンプ光を出射するポンプレーザと、
前記アルカリ金属原子の励起状態におけるスピン偏極により生じる磁気旋光角の変化を検出するためのプローブ光であって、第1のプローブ光及び第2のプローブ光を含む、前記プローブ光を出射するプローブレーザと、
前記第1の方向に沿って、前記ポンプ光を前記第1のセル領域に入射させるための第1光学系と、
前記第1の方向に沿って、前記第1のセル領域を通過したポンプ光を前記第2のセル領域に入射させるための第2光学系と、
前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って、前記第1のプローブ光を前記第1のセル領域に入射させるための第3光学系と、
前記第2の方向に沿って、前記第2のプローブ光を前記第2のセル領域に入射させるための第4光学系と、
前記第1のセル領域を通過した第1のプローブ光、及び、前記第2のセル領域を通過した第2のプローブ光を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記第1のセル領域内における前記第1のプローブ光の前記磁気旋光角の変化から、前記ポンプ光と前記第1のプローブ光とが直交した領域に係る磁場の強度を導出し、前記第2のセル領域内における前記第2のプローブ光の前記磁気旋光角の変化から、前記第1のセル領域を通過したポンプ光と前記第2のプローブ光とが直交した領域に係る磁場の強度を導出する導出部と、
を備える、光励起磁気センサ。
【請求項2】
前記第1のセル領域及び前記第2のセル領域は、複数のセルによって形成される、請求項1に記載の光励起磁気センサ。
【請求項3】
前記複数のセルは、前記測定対象から離れる方向に沿って互いに離間して配置されており、
前記導出部は、前記第1のセル領域内に係る磁場の強度と前記第2のセル領域内に係る磁場の強度との差分を算出することによって、ノイズ除去処理を行う、
請求項2に記載の光励起磁気センサ。
【請求項4】
前記複数のセルは、前記第1の方向に直交し且つ前記測定対象に沿った方向に互いに離間して配置されている、請求項2に記載の光励起磁気センサ。
【請求項5】
前記第1のセル領域及び前記第2のセル領域は、前記測定対象から離れる方向に沿って互いに離間しており、一つのセルによって形成され、
前記導出部は、前記第1のセル領域内に係る磁場の強度と前記第2のセル領域内に係る磁場の強度との差分を算出することによって、ノイズ除去処理を行う、
請求項1に記載の光励起磁気センサ。
【請求項6】
前記少なくとも一つのセルは、前記第1の方向に交わる一対の端面であって、反射防止膜が取り付けられた前記端面を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の光励起磁気センサ。
【請求項7】
前記第2のセル領域を通過した前記ポンプ光の減衰を検出するための減衰検出部をさらに備え、
前記導出部は、前記減衰検出部の検出結果に基づいて、前記第1のセル領域内に係る磁場の強度及び前記第2のセル領域内に係る磁場の強度のうちの少なくとも一つを補正する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の光励起磁気センサ。
【請求項8】
前記アルカリ金属はカリウム及びルビジウムであり、
前記ルビジウムの密度は前記カリウムの密度よりも小さく、
前記ポンプレーザは、前記ルビジウムの原子を励起して、前記ルビジウムの原子のスピン偏極を前記カリウムの原子に移すための前記ポンプ光を出射し、
前記プローブレーザは、前記カリウムの原子の励起状態におけるスピン偏極により生じる磁気旋光角の変化を検出するための前記プローブ光を出射する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の光励起磁気センサ。
【請求項9】
前記第2光学系は、前記第1のセル領域を通過したポンプ光を折り返し、前記第2のセル領域に入射させる、請求項1~8のいずれか一項に記載の光励起磁気センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光励起磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光励起磁気センサを用いた脳磁計が知られている(例えば特許文献1参照)。光励起磁気センサは、光ポンピングによってアルカリ金属原子を励起し、該原子のスピン偏極を用いることで微小な磁場を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5823195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光励起磁気センサを用いた脳磁計では、多数の光励起磁気センサが狭い間隔で配置される。そのため、光励起磁気センサの小型化が望まれている。
【0005】
本開示の一態様は、小型化が可能な光励起磁気センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る光励起磁気センサは、アルカリ金属の蒸気が封入され、測定対象に沿った第1の方向に沿って配置され、測定対象上に第1のセル領域及び第2のセル領域を形成する少なくとも一つのセルと、アルカリ金属原子を励起するためのポンプ光を出射するポンプレーザと、アルカリ金属原子の励起状態におけるスピン偏極により生じる磁気旋光角の変化を検出するためのプローブ光であって、第1のプローブ光及び第2のプローブ光を含む、プローブ光を出射するプローブレーザと、第1の方向に沿って、ポンプ光を第1のセル領域に入射させるための第1光学系と、第1の方向に沿って、第1のセル領域を通過したポンプ光を第2のセル領域に入射させるための第2光学系と、第1の方向に直交する第2の方向に沿って、第1のプローブ光を第1のセル領域に入射させるための第3光学系と、第2の方向に沿って、第2のプローブ光を第2のセル領域に入射させるための第4光学系と、第1のセル領域を通過した第1のプローブ光、及び、第2のセル領域を通過した第2のプローブ光を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて、第1のセル領域内における第1のプローブ光の磁気旋光角の変化から、ポンプ光と第1のプローブ光とが直交した領域に係る磁場の強度を導出し、第2のセル領域内における第2のプローブ光の磁気旋光角の変化から、第1のセル領域を通過したポンプ光と第2のプローブ光とが直交した領域に係る磁場の強度を導出する導出部と、を備える。
【0007】
本開示の一態様に係る光励起磁気センサでは、第1の方向に沿って、ポンプ光が第1のセル領域に入射すると共に、第2の方向に沿って、第1のプローブ光が第1のセル領域に入射する。第1のセル領域内では、ポンプ光と第1のプローブ光とで進行方向が直交する。そして、第1の方向に沿って、第1のセル領域を通過したポンプ光が第2のセル領域に入射すると共に、第2の方向に沿って、第2のプローブ光が第2のセル領域に入射する。第2のセル領域内では、第1のセル領域を通過したポンプ光と第2のプローブ光とで進行方向が直交する。すなわち、同一のポンプ光が複数のセル領域に亘って連続して入射する。そして、ポンプ光及び第1のプローブ光を用いてこれらが交差する領域に係る磁場の強度が導出され、ポンプ光及び第2のプローブ光を用いてこれらが交差する領域に係る磁場の強度が導出される。これにより、セル領域の数に対応するようにポンプ光を分岐したりポンプレーザを複数用意したりする必要がなくなる。したがって、ポンプ光に係る構成を簡易にすることができる。これにより、小型化が可能な光励起磁気センサを提供することができる。
