(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186267
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ガス測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20221208BHJP
【FI】
G01N21/3504
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094406
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒谷 克彦
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB01
2G059CC04
2G059CC05
2G059CC06
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE11
2G059FF04
2G059HH01
2G059KK03
2G059MM01
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】開発コストを抑えつつ、精度を向上させることができるガス測定装置を提供する。
【解決手段】ガス測定装置1は、試料セル9と、光源7と、試料セル9を透過した光強度を検出する検出部20と、試料ガス中のガス成分を繰返し分析するCPU31とを備える。検出部20は、分析対象のガス成分を検出する第1検出器21と、分析対象のガス成分の干渉補正用の複数の成分を検出する複数の第2検出器25,26とを含む。インターフェース回路36は、第1検出器21の検出信号をCPU31に入力できるように前処理を行ないCPU31に送信する前処理回路41,42,43と、検出器25,26の検出信号をCPU31に入力できるように前処理を行ないCPU31に時分割で順次送信する第2信号処理部44とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスを充填する試料セルと、
前記試料セルに光を照射する光源と、
前記光源から前記試料セルに照射された光が前記試料セルを透過した光強度を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて前記試料ガス中のガス成分を繰返し分析する中央処理装置と、
前記検出部が検出した検出信号を前記中央処理装置に送信するインターフェース回路とを備え、
前記検出部は、
前記試料ガス中の分析対象のガス成分を検出する第1検出器と、
前記分析対象のガス成分の干渉補正用の複数の成分を検出する複数の第2検出器とを含み、
前記インターフェース回路は、
前記第1検出器の検出信号を前記中央処理装置に入力できるように前処理を行ない前記中央処理装置に送信する第1信号処理部と、
前記複数の第2検出器の検出信号を前記中央処理装置に入力できるように前処理を行ない前記中央処理装置に時分割で順次送信する第2信号処理部とを含む、ガス測定装置。
【請求項2】
前記光源が前記試料セルに照射する光は、赤外光である、請求項1に記載のガス測定装置。
【請求項3】
前記分析対象のガス成分は、SO2ガスと、NOガスと、COガスとを含み、
前記第1検出器は、SO2ガス検出器と、NOガス検出器と、COガス検出器とを含み、
前記干渉補正用の複数の成分は、CH4ガスと、CO2ガスとを含み、
前記複数の第2検出器は、CH4ガス検出器と、CO2ガス検出器とを含み、
前記中央処理装置は、第1ポート、第2ポート、第3ポート、第4ポートを有し、
前記第1信号処理部は、
前記SO2ガス検出器の出力信号を前処理して前記第1ポートに出力する第1前処理回路と、
前記NOガス検出器の出力信号を前処理して前記第2ポートに出力する第2前処理回路と、
前記COガス検出器の出力信号を前処理して前記第3ポートに出力する第3前処理回路とを有し、
前記第2信号処理部は、前記CH4ガス検出器の出力信号を前処理した信号と、前記CO2ガス検出器の出力信号を前処理した信号とを、交互に前記第4ポートに出力するように構成される、請求項2に記載のガス測定装置。
【請求項4】
前記第1~第3前処理回路の各々は、
対応する検出器の出力信号のゲインを調整する第1アナログ回路と、
前記第1アナログ回路の出力を前記第1~第3ポートのうちの対応するポートに入力できるように変換する第1変換回路とを含み、
前記第2信号処理部は、
前記CH4ガス検出器の出力信号のゲインを調整する第2アナログ回路と、
前記CO2ガス検出器の出力信号のゲインを調整する第3アナログ回路と、
