(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186256
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】減速機
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
F16H1/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094389
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】鎌形 州一
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 隆
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA11
3J027FA37
3J027FB31
3J027FB32
3J027GB03
3J027GC02
3J027GC24
3J027GE27
3J027GE29
(57)【要約】
【課題】作動時における内歯ピンの不安定な挙動を抑制することができる減速機を提供する。
【解決手段】減速機は、外筒部材と、内歯ピン20と、複数の揺動歯車と、キャリアブロックと、を備えている。外筒部材は、内周面に複数のピン溝18を有する。内歯ピン20は、外筒部材の各ピン溝18内に回転可能に配置される。揺動歯車は、内歯ピン20の溝数よりも少ない歯数の外歯15Aa,15Baを有し、当該外歯15Aa,15Baで内歯ピン20と噛み合いつつ揺動回転する。キャリアブロックは、揺動歯車の相対的な揺動回転を許容し、かつ、揺動歯車の相対的な自転回転を規制するように揺動歯車と連係される。隣接する揺動歯車の外周縁部の間には、外筒部材の径方向内側への内歯ピンの変位を規制する変位規制部材31が配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に複数のピン溝を有する外筒部材と、
前記外筒部材の各前記ピン溝内に回転可能に配置される内歯ピンと、
前記内歯ピンの数よりも少ない歯数の外歯を有し、当該外歯で前記内歯ピンと噛み合いつつ揺動回転する複数の揺動歯車と、
前記外筒部材に回転可能に支持されるとともに、前記揺動歯車の相対的な揺動回転を許容し、かつ、前記揺動歯車の相対的な自転回転を規制するように前記揺動歯車と連係されるキャリアブロックと、を備え、
隣接する前記揺動歯車の外周縁部の間には、前記外筒部材の径方向内側への前記内歯ピンの変位を規制する環状の変位規制部材が配置されている、減速機。
【請求項2】
前記変位規制部材の前記外筒部材の軸方向における幅は、隣接する前記揺動歯車の外周縁部間の幅よりも狭く設定されている、請求項1に記載の減速機。
【請求項3】
隣接する前記揺動歯車の内周縁部には、前記外筒部材の軸方向において、相互に当接するボス部が設けられている、請求項2に記載の減速機。
【請求項4】
内周面に複数のピン溝を有する外筒部材と、
前記外筒部材の各前記ピン溝内に回転可能に配置される内歯ピンと、
前記内歯ピンの数よりも少ない歯数の外歯を有し、当該外歯で前記内歯ピンと噛み合いつつ揺動回転する揺動歯車と、
前記外筒部材に回転可能に支持されるとともに、前記揺動歯車の相対的な揺動回転を許容し、かつ、前記揺動歯車の相対的な自転回転を規制するように前記揺動歯車と連係されるキャリアブロックと、を備え、
前記キャリアブロックは、前記揺動歯車の軸方向外側に隣接して配置される隣接配置部を有し、
前記内歯ピンは、前記揺動歯車よりも軸方向外側に突出する軸長に形成され、
前記隣接配置部には、前記内歯ピンよりも前記外筒部材の径方向内側位置で前記内歯ピンの端部と軸方向でラップする環状の変位規制部が設けられている、減速機。
【請求項5】
内周面に複数のピン溝を有する外筒部材と、
前記外筒部材の各前記ピン溝内に回転可能に配置される内歯ピンと、
前記内歯ピンの数よりも少ない歯数の外歯を有し、当該外歯で前記内歯ピンと噛み合いつつ揺動回転する揺動歯車と、
前記外筒部材に回転可能に支持されるとともに、前記揺動歯車の相対的な揺動回転を許容し、かつ、前記揺動歯車の相対的な自転回転を規制するように前記揺動歯車と連係されるキャリアブロックと、
前記外筒部材と前記キャリアブロックの間に配置される軸受と、を備え、
前記内歯ピンは、前記揺動歯車よりも軸方向外側に突出する軸長に形成され、
前記軸受のインナレースには、前記内歯ピンよりも前記外筒部材の径方向内側位置で前記内歯ピンの端部と軸方向でラップする環状の変位規制部が設けられている、減速機。
【請求項6】
内周面に複数のピン溝を有する外筒部材と、
前記外筒部材の各前記ピン溝内に回転可能に配置される内歯ピンと、
前記内歯ピンの数よりも少ない歯数の外歯を有し、当該外歯で前記内歯ピンと噛み合いつつ揺動回転する揺動歯車と、
前記外筒部材に回転可能に支持されるとともに、前記揺動歯車の相対的な揺動回転を許容し、かつ、前記揺動歯車の相対的な自転回転を規制するように前記揺動歯車と連係されるキャリアブロックと、
