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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186264
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】無給電無線中継装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/155 20060101AFI20221208BHJP
   H01Q 1/36 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H04B7/155
H01Q1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094403
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(72)【発明者】
【氏名】深野 司
(72)【発明者】
【氏名】児嶋 聖一
【テーマコード(参考)】
5J046
5K072
【Fターム(参考)】
5J046AA04
5J046AB06
5J046PA06
5K072AA29
5K072BB27
5K072CC02
5K072DD17
5K072HH01
(57)【要約】
【課題】通信不可能な領域において無給電無線中継装置を簡単に設営すること。
【解決手段】無給電無線中継装置110は、第1アンテナ111aと、第2アンテナ111bと、信号伝送路113と、載置部114とを備える。第1アンテナ111aは、携帯端末装置120が通信可能な第1領域に配置される可搬型のアンテナである。第2アンテナ111bは、携帯端末装置120が通信不可能な第2領域に配置される可搬型のアンテナである。信号伝送路113は、第1アンテナ111aと第2アンテナ111bとを接続する。載置部114は、第2アンテナ111bに近接して配置され、携帯端末装置120を載置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末装置が通信可能な第1領域に配置される可搬型の第1アンテナと、
前記携帯端末装置が通信不可能な第2領域に配置される可搬型の第2アンテナと、
前記第1アンテナと前記第2アンテナとを接続する信号伝送路と、
前記第2アンテナに近接して配置され、前記携帯端末装置を載置する載置部と、
を備えることを特徴とする無給電無線中継装置。
【請求項2】
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナは、広帯域アンテナである、
ことを特徴とする請求項1に記載の無給電無線中継装置。
【請求項3】
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナは、無指向性アンテナである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の無給電無線中継装置。
【請求項4】
前記載置部は、前記第2アンテナの形状に応じた態様で、前記携帯端末装置を載置可能である、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の無給電無線中継装置。
【請求項5】
前記載置部は、樹脂製の部材から成る、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の無給電無線中継装置。
【請求項6】
前記携帯端末装置は、通信エラーが生じた場合にその旨を報知する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の無給電無線中継装置。
【請求項7】
前記携帯端末装置は、現在地の情報と、周辺の雨量の情報と、下水道ごとに設定される水の流入の危険度を示す情報とに基づいて、危険に関する警告を行う、
請求項1~6のいずれか一項に記載の無給電無線中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無給電無線中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部などでは、地下に下水道が多数設けられている。下水道へは、マンホールから侵入することが可能である。作業スタッフは、マンホールから下水道に進入し、定期的に点検作業や補修工事などを行う。ここで、下水道には、定常的に人が存在することがないことから、無線基地局等の無線設備が設置されていない。このため、下水道内では、携帯電話やスマートフォンなどの携帯端末装置を連絡手段として使用することができない。そこで、現状では、連絡手段としてインターホンを用意して、地下の作業スタッフと地上の作業スタッフとの連絡を行うようにしたり、地下の作業スタッフが電波の届くエリア(地上付近)まで移動して電話を行ったりしている。
【0003】
関連する技術として、基地局とユーザ装置との間の無線通信を中継する無給電無線中継装置において、無線通信に用いられる電波を反射する球面状の電波反射部を有し、空中に配置する気球と、気球を係留して支持する気球支持部とを備えたものが知られている(下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-98555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、通信不可能な領域において無給電無線中継装置を簡単に設営することができない、という問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、通信不可能な領域において無給電無線中継装置を簡単に設営することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様である無給電無線中継装置は、携帯端末装置が通信可能な第1領域に配置される可搬型の第1アンテナと、前記携帯端末装置が通信不可能な第2領域に配置される可搬型の第2アンテナと、前記第1アンテナと前記第2アンテナとを接続する信号伝送路と、前記第2アンテナに近接して配置され、前記携帯端末装置を載置する載置部と、を備えることを特徴とする無給電無線中継装置である。
