(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186222
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】車載通信装置、車載中継装置、車載通信システム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20221208BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
B60R16/023 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094335
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】倉地 亮
(72)【発明者】
【氏名】高田 広章
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩史
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033AA09
5K033BA06
5K033CB06
5K033DA01
5K033DA13
5K033DB18
(57)【要約】
【課題】車両内の通信に対するサービス指向通信の導入に寄与することが期待できる車載通信装置、車載中継装置、車載通信システム及び通信方法を提供する。
【解決手段】車載通信システムは、ストリームデータベースを有する車載通信装置と、車載通信装置に接続された複数の車載中継装置とを備え、各車載中継装置は複数の車載制御装置に接続され、車載通信装置及び車載中継装置はサービス指向通信の第1通信プロトコルで通信を行い、車載中継装置及び車載制御装置は第2通信プロトコルで通信を行い、車載通信装置は車載中継装置から受信した時系列情報をストリームデータベースに記憶し、ストリームデータベースに記憶された情報を車載中継装置へ配信し、車載中継装置は車載通信装置から配信された情報を受信して車載制御装置へ送信し、車載制御装置から送信された情報を受信して車載通信装置へ送信することで、情報をストリームデータベースに記憶させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車載装置にそれぞれ個別の通信線を介して接続され、前記通信線を介してサービス指向通信の通信プロトコルで前記車載装置との通信を行う通信部と、
前記通信部が前記車載装置から受信した時系列情報を記憶するストリームデータベースと、
前記ストリームデータベースに記憶された時系列情報を前記車載装置へ配信する処理を行う処理部と
を備える、車載通信装置。
【請求項2】
前記処理部は、
前記ストリームデータベースに記憶された時系列情報の配信先の登録要求を前記車載装置から受け付けて、前記時系列情報の配信先として前記車載装置を登録し、
前記ストリームデータベースに記憶された時系列情報を読み出して、配信先として登録された前記車載装置に対して読み出した情報を配信する、
請求項1に記載の車載通信装置。
【請求項3】
前記通信部が送受信する情報には、前記時系列情報と、当該時系列情報の生成時刻情報、通信プロトコルに関するバージョン情報、当該時系列情報を生成した装置を識別する情報、通信により経由した経路情報及び当該時系列情報の改変を防止するセキュリティ情報の少なくとも1つの情報とが含まれる、
請求項1又は請求項2に記載の車載通信装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記複数の車載装置にそれぞれ個別の通信線を介して接続された他の車載通信装置へ、前記ストリームデータベースに記憶した時系列情報を送信する、請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の車載通信装置。
【請求項5】
前記処理部は、
前記複数の車載装置にそれぞれ個別の通信線を介して接続された他の車載通信装置から送信される時系列情報を受信して前記ストリームデータベースに記憶し、
前記他の車載通信装置の異常を検出した場合に、前記ストリームデータベースに記憶された時系列情報を前記車載装置へ配信する、
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の車載通信装置。
【請求項6】
車載通信装置に第1通信線を介して接続され、サービス指向通信の第1通信プロトコルで通信を行う第1通信部と、
一又は複数の車載制御装置に第2通信線を介して接続され、前記第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルで通信を行う第2通信部と、
前記車載通信装置及び前記車載制御装置の間で通信を中継する処理を行う処理部と
を備え、
前記処理部は、
前記車載通信装置から配信された時系列情報を前記第1通信部にて受信し、受信した時系列情報を前記第2通信部から前記車載制御装置へ送信し、
前記車載制御装置から送信された時系列情報を前記第2通信部にて受信し、受信した時系列情報を前記第1通信部から前記車載通信装置へ送信することで、前記時系列情報を前記車載通信装置が有するストリームデータベースに記憶させる、
車載中継装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記車載通信装置のストリームデータベースに記憶された時系列情報の配信先としての登録を前記車載通信装置へ要求する、請求項6に記載の車載中継装置。
【請求項8】
前記第1通信部を複数備え、
複数の第1通信部には、第1の車載通信装置に接続される第1通信部と、第2の車載通信装置に接続される第1通信部とを含み、
前記処理部は、
前記第1の車載通信装置との間で時系列情報の送受信を行い、
前記第1の車載通信装置の異常が検出された場合に、前記第2の車載通信装置との間で時系列情報の送受信を行う、
請求項6又は請求項7に記載の車載中継装置。
【請求項9】
前記第2通信部を複数備え、
複数の第2通信部には、前記車載制御装置に通信線を介して接続される第2通信部と、他の車載中継装置及び他の車載制御装置を接続する他の通信線に接続される第2通信部とを含み、
前記処理部は、前記他の車載中継装置の異常が検出された場合に、前記他の車載制御装置との間で時系列情報の送受信を行う、
請求項6から請求項8までのいずれか1つに記載の車載中継装置。
【請求項10】
受信した時系列情報を記憶するストリームデータベースを有する車載通信装置と、
前記車載通信装置に個別の第1通信線を介して接続された複数の車載中継装置と
を備え、
各車載中継装置は、第2通信線を介して複数の車載制御装置に接続され、
前記車載通信装置及び前記車載中継装置は、サービス指向通信の第1通信プロトコルで通信を行い、
前記車載中継装置及び前記車載制御装置は、前記第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルで通信を行い、
前記車載通信装置は、
前記車載中継装置から受信した時系列情報を前記ストリームデータベースに記憶し、
前記ストリームデータベースに記憶された時系列情報を前記車載中継装置へ配信し、
前記車載中継装置は、
前記車載通信装置から配信された時系列情報を受信して前記車載制御装置へ送信し、
前記車載制御装置から送信された時系列情報を受信して前記車載通信装置へ送信することで、前記時系列情報を前記ストリームデータベースに記憶させる、
車載通信システム。
【請求項11】
複数の車載装置にそれぞれ個別の通信線を介して接続された車載通信装置が、
前記通信線を介してサービス指向通信の通信プロトコルで前記車載装置との通信を行い、
前記車載装置から受信した時系列情報をストリームデータベースに記憶し、
前記ストリームデータベースに記憶された時系列情報を前記車載装置へ配信する
通信方法。
【請求項12】
車載通信装置に第1通信線を介して接続され、一又は複数の車載制御装置に第2通信線を介して接続された車載中継装置が、
サービス指向通信の第1通信プロトコルで前記車載通信装置との通信を行い、
前記第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルで前記車載制御装置との通信を行い、
前記車載通信装置から配信された時系列情報を受信して前記車載制御装置へ送信し、
前記車載制御装置から送信された時系列情報を受信して前記車載通信装置へ送信することで、前記時系列情報を前記車載通信装置が有するストリームデータベースに記憶させる
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両内における様々な情報の送受信を行う車載通信装置、車載中継装置、車載通信システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)等の複数の装置間で行われる通信に用いられる通信プロトコルには、CAN(Controller Area Network)の通信プロトコルが広く採用されていた。
【0003】
特許文献1においては、車両のCANに接続され、装置診断コマンドにより車載機器に動作を実行させて、この車載機器が送信する状態応答データを取り込み、車載機器の動作状態を判断する検知・制御統合装置が提案されている。
