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  • 特開-構造部材の反転機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186229
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】構造部材の反転機
(51)【国際特許分類】
   B23K 37/047 20060101AFI20221208BHJP
   B23K 9/00 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
B23K37/047 501C
B23K9/00 501B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094349
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】521244787
【氏名又は名称】中越鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】米田 達則
【テーマコード(参考)】
4E081
【Fターム(参考)】
4E081YB02
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構造でありながら、構造部材の吊り上げ及び反転作業が容易で、任意の場所に移動も可能な反転機の提供を目的とする。
【解決手段】ベース部と、前記ベース部から立設した支柱と、前記支柱に沿って上昇及び下降する昇降部材とを備え、前記昇降部材は、構造部材を吊り上げた状態で反転できる反転ベルトを有していることを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、前記ベース部から立設した支柱と、前記支柱に沿って上昇及び下降する昇降部材とを備え、
前記昇降部材は、構造部材を吊り上げた状態で反転できる反転ベルトを有していることを特徴とする構造部材の反転機。
【請求項2】
前記支柱の上部側には、定滑車を有する支持フレームが連結固定され、
前記昇降部材は動滑車を有し、
前記昇降部材がワイヤーにより前記動滑車及び定滑車を介して昇降機にて上昇及び下降可能に吊り下げられていることを特徴とする構造部材の反転機。
【請求項3】
前記昇降部材は横フレームと縦フレームとが略T字型になっていて、
前記横フレームの先端部側に前記反転ベルトの上部側を装着したスプロケットを有し、
前記スプロケットは反転モーターにより回転制御され、
前記横フレームの後端側に第1ガイド部を有し、前記縦フレームの下端側に第2ガイド部を有し、前記昇降部材は前記第1ガイド部が前記支柱の後側面に沿い、前記第2ガイド部が前記支柱の前側面に沿った状態で上昇及び下降するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の構造部材の反転機。
【請求項4】
前記ベース部は走行モーターにより駆動制御された駆動輪と従動輪とを有し、移動制御されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の構造部材の反転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の構造部材を吊り上げ及び反転できる反転機に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物等の柱や梁等の構造部材や橋梁に用いられる各種桁等の構造部材にあっては、側面に補剛材,吊り金具,孔明け補強板,小梁との連結板等を溶接にて取り付ける溶接作業が必要となっている。
構造部材には、H型断面,I型断面,箱形断面,円形断面,異形断面等のいろいろな断面形状のものがあり、その断面の周囲に取り付ける部材の溶接は、作業者が下向きで溶接できるように、反転させる作業が必要となる。
【0003】
従来から構造部材の反転作業は、建屋の天井に沿って走行する天井クレーンにて吊り上げて反転させる方法、大型リングからなる反転機の内側に構造部材の端部を挿入支持し、リングを駆動ローラにて回動し反転させる方法、あるいは構造部材を天井クレーンで吊り上げ、この構造部材の端部を反転機とボルト連結する方法が採用されていた。
しかし、天井クレーンで吊り上げて反転作業を行う場合や、反転機にボルト連結する場合は、天井クレーンの占有時間が長くなり、その間他の作業者に天井クレーンの待ち時間が多く発生することが問題になる。