【0008】
上記構成において、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナは、広帯域アンテナとしてもよい。
【0009】
上記構成において、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナは、無指向性アンテナとしてもよい。
【0010】
上記構成において、前記載置部は、前記第2アンテナの形状に応じた態様で、前記携帯端末装置を載置可能にしてもよい。
【0011】
上記構成において、前記載置部は、樹脂製の部材から成るようにしてもよい。
【0012】
上記構成において、前記携帯端末装置は、通信エラーが生じた場合にその旨を報知してもよい。
【0013】
上記構成において、前記携帯端末装置は、現在地の情報と、周辺の雨量の情報と、下水道ごとに設定される水の流入の危険度を示す情報とに基づいて、危険に関する警告を行ってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通信不可能な領域において無給電無線中継装置を簡単に設営することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の概要の一例を示す説明図である。
図2】第1アンテナ111aおよび第2アンテナ111bの外観例を示す説明図である。
図3】載置部114の外観例を示す説明図である。
図4】携帯端末装置120のハードウェア構成の一例を示す説明図である。
図5】携帯端末装置120のメモリ404に記憶される下水道の危険度情報500の一例を示す説明図である。
図6】携帯端末装置120が行う無給電無線中継処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
(本実施形態の概要)
図1は、本実施形態の概要の一例を示す説明図である。図1に示すように、エリア100は、通信可能領域101と、圏外領域102とを含む。通信可能領域101は、無線基地局103が各所に配置されており、携帯端末装置120が通信可能な領域である。通信可能領域101は、例えば、地上の領域である。圏外領域102は、携帯端末装置120の通信が不可能な領域である。圏外領域102は、例えば、地下の領域であり、具体的には、下水道内である。
【0018】
作業スタッフStは、下水道の点検作業や補修工事を行う。図示において、作業スタッフStは、地上で作業する地上作業スタッフSt1と、地下で作業する地下作業スタッフSt2とを含む。地下作業スタッフSt2は、マンホール160のステップ161を伝って、地上から下水道内へ進入する。
【0019】
ここで、下水道などの定常的に人が存在しない場所(圏外領域102)には、無線基地局103等の無線設備が設置されていない。このため、圏外領域102では、携帯電話やスマートフォンなどの携帯端末装置120を使用することができない。そこで、本実施形態では、圏外領域102において、無給電無線中継装置110を簡単に設営できるようにしている。以下、本実施形態に係る無給電無線中継装置110について詳述する。
【0020】
無給電無線中継装置110は、第1アンテナ111aと、第2アンテナ111bと、信号伝送路113と、載置部114とを備える。第1アンテナ111aおよび第2アンテナ111bは、いずれも、可搬型のアンテナであり、同一のものが用いられる。第1アンテナ111aは、通信可能領域101に配置される。第2アンテナ111bは、圏外領域102に配置される。
【0021】
信号伝送路113は、第1アンテナ111aと第2アンテナ111bとを接続する信号の伝送路である。載置部114は、第2アンテナ111bに近接して配置され、携帯端末装置120を載置する治具である。携帯端末装置120は、双方向の無線通信が可能な装置であり、すなわち、送信および受信の機能を有する装置である。具体的には、携帯端末装置120は、例えば、スマートフォンである。ただし、携帯端末装置120は、スマートフォンに限らず、携帯電話や、タブレット端末などを含む。
【0022】
(第1アンテナ111aおよび第2アンテナ111bの外観)
図2は、第1アンテナ111aおよび第2アンテナ111bの外観例を示す説明図である。アンテナ111(第1アンテナ111aおよび第2アンテナ111b)は、広帯域アンテナである。具体的には、アンテナ111は、例えば、周波数700MHz~6GHzに対応するものである。
【0023】
ここで、アンテナ111に広帯域アンテナを用いる理由について説明する。例えば、警察や消防や水防などで用いられる通常の無線通信では、特定の周波数の電波が使用される。このため、使用するアンテナは、特定の周波数において効率的に動作するように製作される。例えば、火災現場において使用される消防無線通信では、火災現場と本部との通信が困難な場合には、通信可能な場所に無線通信基地局機能を備えた指揮所を設置して、その配下に設けられる別の無線機を用いて、中継し連絡が取られる。つまり、消防士等が通信可能な状況を現場で自ら作り出すことが可能になっている。
