(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186217
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】作業管理システムおよび作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20221208BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20221208BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20221208BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
E02F9/26 B
E02F9/20 Q
E02F9/24 B
H04N7/18 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094328
(22)【出願日】2021-06-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】金澤 亮
(72)【発明者】
【氏名】成川 理優
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎二郎
(72)【発明者】
【氏名】千葉 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
5C054
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003AC06
2D003BA07
2D003BB05
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015GA03
2D015GB06
2D015GB07
2D015HA03
2D015HB04
2D015HB05
5C054CA04
5C054CC02
5C054FC12
5C054FE14
5C054GB02
5C054GB05
5C054GD06
5C054HA19
(57)【要約】
【課題】作業機械と作業者とが接触する蓋然性の高い接近事象を効率的に抽出することが可能な作業管理システムを提供する。
【解決手段】管理サーバ10は、作業機械位置計測装置2b1,2b2で計測された作業機械200の位置情報と作業者位置計測装置1bで計測された作業者100の位置情報とに基づいて作業機械200と作業者100との接近の有無を判定し、接近有と判定した場合に、予め設定された接近状態定義10cに基づき、前記接近の判定時に作業機械状態計測装置2c1,2c2,2c3,2dにより計測された作業機械200の状態から前記接近の接近状態を判定し、前記接近の判定時に計測された作業機械200の状態を、前記接近状態に対応させて記録するとともに、接近状態に対応させて表示装置3へ出力するものとする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理サーバと、
前記管理サーバから出力された情報を表示する表示装置とを備えた作業管理システムにおいて、
前記管理サーバは、
作業機械の位置情報を計測する作業機械位置計測装置で計測された前記作業機械の位置情報と前記作業機械の周囲で作業を行う作業者の位置情報を計測する作業者位置計測装置で計測された前記作業者の位置情報とに基づいて前記作業機械と前記作業者との接近の有無を判定し、
接近有と判定した場合に、予め設定された接近状態定義に基づき、前記接近の判定時に前記作業機械の状態を計測する作業機械状態計測装置により計測された前記作業機械の状態から前記接近の接近状態を判定し、
前記接近の判定時に計測された前記作業機械の状態を、前記接近状態に対応させて記録するとともに、接近状態に対応させて前記表示装置へ出力する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の作業管理システムにおいて、
前記作業機械状態計測装置は、前記作業機械の可動状態を計測する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の作業管理システムにおいて、
前記作業機械は、複数の関節を有するフロント装置を有し、
前記作業機械状態計測装置は、前記複数の関節の各角度を計測する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の作業管理システムにおいて、
前記作業機械は、複数の関節を有するフロント装置を有し、
前記作業機械状態計測装置は、前記作業機械の走行速度と前記複数の関節の各回動速度とを計測する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の作業管理システムにおいて、
前記作業機械と前記作業者との接触を回避させる回避装置を備え、