前記第2アナログ回路の出力と前記第3アナログ回路の出力とを交互に選択するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサの出力を前記第4ポートに入力できるように変換する第2変換回路とを含む、請求項3に記載のガス測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9-49797号公報(特許文献1)には、試料ガスと基準ガスを切り替えてガス成分の濃度を測定する赤外線ガス分析計が開示されている。この赤外線ガス分析計では、三方弁が切り換えられ、試料ガスと基準ガスとが所定周期で交互にセル内に供給される。これに並行して、モータによってセクタが回転され、光源からの赤外光がセル内に断続的に照射される。これにより、検出器は、試料ガスまたは基準ガスを透過した赤外光を交互に検出し、基準ガスの検出出力と試料ガスの検出出力の出力比によってガス成分の分析が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特開平9-49797号公報に開示された赤外線ガス分析計は、試料ガス中のSO2の濃度を検出するものであったが、SO2の他、CO、CO2、NOx等にも、環境基準が定められており、濃度を監視するニーズがある。したがって、複数のガス成分を測定できる多成分計測器も開発されている。
【0005】
複数のガス成分として、たとえばSO2、CO、CO2、NOを測定するには、4つの検出器とこれらからの出力信号を受ける少なくとも4つのポートを有するCPU(Central Processing Unit)が必要となる。
【0006】
近年、さらなる検出精度の向上のため、検出対象のガス成分以外に、検出対象ガスに干渉する成分を検出して検出結果を補正することが求められている。しかしながら、従前の装置を改良して使用するためには、CPUの入力ポートが不足する事態がしばしば発生する。しかしながら、CPUを変更して新たな装置を設計、製造するには、多額の開発コストがかかってしまう。
【0007】
本開示は、開発コストを抑えつつ、精度を向上させることができるガス測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のガス測定装置は、試料ガスを充填する試料セルと、試料セルに光を照射する光源と、光源から試料セルに照射された光が試料セルを透過した光強度を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて試料ガス中のガス成分を繰返し分析する中央処理装置と、検出部が検出した検出信号を中央処理装置に送信するインターフェース回路とを備える。検出部は、試料ガス中の分析対象のガス成分を検出する第1検出器と、分析対象のガス成分の干渉補正用の複数の成分を検出する複数の第2検出器とを含む。インターフェース回路は、第1検出器の検出信号を中央処理装置に入力できるように前処理を行ない中央処理装置に送信する第1信号処理部と、複数の第2検出器の検出信号を中央処理装置に入力できるように前処理を行ない中央処理装置に時分割で順次送信する第2信号処理部とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示におけるガス測定装置は、既存の構成に対して、一部の信号処理部を変更するのみで済むため、中央処理装置を変える必要がなく、開発工数が少なくて済む。また、既存の装置を改良して、精度を改善することも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態のガス測定装置の全体の構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図1の制御装置30の構成を示すブロック図である。
【
図3】CPUの各ポートに入力される信号を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
図1は、本実施の形態のガス測定装置の全体の構成を概略的に示す図である。
図1に示すガス測定装置1は、試料ガスラインMLと、基準ガスラインRLと、切換弁5と、試料セル9とを備える。
【0013】
試料ガスラインMLには、試料ガスMが導入される。試料ガスラインMLは、試料ガスMが通過するフィルタ2と、試料ガスMを送出するポンプ3と、試料ガスMの流量を調整するニードル弁4とを含む。
【0014】
基準ガスラインRLには、基準ガスRが導入される。基準ガスラインRLは、基準ガスRが通過するフィルタ12と、基準ガスRを送出するポンプ13と、基準ガスRの流量を調整するニードル弁14とを含む。