【0004】
特許文献2においては、車両と遠隔モニタリングを行う受信側との間のデータリンクを確立し、車両におけるデータ源から車両の作動データを収集し、SNMP(Simple Network Management Protocol)から導かれるプロトコルを用いて、データパケット内の車両の作動データをパッケージングし、データリンク上でデータパケットを送信することにより、車両作動データを、車両の遠隔モニタリングを行う受信側に車両の作動データを送信する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-220800号公報
【特許文献2】特表2004-511188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のシステムは、車両に搭載された複数の装置がCANの通信プロトコルで通信を行うシステムである。特許文献2に記載のシステムでは、通信プロトコルとしてSNMPが採用されている。近年、例えば車両の自動運転などの開発が行われ、車両の高機能化が進められている。車両の高機能化に伴って、車両内の通信にイーサネット(登録商標)の通信プロトコルを用いることが検討されており、イーサネットの上位レイヤの通信プロトコルとしてAUTOSAR(AUTomotive Open System ARchitecture)が規定したSOME/IP(Scalable service-Oriented MiddlewarE over IP)の通信プロトコルが注目されている。SOME/IPは、サービス指向アーキテクチャを車両の通信に適用したサービス指向通信である。
【0007】
本開示は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、車両内の通信に対するサービス指向通信の導入に寄与することが期待できる車載通信装置、車載中継装置、車載通信システム及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本態様に係る車載通信装置は、複数の車載装置にそれぞれ個別の通信線を介して接続され、前記通信線を介してサービス指向通信の通信プロトコルで前記車載装置との通信を行う通信部と、前記通信部が前記車載装置から受信した時系列情報を記憶するストリームデータベースと、前記ストリームデータベースに記憶された時系列情報を前記車載装置へ配信する処理を行う処理部とを備える。
【0009】
本願は、このような特徴的な制御部を備える装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。これらの装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、これらの装置を含むその他の装置又はシステムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0010】
上記によれば、車両内の通信に対するサービス指向通信の導入に寄与することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係る車載通信システムの概要を説明するための模式図である。
【
図2】実施の形態1に係る統合ECUの構成を示すブロック図である。
【
図3】配信先テーブルの構成を説明するための模式図である。
【
図4】ストリームDB(データベース)の構成を説明するための模式図である。
【
図5】実施の形態1に係る中継ECUの構成を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態1に係る統合ECU及び中継ECU3の間で送受信されるメッセージの形式を示す模式図である。
【
図7】実施の形態1に係る統合ECUが行う登録処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態1に係る中継ECUが行う登録処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態1に係る統合ECUが行う通信処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態1に係る中継ECUが行う中継処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態2に係る車載通信システムの構成を説明するための模式図である。
【
図12】実施の形態2に係る第2統合ECUが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【
図13】実施の形態2に係る中継ECUが行う処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施の形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)本態様に係る車載通信装置は、複数の車載装置にそれぞれ個別の通信線を介して接続され、前記通信線を介してサービス指向通信の通信プロトコルで前記車載装置との通信を行う通信部と、前記通信部が前記車載装置から受信した時系列情報を記憶するストリームデータベースと、前記ストリームデータベースに記憶された時系列情報を前記車載装置へ配信する処理を行う処理部とを備える。
【0014】
本態様にあっては、複数の車載装置が個別の通信線を介して接続される車載通信装置が、これらの通信線を介してサービス指向通信の通信プロトコルで車載装置との通信を行う。車載通信装置は、車載装置から受信した時系列情報を記憶するストリームデータベースを備え、このストリームデータベースに記憶した情報を一又は複数の車載装置へ配信する
処理を行う。これにより車載通信装置は、車両内の時系列情報を集中的に管理することができ、サービス指向通信において時系列情報を提供するサーバとして動作することができるため、車両内の通信に対するサービス指向通信の導入に寄与することが期待できる。
【0015】
(2)前記処理部は、前記ストリームデータベースに記憶された時系列情報の配信先の登録要求を前記車載装置から受け付けて、前記時系列情報の配信先として前記車載装置を登録し、前記ストリームデータベースに記憶された時系列情報を読み出して、配信先として登録された前記車載装置に対して読み出した情報を配信することが好ましい。
【0016】
本態様にあっては、ストリームデータベースに記憶された情報の配信先の登録要求を車載装置が車載通信装置に対して行い、この登録要求を受け付けた車載通信装置が情報の配信先として要求元の車載装置を登録する。車載通信装置は、ストリームデータベースに記憶された情報を読み出し、配信先として登録された一又は複数の車載装置に対して、読み出した情報を配信する。これにより車載通信装置は、ストリームデータベースに記憶された情報を適切な車載装置へ配信することができる。
【0017】
(3)前記通信部が送受信する情報には、前記時系列情報と、当該時系列情報の生成時刻情報、通信プロトコルに関するバージョン情報、当該時系列情報を生成した装置を識別する情報、通信により経由した経路情報及び当該時系列情報の改変を防止するセキュリティ情報の少なくとも1つの情報とが含まれることが好ましい。
【0018】
本態様にあっては、車載通信装置が車載装置との間で送受信する情報には、ストリームデータベースに記憶する時系列情報と、この情報の生成時刻情報、通信プロトコルに関するバージョン情報、情報を生成した装置の識別情報、通信により経由した経路情報及び情報の改変を防止するセキュリティ情報のうちの少なくとも1つの情報とが含まれる。これらの情報を含むことで、車載通信装置及び車載装置を含む車載通信システムは、サービス指向通信の通信プロトコルに対応した情報の送受信を行うことが期待できる。
【0019】
(4)前記処理部は、前記複数の車載装置にそれぞれ個別の通信線を介して接続された他の車載通信装置へ、前記ストリームデータベースに記憶した時系列情報を送信することが好ましい。
【0020】
本態様にあっては、上記の車載通信装置とは別に、車両には他の車載通信装置が設けられる。他の車載通信装置は、車載装置に接続されたものと同じ複数の車載装置が個別の通信線を介して接続される。車載通信装置は、ストリームデータベースに記憶した情報を他の車載通信装置へ送信する。これにより、車載通信装置からの情報を受信した他の車載通信装置は、受信した情報を自身のストリームデータベースに記憶することができ、何らかの要因で車載通信装置が情報を配信することができなくなった場合に他の車載通信装置が情報配信を行うことができる。
【0021】
(5)前記処理部は、前記複数の車載装置にそれぞれ個別の通信線を介して接続された他の車載通信装置から送信される時系列情報を受信して前記ストリームデータベースに記憶し、前記他の車載通信装置の異常を検出した場合に、前記ストリームデータベースに記憶された時系列情報を前記車載装置へ配信することが好ましい。
【0022】