【0008】
第1のセル領域及び第2のセル領域は、複数のセルによって形成されてもよい。これにより、各セルを小型化することができる。
【0009】
複数のセルは、測定対象から離れる方向に沿って互いに離間して配置されてもよい。導出部は、第1のセル領域内に係る磁場の強度と第2のセル領域内に係る磁場の強度との差分を算出することによって、ノイズ除去処理を行ってもよい。このような構成によれば、コモンモードノイズの影響が第1のセル領域内に係る磁場の強度及び第2のセル領域内に係る磁場の強度のそれぞれに示されるため、これらの差分を算出することによってコモンモードノイズが除去される。これにより、光励起磁気センサの測定精度を向上させることができる。
【0010】
複数のセルは、第1の方向に直交し且つ測定対象に沿った方向に互いに離間して配置されていてもよい。このような構成によれば、測定対象に沿った水平な方向において、セルが隣り合う。隣り合うセルには同一のポンプ光が入射するため、セルごとにポンプ光に係る構成を用意する必要がなくなる。この場合、隣り合うセルの間隔を狭めることができるため、光励起磁気センサを小型化することができる。
【0011】
第1のセル領域及び第2のセル領域は、測定対象から離れる方向に沿って互いに離間しており、一つのセルによって形成されてもよい。導出部は、第1のセル領域内に係る磁場の強度と第2のセル領域内に係る磁場の強度との差分を算出することによって、ノイズ除去処理を行ってもよい。これにより、セルを簡易な構成とすることができる。また、コモンモードノイズが除去されることにより、光励起磁気センサの測定精度を向上させることができる。
【0012】
少なくとも一つのセルは、第1の方向に交わる一対の端面であって、反射防止膜が取り付けられた端面を有してもよい。このような構成によれば、ポンプ光が第1の方向に沿って第1のセル領域又は第2のセル領域に入出射する際、ポンプ光の反射による減衰が抑制される。これにより、ポンプレーザの電力を削減することができる。
【0013】
第2のセル領域を通過した前記ポンプ光の減衰を検出するための減衰検出部をさらに備えてもよい。導出部は、減衰検出部の検出結果に基づいて、第1のセル領域内に係る磁場の強度及び第2のセル領域内に係る磁場の強度のうちの少なくとも一つを補正してもよい。このような構成によれば、ポンプ光の減衰が考慮され、各セル領域内に係る磁場の強度が補正される。これにより、光励起磁気センサの測定精度を向上させることができる。
【0014】
アルカリ金属はカリウム及びルビジウムであり、ルビジウムの密度はカリウムの密度よりも小さく、ポンプレーザは、ルビジウムの原子を励起して、ルビジウムの原子のスピン偏極をカリウムの原子に移すためのポンプ光を出射し、プローブレーザは、カリウムの原子の励起状態におけるスピン偏極により生じる磁気旋光角の変化を検出するためのプローブ光を出射してもよい。このような構成によれば、ポンプ光がルビジウムの原子を励起させると、ルビジウムの原子のスピン偏極がカリウムの原子に移り、カリウムの原子が励起する。この現象は、カリウムとルビジウムのスピン交換相互作用によるものである。ポンプ光が密度の低いルビジウムを励起することにより、ポンプ光の減衰が抑制される。その結果、ポンプレーザの電力を削減することができる。
【0015】
第2光学系は、第1のセル領域を通過したポンプ光を折り返し、第2のセル領域に入射させてもよい。この場合、ポンプ光の光路を短く設定することが可能になるため小型化が可能な光励起磁気センサ1を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一態様によれば、小型化が可能な光励起磁気センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】光励起磁気センサの構成を示す図である。
図2】第1実施形態におけるセルの一例を示す斜視図である。
図3】第1実施形態におけるポンプ光及びプローブ光の光路を示す概略図である。
図4】第2実施形態におけるセルの一例を示す斜視図である。
図5】第2実施形態におけるポンプ光及びプローブ光の光路を示す概略図である。
図6】第3実施形態におけるポンプ光及びプローブ光の光路を示す概略図である。
図7】第1変形例に係る光励起磁気センサの構成を示す図である。
図8】第2変形例に係る光励起磁気センサの構成を示す図である。
図9】バイアス磁場を示す概略図である。
図10】脳磁計を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、光励起磁気センサ1の構成を示す図である。図1の(a)部は、光励起磁気センサ1を側面から見たときの構成を示す図である。図1の(b)部は、光励起磁気センサ1を正面から見たときの構成を示す図である。光励起磁気センサ1は光ポンピングを利用して磁場を測定する装置である。本実施形態において、光励起磁気センサ1は脳磁測定に用いられるものとして説明するが、用途はこれに限られない。一例では、光励起磁気センサ1は脳磁場を測定対象とする。図1において、x軸及びy軸は測定対象に沿った方向であり、z軸は測定対象に交差する方向(測定対象から離れる方向)である。x軸、y軸及びz軸は互いに直交する。以下、x軸の正方向及び負方向を総称して「第1の方向」という。また、y軸の正方向及び負方向を総称して「第2の方向」という。さらに、z軸の正方向及び負方向を総称して「第3の方向」という。
【0020】
図1の(a)部に示されるように、光励起磁気センサ1は、セル2と、ヒータ3と、熱電対5と、ケース6と、ポンプレーザ7と、プローブレーザ8と、ミラー10,11と、分割部12と、減衰検出部20と、ポンプコネクタ70と、プローブコネクタ80と、を備える。
【0021】
セル2は、アルカリ金属の蒸気を封入する容器である。セル2は、測定対象に沿った第1の方向に沿って配置される。ここで、図2を参照して、セル2の詳細を説明する。セル2は、略直方体且つ有底筒状の形状を有する。セル2の長手方向に対して垂直な方向のセル2の断面は、例えば正方形である。セル2は、例えば、石英、サファイア、シリコン、コバールガラス、ホウケイ酸ガラス等の材料により構成され得る。セル2は、後述するポンプ光及びプローブ光に対して光透過性を有する。セル2は、ポンプ面2a,2bと、プローブ面2c,2dと、上面2eと、下面2fと、封じ切り部2gとを有する。
【0022】
ポンプ面2a,2bは、第1の方向に交わる一対の端面である。ポンプ面2a,2bには、反射防止膜200が取り付けられる。ポンプ面2aには、第1の方向に沿ってポンプ光が入射する。ポンプ面2bは、第1の方向に沿ってポンプ光を出射する。ポンプ面2a,2bに対するポンプ光の入出射は逆方向でもよい。
【0023】
プローブ面2c,2dは、第2の方向に交わる一対の平面である。プローブ面2cには、第2の方向に沿ってプローブ光が入射する。プローブ面2dは、第2の方向に沿ってプローブ光を出射する。プローブ面2c,2dに対するプローブ光の入出射は逆方向でもよい。
【0024】
上面2e及び下面2fは、第3の方向に交わる一対の平面である。セル2の上面2eには、後述するヒータ3等が取り付けられる。セル2の下面2fには、測定対象から発生する磁場が、測定対象に交差する方向に沿って入射する。
【0025】
