(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186224
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/40 20060101AFI20221208BHJP
H04R 1/32 20060101ALI20221208BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H04R1/40 310
H04R1/32 310Z
H04R1/02 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094344
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】尾島 由浩
【テーマコード(参考)】
5D017
5D018
【Fターム(参考)】
5D017AE24
5D018AF12
5D018AF24
(57)【要約】
【課題】上下方向に音の拡散効果が得られやすい表示装置を提供すること。
【解決手段】スピーカシステムおよび表示パネルを備える表示装置であって、前記スピーカシステムは、前記表示装置の上部に設けられ、各音声出力面が前記表示装置の左右方向で対向している第1のスピーカおよび第2のスピーカを有する表示装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカシステムおよび表示パネルを備える表示装置であって、
前記スピーカシステムは、前記表示装置の上部に設けられ、各音声出力面が前記表示装置の左右方向で対向している第1のスピーカおよび第2のスピーカを有する表示装置。
【請求項2】
前記表示装置を正面から見た場合に、前記スピーカシステムの一部が前記表示パネルの上方に突出している請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示装置を正面から見た場合に、前記スピーカシステムが見えないことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記スピーカシステムは、前記第1のスピーカと前記第2スピーカとの間に設けられ、前記第1スピーカおよび前記第2のスピーカが発する音を反射するディフューザをさらに有する請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記表示装置は、テレビジョン装置である請求項1から4のいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカシステム全体の振動を抑制しつつ、音声出力面の法線方向を基準とした偏角に関する指向性を低減させるスピーカシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のテレビジョン受像機(テレビ)において、スピーカシステムは、テレビの左右に配置され、各スピーカシステムの2つのスピーカは、音声出力面が上下方向で対向するように設けられている。それにより、特許文献1に記載のテレビでは、テレビの左右方向(音声出力面の法線方向と直角に交わる面方向)には音が広がりやすいが上下方向には音の拡散効果が得られにくい。
【0005】
本発明の一態様は、上下方向に音の拡散効果が得られやすい表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る表示装置は、スピーカシステムおよび表示パネルを備える表示装置であって、前記スピーカシステムは、前記表示装置の上部に設けられ、各音声出力面が前記表示装置の左右方向で対向している第1スピーカおよび第2スピーカを有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態に係る表示装置の正面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る表示装置の側面図である。
【
図3】第2の実施の形態に係る表示装置の正面図である。
【
図4】第2の実施の形態に係る表示装置の側面図である。
【
図5】第3の実施の形態に係る表示装置の正面図である。
【
図6】第3の実施の形態に係る表示装置の側面図である。
【
図7】比較例の表示装置による音の拡散を示す図である。
【
図8】第1の実施の形態に係る表示装置による音の拡散を示す図である。
【
図9】第2の実施の形態に係る表示装置による音の拡散を示す図である。
【
図10】第3の実施の形態に係る表示装置による音の拡散を示す図である。
【
図11A】比較例の表示装置による音の伝搬を示す図である(その1)。
【
図11B】比較例の表示装置による音の伝搬を示す図である(その2)。
【
図12A】第1の実施の形態に係る表示装置による音の伝搬を示す図である(その1)。