本態様にあっては、車載通信装置が他の車載通信装置から送信される情報を受信してストリームデータベースに記憶する。車載通信装置は、他の車載通信装置の異常を検出した場合に、ストリームデータベースに記憶した情報を一又は複数の車載装置へ配信する。これにより車載通信装置は、他の車載通信装置がストリームデータベースに記憶した情報をバックアップとして自身のストリームデータベースに記憶することができ、何らかの要因
で他の車載通信装置が情報を配信することができなくなった場合に車載通信装置が情報配信を行うことができる。
【0023】
(6)本態様に係る車載中継装置は、車載通信装置に第1通信線を介して接続され、サービス指向通信の第1通信プロトコルで通信を行う第1通信部と、一又は複数の車載制御装置に第2通信線を介して接続され、前記第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルで通信を行う第2通信部と、前記車載通信装置及び前記車載制御装置の間で通信を中継する処理を行う処理部とを備え、前記処理部は、前記車載通信装置から配信された時系列情報を前記第1通信部にて受信し、受信した時系列情報を前記第2通信部から前記車載制御装置へ送信し、前記車載制御装置から送信された時系列情報を前記第2通信部にて受信し、受信した時系列情報を前記第1通信部から前記車載通信装置へ送信することで、前記時系列情報を前記車載通信装置が有するストリームデータベースに記憶させる。
【0024】
本態様にあっては、車載中継装置が第1通信線を介して車載通信装置に接続され、第2通信線を介して一又は複数の車載制御装置に接続される。車載中継装置は、サービス指向通信の第1通信プロトコルで車載通信装置との通信を行い、第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルで車載制御装置との通信を行う。車載中継装置は、車載通信装置から配信された情報を受信して車載制御装置へ送信する。車載中継装置は、車載制御装置から送信された情報を受信して車載通信装置へ送信することで、車載制御装置から受信した情報を車載通信装置のストリームデータベースに記憶させる。これにより、サービス指向通信を含む異なる通信プロトコルが混在する車載通信システムを実現することが期待でき、車両内の通信に対するサービス指向通信の導入に寄与することが期待できる
【0025】
(7)前記処理部は、前記車載通信装置のストリームデータベースに記憶された時系列情報の配信先としての登録を前記車載通信装置へ要求することが好ましい。
【0026】
本態様にあっては、車載通信装置のストリームデータベースに記憶された情報の配信先の登録要求を車載中継装置が車載通信装置に対して行う。これにより車載中継装置は、例えば自身に接続された一又は複数の車載制御装置が必要とする情報について車載通信装置に配信先の登録を行うことができ、車載通信装置から必要な情報を取得して車載制御装置へ送信することができる。
【0027】
(8)前記第1通信部を複数備え、複数の第1通信部には、第1の車載通信装置に接続される第1通信部と、第2の車載通信装置に接続される第1通信部とを含み、前記処理部は、前記第1の車載通信装置との間で時系列情報の送受信を行い、前記第1の車載通信装置の異常が検出された場合に、前記第2の車載通信装置との間で時系列情報の送受信を行うことが好ましい。
【0028】
本態様にあっては、車載中継装置が第1の車載通信装置及び第2の車載通信装置と接続され、両車載通信装置との通信が可能である。車載中継装置は、通常は第1の車載通信装置との間で情報の送受信を行い、第1の車載通信装置の異常が検出された場合に第2の車載通信装置との間で情報の送受信を行う。これにより車載中継装置は、第1の車載通信装置に何らかの異常が生じた場合であっても、第2の車載通信装置を利用して処理を継続して行うことができる。
【0029】
(9)前記第2通信部を複数備え、複数の第2通信部には、前記車載制御装置に通信線を介して接続される第2通信部と、他の車載中継装置及び他の車載制御装置を接続する他の通信線に接続される第2通信部とを含み、前記処理部は、前記他の車載中継装置の異常が検出された場合に、前記他の車載制御装置との間で時系列情報の送受信を行うことが好ましい。
【0030】
本態様にあっては、車載中継装置が、他の車載中継装置に接続された一又は複数の車載制御装置とも通信線を介して接続され、他の車載中継装置が通信の中継を行っている車載制御装置とも通信が可能である。車載中継装置は、他の車載中継装置の異常が検出された場合に、この他の車載中継装置に接続された一又は複数の車載制御装置との間で情報の送受信を行う。これにより、他の車載中継装置に何らかの異常が生じた場合であっても、車載中継装置が他の車載中継装置に代わって車載制御装置との通信を行うことができる。
【0031】
(10)本態様に係る車載通信システムは、受信した時系列情報を記憶するストリームデータベースを有する車載通信装置と、前記車載通信装置に個別の第1通信線を介して接続された複数の車載中継装置とを備え、各車載中継装置は、第2通信線を介して複数の車載制御装置に接続され、前記車載通信装置及び前記車載中継装置は、サービス指向通信の第1通信プロトコルで通信を行い、前記車載中継装置及び前記車載制御装置は、前記第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルで通信を行い、前記車載通信装置は、前記車載中継装置から受信した時系列情報を前記ストリームデータベースに記憶し、前記ストリームデータベースに記憶された時系列情報を前記車載中継装置へ配信し、前記車載中継装置は、前記車載通信装置から配信された時系列情報を受信して前記車載制御装置へ送信し、前記車載制御装置から送信された時系列情報を受信して前記車載通信装置へ送信することで、前記時系列情報を前記ストリームデータベースに記憶させる。
【0032】
本態様にあっては、態様(1)及び(6)と同様に、車両内の通信に対するサービス指向通信の導入に寄与することが期待できる。
【0033】
(11)本態様に係る通信方法は、複数の車載装置にそれぞれ個別の通信線を介して接続された車載通信装置が、前記通信線を介してサービス指向通信の通信プロトコルで前記車載装置との通信を行い、前記車載装置から受信した時系列情報をストリームデータベースに記憶し、前記ストリームデータベースに記憶された時系列情報を前記車載装置へ配信する。
【0034】
本態様にあっては、態様(1)と同様に、車両内の通信に対するサービス指向通信の導入に寄与することが期待できる。
【0035】
(12)本態様に係る通信方法は、車載通信装置に第1通信線を介して接続され、一又は複数の車載制御装置に第2通信線を介して接続された車載中継装置が、サービス指向通信の第1通信プロトコルで前記車載通信装置との通信を行い、前記第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルで前記車載制御装置との通信を行い、前記車載通信装置から配信された時系列情報を受信して前記車載制御装置へ送信し、前記車載制御装置から送信された時系列情報を受信して前記車載通信装置へ送信することで、前記時系列情報を前記車載通信装置が有するストリームデータベースに記憶させる。
【0036】
本態様にあっては、態様(6)と同様に、車両内の通信に対するサービス指向通信の導入に寄与することが期待できる。
【0037】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る車載通信システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0038】
<システム構成>
図1は、実施の形態1に係る車載通信システムの概要を説明するための模式図である。
本実施の形態に係る車載通信システムは、車両100に搭載された統合ECU(車載通信装置)1、中継ECU(車載中継装置)3及びECU(車載制御装置)5等の種々の装置が車内ネットワークを介してメッセージの送受信を行うシステムである。本実施の形態において車両100には1つの統合ECU1が搭載され、統合ECU1には個別の通信線を介して複数(本例では3つ)の中継ECU3が接続されている。統合ECU1及び複数の中継ECU3は、いわゆるスター型のネットワーク構成で接続されており、イーサネット(登録商標)の通信プロトコルに従ってメッセージの送受信を行う。
【0039】
各中継ECU3には、共通の通信線を介して複数(本例では3つ)のECU5がそれぞれ接続されている。中継ECU3及び複数のECU5は、いわゆるバス型のネットワーク構成で接続されており、CAN(Controller Area Network)の通信プロトコルに従ってメッセージの送受信を行う。このように、本実施の形態に係る車載通信システムは、イーサネットの通信プロトコルに従う通信と、CANの通信プロトコルに従う通信とが混在するシステムである。統合ECU1は、車両100の適所に配置される。各中継ECU3は、車両100の例えば前後左右等のエリア毎にそれぞれ配置され、個別の通信線を介して統合ECU1に接続される。複数のECU5は、それぞれ車両100の適所に配置され、最寄りの中継ECU3にCANバスを介して接続される。
【0040】