封じ切り部2gは、アルカリ金属の蒸気を封入する際に設けられる端部である。封じ切り部2gは、例えば、上面2eのうちポンプ面2bに近接する領域に設けられる。封じ切り部2gは、上面2eを基端として、第3の方向に沿って上面2eから離れるように突出し、徐々に縮径される形状を有する。なお、従来の略直方体状のセルでは、アルカリ金属の蒸気を封入するための端部がセルの長手方向に突出して設けられていた。このため、従来の略直方体状のセルでは、セルの長手方向に一対の端面を設けることができなかった。一方、本実施形態における封じ切り部2gは上面2eに設けられる。これにより、セル2の長手方向において、ポンプ面2a,2bは一対の端面として設けられる。
【0026】
セル2は、アルカリ金属の蒸気を収容する。アルカリ金属は、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、及びセシウム(Cs)の少なくとも1種類以上とされてもよい。例えば、アルカリ金属は、カリウム及びルビジウムであってもよく、カリウムのみであってもよい。カリウムは、スピン破壊衝突(spin-destruction collision)緩和レートが光励起磁気センサで用いられるアルカリ金属の中でも比較的小さい。カリウムのスピン破壊衝突緩和レートは、例えばセシウム及びルビジウム等よりも小さい。従って、単一のアルカリ金属を採用する場合、カリウムのみを用いた光励起磁気センサは、セシウムのみ又はルビジウムのみを用いた光励起磁気センサよりも感度が高い。
【0027】
また、セル2は封入ガスを収容する。封入ガスは、アルカリ金属の蒸気のスピン偏極の緩和を抑制する。また、封入ガスは、アルカリ金属蒸気を保護するとともにノイズ発光を抑制する。封入ガスは、例えば、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、窒素(N2)等の不活性ガスであってもよい。封入ガスは、例えばヘリウム及び窒素とされてもよい。
【0028】
図1の(a)部に戻り、セル2には、ヒータ3、及び熱電対5が取り付けられている。ヒータ3は、ヒータ電源(不図示)から供給される電流に応じて発熱する。ヒータ3は、セル2の内部温度を制御することによりアルカリ金属の蒸気密度を制御する。ヒータ3は、例えばセル2においてアルカリ金属としてカリウム及びルビジウムが収容されている場合、セル2の内部温度が180℃になるように加熱する。ヒータ3は、例えばセル2の上面2eに取り付けられる。熱電対5は、セル2の内部温度を測定する。熱電対5は、例えばセル2のプローブ面2c又はプローブ面2dであって、プローブ光の光路を遮らない位置に取り付けられる。
【0029】
光励起磁気センサ1は、セル2と同様の構成であるセル2rを有する。セル2r及びセル2は、測定対象から離れる方向(第3の方向)に沿って互いに離間して配置される。セル2r及びセル2は、測定対象上に第1のセル領域及び第2のセル領域を形成する。第1のセル領域及び第2のセル領域は、光励起磁気センサ1による磁場を測定する領域に相当する。第1実施形態において、第1のセル領域はセル2rによって形成される。また、第2のセル領域はセル2によって形成される。すなわち、第1実施形態において、第1のセル領域及び第2のセル領域は、複数のセル2r,2によって形成される。
【0030】
ポンプレーザ7は、アルカリ金属原子を励起するためのポンプ光を出射する。セル2に収容されたアルカリ金属原子は、ポンプ光により励起され、スピンの方向が揃う(スピン偏極)。ポンプ光の波長は、アルカリ金属の蒸気を構成する原子の種類(より詳細には吸収線の波長)に応じて設定される。
【0031】
ポンプレーザ7は、セル2,2rに収容されるアルカリ金属がカリウム及びルビジウムである場合は、ルビジウムの原子を励起して、ルビジウムの原子のスピン偏極をカリウムの原子に移すためのポンプ光を出射してもよい。この場合、ポンプ光によりルビジウムの原子が励起状態となる。そして、カリウムとルビジウムのスピン交換相互作用によって、ルビジウムの原子のスピン偏極がカリウムの原子に移り、カリウムの原子が励起状態となる。
【0032】
ポンプコネクタ70は、ポンプレーザ7から出射されたポンプ光を光励起磁気センサ1の筐体内部に導入するコネクタである。ポンプコネクタ70は、例えば、セル2rのポンプ面2bに対しx軸の正方向に近接した位置に配置される。
【0033】
プローブレーザ8は、アルカリ金属原子の励起状態におけるスピン偏極により生じる磁気旋光角の変化を検出するためのプローブ光を出射する。プローブ光は、第1のプローブ光及び第2のプローブ光を含む。第1のプローブ光及び第2のプローブ光は、1つのプローブ光がファイバ分岐等により分割されたプローブ光であってもよいし、複数のプローブレーザ8により出射されたプローブ光であってもよい。プローブ光は、アルカリ金属の蒸気を通過する際に、アルカリ金属原子のスピン偏極の状態の影響を受けて、磁気旋光角が変化する。この磁気旋光角の変化が検出されることにより、スピン偏極の状態が導出可能となる。プローブ光の波長は、アルカリ金属の蒸気を構成する原子の種類(より詳細には吸収線の波長)に応じて設定される。例えばセル2においてアルカリ金属としてカリウムのみが収容されている場合、プローブ光の波長は、ポンプ光の波長(例えば770.1nm)から離調し、例えば770nm程度とされる。プローブ光の波長がポンプ光の波長から離調することによって、プローブ光がカリウムに吸収されることが抑制される。
【0034】
アルカリ金属としてカリウム及びルビジウムがセル2に収容されている場合、プローブレーザ8は、カリウムの原子の励起状態におけるスピン偏極により生じる磁気旋光角の変化を検出するためのプローブ光を出射してもよい。励起に用いるルビジウムの密度は、プローブに用いるカリウムの密度よりも小さく設定される。ルビジウムの密度がカリウムの密度よりも小さい場合、励起によるポンプ光の減衰が抑制される。これにより、セル2が細長い形状であっても、ポンプ面2aから2b、あるいはポンプ面2bから2aまで到達する。その結果、ポンプ光はルビジウムを均一に励起することができる。よって、光励起磁気センサ1は、セル2内において均一な感度を得ることができる。
【0035】
プローブコネクタ80は、プローブレーザ8から出射されたプローブ光を光励起磁気センサ1の筐体内部に導入するコネクタである。
【0036】
ミラー10,11は、ポンプ光を90度の角度で反射するポンプ光用ミラーである。ミラー10は、セル2rのポンプ面2aに対しx軸の負方向に近接した位置に配置される。ミラー11は、ミラー10に対しz軸の負方向に離れ、且つ、セル2のポンプ面2aに対し近接した位置に配置される。
【0037】
減衰検出部20は、第2のセル領域を通過したポンプ光の減衰を検出する。減衰検出部20は、フォトダイオードにより構成される。減衰検出部20は、例えば、セル2のポンプ面2bに対しx軸の正方向に近接した位置に配置される。減衰検出部20は、複数のセル2r,2を連続して通過後のポンプ光の強度に応じた信号を生成して出力する。
【0038】
分割部12は、プローブ光を複数に分割する。分割部12は、例えば、セル2とセル2rとの間に配置されると共に、プローブコネクタ80に対しx軸の負方向に離れて並んで配置される。分割部12には、x軸の負方向に向けてプローブ光が入射する。分割された各プローブ光の数は、光励起磁気センサ1が磁場を測定できるチャンネル(ch)数に対応する。また、チャンネル数に応じて、プローブ光の光路上の各構成の数も異なり得る。一例では、分割部12は、プローブ光を4つのプローブ光に分割する。この場合、分割部12はビームスプリッタ12BSa、12BSb、12BSc、及びミラー12Mによって構成される。ビームスプリッタ12BSa,12BSb,12bScは、入射した光成分の一部を透過し、残りの光成分を透過面とは異なる面から出力する。ミラー12Mは、入射した光を90度の角度で反射する。ビームスプリッタ12BSa、12BSb、12BSc、及びミラー12Mは、x軸の負方向に沿ってこの順で配置される。