【
図12B】第1の実施の形態に係る表示装置による音の伝搬を示す図である(その2)。
【
図13】第1の実施の形態に係る表示装置の変形例の正面図である。
【
図16A】スピーカシステム7Cの変形例(その1)の平面図である。
【
図16B】スピーカシステム7Cの変形例(その2)の平面図である。
【
図16C】スピーカシステム7Cの変形例(その3)の平面図である。
【
図17A】スピーカシステム7Cの変形例(その4)の側面図である。
【
図17B】スピーカシステム7Cの変形例(その4)の正面図である。
【
図17C】スピーカシステム7Cの変形例(その4)の平面図である。
【
図17D】スピーカシステム7Cの変形例(その4)の背面図である、
【
図20】スピーカシステム7Cの変形例(その4)が備えるディフューザ31を表す六面図である。
【
図22A】ディフューザ31のA-A’線断面図である。
【
図22B】ディフューザ31のA-A’線切断部断面図である。
【
図22C】ディフューザ31のB-B’線断面図である。
【
図22D】ディフューザ31のB-B’線切断部断面図である。
【
図22E】ディフューザ31のC-C’線断面図である。
【
図22F】ディフューザ31のC-C’線切断部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
図1は、第1の実施の形態に係る表示装置の正面図である。
図2は、第1の実施の形態に係る表示装置の側面図である。
【0010】
表示装置101は、パネルモジュール(表示パネル)3、スピーカシステム7C,7L,7R、背面筐体6を有する。表示装置101は、例えば、テレビジョン装置である。
【0011】
パネルモジュール3は、例えば、液晶層やガラス基板などを有した矩形状のLCD(Liquid Crystal Display)パネルや、その図示は省略するが、例えば、保護ガラス、偏光板、拡散板、バックライト、および表示装置101を駆動させる回路基板等を有している。パネルモジュール3が有するLCDパネルは一例であり、例えば、有機EL(Electro Luminescence)パネルでもよい。
【0012】
スピーカシステム7Cは、表示装置101の上部に設置され、詳細には、表示装置101の正面から見てパネルモジュール3の上方に設置されている。また、スピーカシステム7Lは、表示装置101の正面から見てパネルモジュール3の左側に設置され、スピーカシステム7Rは、パネルモジュール3の右側に設置されている。各スピーカシステム7L,7Rは、表示装置1の正面側でパネルモジュール3と例えば略面一になるように形成され、表示装置1の背面側で背面筐体6と例えば面一になるように形成されている。各スピーカシステム7C,7L,7Rからは、可聴帯域内(例えば20Hz~20kHz程度)の音声を出力できる。
【0013】
スピーカシステム7C,7L,7Rは、2つのスピーカ(第1スピーカ10、第2スピーカ20)とディフューザ31をそれぞれ有している。
【0014】
第1スピーカ10と第2スピーカ20は、互いの音声出力面が対向して配置されており、同じアンプ(不図示)に接続され、同じ音声を出力する。詳細には、スピーカシステム7Cの第1スピーカ10と第2スピーカ20は、互いの音声出力面が表示装置101の左右方向で対向するように配置されている。スピーカシステム7L、7Rの第1スピーカ10と第2スピーカ20は、互いの音声出力面が表示装置101の上下方向で対向するように配置されている。
【0015】
ディフューザ31は、第1スピーカ10と第2スピーカ20の間に設けられ、第1スピーカ10および第2スピーカ20が発した音を反射する。
【0016】
尚、スピーカシステム7Cは、上述した構成に限定されるものではなく変形可能であり、例えば、ディフューザ31を有していなくてもよい。
【0017】
音声出力面が対向するように設けられた2つのスピーカを有するスピーカシステム7Cは、音声出力面の法線方向と直角に交わる面方向に音波が広がりやすい特性がある。そのため、表示装置101の上部にスピーカシステム7Cを設置した場合、スピーカシステム7Cのスピーカ10,20は、音声出力面が表示装置101の左右方向で対向しているので、表示装置101の前後方向および上下方向に音を拡散できる。また、スピーカシステム7L,7Rのスピーカ10,20は、音声出力面が表示装置102の上下方向で対向しているので、表示装置101の前後方向および左右方向に音を拡散できる。
【0018】
図3は、第2の実施の形態に係る表示装置の正面図である。
図4は、第2の実施の形態に係る表示装置の側面図である。
【0019】
表示装置102は、パネルモジュール(表示パネル)3、スピーカシステム7C,7L,7R、背面筐体6を有する。スピーカシステム7C,7L,7Rは、2つのスピーカ(第1スピーカ10、第2スピーカ20)とディフューザ31をそれぞれ有している。