【0024】
他方、携帯端末装置120の無線通信では、いつでもどこでも通信可能な環境が求められる。携帯端末装置120の無線通信において、通信が困難な場合に、消防無線通信のような自ら無線通信基地局(中継装置)設置し、利用者が自ら通信可能な状況を作り出すことは許されない。なぜならば、携帯端末装置120の利用者は、一般人であり、資格を持った無線従事者ではないからである。以上のことから、携帯電話の電波では、良好な通信状態を保つ手段として多周波数を用い、その時に良好な周波数帯を使用する技術が実用化された。現在、携帯電話やスマートフォンにおいて主流となっている4G(4th Generation)では、700MHz~3500MHzが使用されている。
【0025】
そこで、本実施形態に係る無給電無線中継を行うにあたり、携帯電話およびスマートフォンといった携帯端末装置120を効率的に動作させるために、これらの周波数帯に対応する広帯域アンテナを用いるようしている。なお、信号伝送路113として用いられる同軸ケーブルは、本質的に広帯域伝送路でるため、これらの周波数帯に対応している。
【0026】
アンテナ111は、無指向性アンテナである。アンテナ111には、汎用品を適用することができる。図2に示すアンテナ111は、例えば、ディスコーンアンテナである。ここで、ディスコーンアンテナは、銅板のような導体で構成される。ディスコーンアンテナは、軽量化や簡略化を目的として、使用する波長において有害な損失が無視できる範囲で中抜けとした構造となっている。また、波動工学の観点から、電波の反射、屈折、回析等の現象は、利用する波長よりも十分に大きな又は小さな部材において有効に機能するものである。ディスコーンアンテナでは、エレメント201a、201bの本数によって短波長側の限界値が決まり、また、エレメント201a、201bの長さによって長波長側の限界値が決まる。このため、ディスコーンアンテナにおいて、マイクロ波帯などの短波長領域では、銅板等の一体構造で製作される。
【0027】
図2においてアンテナ111は、例えば、上部に配置される18本程度の上部エレメント201aと、下部に配置される16本程度の下部エレメント201bとを備える。コーンエレメントの長さは、それぞれ10cm程度である。アンテナ111は、完成品であるため、すなわち、その場でエレメント201を組み立てるものではないため、即座に設置することが可能である。また、アンテナ111のサイズは、上部の幅方向が8cm程度であり、下部の幅方向が13cm程度であり、高さ方向23cm程度である。すなわち、アンテナ111は、コンパクトであり、作業スタッフStが容易に持ち運ぶことができるものである。また、アンテナ111は、取り付け部211を介して、スタンド210に取り付けられ、所定の高さに保たれる。
【0028】
なお、アンテナ111は、ディスコーンアンテナに限らず、例えば、LP(log-periodic:対数周期)アンテナや、自己補対アンテナなどを用いることも可能である。なお、LPアンテナは、指向性を有する。LPアンテナを用いて、特定の無線基地局103との通信を行った場合、通信事業者側では、このような通信要求に応えるべく、制御を実行することにより、通信が可能になる。
【0029】
(信号伝送路113について)
次に、信号伝送路113について説明する。本実施形態において、信号伝送路113には、例えば、高周波同軸ケーブルが用いられる。信号伝送路113の長さは、例えば、15~20m程度であり、最大で30m程度である。すなわち、本実施形態において、第1アンテナ111aと、第2アンテナ111bとの距離は、15~20m程度であり、最大で30m程度である。高周波同軸ケーブルには、低損失であり、且つ、広帯域にわたり定在波比が小さいものが用いられる。さらに、高周波同軸ケーブルには、可撓性に優れ、また、遮蔽特性が良好なものが用いられる。なお、信号伝送路113は、高周波同軸ケーブルに限らず、例えば、フィーダ線(具体的には、リボンフィーダ)を用いることも可能である。
【0030】
(載置部114の外観)
図3は、載置部114の外観例を示す説明図である。図3において、載置部114は、第2アンテナ111bの上部エレメント201aおよび下部エレメント201bを覆うように配置される。載置部114は、傾斜部301と、天板部302と、載台303とを備える。携帯端末装置120は、携帯端末装置120の背面側が傾斜部301に支持され、載台303に載置される。
【0031】
載置部114は、樹脂製の部材で構成される。載置部114は、電波を通す素材であればよく、すなわち、電波を通さない素材(例えば、金属製)を除く。載置部114は、第2アンテナ111bの形状に応じた態様で、携帯端末装置120を載置可能である。具体的には、第2アンテナ111bをディスコーンアンテナとした場合、載置部114は、ディスコーンアンテナの形状に応じて、複数の携帯端末装置120を放射状に載置可能である。また、携帯端末装置120と、第2アンテナ111b(エレメント201の一部)との距離は、近いほどよく、3cm以内であることが望ましい。なお、携帯端末装置120は、載台303に載置されることに限らず、天板部302に、横置きされて(平面的に)載置されてもよい。なお、載置部114には、市販品のバケツを流用することも可能である。
【0032】
なお、第2アンテナ111bを、例えばLPアンテナとした場合、載置部114は、LPアンテナの形状に応じて、複数の携帯端末装置120を横置きされて(平面的に)載置されてもよい。LPアンテナの場合、載置部114は、広い載置面積を確保できるため、複数の携帯端末装置120を効率よく載置することができる。