【0039】
ビームスプリッタ12BSa、12BSb、及び12BScの透過率はそれぞれ異なる。例えば、ビームスプリッタ12BSa、12BSb、及び12BScの透過率はそれぞれ、75%、66.6%、及び50%とされてもよい。この場合、ビームスプリッタ12BSaは、入射した光成分のうち、75%をx軸の負方向に透過して、残りの25%をy軸の負方向に出力する。ビームスプリッタ12BSbは、ビームスプリッタ12BSaを透過した光成分のうち、66.6%をx軸の負方向に透過して、残りの33.3%をy軸の負方向に出力する。ビームスプリッタ12BScは、ビームスプリッタ12BSbを透過した光成分のうち、50%をx軸の負方向に透過して、残りの50%をy軸の負方向に出力する。ミラー12Mは、ビームスプリッタ12BScを透過した光成分をy軸の負方向に反射する。このように、分割部12は、y軸の負方向に沿ってプローブ光を4つに分割する。4つのプローブ光はそれぞれ、分割前(分割部12に導かれる前)のプローブ光の25%の光成分を有する。
【0040】
図1の(b)部に示されるように、光励起磁気センサ1は、ミラー13,14,15,17と、偏光ビームスプリッタ16と、検出部18と、導出部19と、をさらに備える。図1の(b)部では、ミラー10,11を省略している。
【0041】
ミラー13,14は、分割部12によって分割された各プローブ光を90度の角度で反射するプローブ光用ミラーである。ミラー13は、分割部12に対しy軸の負方向に近接して配置される。ミラー14は、ミラー13に対しz軸の負方向に離れ、且つ、セル2のプローブ面2cに近接して配置される。
【0042】
ミラー15,17は、セル2を通過した各プローブ光を90度の角度で反射するプローブ光用ミラーである。ミラー15は、ミラー14に対し、セル2を挟んでy軸の正方向に離れて配置される。
【0043】
偏光ビームスプリッタ16は、入射した光に含まれる第1の磁気旋光角度を有する第1の光成分を透過し、そのほかの磁気旋光角度を有する第2の光成分を透過面とは異なる面から出力する。例えば、第1の磁気旋光角度は、プローブレーザ8から出射されたプローブ光が有する磁気旋光角度に対して45度傾いた角度である。第2の光成分は、第1の磁気旋光角度に対して90度傾いた角度である。よって、セル2に磁場が与えられない場合、第1、第2の磁気旋光角度を有するプローブ光の光量は等しい。また、セル2に磁場が与えられた場合、アルカリ金属原子のスピン偏極が変化し、プローブ光がセル2の内部を通過する際にその偏波面が変化するので磁場の強度に応じて光量のバランスが変化する。偏光ビームスプリッタ16は、ミラー15に対しz軸の正方向に離れて配置される。
【0044】
ミラー17は、偏光ビームスプリッタ16により出力された各プローブ光を90度の角度で反射するプローブ光用ミラーである。ミラー17は、偏光ビームスプリッタ16に対しy軸の正方向に近接して配置される。ミラー17は、偏光ビームスプリッタ16に対しz軸の正方向に近接して配置されてもよい。
【0045】
検出部18は、第1のセル領域を通過した第1のプローブ光、及び、第2のセル領域を通過した第2のプローブ光を検出する。検出部18は、チャンネルの数に対応する一対のフォトダイオードにより構成される。検出部18を構成する一対のフォトダイオードは、それぞれ、偏光ビームスプリッタ16及びミラー17に対しz軸の正方向に近接して配置される。ミラー17が偏光ビームスプリッタ16に対してz軸の正方向に配置されている場合には、検出部18は、偏光ビームスプリッタ16及びミラー17に対しy軸の正方向に近接して配置されてもよい。検出部18には、偏光ビームスプリッタ16により透過又は出力された第1の光成分及び第2の光成分が、一対のフォトダイオードにそれぞれ入射する。検出部18は、第1の光成分の強度に応じた信号、及び第2の光成分の強度に応じた信号を生成して出力する。
【0046】
光励起磁気センサ1は、ミラー13r,14r,15r,17rと、偏光ビームスプリッタ16rと、検出部18rと、をさらに備える。これらの構成はそれぞれ、上述したミラー13,14,15,17、偏光ビームスプリッタ16、及び検出部18と同様の機能を有する。
【0047】
ミラー13rは、分割部12に対しy軸の負方向に近接して配置される。ミラー14rは、ミラー13rに対しz軸の正方向に離れ、且つ、セル2rのプローブ面2cに近接して配置される。ミラー15rは、ミラー14rに対し、セル2rを挟んでy軸の正方向に離れて配置される。偏光ビームスプリッタ16rは、ミラー15rに対しz軸の正方向に離れて配置される。ミラー17rは、偏光ビームスプリッタ16rに対しy軸の負方向に近接して配置される。ミラー17rは、偏光ビームスプリッタ16rに対しz軸の正方向に近接して配置されてもよい。検出部18rを構成する一対のフォトダイオードは、それぞれ、偏光ビームスプリッタ16r及びミラー17rに対しz軸の正方向に近接して配置される。ミラー17rが偏光ビームスプリッタ16rに対してz軸の正方向に配置されている場合には、検出部18rは、偏光ビームスプリッタ16r及びミラー17rに対しy軸の負方向に近接して配置されてもよい。
【0048】
導出部19は、検出部18,18r及び減衰検出部20からの出力信号を取得する。導出部19は、検出部18rの検出結果に基づいて、第1のセル領域内における第1のプローブ光の磁気旋光角の変化から、ポンプ光と第1のプローブ光とが直交した領域に係る磁場の強度を導出する。導出部19は、検出部18の検出結果に基づいて、第2のセル領域内における第2のプローブ光の磁気旋光角の変化から、第1のセル領域を通過したポンプ光と第2のプローブ光とが直交した領域に係る磁場の強度を導出する。
【0049】
導出部19は、第1のセル領域内に係る磁場の強度と第2のセル領域内に係る磁場の強度との差分を算出することによって、ノイズ除去処理を行う。このような光励起磁気センサ1は、一次微分軸型グラジオメータとして構成される。
【0050】
導出部19は、減衰検出部20の検出結果に基づいて、第1のセル領域内に係る磁場の強度及び第2のセル領域内に係る磁場の強度のうちの少なくとも一つを補正する。例えば、導出部19は、減衰検出部20の検出結果に基づき、セル2を通過したポンプ光の減衰を導出する。一例では、導出部19は、例えばポンプレーザ7から出力されたポンプ光の信号強度と、減衰検出部20により検出されたポンプ光の信号強度とに基づいて、ポンプ光の減衰を導出する。導出部19は、導出したポンプ光の減衰と所定の関数とを用いて、第1のセル領域内に係る磁場の強度及び第2のセル領域内に係る磁場の強度のうちの少なくとも一つを補正する。
【0051】
導出部19は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備えて構成されている。かかる導出部19としては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートフォン、タブレット端末などが挙げられる。導出部19は、メモリに格納されるプログラムをコンピュータシステムのCPUで実行することにより機能する。
