(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186240
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】冷凍プリン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 9/00 20160101AFI20221208BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20221208BHJP
A23L 3/37 20060101ALN20221208BHJP
A23C 9/00 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
A23L9/00
A23L3/36 A
A23L3/37 Z
A23C9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094364
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】521244802
【氏名又は名称】大聖寺 真理子
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大聖寺 真理子
【テーマコード(参考)】
4B001
4B022
4B025
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC05
4B001AC09
4B001AC43
4B001BC01
4B001BC07
4B001BC08
4B001EC01
4B022LA03
4B022LB01
4B022LJ04
4B022LJ05
4B022LJ06
4B022LN10
4B025LB17
4B025LE07
4B025LG18
4B025LG26
4B025LG42
4B025LG52
4B025LG53
4B025LG58
4B025LK03
4B025LP01
4B025LP08
4B025LP10
4B025LP12
4B025LP20
(57)【要約】
【課題】天然素材のみを使用し、かつ材料本来の風味を損なわない形で卵入り冷凍プリンを提供することを課題とする。
【解決手段】葛粉を含む、冷凍プリン。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
葛粉を含む、冷凍プリン。
【請求項2】
卵を含む、請求項1に記載の冷凍プリン。
【請求項3】
急速凍結された、請求項1又は2に記載の冷凍プリン。
【請求項4】
前記急速凍結が、-1℃~-5℃の温度帯を30分以内に通過させる凍結方法である、請求項3に記載の冷凍プリン。
【請求項5】
前記凍結方法が、前記急速凍結の環境下に、均等磁束と電磁波を加えて凍結する方法である、請求項4に記載の冷凍プリン。
【請求項6】
葛粉を含むプリンを急速凍結する工程を含む、冷凍プリンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍プリン及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンは、卵、牛乳などを混ぜて、砂糖などの調味料や香辛料で味付けし、煮たり蒸したり焼いたりして固めた料理である。特に日本においては、砂糖で甘く味付けされた、蒸し焼きにより作られるカスタードプリンが広く食されている。
【0003】
プリンは、長期保存に適さないとされる。原材料である卵及び牛乳が長期保存に適さないためである。一般に、卵及び牛乳を使用したプリンの賞味期限は冷蔵保存で2~3日とされており、それ以上の保存は、保存料などの添加物を加えない限り不可能とされている。
【0004】
一方で、長期保存を可能にするため、冷凍プリンが各種開発されている。しかし、これらの既存の冷凍プリンは、卵を使用していないものがほとんどである。
【0005】
卵を使用した冷凍プリンの課題として、解凍後に食感が損なわれることが指摘されている。この原因としては、解凍後に離水が起こることによりスポンジ状に変化してしまうことが指摘されている。この課題解決のため、保水性向上効果が高い加工澱粉、増粘多糖類を添加する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、卵入り冷凍プリンを製造するに当たり、人工添加剤である凝固剤としてのアガーを添加するなど鋭意検討を行った。しかしながら、アガーが材料本来の旨味を封じ込めてしまい、アガー特有の風味が残存するなどの課題があることを見出した。本発明は、天然素材のみを使用し、かつ材料本来の風味を損なわない形で卵入り冷凍プリンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行ったところ、葛粉を加えて卵入りプリンを製造することにより、上記課題を解決できることを見出した。本発明はかかる知見に基づいてさらに検討を加えることにより完成したものであり、以下の態様を含む。
【0009】
項1.
葛粉を含む、冷凍プリン。
項2.
卵を含む、項1に記載の冷凍プリン。
項3.
急速凍結された、項1又は2に記載の冷凍プリン。
項4.
前記急速凍結が、-1℃~-5℃の温度帯を30分以内に通過させる凍結方法である、項3に記載の冷凍プリン。
項5.
前記凍結方法が、前記急速凍結の環境下に、均等磁束と電磁波を加えて凍結する方法である、項4に記載の冷凍プリン。
項6.