前記外筒部材と前記キャリアブロックの間に配置される軸受と、を備え、
前記内歯ピンは、前記揺動歯車よりも軸方向外側に突出する軸長に形成され、
前記軸受のアウタレースには、前記内歯ピンよりも前記外筒部材の径方向内側位置で前記内歯ピンの端部と軸方向でラップする環状の変位規制部が設けられている、減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動源の回転を減速する減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットや工作機械等の回転機器では、回転駆動源の回転を減速するために減速機が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の減速機は、ケーシングを兼ねる外筒部材と、外筒部材内に回転可能に支持されたキャリアブロックと、キャリアブロックの外周縁部に回転可能に支持された複数のクランクシャフトと、複数のクランクシャフトの偏心部の回転を受けて揺動回転(旋回回転)する二つの揺動歯車と、外筒部材内の二つの揺動歯車の外周面に対向する領域に配置された複数の内歯ピンと、複数のクランクシャフトに回転動力を入力する入力回転体と、を備えている。本減速機では、入力回転体がモーター等の回転駆動源に接続され、キャリアブロックが被回転体に結合されている。また、各クランクシャフトには、二つの揺動歯車を別位相(例えば、180°ずれた位相)で揺動(旋回)させるための二つの偏心部が設けられている。
【0004】
外筒部材の内周面の二つの揺動歯車の外周面に対向する領域には、軸方向に延びる複数のピン溝が周方向に所定間隔で形成されている。上記の複数の内歯ピンは、各ピン溝内に回転可能に配置されている。二つの揺動歯車の各外周面には、内歯ピンの数よりも歯数の少ない歯数の外歯が形成されている。二つの揺動歯車は、クランクシャフトの偏心部とともに揺動回転(旋回回転)すると、一揺動回転する間に、各外歯が内歯ピンと噛み合いつつ内歯ピンから反力を受け、揺動回転方向と逆向きに所定ピッチだけ回転(自転)する。このとき、二つの揺動歯車の回転(自転)は、複数のクランクシャフトを介してキャリアブロックに伝達される。この結果、入力回転体からクランクシャフトと揺動歯車に伝達された回転は、所定の減速比に減速されてキャリアブロックに出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の減速機は、揺動歯車の揺動回転位置によって外歯と内歯ピンとの噛み合い深さが変化し、揺動回転位置によっては一部の内歯ピンが外歯から押圧力を受けないときがある。この現象は、減速機の出力回転数を高めるために揺動歯車の外歯の歯数を内歯ピンの数よりも二つ以上少なくしたときに、特に生じやすい。この場合、内歯ピンがピン溝から離間し、減速機の作動が不安定になることが懸念される。
【0007】
本発明は、作動時における内歯ピンの不安定な挙動を抑制することができる減速機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る減速機は、内周面に複数のピン溝を有する外筒部材と、前記外筒部材の各前記ピン溝内に回転可能に配置される内歯ピンと、前記内歯ピンの数よりも少ない歯数の外歯を有し、当該外歯で前記内歯ピンと噛み合いつつ揺動回転する複数の揺動歯車と、前記外筒部材に回転可能に支持されるとともに、前記揺動歯車の相対的な揺動回転を許容し、かつ、前記揺動歯車の相対的な自転回転を規制するように前記揺動歯車と連係されるキャリアブロックと、を備え、隣接する前記揺動歯車の外周縁部の間には、前記外筒部材の径方向内側への前記内歯ピンの変位を規制する環状の変位規制部材が配置されている。
【0009】
前記変位規制部材の前記外筒部材の軸方向における幅は、隣接する前記揺動歯車の外周縁部間の幅よりも狭く設定されるようにしても良い。
【0010】
隣接する前記揺動歯車の内周縁部には、前記外筒部材の軸方向において、相互に当接するボス部が設けられるようにしても良い。
【0011】
本発明の他の態様に係る減速機は、内周面に複数のピン溝を有する外筒部材と、前記外筒部材の各前記ピン溝内に回転可能に配置される内歯ピンと、前記内歯ピンの数よりも少ない歯数の外歯を有し、当該外歯で前記内歯ピンと噛み合いつつ揺動回転する揺動歯車と、前記外筒部材に回転可能に支持されるとともに、前記揺動歯車の相対的な揺動回転を許容し、かつ、前記揺動歯車の相対的な自転回転を規制するように前記揺動歯車と連係されるキャリアブロックと、を備え、前記キャリアブロックは、前記揺動歯車の軸方向外側に隣接して配置される隣接配置部を有し、前記内歯ピンは、前記揺動歯車よりも軸方向外側に突出する軸長に形成され、前記隣接配置部には、前記内歯ピンよりも前記外筒部材の径方向内側位置で前記内歯ピンの端部と軸方向でラップする環状の変位規制部が設けられている。
【0012】
