(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186243
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
B25C 11/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
B25C11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094367
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】林 進
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB07
3C068CC07
3C068JJ20
(57)【要約】
【課題】釘頭にフックを掛けるといった、装置の一部を作業対象に係合させる際の操作を行いやすくし、装置の取り回し性のよさや扱いやすさを向上させた電動工具を提供する。
【解決手段】釘抜等の作業に用いられる電動工具である。該電動工具1は、本体部10と、該本体部10側に設けられ、作業対象の一部に係合する係合部22を有する係合部材20と、本体部10に対し出没動作してその一部を係合部材20に対して接近離反させる摺動部材30と、該摺動部材30を動作させる駆動源60と、を備えている。係合部材20の係合部22は駆動軸DAからオフセットした位置に配置されている。係合部22は、たとえば駆動軸DAと垂直な方向に突出するように形成されている。
【選択図】
図24B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釘抜等の作業に用いられる電動工具であって、
本体部と、
該本体部側に設けられ、作業対象の一部に係合する係合部を有する係合部材と、
前記本体部に対し出没動作してその一部を前記係合部材に対して接近離反させる摺動部材と、
該摺動部材を動作させる駆動源と、
を備えており、
前記係合部材の前記係合部は前記駆動軸からオフセットした位置に配置されている、電動工具。
【請求項2】
前記係合部は、前記摺動部材を通り当該摺動部材の摺動方向に沿って延びる駆動軸と垂直な方向に突出するように形成されている、請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記係合部材は、前記係合部が突出する向きを変更可能に構成されている、請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記係合部材のうち前記係合部を含む部分が前記駆動軸まわりに回転自在な回転自在部として設けられている、請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記係合部材の前記回転自在部の前記駆動軸まわりの回転動作に所定の抵抗を付与する抵抗体をさらに備える、請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
前記摺動部材の摺動動作に伴い前記係合部材の前記回転自在部の周方向位置を規定する規定手段をさらに備える、請求項4または5に記載の電動工具。
【請求項7】
前記摺動部材に、前記駆動軸に対して垂直に配置される部材を前記係合部材の前記係合部とともに挟み込むことが可能な保持部が形成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項8】
前記摺動部材のうち前記保持部を含む部分が前記駆動軸まわりに回転自在な回転自在部として設けられている、請求項7に記載の電動工具。
【請求項9】
前記摺動部材の前記回転自在部の前記駆動軸まわりの回転動作に所定の抵抗を付与する抵抗体をさらに備える、請求項8に記載の電動工具。
【請求項10】
前記摺動部材の摺動動作に伴い当該摺動部材の前記回転自在部の周方向位置を規定する規定手段をさらに備える、請求項8または9に記載の電動工具。
【請求項11】
前記摺動部材が前記本体部に引き込まれた初期位置にある状態で、前記保持部は、前記駆動軸の軸方向に関して少なくともその一部が前記係合部材の前記係合部と重なる位置に形成されている、請求項8から10のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項12】
前記摺動部材の周囲部分を構成するサイドカバー部をさらに備える、請求項2から11のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項13】
前記サイドカバー部は、当該摺動部材の一部として一体的に摺動する、請求項12に記載の電動工具。
【請求項14】
前記摺動部材に、前記駆動軸に対して垂直に配置される部材を前記係合部材の前記係合部とともに挟み込むことが可能な保持部が形成されていて、該保持部と前記係合部は、少なくとも一部が前記カバーの外側に位置するように形成されている、請求項12または13に記載の電動工具。
【請求項15】
前記摺動部材の前記保持部は、前記係合部材の前記係合部よりも前記駆動軸に対し垂直径方向に突出する大きさに形成されている、請求項14に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場においてたとえばコンクリートパネルと呼ばれる板によって作られる型の中にコンクリートを流し込んで施工した後、板材と枠材を分離するといった場面で釘抜き作業が必要となることがあり、そういった場面で、エア式、油圧式、電動式等、機械化された動力式の釘抜機が利用されることがある。このような場面で利用される従来の釘抜機としては、釘を引っ掛けるフックにネジが切られていて、モータの回転を伝達することで当該フックを上下に移動させて釘を引き抜く構造となっているものが一般的に多く提案されている(たとえば特許文献1,2参照)。
【0003】
このような釘抜機では、釘抜きの際、モータの回転を伝達する機構(たとえばボールねじ)にまっすぐ荷重が作用するよう、当該ボールねじの軸上にフックを配置し、軸に沿って釘を抜くようにした構成が一般的に採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5―5376号公報
【特許文献2】特開平11―48161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のごとき構成だと、フック位置が見にくいため、釘頭にフックを掛ける作業が行いやすいとはいい難いことがある。
【0006】
そこで、本発明は、釘頭にフックを掛けるといった、装置の一部を作業対象に係合させる際の操作を行いやすくし、装置の取り回し性のよさや扱いやすさを向上させた電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、釘抜等の作業に用いられる電動工具であって、
本体部と、
該本体部側に設けられ、作業対象の一部に係合する係合部を有する係合部材と、
本体部に対し出没動作してその一部を係合部材に対して接近離反させる摺動部材と、
該摺動部材を動作させる駆動源と、
を備えており、
係合部材の係合部は駆動軸からオフセットした位置に配置されている、電動工具である。
【0008】
上記態様の電動工具においては、係合部材の係合部が駆動軸からオフセットしているぶん、作業者らにとって当該係合部が見やすく、釘頭にフックを掛けるといったような、装置の係合部を作業対象に係合させる際の操作を行いやすい構造とすることができる。これによれば、装置の取り回し性のよさや扱いやすさを向上させやすい。
【0009】
これについてさらに詳述すれば以下のとおりである。すなわち、従来の機構では、斜めに打込まれた釘を抜くときにボールねじに偏荷重が作用して、ねじ部に偏摩耗を発生させることで耐久性を低下させることがあった。偏荷重が発生する原因は、釘の貫入位置が駆動軸に対してずれることでボールねじに横方向の荷重が作用するためである。そのため従来機構では、釘頭を引っ掛ける「フック位置」を「駆動軸上に配置」することによって偏荷重が発生しないようにした。しかし、この配置は、耐久性向上に有効であるが、先端が見にくい(狙いにくい)という問題がある。また、フックを軸上に配置したにもかかわらず、釘が斜めに打込まれたときには、引抜き抵抗の発生位置が軸からずれてしまうため、偏荷重の発生を完全にふせぐことができない。この点、本態様では、係合部を本体に固定して打込部材を押すように摺動部材を駆動させるようにしたので、釘の貫入位置が駆動軸からズレたとしても、係合部に作用する偏荷重は駆動機構よりもはるかに剛性の高い本体部で受けることができるため、耐久性の問題が生じない。また、摺動部材には軸方向への移動をガイドするガイド部(として機能しうる部材)が設けられることで、駆動軸に作用する力は、釘の位置に関係なく常に軸上に作用することになるので、係合部を駆動軸の延長線上に設ける必要がなくなる。そのため、本態様は係合部のオフセット配置が可能になり、「釘が狙いにくい」という課題を解決することにつながる。さらに、斜めに打たれた釘を抜いたときでも、電動工具本体の耐久性を低下させることが無い。
【0010】
上記のごとき電動工具における係合部は、摺動部材を通り当該摺動部材の摺動方向に沿って延びる駆動軸と垂直な方向に突出するように形成されていてもよい。
【0011】
上記のごとき電動工具における係合部材は、係合部が突出する向きを変更可能に構成されていてもよい。
【0012】
上記のごとき電動工具において、係合部材のうち係合部を含む部分が駆動軸まわりに回転自在な回転自在部として設けられていてもよい。
【0013】
上記のごとき電動工具は、係合部材の回転自在部の駆動軸まわりの回転動作に所定の抵抗を付与する抵抗体をさらに備えていてもよい。
【0014】
上記のごとき電動工具は、摺動部材の摺動動作に伴い係合部材の回転自在部の周方向位置を規定する規定手段をさらに備えていてもよい。
【0015】
上記のごとき電動工具においては、摺動部材に、駆動軸に対して垂直に配置される部材を係合部材の係合部とともに挟み込むことが可能な保持部が形成されていてもよい。
【0016】
上記のごとき電動工具においては、摺動部材のうち保持部を含む部分が駆動軸まわりに回転自在な回転自在部として設けられていてもよい。
【0017】
上記のごとき電動工具は、摺動部材の回転自在部の駆動軸まわりの回転動作に所定の抵抗を付与する抵抗体をさらに備えていてもよい。
【0018】
