IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-車両用空調装置 図1
  • 特開-車両用空調装置 図2
  • 特開-車両用空調装置 図3
  • 特開-車両用空調装置 図4
  • 特開-車両用空調装置 図5
  • 特開-車両用空調装置 図6
  • 特開-車両用空調装置 図7
  • 特開-車両用空調装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186273
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20221208BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B60H1/00 102P
B60H1/00 102B
B60H1/22 651A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094412
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 康太
(72)【発明者】
【氏名】上村 幸男
(72)【発明者】
【氏名】後藤 良寛
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA44
3L211CA06
3L211DA04
3L211DA05
3L211DA06
3L211DA96
(57)【要約】
【課題】車室内の空気における二酸化炭素の濃度の上昇を抑制可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】車室内の空気である内気および車室外の空気である外気を吸い込んで車室内に冷却した空気を吹き出す車両用空調装置は、内気を吸い込む内気導入口11、外気を吸い込む外気導入口12、吸い込んだ内気を車室内に導く内気通路151、吸い込んだ外気を車室外に導く外気通路152を含むケーシング10と、内気通路および外気通路に気流を発生させる送風機35と、冷媒の蒸発潜熱を利用して内気通路を流れる内気から吸熱することで内気を冷却する蒸発部41および蒸発部において内気から吸熱した冷媒と外気通路を流れる外気とを熱交換させて冷媒を放熱する放熱部42を有する冷凍サイクルと、外気導入口から吸い込んだ外気の一部を内気通路に導く外気導入部50と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の空気である内気および車室外の空気である外気を吸い込んで前記車室内に冷却した空気を吹き出す車両用空調装置であって、
前記内気を吸い込む内気導入口(11)、前記外気を吸い込む外気導入口(12)、吸い込んだ前記内気を前記車室内に導く内気通路(151)、吸い込んだ前記外気を前記車室外に導く外気通路(152)を含むケーシング(10)と、
前記内気通路および前記外気通路に気流を発生させる送風機(35)と、
冷媒の蒸発潜熱を利用して前記内気通路を流れる前記内気から吸熱することで前記内気を冷却する蒸発部(41)および前記蒸発部において前記内気から吸熱した前記冷媒と前記外気通路を流れる前記外気とを熱交換させて前記冷媒を放熱する放熱部(42)を有する冷凍サイクルと、
前記外気導入口から吸い込んだ前記外気の一部を前記内気通路に導く外気導入部(50)と、を備えた車両用空調装置。
【請求項2】
前記放熱部は、前記外気通路に設けられており、
前記外気導入部は、前記外気通路における前記放熱部が設けられている部位より空気流れ上流側に設けられている請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記ケーシングは、前記内気通路と前記外気通路とを仕切る通路仕切部(16)を有し、
前記外気導入部は、前記通路仕切部に連なっており、前記外気通路を流れる前記外気の一部を前記内気通路に導く請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記送風機は、前記通路仕切部より空気流れ上流側に設けられ、且つ、前記内気を吸い込み、吸い込んだ前記内気を吹き出すことで前記内気通路に気流を発生させる第1送風ファン(33)と、前記外気を吸い込み、吸い込んだ前記外気を吹き出すことで前記外気通路に気流を発生させる第2送風ファン(34)と、前記第1送風ファンが吸い込んだ前記内気および前記第2送風ファンが吸い込んだ前記外気が混合することを抑制する内外気仕切部(35)とを有し、