【0020】
第2の実施の形態の表示装置102において、スピーカシステム7Cの位置が第1の実施の形態の表示装置101のスピーカシステム7Cの位置と異なり、第2の実施の形態のスピーカシステム7L、7Rの位置は、第1の実施の形態のスピーカシステム7L、7Rの位置と同様である。
【0021】
表示装置102のスピーカシステム7Cは、表示装置102の上部に設置され、詳細には、表示装置102の正面から見た場合にパネルモジュール3の上方にスピーカシステム7Cの一部(例えば、スピーカシステム7Cの上半分)が突出するように設置されている。すなわち、表示装置102を正面から見た場合に、スピーカシステム7Cの一部しか見えないようになっている。これにより、表示装置102の正面視のデザイン性を確保している。
【0022】
音声出力面が対向するように設けられた2つのスピーカを有するスピーカシステム7Cは、音声出力面の法線方向と直角に交わる面方向に音波が広がりやすく、スピーカシステム7Cが完全に見えていなくても音波が広がってくる特性がある。そのため、表示装置102の上部にスピーカシステム7Cを設置した場合、表示装置102の正面から見た場合にスピーカシステム7Cの一部がパネルモジュール3に被っていたとしても、表示装置102の前後方向および上下方向に音を拡散できる。
【0023】
第2の実施の形態の表示装置によれば、表示装置の正面視のデザイン性を確保しながら、前後方向および上下方向にも音を広げることができる。
【0024】
図5は、第3の実施の形態に係る表示装置の正面図である。
図6は、第3の実施の形態に係る表示装置の側面図である。
【0025】
表示装置103は、パネルモジュール(表示パネル)3、スピーカシステム7C,7L,7R、背面筐体6を有する。スピーカシステム7C,7L,7Rは、2つのスピーカ(第1スピーカ10、第2スピーカ20)とディフューザ31をそれぞれ有している。
【0026】
第3の実施の形態の表示装置103において、スピーカシステム7Cの位置が第1の実施の形態の表示装置101のスピーカシステム7Cの位置と異なり、第3の実施の形態のスピーカシステム7L、7Rの位置は、第1の実施の形態のスピーカシステム7L、7Rの位置と同様である。
【0027】
表示装置103のスピーカシステム7Cは、表示装置103の上部に設置され、詳細には、表示装置103の正面から見た場合にスピーカシステム7Cが見えないように設置されている。すなわち、表示装置102を正面から見た場合に、スピーカシステム7Cは表示装置103の背面側にあり、パネルモジュール3で遮られているため、スピーカシステム7Cは見えないようになっている。これにより、表示装置102に比べて、表示装置103の正面視のデザイン性をさらに確保している。尚、
図5では、スピーカシステム7Cの位置が分かり易いようにスピーカシステム7Cは点線で示しているが、表示装置103の正面から見た場合にスピーカシステム7Cは実際には見えない。
【0028】
音声出力面が対向するように設けられた2つのスピーカを有するスピーカシステム7Cは、音声出力面の法線方向と直角に交わる面方向に音波が広がりやすい特性がある。そのため、表示装置103の上部にスピーカシステム7Cを設置した場合、表示装置103の正面から見た場合にスピーカシステム7Cがパネルモジュール3に被っていたとしても、表示装置103の前後方向および上下方向に音を拡散できる。尚、第3の実施の形態のようにスピーカシステム7Cの前方にパネルモジュール3がある場合でも、スピーカシステム7Cから発生した音は、パネルモジュール3の上部から回り込んで表示装置103の前方に拡散される。
【0029】
第3の実施の形態の表示装置によれば、表示装置の正面視のデザイン性を確保しながら、前後方向および上下方向にも音を広げることができる。
【0030】
次に、第1~第3の実施の形態の表示装置101,102,103それぞれの上方への音の拡散について、比較例の表示装置の上方への音の拡散と比較して説明する。
【0031】
図7は、比較例の表示装置による音の拡散を示す図である。
図8は、第1の実施の形態に係る表示装置による音の拡散を示す図である。
図9は、第2の実施の形態に係る表示装置による音の拡散を示す図である。
図10は、第3の実施の形態に係る表示装置による音の拡散を示す図である。
【0032】
図7は、比較例の表示装置501およびユーザ521を側面方向から見た図である。
図8~10も同様に、表示装置101~103およびユーザ521を側面方向から見た図である。
図7~10において、表示装置501、101~103およびユーザ521は、天井のある部屋の中にあり、ユーザ521は、表示装置101~103,501の前方に所定の距離離れて位置している。
【0033】