葛粉を含むプリンを急速凍結する工程を含む、冷凍プリンの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長期保存が可能であり、また、卵を使用しているにもかかわらず、解凍後の舌触りが滑らかであり、かつ原材料の風味を損なわない冷凍プリンを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の冷凍プリンは、葛粉を含む。葛粉を含んでいることにより、本発明の冷凍プリンは、所定の原材料を混合後、冷却するのみで凝固させることができる。また、葛粉を含んでいることにより、本発明の冷凍プリンは、卵を使用しているにもかかわらず、解凍後の舌触りが滑らかであり、かつ原材料の風味を損なわないものとすることができる。
【0012】
葛粉としては、葛(学名: Pueraria montana var. lobata)の根から得られるデンプンを含むものであればよく、好ましくはそのデンプンを精製して作られる食用粉を使用できる。葛粉としては、葛粉100%の本葛を使用してもよいし、葛粉に、ジャガイモ、サツマイモ(甘藷澱粉)、コーンスターチ(トウモロコシの澱粉)などのデンプンを混入したものを使用してもよい。
【0013】
葛粉は、本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、牛乳1重量部に対して、通常0.001~0.5重量部、好ましくは0.005~0.2重量部、より好ましくは0.01~0.1重量部である。
【0014】
また、本発明の冷凍プリンは、葛粉の代わりに、マメ科クズ属のその他の植物の根から得られるデンプンを含むものであってもよい。その場合、その配合量は、上記の葛粉の配合量を参考に適宜調整することができる。
【0015】
本発明の冷凍プリンは、卵を含むものであることが好ましい。この場合、本発明の冷凍プリンは卵を含んでいるにもかかわらず、葛粉を含んでいることにより、解凍後の舌触りを滑らかなものとすることができ、有利である。本発明の冷凍プリンは、卵として、好ましくは、全卵と卵黄とを含む。
【0016】
本発明の冷凍プリンは、牛乳及び卵を少なくとも含んだものとすることができ、それらの使用量は、従来の冷凍プリンと特段変わることがなく、適宜調整することができる。
【0017】
本発明の冷凍プリンは、さらに糖、塩などの調味料、バニラエクストラクト等の香辛料を適宜含むことができるが、それらの種類及び使用量は、従来の冷凍プリンと特段変わることがなく、適宜調整することができる。
【0018】
本発明の冷凍プリンは、保存料や凝固剤などの添加物を使用することなく、解凍後の舌触りが滑らかであり、かつ原材料の風味を損なわない冷凍プリンとすることができる。
【0019】
本発明の冷凍プリンは、急速凍結されたものであることが好ましい。急速凍結することにより、解凍後の舌触りをより滑らかなものとすることができる。急速凍結とは、好ましくは、-1℃~-5℃の温度帯を30分以内に通過させる凍結方法である。
【0020】
本発明の冷凍プリンは、-50~20℃、好ましくは-40~30℃に最終的に到達するまで急速凍結されたものであることが好ましい。
【0021】
急速凍結の方法としては、急速凍結の環境下に、均等磁束と電磁波を加えて凍結する方法が特に好ましい。このような急速凍結方法により、解凍後の舌触りをより滑らかなものとすることができる。このような急速凍結方法を行う方法としては、特に限定されないが、例えば、株式会社菱豊フリーズシステムズの提供するプロトン凍結機(例えば、型番PF-15A)を使用する方法等が挙げられる。
【実施例0022】
以下の原材料を混合し、以下の工程により90ml瓶入りのプリン(カスタードプリン)を15個製造した。
・ジャージー牛乳 1000g
・還元麦芽糖 適量
・卵
全卵 4個
卵黄 6個(全卵と卵黄を合わせて315g前後)
・有機甘酒 適量
・葛粉(本葛) 50g
・塩 適量
・バニラエクストラクト 適量
【0023】
1.甘酒とバニラエクストラクト以外の材料を混ぜ、鍋に入れ、火にかけた。
2.混ぜながら75℃くらいまで温度を上げた後、60℃以下に下げていった。
3.60℃以下になったら甘酒を入れて混ぜた(甘酒内の糀菌が60℃以上だと死滅するため)
4.バニラエクストラクトを入れた。
5.プリンの容器に上記4を入れた。
6.-35℃にあらかじめ冷やしておいたプロトン凍結機(型番PF-15A)に上記5を入れ、1時間半ほどかけて凍結させた。
7.上記6を取り出し家庭用と同じ-18~-20℃の冷凍庫に移した。
【0024】
このようにして得られた冷凍プリンは、解凍後、舌触りが滑らかであり、かつ原材料の風味、特に卵と牛乳の美味しさのみならず、自然素材である甘酒と還元麦芽糖の独特の風味、を損なわないものであった。