前記管理サーバは、前記接近状態定義に基づき、前記接近の判定時に計測された前記作業機械の状態および前記接近の判定時の前記回避装置の作動状況から前記接近状態を判定する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の作業管理システムにおいて、
前記回避装置は、前記作業機械の操作者または前記作業者に対して警報を発する警報装置、もしくは、前記作業機械を減速または停止させる減速制御装置で構成される
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の作業管理システムにおいて、
前記作業機械および前記作業者を撮影する撮影装置を備え、
前記管理サーバは、前記接近を判定した場合に、前記接近の判定時に前記撮影装置で撮影された前記作業機械および前記作業者の画像を、前記接近状態に対応させて記録するとともに、前記表示装置へ出力する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項8】
請求項1に記載の作業管理システムにおいて、
前記管理サーバは、前記接近を判定した場合に、前記接近の判定時に計測された前記作業機械の位置情報、前記作業者の位置情報、および前記作業機械の状態を基に、前記作業機械および前記作業者の動作を視覚化した再現映像を作成し、前記再現映像を前記接近状態に対応させて記録するとともに、前記表示装置へ出力する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項9】
請求項1に記載の作業管理システムにおいて、
前記管理サーバは、前記接近を判定した場合に、前記接近の判定時の前記作業機械位置計測装置、前記作業者位置計測装置、および前記作業機械状態計測装置の計測情報を基に、前記作業機械の操作者および前記作業者の前記接近の発生に対する過失度合いを算出し、前記過失度合いを前記接近状態に対応させて記録するとともに、前記表示装置へ出力する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項10】
請求項1に記載の作業管理システムにおいて、
前記管理サーバは、前記接近状態に応じた指令を、前記作業機械と前記作業者との接触を回避させる回避装置へ出力する
ことを特徴とする作業管理システム。
【請求項11】
管理サーバと、
前記管理サーバから出力された情報を表示する表示装置とを備えた作業機械において、
前記管理サーバは、
前記作業機械の位置情報を計測する作業機械位置計測装置で計測された前記作業機械の位置情報と前記作業機械の周囲で作業を行う作業者の位置情報を計測する作業者位置計測装置で計測された前記作業者の位置情報とに基づいて前記作業機械と前記作業者との接近を判定し、
前記接近を判定した場合に、予め設定された接近状態定義に基づき、前記接近の判定時に前記作業機械の状態を計測する作業機械状態計測装置により計測された前記作業機械の状態から前記接近の接近状態を判定し、
前記接近の判定時に計測された前記作業機械の状態を、前記接近状態に対応させて記録するとともに、前記表示装置へ出力する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の周囲で作業する作業者の安全を管理する作業管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
土木施工現場では、周囲作業者と作業機械が接触する恐れがあり、周囲作業者と作業機械の接触を防ぐための機能に対するニーズがある。特に周囲作業者と作業機械の接触の未然防止を目的として、周囲作業者や作業機械に取り付けたセンサから得た位置情報を管理サーバに集約し、周囲作業者方向への作業機械の接近や、周囲作業者の侵入禁止領域への侵入といった不適切事象を監視、警告、表示するシステムが実用化され始めている。このようなシステムの導入により、現場内で発生した不適切事象を、施工現場の管理者が簡便にかつリアルタイムに把握することが可能となった。
【0003】
周囲作業者及び作業機械の位置情報を管理サーバに集約して、不適切事象を監視および管理者に提示する先行技術の一例として、特許文献1のような技術が開示されている。特許文献1では、機械周囲の所定領域内への障害物の侵入を検知し、検知結果の履歴と侵入時の関連情報に基づき、所定領域内への障害物の侵入度合いと侵入関連情報との関係を確認可能な表を生成する管理装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/084161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
周囲作業者と作業機械の接触は、周囲作業者又は作業機械を操作するオペレータのヒューマンエラーに起因して発生する。作業機械のオペレータ側が原因となる状況としては、作業機械のオペレータが機械動作休止中に車体のロックを怠って意図せず操作レバーに触れることや、周囲作業者の近傍で不用意に作業機械を操作することが想定される。一方で、周囲作業者側が原因となる状況として、オペレータが視認しづらい方向から作業機械に接近することや、接近前の合図の怠り等が想定される。したがって、接触事象の蓋然性をより正確に評価するためには、接近事象発生時の周囲作業者と作業機械双方の状態を考慮する必要がある。