【0033】
(携帯端末装置120について)
携帯端末装置120は、載置部114に載置された状態において、第2アンテナ111bを介して通信が可能な状態となる。このため、携帯端末装置120は、載置部114に載置された状態で、インターネットに接続して、各種情報を表示したり、通話を行ったりすることが可能である。通話を行う場合、地下作業スタッフSt2の携帯端末装置120を手に取って耳に当てたとすると、携帯端末装置120が第2アンテナ111bから離れてしまい、通信が切断されてしまう。このため、通話を行う際には、携帯端末装置120にヘッドセットを接続し、当該ヘッドセットを介して、通話を行うようにすればよい。
【0034】
(携帯端末装置120のハードウェア構成)
図4は、携帯端末装置120のハードウェア構成の一例を示す説明図である。図4において、携帯端末装置120は、CPU(Central Processing Unit)401、ROM(Read Only Memory)402、RAM(Random Access Memory)403、メモリ404、通信インタフェース(通信I/F)405、操作部406、カメラ407、マイク408、ディスプレイ409、スピーカ410、GPS(Global Positioning System)ユニット411を備えている。各部は、バス420によってそれぞれ接続されている。
【0035】
CPU401は、携帯端末装置120の全体の制御を司る。ROM402は、各種プログラムを記録している。RAM403は、CPU401のワークエリアとして使用される。すなわち、CPU401は、RAM403をワークエリアとして使用しながら、ROM402やメモリ404に記録された各種プログラムを実行することによって、携帯端末装置120の全体の制御を司る。
【0036】
メモリ404は、各種データを記憶する。メモリには、例えば、フラッシュメモリが用いられる。メモリ404は、無給電無線中継アプリ(アプリケーションプログラム)などの各種プログラムを記憶する。また、メモリ404は、下水道の危険度情報500(図5参照)を記憶する。
通信インタフェース405は、第1アンテナ111a、第2アンテナ111b、および信号伝送路113を介して、ネットワークに接続され、ネットワークを介して、外部サーバ等の他の装置に接続される。ネットワークとして機能する通信網には、インターネットや携帯電話網などがある。
【0037】
操作部406は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のタッチキーを表示するタッチパネルや、ハードキーなどである。
カメラ407は、被写体を撮像する。カメラ407には、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)カメラを用いることができる。
マイク408は、操作者の音声を入力する。
ディスプレイ409は、アイコン、カーソル、メニュー、ウインドウ、文字、画像、コードなどを表示する。
【0038】
スピーカ410は、音声を含む音を出力する。
GPSユニット411は、GPS衛星からの電波を受信し、携帯端末装置120の現在位置を示す情報を出力する。また、携帯端末装置120は、不図示の各種センサ(例えば、ジャイロセンサ、加速度センサなど)を備え、携帯端末装置120の各種状態(例えば、携帯端末装置120の傾き)などを検出する機能を有する。
【0039】
(下水道の危険度情報の一例)
図5は、携帯端末装置120のメモリ404に記憶される下水道の危険度情報500の一例を示す説明図である。危険度情報500は、下水道No.と、位置情報と、危険度との項目を含む。下水道No.は、下水道ごとに割り当てられ、下水道を一意に特定することが可能な識別情報である。位置情報は、下水道の通る位置を示し、例えば、ある地点からある地点までの範囲を示す。
【0040】
危険度は、例えば、雨が降った際に、鉄砲水が生じる可能性(危険性)を示す。例えば、危険度「3」は、最も危険であることを示し、すなわち、鉄砲水が生じやすいことを示す。危険度「2」は、やや危険であることを示し、すなわち、雨量によっては鉄砲水が生じることを示す。また、危険度「1」は、比較的安全であることを示し、すなわち、鉄砲水が生じにくいことを示す。
【0041】
なお、危険度は、3段階としたが、これに限らず、2段階としてもよい。例えば、危険度を2段階とした場合、危険度「2」が周辺で一滴でも雨が降ったら危険(作業を禁止とすること)を示し、危険度「1」が周辺の雨の状況によっては危険を示すようにしてもよい。また、危険度は、4段階以上としてもよい。
【0042】
(携帯端末装置120が行う処理)
図6は、携帯端末装置120が行う無給電無線中継処理の一例を示すフローチャートである。図6の処理の前提として、携帯端末装置120は、載置部114に載置されているものとする。図6において、携帯端末装置120は、無給電無線中継の開始であるか否かを判断する(ステップS601)。無給電無線中継の開始であるか否かの判断は、例えば、無給電無線中継アプリを起動したか否かの判断である。携帯端末装置120は、無給電無線中継の開始となるまで待機し(ステップS601:NO)、無給電無線中継の開始になると(ステップS601:YES)、電波状態が良好であるか否かを判断する(ステップS602)。
【0043】
ステップS602に示す電波状態が良好であるか否かの判断において、携帯端末装置120は、例えば、所定時間の間隔でデータ(例えば、天気情報)を受信していれば良好であると判断し、所定時間の間隔でデータを受信していなければ不良であると判断する。また、電波状態に不良が生じる場合の一例として、例えば、携帯端末装置120と第2アンテナ111bとの距離があることや、第1アンテナ111aが転倒するなどの第1アンテナ111aの異常や、信号伝送路113の接続不良などが挙げられる。