【0052】
図3は、第1実施形態におけるポンプ光及びプローブ光の光路を示す概略図である。図3では、光励起磁気センサ1の構成を簡略化して示している。まず、ポンプ光の光路について、図3の(a)部を参照して説明する。図3の(a)部は光励起磁気センサ1を側面から見た図である。図3の(a)部は、測定対象からz軸の正方向に沿って磁場が発生していることを示す。
【0053】
ポンプ光LPは、ポンプコネクタ70によって光励起磁気センサ1の筐体内部に導入されると共に、x軸の負方向に出射される。セル2rのポンプ面2bには、x軸の負方向に沿ってポンプ光LPが入射する。このように、ポンプコネクタ70は、第1の方向に沿って、ポンプ光LPを第1のセル領域に入射させるための第1光学系として機能する。
【0054】
ポンプ光LPは、x軸の負方向に沿ってセル2r内を通過する。ポンプ光LPは、セル2rのポンプ面2aから出射される。ミラー10は、セル2rを通過したポンプ光LPをz軸の負方向に反射する。続いて、ミラー11は、ミラー10により反射されたポンプ光LPをx軸の正方向に反射する。セル2のポンプ面2aには、x軸の正方向に沿ってポンプ光LPが入射する。このように、ミラー10,11は、第1の方向に沿って、第1のセル領域を通過したポンプ光を第2のセル領域に入射させるための第2光学系として機能する。また、ミラー10,11は、第1のセル領域を通過したポンプ光を折り返し、第2のセル領域に入射させる。
【0055】
ポンプ光LPは、x軸の正方向に沿ってセル2内を通過する。ポンプ光LPは、セル2のポンプ面2bから出射される。減衰検出部20には、セル2を通過したポンプ光LPが入射する。
【0056】
次に、プローブ光の光路について説明する。プローブ光LB1,LB2は、プローブコネクタ80によって光励起磁気センサ1の筐体内部に導入されると共に、x軸の負方向に出射される。プローブ光LB1,LB2はそれぞれ、分割部12により4つのプローブ光に分割され、y軸の負方向に出射される。以下、図3の説明において、プローブ光LB1は4つに分割されているものとし、プローブ光LB2も4つに分割されているものとする。
【0057】
図3の(b)部は光励起磁気センサ1を正面から見た図である。図3の(b)部はポンプ光LPの図示を省略している。ミラー13rは、分割部12から出力されたプローブ光LB1をz軸の正方向に反射する。ミラー14rは、ミラー13rにより反射されたプローブ光LB1をy軸の正方向に反射する。セル2rのプローブ面2cには、y軸の正方向に沿ってプローブ光LB1が入射する。このように、分割部12及びミラー13r,14rは、第1の方向に直交する第2の方向に沿って、第1のプローブ光を第1のセル領域に入射させるための第3光学系として機能する。
【0058】
プローブ光LB1は、y軸の正方向に沿ってセル2r内を通過する。プローブ光LB1は、セル2rのプローブ面2dから出射される。ミラー15rは、セル2rを通過したプローブ光LB1をz軸の正方向に反射する。偏光ビームスプリッタ16rは、ミラー15rにより反射されたプローブ光LB1の第1の光成分をz軸の正方向に透過し、第2の光成分をy軸の負方向に出力する。ミラー17rは、偏光ビームスプリッタ16rにより透過されたプローブ光LB1の第1の光成分をy軸の負方向に反射する。検出部18rの一対のフォトダイオードには、プローブ光LB1の第1の光成分及び第2の光成分がそれぞれ入射する。
【0059】
ミラー13は、分割部12から出力されたプローブ光LB2をz軸の負方向に反射する。ミラー14は、ミラー13により反射されたプローブ光LB2をy軸の正方向に反射する。セル2のプローブ面2cには、y軸の正方向に沿ってプローブ光LB2が入射する。このように、分割部12及びミラー13,14は、第2の方向に沿って、第2のプローブ光を第2のセル領域に入射させるための第4光学系として機能する。
【0060】
プローブ光LB2は、y軸の正方向に沿ってセル2内を通過する。プローブ光LB2は、セル2のプローブ面2dから出射される。ミラー15は、セル2を通過したプローブ光LB2をz軸の正方向に反射する。偏光ビームスプリッタ16は、ミラー15により反射されたプローブ光LB2の第1の光成分をz軸の正方向に透過し、第2の光成分をy軸の正方向に出力する。ミラー17は、偏光ビームスプリッタ16により透過されたプローブ光LB2の第1の光成分をy軸の正方向に反射する。検出部18の一対のフォトダイオードには、プローブ光LB2の第1の光成分及び第2の光成分がそれぞれ入射する。
【0061】
このようにして、ポンプ光LPは、第1のセル領域をx軸の負方向(第1の方向)に進む。プローブ光LB1は、第1のセル領域をy軸の正方向(第2の方向)に進む。第1の方向に沿ったポンプ光LP及び第2の方向に沿ったプローブ光LB1は、第1のセル領域において直交する。その結果、一次微分軸型グラジオメータにおける各チャンネルの参照領域が形成される。
【0062】
また、ポンプ光LPは、第2のセル領域をx軸の正方向(第1の方向)に進む。プローブ光LB2は、第2のセル領域をy軸の正方向(第2の方向)に進む。第1の方向に沿ったポンプ光LP及び第2の方向に沿ったプローブ光LB2は、第2のセル領域において直交する。その結果、一次微分軸型グラジオメータにおける各チャンネルの測定領域が形成される。
【0063】
図3の(a)部に示されるように、第1のセル領域において、1番目の参照領域ch1-refが形成される。また、第2のセル領域において、1番目の測定領域ch1が形成される。1番目の参照領域ch1-ref及び1番目の測定領域ch1は、第3の方向に沿って互いに離間している。1番目の測定領域ch1は、1番目の参照領域ch1-refよりも測定対象に近い。そのため、1番目の測定領域ch1は、測定対象から発生する磁場の感度を高くすることができる。ここで、1番目の参照領域ch1-ref及び1番目の測定領域ch1は、いずれもコモンモードノイズの影響を受け得る。一次微分軸型グラジオメータでは、1番目の参照領域ch1-refと、1番目の測定領域ch1に係る磁場の強度との差分を算出することによって、コモンモードノイズの影響を打ち消すことができる。
【0064】
以上説明したように、第1実施形態に係る光励起磁気センサ1は、アルカリ金属の蒸気が封入され、測定対象に沿った第1の方向に沿って配置され、測定対象上に第1のセル領域及び第2のセル領域を形成する少なくとも一つのセル2と、アルカリ金属原子を励起するためのポンプ光を出射するポンプレーザ7と、アルカリ金属原子の励起状態におけるスピン偏極により生じる磁気旋光角の変化を検出するためのプローブ光であって、第1のプローブ光及び第2のプローブ光を含む、プローブ光を出射するプローブレーザ8と、第1の方向に沿って、ポンプ光を第1のセル領域に入射させるための第1光学系と、第1の方向に沿って、第1のセル領域を通過したポンプ光を第2のセル領域に入射させるための第2光学系と、第1の方向に直交する第2の方向に沿って、第1のプローブ光を第1のセル領域に入射させるための第3光学系と、第2の方向に沿って、第2のプローブ光を第2のセル領域に入射させるための第4光学系と、第1のセル領域を通過した第1のプローブ光、及び、第2のセル領域を通過した第2のプローブ光を検出する検出部18,18rと、検出部18,18rの検出結果に基づいて、第1のセル領域内における第1のプローブ光の磁気旋光角の変化から、ポンプ光と第1のプローブ光とが直交した領域に係る磁場の強度を導出し、第2のセル領域内における第2のプローブ光の磁気旋光角の変化から、第1のセル領域を通過したポンプ光と第2のプローブ光とが直交した領域に係る磁場の強度を導出する導出部19と、を備える。