【0006】
特許文献1に記載されるようなシステムでは、接近が検知された位置、時刻、作業機械の操作状況といった情報を管理者に提供するが、周囲作業者と作業機械のオペレータがそれぞれどのような状況にあったかを考慮していない。したがって、発生した接近事象における接触の蓋然性を管理者が正しく判断することが難しく、提供された膨大な接近情報の中から、その後のリスクアセスメントや現場作業者への安全教育に活用すべき接近情報を選択することが困難である。周囲作業者と作業機械の接近は頻繁に発生することが想定されるため、今後是正されるべき接近事象のみを管理者が効率的に抽出できることが望ましい。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業機械と作業者とが接触する蓋然性の高い接近事象を効率的に抽出することが可能な作業管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、管理サーバと、前記管理サーバから出力された情報を表示する表示装置とを備えた作業管理システムにおいて、作業機械の位置情報を計測する作業機械位置計測装置と、前記作業機械の状態を計測する作業機械状態計測装置と、前記作業機械の周囲で作業を行う作業者の位置情報を計測する作業者位置計測装置とを備え、前記管理サーバは、前記作業機械位置計測装置で計測された前記作業機械の位置情報と前記作業者位置計測装置で計測された前記作業者の位置情報とに基づいて前記作業機械と前記作業者との接近を判定し、前記接近を判定した場合に、予め設定された接近状態定義に基づき、前記接近の判定時に前記作業機械状態計測装置により計測された前記作業機械の状態から前記接近の接近状態を判定し、前記接近の判定時に計測された前記作業機械の状態を、前記接近状態に対応させて記録するとともに、前記表示装置へ出力するものとする。
【0009】
以上のように構成した本発明によれば、作業機械と作業者との接近の判定結果が、接近判定時の作業機械の状態を考慮した接近状態と対応して表示されるため、作業機械と作業者とが接触する蓋然性の高い接近事象を効率的に抽出することが可能となる。その結果、管理者によるリスクアセスメントおよび安全教育の効果と効率が大きく向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る作業管理システムによれば、作業機械と作業者とが接触する蓋然性の高い接近事象を効率的に抽出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る作業管理システムの概要を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係る作業管理システムの処理機能を示す機能ブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施例における接近判定部の処理フローを示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施例における接近状態判断部の処理フローを示す図である。
【
図5】第1の実施例における接近状態定義の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施例における接近結果可視化部が出力する接近結果の一例を示す図である。
【
図7】第1の実施例による発明の効果を示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施例に係る作業管理システムの処理機能を示す機能ブロック図である。
【
図9】本発明の第2の実施例における接近状態定義の一例を示す図である。
【
図10】本発明の第3の実施例に係る作業管理システムの処理機能を示す機能ブロック図である。
【
図11】本発明の第3の実施例における接近結果可視化部が出力する接近結果の一例を示す図である。
【
図12】本発明の第4の実施例における接近状態判断部の処理フローを示す図である。
【
図13】本発明の第4の実施例による係る過失度合いの表現方法の一例と発明の効果を示す図である。
【
図14】本発明の第5の実施例に係る作業管理システムの処理機能を示す機能ブロック図である。
【
図15】本発明の第5の実施例における接近状態定義に対する対策定義の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において、当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例0013】