上記のごとき電動工具は、摺動部材の摺動動作に伴い当該摺動部材の回転自在部の周方向位置を規定する規定手段をさらに備えていてもよい。
【0019】
上記のごとき電動工具においては、摺動部材が本体部に引き込まれた初期位置にある状態で、保持部は、駆動軸の軸方向に関して少なくともその一部が係合部材の係合部と重なる位置に形成されていてもよい。
【0020】
上記のごとき電動工具は、摺動部材の周囲に設けられたサイドカバー部をさらに備えていてもよい。
【0021】
上記のごとき電動工具におけるサイドカバー部は、摺動部材に取り付けられていて当該摺動部材と一体的に摺動するものであってもよい。
【0022】
上記のごとき電動工具においては、摺動部材に、駆動軸に対して垂直に配置される部材を係合部材の係合部とともに挟み込むことが可能な保持部が形成されていて、該保持部と係合部は、少なくとも一部がカバーの外側に位置するように形成されていてもよい。
【0023】
上記のごとき電動工具において、摺動部材の保持部は、係合部材の係合部よりも駆動軸に対し垂直径方向に突出する大きさに形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電動工具によれば、釘頭にフックを掛けるといった、装置の一部を作業対象に係合させる際の操作を行いやすくし、装置の取り回し性のよさや扱いやすさを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】電動工具の一例である充電釘抜機の載置状態を示す斜視図である。
【
図2】フック部材を真下に向けた姿勢(使用状態)における充電釘抜機を一の方向からみた図(正面図)である。
【
図4】
図3に示した充電釘抜機を上方からみた図である。
【
図5】
図3に示した充電釘抜機を下方からみた図である。
【
図6A】
図4中のVI-VI線における充電釘抜機の断面図である。
【
図6B】
図6Aと同じ断面における、スライダーをスライドさせた状態の充電釘抜機の図である。
【
図7A】スライダーの先端部をコンクリートパネルに宛がった状態の充電釘抜機の斜視図である。
【
図7B】
図7A中のスライダーの先端部周辺を拡大して示す図である。
【
図8A】
図7Aに示した位置でスライダーをスライドさせた状態の充電釘抜機の斜視図である。
【
図9A】正面からみた、フック部材やスライダーなどといった機構部内の構成を示す図である。
【
図9B】
図9A中のIXB-IXB線におけるフック部材、スライダー、ボールねじ等の断面図である。
【
図10A】釘にフックを掛けた状態でスライド部材を途中までスライドさせた状態のフック部材、スライダー、ボールねじ等を側方からみた図である。
【
図10B】
図10Aに示すフック部材、スライダー、ボールねじ等の縦断面図である。
【
図11】釘にフックを掛けた状態でスライダーを途中までスライドさせた状態のフック部材、スライダー、ボールねじ等を下方からみた斜視図である。
【
図12】
図11のフック部材、スライダー、ボールねじ等(ただしボールねじ周りのカバーを除く)の斜視図である。
【
図13】
図12のフック部材、スライダー、ボールねじ等の一部を示す斜視図である。
【
図14A】
図13に示した各部材のうちフック部材とメインフレームの部分を示す斜視図である。
【
図14B】
図13に示した各部材のうちスライダーとボールねじの部分を示す斜視図である。
【
図15】本発明の利点のひとつである小型化について説明するため、(A)本願の一実施形態における充電釘抜機と(B)従前の充電釘抜機とを対比して示す図である。
【
図16】本発明の利点のひとつである小型化について説明する、(A)スライダーをスライドさせる前の状態の充電釘抜機と(B)スライダーをスライドさせた後の状態の充電釘抜機とを並べて示す図である。
【
図17A】従来の釘抜機で、斜めに釘打ちされた釘にフックを掛けた状態のフック部材、スライダー等を正面からみた図である。
【
図17B】
図17A中の従来の釘抜機のXVIIB-XVIIB線におけるフック部材、スライダー等の断面を示す図である。
【
図17C】従来の釘抜機で、斜めに釘打ちされた釘にフックを掛けた状態のフック部材、スライダー等を示す斜視図である。
【
図18A】従来の釘抜機で、スライダーを摺動させ、斜めに釘打ちされた釘を抜いた状態のフック部材、スライダー等を正面からみた図である。
【
図18B】
図18A中の従来の釘抜機のXVIIIB-XVIIIB線におけるフック部材、スライダー等の断面を示す図である。
【
図19A】駆動軸からオフセットした位置にフック部が配置されたフック部材について説明する縦断面図である。
【
図19B】駆動軸からオフセットした位置にフック部が配置されたフック部材で釘を抜く様子を説明する縦断面図である。
【
図20A】スライダーの先端部をコンクリートパネルに宛がった充電釘抜機をカバー無しの状態で示す斜視図である。
【
図20B】
図20Aに示した位置でスライダーをスライドさせた状態の充電釘抜機の斜視図である。
【
図21A】フックの向きを変えて、スライダーの先端部をコンクリートパネルに宛がった充電釘抜機を示す斜視図である。
【
図21B】
図21Aに示した位置でスライダーをスライドさせた状態の充電釘抜機の斜視図である。
【
図22A】フックの向きを変えることができる充電釘抜機をスライダーの先端部のほうからみた斜視図である。
【
図22B】
図22Aに示した充電釘抜機においてフックの向きを変えた状態を示す斜視図である。
【
図23A】スライダーの先端部をコンクリートパネルに宛がった充電釘抜機を示す右側面図である。
【
図24A】
図23Aに示した位置でスライダーをスライドさせた状態の充電釘抜機を示す右側面図である。
【
図24C】正面からみた充電釘抜機の縦断面図である。
【
図25A】アタッチメントの尖状部をコンクリートパネル(板材)と桟木(枠材)との間に差し込み被打撃部をハンマーで打撃する様子を示す図である。
【
図25B】尖状部をコンクリートパネル(板材)と桟木(枠材)との間に差し込んだ状態の充電釘抜機のアタッチメントの部分を拡大して示す図である。
【
図25C】尖状部をコンクリートパネル(板材)と桟木(枠材)との間に差し込んだ状態の充電釘抜機のアタッチメントの部分を拡大して示す縦断面図である。
【
図26】アタッチメントの尖状部をコンクリートパネル(板材)と桟木(枠材)との間に差し込み被打撃部をハンマーで打撃する様子を示す斜視図である。
【
図27A】尖状部をコンクリートパネル(板材)と桟木(枠材)との間に差し込んだ後でスライダーを摺動させコンクリートパネルと桟木とを離した状態を示す図である。
【
図28A】コンクリートパネルに刺さったままの釘の釘足をフックとスライダーを利用して押し下げ、釘をコンクリートパネルから浮かせる様子を示す側面図である。
【
図28C】コンクリートパネル(板材)に刺さったままの釘の釘足をフックとスライダーを利用して押し下げ、釘をコンクリートパネルから浮かせる様子を別の角度からみた斜視図である。
【
図28E】コンクリートパネルに刺さったままの釘の釘足をフックとスライダーを利用して押し下げ、釘をコンクリートパネルから浮かせてから抜く一連の様子を(a)~(d)の順で示す図である。
【
図29A】充電釘抜機のフックとスライダーを利用して枠材(桟木)を挟み込む様子を示す斜視図である。
【
図29B】充電釘抜機のフックとスライダーを利用して枠材(桟木)を挟み込む様子を別の角度からみた図である。
【
図30A】ボールねじの直下となる位置にフックが配置された従前の充電釘抜機における当該部分を参考として示す斜視図である。
【
図30B】ボールねじの直下となる位置にフックが配置された従前の充電釘抜機における当該部分を参考として示す側面からみた図である。
【
図31】制御装置、原点センサなどの構成例を示すブロック図である。
【
図32A】初期位置検出(センサレスの場合)の動作フローを示すチャート図である。
【
図32B】初期位置検出(センサレスの場合)の動作(パターン1)の概略を示す図である。
【
図32C】初期位置検出(センサレスの場合)の動作(パターン2)の概略を示す図である。
【
図32D】初期位置検出(センサレスの場合)の動作(パターン3)の概略を示す図である。
【
図33A】初期位置検出(センサありの場合)の動作フローを示すチャート図である。
【
図33B】初期位置検出(センサありの場合)の動作(パターン1)の概略を示す図である。
【
図33C】初期位置検出(センサありの場合)の動作(パターン2)の概略を示す図である。
【
図33D】初期位置検出(センサありの場合)の動作(パターン3)の概略を示す図である。
【
図34】釘抜の動作フローのうち「釘抜きモード」に対応する部分のチャート図である。
【
図35】釘抜の動作フローのうち「釘抜き1サイクルモード」に対応する部分のチャート図である。
【
図36A】釘抜き+クランプの動作フローのうち「釘抜きモード」に対応する部分のチャート図である。
【
図36B】釘抜き+クランプの動作フローのうち「釘抜き1サイクルモード」に対応する部分のチャート図である。
【
図36C】釘抜き+クランプの動作フローのうち「クランプモード」に対応する部分のチャート図である。
【
図37】クランプモードにおける逆転駆動中の電流波形の一例を示すグラフである。
【
図38A】釘抜き+初期位置検出+クランプの動作フローのうち「釘抜きモード」に対応する部分のチャート図である。
【
図38B】釘抜き+初期位置検出+クランプの動作フローのうち「釘抜き1サイクルモード」に対応する部分のチャート図である。
【
図38C】釘抜き+初期位置検出+クランプの動作フローのうち「クランプモード」に対応する部分のチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る電動工具の実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態として、電動工具が充電釘抜機として用いられる場合の形態を説明する(
図1等参照)。充電釘抜機1は、コンクリートパネルQや桟木Rといった板材ないし枠材に貫入した釘Pを抜く釘抜き作業などに用いられる、充電式の電動工具の一種である。本実施形態の充電釘抜機1は、本体部10、フック部材20、スライダー30、カバー50、モータ60などを備えた工具であり(
図1~
図19B等参照)、本体部10側に固定されたフック部材20を釘頭Phに掛け、その状態で本体部10からスライダー30を駆動軸DAに沿って突出させたときの動きに伴い釘抜き動作をするように構成されている(