比較例の表示装置501は、表示装置501の上部にスピーカシステム511を有する。スピーカシステム511は、ユーザ521が表示装置501を正面から見た場合に見えないように設置されている。また、スピーカシステム511が有するスピーカの音出力面は、表示装置501の上方、すなわち天井を向いている。
【0034】
スピーカシステム511が上方に向けて発した音は、天井で反射し、ユーザ521がいる下方に伝搬する。
【0035】
図7に示す比較例において、スピーカシステム511が有するスピーカは、音声出力面が同一の方向、具体的は、上方を向くように配置されている。スピーカの音声出力面が同一の方向を向いているスピーカシステム511は、音声出力面が対向するように設けられた2つのスピーカを有するスピーカシステム7Cに比べて、音の拡散、反射エリアが狭くなり、スイートスポット(良好な音質が得られるエリア)は狭くなる。
図7において、ユーザ521がいる位置では、天井で反射した音を十分に得られず、良好な音質が得られにくい。
【0036】
一方、
図8~10に示す表示装置101~103のスピーカシステム7Cは音声出力面が対向するように設けられた2つのスピーカ10,20を有し、音声出力面の法線方向と直角に交わる面方向に音波が広がりやすい特性がある。そのため、表示装置101~103の上方に広範囲に音を拡散でき、天井からの反射音も広範囲で得られるため、スイートスポット(良好な音質が得られるエリア)が広くなる。
【0037】
図8~10において、ユーザ521がいる位置では、天井で反射した音を十分に得られ、良好な音質が得られる。また、
図8~10において、スイートスポット(良好な音質が得られるエリア)が広いため、ユーザ521が前後に多少動いたとしても、良好な音質が得られる。
【0038】
尚、比較例のスピーカシステム511が有するスピーカの音出力面が表示装置501の真上でなく斜め上を向いていても、反射音が得られるエリアが移動するだけであり、スイートスポット(良好な音質が得られるエリア)は広くならない。
【0039】
図11Aは、比較例の表示装置による音の伝搬を示す図である(その1)。
図12Aは、第1の実施の形態に係る表示装置による音の伝搬を示す図である(その1)。
【0040】
図11Aの比較例の表示装置501は、
図7で説明したスピーカシステム(ハイトスピーカ)511、および表示装置501の下部に設けられたスピーカシステム(フロントスピーカ)512を有する。
【0041】
上述のように、スピーカシステム511が有するスピーカの音出力面は、表示装置501の上方、すなわち天井を向いている。また、スピーカシステム512が有するスピーカの音出力面は、表示装置501の前方、すなわちユーザ521がいる方向を向いている。
【0042】
図11Aに示す比較例において、スピーカシステム511の音がユーザ521に届くまでの経路(実線の矢印)がスピーカシステム512の音がユーザ521に届くまでの経路(点線の矢印)より長くなる。これにより、ユーザ521は、スピーカシステム512の音に対するスピーカシステム511の音のディレイを感じてしまい、音質劣化の要因の一つとなる。
【0043】
また、表示装置501を設置する条件により、表示装置501と天井までの距離が変化するため、設置するごとにディレイの測定および調整が必要となる。
【0044】
一方、
図12Aに示す第1の実施の形態に係る表示装置101において、スピーカシステム7Cは、表示装置101の上部に設置され、スピーカシステム7Cからの音が直接ユーザ521に到達する。また、スピーカシステム7Cとユーザ521の距離(実線の矢印)と、スピーカシステム7R(または7L)とユーザ521の距離(点線の矢印)と、の差が一定になり、表示装置101の設置状態に依存しなくなる。これにより、表示装置101から聞こえる音は、残響感(ディレイ感)が少なく、音質が良好となる。
【0045】
図11Aおよび
図12Aでは、音が天井で反射してユーザに届く場合を説明したが、次に、天井が高く、反射した音がユーザに届かない場合について説明する。
【0046】
図11Bは、比較例の表示装置による音の伝搬を示す図である(その2)。
図12Bは、第1の実施の形態に係る表示装置による音の伝搬を示す図である(その2)。
図11Bおよび
図12Bは、天井が高い場合の音の伝搬を示し、表示装置501、101については、
図11Aおよび
図12Aで説明したものと同様である。
【0047】
図11Bに示す比較例において、スピーカシステム511が上方に向けて発した音は、天井で反射し、ユーザ521がいる下方に伝搬するが、天井が高いため、反射した音は途中で減衰(消滅)し、ユーザ521には届かない。また、天井が無い場合も、スピーカシステム511が上方に向けて発した音は、反射せず、ユーザ521には届かない。
【0048】