【0065】
この光励起磁気センサ1では、第1の方向に沿って、ポンプ光が第1のセル領域に入射すると共に、第2の方向に沿って、第1のプローブ光が第1のセル領域に入射する。第1のセル領域内では、ポンプ光と第1のプローブ光とで進行方向が直交する。そして、第1の方向に沿って、第1のセル領域を通過したポンプ光が第2のセル領域に入射すると共に、第2の方向に沿って、第2のプローブ光が第2のセル領域に入射する。第2のセル領域内では、第1のセル領域を通過したポンプ光と第2のプローブ光とで進行方向が直交する。すなわち、同一のポンプ光が複数のセル領域に亘って連続して入射する。そして、ポンプ光及び第1のプローブ光を用いてこれらが交差する領域に係る磁場の強度が導出され、ポンプ光及び第2のプローブ光を用いてこれらが交差する領域に係る磁場の強度が導出される。これにより、セル領域の数に対応するようにポンプ光を分岐したりポンプレーザ7を複数用意したりする必要がなくなる。したがって、ポンプ光に係る構成を簡易にすることができる。これにより、小型化が可能な光励起磁気センサ1を提供することができる。
【0066】
第1のセル領域及び第2のセル領域は、複数のセル2r,2によって形成されている。これにより、各セル2r,2を小型化することができる。
【0067】
複数のセル2r,2は、測定対象から離れる方向に沿って互いに離間して配置されており、導出部19は、第1のセル領域内に係る磁場の強度と第2のセル領域内に係る磁場の強度との差分を算出することによって、ノイズ除去処理を行っている。このような構成によれば、コモンモードノイズの影響が第1のセル領域内に係る磁場の強度及び第2のセル領域内に係る磁場の強度のそれぞれに示されるため、これらの差分を算出することによってコモンモードノイズが除去される。これにより、光励起磁気センサ1の測定精度を向上させることができる。
【0068】
少なくとも一つのセル2は、第1の方向に沿った一対のポンプ面2a,2bであって、反射防止膜200が取り付けられた2a,2bを有している。このような構成によれば、ポンプ光が第1の方向に沿って第1のセル領域又は第2のセル領域に入出射する際、ポンプ光の反射による減衰が抑制される。これにより、ポンプレーザ7の電力を削減することができる。
【0069】
本実施形態は、第2のセル領域を通過した前記ポンプ光の減衰を検出するための減衰検出部20をさらに備えている。導出部19は、減衰検出部20の検出結果に基づいて、第1のセル領域内に係る磁場の強度及び第2のセル領域内に係る磁場の強度のうちの少なくとも一つを補正している。このような構成によれば、ポンプ光の減衰が考慮され、各セル領域内に係る磁場の強度が補正される。これにより、光励起磁気センサ1の測定精度を向上させることができる。
【0070】
本実施形態では、セル2に収容されるアルカリ金属はカリウム及びルビジウムであり、ルビジウムの密度はカリウムの密度よりも小さく、ポンプレーザ7は、ルビジウムの原子を励起して、ルビジウムの原子のスピン偏極をカリウムの原子に移すためのポンプ光を出射し、プローブレーザ8は、カリウムの原子の励起状態におけるスピン偏極により生じる磁気旋光角の変化を検出するためのプローブ光を出射している。このような構成によれば、ポンプ光がルビジウムの原子を励起させると、ルビジウムの原子のスピン偏極がカリウムの原子に移り、カリウムの原子が励起する。この現象は、カリウムとルビジウムのスピン交換相互作用によるものである。ポンプ光が密度の低いルビジウムを励起することにより、ポンプ光の減衰が抑制される。その結果、ポンプレーザ7の電力を削減することができる。
【0071】
本実施形態では、第2光学系は、第1のセル領域を通過したポンプ光を折り返し、第2のセル領域に入射させている。この場合、ポンプ光の光路を短く設定することが可能になるため小型化が可能な光励起磁気センサ1を提供することができる。
【0072】
[第2実施形態]
図4及び図5を参照しながら、第2実施形態に係る光励起磁気センサ1Aについて説明する。光励起磁気センサ1Aは、第1のセル領域及び第2のセル領域が一つのセル2Aによって形成される点で、第1実施形態に係る光励起磁気センサ1と異なる。
【0073】
図4は、第2実施形態におけるセル2Aの一例を示す斜視図である。セル2Aは、第1実施形態におけるセル2と同様の機能を有するが、形状が異なる。セル2Aは、略直方体且つ有底筒状の形状を有する。セル2Aの長手方向に対して垂直な方向のセル2の断面は、例えば長方形である。セル2Aは、セル2よりも、第3の方向に延伸するように形成される。セル2Aは、仮想的に規定された空間である第1空間201A及び第2空間202Aを有する。第1空間201A及び第2空間202Aは、測定対象から離れる方向に沿って互いに離間している。第1空間201Aは、第1のセル領域を形成する。第2空間202Aは、第2のセル領域を形成する。すなわち、第2実施形態において、第1のセル領域及び第2のセル領域は、測定対象から離れる方向に沿って互いに離間しており、一つのセル2Aによって形成される。
【0074】
図5は、第2実施形態におけるポンプ光及びプローブ光の光路を示す概略図である。図5では、光励起磁気センサ1Aの構成を簡略化して示している。まず、ポンプ光の光路について、図5の(a)部を参照して説明する。図5の(a)部は光励起磁気センサ1Aを側面から見た図である。図5の(a)部は、測定対象からz軸の正方向に沿って磁場が発生していることを示す。
【0075】
ポンプ光LPは、ポンプコネクタ70によって光励起磁気センサ1Aの筐体内部に導入されると共に、x軸の負方向に出射される。セル2Aのポンプ面2bには、x軸の負方向に沿ってポンプ光LPが入射する。
【0076】
ポンプ光LPは、x軸の負方向に沿ってセル2Aの第1空間201Aを通過する。ポンプ光LPは、セル2Aのポンプ面2aから出射される。ミラー10は、セル2Aの第1空間201Aを通過したポンプ光LPをz軸の負方向に反射する。続いて、ミラー11は、ミラー10により反射されたポンプ光LPをx軸の正方向に反射する。セル2Aのポンプ面2aには、x軸の正方向に沿ってポンプ光LPが入射する。
【0077】
ポンプ光LPは、x軸の正方向に沿ってセル2の第2空間202Aを通過する。ポンプ光LPは、セル2Aのポンプ面2bから出射される。減衰検出部20には、セル2Aを通過したポンプ光LPが入射する。
【0078】
次に、プローブ光の光路について説明する。プローブ光LBは、プローブコネクタ80によって光励起磁気センサ1Aの筐体内部に導入されると共に、x軸の負方向に出射される。プローブ光LBはそれぞれ、分割部12により4つのプローブ光に分割され、y軸の負方向に出射される。以下、図5の説明において、プローブ光LBは4つに分割されているものとする。
【0079】
図5の(b)部は光励起磁気センサ1Aを正面から見た図である。図5の(b)部はポンプ光LPの図示を省略している。図5の(b)部に示されるように、光励起磁気センサ1Aは、ビームスプリッタ14BSを備える。ビームスプリッタ14BSは、ミラー13rに対しz軸の負方向に近接して配置される。
【0080】