図1は、本発明の第1の実施例に係る作業管理システムの概要を示す図である。作業管理システム500は、作業者100に取り付けられた作業者計測装置1、作業機械200に取り付けられた機械計測装置2、表示装置3、通信設備4、管理サーバ10等により構成される。作業者100は施工現場内で作業を行う者であり作業機械200の作業補佐、作業機械200とは直接関係のない周囲作業等を行う。作業者100は、作業者計測装置1、通信端末5を有しており、これら作業者計測装置1、通信端末5は、作業者100が身に着けるヘルメットや作業服等に装着されているものとする。本実施例では、作業者計測装置1として、作業者100の位置情報を計測するためのセンサ1bと、センサ1bが計測した情報を処理して外部と通信するためのデータ処理装置1aが備えられるものとする。センサ1bは、作業者100の位置情報を計測する作業者位置計測装置を構成している。センサ1bには、GNSS(Global Navigation Satellite System)やBeacon等が用いられることを想定する。
【0014】
作業機械200は、施工現場で稼働する建設機械や運搬車両など作業を行うあらゆる機械が含まれる。
図1では、作業機械200として油圧ショベル200aおよびホイールローダ200bを例示している。油圧ショベル200aには、機械計測装置2、通信端末5が備えられている。本実施例では、機械計測装置2として、油圧ショベル200aの上部旋回体201aの位置および方位を計測するセンサ2b、油圧ショベル200aのフロント装置202aの姿勢を計測するセンサ2c、油圧ショベル200aの可動状態を取得するセンサ2d、およびセンサ2b,2c,2dが計測した情報を処理して外部と通信するためのデータ処理装置2aが備えられるものとする。センサ2bには、少なくとも2つのGNSSアンテナが用いられ、位置と方位の両方が演算できるように構成する。また、センサ2cには、IMU(Inertial Measurement Unit)やストロークセンサ等が用いられ、フロント装置202aを構成する各リンクに備えられる。センサ2dは、車体の動作をロックするロックレバーのON/OFF状態を電気的に検出するロックレバーセンサを想定するが、エンジンのON/OFF状態やエンジン回転数を検出するセンサを用いてもよい。
【0015】
ホイールローダ200bには、機械計測装置2、通信端末5が備えられている。本実施例では、機械計測装置2として、ホイールローダ200bの位置および方位を計測するセンサ2b、ホイールローダ200bの可動状態を取得するセンサ2d、およびセンサ2b,2dが計測した情報を処理して外部と通信するためのデータ処理装置2aが備えられるものとする。センサ2bには、少なくとも2つのGNSSアンテナが用いられ、位置と方位の両方が演算できるように構成する。センサ2dは、車体の動作をロックするパーキングブレーキのON/OFF状態を電気的に検出するパーキングブレーキセンサを想定するが、エンジンのON/OFF状態やエンジン回転数を検出するセンサを用いてもよい。
【0016】
通信設備4は、作業者100および作業機械200に備えられた通信端末5を含む、施工現場内のあらゆるコントローラおよびセンサを同一のネットワークに接続可能とする設備であり、無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイントなどにより構成される。管理サーバ10は、通信設備4の通信ネットワークに接続されたコンピュータである。本実施例では、管理サーバ10は事務所300に備えられているものとし、ユーザからの入力を受け付けるあるいは分析結果を表示出力するためのパソコン等に設けられた表示装置3と接続されているものとする。なお、管理サーバ10をクラウド上の仮想マシンとして用意し、通信設備4が提供するネットワーク経由でクラウドと通信できるように構成してもよい。作業者100および作業機械200に備えられた通信端末5は、通信設備4の提供する通信ネットワークに接続可能であり、同一ネットワークに接続されている管理サーバ10に計測情報を送信することが可能なものとする。
【0017】
図2は、本実施例に係る作業管理システム500の処理機能を示す機能ブロック図である。作業管理システム500の機能ブロックは、作業者計測装置1、機械計測装置2、表示装置3、管理サーバ10から構成される。なお、機械計測装置2については、油圧ショベル200aに搭載されることを想定して記載している。
【0018】
作業者計測装置1は、データ処理装置1aと、作業者100の位置情報を計測するGNSS1bとを有する。GNSS1bは、作業者位置計測装置を構成している。データ処理装置1aは、作業者計測装置1を所持している作業者100の個体識別ID(Identification)、位置、計測された時刻を、通信端末5を介して管理サーバ10に送信する。機械計測装置2は、データ処理装置2a、油圧ショベル200aの上部旋回体201aの位置および姿勢を計測するためのセンサであるGNSS右2b1、GNSS左2b2、油圧ショベル200aのフロント装置202aの姿勢を計測するためのセンサであるブームIMU2c1、アームIMU2c2、バケットIMU2c3、ロックレバーセンサ2dから構成される。GNSS右2b1、GNSS左2b2は、作業機械200の位置を計測する作業機械位置計測装置を構成している。ブームIMU2c1、アームIMU2c2、バケットIMU2c3、ロックレバーセンサ2dは、作業機械200の状態を計測する状態計測装置を構成している。データ処理装置2aは、備えられた機械の個体識別ID、位置、方位、フロント姿勢、レバー状態、それらが計測された時刻の情報を、作業機械200に備えられた通信端末5を介して管理サーバ10に送信する。