図12Bに示す第1の実施の形態に係る表示装置101において、上述のようにスピーカシステム7Cは、表示装置101の前後方向および上下方向に音を拡散できる。
図12Bに示すように、表示装置101の上方に拡散した音は、天井で反射し、ユーザ521がいる下方に伝搬するが、天井が高いため、
図11Aの比較例と同様に、反射した音は途中で減衰(消滅)し、ユーザ521には届かない。しかしながら、スピーカシステム7Cは、表示装置101の前方にも音を拡散できるため、ユーザ521にスピーカシステム7Cの音が直接届く。このように、第1の実施の形態に係る表示装置101によれば、天井からの反射音が無い場合でも、スピーカシステム7Cの音をユーザ521に届けることが可能である。
【0049】
図13は、第1の実施の形態に係る表示装置の変形例の正面図である。
【0050】
図1の表示装置101において、スピーカシステム7Cは、表示装置101の上部の中央に1つ設置されていたが、
図13に示す表示装置101Aのように、2つのスピーカシステム7CL,7CRを表示装置101Aの上部の左右に設置してもよい。スピーカシステム7CLは、表示装置101の正面から見て表示装置101の上部の左寄りに設置され、詳細には、表示装置101の正面から見てパネルモジュール3の上方の左端に近い位置に設置されている。また、スピーカシステム7CRは、表示装置101の正面から見て表示装置101の上部の右寄りに設置され、詳細には、表示装置101の正面から見てパネルモジュール3の上方の右端に近い位置に設置されている。スピーカシステム7CL,7CRの構造は、スピーカシステム7Cと同様である。すなわち、スピーカシステム7CL,7CRは、2つのスピーカ(第1スピーカ10、第2スピーカ20)とディフューザ31をそれぞれ有している。
【0051】
また、スピーカシステム7CL,7CRは、第2の実施の形態のスピーカシステム7Cのように、表示装置101Aの正面から見た場合にパネルモジュール3の上方にスピーカシステム7CL,7CRの一部が突出するように設置されていてもよい。すなわち、表示装置101Aを正面から見た場合に、スピーカシステム7CL,7CRの一部しか見えないようになっていてもよい。
【0052】
また、スピーカシステム7CL,7CRは、第3の実施の形態のスピーカシステム7Cのように、表示装置101Aの正面から見た場合にスピーカシステム7CL,7CRが見えないように設置されていてもよい。すなわち、表示装置101Aを正面から見た場合に、スピーカシステム7CL,7CRは表示装置101Aの背面側にあり、パネルモジュール3で遮られているため、スピーカシステム7CL,7CRは見えないようになっていてもよい。
【0053】
次に、第1の実施の形態のスピーカシステム7Cの詳細について説明する。尚、第2および第3の実施の形態のスピーカシステム7Cの構成は、第1の実施の形態のスピーカシステム7Cの構成と同様である。また、スピーカシステム7L、7Rは、表示装置101における位置および向きがスピーカシステム7Cと異なるが構造は同じであるため、スピーカシステム7R,7Lの説明は省略する。また、実施の形態のスピーカシステム7L、7Rの構成は一例であり、スピーカシステム7Cと構造が同じである必要はなく、適宜変更可能である。
【0054】
図14Aは、表示装置101の正面から見たスピーカシステム7Cの正面図であり、第1,2スピーカ10,20から、
図14Aで説明する第1,2エンクロージャ11,21の正面側に位置して第1スピーカユニット12、共鳴管13や、第2スピーカユニット22、共鳴管23をそれぞれ覆うカバーを外した状態を示している。
図14Bは
図14Aの拡大図である。
【0055】
第1スピーカ10は、略円筒状に形成されて左右方向に延びた第1エンクロージャ11を有する。
図14Aに示すように、第1エンクロージャ11には、第1スピーカユニット12、共鳴管13が収容される。第1スピーカユニット12は、例えば中低音出力用のスピーカ(ミッドバススピーカ)であり、第1エンクロージャ11の右端に設置されている。
【0056】
第1スピーカユニット12は、ボイスコイル(不図示)などを配した磁気回路部12bを有し、磁気回路部12bの右側には振動板が設けられて、右方向を向いた音声出力面12aが形成されている。
【0057】
一方、第2スピーカ20は、略円筒状に形成されて左右方向に延びた第2エンクロージャ21を有する。第2エンクロージャ21には、第2スピーカユニット22、共鳴管23が収容される。第2スピーカユニット22は、例えばミッドバススピーカであり、第2エンクロージャ21の左端に設置されている。
【0058】
第2スピーカユニット22は、ボイスコイル(不図示)などを配した磁気回路部22bを有し、磁気回路部22bの左側には振動板が設けられて、左方向を向いた音声出力面22aが形成されている。
【0059】