近年、車両内の通信にサービス指向通信、即ちSOME/IPの通信プロトコルを用いることが提案されている。SOME/IPの通信プロトコルは、サービス指向アーキテクチャに基づいて設計された通信プロトコルであり、イーサネットの上位レイヤの通信プロトコルである。従来のCANの通信プロトコルではブロードキャスト、マルチキャストの通信が行われ、SOME/IPの通信プロトコルではクライアントサーバ型の通信が行われる。このためCANの通信プロトコル上でSOME/IPの通信プロトコルと同様の通信を行おうとした場合、各通信ノードがクライアント及びサーバの両方として動作する必要があり、通信効率の低下が懸念される。
【0041】
そこで本実施の形態に係る車載通信システムでは、上述のように車両100内の通信のネットワークを、イーサネットの通信を行う統合ECU1及び中継ECU3と、CANの通信を行う中継ECU3及びECU5との複数の階層に分離している。統合ECU1及び中継ECU3の間の通信には、SOME/IPの通信プロトコルが適用される。これに対して本実施の形態に係る車載通信システムでは、中継ECU3及びECU5の間の通信には、CANの通信プロトコルが適用される。このような階層構造を採用することによって本実施の形態に係る車載通信システムは、イーサネット及びCAN等のように異なる通信プロトコルが混在するシステムにSOME/IPの通信プロトコルを適用することを可能とする。
【0042】
本実施の形態に係る車載通信システムでは、車両100内の各装置が送受信する各種の情報を、統合ECU1が集中的に管理する。このために統合ECU1は、これら各種の情報を記憶するストリームデータベース(
図1においては単にDBと記載する)を備えている。ストリームデータベースは、時系列の情報を記憶して、記憶した情報を時系列の順に逐次的に処理するデータベースである。本実施の形態に係る車載通信システムでは、例えば各ECU5が生成する速度の情報又はエンジンの回転数の情報等を、その生成順に従って時系列の情報として扱う。
【0043】
本実施の形態に係る車載通信システムでは、ECU5が生成した時系列の情報を中継ECU3が取得して統合ECU1へ送信することにより、統合ECU1のストリームデータベースに時系列の情報が記憶される。統合ECU1は、ストリームデータベースに記憶された情報を時系列順に読み出し、この情報を必要とするECU5へ(情報を必要とするECU5が接続された中継ECU3へ)読み出した時系列の情報を配信する。これにより本
実施の形態に係る車載通信システムは、時系列の情報の記憶及び配信を行う統合ECU1をサーバとし、時系列の情報が提供される中継ECU3及びECU5をクライアントとしたサービス指向通信を行うことができる。
【0044】
<装置構成>
図2は、実施の形態1に係る統合ECU1の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る統合ECU1は、処理部(プロセッサ)11、記憶部(ストレージ)12及び通信部(トランシーバ)13等を備えて構成されている。処理部11は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。処理部11は、記憶部12に記憶されたプログラム12aを読み出して実行することにより、中継ECU3から受信した情報を記憶する処理、及び、記憶した情報を中継ECU3へ配信する処理等の種々の処理を行う。
【0045】
記憶部12は、例えばフラッシュメモリ又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性のメモリ素子を用いて構成されている。記憶部12は、処理部11が実行する各種のプログラム、及び、処理部11の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部12は、処理部11が実行するプログラム12aを記憶すると共に、記憶した情報を配信する配信先に関する情報が登録される配信先テーブル12b、及び、時系列の情報を記憶するストリームDB(データベース)12cが設けられている。
【0046】
プログラム(プログラム製品)12aは、例えば統合ECU1の製造段階において記憶部12に書き込まれてもよく、例えば遠隔のサーバ装置などが配信するものを統合ECU1が通信にて取得してもよく、例えばメモリカード又は光ディスク等の記録媒体99に記録されたプログラム12aを統合ECU1が読み出して記憶部12に記憶してもよく、例えば記録媒体99に記録されたものを書込装置が読み出して統合ECU1の記憶部12に書き込んでもよい。プログラム12aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体99に記録された態様で提供されてもよい。
【0047】
図3は、配信先テーブル12bの構成を説明するための模式図である。本実施の形態に係る配信先テーブル12bは、例えば情報の配信先となる装置の識別情報と、この装置へ配信する情報の種類とが対応付けて記憶されるテーブルである。本例では、中継ECU_Aの識別情報が付された配信先に対して、車速、エンジン回転数及び舵角等の情報を配信することが記憶されている。中継ECU_Bの識別情報が付された配信先に対して、舵角及びシフトポジション等の情報を配信することが記憶されている。中継ECU_Cの識別情報が付された配信先に対して、位置情報及び車速等の情報を配信することが記憶されている。統合ECU1は、例えば車載通信システムの起動時等に、中継ECU3からの登録要求を受け付け、受け付けた要求に応じて配信する情報の種類を決定し、要求元の中継ECU3の識別情報と配信する情報の種類とを対応付けて配信先テーブル12bに記憶する。
【0048】
なお、本実施の形態に係る車載通信システムのように統合ECU1に対する登録要求を行う必要があるシステムでは、登録要求を行っていないECU等に対して統合ECU1からの情報配信はなされない。また統合ECU1は、何らかの要因で登録要求を受け付けることができないECU等が存在する場合に、例えば登録要求を行ったECUの識別情報、登録要求に失敗した時刻及び登録要求の内容等の情報を、登録に関する異常情報として記憶しておいてもよい。
【0049】
また本実施の形態に係る車載通信システムは、統合ECU1に対する登録要求が必要な構成であるが、これに限るものではない。車載通信システムは登録要求を行わない構成で
あってもよく、この場合に統合ECU1には予め決定された配信先及び配信情報の情報が設定された配信先テーブル12bが記憶され、統合ECU1はこの配信先テーブル12bに設定された情報に従って、情報の配信を継続的に行う。
【0050】
図4は、ストリームDB12cの構成を説明するための模式図である。本図では、ストリームDB12cが車両100内で生成される時系列の情報として、車速、舵角及び回転数等の情報を記憶する例を示している。ストリームDB12cは、統合ECU1が受信したメッセージに含まれる時系列の情報を、その情報の種類毎に時系列で記憶する。各情報は、いわゆるFIFO(First-In First-Out)の態様でストリームDB12cに記憶される。ストリームDB12cは、例えば時刻t0の車速、時刻t1の車速、時刻t2の車速及び時刻t3の車速の情報をこの時系列順に記憶しており、新たに時刻t4の車速の情報を記憶する場合、記憶されている情報の中で最も新しい時刻t3の車速の情報の後に時刻t4の車速の情報を追加して記憶する。ストリームDB12cは、例えば時刻t0の回転数、時刻t1の回転数、時刻t2の回転数、時刻t3の回転数及び時刻t4の回転数の情報をこの時系列順に記憶しており、回転数の情報を読み出す場合、最も過去の時刻t0の回転数の情報を読み出す。
【0051】
統合ECU1は、ストリームDB12cから情報を読み出して配信する場合に、1回に1個の情報を読み出して配信してもよく、1回に複数個の情報を読み出して複数個の情報をまとめて配信してもよい。例えば統合ECU1は、時刻t0~t4の車速の情報をストリームDB12cから読み出し、5個の車速の情報を1つのメッセージに含めて、この情報を必要とするECU等へ配信することができる。
【0052】
また統合ECU1は、ストリームDB12cから複数の情報を読み出し、複数の情報に対する演算を実施して、演算結果を配信してもよい。例えば統合ECU1は、時刻t0~t4の車速の情報をストリームDB12cから読み出し、5個の車速の最大値、最小値又は平均値等を算出し、算出した値を含むメッセージを配信することができる。統合ECU1は、ストリームDB12cから情報を1個のみ読み出す場合であっても、読み出した1個の情報に対して演算を行ってよい。
【0053】
統合ECU1がストリームDB12cから読み出す情報の数、及び、読み出した情報に対する演算内容等は、例えばこの情報を必要とするECU等が登録要求を行う際に指定してもよい。また例えば、車載通信システムの設計段階等において、情報の種別毎に読み出す情報の数及び演算内容等が定められてもよい。
【0054】
また例えば統合ECU1は、車速の情報配信を要求するECUが2つ存在する場合に、第1のECUへ3個の車速の平均値を配信し、第2のECUへ5個の車速の最大値を配信する等のように、配信先毎に異なる情報数及び演算内容で情報配信を行ってよい。
【0055】