図19B等参照)。以下ではまず充電釘抜機1の構成を説明し、その後、当該充電釘抜機1の動作を説明する。
【0028】
本体部10は、充電釘抜機1の本体を構成する部分であり、本明細書では特に駆動部分(スライダー30など)を除く部分を指す。本実施形態の本体部10は、主として、モータ60などを収容する機構部11、ユーザー(
図7Aと
図8Aにおいて充電釘抜機1をもつ手の部分のみ示す)Uが使用時に把持するグリップ部12、バッテリー66などを収容するバッテリー収容部13からなる(
図3~
図5等参照)。
【0029】
機構部11は、モータ60の他、該モータ60の駆動力をスライダー30に伝達するための駆動機構(たとえば、後述する減速機71、ねじ軸72など)70を収容する部分である(
図6B等参照)。この機構部11には、メインフレーム14、カバー50、フック部材20等がさらに設けられる(
図6A等参照)。
【0030】
グリップ部12は、比較的重量が嵩張りやすいバッテリー収容部13と機構部11との間であって駆動軸DAの延長線上を除く部分に両者を繋ぐ形状に形成されていて、ユーザーがこのグリップ部12を把持して充電釘抜機1を持ち上げ操作する際、重量バランスが良好で取り回しやすくなるように全体が構成されている(
図4、
図5等参照)。本実施形態のグリップ部12は駆動軸DAに垂直な方向に延びるように形成されているが、もちろん、釘抜き作業などの行い易さなどを配慮し、わずかに斜め方向に延びるように形成されていてもよい。グリップ部12のうち機構部11寄りの部分には指で操作可能なトリガスイッチ122が設けられている(
図3等参照)。ここでは特に詳細な説明はしないが、グリップ12部は握りやすい形状や大きさに形成され、また、表面には可撓性のある部材が配置されるなど、滑りにくくかつ把持しやすくするための処理が施されている。
【0031】
バッテリー収容部13は充電可能なバッテリー66などを収容する部分であり、本体部10のなかでも重量が嵩みやすい部分でもある。本実施形態では、このバッテリー収容部13を略直方体形状の筐体で構成し、大型のバッテリー66を収容する場合にも対応しやすい形状および大きさとしている(
図6A等参照)。このように充電可能なバッテリー66を内蔵した本実施形態の充電釘抜機1によれば、コードレスハンドツールとしてコードレスの状態で釘抜き作業を行うことが可能である。また、バッテリー収容部13のうちグリップ部12とは反対側の面は平坦であり、必要に応じてゴムパッド(図示省略)などが取り付けられ、使用時以外のとき地面や床面に安定した姿勢で置いた状態(載置状態)とするときの載置面13Sとなるように構成されている(
図1、
図3等参照)。本実施形態のバッテリー収容部13には、さらにストラップ132、ベルトフック134が設けられている(
図2等参照)。
【0032】
なお、ここで図面中の記載と充電釘抜機1の姿勢との関係について言及しておく。本実施形態の充電釘抜機1を釘抜き作業に実際に使用するとき(使用状態)の姿勢(充電釘抜機1の向き)が特に限定されることはなく、たとえば壁面に貫入した釘Pを水平に引き抜くのであれば載置状態のときと同様にフック部材20やスライダー30(後の欄で詳述)を横向きした姿勢で使用したり、天井に貫入した釘Pを真下に引き抜くのであればフック部材20やスライダー30を真上に向けた姿勢で使用したりすることが可能である。ただ、実際の使用の局面に照らせば、足元に置いたコンクリートパネルQや桟木Rといった板材ないし枠材の釘Pを真上に引き抜く動作が通常的に行われることが想定される。本明細書および図面では、このような通常的な場面を想定し、フック部材20やスライダー30を下に向けた状態で使用される態様を代表的な使用時の代表例として「使用状態」と呼びながら説明することとする(
図2等参照)。また、便宜的に、使用状態における上側(駆動軸DAに沿って上となる方向)を上方、下側を下方、ユーザーからみて機構部11が位置する側を前方、バッテリー収容部13が位置する側を後方と呼ぶこととする(
図7A等参照)。
【0033】
フック部材20は、作業対象の一部(本実施形態であれば、桟木などから引き抜く対象たる釘Pの頭部(釘頭Ph))に係合する部材として機能する部材であり、その先端にはフック(係合部)22が形成されている。フック22の形状は釘頭Phに係合させることができるものであればとくに限定されることはない。本実施形態では、通常の釘抜き工具(バール)の先端のごとく、下方からみて前方に向かうにつれ幅が漸次狭くなる左右対称の一対の爪でフック22を形成している(
図5等参照)。また、フック22は、側方(使用状態において前後方向に垂直な左右方向)からみて、前方に向かうにつれ厚みが漸次薄くなる楔形状であれば釘頭Phに引っ掛けやすい(
図6B等参照)。フック22が形成されたフック部材20は機構部11のメインフレーム14に固定されている(
図11等参照)。フック部材20はたとえば本実施形態では筒状に形成されていて(
図14A等参照)、上下方向にスライドするスライダー30のロッド部32(これについては後述する)をガイドする案内部材としての機能を併せもつ(
図13等参照)。
【0034】
メインフレーム14は、本体部10の機構部11において駆動軸DAに沿って上下方向(上方から下方へ向かう方向)に延びるように形成されているフレームである(
図12等参照)。本実施形態では、駆動軸DAを挟んで対称的に配置した左右一対の板状部材をメインフレーム14として採用している(
図9A、
図9B等参照)。メインフレーム14は、その上方端部をフレーム基台15に取り付けられて固定されている(
図13等参照)。メインフレーム14の先端部分(下方部分)には、フック部材20がたとえば両側から締結ねじ24でねじ止めされている(
図14A等参照)。メインフレーム14に固定された状態のフック部材20は、機構部11の中における上下方向(駆動軸DAに沿った方向)の相対位置を変えることがない。メインフレーム14は、このように固定されたフック部材20を保持する役割のほか、上下方向に摺動するスライダー30をガイドする案内部材としての役割も果たす。
【0035】
スライダー(摺動部材)30は、上下方向に摺動して本体部10に対し出没動作し、その一部(先端部31)をフック部材20のフック22に対して相対的に接近離反させる、いわば脚部(プッシャーないしはプッシュロッド)のように機能する可動部材である。フック部材20のフック22を釘頭Phに係合させた状態でスライダー30を突出動作させることにより、本体部10側に固定されたフック部材20のフック22とこのスライダー30の先端部31とを相対的に離間させ、この動作に伴い釘Pを引き抜くことができる(
図7B、
図8B等参照)。このように構成された本実施形態の充電釘抜機1のスライダー30は、釘打ちされたコンクリートパネルQや桟木Rなどに対しフック22ごと本体部10を押し上げる際のいわば突っ張り棒のように機能するということができる(
図16等参照)。
【0036】
スライダー30の具体的な構成は上記のごとく機能しうるものであれば特に限定されるものではないが、その好適な一例である本実施形態においては、本体部10に設けられた上記のメインフレーム14に沿って上下方向に摺動する、先端部31、ロッド部32およびサイドカバー部33が一体化されてなる構成としている(
図14B等参照)。スライダー30は、ねじ軸72を含む駆動機構70を介してモータ60の駆動力が伝達され、駆動軸DAに沿って直線運動をする。
【0037】
先端部31はスライダー30の下部に形成されたたとえば略円形の板状部材からなり、コンクリートパネルQや桟木Rなどに当接して本体部10を相対的に押し上げる突っ張り部分となる(
図7A、
図8A等参照)。
【0038】
ロッド部32は駆動軸DAに沿って延びる棒状部材からなり、その下方の先端において先端部31と一体化されている(
図14B等参照)。ロッド部32はその内側をねじ軸72が通るように筒状となっている(
図6A等参照)。また、ロッド部32の一部たとえば上方のフランジ部32aの内周には、ねじ軸72と螺合するめねじ32bを有するスリーブ部32cが設けられていて、ねじ軸72の回転動作に伴いロッド部32ひいてはスライダー30全体が駆動軸DAに沿って直線運動するようになっている(
図6B等参照)。これらのようなねじ軸72、めねじ32b、さらにはねじ軸72とめねじ32bとの間に介在するスチールボール(図示省略)によって、スライダー30を直線運動させるための駆動機構70、たとえば本実施形態におけるようなボールねじ(
図9A等において符号73で示す)が構成される。ロッド部32はその外径がフック部材20の内径未満となるように形成されており、フック部材20の内側に配置され、摺動(直線運動)する際にこのフック部材20の内周面により案内される(
図10B、
図13等参照)。ロッド部32は、その下端部分においてサイドカバー部33とねじ(皿キャップボルト等)39で締結され一体化している(
図10B、
図11等参照)。
【0039】
サイドカバー部33は、当該スライダー30の周囲部分を構成する部材からなる(
図14B等参照)。本実施形態では、メインフレーム14を囲繞するようにサイドカバー部33を設け、さらに、このサイドカバー部33の両側部分をその断面形状がチャネル形状となるように形成し、溝部分でメインフレーム14を挟み込むようにしている(
図9A、
図9B等参照)。このように形成されたサイドカバー部33は、メインフレーム14によって案内されながら、先端部31およびロッド部32とともに駆動軸DAに沿って摺動(直線運動)する(
図12等参照)。サイドカバー部33の周囲にはカバー50が設けられている。
【0040】
カバー50は、サイドカバー部33の周囲を覆うように機構部11に設けられた筒状の部材からなる(
図6A等参照)。本実施形態のカバー50は、スライダー30が本体部10に収まった引込状態(初期位置)のとき、当該スライダー30のうち先端部31を除く部分が隠れるように設けられている(
図7B等参照)。
【0041】
モータ60は、駆動機構70を介して可動部たるスライダー30を駆動(直線運動)させるための動力源として設けられている。本実施形態のモータ60は、本体部10中であって機構部11内の上方の位置に設けられている(
図6A等参照)。
【0042】
駆動機構70は、モータ60の動力を伝達して可動部たるスライダー30を駆動(直線運動)させるように構成された機構である。本実施形態の駆動機構70は、減速機71とボールねじ73を含む(