このように、第1スピーカユニット12の音声出力面12aと、第2スピーカユニット22の音声出力面22aは、表示装置101の左右方向で対向している。
【0060】
なお、第1,2スピーカユニット12,22は、ミッドバススピーカの例を挙げたが、他の種類のスピーカ、例えばツイータとスコーカ、ミッドハイスピーカ等であってもよい。
【0061】
第1エンクロージャ11と第2エンクロージャ21との間には、連結部材30が設けられている。具体的には、連結部材30は、例えば表示装置101の正面側を開放した断面半円筒状に形成されており、表示装置101の背面側で、第1エンクロージャ11の右端と第2エンクロージャ21の左端を連結している。
【0062】
図14Bに示すように、連結部材30には、ディフューザ(音響拡散器ともいう)31が設けられている。ディフューザ31は、第1,2スピーカユニット12,22からの音声を表示装置101の(同心円状に)全方位に向けて反射する機能を有しており、例えば、第1スピーカユニット12の音声出力面12aと第2スピーカユニット22の音声出力面22aとの中間位置に設置されている。
【0063】
図15は、
図14BのIV-IV線矢視断面図である。ディフューザ31は、球状部31a,31a’、円柱状部31b、平面部もしくは充填物(吸音綿など)を有する空洞部31cから構成されている。
【0064】
反射面に凹形状が存在すると、音の焦点が発生する。その焦点のポイント(いわゆるスイートスポット)で音を聴くと、ベストな音声品位が得られるが、その位置を少しでも外れた場合には、音声品位が低下する。本実施形態は、どの位置で聴いても音声品位の差(ばらつき)が少なくなることを目指し、できるだけ焦点の発生しにくい形状を検討した結果、完全な凸形状(=球型)が最も有効であるとしたものである。
【0065】
球状部31a,31a’は、少なくとも表示装置101の正面側に対峙した前方位置に形成される。球状部31aは、左方向に向けて凸状の曲面を有し、第1スピーカユニット12の音声出力面12a内に収まる大きさで形成されて、音声出力面12aに対向配置されている。球状部31a’は、右方向に向けて凸状の曲面を有しており、第2スピーカユニット22の音声出力面22a内に収まる大きさで形成されて、音声出力面22aに対向配置されている。球状部31aは第1半球体の一例であり、球状部31a’は第2半球体の一例である。
【0066】
円柱状部31bは、球状部31aと球状部31a’との間に位置し、球状部31a,31a’と一体形成されている。なお、円柱状部31bは、球状部31a,31a’と別体に形成してもよい。円柱状部31bは円柱体の一例である。
【0067】
平面部もしくは充填物(吸音綿など)を有する空洞部31cは、表示装置101の背面側に対峙した後方位置に形成され、中央位置には軸部32が設けられる。ディフューザ31は、軸部32を介して連結部材30に固定される。
【0068】
これにより、表示装置101の背面側も球形状に形成した場合に比べて、軸部32をディフューザ31に設置しやすい。また、軸部32を長く形成できるため、連結部材30への設置も容易になる。
【0069】
図15では、球状部31a,31a’、円柱状部31b、平面部もしくは充填物(吸音綿など)を有する空洞部31cから構成されたディフューザ31の例を説明した。しかし、ディフューザ31は、この例に限定されるものではなく、少なくとも表示装置101の正面側に対峙した前方位置に、球形状を有していればよい。
【0070】
図16Aは、スピーカシステム7Cの変形例(その1)の平面図である。
【0071】
図16Aに示すように、ディフューザ31は、ほぼ完全な球体で形成され、第1,2スピーカユニット12,22の中間位置に、軸部(図示省略)を介して連結部材30に固定してもよい。この場合にも、第1,2スピーカユニット12,22からの音声は、従来に比べて上下方向および左右方向に均等に広がる。
【0072】
図16Bは、スピーカシステム7Cの変形例(その2)の平面図である。
【0073】
図16Bに示すように、ディフューザ31は、表示装置101の正面側に対峙した前方位置が球体で形成され、表示装置101の背面側に対峙した後方位置が平面状もしくは空洞状などに形成されていてもよい。この場合にも、ディフューザ31は、第1スピーカユニット12と第2スピーカユニット22の中間位置に、軸部32を介して連結部材30に固定されており、第1,2スピーカユニット12,22からの音声は、従来に比べて上下方向および左右方向に均等に広がる。スピーカシステム7Cの変形例(その2)によれば、表示装置101の背面側も球形状に形成した場合に比べて、軸部32をディフューザ31に設置しやすい。軸部32を長くできるため、連結部材30への設置も容易になる。
【0074】
図16Cは、スピーカシステム7Cの変形例(その3)の平面図である。
【0075】
ディフューザ31は、