前記通路仕切部は、前記第1送風ファンと前記第2送風ファンの並ぶ方向をファン並び方向としたとき、前記ファン並び方向における前記通路仕切部が設けられる位置が前記内外気仕切部に重なっており、
前記外気導入部は、前記通路仕切部と前記内外気仕切部との間に設けられ、空気流れ上流側から空気流れ下流側に向かって前記通路仕切部に近づくように傾斜している請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記放熱部および前記蒸発部は、熱交換仕切部(43)を介して連なっており、
前記蒸発部は、前記内気通路の内部に設けられ、
前記通路仕切部は、前記熱交換仕切部より空気流れ上流側に設けられ、前記放熱部と前記蒸発部の並ぶ方向を熱交換並び方向としたとき、前記熱交換並び方向における前記通路仕切部が設けられる位置が前記熱交換仕切部に重なっており、
前記外気導入部は、前記通路仕切部と前記熱交換仕切部との間に設けられ、空気流れ上流側から空気流れ下流側に向かって前記通路仕切部から離れるように傾斜している請求項3または4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記通路仕切部は、前記外気通路と前記内気通路とを連通させる流路貫通孔(161)を形成する貫通孔形成部(162)を有しており、
前記外気導入部は、前記貫通孔形成部に連なり、空気流れ上流側から空気流れ下流側に向かって前記通路仕切部から離れるように傾斜している請求項3ないし5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内から吸い込んだ空気(以下、内気)が流れる内気通路と、車室外から吸い込んだ空気(以下、外気)が流れる外気通路と、ヒートポンプサイクルを構成する熱交換ブロックとを備えた車両用空調装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用空調装置は、内気通路に吸い込んだ内気を熱交換ブロックにおいて冷媒と熱交換させて冷却し、再度車室内に吹き出すことで内気を車室内と車両用空調装置との間で循環させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-74833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような内気を循環させて車室内の空調を行う車両用空調装置を長時間継続して使用すると、乗員の呼吸によって、車室内の空気における二酸化炭素の濃度が時間の経過とともに上昇しやすい。しかしながら、車室内の空気における二酸化炭素の濃度の上昇は、乗員の集中力の低下および乗員が眠気および倦怠感を感じやすくする要因となるため好ましくない。このことは、本発明者らの鋭意検討の末に見出された。
【0005】
本開示は、車室内の空気における二酸化炭素の濃度の上昇を抑制可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
車室内の空気である内気および車室外の空気である外気を吸い込んで車室内に冷却した空気を吹き出す車両用空調装置であって、
内気を吸い込む内気導入口(11)、外気を吸い込む外気導入口(12)、吸い込んだ内気を車室内に導く内気通路(151)、吸い込んだ外気を車室外に導く外気通路(152)を含むケーシング(10)と、
内気通路および外気通路に気流を発生させる送風機(35)と、
冷媒の蒸発潜熱を利用して内気通路を流れる内気から吸熱することで内気を冷却する蒸発部(41)および蒸発部において内気から吸熱した冷媒と外気通路を流れる外気とを熱交換させて冷媒を放熱する放熱部(42)を有する冷凍サイクルと、
外気導入口から吸い込んだ外気の一部を内気通路に導く外気導入部(50)と、を備える。
【0007】
これによれば、車両用空調装置は、外気通路に導入した外気の一部を外気導入部によって内気通路に導くことで、外気の一部を車室内に吹き出すことができる。このため、車室内の空気における二酸化炭素の濃度の上昇を抑制することができる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
図2】第1実施形態に係る車両用空調装置の内部を流れる空気の流れを示す図である。
図3】比較例となる車両用空調装置の概略構成図である。
図4】第2実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
図5】第3実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