また、大型リング装置を用いる場合には、必要な場所にすぐには移動できない問題がある。
【0004】
特許文献1には、構造部材の両端を回転アームに設けた上下左右の爪で締め付けて上昇させ、反転作業を行う装置を開示する。
しかし、上下左右に設けた爪での締め付け作業に時間がかかるとともに、構造部材の断面形状に合せるのが大変である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-164188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コンパクトな構造でありながら、構造部材の吊り上げ及び反転作業が容易で、任意の場所に移動も可能な反転機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る構造部材の反転機は、ベース部と、前記ベース部から立設した支柱と、前記支柱に沿って上昇及び下降する昇降部材とを備え、前記昇降部材は、構造部材を吊り上げた状態で反転できる反転ベルトを有していることを特徴とする。
【0008】
ここでベース部とは、昇降部材に設けた反転ベルトにて構造部材を吊り上げた状態時に、この昇降部材を支持する支柱部を支えるのが目的であり、その構造に制限がない。
例えば、フレーム構造,枠構造,盤構造等が例として挙げられるが、略T字型,略H字型等のフレーム構造にすると、コンパクトで軽量化できる。
【0009】
本発明にて昇降部材は、反転ベルトを用いて構造部材を吊り上げるのが目的であり、昇降機の小型化を図るのに例えば、支柱の上部側には、定滑車を有する支持フレームが連結固定され、前記昇降部材は動滑車を有し、前記昇降部材がワイヤーにより前記動滑車及び定滑車を介して昇降機にて上昇及び下降可能に吊り下げられている構造が例として挙げられる。
【0010】
また、昇降部材は横フレームと縦フレームとが略T字型になっていて、前記横フレームの先端部側に前記反転ベルトの上部側を装着したスプロケットを有し、前記スプロケットは反転モーターにより回転制御され、前記横フレームの後端側に第1ガイド部を有し、前記縦フレームの下端側に第2ガイド部を有し、前記昇降部材は前記第1ガイド部が前記支柱の後側面に沿い、前記第2ガイド部が前記支柱の前側面に沿った状態で上昇及び下降するものであってもよい。
このようにすると、横フレームの先端側で吊り上げた構造部材の重力を上下方向にずらして設けた後面側の第1ガイド部と、前面側の第2ガイド部で支えながら上昇,下降するので、昇降部材の構造がコンパクトになる。
本明細書では、反転ベルトを有する側を先端側、あるいは前側(前面側)と表現する。
【0011】
本発明において、ベース部は走行モーターにより駆動制御された駆動輪と従動輪とを有し、移動制御されていると、自走制御可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る反転機は、コンパクトで移動が容易なので、例えば長尺の構造部材を天井クレーン等にて吊り上げて支持フレーム等に仮置きし、この構造部材の両端部を2台の反転機でそれぞれ吊り上げ、反転作業を繰り返しながら各側面の溶接作業ができる。
これにより、天井クレーンを使用する時間が短時間で済むので、他の作業者との天井クレーンの共有が容易になる。
特に大型断面の長尺部材では、天井クレーンの一点吊りで強制的に転倒させるので、転倒の跳ね返りや衝撃を作業者が危険抑制しながら行っており、反転作業に長時間を要していたが、反転作業のすべてがボタンスイッチ等の遠隔操作で安全かつ短時間で行える。
また、構造部材がある場所に容易に移動させることができるので、溶接作業のための段取りがスムーズに行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】構造部材を本発明に係る反転機にて吊り上げた状態を示す。
図2】本発明に係る反転機の構造例を示す。
図3】昇降部材の下降させた状態を示す。
図4】反転機を後面から見た状態を示す。
図5】構造部材を(a)と(b)との状態に90°反転させる例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る反転機の構造例を以下図に基づいて説明する。
図1は、構造部材1を両側の反転機で吊り上げた状態を示し、図2図4に反転機の構造の詳細を示す。
反転機10は、ベース部11に立設した支柱に沿って、上昇,下降可能に設けられた昇降部材14を有する。
昇降部材14は、動滑車18cを有する。