図6A等参照)。特に詳細は示していないが、減速機71は、モータ60の回転数を適度に落としてボールねじ73のねじ軸72に伝達するギア列などを含む。ねじ軸72は、駆動軸DAに沿って設けられていて、回転してスライダー30を駆動(直線運動)させる。
【0043】
制御装置(制御部)90は、モータ60を制御する装置として本体部10に内蔵されている。本実施形態の制御装置90は、モータ60と双方向通信可能に接続されて制御信号の送受信ができるようになっているほか、原点センサ80、トリガスイッチ122、モード操作・表示部92、バッテリー収容部13(に収容されるバッテリー66)のそれぞれとも接続されている(
図31参照)。また、制御装置90は、特に図示してはいないが、これらと通信するための通信回路やコンバータ回路、インバータ回路、さらには通信回路を制御するためのMPUなどを備えている。
【0044】
上述のごとく、本実施形態ではねじ軸72を駆動軸DAに沿って設けており、また、ねじ軸72の上方であって駆動軸DAの延長線上となる位置に減速機71を設けている。さらに、減速機71の上方であって駆動軸DAの延長線上となる位置にモータ60を設けている(
図6A等参照)。この結果、本実施形態の充電釘抜機1においては、モータ60と駆動機構70(減速機71、ボールねじ73とそのねじ軸72)とが同軸上に直列に配置された構成となっている。このような構成は、充電釘抜機1の低全高化を可能とした構成と相まって、取り回しや狙い易さを向上させることに寄与する。
【0045】
すなわち、第一に、フック部材20を従前のようにストロークさせるのではなく固定しておき、代わりにスライダー30をストロークさせることによってフック部材20を相対的に動かすこととした本実施形態のごとき充電釘抜機1においては、フック部材20をストロークさせるための空間を本体部10の内側に確保する必要がないことである。このような構成とした場合には、本体部10の内側に確保すべきであったフック部材のストロークに必要な内部空間に相当する長さL1のぶん(フック部材20のストローク量とほぼ等しい)、使用状態(ただし、スライダー30が本体部10に引き込まれて初期位置にある引込状態)における充電釘抜機1の全高(駆動軸DAに沿った機構部11の長さ)を低くすることつまり低全高化が可能になるということである(
図15、
図16等参照。
図15(B)においては符号1’で従前の充電釘抜機を比較対象として示している)。なお、初期位置(引込状態)における機構部11の高さ(駆動軸DAに沿った、先端部31から機構部11の上部までの長さ)を符号L2で示している(
図16参照)。
【0046】
第二に、上記のごとく低全高化を可能としたことで、モータ60を駆動軸DA上(またはその延長線上)に配置しやすくなったということである。たとえば、従前は全高が高くなりすぎるのを避けるためにはハンドグリップ12内にオフセットさせて配置せざるを得なかったモータ60を、低全高化を実現した本実施形態においては駆動軸DA上(またはその延長線上)に配置することができる。こうした場合には、ハンドグリップ12が機構部11やフック22により接近した構成とすることが可能となる。このようにハンドグリップ12が機構部11やフック22に接近していると、現実の釘抜き作業における取り回しや狙い易さ、とくにフック22を釘頭Phに引っ掛けるといった作業をより確実に実行しやすくさせることに寄与する。しかも、ねじ軸72に作用する力は、釘Pの位置や刺さっている向きに関係なくねじ軸72の真下に(同軸上)に作用するので、フック22を駆動軸DAの真下に設ける必要がなくなり、「釘が狙いにくい」という課題を解決することにも寄与する。
【0047】
また、モータ60、減速機71、ねじ軸72を直線上に近接して配置することは、それらの間に配置していた従前の動力伝達機構(たとえば傘歯車など)を省略することにつながり、そのぶんよりシンプルな構造とし、小型化・軽量化を図ることに資する。また、このような充電釘抜機1は、狭い所でも使用しやすくなり便宜である。
【0048】
また、釘足Ptを打撃して釘Pを抜く釘抜き用の工具を使用した場合、勢いよく打撃するので抜けた釘Pが散らばってしまうことがあるが、上記のごとき本実施形態の充電釘抜機1によれば散らばることなく釘抜きを行うこと可能である。
【0049】
また、本実施形態の充電釘抜機1のごとく釘抜き動作に伴い本体部10自体がストロークして動く(つまり、フック22とともに、コンクリートパネルQや桟木Rなどから離れるように動作する)構造である場合(
図7A~
図8B等参照)、ユーザーにとって釘抜きを体感しやすいという利点もある。すなわち、本体部内でフックがスライド動作する従前のごとき構造であれば当該充電釘抜機を手で持ちながら作業するユーザーは釘抜き動作を目で見ることか動作音を耳で聞くことでしか確認できないのに対し、本実施形態の充電釘抜機1によれば釘抜き動作に伴い本体部10自体がストロークする(上昇する)という動きを直接的に体感しながら釘抜きの動作が行われ完了したということを実感しやすい。
【0050】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態として、充電釘抜機1のフック部材20およびフック22のさらなる特徴を説明する。なお、充電釘抜機1のその他の構成であって上記第1実施形態におけるものと共通する部分については説明を繰り返さない。
【0051】
<偏荷重による影響を抑止する構造>
上記のごとき充電釘抜機1を構成するにあたっては、駆動軸に作用する「偏荷重」の問題にも配慮することが好ましい。フック22’を移動させることで釘Pを引き抜く従前のごとき構造の場合、釘PがコンクリートパネルQや桟木Rにまっすぐ貫入していれば当該釘Pを引き抜くとき駆動軸に作用する力は軸方向以外に作用しないので偏った荷重(偏荷重)は作用しないが(
図17A、
図17B参照)、実際には釘Pが斜めに貫入していることが多く(
図17C参照)、当該釘Pを引き抜くときには、釘の引抜き抵抗が駆動軸からズレた位置で発生し、これに起因して駆動軸に横方向の荷重が偏荷重として作用する(
図18A,
図18B参照)。すなわち、釘抜き時の抵抗は、打込部材たるコンクリートパネルQや桟木Rと釘Pとの摩擦抵抗部分、より具体的には当該釘Pのうち桟木Rなどに貫入している部分(
図18Bにおいて細かいドットが付されている部位)において生じるため、上記のように斜めに打込まれた釘Pに対して偏荷重が作用するのは、このような抵抗を生じさせる部位(釘Pのうち貫入している部位)が駆動軸に対してズレている(オフセットされている)ことが理由であると説明することができる。偏荷重が作用するとねじ軸72’の傾きが発生し、釘Pの引抜き量が多くなると傾きも多くなる結果、ねじ軸72’の軸受部分に作用する荷重により偏摩耗が発生し、耐久性が低下する、といった影響が生じうる。このように、駆動軸と釘の位置がズレることで偏荷重が生じるので、本実施形態のごとくフック22が駆動軸DAからオフセットした位置に配置されていれば尚更となる可能性がある。
こうした偏荷重の問題に配慮し、その影響を極力抑止・排除するために採りうる構成のひとつとして、従来機構では、釘頭を引っ掛けるフック位置を駆動軸上に配置することによって偏荷重が発生しないようにしたものがある。ところが、このような従来機構のごとき配置は、耐久性向上に有効であっても、釘の先端が見にくい(狙いにくい)という点で不利となる。また、斜めに貫入した釘を抜く場合に生じる偏荷重を回避することはできない。
この点、種々の課題を総合的に勘案した本実施形態では、釘の先端が見やすく(狙いやすく)、なおかつ、偏荷重の影響を受けにくい剛な構造を採用している。
すなわち、斜めや横方向の偏荷重が作用するフックを、駆動力を発生するためのねじ軸ではなく、高い剛性を有するメインフレーム14で支持するようにしている。また、可動部であるスライダー30の摺動をガイドするガイド部材を設け、めねじ32bの部分に偏荷重が作用しないようにしている。
これにより、フック22を駆動軸DAの真下(延長線上)に設ける必要がなくなるので、フック22の配置をオフセットさせて「釘が狙いにくい」という課題を解決することにつながる。
【0052】
<フックのオフセット配置>
フック部材20のフック22は、駆動軸DAからオフセットした位置に配置されている(
図10A等参照)。本実施形態のフック部材20のフック22は、駆動軸DAと垂直な方向に突出するように形成されていて、使用状態のとき水平方向を向いている(
図6A等参照)。また、フック22は、少なくともその一部がカバー50の外側にあって視認できるように設けられている(
図5等参照)。上記のごとき構成とすることの利点は以下のとおりである。すなわち、従前の充電釘抜機には、ボールねじ等のねじ軸72’の直下となる位置(別言すれば、駆動軸DAの延長線上)にフック22’が配置されているものがあるが(
図30A、
図30B参照)、これだとフック22’が見づらくその位置が把握しづらいため、釘頭Phにフック22’を掛ける作業が行い難いことある。この点、本実施形態のごとくフック22をオフセットさせた充電釘抜機1によれば、駆動軸DAからオフセットしているぶん、ユーザーにとって当該フック22が見やすく、釘頭Phにフック22を掛けるという作業が行いやすい(
図7A、
図7B等参照)。
【0053】
<スライダー先端部の突出脚部>
また、本実施形態では、上記のごとくフック22をオフセット配置したことに伴い、スライダー30とくにその先端部31をフック22のオフセット配置に適した構造としている。すなわち、
(1) スライダー30の先端部31に、駆動軸DAと垂直な方向に突出する突出脚部35を設けている(
図10A等参照)。突出脚部35は、オフセット配置されたフック22で釘Pを引き抜く際に作用しうる外力(モーメント)の影響を排除するに十分な大きさと形状に形成されている。好適な一例として、本実施形態では、フック22に比して十分に突出した大きさであって(
図19A等参照)、左右に対称配置された形状の一対の突出脚部35を先端部31に設けている(
図5等参照)。駆動軸DAからフック22先端までの長さはL4であり、突出脚部35は、さらにそれよりも長さL5ぶん前方にある(
図19B参照)。一対の突出脚部35は、それらの間にフック部材20のフック22が位置できるように、当該フック22よりも広い間隔で配置あれている(
図7B等参照)。
(2) スライダー30の先端部31にはコンクリートパネルQや桟木Rなどと当接する平坦面31fが形成されている(