ミラー13rは、分割部12から出力されたプローブ光LBをz軸の負方向に反射する。ビームスプリッタ14BSは、ミラー13rにより反射されたプローブ光LBのうち、50%をプローブ光LB1としてy軸の負方向に出力し、残りの50%をプローブ光LB2としてz軸の負方向に透過する。セル2Aのプローブ面2cには、y軸の正方向に沿ってプローブ光LB1が入射する。このように、分割部12、ミラー13r、及びビームスプリッタ14BSは、第1の方向に直交する第2の方向に沿って、第1のプローブ光を第1のセル領域に入射させるための第3光学系として機能する。
【0081】
ミラー14は、ビームスプリッタ14BSにより出力されたプローブ光LB2をy軸の正方向に反射する。セル2のプローブ面2cには、y軸の正方向に沿ってプローブ光LB2が入射する。このように、分割部12、ミラー13r、ビームスプリッタ14BS、ミラー14は、第2の方向に沿って、第2のプローブ光を第2のセル領域に入射させるための第4光学系として機能する。
【0082】
プローブ光LB1は、y軸の正方向に沿ってセル2Aの第1空間201Aを通過する。プローブ光LB2は、y軸の正方向に沿ってセル2Aの第2空間202Aを通過する。プローブ光LB1,LB2は、セル2Aのプローブ面2dから出射される。セル2Aを通過した後のプローブ光LB1,LB2の光路は、第1実施形態に係る光励起磁気センサ1におけるプローブ光LB1,LB2の光路と同様である。
【0083】
このようにして、第1の方向に沿ったポンプ光LP及び第2の方向に沿ったプローブ光LB1は、セル2Aの第1空間201A(第1のセル領域)において直交する。その結果、一次微分軸型グラジオメータにおける各チャンネルの参照領域が形成される。一例では、図5の(a)部に示されるように、第1のセル領域において、1番目の参照領域ch1-refが形成される。
【0084】
また、第1の方向に沿ったポンプ光LP及び第2の方向に沿ったプローブ光LB2は、セル2Aの第2空間202A(第2のセル領域)において直交する。その結果、一次微分軸型グラジオメータにおける各チャンネルの測定領域が形成される。一例では、第2のセル領域において、1番目の測定領域ch1が形成される。
【0085】
以上説明したように、第2実施形態に係る光励起磁気センサ1Aは、セル2Aを備える。第1のセル領域及び第2のセル領域は、測定対象から離れる方向に沿って互いに離間しており、一つのセル2Aによって形成されている。導出部19は、第1のセル領域内に係る磁場の強度と第2のセル領域内に係る磁場の強度との差分を算出することによって、ノイズ除去処理を行っている。これにより、セル2Aを簡易な構成とすることができる。また、コモンモードノイズが除去されることにより、光励起磁気センサ1Aの測定精度を向上させることができる。
【0086】
[第3実施形態]
図6を参照しながら、第3実施形態に係る光励起磁気センサ1Bについて説明する。光励起磁気センサ1Bは、第1のセル領域及び第2のセル領域を形成する複数のセルが第2の方向に沿って互いに離間して配置される点で、第1実施形態に係る光励起磁気センサ1と異なる。
【0087】
図6は、第3実施形態におけるポンプ光及びプローブ光の光路を示す概略図である。図6は、光励起磁気センサ1Aを上面から見た図である。図6では、光励起磁気センサ1Bの構成を簡略化して示している。
【0088】
光励起磁気センサ1Bは、第1実施形態におけるセル2と同様の構成であるセル21,22,23,24を備える。セル21,22,23,24は、y軸の正方向に沿ってこの順で、互いに離間して配置される。すなわち、複数のセルは、第1の方向に直交し且つ測定対象に沿った方向(第2の方向)に互いに離間して配置されている。第3実施形態において、第1のセル領域及び第2のセル領域は、順序付けられて配置されたセルのペアによって形成される。例えば、セル21が第1のセル領域を形成すると共に、セル22が第2のセル領域を形成する。また、セル22が第1のセル領域を形成すると共に、セル23が第2のセル領域を形成する。このように、セルが3つ以上ある場合、2つのセルをペアとして第1のセル領域及び第2のセル領域を形成してもよい。
【0089】
ポンプ光LPは、ポンプコネクタ70によって光励起磁気センサ1Bの筐体内部に導入されると共に、x軸の負方向に出射される。セル21のポンプ面2bには、x軸の負方向に沿ってポンプ光LPが入射する。
【0090】
ポンプ光LPは、x軸の負方向に沿ってセル21内を通過する。ポンプ光LPは、セル21のポンプ面2aから出射される。ミラー10は、セル21を通過したポンプ光LPをy軸の正方向に反射する。続いて、ミラー11は、ミラー10により反射されたポンプ光LPをx軸の正方向に反射する。セル22のポンプ面2aには、x軸の正方向に沿ってポンプ光LPが入射する。
【0091】
ポンプ光LPは、x軸の正方向に沿ってセル22内を通過する。ポンプ光LPは、セル22のポンプ面2bから出射される。ミラー10は、セル22を通過したポンプ光LPをy軸の正方向に反射する。続いて、ミラー11は、ミラー10により反射されたポンプ光LPをx軸の負方向に反射する。セル23のポンプ面2bには、x軸の負方向に沿ってポンプ光LPが入射する。
【0092】
ポンプ光LPは、上述したセル21及びセル22における光路と同様に、セル23及びセル24を通過する。減衰検出部20には、セル24を通過したポンプ光LPが入射する。
【0093】
プローブレーザ8は、プローブ光LB1,LB2,LB3,LB4を含むプローブ光を出射してもよい。プローブレーザ8は、出射したプローブ光をファイバ分岐等によりプローブ光LB1,LB2,LB3,LB4に分割してもよい。あるいは、光励起磁気センサ1Bはプローブレーザ8を複数備えてもよい。プローブ光LB1,LB2,LB3,LB4は、プローブコネクタ80によって光励起磁気センサ1Aの筐体内部に導入されると共に、それぞれx軸の負方向に出射される。プローブ光LB1,LB2,LB3,LB4はそれぞれ、分割部12により4つのプローブ光に分割され、y軸の負方向に出射される。以下、図6の説明において、プローブ光LB1,LB2,LB3,LB4はそれぞれ、4つに分割されているものとする。プローブ光LB1,LB2,LB3,LB4はそれぞれ、ミラー13,14(図3の(b)部参照)により、セル21,22,23,24内に導かれる。
【0094】
このようにして、第1の方向に沿ったポンプ光LP及び第2の方向に沿ったプローブ光LB1は、セル21において直交する。第1の方向に沿ったポンプ光LP及び第2の方向に沿ったプローブ光LB2は、セル22において直交する。第1の方向に沿ったポンプ光LP及び第2の方向に沿ったプローブ光LB3は、セル23において直交する。第1の方向に沿ったポンプ光LP及び第2の方向に沿ったプローブ光LB4は、セル24において直交する。その結果、各チャンネルの測定領域が形成される。一例では、配置順序が1番目のセル21内において、1番目の測定領域ch11が形成される。また、セル21内において、チャンネルが4番目の測定領域ch14が形成される。同様に、配置順序が4番目のセル24内において、1番目の測定領域ch41が形成される。また、セル24内において、チャンネルが4番目の測定領域ch44が形成される。
【0095】
以上説明したように、第3実施形態に係る光励起磁気センサ1Bは、セル21,22,23,24を備える。複数のセル21,22,23,24は、第1の方向に直交し且つ測定対象に沿った方向に互いに離間して配置されていてもよい。このような構成によれば、測定対象に沿った水平な方向において、セル21,22,23,24が隣り合う。隣り合うセルには同一のポンプ光LPが入射するため、セルごとにポンプ光に係る構成を用意する必要がなくなる。この場合、隣り合うセルの間隔を狭めることができるため、光励起磁気センサ1Bを小型化することができる。