図6】その他の実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
図7】その他の実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
図8】その他の実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0011】
(第1実施形態)
本実施形態について、図1および図2を参照して説明する。本実施形態では、車室内の空調を行う車両用空調装置1を車両に適用した例を説明する。図1に示すように、車両用空調装置1は、ケーシング10、ダクト部20、送風機30、熱交換器40等を備えている。なお、本実施形態では、図1などに示す矢印DRudが車両用空調装置1を車両に設置した際の上下方向を示し、矢印DRwが車両用空調装置1を車両に設置した際の左右方向を示している。
【0012】
ケーシング10は、車室内に供給する空気が流れる空気流路を形成するものである。ケーシング10は、中空形状で形成されており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた材料(例えば、ポリプロピレン)で構成されている。
【0013】
ケーシング10は、空気流れ最上流側に、内気を導入するための内気導入口11および外気を導入するための外気導入口12が形成されている。また、ケーシング10は、空気流れ最下流側に、内気導入口11から導入した内気を車室内へ導くための内気吹出部13および外気導入口12から導入した外気を車室外へ導くための外気吹出部14が形成されている。そして、ケーシング10は、外気吹出部14にダクト部20が接続されている。
【0014】
ケーシング10の内部には、空気が流れる空気通路15が形成されている。具体的に、空気通路15は、内気が流れる内気通路151および外気が流れる外気通路152を有する、ケーシング10の内部は、通路仕切部16によって、空気通路15の一部が内気通路151および外気通路152に仕切られている。
【0015】
また、空気通路15は、送風機30を収容する送風機収容部153と、熱交換器40を収容する熱交換器収容部154とを有する。空気通路15は、送風機収容部153より空気流れ下流側から熱交換器収容部154の空気流れ上流側に至るまでの空間が、通路仕切部16によって、上下方向DRudの上側が外気通路152で構成され、下側が内気通路151で構成されるように仕切られている。
【0016】
内気通路151は、上流側が内気導入口11に連通し、下流側が内気吹出部13に連通している。外気通路152は、上流側が外気導入口12に連通し、下流側が外気吹出部14に連通している。
【0017】
通路仕切部16は、ケーシング10と一体成形されており、平板状に水平方向に延びている。また、通路仕切部16は、左右方向DRwに沿って、送風機収容部153より空気流れ下流側の部位から熱交換器収容部154の空気流れ上流側の部位まで延びている。また、通路仕切部16の空気流れ上流側の部位には、外気導入口12から吸い込んだ外気の一部を内気通路151に導く外気導入部50が接続されている。外気導入部50の詳細は後述する。
【0018】
内気導入口11は、内気通路151に内気を導入する開口部である。内気導入口11は、車室内のインストルメントパネルの内部において開口している。外気導入口12は、外気通路152に外気を導入する開口部である。外気導入口12は、例えば、不図示のダクトを介して車両の駆動装置を収容する不図示の駆動装置室に開口している。
【0019】
内気吹出部13は、内気通路151に導入した内気を車室内に吹き出すための開口部である。内気吹出部13は、例えば、不図示のダクトを介して車室内における天井に設けられた吹出口に接続されている。
【0020】
外気吹出部14は、外気通路152に導入した外気をケーシング10の外部に吹き出すための開口部である。外気吹出部14は、ダクト部20の空気流れ上流側が接続されており、外気通路152に導入した外気をダクト部20に吹き出す。
【0021】
ダクト部20は、ケーシング10から吹き出された外気を車室外へ導くための空気流路形成部である。ダクト部20は、空気流れ上流側が外気吹出部14に接続されており、空気流れ下流側にダクト吹出部21を有する。ダクト吹出部21は、例えば、車両の駆動装置を収容する不図示の駆動装置室に開口しており、ケーシング10から吹き出された外気を車室外である駆動装置室へ導く。
【0022】
送風機収容部153は、ケーシング10内における内気導入口11および外気導入口12の空気流れすぐ下流側において、内気通路151および外気通路152に亘って形成されている。送風機収容部153の内部には、送風機30が収容されている。