本実施の形態においては、ストリームDB12cから読み出された情報は破棄される(記憶領域から消去される)ものとするが、これに限るものではなく、例えば情報が生成されてから所定時間が経過するまではストリームDB12cに保存されていてもよく、破棄せずに記憶し続けてもよい。ただしストリームDB12cは、読み出した情報を破棄しない場合、時系列に記憶されたいずれの情報まで読み出しが行われたかを管理する。配信先テーブル12b及びストリームDB12cは、不揮発性のメモリ素子を用いて構成された記憶部12に記憶されるのではなく、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性のメモリ素子で構成された記憶部に記憶されてもよい。
【0056】
通信部13は、イーサネットの通信プロトコルに従う有線通信を行う。通信部13は、
例えばイーサネットスイッチのIC(Integrated Circuit)を用いて構成され得る。通信部13は、車両100内に配された個別の通信線を介して中継ECU3に接続され、これらの中継ECU3との間でイーサネットの通信プロトコルに応じた1対1の通信を行う。通信部13は、処理部11から与えられた送信用のメッセージをイーサネットの通信プロトコルに応じた電気信号に変換して通信線へ出力することにより、中継ECU3へのメッセージ送信を行う。通信部13は、通信線の電位をサンプリングして取得することにより中継ECU3からのメッセージを受信し、受信したメッセージを処理部11へ与える。
【0057】
本実施の形態に係る統合ECU1では、記憶部12に記憶されたプログラム12aを処理部11が読み出して実行することにより、登録処理部11a、DB処理部11b及び配信処理部11c等が処理部11にソフトウェア的な機能部として実現される。登録処理部11aは、ストリームDB12cに記憶した情報の配信先を登録する処理を行う。例えば車両100のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態へ切り替えられ、車載通信システムが起動された場合、登録処理部11aは、通信部13に接続された各中継ECU3に対して自身が提供するサービスに関する情報を通知すると共に、各中継ECU3から情報の配信先の登録要求を取得する。各中継ECU3は、自身に付された識別情報及び配信を要求する情報の種類等の情報を含む情報配信先の登録要求を統合ECU1へ送信する。統合ECU1の登録処理部11aは、中継ECU3からの要求を受信し、受信した要求に含まれる情報に基づいて記憶部12の配信先テーブル12bに配信先及び配信情報の登録を行う。車載通信システムにて行われる配信先の登録は、例えばSOME/IP-SDの通信プロトコルに従う手順で行われ得る。
【0058】
DB処理部11bは、ストリームDB12cに対する情報の記憶及び読み出し等の処理を行う。DB処理部11bは、受信したメッセージに含まれる時系列の情報を取得し、取得した時系列の情報を、ストリームDB12cに時系列に記憶されている同じ種類の情報の末尾(最も新しい情報の後)に追加して記憶する。DB処理部11bは、ストリームDB12cから情報を読み出す場合、読出対象となる情報の種類を判断し、この種類の情報が時系列に記憶されているものの中から先頭(最も古い)の情報を読み出す。
【0059】
配信処理部11cは、ストリームDB12cに記憶された情報を一又は複数の中継ECU3へ配信する処理を行う。本実施の形態に係る車載通信システムでは、例えば情報の種類毎に配信周期が定められている。配信処理部11cは、所定の周期でストリームDB12cから情報を取得し、取得した情報を含むメッセージを作成する。配信処理部11cは、配信先テーブル12bにこの情報の配信先として登録されている一又は複数の中継ECU3へ、作成したメッセージを送信する。統合ECU1から中継ECU3へ配信されるメッセージには、ストリームDB12cから読み出した複数の情報が含まれていてよい。配信周期は情報の種類毎に定めるのではなく、例えば配信先毎に定めてもよい。配信処理部11cは、定められた周期とは別に、例えば中継ECU3から情報の送信を要求された場合に、要求された情報をストリームDB12cから取得して要求元の中継ECU3へ送信してよい。
【0060】
図5は、実施の形態1に係る中継ECU3の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る中継ECU3は、処理部(プロセッサ)31、記憶部(ストレージ)32、第1通信部(トランシーバ)33及び第2通信部(トランシーバ)34等を備えて構成されている。処理部31は、CPU又はMPU等の演算処理装置を用いて構成されている。処理部31は、記憶部32に記憶されたプログラム32aを読み出して実行することにより、統合ECU1に対して配信先の登録を要求する処理、並びに、統合ECU1及びECU5の間のメッセージ送受信を中継する処理等の種々の処理を行う。
【0061】
記憶部32は、例えばフラッシュメモリ又はEEPROM等の不揮発性のメモリ素子を
用いて構成されている。本実施の形態において記憶部32は、処理部31が実行するプログラム32aを記憶する。プログラム(プログラム製品)32aは、例えば中継ECU3の製造段階において記憶部32に書き込まれてもよく、例えば遠隔のサーバ装置などが配信するものを中継ECU3が通信にて取得してもよく、例えばメモリカード又は光ディスク等の記録媒体98に記録されたプログラム32aを中継ECU3が読み出して記憶部32に記憶してもよく、例えば記録媒体98に記録されたものを書込装置が読み出して中継ECU3の記憶部32に書き込んでもよい。プログラム32aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体98に記録された態様で提供されてもよい。
【0062】
第1通信部33は、イーサネットの通信プロトコルに従う有線通信を行うものであり、例えばイーサネットスイッチのICを用いて構成され得る。第1通信部33は、車両100内に配された個別の通信線を介して統合ECU1に接続され、統合ECU1との間でイーサネットの通信プロトコルに応じた1対1の通信を行う。第1通信部33は、処理部31から与えられた送信用のメッセージをイーサネットの通信プロトコルに応じた電気信号に変換して通信線へ出力することにより、統合ECU1へのメッセージ送信を行う。第1通信部33は、通信線の電位をサンプリングして取得することにより統合ECU1からのメッセージを受信し、受信したメッセージを処理部31へ与える。
【0063】
第2通信部34は、CANの通信プロトコルに従う有線通信を行うものであり、例えばCANコントローラのICを用いて構成され得る。第2通信部34は、車両100内に配されたCANバスを介して複数のECU5に接続され、ECU5との間でCANの通信プロトコルに応じた通信を行う。第2通信部34は、処理部31から与えられた送信用のメッセージをCANの通信プロトコルに応じた電気信号に変換してCANバスへ出力することにより、ECU5へのメッセージ送信を行う。第2通信部34は、CANバスの電位をサンプリングして取得することによりECU5からのメッセージを受信し、受信したメッセージを処理部31へ与える。第2通信部34は、CANバスに対するメッセージの送信に衝突が生じた場合に、メッセージの送信順序を調停する処理を行う。
【0064】
本実施の形態に係る中継ECU3では、記憶部32に記憶されたプログラム32aを処理部31が読み出して実行することにより、登録処理部31a及び中継処理部31b等が処理部31にソフトウェア的な機能部として実現される。登録処理部31aは、統合ECU1に対して情報の配信先の登録を要求する処理を行う。例えば車載通信システムが起動された後、統合ECU1は各中継ECU3に対して自身が提供するサービスに関する情報等を送信すると共に、情報の配信先の登録要求を受け付ける。統合ECU1からの情報を受信した各中継ECU3の登録処理部31aは、自身に付された識別子と、自身が必要とする情報の種類との情報を含む情報配信先の登録要求を統合ECU1へ送信する。ここで、自身が必要とする情報の種類は、中継ECU3に接続された一又は複数のECU5が必要とする情報である。中継ECU3には例えば各ECU5が必要とする情報の種類が記憶部32に予め記憶されており、登録処理部31aはこの情報に基づいて登録要求を行うことができる。又は、登録処理部31aは、例えば車載通信システムが起動された際に、各ECU5との通信を行って必要とする情報の種類がいずれであるかについての情報を取得してもよい。
【0065】
中継処理部31bは、統合ECU1と一又は複数のECU5との間でメッセージの送受信を中継する処理を行う。中継処理部31bは、統合ECU1が配信するメッセージを第1通信部33にて受信し、受信したメッセージに含まれる時系列の情報を取得し、取得した情報を含むCANのメッセージを生成して第2通信部34から送信する。中継処理部31bは、ECU5が送信するメッセージを第2通信部34にて受信し、受信したメッセージに含まれる時系列の情報を取得し、取得した情報を含むイーサネット(又はSOME/IP)のメッセージを生成して第1通信部33から送信する。中継処理部31bは、一方
から受信した一つメッセージを複数のメッセージに分割して他方へ中継してもよく、一方から受信した複数のメッセージを一つのメッセージに結合して他方へ中継してもよい。
【0066】