本発明のさらに他の態様に係る減速機は、内周面に複数のピン溝を有する外筒部材と、前記外筒部材の各前記ピン溝内に回転可能に配置される内歯ピンと、前記内歯ピンの数よりも少ない歯数の外歯を有し、当該外歯で前記内歯ピンと噛み合いつつ揺動回転する揺動歯車と、前記外筒部材に回転可能に支持されるとともに、前記揺動歯車の相対的な揺動回転を許容し、かつ、前記揺動歯車の相対的な自転回転を規制するように前記揺動歯車と連係されるキャリアブロックと、前記外筒部材と前記キャリアブロックの間に配置される軸受と、を備え、前記内歯ピンは、前記揺動歯車よりも軸方向外側に突出する軸長に形成され、前記軸受のインナレースには、前記内歯ピンよりも前記外筒部材の径方向内側位置で前記内歯ピンの端部と軸方向でラップする環状の変位規制部が設けられている。
【0013】
本発明の別の態様に係る減速機は、内周面に複数のピン溝を有する外筒部材と、前記外筒部材の各前記ピン溝内に回転可能に配置される内歯ピンと、前記内歯ピンの数よりも少ない歯数の外歯を有し、当該外歯で前記内歯ピンと噛み合いつつ揺動回転する揺動歯車と、前記外筒部材に回転可能に支持されるとともに、前記揺動歯車の相対的な揺動回転を許容し、かつ、前記揺動歯車の相対的な自転回転を規制するように前記揺動歯車と連係されるキャリアブロックと、前記外筒部材と前記キャリアブロックの間に配置される軸受と、を備え、前記内歯ピンは、前記揺動歯車よりも軸方向外側に突出する軸長に形成され、前記軸受のアウタレースには、前記内歯ピンよりも前記外筒部材の径方向内側位置で前記内歯ピンの端部と軸方向でラップする環状の変位規制部が設けられている。
【発明の効果】
【0014】
上述の減速機は、外筒部材の径方向内側への内歯ピンの変位を規制する環状部分が存在するため、いずれも作動時における内歯ピンの不安定な挙動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】第1実施形態の減速機の
図1のII-II線に沿う断面図。
【
図3】第1実施形態の減速機の
図2のIII部の拡大図。
【
図4】第1実施形態の減速機の
図2のIV部の拡大図。
【
図5】第2実施形態の減速機の
図2と同様の断面図。
【
図6】第2実施形態の減速機の
図5のVI部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で説明する各実施形態では、共通部分に同一符号を付し、重複する説明を一部省略するものとする。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の減速機10を入力側から見た部分断面正面図でり、
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。なお、
図1の断面部分は、
図2のI-I線に沿う断面に対応する。
減速機10は、外筒部材である略円筒状のケース11と、ケース11の内周面に回転自在に保持された第1キャリアブロック13A、及び、第2キャリアブロック13Bと、第1キャリアブロック13A、及び、第2キャリアブロック13Bに回転自在に支持された複数(例えば、三つ)のクランクシャフト14と、各クランクシャフト14の二つの偏心領域14bとともに揺動回転(旋回回転)する第1揺動歯車15A、及び、第2揺動歯車15Bと、を備えている。
本実施形態では、第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bが出力回転体であるキャリアブロックを構成している。また、ケース11は、産業用ロボットのナックル部等の被固定部に固定され、第1キャリアブロック13A、及び、第2キャリアブロック13Bは、減速機10で減速された回転を外部の被回転体に出力する。
【0018】
第1キャリアブロック13Aは、孔空き円板状の基板部13Aaと、当該基板部13Aaの端面から第2キャリアブロック13Bの方向に向かって延びる複数の支柱部13Abと、を有する。第2キャリアブロック13Bは、孔空き円板状に形成されている。第1キャリアブロック13Aは、支柱部13Abの端面が第2キャリアブロック13Bの端面に突き合わされ、各支柱部13Abが第2キャリアブロック13Bにボルト16によって締結固定されている。なお、図中の符号17は、ボルト16による締結前に第2キャリアブロック13Bを各支柱部13Abに位置決めするための位置決めピンである。
【0019】
第1キャリアブロック13Aの基板部13Aaと第2キャリアブロック13Bとの間には、軸方向の隙間が確保されている。この隙間には、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bが配置されている。
なお、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bには、第1キャリアブロック13Aの各支柱部13Abが貫通する逃げ孔19が形成されている。逃げ孔19は、各支柱部13Abが第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの揺動回転動作を妨げないように、支柱部13Abの外面形状よりも充分に大きく形成されている。
【0020】
ケース11は、円筒状のケース本体11aと、ケース本体11aの外周面から径方向外側に突出するフランジ11bと、を備えている。フランジ11bには、軸方向に貫通する複数のボルト挿通孔29が形成されている。各ボルト挿通孔29には、ケース11を被固定部に締結固定するための図示しないボルトが挿通される。