【0019】
管理サーバ10は、接近判定部10a、接近状態判断部10b、接近状態定義10c、記録装置10d、接近結果可視化部10eから構成される。
【0020】
図3は、本実施例における接近判定部10aの処理フローを示す図である。接近判定処理は、
図3(a)に示すフローに沿って行われる。ここでは、作業機械200として、処理が比較的複雑となる油圧ショベル200aを例にとって説明する。まず、処理Fa1において、作業者計測装置1、機械計測装置2から取得した計測情報を時刻同期して取得する。時刻同期とは、各計測装置1,2が出力した計測時刻がある一定時刻範囲内に収まるように、複数の計測情報をグルーピングする処理とする。次に、処理Fa2において、得られた複数の作業者100、作業機械200の組み合わせの中から、作業者100が1人、作業機械200が1台選択された1つの組み合わせを決定する。
【0021】
次に、処理Fa3において、作業者100が事前に設定された接近判定領域Raの中に存在するかどうかを判断する。
図3(b)に、本実施例における接近判定領域Raの定義を示す。接近判定領域Raは、作業機械200の位置Xmを中心とした円として定義する。円の半径は、機械計測装置2が計測したフロント装置202aの姿勢から演算されるフロント長さLmに応じて増減するものとし、本実施例ではフロント長さLmに対して一定のマージンを加算した長さを接近判定領域Raの半径とする。この接近判定領域Raの内部に存在する作業者100を接近状態、外部に存在する作業者100を非接近状態と定義する。例えば、
図3(b)に示す作業者100aは接近状態、作業者100bは非接近状態として処理される。なお、接近判定領域Raの表現方法は上記記載の方法に限られず、楕円や矩形等にしてもよい。
【0022】
図3(a)に戻り、処理Fa3において、作業者100が接近状態にあると判断されれば、処理Fa4へ移行する。一方で、作業者100が非接近状態であると判断されれば、処理Fa2に戻り、未処理の作業者100、作業機械200の組み合わせを決定する。次に、処理Fa4において、すべての組み合わせに対して接近判定処理が行われたかどうかを判断する。まだ接近判定されていない組み合わせが残っている場合には、処理Fa2に戻り、未処理の作業者100、作業機械200の組み合わせを決定する。一方で、すべての組み合わせについて接近判定処理が完了した場合には、処理Fa5に移行し、接近判定されたすべての組み合わせの情報を、接近状態判断部10bへ出力し、接近状態判断部10bの処理を開始する。
【0023】
図2に戻り、接近状態判断部10bは、予め定義されて管理サーバ10内に保存された接近状態定義10cに基づいて、接近判定処理された作業者100および作業機械200の接近状態を判断する。
【0024】
図4は、本実施例における接近状態判断部10bの処理フローを示す図である。接近状態判断処理は、
図4(a)に示すフローに沿って行われる。ここでは、作業機械200として、処理が比較的複雑となる油圧ショベル200aを例にとって説明する。まず、処理Fb1において、接近判定部10aにおいて接近状態にあると判断された作業者100および作業機械200の情報が取得される。この時、機械計測装置2から、対応する作業機械200の稼働状態も取得され、時間同期されるものとする。次に、処理Fb2において、得られた複数の作業者100、作業機械200の組み合わせの中から、作業者100が1人、作業機械200が1台のある1つの組み合わせを選択する。次に、処理Fb3において、判定対象となった作業機械200の動作が可動状態にあるかどうかを、機械計測装置2から得られたレバー状態に応じて判断する。可動状態とは、作業機械200のレバー操作や自律動作が制限された状態にあるか否かを示す2値のフラグ値とする。
【0025】
次に、処理Fb4において、作業機械200が動作状態にあるかどうかを判断する。動作状態であるかどうかの判定は、作業機械200の位置Xmを時間方向に数値差分することで得られた速度Vmと、フロント装置202aの姿勢情報に基づいて演算されるフロント装置202aの先端位置Xeを時間方向に数値差分することで得られた速度Veに基づいて実施される。速度Vm,Veに対して、事前に設定した閾値Vth1とVth2を参照し、Vth1>|Vm|またはVth2>|Ve|の少なくとも一方が満たされた場合を動作状態、そうでない場合を停止状態と定義する。なお、機械速度Vmとフロント装置先端位置速度Veの大きさに対する条件をそれぞれ判断し、作業機械200の走行状態(走行速度)と、フロント装置202aの動作状態(フロント装置202aが有する複数の関節の各回動速度)を分けて定義してもよい。