<通信処理>
本実施の形態に係る車載通信システムでは、一又は複数のECU5と中継ECU3との間でCANの通信プロトコルに従うメッセージの送受信を行い、一又は複数の中継ECU3と統合ECU1との間でSOME/IPの通信プロトコルに従うメッセージの送受信を行う。
図6は、実施の形態1に係る統合ECU1及び中継ECU3の間で送受信されるメッセージの形式を示す模式図である。本実施の形態に係る車載通信システムにおいて統合ECU1及び中継ECU3はSOME/IPの通信プロトコルに従うメッセージの送受信を行う。このメッセージには、32ビットのメッセージID、32ビットのメッセージ長、32ビットのリクエストID、8ビットのプロトコルバージョン、8ビットのインタフェースバージョン、8ビットのメッセージ種別、8ビットのリターンコード及び可変長のペイロード等の情報格納領域が設けられている。
【0067】
メッセージIDは、メッセージの種別を示す識別情報であり、例えばCANの通信プロトコルにて用いられるCAN-IDと同様に、予めシステムの設計者等により決定される。メッセージ長は、このメッセージの全体の長さを示すビット又はバイト等を単位とする数値情報である。リクエストIDは、このメッセージに含まれる情報の配信を要求した装置に付された識別情報である。プロトコルバージョン及びインタフェースバージョンは、メッセージを送受信する装置が使用しているSOME/IPの通信プロトコルのプロトコル及びインタフェースのバージョンの情報である。メッセージ種別は、このメッセージに含まれている情報の種別を示す識別情報である。リターンコードは、何らかの要求が正常に処理されたかどうかを通知するために使用され、例えば正常終了又は異常終了等を示すいくつかのコードのうちの1つが設定される。メッセージに含まれるメッセージID~リターンコードの情報は、SOME/IPの通信プロトコルにて
【0068】
ペイロードは、ストリームDB12cに記憶される又は記憶された一又は複数の時系列情報を格納する領域である。本実施の形態に係る車載通信システムにおいてメッセージのペイロードには、時系列情報と共に、生成時刻情報、ノード番号、経路情報及びセキュリティ情報等の情報が格納される。生成時刻情報は、時系列情報が生成された時刻(又は、時系列情報を生成したECU5からこの情報を含むメッセージを中継ECU3が受信した時刻)を示す情報である。車載通信システムの各装置は、この生成時刻に基づいて情報の時系列の順序を判断することができる。ノード番号は、このメッセージを生成したノード(装置)の識別情報又はこのメッセージに含まれる情報を生成したノードの識別情報等である。経路情報は、このメッセージがどのような通信経路を辿って受信されたかを示す情報であり、例えばこのメッセージを送受信した一又は複数のノードの識別情報が順に格納される。セキュリティ情報は、メッセージの改ざん等を防止するための情報であり、例えば誤り検出コード、誤り訂正コード又は認証コード等の情報である。
【0069】
本実施の形態に係る車載通信システムでは、統合ECU1及び中継ECU3が
図6に示す形式のメッセージを生成して送信する。ただし、統合ECU1から中継ECU3へ送信するメッセージを
図6の形式とし、中継ECU3から統合ECU1へ送信するメッセージは異なる形式としてもよい。メッセージのペイロードに、ノード番号、経路情報及びセキュリティ情報等は必ずしも含まれていなくてよい。
【0070】
本実施の形態に係る車載通信システムでは、例えば車両100のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態へ切り替えられ、車載通信システムの各装置に電源が供給されて起動された後に、まず統合ECU1が情報を配信する配信先を配信先テーブル12bに登録する処理が行われる。ただしこの登録処理は、車載通信システムの起動の都度行うの
ではなく、最初に起動された際に行って配信先テーブル12bを記憶しておき、その後は記憶した配信先テーブル12bを再利用して情報の配信を統合ECU1が行ってもよい。
【0071】
図7は、実施の形態1に係る統合ECU1が行う登録処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る統合ECU1の処理部11は、例えば車両100のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態へ切り替えられてバッテリ等からの電源が投入された後、各部の初期化等の処理を含む起動処理を行う(ステップS1)。起動処理の終了後、処理部11の登録処理部11aは、通信部13に個別の通信線を介して接続された各中継ECU3に対して、自身が提供するサービスに関する種々の情報を含むサービス情報を送信する(ステップS2)。
【0072】
登録処理部11aは、サービス情報の送信を受けた中継ECU3が送信する登録要求のメッセージを受信したか否かを判定する(ステップS3)。中継ECU3から登録要求のメッセージを受信していない場合(S3:NO)、登録処理部11aは、登録要求のメッセージを受信するまで待機する。登録要求のメッセージを受信した場合(S3:YES)、登録処理部11aは、受信した登録要求のメッセージに含まれる送信元の装置の識別情報を取得する(ステップS4)。登録処理部11aは、受信した登録要求のメッセージに含まれる、配信を要求する情報の種類を取得する(ステップS5)。登録処理部11aは、ステップS4にて取得した識別情報と、ステップS5にて取得した情報の種類とを対応付けて記憶部12の配信先テーブル12bに登録し(ステップS6)、処理を終了する。
【0073】
図8は、実施の形態1に係る中継ECU3が行う登録処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る中継ECU3の処理部31は、例えば車両100のイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態へ切り替えられてバッテリ等からの電源が投入された後、各部の初期化等の処理を含む起動処理を行う(ステップS21)。起動処理の終了後、処理部31の登録処理部31aは、統合ECU1が送信するサービス情報を第1通信部33にて受信したか否かを判定する(ステップS22)。統合ECU1からサービス情報を受信していない場合(S22:NO)、登録処理部31aは、サービス情報を受信するまで待機する。
【0074】
統合ECU1からサービス情報を受信した場合(S22:YES)、登録処理部31aは、第2通信部34にCANバスを介して接続された一又は複数のECU5が必要とする情報を判断する(ステップS23)。このときに登録処理部31aは、例えば予め記憶した情報を読み出すことで各ECU5が必要とする情報を判断してもよく、例えばECU5に必要とする情報がいずれであるかを問い合わせて回答を取得してもよい。登録処理部31aは、ステップS23にてECU5が必要とすると判断した情報の種類、及び、自身に付された識別情報等の情報を含む登録要求のメッセージを生成する(ステップS24)。登録処理部31aは、生成した登録要求のメッセージを第1通信部33から統合ECU1へ送信し(ステップS25)、処理を終了する。
【0075】
図7及び
図8においては、統合ECU1がサービス情報を送信し、受信したサービス情報に応答する態様で中継ECU3が登録要求を行うものとしたが、これに限るものではない。例えば、起動処理の完了後に、各中継ECU3が自発的に登録要求のメッセージを統合ECU1へ送信してもよい。
【0076】
図9は、実施の形態1に係る統合ECU1が行う通信処理の手順を示すフローチャートである。統合ECU1の処理部11は、例えば情報の種類毎に定められた配信周期が経過した場合など、情報の配信を行うタイミングに至ったか否かを判定する(ステップS41)。情報の配信タイミングに至った場合(S41:YES)、処理部11のDB処理部11bは、記憶部12のストリームDB12cに記憶された情報の中から、配信対象となる
種別の最も古い情報を読み出す(ステップS42)。DB処理部11bは、この際に古いものから順に複数の情報を読み出してもよい。処理部11の配信処理部11cは、ステップS42にてストリームDB12cから読み出した一又は複数の情報をペイロードに含み、且つ、
図6に示したメッセージID及びメッセージ長等の各種の情報を付したSOME/IPの通信プロトコルのメッセージを生成する(ステップS43)。配信処理部11cは、記憶部12の配信先テーブル12bにこの情報の配信先として登録された一又は複数の中継ECU3へ、ステップS43にて生成したメッセージを通信部13から送信し(ステップS44)、処理を終了する。
【0077】
情報の配信タイミングに至っていない場合(S41:NO)、処理部11は、中継ECU3からのメッセージを受信したか否かを判定する(ステップS45)。中継ECU3からメッセージを受信していない場合(S45:NO)、処理部11は、ステップS41へ処理を戻し、情報の配信タイミングに至るか、又は、中継ECU3からのメッセージを受信するまで待機する。中継ECU3からのメッセージを受信した場合(S45:YES)、DB処理部11bは、受信したメッセージに含まれる時系列の情報を取得する(ステップS46)。DB処理部11bは、ステップS46にて取得した時系列の情報をストリームDB12cに記憶して(ステップS47)、処理を終了する。