【0021】
ケース本体11aは、第1キャリアブロック13Aの基板部13Aaの外周面と、第2キャリアブロック13Bの外周面とに跨って配置されている。ケース本体11aの軸方向の両側端縁には、第1キャリアブロック13Aの基板部13Aaと、第2キャリアブロック13Bとが軸受12を介して回転可能に支持されている。また、ケース本体11aの軸方向の中央領域(第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの外周面に対向する領域)の内周面には、第1,第2キャリアブロック13A,13Bの回転中心軸線c1と平行に延びる複数のピン溝18が形成されている。各ピン溝18は、断面が半円状に形成されている。複数のピン溝18は、ケース本体11aの内周面に周方向に当ピッチで形成されている。各ピン溝18には、略円柱状の内歯ピン20が回転可能に収容されている。ケース本体11aの内周面に取り付けられた複数の内歯ピン20は、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの各外周面に対向している。
【0022】
第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bは、ケース本体11aの内径よりも若干小さい外径に形成されている。第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの各外周面には、ケース本体11aの内周面に配置された複数の内歯ピン20に噛み合い状態で接触する外歯15Aa,15Baが形成されている。第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの各外周面に形成された外歯15Aa,15Baの歯数は、内歯ピン20(ピン溝18)の数よりも僅かに少なく(例えば、二つ少なく)設定されている。
【0023】
複数のクランクシャフト14は、第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bの回転中心軸線c1を中心とした同心円上に配置されている。各クランクシャフト14は、軸受21を介して第1キャリアブロック13Aと第2キャリアブロック13Bとに回転自在に支持されている。各クランクシャフト14は、軸方向に離間して一対の軸支持領域14aが配置され、一対の軸支持領域14aの間に二つの偏心領域14bが配置されている。クランクシャフト14の軸方向の一方の端部には、軸支持領域14aに隣接して歯車取付部14cが形成されている。各軸支持領域14aは、第1キャリアブロック13A(基板部13Aa)に形成された軸支持孔13Aa-1と、第2キャリアブロック13Bに形成された軸支持孔13Ba-1に挿通され、これらに軸受21を介して回転自在に支持されている。
【0024】
クランクシャフト14の二つの偏心領域14bは、これらの各中心軸線c3,c4が軸支持領域14aの中心軸線c2に対して偏心している。また、二つの偏心領域14bは、軸支持領域14aの中心軸線c2(クランクシャフト14の中心軸線)周りに位相が180°ずれるように偏心している。
【0025】
また、クランクシャフト14の各偏心領域14bは、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bを夫々貫通している。各偏心領域14bは、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bに夫々形成された支持孔22に偏心部軸受23を介して回転自在に支持されている。
【0026】
本実施形態の減速機10は、複数のクランクシャフト14が外力を受けて一方向に回転すると、クランクシャフト14の各偏心領域14bが所定の半径で同方向に揺動回転し、それに伴って第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bが同じ半径で同方向に揺動回転する。このとき、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの各外歯15Aa,15Baは、ケース本体11aの内周に保持された複数の内歯ピン20と噛み合うように接触する。
なお、各クランクシャフト14の歯車取付部14cは、第2キャリアブロック13Bの軸支持孔13Ba-1を貫通して第2キャリアブロック13Bの軸方向外側に突出している。第2キャリアブロック13Bから突出した歯車取付部14cには、クランクシャフト歯車28が取り付けられている。各クランクシャフト歯車28は、図示しない入力歯車に噛み合っている。入力歯車は、図示しない駆動用モータの駆動力を受けて回転する。
【0027】