図19A等参照)。この平坦面31fは、少なくとも、オフセット配置されたフック22で釘Pを引き抜く際に作用しうる外力(モーメント)の影響を排除するに十分な大きさないしは形状とされている。本実施形態では、フック22のオフセット量Los(本明細書では、フック22に掛けられた釘Pが真っすぐであると想定したときの仮想中心軸Pcと駆動軸DAとの距離をいう)を超えてさらに前方まで延びる平坦面31fを形成し(別言すれば、駆動軸DAから平坦面31fの前方端部までの長さL3がオフセット量Losに比して十分に長い)、コンクリートパネルQや桟木Rなどとの接触領域(接地面積)を広くしている(
図19B等参照)。上述した突出脚部35の下面を全面的にまたはその大部分を平坦としてもよいことはいうまでもない。
【0054】
<フック等の回転構造>
上記のごとくフック22をオフセット配置し、駆動軸DAと垂直な方向に突出させた構造とした場合、当該フック22を駆動軸DAまわりに回転(旋回)可能とすることが好適である。こうすることで、フック22が常に一方向を向いている場合におけるような、常に決まった向きで充電釘抜機1を使用せざるを得ないといった作業上の制約を減少させ、扱いやすさをさらに向上させることが可能となる(
図20A、
図20B等参照)。本実施形態では、フック部材20の下方先端部分に回転自在部21とOリング26を設け、この回転自在部21に形成されたフック22の向きを変えることができるようにしている(
図21A、
図21B、
図22A等参照)。回転自在部21の具体的な構成は特に限定されない。一例として、本実施形態では、フック部材20の筒状部(符号23で示す)の下方先端部分に、該筒状部23よりも大径である環状の回転自在部21を設け、この回転自在部21を駆動軸DAまわりに手動で回転させることによってフック22の向きを変えることができるようにしている(
図22A、
図23B等参照)。
【0055】
Oリング26は、回転自在部21と筒状部23との間に設けられているたとえばゴム製の環状部材である(
図23B等参照)。このOリング26は回転自在部21の駆動軸DAまわりの回転動作に所定の抵抗を付与する抵抗体として機能し、回転自在部21の相対回転を許容しつつ、フック22の向きを変えた後に当該回転自在部21が不意に回転してしまうのを抑止する。
【0056】
本実施形態の充電釘抜機1では、フック22ばかりでなく、スライダー30の突出脚部35の向きも変えられるように構成されている。たとえば、本実施形態では、スライダー30のロッド部32と先端部31を分離し、これらの間に相対回転を可能とする回転自在部34さらにはOリング38を設けることで、先端部31、サイドカバー部33および突出脚部35が一体となってロッド部32に対して相対的に回転(旋回)することができる構成としている(
図24B等参照)。回転自在部34は、たとえば先端部31をロッド部32の下方端部に回転可能に取り付けるねじなどで構成することができる(
図24B等参照)。
【0057】
Oリング38は、ロッド部32と先端部31との間に設けられているたとえばゴム製の環状部材である(
図24B等参照)。このOリング38は先端部31などの駆動軸DAまわりの回転動作に所定の抵抗を付与する抵抗体として機能し、先端部31などの相対回転を許容しつつ、突出脚部35の向きを変えた後に当該突出脚部35や先端部31が不意に回転してしまうのを抑止する。
【0058】
また、本実施形態では、スライダー30が本体部10に引き込まれた初期位置にある状態で、突出脚部35とフック22とが駆動軸DAの軸方向に関して少なくとも一部が互いに重なり合うようにこれらを形成している(
図23B等参照)。これは、別言すれば、引込状態(初期位置)において突出脚部35を回転させれば回転途中でフック22に干渉するということであるから、本実施形態の充電釘抜機1においては、引込状態(初期位置)において突出脚部35を回転させればフック22をも同量回転させることができる。たとえば、釘Pの位置や態様などに応じてフック22の向きを変えたい場合、外側にある突出脚部35を回せばフック22とともに同時に向きを変えることができるため簡便である(
図22A、
図22B等参照)。また、突出脚部35とフック22とが常に同じ方向を向いているということは、釘Pを引き抜く際、常にフック22の真下となる位置に突出脚部35があるということでもある(
図24A、
図24B等参照)。したがって、フック22をどの方向に向けようとも、オフセット配置されたフック22で釘Pを引き抜く際に作用しうる外力(モーメント)を真下の突出脚部35で受け、その影響を排除することができる。
【0059】
<フックと突出脚部の向きを戻す構造>
さらに、本実施形態では、フック22および突出脚部35の向きを変えて釘抜き作業をしたとしても、作業後、フック22および突出脚部35の向きが元に戻る(本実施形態であれば、前方を向く)機構を作用している(
図22A、
図23A等参照)。このような機構は、たとえば、スライダー30が、本体部10からもっとも突出して釘Pを抜いた状態(突出状態)から(
図24B、
図24C等参照)、引込状態となる初期位置(
図23B等参照)に戻るまでの間、スライダー30さらにはフック部材20の回転自在部21を案内しながらフック22および突出脚部35が前方を向くように所定量回転させるガイド部材を含む装置(たとえば、螺旋状のガイドと、該ガイドに沿って案内される突起との組み合わせからなり、スライダー30が初期位置に戻るときの引き上げ摺動動作に伴い、スライダー30の突出脚部35やフック部材20の回転自在部21の周方向位置を規定する装置)などで構成することができる。
【0060】
<部材をクランプする構造>
上記のごときフック22や突出脚部35を備えた充電釘抜機1は、主用途はもちろん釘抜きであるが、駆動軸DAに対して垂直に配置される部材をクランプするクランプ装置として利用することもできる。たとえば、コンクリートパネルQの桟木同士をクランプすることで2つのコンクリートパネルQを寄せ、隙間なくコンクリートパネルQを接触させる場合、これら桟木Rどうしを、フック22の下面と突出脚部35の上面とで挟み込むことができる(
図29A、
図29B参照)。このような用途に用いられる場合のフック22や突出脚部35は、クランプ対象の部材を挟み込みその状態を保持する保持部として機能するということができる。
【0061】
本実施形態の充電釘抜機1によれば、単一の電動工具でありながら釘抜き以外にも実用的な使い方を可能ならしめる。これは、そもそも作業ごとに異なる工具を揃えるのはコストがかかり大変である考えられがちな現場の潜在的な需要に対応することを可能とするものでもある。
【0062】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態として、コンクリートパネルQや桟木Rなどの解体作業用途にも利用可能として利便性をさらに向上させた充電釘抜機1について説明する。この充電釘抜機1においては、スライダー30の一部に先細り形状の尖状部が形成されていて、スライダー30をハンマーなどで打撃し該尖状部を打ち込むことによってコンクリートパネルQや桟木Rといった板材ないし枠材などの分離作業などが簡単に行えるようになっている(
図25A等参照)。
【0063】
<板材などの解体作業用途に適した構造>
本実施形態では、スライダー30の突出脚部35の一部に先細り状のテーパ部36を形成している(
図25A等参照)。テーパ部36は、駆動軸DAから離間する方向を向くように楔状に形成された先細り部分であり、たとえば本実施形態では、当該充電釘抜機1の初期位置の引込状態で前方を向く部分に、駆動軸DAに垂直な方向を向くように形成されている(
図25A等参照)。テーパ部36の形状は先細り状あればとくに限定されることはなく、本実施形態のごとく上面36tと下面36bの両方を傾斜面としてもよいし(
図25C等参照)、それらの一方のみを傾斜面とし、他方の面は使用状態において水平となる面としてもよい。また、上面36tや下面36bは平坦面であってもよいし、緩やかに湾曲する曲面であってもよい。要は、スライダー30を打撃してテーパ部36を打ち込んだ際、コンクリートパネルQや桟木Rといった板材ないしは枠材を分離させる力を作用させる楔形状になっていればよい。
【0064】
本実施形態では、テーパ部36を、左右一対の突出脚部35の先方端部に設け、駆動軸DAを含む仮想平面(
図4中に符号VPで示す)を中心として対称形状に形成している。
また、左右のテーパ部36を離間させ、その間にフック部材20のフックが収まるようにしている(
図7B等参照)。
【0065】
スライダー30のうち、駆動軸DAを基準とした場合にテーパ部36とは反対となる側(使用状態における後方側)に被打撃部37が形成されている(
図25B等参照)。本実施形態では、被打撃部37を、駆動軸DAを基準とした場合にテーパ部36とは反対となる側に向け突出した形状とすることで、ハンマー300で打撃すべき箇所をユーザーにわかりやすく示すとともに、打撃の際にハンマー300が充電釘抜機1のカバー50などを打撃してしまうのを防ぐようにしている(
図26等参照)。とくに後者の点を勘案すると、カバー50の表面よりも被打撃部37が十分に突出するようにスライダー30を形成してもよい(
図25C等参照)。
【0066】
スライダー30のうち少なくとも打撃作業に供される部分(テーパ部36、被打撃部37を含む部分)は、打撃に耐えうる剛性を有する材料で構成されている。当該部分は、例えば鋳物など金属製であってもよい。あるいは、当該部分を、着脱可能なアタッチメント(
図25Bにおいて符号40で示す)で構成してもよい。テーパ部36や被打撃部37を備える着脱可能なアタッチメント40を採用した場合には、テーパ部36や被打撃部37が損傷したとしても簡単に交換することが可能となる。アタッチメント40の全体を鋳物など金属製としてもよい。アタッチメント40は、スライダー30のロッド部32などに対し、駆動軸DAまわりに回転自在に設けられていてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、上記のごとくスライダー30に形成されるテーパ部36を、その尖端36aがフック部材20のフック22よりも外側に位置する(別言すれば、駆動軸DAに対してより遠い位置となる)大きさとしたうえで、当該テーパ部36のアウトラインがフック22のアウトラインの外側にレイアウトされた形状(別言すれば、側面からみてフック22が突出脚部35ないしはそのテーパ部36の投影面内に隠れる形状)となるようにしている(