図15で説明した平面部もしくは充填物(吸音綿など)を有する空洞部31cを省略し、
図16Cに示すように、表示装置101の正面側および背面側の双方が同様に形成され、第1スピーカユニット12に対向配置された球状部31aと、第2スピーカユニット22に対向配置された球状部31a’と、球状部31aと球状部31a’との間に配置された円柱状部31bとで形成してもよい。この場合にも、第1,2スピーカユニット12,22からの音声は、従来に比べて上下方向および左右方向に均等に広がる。
【0076】
図17Aは、スピーカシステム7Cの変形例(その4)の側面図である。
図17Bは、スピーカシステム7Cの変形例(その4)の正面図である。
図17Cは、スピーカシステム7Cの変形例(その4)の平面図である。
図17Dは、スピーカシステム7Cの変形例(その4)の背面図である。
【0077】
図18A~18C及び
図19A~19Cは、スピーカシステム7Cの斜視図である。なお、
図18AにおけるOは、
図17Bに示されているXYZ空間座標系(互いに直交する第X軸、第Y軸及び第Z軸が規定された空間座標系)における原点の位置を示している。
【0078】
図17A~17C,18A~18C,19A~19Cからわかるように、スピーカシステム7Cは、互いの音声出力面(第1スピーカ10の音声出力面12aおよび第2スピーカ20の音声出力面22a)が対向している2つのスピーカ(第1スピーカ10、及び、第2スピーカ20)を備えている。
【0079】
2つのスピーカ10,20は、同じアンプ(不図示)に接続され、同じ音を発するスピーカユニットである。なお、本実施形態では2つのスピーカ120は中低音出力用のスピーカ(ミッドバススピーカ)であるが、2つのスピーカ120は、他の種類のスピーカ(例えば、ツイータやスコーカ、ミッドハイスピーカ等)であってもよい。
【0080】
スピーカシステム7Cは、第1スピーカ10が発した音および第2スピーカ20が発した音を特定の半空間内方向に反射するディフューザ31を備えている。ここで、特定の半空間とは、具体的には、上記XYZ空間座標系におけるY座標値が正であるような無数の座標からなる半空間のことを指している。
【0081】
図17Bからわかるように、上記XYZ空間座標系で表わされる空間内(空間内部の位置が上記XYZ空間座標系の座標値で表わされる空間内)において、第1スピーカ10、第2スピーカ20、および、ディフューザ31が、Z軸(第1軸)に沿って、第1スピーカ10、ディフューザ31、第2スピーカ20の順に並置されている。
【0082】
また、スピーカシステム7Cは、2つのエンクロージャ(第1スピーカ10が入っている第1エンクロージャ11、及び、第2スピーカ20が入っている第2エンクロージャ部21)を備えている。
図17B、17D)、及び
図18Aからわかるように、スピーカシステム7Cは、第1エンクロージャ11と第2エンクロージャ21の間に、第1エンクロージャ部11と第2エンクロージャ部21とを連結する壁状(コの字状)の連結部材140を備えている。
【0083】
ディフューザ31は、この連結部材140に取り付けられている。
【0084】
なお、コの字状の連結部材140におけるコの字の内側には、吸音材が取り付けられていてもよいし、連結部材140の全部または一部が吸音材料でできていてもよい。
【0085】
以下、ディフューザ31の構造について更に
図20を参照しながら詳細に説明する。
【0086】
図20は、スピーカシステム7Cの変形例(その4)が備えるディフューザ31を表す六面図である。
【0087】
図20(a)は、ディフューザ31の左側面図を示す。
図20(b)は、ディフューザ31の正面図を示す。
図20(c)は、ディフューザ31の平面図を示す。
図20(d)は、ディフューザ31の背面図を示す。
図20(e)は、ディフューザ31の底面図を示す。
図20(f)は、ディフューザ31の右側面図を示す。
【0088】
図21は、ディフューザ31の斜視図である。また、
図22A~22Fは、ディフューザ31の各種断面図である。
【0089】
具体的には、
図22Aは、A-A’線断面図である。
図22Bは、A-A’線切断部断面図である。
図22Cは、B-B’線断面図である。
図22Dは、B-B’線切断部断面図である。
図22Eは、C-C’線断面図である。
図22Fは、C-C’線切断部断面図である。
【0090】
図17A~17D、
図20、及び
図21からわかるように、ディフューザ31は、XY平面(第1軸に垂直な平面)を対称面とする面対称(略面対称)な形状を呈している。
図17A~17D及び
図19A~19Cからわかるように、上記対称面は、第1スピーカ10の音声出力面12aからの距離と第2スピーカ20の音声出力面22bからの距離とが略等しい面である。なお、上記対称面は、両方の距離が完全に等しい面であってもよい。また、ディフューザ31は、XY平面(第1軸に垂直な平面)を対称面とする完全に面対称な形状を呈していてもよい。