本実施形態の減速機10では、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの各外歯15Aa,15Baの歯数が、ケース本体11a側の内歯ピン20(ピン溝18)の数よりも僅かに少なく設定されているため、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bが一揺動回転する間に、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bがケース本体11a側の内歯ピン20から回転方向の反力を受け、揺動回転方向と逆方向に所定のピッチ分だけ自転する。この結果、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bにクランクシャフト14を介して連係されている第1,第2キャリアブロック13A,13Bが、第1,第2揺動歯車15A,15Bとともに同方向に同ピッチで回転する。この結果、クランクシャフト14の回転は減速されて第1,第2キャリアブロック13A,13Bの回転として出力される。
なお、本実施形態では、クランクシャフト14の二つの偏心領域14bが軸線回りに180°ずれるように偏心しているため、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの揺動回転位相は180°ずれることになる。
【0028】
以上では、外筒部材(ケース11)が被固定部に固定され、キャリアブロック(第1キャリアブロック13A、及び、第2キャリアブロック13B)が被回転体に連結される例について説明したが、逆に、外筒部材を被回転体に連結し、キャリアブロックを被固定部に固定することも可能である。この場合、第1揺動歯車15A、及び、第2揺動歯車15Bが一旋回する間、これらの自転がキャリアブロック(第1キャリアブロック13A、及び、第2キャリアブロック13B)に規制され、その間に外筒部材(ケース11)が第1揺動歯車15A、及び、第2揺動歯車15Bの揺動回転方向と同方向に所定ピッチだけ押し動かされる。したがって、本構成の場合、減速機10で減速された回転を外筒部材を通して外部(被回転部)に出力することができる。
【0029】
図3は、
図2のIII部を拡大して示した図であり、
図4は、
図2のIV部を拡大して示した図である。
第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bは孔開き円板状に形成され、内周縁部の相互に対向する側面には夫々ボス部30が形成されている。各ボス部30は、第1,第2揺動歯車15A,15Bの相互に対向する側面のうちの、支持孔22(クランクシャフト14の挿通部)の形成されている部位よりも径方向内側領域に形成されている。各ボス部30は、第1,第2揺動歯車15A,15Bの外周形状と同心の円形形状に形成されている。第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bは、ボス部30同士で相互に当接している。第1,第2揺動歯車15A,15Bは、内周縁部に相互に当接するボス部30が形成されているため、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの外周縁部15eの間には、
図3に示すような隙間が確保されている。すなわち、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの外周縁部15eの間には、各ボス部30の突出寸法A,Bを足し合わせた寸法の離間幅Dが確保されている。
なお、第1,第2揺動歯車15A,15Bは、ボス部30を含む全域の表面に浸炭焼き入れ等の硬化処理が施されている。このため、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bが相対的に回転変位したときにも、ボス部30同士の摩耗は殆ど生じることがない。
【0030】
図2,
図4に示すように、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの外周縁部15e間の隙間には環状の変位規制部材31が配置されている。変位規制部材31は、例えば、金属材料によって短軸円筒状に形成されている。変位規制部材31は、第1,第2揺動歯車15A,15Bの外周縁部15eのうちの、支持孔22の形成位置よりも径方向外側部分にのみ対峙する内径に形成され、かつ、軸方向の幅C(外筒部材の軸方向における幅)が、隣接する第1,第2揺動歯車15A,15Bの外周縁部15e間の離間幅(D=A+B)よりも狭くなっている。このため、第1,第2揺動歯車15A,15Bの外周縁部15e間に配置された変位規制部材31は、第1,第2揺動歯車15A,15Bの各外周縁部15eとの間に軸方向の微小な隙間d1(0.1~02mm)を維持することができる。
【0031】
第1,第2揺動歯車15A,15Bの外周縁部15e間に配置された変位規制部材31は、ケース11のピン溝18内に収容された内歯ピン20よりも、ケース11の径方向内側に配置されている。変位規制部材31の外周面は、各内歯ピン20の軸方向中央領域に対峙しており、ケース11の径方向内側への内歯ピン20の過大な変位を規制する。
【0032】