【0044】
電波状態が良好である場合(ステップS602:YES)、携帯端末装置120は、ステップS605に進む。電波状態が良好ではない場合(ステップS602:NO)、携帯端末装置120は、電波状態が良好ではない旨を示す通信エラーを報知する(ステップS603)。当該エラーは、例えば、携帯端末装置120を第2アンテナ111bに近付ける旨を示すエラーや、第1アンテナ111aに異常が生じている可能性がある旨のエラーや、信号伝送路113の接続不良を示すエラーである。地下作業スタッフSt2が作業中であることから、携帯端末装置120は、通信エラーにおいて、エラー報知音を出力してもよい。これにより、通信エラーが生じた場合に、作業中の地下作業スタッフSt2に電波不良を即時に伝えることができる。
【0045】
携帯端末装置120は、通信エラーが解消しない場合(ステップS604:NO)、ステップS603に戻り、エラー報知を継続する。一方、通信エラーが解消した場合(ステップS604:YES)、携帯端末装置120は、現在地周辺の天気情報を取得する(ステップS605)。天気情報は、例えば、インターネットから得ることができる。また、天気情報を得るに際に、携帯端末装置120は、GPSユニット411を用いて現在地の位置情報を取得して、現在地周辺の天気情報を得る。次に、携帯端末装置120は、周辺の所定範囲内に雨量があるか否かを判断する(ステップS606)。
【0046】
周辺の所定範囲内に雨量がない場合(ステップS606:NO)、携帯端末装置120は、ステップS608に進む。周辺の所定範囲内に雨量がある場合(ステップS606:YES)、携帯端末装置120は、現在地が示す下水道の危険度に応じた警告を行う(ステップS607)。例えば、ステップS607における警告は、危険度が「3」であれば即時避難する旨の警告であり、危険度が「2」であれば周辺で雨が降ったものの現時点では避難する必要のない旨の警告であり、危険度が「1」であれば、周辺で雨が降ったものの現在地が危険ではないこと示す警告である。地下作業スタッフSt2が作業中であることから、携帯端末装置120は、危険度が「3」の場合には警報音を出力してもよい。また、それ以外の危険度の場合には、携帯端末装置120は、警報音を出力しないようにしてもよい。
【0047】
携帯端末装置120は、無給電無線中継の終了であるか否かを判断する(ステップS608)。無給電無線中継の終了であるか否かの判断は、例えば、無給電無線中継アプリを終了したか否かの判断である。無給電無線中継の終了ではない場合(ステップS608:NO)、携帯端末装置120は、ステップS602に戻る。無給電無線中継の終了である場合(ステップS608:YES)、携帯端末装置120は、一連の処理を終了する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る無給電無線中継装置110は、通信可能領域101に配置される可搬型の第1アンテナ111aと、圏外領域102に配置される可搬型の第2アンテナ111bとを信号伝送路113で接続し、第2アンテナ111bに近接して配置されて携帯端末装置120を載置する載置部114を備えるようにした。これにより、携帯端末装置120は、第1アンテナ111aが受信した情報を、信号の増幅等を行わずに、信号伝送路113および第2アンテナ111bを介して受信可能となる。また、携帯端末装置120は、第2アンテナ111bに送信した情報を、信号の増幅等を行わずに、信号伝送路113および第1アンテナ111aを介して送信可能となる。このため、本実施形態によれば、下水道のような定常的に人が存在しない圏外領域102において、携帯端末装置120の通信を可能にする無給電無線中継装置110を簡単に設営することができる。
【0049】
したがって、地下作業スタッフSt2は、地上作業スタッフSt1に伝達しなくても、また、通信可能領域101まで移動しなくても、圏外領域102において外部と連絡を取ることや、外部から情報を得ることができる。これにより、作業スタッフStの作業効率を向上させることができる。また、作業スタッフStは下水道の点検等を完了すると、無給電無線中継装置110を片付ける。このため、下水道のような定常的に人が存在しない場所において、すなわち、通信インフラの整備が期待できない空間において、無線基地局103等の無線設備を設置しなくても、すなわち、所定の認可(免許)を得なくても、無駄な設備投資を抑えて、携帯端末装置120の通信を可能にすることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る無給電無線中継装置110において、第1アンテナ111aおよび第2アンテナ111bは、無指向性アンテナとした。これにより、作業スタッフStは、第1アンテナ111aを設置する際に、第1アンテナ111aの指向性を考慮せずに、簡単かつ迅速に第1アンテナ111aを設置することができる。また、地下作業スタッフSt2は、載置部114に携帯端末装置120を載置させる際に、第2アンテナ111bの指向性を考慮せずに、携帯端末装置120を載置することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る無給電無線中継装置110では、第2アンテナ111bを広帯域アンテナとした。これにより、携帯端末装置120の通信を効率よく行うことができる。
【0052】