【0023】
送風機30は、空気を吸い込み、吸い込んだ空気を吹き出すことで空気通路15に気流を発生させるものである。本実施形態の送風機30は、回転軸31を有し、回転軸31の軸心方向に沿って空気を吸い込み、吸い込んだ空気を回転軸31の径方向外側に向けて吹き出す遠心送風機である。本実施形態の送風機30は、回転軸31が上下方向DRudに沿って配置されている。また、送風機30は、モータ32と、第1送風ファン33と、第2送風ファン34と、内外気仕切部35とを有する。
【0024】
モータ32は、外部から供給される電力によって第1送風ファン33および第2送風ファン34が回転するための回転力を出力する電動式モータである。モータ32は、回転軸31を介して第1送風ファン33および第2送風ファン34を回転させる。モータ32は、空気通路15内において、ボルトやビス等の機械的な締結手段により固定されている。なお、モータ32は、ケーシング10の外部に配置されていてもよい。
【0025】
回転軸31は、モータ32が出力する回転力を第1送風ファン33および第2送風ファン34に伝達するものである。回転軸31は、棒形状の金属部材であり、第1送風ファン33および第2送風ファン34を貫通して第1送風ファン33および第2送風ファン34に取り付けられている。回転軸31は、モータ32が出力する回転力によって回転することでモータ32が出力する回転力を第1送風ファン33および第2送風ファン34に伝達する。
【0026】
第1送風ファン33および第2送風ファン34は、それぞれが複数のブレードを有し、回転軸31と一体に回転することでケーシング10内の空気通路15に気流を発生させるものである。第1送風ファン33および第2送風ファン34は、内外気仕切部35を介して接続されており、上下方向DRudに沿って並んで配置されている。すなわち、第1送風ファン33と第2送風ファン34の並ぶ方向をファン並び方向としたとき、当該ファン並び方向は、上下方向DRudに一致する。
【0027】
第1送風ファン33は、内気通路151内に配置されており、上下方向DRudの上側に内気導入口11から導入された内気を吸い込む内気吸込口331を有する。内気吸込口331は、内気導入口11に対向している。第1送風ファン33は、内気吸込口331から吸い込んだ内気を内気通路151の下流側に向かって吹き出すことで、内気通路151内に気流を発生させる。
【0028】
第2送風ファン34は、外気通路152内に配置されており、上下方向DRudの下側に外気導入口12から導入された外気を吸い込む外気吸込口341を有する。第2送風ファン34は、外気吸込口341から吸い込んだ外気を外気通路152の下流側に向かって吹き出すことで、外気通路152内に気流を発生させる。
【0029】
内外気仕切部35は、送風機収容部153において、第1送風ファン33が吸い込んだ内気および第2送風ファン34が吸い込んだ外気が混合することを抑制する仕切部材である。内外気仕切部35は、水平方向に沿って延びる平板状に形成されている。内外気仕切部35は、第1送風ファン33および第2送風ファン34が回転する際に第1送風ファン33および第2送風ファン34と一体に回転する。
【0030】
内外気仕切部35が配置される上下方向DRudの位置は、通路仕切部16が配置される上下方向DRudの位置に重なっている。換言すれば、内外気仕切部35および通路仕切部16は、ファン並び方向における設置位置が重なっている。また、内外気仕切部35は、回転する際に外気導入部50に当接しないように、外気導入部50から離隔されている。
【0031】
これにより、第1送風ファン33および第2送風ファン34からは、外気導入口12から導入された外気および内気導入口11から導入された内気が、互いに区別された状態で内気通路151および外気通路152それぞれの下流側に向かって吹き出される。第1送風ファン33から吹き出された内気および第2送風ファン34から吹き出された外気は、通路仕切部16によって互いに略区別された状態で内気通路151および外気通路152を流れる。通路仕切部16の空気流れ下流側には、熱交換器収容部154が設けられている。
【0032】
熱交換器収容部154は、空気通路15における空気流れ最下流部において、内気通路151および外気通路152に亘って形成されている。熱交換器収容部154の内部には、熱交換器40が収容されている。
【0033】