以上のように、本実施形態の減速機10は、隣接する第1,第2揺動歯車15A,15Bの外周縁部15eの間に、ケース11(外筒部材)の径方向内側への内歯ピン20の変位を規制する環状の変位規制部材31が配置されている。このため、減速機10の作動時に、第1,第2揺動歯車15A,15Bの外歯15Aa,15Baの一部と内歯ピン20の噛み合い深さが浅くなる状況では、内歯ピン20が変位規制部材31の外周面に当接することにより、ピン溝18からの内歯ピン20の離間を抑制することができる。したがって、本実施形態の減速機10を採用した場合には、作動時における内歯ピン20の不安定な挙動を抑制し、減速機10の作動をより安定させることができる。
【0033】
また、本実施形態の減速機10は、変位規制部材31のケース11(外筒部材)の軸方向における幅Cが、第1,第2揺動歯車15A,15Bの外周縁部15e間の幅(離間幅D)よりも狭く設定されている。このため、第1,第2揺動歯車15A,15Bの揺動回転時に、第1,第2揺動歯車15A,15Bの外周縁部15eが変位規制部材31の側面に強接触するのを回避することができる。したがって、本構成を採用した場合には、変位規制部材31の摩耗や破損を抑制し、変位規制部材31の所期の性能を長期に亘って維持することができる。
【0034】
また、本実施形態の減速機10では、円環状の変位規制部材31と第1,第2揺動歯車15A,15Bの外周縁部15eとの間に隙間d1を確保することができるため、ケース11に充填された潤滑液を隙間d1を通して内歯ピン20の方向に効率良く流すことができる。したがって、本構成を採用した場合には、内歯ピン20に対する潤滑性を高めることができる。
【0035】
さらに、本実施形態の減速機10では、第1,第2揺動歯車15A,15Bの内周縁部に、ケース11(外筒部材)の軸方向において、相互に当接するボス部30が設けられている。このため、ボス部30の突出高さを管理することにより、第1,第2揺動歯車15A,15Bの外周縁部15e間の幅Dを容易に、かつ、正確に設定調整することができる。
【0036】
[第2実施形態]
図5は、本実施形態の減速機110の第1実施形態の
図2と同様の断面図である。また、
図6は、
図5のVI部の拡大図である。
本実施形態の減速機110は、第1実施形態のものと同様に、外筒部材であるケース11と、第1キャリアブロック13A、及び、第2キャリアブロック13Bと、クランクシャフト14と、第1揺動歯車15A、及び、第2揺動歯車15Bと、を備えている。これらの基本構成は、第1実施形態のものと同様とされている。ただし、本実施形態の減速機110では、第1揺動歯車15Aと第2揺動歯車15Bの外周縁部間に変位規制部材が配置されていない。
【0037】
本実施形態の減速機110では、第1キャリアブロック13Aの基板部13Aaの外周縁部に、第1揺動歯車15Aの軸方向外側に隣接する肩部35A(隣接配置部)が設けられ、その肩部35Aに、第1揺動歯車15Aの側に向かって突出する円筒状(環状)の変位規制部36Aが一体に形成されている。また、第2キャリアブロック13Bの外周縁部には、第2揺動歯車15Bの軸方向外側に隣接する肩部35B(隣接配置部)が設けられ、その肩部35Bに、第2揺動歯車15Bの側に向かって突出する円筒状(環状)の変位規制部36Bが一体に形成されている。変位規制部36A,36Bは、内歯ピン20よりもケース11の径方向内側位置で、内歯ピン20の各端部と軸方向でラップしている。
【0038】
本実施形態では、第1キャリアブロック13Aの肩部35Aの外周面は、一方の軸受112のインナレースを構成し、第2キャリアブロック13Bの肩部35Bの外周面は、他方の軸受112のインナレースを構成している。一方の軸受112は、第1キャリアブロック13Aとケース11の軸方向の一端側との間に配置され、他方の軸受112は、第2キャリアブロック13Bとケース11の軸方向の他端側との間に配置されている。一方の軸受112のアウタレース112oは、ケース11の軸方向の一端側の内周面と、ピン溝18の形成部の軸方向外側の一方の端面18eと、に当接している。同様に、他方の軸受112のアウタレース112oは、ケース11の軸方向の他端側の内周面と、ピン溝18の形成部の軸方向外側の他方の端面18eと、に当接している。
【0039】
第1,第2キャリアブロック13A,13Bの円筒状の各変位規制部36A,36Bは、ケース11の各ピン溝18に収容された内歯ピン20よりも、ケース11の径方向内側に配置されている。また、
図6に示すように、変位規制部36Bは、ピン溝18の形成部の他方の端面18eよりも所定長さEだけ軸方向内側(第2揺動歯車15Bの側)に突出している。また、ここでは図示は省略されているが、逆側の変位規制部36Aは、ピン溝18の形成部の一方の端面18eよりも所定長さEだけ軸方向内側(第1揺動歯車15Aの側)に突出している。
【0040】
また、ケース11の各ピン溝18に収容される内歯ピン20は、第1,第2揺動歯車15A,15Bよりも軸方向外側に突出する軸長に形成されている。つまり、内歯ピン20の軸長は、第1揺動歯車15Aの軸方向幅と第2揺動歯車15Bの軸方向幅を足し合わせた幅よりも、長くなっている。ただし、内歯ピン20の軸長は、ケース11のピン溝18の形成部の軸方向幅よりも短く設定されている。このため、ピン溝18に収容された内歯ピン20は、軸方向の端部が軸受112のアウタレース112oの端部と干渉して回転できなくなることはない。