図25C等参照)。このように、テーパ部36をフック22よりも大きく形成し、かつ前方の位置させることで、たとえばコンクリートパネルQと桟木Rとの隙間にテーパ部36を侵入させる際、フック22が抵抗となるのを回避することができる。
【0068】
上記のごとき充電釘抜機1によれば、テーパ部36をたとえばコンクリートパネルQと桟木Rとの隙間に差し込み、被打撃部37をハンマー300で叩くことで、あたかもバールを利用している場合と同じように、打撃力を利用してこれらコンクリートパネルQと桟木Rとの隙間を広げることができる(
図26等参照)。このようにしてフック22や突出脚部35を深く差し込んだ状態でスライダー30を摺動させれば、これらコンクリートパネルQと桟木Rとの隙間をさらに広げて分離しやすい状態とすることができる(
図27A、
図27B、
図27C等参照)。また、釘頭PhがコンクリートパネルQや桟木Rなどから少し浮いてはいるが固く貫入していてフック22を釘頭Phに引っ掛けることが難しいという状況下であれば、その状態で被打撃部37をハンマー300で叩きフック部材20を少しずつ押し進め、フック22を釘頭Phに十分に係合させた状態とする、というような用い方をすることが可能である。
【0069】
<釘を板材などから浮かせるための用い方>
ここまで説明したごとき構成の充電釘抜機1を、コンクリートパネルQや桟木Rといった板材ないしは枠材などに刺さった状態の釘Pを浮かせるために使うという用い方もできる(
図28A等参照)。
【0070】
型枠のパネル作業で打たれた釘Pはコンクリートが固まった後に行う解体の事を考え、釘頭Phを浮かせた状態で打たれていることが多いが、それでも、浮き幅が十分でなくフック22を引っ掛けづらい場合はあり得るので、このような釘Pをさらに浮かせた状態としておくことが便宜である。この際には、充電釘抜機1を使って釘Pをさらに浮かせた状態とすることができる。具体的には、たとえば桟木から分離したコンクリートパネルQに釘Pが刺さったままであるような場合(
図28E(a)参照)、まず、左右一対のフック22の間にあらかじめ押下げ具400を設けておき、スライダー30を摺動させた突出状態で突出脚部35をコンクリートパネルQの表面(釘頭Phがある面)に宛がい、押下げ具400で釘足Ptを押し下げる(
図28A、
図28B、
図28C、
図28D、
図28E(b)参照)。釘頭PhがコンクリートパネルQの表面から浮いたところで(
図28E(c)参照)、充電釘抜機1で当該釘Pを抜くこととすれば(
図28E(d)参照)、円滑かつ効率的な作業が可能となる場合がある。押下げ具400は釘足Ptの先を押し下げることができるものであればよく、フック22に着脱可能な治具を利用するなどすることができる。
【0071】
本実施形態の充電釘抜機1によれば、単一の電動工具でありながら釘抜き以外にも実用的な使い方を可能ならしめる。これは、そもそも作業ごとに異なる工具を揃えるのはコストがかかり大変であると考えられがちな現場の潜在的な需要に対応することを可能とするものでもある。
【0072】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態として、充電釘抜機1の各種動作とその制御などについて説明する(
図31、
図32A等参照)。
【0073】
<制御装置>
制御装置90は、外部から入力されるトリガ信号に応じてモータ(駆動源)60によりスライダー(摺動部材)30に所定の動作をさせる。
【0074】
<原点センサ>
原点センサ80は、スライダー30が初期位置にあることを検出する手段として設けられている。原点センサ80は、スライダー30の駆動軸DA上における位置を検出する光センサなどであってもよい。あるいは、原点センサ80は、モータ60の回転量に基づきスライダー30の位置ないしは移動量を把握するものであってもよい。はたまた、原点センサ80は、スライダー30と接触したときに、スライダー30が所定の位置にあることを検出するように配置されたスイッチで構成されていてもよい。
【0075】
<作動モード>
本実施形態の充電釘抜機1には、作業対象に対する作業の内容に応じてスライダー30を作動させるために選択可能な複数の作動モードが設定されている。作動モードは、釘抜きの際の充電釘抜機1の動き方、あるいは釘抜き以外の用途の際の態様や所望する動作に対応してユーザーが選択できるように設定されている各種作動の仕方である。本実施形態の充電釘抜機1では、モードについて操作するためのモード操作・表示部(
図31において符号92で示す)を操作することでユーザーが選択できる「釘抜きモード」、「釘抜き1サイクルモード」、さらには「クランプモード」が設定されている。
【0076】
<釘抜きの動作フロー>
充電釘抜機1において釘抜き動作の制御をする場合の動作フローの一例を説明する(
図34、
図35参照)。
【0077】
主電源オン(ステップSP301)の後、作動モードを選択する(ステップSP303)。釘抜き用途での作動モードとしては、釘抜きの際の充電釘抜機1の動き方をこれから行う釘抜きの態様や所望する動作に対応してユーザーが選択できるように、モード選択スイッチ(図示省略)を操作することでユーザーが選択できる「釘抜きモード」と「釘抜き1サイクルモード」とが設定されている。
【0078】
<釘抜きの動作フロー(釘抜きモード)>
ステップSP303にて「釘抜きモード」が選択された場合は、まず初期位置駆動の動作が行われる(ステップSP311)。これは、上述したごとくスライダー30の駆動部位置を検出し、当該スライダー30の位置を所定の初期位置へ移動させるための一連の自動的な動作のことである。モードの変更が指示された場合、スライダー30は、モード毎に異なる初期位置に移動するが、モード変更が無い場合はこのステップをスキップしても構わない。
【0079】
初期位置駆動の動作後(ステップSP311)、動作量の設定を反映する(ステップSP312)。このステップは、これから行われる釘抜き動作時のスライダー30の動作量(摺動長さ)を適宜設定するためのもので、たとえばユーザーが操作ないしは入力可能なスイッチ(図示省略)を操作等することで切り替えられるように設けられていてもよい。スイッチを採用する場合における当該スイッチはタクトスイッチやダイヤルスイッチなど、なんでも構わない。とくに詳しい説明は省略するが、動作量を自動的に設定する「オート」や標準的な動作量を設定する「標準」などが選択可能となっていてもよい。スライダー30の動作量(摺動長さ)は、モータ(たとえばステッピングモータ)60の回転量に基づいて制御されてもよい。この場合、モータ60の回転量を制御装置にあらかじめ設定していてもよい。
【0080】
トリガOFF信号が入力される間、SP303、SP311、SP312、SP313が継続して実施され、トリガONとなったら、釘抜き動作を開始する(ステップSP314)。
【0081】
釘抜き動作のステップでは、モータ60を正転駆動してスライダー30を本体部10から突出する方向(つまり、上述した釘引き抜き動作方向)に移動させる(ステップSP314)。スライダー30の動作量が、あらかじめ設定された動作量(ステップSP312)に到達したら(ステップSP315)、モータ60を止めてスライダー30の駆動を停止する(ステップSP316)。スライダー30の駆動を停止したら、トリガOFFとなるまで待機する(ステップSP317)。すなわち、トリガスイッチ122がユーザーの指で引かれたままの状態(トリガONの状態)から、指が離れて(あるいはスイッチを引いていた力が緩んで)トリガスイッチ122が元に戻った状態(トリガOFFの状態)となるまで待機し、トリガ信号がオフとなったら(つまりトリガOFFの状態となったら)、モータ60を逆転させスライダー30を初期位置に戻す方向(本体部10に引き込まれる方向)に移動させる(ステップSP318)。スライダー30がリターンして初期位置に到達したら(ステップSP319)、モータ60とスライダー30の駆動を停止し(ステップSP320)、一連の動作(釘抜きモード)を終了する。一連の動作終了後はステップSP303に戻り、次なる釘抜き動作に備えるとともに、入力に応じて上記と同様の動作をする(
図34参照)。上記のように、釘抜きモードでは、トリガ信号がオンとなったときスライダー30を予め設定した所定の長さだけ摺動させるなど、外部から入力されるトリガ信号に応じてスライダー30に所定の動作をさせる。
【0082】
<釘抜きの動作フロー(釘抜き1サイクルモード)>
ステップSP303にて「釘抜き1サイクルモード」が選択された場合の動作フローを説明する(
図35等参照)。「釘抜き1サイクルモード」では、初期位置駆動の動作を行い(ステップSP321)、その後、動作量設定(ステップSP322)、トリガON待機(ステップSP323)、釘抜き動作(ステップSP324)、設定動作量到達(ステップSP325)、駆動停止(ステップSP326)の動作を順次行う(
図35参照)。ここまでの各動作は、上述の「釘抜きモード」におけるステップSP311~ステップSP316におけるものと同様である(
図34、
図35参照)。
【0083】
この後、釘抜き1サイクルモードでは、トリガスイッチ122の状態(トリガONかトリガOFFか)にかかわらずモータ60を逆転させスライダー30を初期位置に戻す方向に移動させることとし(ステップSP327)、突出させた状態には保持しない。スライダー30がリターンして初期位置に到達したら(ステップSP328)、モータ60とスライダー30の駆動を停止する(ステップSP329)。駆動停止後、トリガOFFとなるまで待機し(ステップSP330)、トリガスイッチ122がユーザーの指で引かれたままの状態(トリガONの状態)から元に戻った状態(トリガOFFの状態)となったらステップSP303に戻り、次なる釘抜き動作に備える(
図34、
図35参照)。上記のように、釘抜き1サイクルモードでは、トリガ信号がオンとなったときスライダー30を予め設定した所定の長さだけ摺動させ、その後、初期位置に戻す動作をさせる。
【0084】
<釘抜き+クランプの動作フロー>
充電釘抜機1により、釘抜き動作に加えクランプ動作をも行えるようにしてもよい。このように釘抜き動作とクランプ動作の両方を行えるようにした場合の動作フローの一例を説明する(
図36A~
図36C参照)。
【0085】
主電源オン(ステップSP501)の後、「釘抜きモード」、「釘抜き1サイクルモード」、「クランプモード」の中からいずれかの作動モードを選択する(ステップSP503)。「釘抜きモード」が選択された場合の動作フロー(ステップSP511~SP520、
図36A参照)は上記した「釘抜きモード」(