【0026】
次に、処理Fb5において、作業者100が作業機械200の至近距離に存在しているかどうかを判断する。至近距離にいるかどうかの判定は、作業機械200の位置Xm、フロント装置202aの先端位置Xeと、作業者100の位置Xh間の距離に基づいて実行される。
図4(b)に示すように、機械位置Xmと作業者位置Xh間の距離をDm、フロント装置先端位置Xeと作業者位置Xh間の距離をDeと定義する。距離DmとDeのそれぞれについて、予め距離閾値Dth1、Dth2を定義し、Dth1>DmまたはDth2>Deの一方が満たされた場合を近距離状態、そうでない場合を非近距離状態と定義する。
【0027】
次に、処理Fb6において、作業者100が作業機械200の死角領域Rd内に存在しているかどうかを判断する。死角領域Rdは、作業機械200の位置Xmを中心とした扇形として定義する。扇形の半径は、接近判定領域Raと同様に、機械計測装置2が計測したフロント装置202aの姿勢から演算されるフロント長さLmに応じて増減するものとする。扇形の範囲は、作業機械200の運転席からオペレータが視認することが困難と予想される角度範囲が予め定められるものとする。
図4(c)に示す例では、オペレータから視認困難な作業機械200の後方や右方を死角領域Rdとして定義している。この接近判定領域Rdの内部に存在する作業者100を死角状態、外部に存在する作業者100を非死角状態と定義する。例えば、
図4(c)に示す作業者100aは死角状態、作業者100bは非死角状態として処理される。なお、接近判定領域Rdの表現方法は上記記載の方法に限られず、楕円や矩形等にしてもよい。
【0028】
図3(a)に戻り、処理Fb7において、処理Fb3で判断されたロック状態、処理Fb4で判断された動作状態、処理Fb5で判断された距離状態、処理Fb6で判断された死角状態に基づいて、事前に定義された接近状態定義10cを基に最終的な接近状態を判断する。
【0029】
図5は、本実施例における接近状態定義10cの一例を示す図である。接近状態は、それぞれ2値のフラグとして与えられる可動状態、動作状態、距離状態、死角状態の4状態の組み合わせによって決定されるものとする。本実施例では、
図5に示す7状態を接近状態として定義している。なお、接近状態は
図5に示す内容に限られず、取得される作業者100および作業機械200の状態に応じて、必要な状態を事前に定義できるものとする。
【0030】
図4(a)に戻り、処理Fb7で接近状態が決定された後、処理Fb8においてすべての組み合わせに対して接近状態が決定されたかどうかを判定する。まだ接近状態が決定されていない組み合わせが残っている場合には、処理Fb2に戻り、未処理の作業者100、作業機械200の組み合わせを決定する。一方で、すべての組み合わせについて接近状態判断処理が完了した場合には、処理Fb9に移行し、接近状態が決定されたすべての組み合わせの情報と、それぞれの接近状態の中で接近に関与した作業者100および作業機械200のIDを、メモリ等の記録装置10dへ出力して保存する。
【0031】
図2に戻り、記録装置10dは、接近状態判断部10bが出力した接近評価結果を記録する。接近評価結果とは、接近の発生時刻、接近状態、関与した作業者100、作業機械200それぞれのID、位置、方位、姿勢の情報をまとめた結果とする。また、記録装置10dには、後述する接近結果可視化部が所望するデータを抽出するための検索条件が入力される。検索条件には、表示する時刻範囲、接近状態、作業者100または作業機械200のID等が選択できるものとする。これらの検索条件に従って、記録装置10dに記録された接近評価結果群の中から該当する結果が抽出され、検索結果が接近結果可視化部10eに出力される。
【0032】
接近結果可視化部10eは、表示装置3に備えられた表示制御部3aから入力された表示条件に従って、必要なデータを抽出するための検索条件を生成して記録装置10dに出力するとともに、記録装置10dから出力された検索結果に基づいて、発生した各接近とその時の接近状態が明瞭に把握できる形式で、グラフやマップ等で結果を可視化する。可視化された結果は、表示装置3に備えられたモニタ等の表示画面3bに出力される。
【0033】
図6は、本実施例における接近結果可視化部10eが出力する接近結果の一例を示す図である。
図6(a)は、接近回数を横軸、接近に関与した作業者100および作業機械200を縦軸にとった場合に、接近状態をラベルとしたラベル付き帯グラフとして接近結果を可視化した一例である。
図6(a)のような形式で可視化した場合には、どの作業者100または作業機械200がどれぐらい不適切な接近に関与していたかが明瞭に表現される。
図6(b)は、発生時刻を横軸、接近回数を縦軸にとった場合に、接近状態をラベルとしたラベル付き帯グラフとして接近結果を可視化した一例である。