【0015】
切換弁5は、試料ガスラインMLに配置された三方弁5Mと、基準ガスラインRLに配置された三方弁5Rとを含む。三方弁5M,5Rは、選択信号SELによって、基準ガスラインRLと試料ガスラインMLのいずれか一方を通過したガスを試料セル9に送り、他方を通過したガスを排気するように流路を構成する。選択信号SELを切替えることによって、試料セルには、基準ガスと試料ガスが交互に充填される。
【0016】
ガス測定装置1は、モータ6と、セクタ8と、光源7と、検出部20と、制御装置30とをさらに備える。
【0017】
試料セル9は、ガス導入口9aとガス排出口9bとを有する。切換弁5を介して試料ガスまたは基準ガスがガス導入口9aから試料セル9内に供給され、ガス排出口9bから排出される。試料セル9の一端には赤外光を発する光源7が、また、試料セル9の他端には、試料セル9を透過した赤外光を検出するための検出部20が配設されている。
【0018】
光源7と試料セル9端部との間には赤外光を断続するためのセクタ8が設けられている。このセクタ8は、遮光部と透光部とを有する。セクタ回転軸8cを中心としてセクタ8が回転するよう構成される。透光部が試料セル9上にある場合に赤外光が試料セル9内に照射され、遮光部が試料セル9上にある場合に試料セル9内への赤外光の照射が遮断される。制御装置30は、モータ6を介してセクタ8の回転位置制御を行ない、また、モータ6の回転に同期するように選択信号SELによって切換弁5の駆動制御を行なう。
【0019】
検出部20は、測定対象ガスを検出する第1検出器21と、補正用ガスを検出する第2検出器とを含む。第1検出器21は、SO2,NO,COをそれぞれ検出対象とする、SO2検出器22と、NO検出器23と、CO検出器24とを含む。第2検出器は、CO2,CH4をそれぞれ検出対象とする、CO2検出器25と、CH4検出器26とを含む。
【0020】
SO2、NO、COは、それぞれ赤外域での特有の波長の光(SO2:7.4μm、NO:5.3μm、CO:4.6μm)を吸収する。したがって、これらのそれぞれの波長にのみ感応する検出器によって、測定ガス中を通過した後の赤外吸収を測定すれば、それぞれの成分の濃度が測定できる。
【0021】
各検出器は、その内部に試料ガス中の検出対象ガスが封入されており、内部の圧力変化によって検出対象ガス固有の周波数の赤外光強度を検出する。そして、検出部20での検出出力を受ける制御装置30は、所定の信号処理を行ない、試料ガス中の測定ガス濃度を示す濃度値を算出する。
【0022】
図2は、
図1の制御装置30の構成を示すブロック図である。
図1および
図2を参照して、制御装置30の内部構成を含めたガス測定装置1の構成を説明する。
【0023】
ガス測定装置1は、試料セル9と、基準ガスと試料ガスとを選択的に試料セルに供給する切換弁5と、試料セルに光を照射する光源7と、光源7から試料セル9に照射された光が試料セル9を透過した光強度を検出する検出部20を備える。
【0024】
ガス測定装置1は、制御装置30をさらに備える。制御装置30は、インターフェース回路36と、演算部(CPU)31と、記憶部(メモリ)32と、濃度表示部33と、入力部34と出力部35とを備える。ユーザは、入力部34を介して、校正、設定等のための入力を行なう。またCPU31は、出力部35から濃度値等を出力する。
【0025】
インターフェース回路36は、検出部20が検出した検出信号をCPU31に送信する。CPU31は、検出部20の検出結果に基づいて試料ガス中のガス成分を繰返し分析する。
【0026】
検出部20は、分析対象のガス成分(SO2,NO,CO)を検出する第1検出器21と、分析対象のガス成分の干渉補正用の複数の成分(CO2,CH4)をそれぞれ検出するCO2検出器25およびCH4検出器26とを含む。インターフェース回路36は、第1検出器21の検出信号をCPU31に入力できるように前処理を行ないCPU31に送信する第1信号処理部(41,42,43)と、CO2検出器25およびCH4検出器26の検出信号をCPU31に入力できるように前処理を行ないCPU31に時分割で交互に送信する第2信号処理部(44)とを含む。
【0027】
光源7が試料セルに照射する光は、赤外光である。なお、紫外光を使用するガス測定装置であっても、本実施の形態と同様に補正成分を時分割で交互に送信することもできる。
【0028】
分析対象のガス成分は、SO2ガスと、NOガスと、COガスとを含む。第1検出器21は、SO2検出器22と、NO検出器23と、CO検出器24とを含む。干渉補正用の複数の成分は、CH4ガスと、CO2ガスとを含む。CPU31は、第1ポートP1、第2ポートP2、第3ポートP3、第4ポートP4を有する。