図34参照)におけるものと同様であり、「釘抜き1サイクルモード」が選択された場合の動作フロー(ステップSP521~SP530、
図36B参照)は上記した「釘抜き1サイクルモード」(
図35参照)におけるものと同様であるので、ここでは説明しない。「クランプモード」が選択された場合の動作フローの一例を以下に説明する(
図36C参照)。
【0086】
<クランプの動作フロー(クランプモード)>
ステップSP503にて「クランプモード」が選択された場合は、モータ60を正転駆動させてスライダー30を本体部10からもっとも突出させた位置(以下、「最大伸ばし位置」ともいう)まで駆動し(ステップSP531)、トリガスイッチ122が引かれて「トリガON」信号が発信されるまで待機する(ステップSP532)。トリガONとなったら、モータ60を逆転させてクランプ動作(コンクリートパネルQの桟木同士などといった作業対象をフック22と突出脚部35とで挟み込む動作)を開始する(ステップSP533)。クランプ動作の開始後、スライダー30が初期位置に到達するよりも前に所定の負荷(クランプ負荷)が発生したら(ステップSP534にてNO、ステップSP535にてYES)、その時点でモータ60およびスライダー30の駆動を停止し(ステップSP536)、作業対象をクランプした状態を維持したまま、トリガOFFとなるまで待機する(ステップSP537)。すなわち、トリガスイッチ122がユーザーの指で引かれたままの状態(トリガONの状態)から、指が離れて(あるいはスイッチを引いていた力が緩んで)トリガスイッチ122が元に戻った状態(トリガOFFの状態)となるまで待機し、トリガOFFの状態となったら、トリガスイッチ122が引かれてトリガONの状態となるまで待機する(ステップSP538)。ここでトリガONとなったら、モータ60を再び正転させてスライダー30を最大伸ばし位置に戻すように駆動する(ステップSP540)。スライダー30が最大伸ばし位置に到達したら(ステップSP541)、モータ60およびスライダー30の駆動を停止する(ステップSP542)。その後は、トリガOFFの状態となるまで待機し(ステップSP543)、トリガOFFの状態となったら、作動モードを選択するステップに戻る(ステップSP503)。
【0087】
また、ステップSP534においてスライダー30が初期位置に到達してしまったら(ステップSP534にてYES)、スライダー30が最大伸ばし位置から初期位置まで移動する間に作業対象などがクランプされなかったものと判断し、ステップSP539に遷移して駆動停止する(
図36C参照)。
【0088】
なお、スライダー30の動作中に当該スライダー30やモータ60に作用する負荷は、モータ60の電流値に基づいて検出することができる。ここで、クランプモード中においてモータ60を逆転駆動したときの当該モータ60の電流波形の一例を参考までに示しておく(
図37参照)。作業対象をクランプしたときの電流値は、釘抜きモード中においてモータ60を逆転駆動するとき(具体的には、釘抜き動作後、スライダー30を初期位置に戻す(ステップSP518)とき(
図36A参照))の電流値よりも大きい。したがって、釘抜きモードにおける逆転駆動中の閾値電流C1が設定されている場合に、クランプモードにおける逆転駆動中の閾値電流として上記電流C1よりも大きい値C2を設定しておくことで、当該閾値電流C2に基づいてクランプ動作が完了したことを検出することが可能である(
図37参照)。
【0089】
<初期位置検出(センサレスの場合)の動作フロー>
次に、充電釘抜機1におけるトリガ信号に合わせてスライダー30などを初期位置に位置させる動作フローを説明する。ここでは、センサレス、つまりスライダー30の位置を検出するセンサがない構成の充電釘抜機1における、部材挟み込みの余地なしのパターン1、部材挟み込みの余地がありつつ正常終了するパターン2、部材挟み込みが起きて異常終了となるパターン3、の3種類のパターンについて説明する(
図32A~
図32D参照)。なお、3種類のパターン1~3の各動作を表すフローは
図32Aに示すとおりである。また、
図32B~
図32Dにおいては、スライダー30のいずれかの箇所を「稼働部」とし、当該部分を白抜き三角の記号で示しつつスライダー30の動きとその量を示している。なお、充電釘抜機1の本体部10に対しスライダー30が(充電釘抜機1の下方に向け)摺動する動き(
図7B等参照)は、
図32B~
図32Dにおいては図中向かって右方向(釘引き抜き動作方向)への動きとして表されていることに留意されたい。また、フロー中の動作(
図32A参照)と、各パターンでの動作(
図32B~
図32D参照)とで関連のある部分には図中、括弧を付して同じ番号を記している。
【0090】
<初期位置検出(センサレスの場合)の動作フロー(パターン1)>
充電釘抜機1において、主電源がオンになると(ステップSP101)、それを初回トリガとしてスライダー30の初期位置検出の動作フローが開始する(
図32A、
図32B参照)。このようにトリガ信号がオンとなってフローが開始したら、まず、モータ60を逆転駆動させ(ステップSP110)、スライダー30がそれ以上は摺動できない位置(以下、「逆転側限界位置」という)に突き当たった状態で高負荷(所定値を超える高い負荷)が検出されるかどうかを判断する(ステップSP111)。高負荷が検出された場合には(ステップSP111でYES)、モータ60を正転駆動し(ステップSP141)、スライダー30が初期位置出し規定量X
0に相当する所定量を移動したかどうか判断する(ステップSP142)。
【0091】
ここで、「初期位置出し規定量X
0」とは、スライダー30が動作当初に位置するべき「目標初期位置W
0」と上記の「逆転側限界位置W
1」との差分に相当する量を指す(
図32B参照)。本実施形態では、スライダー30をいったん逆転側限界位置W
1まで引き戻し、その後、初期位置出し規定量X
0に相当する、あらかじめ設定した所定の長さのぶん摺動させることで目標初期位置W
0にスライダー30を位置させる(スライダー30の位置出しをする)という手法を採用している。具体的には、スライダー30が「逆転側限界位置W
1」から「初期位置出し規定量X
0」移動したことを検出したら(ステップSP142にてYES)、スライダー30が「目標初期位置W
0」に到達したとしてモータ60を停止し(ステップSP143)、一連の初期位置検出動作を完了して(ステップSP144)、通常の制御(釘抜きなどの動作に伴う制御)に移行する(ステップSP150)。
【0092】
<初期位置検出(センサレスの場合)の動作フロー(パターン2)>
以下に示すパターン2では、初期位置検出に伴うスライダー30の動作途中に何らかの部材の挟み込みの余地がある場合の動作フローを説明する(
図32A、
図32C等参照)。
【0093】
ステップSP101~ステップSP111に至るまでは上記のパターン1と同様である(
図32A参照)。ステップSP111において、「逆転側限界位置W
1に突き当たった状態で高負荷が検出」されない場合(ステップSP111にてNO)、稼働部が規定量X
1移動したかどうか(本体部10に入り込んだかどうか)判断する(ステップSP121)。ここでいう規定量X
1は、上述の初期位置出し規定量X
0とは異なる。稼働部の移動量がこの規定量X
1に達するまではステップSP111に戻るフローを繰り返す(ステップSP121にてNO)。稼働部の移動量が規定量X
1に達したら(ステップSP121にてYES)、モータ60を正転させ(ステップSP122)、スライダー30を本体部10から突出する方向に移動させて、正転側限界位置W
2で高負荷が検出されるかどうか判断する(ステップSP123)。ここでいう正転側限界位置W
2は、スライダー30が突出する方向にそれ以上は摺動できない位置であり(
図32C参照)、スライダー30のストローク可能幅の終端である。ここでは、所定値を超える高負荷が検出されるまで待ち、検出されたらスライダー30が正転側限界位置W
2に到達したと判断してステップSP124に進む(
図32A参照)。
【0094】
ステップSP124では、モータ60を逆転させ、スライダー30を本体部10に引き込まれる方向に移動させる。その後、逆転側限界位置W1で高負荷が検出されるかどうか判断する(ステップSP125)。ここでは、所定値を超える高負荷が検出されるまで待ち、検出されたらスライダー30が逆転側限界位置W1に到達したと判断する。
【0095】
続いて、スライダー30が異常防止規定量X
ap以上、移動したかどうか判断する(ステップSP126)。異常防止規定量X
apは、スライダー30が移動する(本実施形態の場合であれば、正転側限界位置W
2から逆転側限界位置W
1まで移動する)にあたり、その途中でスライダー30が何かに引っ掛かったり異物を挟み込んだりといった異常が生じなかったと判定するための指標として設定されている量であり、たとえばスライダー30のストローク可能幅のうちの所定割合を占める量として設定されている(
図32C参照)。このステップSP126でスライダー30が異常防止規定量X
ap以上移動した場合には、ここまでの一連の動作において異常は確認されなかったと判定し、上述のステップSP141に進む。ステップSP141以降は、上述したパターン1と同じ動作を行う(ステップSP141~ステップSP144、ステップSP150)。一方、ステップSP126でスライダー30が異常防止規定量X
ap以上移動しなかった場合には、ステップSP131に進む(
図32A参照)。ステップSP131については下記のパターン3において説明する。
【0096】
<初期位置検出(センサレスの場合)の動作フロー(パターン3)>
以下に示すパターン3では、主として、上述のステップSP126においてスライダー30が異常防止規定量X
ap以上移動しなかった場合のフローを説明する(
図32A、
図32D等参照)。このステップSP126においてスライダー30が異常防止規定量X
ap以上移動しなかった場合には、スライダー30が正転側限界位置W
2から逆転側限界位置W
1まで移動する途中で何かに引っ掛かったり異物を挟み込んだりといった事象により異常ロックが生じたと判定する(ステップSP131)。この場合には初期位置検出の動作フローを終了させる。また、異常ロックが生じたことを、充電釘抜機1の本体部10に設けられたランプを点灯させたりブザー音を鳴らしたりといった形でユーザーに知らしめてもよい。
【0097】
<初期位置検出(センサありの場合)の動作フロー>