また、本実施形態に係る無給電無線中継装置110では、載置部114を第2アンテナ111bの形状に応じて、携帯端末装置120を載置可能とした。これにより、複数の地下作業スタッフSt2が携帯端末装置120を載置部114に載置して、携帯端末装置120を使用することができる。したがって、利便性を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態に係る無給電無線中継装置110において、載置部114は、樹脂製の部材で構成される。これにより、軽量な素材で載置部114を実現できるため、無給電無線中継装置110の持ち運びを、より容易にすることができる。
【0054】
また、本実施形態に係る無給電無線中継装置110において、携帯端末装置120は、通信エラーが生じた場合に、その旨を報知するようにした。これにより、作業スタッフStに通信エラーを早期に認識させることができるため、早期に通信エラーを解消させることができる。特に、下水道内などの作業では、地下作業スタッフSt2が危険な状態に晒される可能性が高く、外部からの情報を得ることができないことによって重大な事故を招き兼ねないが、本実施形態によれば、このような事故を未然に防止することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る無給電無線中継装置110では、携帯端末装置120は、現在地の情報と、雨量の情報と、下水道ごとに設定される水の流入の危険度情報500とに基づいて、危険に関する警告を行うようにした。これにより、下水道の危険度と雨量とに応じた警告を行うことができる。したがって、下水道内で作業する地下作業スタッフSt2の避難および誘導を行うことが可能になり、地下作業スタッフSt2の安全性の向上を図ることができる。
【0056】
なお、電波法の基本精神について補足しておく。携帯電話システムでは、数多くの無線基地局103が配置され、携帯電話がどの無線基地局103と通信すれば最も合理的であるの制御や、携帯電話が移動して無線基地局103を跨ぐ場合(ハンドオーバー)における制御など、複雑な制御が行われて、通信秩序が維持されている。このため、電波行政を司る省庁(例えば、総務省)は、補助的な中継装置を含めて無線基地局103の免許人を通信事業者に限定している。これは、電波法の秩序ある電波利活用の基本精神である。言い換えれば、許認可を受けていない者は、中継装置(無線基地局103)を設置できないこととなっている。ところで、本実施形態に係る無給電無線中継装置110は、厳密には中継装置と同様のものであるとも言えるかもしれない。しかしながら、本実施形態に係る無給電無線中継装置110は、その装置により他の通信に影響を与えないため、「秩序ある電波利活用」であり、利用可能なものであると言える。なお、微弱な電波放射は、「秩序ある電波利活用」に反しないとされることがある。一例として、マイカーにおいて音楽プレーヤーからFM電波を飛ばして、カーステレオで聞くことが可能な製品は、利用可能とされている。
【0057】
また、無給電無線中継装置110を大型化させることについては、望ましくないことについても補足しておく。無給電無線中継装置110において、信号伝送路113の長距離化を図ることは可能である。ただし、この場合、第1アンテナ111aが取り込むエネルギーを増やすために、第1アンテナ111aを大型化させることを要する。極端な例を挙げると、深宇宙探査に用いる大型パラボラアンテナが想定される。しかし、これらは鋭いサーチライトのように、その指向性によりターゲットを決めて微弱なエネルギーを捉える動作を行う。本実施形態に係る無給電無線中継装置110は、特定のターゲットを決めて通信するのではなく、多数ある無線基地局103からの電波をできるだけ数多く獲得し、通信事業者による制御に従って、通信不可能な領域を通信可能になるように手伝うことを目的としている。また、信号伝送路113を長距離化するには、信号伝送路113中の能動素子による信号増幅が必要になる。これは送信機であり、中継装置そのものである。このため、本実施形態に係る無給電無線中継装置110を大型化させることは望ましくない。
【0058】
(実施形態の変形例)
次に、実施形態の変形例について説明する。なお、以下の各変形例では、上述した実施形態で説明した内容については、適宜説明を省略する。また、以下の各変形例、および上述した実施形態は、それぞれ組み合わせることも可能である。
【0059】
(変形例1)
まず、実施形態の変形例1について説明する。上述した実施形態では、通信可能領域101に第1アンテナ111aを1つ設置するようにした。変形例1では、通信可能領域101に第1アンテナ111aを複数設置する構成について説明する。変形例1では、例えば、通信可能領域101に第1アンテナ111aを2つ設置する。2つの第1アンテナ111aは、それぞれ、信号伝送路113を介して、第2アンテナ111bに接続される。
【0060】
変形例1によれば、第1アンテナ111aの数に応じて電波強度を高めることができるため、通信環境を向上させることができる。すなわち、第1アンテナ111aを大型化し、空間からできるだけ多くのエネルギーを獲得することができるため、通信を安定させることができる。
【0061】
ただし、本実施形態に係る無給電無線中継装置110は、通信不可能な空間において、通信を可能とすることである。下水道のような何も無い場所に、小型で軽量の本装置を運び、利用する点が効果的な利用法である。このため、複数の第1アンテナ111aを用いられる場合であっても、可能な限り、第1アンテナ111aが大型化しないようにすることが望ましく、すなわち、可搬性が損なわれないようにすることが望ましい。
【0062】
(変形例2)