熱交換器40は、内気通路151を流れる内気と冷媒とを熱交換させることで内気を冷却するとともに、外気通路152を流れる外気と冷媒とを熱交換させることで冷媒を放熱させる冷却部である。熱交換器40は、内気を冷却する蒸発部41および冷媒を放熱させる放熱部42を有するとともに、蒸発部41および放熱部42を仕切る熱交換仕切部43を有する。熱交換器40は、不図示の圧縮機および減圧機構と共に蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成する。
【0034】
蒸発部41および放熱部42は、熱交換仕切部43を介して接続されており、上下方向DRudに沿って並んで配置されている。すなわち、蒸発部41と放熱部42の並ぶ方向を熱交換並び方向としたとき、当該熱交換並び方向は、上下方向DRudに一致する。
【0035】
蒸発部41は、内気通路151内に配置されており、蒸発部41の内部を流れる低温低圧の冷媒が蒸発する際の蒸発潜熱を利用して内気通路151を流れる内気から吸熱することで内気を冷却する蒸発器である。蒸発部41は、熱交換器収容部154における熱交換仕切部43よりも上下方向DRudの上側の略全域に亘って配置されている。これにより、蒸発部41は、内気通路151を流れる略全ての内気を冷却する。
【0036】
放熱部42は、外気通路152内に配置されており、蒸発部41において吸熱して加熱された冷媒と外気通路152を流れる外気とを熱交換させることで冷媒を放熱する凝縮器である。放熱部42は、熱交換器収容部154における熱交換仕切部43よりも上下方向DRudの下側の略全域に亘って配置されている。これにより、外気通路152を流れる略全ての外気は、放熱部42を通過することで加熱される。
【0037】
熱交換仕切部43は、蒸発部41を通過する内気および放熱部42を通過する外気が混合することを抑制する仕切部材である。熱交換仕切部43は、水平方向に沿って延びる平板状に形成されている。熱交換仕切部43が配置される上下方向DRudの位置は、通路仕切部16が配置される上下方向DRudの位置に重なっている。換言すれば、熱交換仕切部43および通路仕切部16は、熱交換並び方向における位置が重なっている。
【0038】
熱交換器40は、熱交換器収容部154に収容される際に、熱交換仕切部43が通路仕切部16およびケーシング10の内壁に当接しないように、熱交換仕切部43が通路仕切部16およびケーシング10の内壁から僅かに離隔されている。
【0039】
これにより、熱交換器40からは、蒸発部41によって冷却された内気が内気通路151における空気流れ下流側に流れ、放熱部42によって加熱された外気が外気通路152における空気流れ下流側に流れる。熱交換器収容部154は、内気吹出部13に連なっている。ケーシング10は、蒸発部41によって冷却された内気が内気吹出部13から車室内に吹出可能に構成されている。また、熱交換器収容部154は、外気吹出部14にも連なっている。ケーシング10は、放熱部42によって加熱された外気が外気吹出部14およびダクト部20を介して車室外に吹き出し可能に構成されている。
【0040】
続いて、外気導入部50の詳細について説明する。本実施形態の外気導入部50は、通路仕切部16と一体に成型された一体成形物として構成されており、通路仕切部16と同様の平板状に形成されている。外気導入部50は、放熱部42より空気流れ上流側に設けられている。具体的に、外気導入部50は、放熱部42より空気流れ上流側に設けられた通路仕切部16における空気流れ最上流部に連なっている。
【0041】
また、外気導入部50は、通路仕切部16の空気流れ上流側の部位から第2送風ファン34に向かって上下方向DRudの下側に傾斜して、第2送風ファン34に当接しない位置まで延びている。換言すれば、外気導入部50は、空気流れ上流側から空気流れ下流側に向かって、通路仕切部16に近づくように、上下方向DRudの上側に向かって傾斜している。
【0042】
このように形成される外気導入部50は、空気流れ最上流側の部位である導入最上流部51が通路仕切部16および内外気仕切部35より上下方向DRudの下側に位置する。すなわち、導入最上流部51は、外気通路152に位置付けられる。具体的に、導入最上流部51は、外気通路152を上下方向DRudに4等分した場合における一番上側の部位に位置付けられる。そして、外気導入部50の空気流れ下流側の部位は、通路仕切部16に接続されている。
【0043】
外気導入部50は、第2送風ファン34から外気通路152の空気流れ下流側に向かって吹き出された外気の一部が外気導入部50に沿って流れることによって、内気通路151へ流入可能に形成されている。
【0044】