【0041】
第1,第2キャリアブロック13A,13Bの環状の変位規制部36A,36Bは、
図6に示すように、ピン溝18に収容された内歯ピン20の軸方向の端部と、軸方向において所定量ラップしている。このため、第1,第2揺動歯車15A,15Bの揺動回転時に、内歯ピン20がピン溝18から抜け出ようとすると、内歯ピン20の軸方向の端部が環状の変位規制部36A,36Bの外周面に当接し、それによって内歯ピン20のピン溝18からの抜け変位が規制される。
なお、ピン溝18の形成部の端面18eに対する変位規制部36A,36Bのラップ方向の突出長さEは、第1,第2揺動歯車15A,15Bの軸方向外側の端面から軸受112のアウタレース112oの端面まで(ピン溝18の形成部の端面18eまで)の長さFよりも短く(E<F)設定されている。このため、変位規制部36A,36Bが第1,第2揺動歯車15A,15Bの軸方向の端面と干渉して、第1,第2揺動歯車15A,15Bの揺動回転が妨げられることはない。
【0042】
以上のように、本実施形態の減速機110は、内歯ピン20が第1,第2揺動歯車15A,15Bよりも軸方向外側に突出する軸長に形成され、第1,第2キャリアブロック13A,13Bの各肩部35A,35B(隣接配置部)に、内歯ピン20よりもケース11の径方向内側位置で内歯ピン20の端部と軸方向でラップする円筒状の変位規制部36A,36Bが設けられている。このため、減速機110の作動時に、第1,第2揺動歯車15A,15Bの外歯15Aa,15Baの一部と内歯ピン20の噛み合い深さが浅くなる状況では、内歯ピン20が変位規制部36A,36Bの外周面に当接することにより、ピン溝18からの内歯ピン20の離間を抑制することができる。したがって、本実施形態の減速機110を採用した場合には、作動時における内歯ピン20の不安定な挙動を抑制し、減速機110の作動をより安定させることができる。
【0043】
また、本実施形態の減速機110では、第1,第2キャリアブロック13A,13Bの各肩部35A,35B(隣接配置部)に軸方向内側に突出する円筒状の変位規制部36A,36Bが一体に形成され、その変位規制部36A,36Bでピン溝18からの内歯ピン20の離間を抑制している。このため、ピン溝18からの内歯ピン20の離間を抑制するための専用の部品を追加する場合と異なり、部品点数を削減することができ、かつ、減速機110の軸長を短くすることができる。
【0044】
[第3実施形態]
図7は、本実施形態の減速機210の第1実施形態の
図2と同様の断面の一部を示す図である。
本実施形態の減速機210は、ピン溝18からの内歯ピン20の変位を規制する変位規制部236A,236Bの構成のみが第2実施形態のものと異なり、他の構成は第2実施形態のものと同様とされている。
【0045】
本実施形態の減速機210では、ケース11と第1,第2キャリアブロック13A,13Bの間に介装される軸受212が、アウタレース212oとインナレース212iとを備え、インナレース212iが第1,第2キャリアブロック13A,13Bの各外周縁部に固定されている。アウタレース212oは、ケース11の軸方向の端部の内周面と、ピン溝18の形成部の軸方向外側の端面とに当接している。各軸受212のインナレース212iには、アウタレース212oよりも軸方向内側(第1,第2揺動歯車15A,15Bと対向する側)に直線状に延びる円筒状(環状)の変位規制部236A,236Bが一体に形成されている。
【0046】
ケース11の各ピン溝18に収容される内歯ピン20は、第1,第2揺動歯車15A,15Bよりも軸方向外側に突出する軸長に形成されている。本実施形態の場合も、内歯ピン20の軸長は、ケース11のピン溝18の形成部の軸方向幅よりも短く設定されている。各軸受212の円筒状の変位規制部236A,236Bは、内歯ピン20よりもケース11の径方向内側位置で内歯ピン20の端部と軸方向でラップしている。
【0047】
また、本実施形態では、ケース11のピン溝形成部の端面に対する変位規制部236A,236Bのラップ方向の突出長さは、第1,第2揺動歯車15A,15Bの軸方向外側の端面から軸受212のアウタレース212oの端面まで(ピン溝18の形成部の端面まで)の長さよりも短く設定されている。このため、本実施形態の場合も、変位規制部236A,236Bが第1,第2揺動歯車15A,15Bの軸方向の端面と干渉して、第1,第2揺動歯車15A,15Bの揺動回転が妨げられることはない。
【0048】
以上のように、本実施形態の減速機210は、内歯ピン20が第1,第2揺動歯車15A,15Bよりも軸方向外側に突出する軸長に形成され、軸受212のインナレース212iに、内歯ピン20よりもケース11の径方向内側位置で内歯ピン20の端部と軸方向でラップする円筒状の変位規制部236A,236Bが一体に形成されている。このため、減速機110の作動時に、第1,第2揺動歯車15A,15Bの外歯15Aa,15Baの一部と内歯ピン20の噛み合い深さが浅くなる状況でも、内歯ピン20が変位規制部236A,236Bの外周面に当接することにより、ピン溝18からの内歯ピン20の離間を抑制することができる。したがって、本実施形態の減速機210を採用した場合には、作動時における内歯ピン20の不安定な挙動を抑制し、減速機210の作動をより安定させることができる。