続いて、充電釘抜機1におけるトリガ信号に合わせてスライダー30などを初期位置に位置させる動作フローの別の形態を説明する。以下では、位置検出センサを備える充電釘抜機1における、「稼働部位置<原点位置W
op」で検出を開始するパターン1、「原点位置W
op<稼働部位置」で検出を開始するパターン2、「稼働部位置=原点位置W
op」で検出を開始するパターン3、の3種類のパターンについて説明する(
図33A~
図33D参照)。なお、3種類のパターン1~3の各動作を表すフローは
図33Aに示すとおりである。「稼働部」は、上記実施形態にて説明したとおりである。また、ここでいう「原点位置」とは、スライダー30が初期位置にある状態のときに「稼働部」があるべき位置またはその範囲をいう。本実施形態では、検出センサとして、この稼働部が原点位置W
opにあるかどうかを検出するセンサ(例えば、
図31において符号80で示す原点センサ)を用い、位置検出する。検出センサとして用いられることが想定されるものの具体例は限定されないが、一例を挙げるとすれば、スライダー30に取り付けた磁石を検出する非接触のホールICがある。
【0098】
充電釘抜機1において、主電源がオンになると(ステップSP201)、それを初回トリガとしてスライダー30の初期位置検出の動作フローが開始する(
図33A、
図33B参照)。このようにトリガ信号がオンとなってフローが開始したら、原点センサの状態を確認し、原点センサがスライダー30の稼働部を検出した状態か、あるいは非検出の状態かを判断する(ステップSP203)。非検出の状態であれば、まずはパターン1にしたがって動作フローを進める(
図33A参照)。
【0099】
<初期位置検出(センサありの場合)の動作フロー(パターン1)>
パターン1では、まずモータ60を正転駆動し(ステップSP211)、スライダー30を本体部10から突出する方向(釘引き抜き動作方向)に移動させる(
図33A参照)。その後は原点センサが稼働部を検出するかどうか、待機する(ステップSP212)。検出した場合はステップSP213に進む。一方、非検出のままスライダー30の稼働部が規定量移動した場合は後述するパターン2の動作フローにしたがって進める。
【0100】
原点センサが稼働部を検出したら(ステップSP212)、こんどは原点センサが稼働部を非検出の状態となるまで待機する(ステップSP213)。スライダー30を移動して非検出の状態となったら、稼働部が原点位置W
opを通り過ぎてところまでスライダー30が移動したと判定し(
図33B参照)、この時点でモータ60を逆転させ(ステップSP214)、スライダー30を引き戻す方向に移動させる。その後、原点センサが稼働部を検出したら(ステップSP215)、原点位置W
opを通り過ぎた稼働部が再び原点位置W
opに戻ったと判定し、本実施形態では、モータ60をいったん停止させてから(ステップSP241)、その状態で一連の初期位置検出動作を完了して(ステップSP242)、通常の制御(釘抜きなどの動作に伴う制御)に移行する(ステップSP250)。
【0101】
<初期位置検出(センサありの場合)の動作フロー(パターン2)>
上記パターン1は、主電源オン(初回トリガ)の時点で「稼働部位置<原点位置W
op」(原点位置W
opのほうが稼働部よりも釘引き抜き動作方向に位置している)である場合に対応するパターンであったが、動作フローの途中で、初回トリガの時点でじつはこれとは逆の「原点位置W
op<稼働部位置」(稼働部のほうが原点位置W
opよりも釘引き抜き動作方向に位置している)であることが判明したら、以下に説明するパターン2の動作フローを進める(
図33A、
図33C参照)。
【0102】
すなわち、モータ正転駆動(ステップSP211)の後、原点センサが稼働部を検出するかどうか待機するステップSP212において、非検出のままスライダー30の稼働部が規定量X
2移動した場合は(
図33C参照)、モータ60を逆転させ(ステップSP222)、スライダー30を引き戻す方向に移動させる。その後、原点センサが稼働部を検出したら(ステップSP223)、もともと「原点位置W
op<稼働部位置」であった稼働部が原点位置W
opに位置したと判定し、モータ60を停止させてから(ステップSP241)、一連の初期位置検出動作を完了して(ステップSP242)、通常の制御に移行する(ステップSP250)。
【0103】
<初期位置検出(センサありの場合)の動作フロー(パターン3)>
主電源オン(ステップSP201)の後、原点センサがスライダー30の稼働部を検出した状態のとき(「稼働部位置=原点位置W
op」)は(ステップSP203)、パターン3にしたがって動作フローを進める(
図33A、
図33D参照)。パターン3では、まずモータ60を正転駆動し(ステップSP231)、スライダー30を本体部10から突出する方向(釘引き抜き動作方向)に移動させ、原点センサが非検出の状態となるまで待機する(ステップSP232)。非検出状態となった場合はモータ60を逆転させ(ステップSP233)、スライダー30を引き戻す方向に移動させる。その後、原点センサが稼働部を検出するまで待機する(ステップSP234)。原点センサが稼働部を検出したら、原点位置W
opを通り過ぎた稼働部が再び原点位置W
opに戻ったと判定し、モータ60を停止させてから(ステップSP241)、その状態で一連の初期位置検出動作を完了して(ステップSP242)、通常の制御に移行する(ステップSP250)。
【0104】
<釘抜き+初期位置検出+クランプの動作フロー>
上述した釘抜き+クランプの動作に、トリガON後の初期位置検出動作を加えてもよい。このようにした場合の動作フローの一例を説明する(
図38A~
図38C参照)。なお、以下では、上述した釘抜き+クランプの動作フロー(
図36A~
図36C参照)と異なる点を中心に説明する。
【0105】
この動作フローにおいては、主電源オン(ステップSP601)の後、スライダー30の初期位置を検出する(ステップSP602)。初期位置検出は、センサレスの場合であれば上述した「初期位置検出(センサレスの場合)の動作フロー」(
図32A~
図32D参照)のごとく検出動作をし、センサありの場合であれば上述した「初期位置検出(センサありの場合)の動作フロー」(
図33A~
図33D参照)のごとく検出動作をする。その後は、上述した「釘抜き+クランプの動作フロー」(
図36A~
図36C参照)と同様、釘抜き動作またはクランプ動作を行う(
図38A~
図38C参照)。
【0106】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。たとえば上述の実施形態ではスライダー30のみを摺動させることによりフック部材20(のフック22)を相対的に動作させる構造(本体部10に対しフック22が相対的に固定された構造)を説明したが、スライダー30とフック部材20の両方を同時に動作させる構造としてもよい。ここではとくに図示しないが、たとえば、ラックアンドピニオン機構などを利用してスライダー30とフック部材20とを連動させる構成としてもよいし、スライダー30が突出する動きに連動させる連動機構によってフック部材20がそれとは逆の方向に摺動するように構成してもよい。
【0107】
また、上述の実施形態では、モータ60を駆動源とした充電釘抜機1を説明したが(
図6B等参照)、これは好適な構成の一例にすぎない。とくに図示することはしないが、駆動源としてモータを採用した電動式の釘抜機の他、エアモータを採用した圧縮空気式の釘抜機、油圧モータを採用した油圧式の釘抜機などといった各種動力式の釘抜機、はたまた、交流式の電動モータを駆動源に採用している各種電動工具を構成することができる。あるいは、エアシリンダによってスライダー30を駆動する構成としてもよいし、ボールねじ73の代わりに台形ねじを用いた駆動機構70を構成してもよい。あるいは、ラックアンドピニオンやウォームギヤなどを使用し、モータ60の回転を直線運動に変える構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、電動釘抜機をはじめとする動力式の各種工具に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0109】
1…充電釘抜機(電動工具)
10…本体部
11…機構部
12…ハンドグリップ(グリップ部)
13…バッテリー収容部
13S…載置面
14…メインフレーム(案内部材)
15…フレーム基台
20…フック部材(係合部材、案内部材)
21…フック部材の回転自在部(係合部材の回転自在部)
22…フック(係合部)
22’…フック
23…筒状部
24…締結ねじ
26…Oリング(抵抗体)
30…スライダー(摺動部材)
31…スライダーの先端部(摺動部材の先端部)
31f…平坦面
32…スライダーのロッド部
32a…フランジ部
32b…めねじ
32c…スリーブ部
33…スライダーのサイドカバー部
34…スライダーの回転自在部(摺動部材の回転自在部)
35…スライダーの突出脚部(保持部)
36…スライダーの突出脚部のテーパ部(尖状部)
36a…テーパ部の尖端(尖状部の尖端)
36b…テーパ部の下面
36t…テーパ部の上面
37…被打撃部
38…Oリング(抵抗体)
40…スライダーのアタッチメント
50…カバー
60…モータ(駆動源)
66…バッテリー
70…駆動機構
71…減速機(駆動機構の一部)
72…ねじ軸
72’… ねじ軸
73…ボールねじ(駆動機構の一部)
80…原点センサ(スライダーの位置を検出するセンサ)
90…制御装置
92…モード操作・表示部
122…トリガスイッチ
132…ストラップ
134…ベルトフック
300…ハンマー
400…押下げ具
C1…釘抜きモードにおける逆転駆動中の閾値電流
C2…クランプモードにおける逆転駆動中の閾値電流
DA…駆動軸
L1…フック部材のストロークに必要な内部空間に相当する長さ
Los…フックのオフセット量
L2…初期位置(引込状態)における機構部の高さ
L3…駆動軸DAから平坦面の前方端部までの長さ
L4…駆動軸DAからフック先端までの水平長さ
L5…フック先端から突出脚部の先端までの水平長さ
P…釘(作業対象)
Pc…釘Pが真っすぐであると想定したときの仮想中心軸
Ph…釘頭
Pt…釘足
Q…コンクリートパネル(作業対象)
R…桟木(作業対象)
U…(使用者ら)ユーザー
VP…駆動軸を含む仮想平面
W0…目標初期位置
W1…逆転側限界位置
W2…正転側限界位置
Wop…原点位置
X0…初期位置出し規定量
X1…規定量
X2…規定量
Xap…異常防止規定量