本実施形態における外気導入部50が傾斜する傾斜角度θは、第2送風ファン34が吹き出す外気の風量のうち、殆どの風量が外気通路152に導かれ、僅かな量が内気通路151に導かれるように設定される。例えば、通路仕切部16と外気導入部50との接続部から通路仕切部16が左右方向DRwの左側に延びる方向を0°とし、反時計回り方向を正の方向としたとき、傾斜角度θは、5°≦θ≦45°の範囲内における角度に設定される。
【0045】
これにより、第2送風ファン34から吹き出され外気通路152の下流側に向かって流れる外気の一部は、内気通路151に導かれる。また、第2送風ファン34が吹き出す外気の風量のうち、その一部が内気通路151に流れる場合においても、充分な風量を放熱部42に送ることができる。したがって、放熱部42における外気と冷媒との熱交換によって冷媒を冷却する際の放熱部42の冷却能力が確保される。
【0046】
続いて、車両用空調装置1の作動について説明する。なお、図2において、説明の便宜上、外気と内気とを分かり易くするため、内気の流れを示す矢印にドット柄のハッチングを付して示し、外気の流れを示す矢印にはハッチングを付さずに示している。
【0047】
モータ32によって第1送風ファン33および第2送風ファン34が回転駆動されると、車両用空調装置1には、内気導入口11から内気通路151に内気が導入され、外気導入口12から外気通路152に外気が導入される。
【0048】
内気通路151に導入された内気は、内気吸込口331から第1送風ファン33の内部に吸い込まれ、内外気仕切部35によって外気と混合されることなく、内気通路151の空気流れ下流側に向かって吹き出される。その後、内気通路151を流れる内気は、蒸発部41を通過する際に冷却および除湿され、内気吹出部13から車室内に吹き出される。車室内に吹き出された内気は、車室内を冷却し、再度内気導入口11から内気通路151に導入される。
【0049】
また、外気通路152に導入された外気は、外気吸込口341から第2送風ファン34の内部に吸い込まれ、内外気仕切部35によって内気と混合されることなく、外気通路152の空気流れ下流側に向かって吹き出される。
【0050】
ここで、第2送風ファン34から外気通路152の下流側に向かって吹き出された外気は、その一部の風量が外気導入部50に沿って流れて内気通路151に導かれ、残りの風量全部が放熱部42に向かって流れる。放熱部42に向かって流れた外気は、放熱部42を通過する際に冷媒と熱交換して加熱され、外気吹出部14からダクト部20に流れ、ダクト吹出部21から車室外へ吹き出される。
【0051】
これに対して、内気通路151に導かれた外気は、第1送風ファン33から吹き出された内気と混合し、蒸発部41を通過する際に冷却および除湿され、内気吹出部13から車室内に吹き出される。
【0052】
このように、外気通路152に導入した外気の一部を内気通路151において内気と混合させる理由について説明する。仮に、内気のみを車室内と車両用空調装置1との間で循環させて車室内の冷房を行う車両用空調装置1を長時間継続して使用すると、乗員の呼吸によって、車室内の空気における二酸化炭素の濃度が時間の経過とともに上昇しやすい。この場合、車室内の空気は、車室外の空気に比較して二酸化炭素の濃度が高くなる。
【0053】
そして、車室内の空気における二酸化炭素の濃度の上昇は、運転手の集中力を低下させる要因となり、運転手の適切な運転作業の妨げとなる虞がある。さらに、車室内の空気における二酸化炭素の濃度の上昇は、運転手が眠気および倦怠感を感じやすくする要因となり、運転手の適切な運転作業の妨げとなる虞がある。
【0054】
これに対して、本実施形態の車両用空調装置1は、外気通路152に導入した外気の一部を外気導入部50によって内気通路151に導くことで、当該外気の一部を車室内に吹き出すことができる。これによれば、このように構成されていない場合に比較して、車室内の空気における二酸化炭素の濃度の上昇を抑制することができる。
【0055】
なお、本実施形態の車両用空調装置1は、熱交換仕切部43と通路仕切部16との間、および熱交換仕切部43とケーシング10の内壁との間に僅かな隙間が設けられている。また、図3に示す比較用車両用空調装置のように、外気導入部50が設けられない場合、送風機30が回転する際に内外気仕切部35が通路仕切部16に当接しないように、内外気仕切部35と通路仕切部16との間に僅かな隙間が設けられる。このため、外気導入部50が設けられない場合であっても、外気通路152に導入された外気の一部が当該隙間を介して内気通路151に流れる可能性がある。
【0056】