支柱の上端側には、前後方向に延在する支持フレームを連結してあり、この支持フレームに第1定滑車18aと第2定滑車18bとを取り付けてある。
ワイヤー19の一端を支持フレーム13に設けた固定部19aに固定してあり、このワイヤー19を動滑車18cから第1定滑車18a,第2定滑車18bを経由させて、このワイヤー19の他端19bをウインチ等の昇降機15に連結してある。
本実施例では、昇降機15としてダブルチェーン(15b)タイプのウインチを用いて、フック15aをベース部側の引掛部11fに引っ掛けてある。
これにより、図2図3に示すように、支柱12に沿って上昇及び下降可能に制御されている。
【0015】
本実施例において、昇降部材14は、鋼材からなる前後方向の横フレーム14cと、その下側に上下方向の縦フレーム14bとを略T字型に連結してある。
横フレーム14cの先端側には、スプロケット14aを取り付けてあり、このスプロケット14aは横フレームの上部に配設した反転モーター16との間に、伝達ベルト16aを装着してある。
スプロケット14aを回動制御する機構としては、特に制限はない。
本実施例では、反転モーター16の駆動軸16bと、スプロケット14aの回動軸114aとの間に、伝達ベルト16aを取り付けた構造になっている。
スプロケット14aには、図5に示すように反転ベルト17の上部側を引っ掛けてあり、この反転ベルト17の内側に構造部材1の端部を挿入し、吊り上げる。
反転ベルト17は、無端ベルトになっていて、図5(a),(b)に示すように左右方向に回動させることで、構造部材1が容易に90°回転する。
【0016】
図2に示すように、昇降部材14の横フレーム14cの先端部側には、反転モーター16の自重や、反転ベルト17にて吊り上げた構造部材1の重量が負荷されるので、この横フレーム14cには先端部側が下に向けて下がる方向の力が作用する。
そこで本実施例では、横フレーム14cの後端部側に、鋼材からなる支柱12のフレームの後側面に沿って上下移動する第1ガイド部14dと、これよりも下方に位置する縦フレーム14bの下端部側に支柱のフレームの前側面に沿って上下移動する第2ガイド部14eにて昇降するようにしてある。
これにより、昇降部材14がコンパクトなフレーム構造になる。
【0017】
本実施例は、図2に側面視,図4に後面視を示すように、ベース部11は前後方向の第1フレーム11aの後部側に、左右方向の第2フレーム11bの中央部を連結した略T字型又はクロス構造にすることで、コンパクト化を図った。
第1フレーム11aの先端部側には、走行モーター11cにて駆動制御された駆動輪11dを有し、第2フレーム11bの両端部側には、それぞれ従動輪11e,11eを取り付けることで、自走式になっている。
【0018】
反転作用の手順を、図1にて説明する。
例えば、天井クレーン等を用いて構造部材1の両側の端部が自由端になるように、2対の支持台2,2に仮置きする。
2機の反転機10,10を、それぞれ構造部材1の両側の端部に向けて自走させ、反転ベルト17の内側に構造部材1の端部を挿入する。
次に、反転機10の昇降部材14を上昇させると、構造部材1は吊り上がる。
この状態で図5に示すように、構造部材1を反転させた後に昇降部材14を下降させることで、構造部材1を支持台2に支持させる。
構造部材1の上面に各部品,部材を下向きで溶接すると、再度反転機10で吊り上げ、反転させる作業を行う。
図1では、左右両側の反転機に反転モーター16を設けた例になっているが、左右の反転機の一方は反転モーターがない従動式の反転ベルトであってもよい。
【0019】
本発明に係る反転機において、支柱上部側の支持フレームは支柱を支点として昇降部材14と昇降機15の天秤梁にすることで荷重偏心を小さくでき、コンパクト化を実現している。
また、昇降部材14では動滑車18cを支点としてスプロケット14aとガイド部(14d,14e)の天秤梁にすることで荷重偏心を小さくでき、コンパクト化されている。
【符号の説明】
【0020】
1 構造部材
2 支持台
10 反転機
11 ベース部
11a 第1フレーム
11b 第2フレーム
11c 走行モーター
11d 駆動輪
11e 従動輪
12 支柱
13 支持フレーム
14 昇降部材
14a スプロケット
14b 縦フレーム
14c 横フレーム
14d 第1ガイド部
14e 第2ガイド部
15 昇降機
16 反転モーター
16a 伝達ベルト
17 反転ベルト
18a 第1定滑車
18b 第2定滑車
18c 動滑車
19 ワイヤー
19a 固定部
114a スプロケット14aの回転軸
図1
図2
図3
図4
図5