次に、実施形態の変形例2について説明する。変形例2では、電波状態が弱い場合に、電波強度に応じた無給電無線中継装置110の仕様の変更を促す構成について説明する。例えば、携帯端末装置120を第2アンテナ111bに近付けた場合や、第1アンテナ111aに異常が生じていなかった場合でも、電波状態が弱いことが起こり得る。
【0063】
この場合、携帯端末装置120は、電波強度に応じて、信号伝送路113をより低損失のものに変更する旨を報知してもよい。具体的には、携帯端末装置120は、電波強度がわずかに弱い場合は、信号伝送路113をより低損失ものに変更することを促し、電波強度が非常に弱い場合は、それよりもさらに低損失のものに変更することを促すようにする。
【0064】
また、携帯端末装置120は、電波強度に応じて、第1アンテナ111aの増設を促す旨を報知してもよい。具体的には、携帯端末装置120は、電波強度がわずかに弱い場合は、第1アンテナ111aを1機増設することを促し、電波強度が非常に弱い場合は、第1アンテナ111aを2機増設することを促すようにしてもよい。
【0065】
変形例2によれば、電波状態が弱い場合に電波強度を高めることを促すことができるため、通信環境を改善させることができる。
【0066】
(変形例3)
次に、実施形態の変形例3について説明する。上述した実施形態では、現在地の情報と、雨量の情報と、下水道ごとに設定される水の流入の危険度情報500とに基づいて危険に関する警告を行うようにした。変形例3では、危険度情報500を用いずに、現在地の情報と、雨量の情報とに基づいて危険に関する警告を行う構成について説明する。変形例3において、携帯端末装置120は、自装置の現在地の情報と、周辺の雨量の情報とを取得する。そして、携帯端末装置120は、現在地周辺で雨雲が近付いた場合(または雨が降った場合)に、危険に関する警告を行うようにする。
【0067】
変形例3によれば、携帯端末装置120が危険度情報500を記憶していなくても、周辺に雨雲が近付いたか否かに応じて警告を行うことができる。このため、警告を簡易に行うことができる。
【0068】
(変形例4)
次に、実施形態の変形例4について説明する。上述した実施形態では、現在地の情報と、雨量の情報と、下水道ごとに設定される水の流入の危険度情報500とに基づいて危険に関する警告を行うようにした。変形例4では、マンホールに設けたセンサ(マンホールセンサ)の検出結果に基づいて、危険に関する警告を行う構成について説明する。変形例4において、マンホールセンサは、下水道の情報(例えば、水位、水質、流量等)を検出する。マンホールセンサの検出結果は、所定のサーバ装置に記憶される。携帯端末装置120は、自装置の現在地の情報を取得するとともに、サーバ装置から周辺のマンホールによって検出された下水道の情報を取得する。
【0069】
そして、携帯端末装置120は、下水道の情報を参照し、現在地周辺の水位が上昇している場合や、現在地周辺の流量が増加している場合に、危険に関する警告を行うようにする。また、携帯端末装置120は、周辺の下水道の水位および流量や、当該下水道までの距離に基づいて、現在地の下水道が危険となる予測時刻を算出して提示するようにしてもよい。
【0070】
変形例4によれば、現在地周辺の下水道の情報に応じた警告を行うことができる。したがって、下水道内で作業する地下作業スタッフSt2の安全性の向上を図ることができる。
【0071】
(変形例5)
次に、実施形態の変形例5について説明する。上述した実施形態では、圏外領域102を下水道とした。変形例5では、圏外領域102を下水道以外の場所とする。具体的には、圏外領域102は、例えば、雑居ビルの地下、貯蔵タンク、地下に設置される機器(排水槽、空調、ボイラー、給水ポンプ棟における地下に設置される機器)などであり、作業スタッフStが進入して作業する場所である。このような場所で作業スタッフStが作業する場合も、本実施形態に係る無給電無線中継装置110を簡単に設営することができる。また、下水道以外の場所で作業する作業スタッフStの事故を未然に防止することができる。
【0072】
(変形例6)
次に、実施形態の変形例6について説明する。上述した実施形態では、電波状態の良否の判断において(ステップS602参照)、一例として、携帯端末装置120が、所定時間の間隔でデータを受信していれば良好であると判断し、所定時間の間隔でデータを受信していなければ不良であると判断することについて説明した。変形例6では、このような構成に加えて又は代えて、複数の携帯端末装置120同士でデータ(例えば、電子メールやショートメール)の送受信を行うようにする構成について説明する。
【0073】
具体的に説明すると、変形例6において、載置部114には、複数の携帯端末装置120が載置されているものとする。複数の携帯端末装置120(ペアとなる携帯端末装置120)は、それぞれ、当該機器間でのデータの送受信を行う機能のオンとオフの設定が可能である。当該機能がオンになると、携帯端末装置120は、それぞれ送信側と受信側との設定を行う。送信側の携帯端末装置120ではデータの送信タイミングの設定が可能であり、また、受信側の携帯端末装置120ではデータの受信タイミングの設定が可能である。送信側の携帯端末装置120は、送信タイミングになると、受信側の携帯端末装置120に宛てて、無線基地局103へデータを送信する。受信側の携帯端末装置120は、受信タイミングになると、送信側の携帯端末装置120から送信されたデータを、無線基地局103を介して送信する。
【0074】