しかしながら、外気導入口12および内気導入口11からケーシング10の内部へ導入する空気は、空気通路15を流れる際に、抵抗が大きい流路より抵抗が小さい流路に向かって流れ易い。そして、当該流路の抵抗は、流路面積、流路形状、流路長さ等、流路の態様によって変動する。このため、外気通路152の抵抗に比較して内気通路151の抵抗が高い場合、外気通路152に導入した外気をこれらの隙間を介して内気通路151に確実に流すことが難しい。
【0057】
これに対して、本実施形態の車両用空調装置1は、外気導入部50を設けることによって、単に内外気仕切部35と通路仕切部16と間に僅かな隙間が設けられる場合に比較して、確実に外気の一部を内気通路151に導くことができる。
【0058】
(1)上記実施形態では、外気導入部50は、放熱部42より空気流れ上流側に設けられている。ここで、仮に、外気導入部50が放熱部42より空気流れ下流側に設けられている場合、放熱部42を通過して加熱された外気の一部が外気導入部50によって蒸発部41を通過して冷却された内気と混合される。このように放熱部42で加熱された外気を内気通路151において内気と混合させる構成の場合、車室内に吹き出される内気の温度が上昇する。これは、車室内を冷房する際に冷房性能の低下の要因となる。
【0059】
これに対して、本実施形態の外気導入部50は、放熱部42より空気流れ上流側に設けられている。これによれば、放熱部42を通過して加熱された外気が蒸発部41を通過して冷却された内気と混合されることを抑制できるため、車室内を冷房する際に冷房性能の低下を抑制することができる。
【0060】
(2)上記実施形態では、外気導入部50は、通路仕切部16と内外気仕切部35との間に設けられている。ところで、第2送風ファン34から吹き出された外気は、外気通路152を下流側に向かって流れるほど、空気流れが安定してくる。このため、外気通路152を流れる外気を内気通路151に導入させる場合、空気流れ下流側に近い外気ほど、内気通路151に導入させる際に発生する空気流れの乱れに起因する圧損が大きくなり易い。
【0061】
これに対して、本実施形態では、外気導入部50は、通路仕切部16と内外気仕切部35との間に設けられている。このため、外気導入部50は、第2送風ファン34から吹き出された直後の外気を内気通路151に導入させることができる。このため、このように構成されていない場合に比較して、内気通路151に導入させる際に発生する圧損を抑制できる。
【0062】
(第1実施形態の第1の変形例)
上述の第1実施形態では、外気導入部50の導入最上流部51が、外気通路152を上下方向DRudに4等分した場合における一番上側の部位に位置付けられる例について説明したが、これに限定されない。例えば、外気導入部50は、導入最上流部51が外気通路152を上下方向DRudに4等分した場合における一番上側の部位とは異なる部位に位置付けられる構成であってもよい。
【0063】
(第1実施形態の第2の変形例)
上述の第1実施形態では、外気導入部50の傾斜角度θが5°≦θ≦45°の範囲内における角度に設定される例について説明したが、これに限定されない。例えば、外気導入部50は、傾斜角度θが0°<θ<5°の範囲内における角度に設定されてもよいし、45°<θ<180°の範囲内における角度に設定されてもよい。
【0064】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図4を参照して説明する。本実施形態では、外気導入部50が設けられている位置が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0065】
本実施形態の外気導入部50は、図4に示すように、通路仕切部16における空気流れ最下流部に連なっている。また、外気導入部50は、通路仕切部16の空気流れ下流側の部位から蒸発部41に向かって上下方向DRudの上側に傾斜して、蒸発部41に当接しない位置まで延びている。換言すれば、外気導入部50は、空気流れ上流側から空気流れ下流側に向かって、通路仕切部16から離れるように、上下方向DRudの上側に向かって傾斜している。
【0066】
このように形成される外気導入部50は、外気導入部50の空気流れ最下流側の部位である導入最下流部52が通路仕切部16および内外気仕切部35より上下方向DRudの上側に位置する。すなわち、導入最下流部52は、内気通路151に位置付けられる。具体的に、導入最下流部52は、内気通路151を上下方向DRudに4等分した場合における一番下側の部位に位置付けられる。そして、外気導入部50の空気流れ上流側の部位は、通路仕切部16に接続されている。このため、第2送風ファン34から外気通路152の空気流れ下流側に向かって吹き出された外気は、その一部が外気導入部50に沿って流れることによって、内気通路151へ流れる。