図6(b)のような形式で可視化した場合には、いつどれぐらい不適切な接近が発生していたかが明瞭に表現される。
図6(c)は、各接近をラベル付けして、マップ上に各接近発生位置をプロットして接近結果を可視化した一例である。
図6(c)のような形式で可視化した場合には、どこでどれぐらい不適切な接近が数多く発生していたかが明瞭に表現される。なお、
図6に示す3例は可視化方法の一例であり、接近状態を各接近に対応したその他の表示形態が用いられることも想定する。
【0034】
図7は、本実施例による発明の効果を示す図である。
図7(a)は、接近に関与した作業者100および作業機械200の接近回数を、接近状態と対応させることなく表示した結果である。
図7(a)の表示形式では、接近回数が多い作業者A100a1や作業者B100b1が安全教育の対象となると見受けられる。しかし、各作業者100がどのような接近に関与したかどうかが判断できないため、具体的な行動是正の方針を管理者側から提示することが困難である。
【0035】
図7(b)は、接近に関与した作業者100および作業機械200の接近回数を、接近状態の詳細LBと対応して、ラベル付きの帯グラフで表示した結果である。
図7(b)の表示形式では、各作業者が関与した接近の接近状態の詳細LBが明瞭に表現されている。したがって、接近回数という観点で接触の蓋然性が高いと判断されやすかった作業者A100a1は、機械非可動中の比較的接触の可能性の低い接近の回数が大半を占めていることが分かるため、安全教育の対象としての優先度は比較的低くなる。一方で、作業者B100b1は、可動状態の作業機械200への接近や、死角からの接近、作業機械200の動作中の接近といった接触の蓋然性が高い接近の回数が大半を占めている。したがって、接近回数が多い作業者A100a1よりも、作業者B100b1の方が安全教育の対象としての優先度が高いと判断できる。さらに、接近状態の詳細LBと各作業者100および作業機械200の接近結果を照らし合わせることで、管理者は具体的な行動是正の方針を提示することが容易となる。例えば、作業者B100b1は機械動作中の接近が多いため、特に機械動作中の接近に気を付けるように作業者B100b1の意識を改善させる必要があると判断できる。
【0036】
(まとめ)
本実施例では、管理サーバ10と、管理サーバ10から出力された情報を表示する表示装置3とを備えた作業管理システム500において、作業機械200の位置情報を計測する作業機械位置計測装置2b1,2b2と、作業機械200の状態を計測する作業機械状態計測装置2c1,2c2,2c3,2dと、作業機械200の周囲で作業を行う作業者100の位置情報を計測する作業者位置計測装置1bとを備え、管理サーバ10は、作業機械位置計測装置2b1,2b2で計測された作業機械200の位置情報と作業者位置計測装置1bで計測された作業者100の位置情報とに基づいて作業機械200と作業者100との接近を判定し、前記接近を判定した場合に、予め設定された接近状態定義10cに基づき、前記接近の判定時に作業機械状態計測装置2c1,2c2,2c3,2dにより計測された作業機械200の状態から前記接近の接近状態を判定し、前記接近の判定時に計測された作業機械200の状態を、前記接近状態に対応させて記録するとともに、表示装置3へ出力する。
【0037】
以上のように構成した本実施例によれば、作業機械200と作業者100との接近の判定結果が、接近判定時の作業機械200の状態を考慮した接近状態と対応して表示されるため、作業機械200と作業者100とが接触する蓋然性の高い接近事象を効率的に抽出することが可能となる。その結果、管理者によるリスクアセスメントおよび安全教育の効果と効率が大きく向上する。
【0038】
また、本実施例における作業機械状態計測装置2dは、作業機械200の可動状態を計測する。これにより、作業機械200の可動状態を考慮した接近状態を判定することが可能となる。
【0039】
また、本実施例における作業機械200は、複数の関節を有するフロント装置202aを有し、作業機械状態計測装置2c1,2c2,2c3は、前記複数の関節の各角度を計測する。これにより、フロント装置202aの姿勢を考慮した接近状態を判定することが可能となる。
【0040】
また、作業機械状態計測装置2b1,2b2,2c1,2c3,2dは、作業機械200の走行速度とフロント装置202aが有する複数の関節の各回動速度とを計測する。これにより、作業機械200の走行速度およびフロント装置202aの動作速度を考慮して接近状態を判定することが可能となる。
【0041】
なお、本実施例では、作業者計測装置1、管理サーバ10、および表示装置3を作業機械200から独立した装置として説明したが、これらを作業機械200に搭載してもよい。そのように構成した作業機械200においても、本実施例と同様の効果が達成される。
以上のように構成した本実施例によれば、回避装置1c,2e,7の作動状況を考慮して接近状態を判定することで、接近発生時の接触の蓋然性を管理者がより正確にかつ詳細に把握することが可能となる。