受信側の携帯端末装置120は、通信エラーを報知することが可能である。例えば、受信側の携帯端末装置120は、所定期間データを受信できなかったときや、所定回数連続してデータを受信できなかったときに、通信エラーを報知する。なお、送信側と受信側とのペアを作るに際して、複数の携帯端末装置で互いに近距離無線通信(例えば、bluetooth:登録商標)を用いて、ペアを作るようにしてもよい。
【0075】
また、送信側と、受信側とは、それぞれ、1台に限らず、複数台としてもよい。例えば、送信側の携帯端末装置120を複数台とし、受信側の携帯端末装置120を1台としてもよい。また、送信側の携帯端末装置120を1台とし、受信側の携帯端末装置120を複数台としてもよい。さらに、送信側の携帯端末装置120を複数台とし、受信側の携帯端末装置120も複数台としてもよい。
【0076】
また、複数のペアを作るようにし、異なる通信キャリアを利用するようにしてもよい。例えば、あるペアについては通信会社A社を利用し、別のペアについては通信会社B社を利用するようにしてもよい。
【0077】
変形例6によれば、通信エラーをいち早く発見することができる。これにより、作業スタッフStに通信エラーをいち早く認識させることができるため、早期に通信エラーを解消させることができる。
【0078】
(変形例7)
次に、実施形態の変形例7について説明する。変形例7では、通信エラーの報知に関し、訓練用のモード(以下「訓練モード」という。)を実行可能な構成について説明する。訓練モードは、電波強度が低下しやすい状態を意図的に作らせて、通信エラーを行うようにしたモードである。変形例7において、携帯端末装置120は、訓練モードを開始するにあたり、通信エラーが生じていない状態の電波強度を記憶しておく。訓練モードは、第1の訓練と、第2の訓練とを含む。
【0079】
第1の訓練において、携帯端末装置120は、例えば、第1アンテナ111aを転倒させる旨の指示を行う。第1アンテナ111aが転倒すると、電波強度は低下しやすい。当該指示の後、電波強度が通信不可能なレベルになったときには、携帯端末装置120は、通信エラーを報知する。一方で、無線基地局103が近くに存在する場合など、電波強度が低下したしても通信可能なレベルにある場合には、当該通信エラーが生じない旨を報知する。
【0080】
また、第2の訓練において、携帯端末装置120は、携帯端末装置120を第2アンテナ111bから離す旨の指示を行う。当該指示の後、電波強度が通信不可能なレベルになったときには、携帯端末装置120は、通信エラーを報知する。
【0081】
変形例7によれば、訓練モードを行うことにより、作業開始時などに、通信エラーがきちんと報知されるか否かを確認することができる。また、第1の訓練において通信可能なレベルにあったとすると、訓練モード後における通常の使用において通信エラーが生じた場合に、携帯端末装置120は、当該通信エラーの原因を、携帯端末装置120と第2アンテナ111bとの距離にあるものと推定して報知することができる。したがって、通信エラーを早期に解消させることができる。
【0082】
(変形例8)
次に、実施形態の変形例8について説明する。上述した実施形態では、アンテナ111として、周波数700MHz~6GHzに対応する広帯域アンテナを用いる構成ことについて説明した。変形例8では、アンテナ111として、狭帯域アンテナを用いる構成について説明する。
【0083】
変形例8において、アンテナ111には、例えば、700MHz帯といった最も低い周波数帯に対応する狭帯域アンテナを用いる。一般に、無線通信機器は周波数が高くなるほど、要求される製作技術が高くなる。言い換えれば、周波数が高くなるほど、コストアップに繋がる。そこで、最も低い700MHz帯に絞って、無給電無線中継装置110を構築すれば、コスト的に有利になり、かつ通信も可能になる。なお、アンテナ111は、例えば、3500MHz帯(3.5GHz帯)といった高い周波数帯に対応する狭帯域アンテナを用いることも可能である。
【0084】
変形例8によれば、無給電無線中継装置110を簡単かつ低コストで設営することができる。
【0085】
(指向性アンテナを用いた場合について)
次に、指向性アンテナを用いた場合について補足する。上述した実施形態では、第2アンテナ111bを無指向性アンテナとした。ここで、第2アンテナ111bを指向性アンテナとすることを想定してみる。指向性アンテナは、アンテナの向きによってレベルが異なるアンテナである。指向性アンテナを用いることにより、第2アンテナ111bにおける電波強度を高めることができかもしれない。しかしながら、指向性アンテナは、空間波としては放射するエネルギーが弱いため、第2アンテナ111bを指向性アンテナとすることは技術的に難しいことがある。
【0086】
また、上述したように、第1アンテナ111aを指向性アンテナとすることも可能であるが、これについても補足する。携帯端末装置120が接続する無線基地局103は、通信の混雑状況等に応じて通信キャリアによって設定される。このため、第1アンテナ111aを指向性アンテナとしたとすると、作業スタッフStが接続先の無線基地局103を探す作業を行う。また、通信事業者側の制御によって、通信可能になる。
【0087】
上述した実施形態における携帯端末装置120の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
101…通信可能領域、102…圏外領域、110…無給電無線中継装置、111a…第1アンテナ、111b…第2アンテナ、113…信号伝送路、114…載置部、120…携帯端末装置、401…CPU、402…ROM、403…RAM、404…メモリ、405…通信インタフェース、411…GPSユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6