【0029】
第1信号処理部(41,42,43)は、SO2検出器22の出力信号を前処理して第1ポートP1に出力する第1前処理回路41と、NO検出器23の出力信号を前処理して第2ポートP2に出力する第2前処理回路42と、CO検出器24の出力信号を前処理して第3ポートP3に出力する第3前処理回路43とを有する。
【0030】
第2信号処理部44は、CH4検出器26の出力信号を前処理した信号と、CO2検出器25の出力信号を前処理した信号とを、交互に第4ポートP4に出力するように構成される。
【0031】
第1前処理回路41は、SO2検出器22の出力信号のゲインを調整するアナログ回路51と、アナログ回路51の出力を第1ポートP1に入力できるように変換する変換回路52とを含む。
【0032】
第2前処理回路42は、NO検出器23の出力信号のゲインを調整するアナログ回路53と、アナログ回路53の出力を第2ポートP2に入力できるように変換する変換回路54とを含む。
【0033】
第3前処理回路43は、CO検出器24の出力信号のゲインを調整するアナログ回路55と、アナログ回路55の出力を第3ポートP3に入力できるように変換する変換回路56とを含む。
【0034】
第2信号処理部44は、CH4検出器24の出力信号のゲインを調整する第2アナログ回路58と、CO2検出器25の出力信号のゲインを調整する第3アナログ回路57と、第2アナログ回路58の出力と第3アナログ回路57の出力とを交互に選択するマルチプレクサ59と、マルチプレクサ59の出力を第4ポートP4に入力できるように変換する第2変換回路60とを含む。
【0035】
上記のように構成し、本実施の形態では、CO2検出器25の信号とCH4検出器の信号とを、時間的に交互に切り替えて1つのポートP4に取り込んで、CO2濃度とCH4濃度をそれぞれ演算する。
【0036】
CO2とCH4は共に干渉補正用の測定対象であり、測定の主対象である大気汚染成分SO2,NOまたはダイオキシン対策の不完全燃焼監視用の測定対象であるCOではない。したがって、CO2とCH4については、検出器からの信号を間引いて濃度演算して最小検出限界が少し(約1.4倍)大きくなっても、ガス測定には差し支えない。
【0037】
図3は、CPUの各ポートに入力される信号を説明するための図である。CPU31のポートP1~P3は、対応する検出器からの信号を切換なしに連続的に受ける。制御装置30は、選択信号SELによって、1サイクル20秒の間で切換弁5の切換を2回実行する。1サイクル20秒の周期の前半には基準ガスラインRLからの基準ガスRが試料セル9に充填されたときの検出信号が入力され、後半には試料ガスラインMLからの試料ガスMが試料セル9に充填されたときの検出信号が入力される。
【0038】
図3において、Rは基準ガスが試料セル9に充填されたときの検出信号(基準信号)を示し、Mは試料ガスが試料セル9に充填されたときの検出信号(測定信号)を示す。CPU31は、基準信号と測定信号とを所定の演算式に適用することによって、試料ガス中の測定対象ガスの濃度を演算する。
【0039】
ポートP4は、CO2検出器25からの信号とCH4検出器26からの信号を1サイクル20秒毎に切り換えて受ける。CPU31は、選択信号SEL2を用いて、マルチプレクサ59のA入力とB入力を
図3に示すように選択する。選択信号SEL2は、切換弁5の選択信号SELの2倍の周期となる。CPU31は、干渉補正用のCO
2,CH
4についても、基準信号と測定信号とを所定の演算式に適用することによって、試料ガス中の測定対象ガスの濃度を演算する。この濃度が更新される頻度は、メイン分析対象のSO
2,NO,COと比べると2分の1となる。なお、本実施の形態では、選択信号SEL2はCPU31から出力されているが、第2信号処理部44に分周回路を設けることで、選択信号SELを使って、第2信号処理部44内でSEL2を作ることもできる。
【0040】
CPU31は、1サイクル20秒毎に更新されるSO2,NO,COの濃度を、2サイクル40秒毎に更新されるCO2,CH4の濃度によって補正する。
【0041】
本実施の形態のガス測定装置は、既存のガス測定装置を改良して実現することも容易である。たとえば、第2信号処理部44の代わりに前処理回路41~43と同様な構成によって干渉成分であるCOの補正のみを行なっており、干渉成分であるCH4の補正を行なっていなかった装置に対しても、各前処理回路41が1枚の差し替え可能な基板で構成されておれば、既存の基板のうち1枚を第2信号処理部44の基板に差し替え、CPU31の演算処理をソフトウエア変更によって変更するだけで、干渉成分であるCH4の補正を導入できる。