【0091】
また、
図20,21、22A~22Fを見るとわかるように、ディフューザ31は、スピーカ112を備えている。具体的には、
図17A~17Dからわかるように、ディフューザ110は、上記対称面を跨ぐ位置にスピーカ112を備えている。より具体的には、ディフューザ31は、上記対称面内に音声出力面の中心が位置するスピーカ112を備えている。
【0092】
スピーカ112の音声出力面は、上記特定の半空間内における、XY平面と平行な方向を向いている。
【0093】
なお、スピーカシステム7Cの変形例(その4)のディフューザ31のスピーカ112は、前述のアンプとは別のアンプに接続される高音出力用のスピーカ(ツイータ)であるが、スピーカ112は、他の種類のスピーカ(例えば、ミッドバススピーカやスコーカ、ミッドハイスピーカ等)であってもよい。
【0094】
また、
図20(b)に示すように、ディフューザ31は2つの反射面111を備えている。
【0095】
上記2つの反射面111のうちの一方の反射面111は、第1スピーカ10が発した音を、上記特定の半空間を分割した2つの四分の一空間のうちの一方の四分の一空間内方向に反射する。ここで、一方の四分の一空間とは、上記XYZ空間座標系における、Y座標値及びZ座標値が正であるような無数の座標からなる空間のことを指している。
【0096】
上記2つの反射面111のうちの他方の反射面111は、第2スピーカ20が発した音を上記2つの四分の一空間のうちの他方の四分の一空間内方向に反射する。ここで、他方の四分の一空間とは、上記XYZ空間座標系における、Y座標値が正であり、且つ、Z座標値が負であるような無数の座標からなる空間のことを指している。
【0097】
換言すれば、ディフューザ110の全ての反射面(2つの反射面111)上の全ての位置における法線ベクトルのY軸成分(第2軸成分)の値は、正負が同じ値になっている。具体的には、どの位置の法線ベクトルのY軸成分の値も、正の値になっている。
【0098】
スピーカシステム7Cの変形例(その4)のディフューザ31によれば、第1スピーカ10、第2スピーカ20のそれぞれからの音を表示装置101の左右方向へ反射し、音の広がりが増える。
【0099】
尚、ディフューザ31の構造は、上述の構造に限られない。例えば、第1スピーカ10及び第2スピーカ20が発した音を、特定の半空間内方向ではなく全周方向に反射するディフューザ31でもよい。
【0100】
音声出力面が対向するように設けられた2つのスピーカを有するスピーカシステム7Cは、音声出力面の法線方向と直角に交わる面方向に音波が広がりやすい特性がある。
【0101】
そのため、第1~3の実施の形態に係る表示装置によれば、スピーカシステム7Cは、音声出力面が表示装置の左右方向で対向するように設けられた2つのスピーカを有するので、表示装置の上方に音が拡散しやすくなり、音の拡散効果が得られやすくなる。
【0102】
さらに第1~第3の実施の形態に係る表示装置によれば、表示装置101の上部に備えるスピーカシステム7Cのディフューザ31により、左右水平方向への音の広がりが増えるため、表示装置の左右に設置されるスピーカシステム7L,7Rが無い場合でも、左右水平方向への音の広がりが得られる。
【0103】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく変形可能であり、上記の構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【0104】
第1~第3の実施の形態のスピーカシステム7L,7Rのそれぞれは、音声出力面が上下方向で対向する2つのスピーカの代わりに、音声出力面が表示装置101の前方を向いたスピーカ、音声出力面が表示装置101の真横方向を向いたスピーカ、または音声出力面が表示装置101の前方斜め内向き方向または前方斜め外向き方向のスピーカを有してもよい。また、スピーカシステム7L,7Rのスピーカは、フルレンジスピーカに限らず、ツイータであってもよい。
第1~第3の実施の形態の表示装置101は、スピーカシステム7L,7Rの代わりに若しくはさらに、パネルモジュール3の下部にスピーカシステムを有していてもよい。パネルモジュール3の下部のスピーカシステムは、音声出力面が表示装置101の前方を向いたスピーカと音声出力面が表示装置101の下方を向いたスピーカの少なくとも一方を有する。
第1~第3の実施の形態のスピーカシステム7Cは、表示装置101において、上記のような種々のスピーカシステムと組み合わせて使用することができる。
【符号の説明】
【0105】
101,101A,102,103 表示装置
7C,7L,7R スピーカシステム
10 第1スピーカ
20 第2スピーカ
31 ディフューザ