【0078】
図10は、実施の形態1に係る中継ECU3が行う中継処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る中継ECU3の処理部31の中継処理部31bは、第1通信部33にて統合ECU1からのメッセージを受信したか否かを判定する(ステップS61)。統合ECU1からのメッセージを受信した場合(S61:YES)、中継処理部31bは、SOME/IPの通信プロトコルに従うメッセージから、必要となる時系列の情報等を取得する(ステップS62)。中継処理部31bは、ステップS62にて取得した情報を含むCANの通信プロトコルに従うメッセージを生成する(ステップS63)。中継処理部31bは、ステップS63にて生成したメッセージを、第2通信部34からECU5へ送信し(ステップS64)、処理を終了する。
【0079】
統合ECU1からメッセージを受信していない場合(S61:NO)、中継処理部31bは、第2通信部34にてECU5からのメッセージを受信したか否かを判定する(ステップS65)。ECU5からのメッセージを受信していない場合(S65:NO)、中継処理部31bは、ステップS61へ処理を戻し、統合ECU1又はECU5からのメッセージを受信するまで待機する。ECU5からのメッセージを受信した場合(S65:YES)、中継処理部31bは、CANの通信プロトコルに従うメッセージから、時系列の情報等を取得する(ステップS66)。中継処理部31bは、ステップS66にて取得した情報を含むSOME/IPの通信プロトコルに従うメッセージを生成する(ステップS67)。中継処理部31bは、ステップS67にて生成したメッセージを、第1通信部33から統合ECU1へ送信し(ステップS68)、処理を終了する。
【0080】
図10において中継ECU3は、統合ECU1又はECU5からメッセージを受信する都度に、受信した情報を含むメッセージを送信して中継を行っているが、これに限るものではない。例えば中継ECU3は、複数のメッセージを受信して所望の情報が揃った場合に、複数の情報を含む中継用のメッセージを生成して送信してもよい。例えば中継ECU3は、所定の周期で中継用のメッセージの送信を行ってもよく、この場合には所定の周期が経過するまでに受信したメッセージ含まれる情報を記憶しておき、所定の周期が経過して中継用のメッセージを送信するタイミングに至った場合に、記憶しておいた複数の情報を含む中継用のメッセージを生成して送信してもよい。
【0081】
<まとめ>
以上の構成の本実施の形態に係る車載通信システムでは、複数の中継ECU3が個別の
通信線を介して接続される統合ECU1が、これらの通信線を介してサービス指向通信のSOME/IPの通信プロトコルで中継ECU3との通信を行う。統合ECU1は、中継ECU3から受信した時系列の情報を記憶するストリームDB12cを備え、このストリームDB12cに記憶した時系列の情報を一又は複数の中継ECU3へ配信する処理を行う。これにより統合ECU1は、車両100内の時系列の情報を集中的に管理することができ、サービス指向通信において時系列の情報を提供するサーバとして動作することができる。
【0082】
本実施の形態に係る車載通信システムでは、ストリームDB12cに記憶された情報の配信先の登録要求を中継ECU3が統合ECU1に対して行い、この登録要求を受け付けた統合ECU1が記憶部12の配信先テーブル12bに情報の配信先として要求元の中継ECU3を登録する。統合ECU1は、ストリームDB12cに記憶された情報を読み出し、配信先テーブル12bに配信先として登録された一又は複数の中継ECU3に対して読み出した情報を配信する。これにより統合ECU1は、ストリームDB12cに記憶された情報を適切な中継ECU3へ配信することができる。
【0083】
本実施の形態に係る車載通信システムでは、統合ECU1及び中継ECU3の間で送受信するメッセージには、ストリームDB12cに記憶する又は記憶された時系列の情報と、この情報の生成時刻情報、通信プロトコルに関するプロトコルバージョン及びインタフェースバージョンの情報、情報を生成した装置の識別情報としてノード番号、通信により経由した経路情報、及び、情報の経変を防止するためのセキュリティ情報のうちの少なくとも1つの情報とが含まれる。これらの情報を含むことで、統合ECU1及び中継ECU3を含む車載通信システムは、サービス指向通信のSOME/IPの通信プロトコルに対応したメッセージの送受信を行うことが期待できる。
【0084】
本実施の形態に係る車載通信システムでは、中継ECU3がイーサネットの通信線を介して統合ECU1に接続され、CANバスを介して一又は複数のECU5に接続される。中継ECU3は、サービス指向通信のSOME/IPの通信プロトコルで統合ECU1との通信を行い、CANの通信プロトコルでECU5との通信を行う。中継ECU3は、統合ECU1から配信された情報を受信してECU5へ送信する。中継ECU3は、ECU5から送信された情報を受信して統合ECU1へ送信する事で、ECU5から受信した情報を統合ECU1のストリームDB12cに記憶させる。これにより、サービス指向通信を服も異なる通信プロトコルが混在する車載通信システムを実現することが期待できる。
【0085】
本実施の形態に係る車載通信システムでは、統合ECU1のストリームDB12cに記憶された情報の配信先の登録要求を中継ECU3が統合ECU1に対して行う。これにより中継ECU3は、例えば自身に接続された一又は複数のECU5が必要とする情報について、統合ECU1に配信先の登録を行うことができ、統合ECU1から必要な情報を取得してECU5へ送信することができる。
【0086】
本実施の形態において例えば
図1に示した車載通信システムのネットワーク構成、
図2及び
図5に示した装置構成、
図3に示したテーブルに記憶される情報、
図4に示したデータベースに記憶される情報等は、一例であって、これに限るものではない。本実施の形態に係る車載通信システムで用いられる通信プロトコルは、SOME/IP、イーサネット及びCAN等の通信プロトコルとしたが、これに限るものではなく、種々の通信プロトコルが採用され得る。
【0087】
<実施の形態2>
図11は、実施の形態2に係る車載通信システムの構成を説明するための模式図である。実施の形態2に係る車載通信システムは、上述の実施の形態1に係る車載通信システム
に対して、装置又はネットワーク等の異常又は故障等の発生に対処すべく、装置及びネットワーク等の冗長化を行ったものである。実施の形態2に係る車載通信システムでは、第1統合ECU201a及び第2統合ECU201bの2つの統合ECUを備えている。第1統合ECU201aは、異常等が発生していない通常の状態において、実施の形態1に係る車載通信システムの統合ECU1と同様の処理を行う。
【0088】
第1統合ECU201a及び第2統合ECU201bは、通信線を介して接続されており、例えばイーサネットの通信プロトコルに基づく通信を行うことができる。第1統合ECU201aは、自身のストリームDB12cに時系列の情報を記憶する際に、同じ情報を第2統合ECU201bへ送信して、第2統合ECU201bが有するストリームDB12cに同じ情報を記憶させる。即ち第2統合ECU201bは、第1統合ECU201aが記憶する情報を自身のストリームDB12cにバックアップする。第1統合ECU201aは、配信先テーブル12bの情報を第2統合ECU201bへ送信してよい。
【0089】
第2統合ECU201bは、第1統合ECU201aに接続された一又は複数の中継ECU203a,203bに個別の通信線(
図11において破線で示す)を介して接続されている。実施の形態2に係る中継ECU203a,203bは、第1統合ECU201a及び第2統合ECU201bの2つの統合ECUと個別の通信線を介して接続される。異常等が発生していない通常の状態において、第1統合ECU201a及び中継ECU203a,203bが通信を行い、第2統合ECU201b及び中継ECU203a,203bは通信を行わない。
【0090】
第2統合ECU201bは、第1統合ECU201aから送信される情報を受信して、自身のストリームDB12cに記憶すると共に、例えば所定時間を超えて第1統合ECU201aからの情報を受信しない状態が続いた場合に、第1統合ECU201aに異常が生じたと判定する。例えば、第1統合ECU201aは自身に異常が生じていることを検出した場合、又は、自身と中継ECU203a,203bとの通信経路に異常が生じていることを検出した場合等に、第2統合ECU201bに対して異常発生を通知してもよい。第1統合ECU201aに異常が発生したと判定した場合、第2統合ECU201bは、中継ECU203a,203bに対して異常が発生した旨を通知する。
【0091】
第2統合ECU201bから異常発生の通知を受信した中継ECU203a,203bは、第1統合ECU201aとの通信を停止し、第2統合ECU201bとの通信を開始する。以後、第2統合ECU201b及び中継ECU203a,203bが通信を行い、第2統合ECU201bが中継ECU203a,203bから受信したメッセージに含まれる時系列の情報をストリームDB12cに記憶すると共に、ストリームDB12cに記憶した時系列の情報を第2統合ECU201bが中継ECU203a,203bへ配信する。