【0049】
また、本実施形態の減速機210は、軸受212のインナレース212iに軸方向内側に突出する円筒状の変位規制部236A,236Bが一体に形成されている。このため、ピン溝18からの内歯ピン20の離間を抑制するための専用の部品を追加する場合と異なり、部品点数を削減することができ、かつ、減速機110の軸長を短くすることができる。
【0050】
[第4実施形態]
図8は、本実施形態の減速機310の第1実施形態の
図2と同様の断面の一部を示す図である。
本実施形態の減速機310は、ピン溝18からの内歯ピン20の変位を規制する変位規制部336Bの構成のみが第2実施形態のものと異なり、他の構成は第2実施形態のものと同様とされている。
【0051】
本実施形態の減速機310は、ケース11と第1,第2キャリアブロック(
図8では、第2キャリアブロック13Bのみ図示されている。)の間に介装される軸受312のアウタレース312oに変位規制部336Bが一体に形成されている。本実施形態の場合、軸受212のインナレースは、キャリアブロック(13B)の一部によって構成されている。アウタレース312oは、ケース11の軸方向の端部の内周面と、ピン溝18の形成部の軸方向外側の端面とに当接している。
【0052】
ケース11の各ピン溝18に収容される内歯ピン20は、第1,第2揺動歯車15A,15Bよりも軸方向外側に突出する軸長に形成されている。内歯ピン20の軸長は、ケース11のピン溝18の形成部の軸方向幅よりも短く設定されている。
【0053】
軸受312のアウタレース312oは、ケース11の軸方向の端部の内周面とピン溝18の形成部の軸方向外側の端面とに当接するアウタレース本体40と、アウタレース本体40の軸方向内側の端部から径方向内側に延びる内向きフランジ41と、内向きフランジ41の径方向内側の端部から軸方向内側に突出して延びる短軸円筒状の変位規制部336Bと、を有する。アウタレース312oの変位規制部336Bは、内歯ピン20よりもケース11の径方向内側位置で内歯ピン20の端部と軸方向でラップしている。
【0054】
また、ケース11のピン溝形成部の端面に対する変位規制部336Bのラップ方向の突出長さは、第1,第2揺動歯車15A,15Bの軸方向外側の端面からアウタレース本体40の端面まで(ピン溝18の形成部の端面まで)の長さよりも短く設定されている。このため、本実施形態の場合も、変位規制部336Bが第1,第2揺動歯車15A,15Bの軸方向の端面と干渉して、第1,第2揺動歯車15A,15Bの揺動回転が妨げられることはない。
【0055】
以上のように、本実施形態の減速機310は、内歯ピン20が第1,第2揺動歯車15A,15Bよりも軸方向外側に突出する軸長に形成され、軸受312のアウタレース312oに、内歯ピン20よりもケース11の径方向内側位置で内歯ピン20の端部と軸方向でラップする円筒状の変位規制部336Bが一体に形成されている。このため、減速機110の作動時に、第1,第2揺動歯車15A,15Bの外歯15Aa,15Baの一部と内歯ピン20の噛み合い深さが浅くなる状況でも、内歯ピン20が変位規制部336Bの外周面に当接することにより、ピン溝18からの内歯ピン20の離間を抑制することができる。したがって、本実施形態の減速機310を採用した場合には、作動時における内歯ピン20の不安定な挙動を抑制し、減速機310の作動をより安定させることができる。
【0056】
また、本実施形態の減速機310は、軸受312のアウタレース312iに変位規制部336Bが一体に形成されている。このため、ピン溝18からの内歯ピン20の離間を抑制するための専用の部品を追加する場合と異なり、部品点数を削減することができ、かつ、減速機110の軸長も短くすることができる。
【0057】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の各実施形態では、外筒部材(ケース)の内側に二つの揺動歯車が配置されているが、外筒部材の内側に配置する揺動歯車の数は二つの限定されるものではない。第1実施形態の場合、揺動歯車の数は二つ以上であれば良い。また、第2~第4実施形態の場合には、揺動歯車の数は一つであっても、三つ以上であっても良い。
【符号の説明】
【0058】
10,110,210,310…減速機、11…ケース(外筒部材)、13A…第1キャリアブロック(キャリアブロック)、13B…第2キャリアブロック(キャリアブロック)、15A…第1揺動歯車(揺動歯車)、15B…第2揺動歯車(揺動歯車)、15Aa,15Ba…外歯、15e…外周縁部15e、18…ピン溝、20…内歯ピン、31…変位規制部材、35A,35B…肩部(隣接配置部)、36A,36B,236A,236B,326B…変位規制部、212,312…軸受、212i…インナレース、312o…アウタレース。