【0042】
この場合には、既納品に対して改造が容易で、装置改造時間も半日程度ですむので、欠測時間を短くでき、それにより、サービス員の工数も抑えられる。
【0043】
なお、以上説明した実施の形態では、検出対象のガス成分が3種類、干渉補正用のガス成分が2種類の場合について説明したが、これらの数は変更しても良い。検出対象のガス成分が1~2種類の場合および4種類以上であってもよい。また干渉補正用のガス成分が3種類以上であっても良い。このような場合でも、検出対象のガス成分は1成分あたり1ポートを使用し、干渉補正用のガス成分を時分割で順次CPUの1ポートに入力することによって使用するポート数を減らすことができる。
【0044】
また、本実施の形態では、基準ガスを使用する赤外線ガス分析計について説明したが、基準ガスを使用せずに、試料ガスの測定信号だけで濃度演算する赤外線ガス分析計、および、基準ガスを流通させるのではなく、セルに充填して封止した基準セルを使う赤外線ガス分析計にも、同様の考え方を適用できる。
【0045】
[態様]
上述した例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0046】
(第1項)本開示のガス測定装置は、試料ガスを充填する試料セルと、試料セルに光を照射する光源と、光源から試料セルに照射された光が試料セルを透過した光強度を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて試料ガス中のガス成分を繰返し分析する中央処理装置と、検出部が検出した検出信号を中央処理装置31に送信するインターフェース回路とを備える。検出部は、試料ガス中の分析対象のガス成分を検出する第1検出器と、分析対象のガス成分の干渉補正用の複数の成分を検出する複数の第2検出器とを含む。インターフェース回路は、第1検出器の検出信号を中央処理装置に入力できるように前処理を行ない中央処理装置に送信する第1信号処理部と、複数の第2検出器の検出信号を中央処理装置に入力できるように前処理を行ない中央処理装置に時分割で順次送信する第2信号処理部とを含む。このような構成とすることによって中央処理装置の入力ポートが少ない場合でも、干渉補正用の複数の成分の検出結果を中央処理装置で扱うことができる。
【0047】
(第2項)好ましくは、光源が試料セルに照射する光は、赤外光である。
【0048】
(第3項)より好ましくは、分析対象のガス成分は、SO2ガスと、NOガスと、COガスとを含む。第1検出器は、SO2検出器と、NO検出器と、CO検出器とを含む。干渉補正用の複数の成分は、CH4ガスと、CO2ガスとを含む。複数の第2検出器は、CH4検出器と、CO2検出器とを含む。中央処理装置は、第1ポート、第2ポート、第3ポート、第4ポートを有する。第1信号処理部は、SO2検出器の出力信号を前処理して第1ポートに出力する第1前処理回路と、NO検出器の出力信号を前処理して第2ポートに出力する第2前処理回路と、CO検出器の出力信号を前処理して第3ポートに出力する第3前処理回路とを有する。第2信号処理部は、CH4検出器の出力信号を前処理した信号と、CO2検出器の出力信号を前処理した信号とを、交互に第4ポートに出力するように構成される。
【0049】
(第4項)さらに好ましくは、第1~第3前処理回路の各々は、対応する検出器の出力信号のゲインを調整する第1アナログ回路と、第1アナログ回路の出力を第1~第3ポートのうちの対応するポートに入力できるように変換する第1変換回路とを含む。第2信号処理部は、CH4検出器の出力信号のゲインを調整する第2アナログ回路と、CO2検出器の出力信号のゲインを調整する第3アナログ回路と、第2アナログ回路の出力と第3アナログ回路の出力とを交互に選択するマルチプレクサと、マルチプレクサの出力を第4ポートに入力できるように変換する第2変換回路とを含む。
【0050】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1 ガス測定装置、2,12 フィルタ、3,13 ポンプ、4,14 ニードル弁、5 切換弁、5M,5R 三方弁、6 モータ、7 光源、8 セクタ、8c セクタ回転軸、9 試料セル、9a ガス導入口、9b ガス排出口、20 検出部、21~26 検出器、30 制御装置、31 中央処理装置、33 濃度表示部、34 入力部、35 出力部、36 インターフェース回路、41~43 前処理回路、44 第2信号処理部、51,53,55,57,58 アナログ回路、52,54,56,60 変換回路、59 マルチプレクサ、ML 試料ガスライン、P1~P4 ポート、RL 基準ガスライン。