【0092】
車載通信システムでは、中継ECU203aはCANバスを介して一又は複数のECU205aに接続され、中継ECU203bはCANバスを介して一又は複数のECU205bに接続されている。更に実施の形態2に係る車載通信システムでは、中継ECU203aは、中継ECU203b及びECU205bが通信を行うCANバスに接続されており(
図11においてこの通信経路を二点鎖線で示す)、中継ECU203b及びECU205bの通信状況を監視すると共に、中継ECU203b及びECU205bとの通信を行うことができる。同様に中継ECU203bは、中継ECU203a及びECU205aが通信を行うCANバスに接続されており(
図11においてこの通信経路を一点鎖線で示す)、中継ECU203a及びECU205aの通信状況を監視すると共に、中継ECU203a及びECU205aとの通信を行うことができる。
図11において一点鎖線及び二点鎖線で示した通信経路は、中継ECU203a,203bに異常等が生じた場合に
用いられる冗長な通信経路である。
【0093】
中継ECU203aは、異常等が発生していない通常の状態において、ECU205aとの間で通信を行うと共に、中継ECU203a及びECU205bの通信を監視する。中継ECU203aは、例えば中継ECU203bが所定時間を超えて情報の送信を行っていない状態が続いた場合に、中継ECU203bに異常が生じたと判定する。例えば第1統合ECU201aが中継ECU203bの異常を検知した場合にその旨を中継ECU203aへ通知してもよい。中継ECU203bに異常が生じたと判定した中継ECU203aは、第1統合ECU201a(又は第2統合ECU201b)とECU205bとに対して中継ECU203bの異常を通知する。
【0094】
中継ECU203aから中継ECU203bの異常を通知された第1統合ECU201aは、配信先テーブル12bにおいて中継ECU203bへ送信すべきと登録されている種類の情報について、以後は中継ECU203a送信する。中継ECU203aは、第1統合ECU201aからのメッセージを受信し、受信したメッセージに含まれる情報を、ECU205a,205bへ送信する。この際に中継ECU203aは、受信したメッセージに含まれる情報のうち、ECU205aが必要とする情報と、ECU205bが必要とする情報とに区別して送信することが好ましい。このために中継ECU203aは、例えばECU205bが必要とする情報の種類がいずれであるかを予め記憶しておいてもよく、例えばECU205bから必要とする情報の種類に関する情報を取得してもよい。ただし中継ECU203aは、第1統合ECU201aから受信したメッセージに含まれる情報を区別することなくECU205a,205bの両方へ送信してもよい。
【0095】
中継ECU203aに異常等が発生し、中継ECU203bが第1統合ECU201aからECU205aへの情報の送信を行う場合も同様であるため、説明は省略する。
【0096】
図12は、実施の形態2に係る第2統合ECU201bが行う処理の手順を示すフローチャートである。第2統合ECU201bは、例えば第1統合ECU201aからの情報送信が所定期間を超えて行われていない事を判定することによって、第1統合ECU201aの異常の有無を判定する(ステップS81)。第1統合ECU201aに異常が生じていない場合(S81:NO)、第2統合ECU201bは、第1統合ECU201aから送信される時系列の情報を受信したか否かを判定する(ステップS82)。時系列の情報を受信していない場合(S82:NO)、第2統合ECU201bは、ステップS81へ処理を戻す。時系列の情報を受信した場合(S82:YES)、第2統合ECU201bは、自身のストリームDB12cに受信した情報を記憶して(ステップS83)、ステップS81へ処理を戻す。
【0097】
第1統合ECU201aに異常があると判定した場合(S81:YES)、第2統合ECU201bは、自身に接続された一又は複数の中継ECU203a,203bへ、第1統合ECU201aに異常が生じた旨を通知する(ステップS84)。その後、第2統合ECU201bは、中継ECU203a,203bとの間でSOME/IPの通信プロトコルに従う通信を開始し(ステップS85)、処理を終了する。
【0098】
図13は、実施の形態2に係る中継ECU203aが行う処理の手順を示すフローチャートである。実施の形態2に係る中継ECU203aは、中継ECU203b及びECU205bが通信を行うCANバスの監視を継続的に行い、例えば中継ECU203bによる情報送信が所定期間を超えて行われていない事を判定することによって、中継ECU203bの異常の有無を判定する(ステップS101)。中継ECU203bに異常が生じていない場合(S101:NO)、中継ECU203aは、中継ECU203bに異常が生じるまで監視を継続的に行う。
【0099】
中継ECU203bに異常が生じた場合(S101:YES)、中継ECU203aは、時系列の情報の配信を行っている第1統合ECU201a(又は第2統合ECU201b)へ、中継ECU203bの異常を通知する(ステップS102)。その後、中継ECU203aは、第1統合ECU201aとECU205bとの間の情報の送受信の中継を開始し(ステップS103)、処理を終了する。
【0100】
以上の構成の実施の形態2に係る車載通信システムでは、第1統合ECU201a及び第2統合ECU201bの2つの統合ECUが車両100に設けられる。第1統合ECU201a及び第2統合ECU201bは、共に中継ECU203a,203bが個別の通信線を介して接続される。第1統合ECU201aは、自身のストリームDB12cに記憶した時系列の情報を第2統合ECU201bへ送信する。第1統合ECU201aからの情報を受信した第2統合ECU201bは、受信した情報を自身のストリームDB12cに記憶することができる。これにより、何らかの要因で第1統合ECU201aが情報を配信することができなくなった場合に、第2統合ECU201bが第1統合ECU201aの代わりに時系列の情報を中継ECU203a,203bへ配信することができる。
【0101】
実施の形態2に係る車載通信システムでは、中継ECU203a,203bが第1統合ECU201a及び第2統合ECU201bに接続され、両統合ECUとの通信が可能である。中継ECU203a,203bは、通常は第1統合ECU201aとの間で情報の送受信を行い、第1統合ECU201aの異常が検出された場合に、第2統合ECU201bとの間で情報の送受信を行う。これにより中継ECU203a,203bは、第1統合ECU201aに何らかの異常が生じた場合であっても、第2統合ECU201bを利用して処理を継続して行うことができる。
【0102】
実施の形態2に係る車載通信システムでは、中継ECU203aが、中継ECU203bに接続された一又は複数のECU205bとも通信線を介して接続され、中継ECU203bが通信の中継を行っているECU205bとも通信が可能である。中継ECU203aは、中継ECU203bの異常が検出された場合に、この中継ECU203bに接続された一又は複数のECU205bとの間で情報の送受信を行う。これにより、中継ECU203bに何らかの異常が生じた場合であっても、中継ECU203aが中継ECU203bに代わってECU205bとの通信を行うことができる。
【0103】
なお、実施の形態2に係る車載通信システムのその他の構成は、実施の形態1に係る車載通信システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0104】
車載通信装置及び車載中継装置等は、マイクロプロセッサ、ROM及びRAM等を含んで構成されるコンピュータを備える。マイクロプロセッサ等の演算処理部は、
図2~
図5に示すような、シーケンス図又はフローチャートの各ステップの一部又は全部を含むコンピュータプログラムを、ROM、RAM等の記憶部からそれぞれ読み出して実行してよい。これら複数の装置のコンピュータプログラムは、それぞれ、外部のサーバ装置等からインストールすることができる。これらのコンピュータプログラムは、それぞれ、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通する。
【0105】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0106】
1 統合ECU(車載通信装置)
3 中継ECU(車載装置、車載中継装置)
5 ECU(車載制御装置)
11 処理部
11a 登録処理部
11b DB処理部
11c 配信処理部
12 記憶部
12a プログラム
12b 配信先テーブル
12c ストリームDB
13 通信部
31 処理部
31a 登録処理部
31b 中継処理部
32 記憶部
32a プログラム
33 第1通信部
34 第2通信部
98,99 記録媒体
201a 第1統合ECU
201b 第2統合ECU
203a,203b 中継ECU
205a,205b ECU