【0096】
[変形例]
本開示は、前述した実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で下記のような種々の変形が可能である。
【0097】
図7は、第1変形例に係る光励起磁気センサ1Cの構成を示す図である。図7の(a)部は、光励起磁気センサ1Cを側面から見たときの構成を示す図である。図7の(b)部は、光励起磁気センサ1Cを正面から見たときの構成を示す図である。光励起磁気センサ1Cは、1つの筐体内に4chの光励起磁気センサ1を4セット有する。すなわち、光励起磁気センサ1Cは、合計16チャンネル分の磁場を導出する。図7では、ポンプレーザ7、プローブレーザ8、及び導出部19の図示を省略している。
【0098】
光励起磁気センサ1Cにおけるポンプ光及びプローブ光の光路は、上述した光励起磁気センサ1におけるポンプ光及びプローブ光の光路と同様である(図3参照)。この光励起磁気センサ1Cによっても、セル領域の数に対応するようにポンプ光を分岐したりポンプレーザ7を複数用意したりする必要がなくなる。したがって、ポンプ光に係る構成を簡易にすることができる。これにより、小型化が可能な光励起磁気センサ1Cを提供することができる。
【0099】
図8は、第2変形例に係る光励起磁気センサ1Dの構成を示す図である。図8の(a)部は、光励起磁気センサ1Dを側面から見たときの構成を示す図である。図8の(b)部は、光励起磁気センサ1Dを正面から見たときの構成を示す図である。図8の(a)部に示されるように、光励起磁気センサ1Dは、ポンプコネクタ70の配置位置、及びミラー10によるポンプ光の反射方向が光励起磁気センサ1Cとは異なる。図8では、ポンプレーザ7、プローブレーザ8、及び導出部19の図示を省略している。
【0100】
光励起磁気センサ1Dでのポンプコネクタ70は、例えば2つのポンプレーザ7を含んで構成される。ミラー10は、ポンプ光をy軸方向に反射し、y軸方向に隣り合う光励起磁気センサ1のミラー11に入射させる。このように反射することにより、光励起磁気センサ1Dにおけるポンプ光の光路は、上述した光励起磁気センサ1Bにおけるポンプ光と同様となる(図6参照)。その結果、図8の(b)部に示されるように、光励起磁気センサ1Dでは、y軸方向に隣り合うセル2同士及び2r同士に同一のポンプ光が連続して入射する。すなわち、光励起磁気センサ1Dにおけるポンプ光の光路は、光励起磁気センサ1Bにおけるポンプ光の光路が、一次微分軸型グラジオメータにおける各チャンネルの参照領域と測定領域との両方に適用される。光励起磁気センサ1Dにおいて、ポンプコネクタ70は、4つのセル2又はセル2rの中でポンプ光を最初に入射させるセル2又はセル2rに対し、x軸の正方向に近接して配置される。光励起磁気センサ1Dにおいて、減衰検出部20は、4つのセル2又はセル2rを通過した後のポンプ光が入射する位置に配置される。光励起磁気センサ1Dにおけるプローブ光の光路は、上述した光励起磁気センサ1Cにおけるプローブ光と同様である(図7参照)。ポンプ光及びプローブ光の光路について見ると、光励起磁気センサ1Dは、光励起磁気センサ1Bと光励起磁気センサ1Cとを組み合わせたものと言える。この光励起磁気センサ1Dによっても、セル領域の数に対応するようにポンプ光を分岐したりポンプレーザ7を複数用意したりする必要がなくなる。したがって、ポンプ光に係る構成を簡易にすることができる。これにより、小型化が可能な光励起磁気センサ1Dを提供することができる。
【0101】
図9は、バイアス磁場を示す概略図である。図9に示される光励起磁気センサ1Dは、例えば60×60mmのフットプリントにおいて、y軸方向に10mmの間隔で光励起磁気センサ1と同様の構成が4セット配置され、16チャンネル分の磁場を導出する。光励起磁気センサ1Dは、バイアス磁場形成用コイル25を備えてもよい。バイアス磁場形成用コイル25は、コイル電源(不図示)から供給される電流に応じて、セル2が配置される領域にバイアス磁場Bを発生させる。バイアス磁場形成用コイル25は、例えば光励起磁気センサ1Dを周回するコイルシステムとすることができる。バイアス磁場Bの方向は、例えば、セル2の内部を通過するポンプ光の光路と同一方向(x軸の正方向)である。光励起磁気センサ1Dにおける磁場の感度のピーク周波数は、バイアス磁場Bの強度によって調整することができる。ピーク周波数は、光励起磁気センサ1Dが測定する対象に応じて変更され得る。例えば光励起磁気センサ1Dを脳磁測定に用いる場合、磁場の感度のピーク周波数は、脳磁場の周波数帯域である数~数百Hzである。一例では、バイアス磁場形成用コイル25が7nTのバイアス磁場Bを形成すると、光励起磁気センサ1Dのピーク周波数が50Hzに調整される。
【0102】
図10は、光励起磁気センサ1Cを用いた脳磁計100を示す概略図である。脳磁計100は、複数の光励起磁気センサ1Cと、非磁性フレーム26と、を備える。複数の光励起磁気センサ1Cは、例えば測定対象に沿って所定の間隔で配置される。光励起磁気センサ1Cが12個配置された場合、脳磁計100は合計192チャンネル分の磁場を導出する。光励起磁気センサ1のうち、セル2,2rの温度は、例えば180℃に調整され得る。なお、脳磁計100は、光励起磁気センサ1Cの代わりに、光励起磁気センサ1Dを備えてもよい。
【0103】
非磁性フレーム26は、脳磁測定における被測定者の頭部の全域を覆うヘルメット型のフレームである。非磁性フレーム26は、グラファイト等の非磁性体材料により構成される。非磁性フレーム26には、被測定者の頭部に近接するように複数の光励起磁気センサ1Cが固定されている。非磁性フレーム26は、断熱材等により、被測定者の頭部への熱移動を抑制する。
【0104】
光励起磁気センサ1Cは、読み出し回路27を備える。読み出し回路は、光励起磁気センサ1の検出結果を取得する回路である。読み出し回路27の温度は、例えば25℃になるように断熱材等により調整され得る。読み出し回路27は、検出部18,18rであってもよい。脳磁計100では、導出部19が外部に配置されてもよい。このような導出部19は、複数の読み出し回路27からの検出結果を取得し、複数の光励起磁気センサ1Cにおける磁場を一括して導出してもよい。
【0105】
実施形態ではポンプ光及びプローブ光のサイズを規定していないが、それぞれ任意のサイズに成形されてもよい。例えば、プローブ光は、高さが幅よりも小さくなるように形成されてもよい。高さとは、セル2に導かれる際のプローブ光において、第3の方向に沿った光路のサイズを示す。幅とは、セル2に導かれる際のプローブ光において、第1の方向に沿った光路のサイズを示す。この場合、プローブ光用ミラーであるミラー13,13r,14,14r,15,15rのサイズを小さくすることができる。これにより、小型化が可能な光励起磁気センサ1を提供することができる。
【符号の説明】
【0106】
1,1A,1B,1C,1D…光励起磁気センサ、2,2r,2A…セル、7…ポンプレーザ、8…プローブレーザ、13,13r、14,14r、15,15r…ミラー、12…分割部、14BS…ビームスプリッタ、18,18r…検出部、19…導出部、20…減衰検出部、70…ポンプコネクタ、80…プローブコネクタ。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10