【0067】
このため、本実施形態の車両用空調装置1は、外気通路152に導入した外気の一部を外気導入部50によって内気通路151に導くことで、当該外気の一部を車室内に吹き出すことができる。これによれば、このように構成されていない場合に比較して、車室内の空気における二酸化炭素の濃度の上昇を抑制することができる。
【0068】
(第2実施形態の変形例)
上述の第2実施形態では、外気導入部50の導入最下流部52が、内気通路151を上下方向DRudに4等分した場合における一番下側の部位に位置付けられる例について説明したが、これに限定されない。例えば、外気導入部50は、導入最下流部52が内気通路151を上下方向DRudに4等分した場合における一番下側の部位とは異なる部位に位置付けられる構成であってもよい。
【0069】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図5を参照して説明する。本実施形態では、外気導入部50が設けられている位置および通路仕切部16の形状が第2実施形態と相違している。本実施形態では、第2実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0070】
本実施形態の通路仕切部16は、図5に示すように、左右方向DRwの略中央に内気通路151と外気通路152とを連通させる流路貫通孔161を形成する貫通孔形成部162を有している。そして、本実施形態の外気導入部50は、貫通孔形成部162における空気流れ上流側の部位に連なっている。また、外気導入部50は、空気流れ下流側に向かって上下方向DRudの上側に傾斜している。換言すれば、外気導入部50は、空気流れ上流側から空気流れ下流側に向かって、通路仕切部16から離れるように傾斜している。
【0071】
このように形成される外気導入部50によって、第2送風ファン34から外気通路152の空気流れ下流側に向かって吹き出された外気は、その一部が外気導入部50に沿って流れることによって、内気通路151へ流れる。このため、本実施形態の車両用空調装置1は、外気通路152に導入した外気の一部を外気導入部50によって内気通路151に導くことで、当該外気の一部を車室内に吹き出すことができる。これによれば、このように構成されていない場合に比較して、車室内の空気における二酸化炭素の濃度の上昇を抑制することができる。
【0072】
(第3実施形態の変形例)
上述の第3実施形態では、通路仕切部16における左右方向DRwの略中央に形成された貫通孔形成部162に外気導入部50が連なっている例について説明したが、これに限定されない。例えば、貫通孔形成部162の形成位置が限定されず、外気導入部50は、通路仕切部16における左右方向DRwの中央より右側または左側に形成された貫通孔形成部162に連なっている構成であってもよい。
【0073】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0074】
上述の実施形態では、外気導入部50が放熱部42より空気流れ上流側に設けられている例について説明したが、これに限定されない。例えば、外気導入部50は、図6に示すように、放熱部42より空気流れ下流側に設けられていてもよい。具体的に、外気導入部50は、ケーシング10の外周部のうち内気吹出部13および外気吹出部14の間の部位が、外気通路152を流れる外気が内気吹出部13に向かって流れるように傾斜する構成であってもよい。
【0075】
上述の実施形態では、外気導入部50が通路仕切部16に連なって構成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、外気導入部50は、図7に示すように、内外気仕切部35が配置される上下方向DRudの位置を通路仕切部16が配置される位置よりも上下方向DRudの上側に変位させる構成であってもよい。この場合、第2送風ファン34が吹き出す外気の一部を内気通路151に導くことができる。
【0076】
また、外気導入部50は、図8に示すように、熱交換仕切部43が配置される上下方向DRudの位置を通路仕切部16が配置される位置よりも上下方向DRudの下側に変位させる構成であってもよい。この場合、第2送風ファン34から吹き出され、熱交換器収容部154に流入した外気の一部を内気通路151に導くことができる。
【0077】
上述の実施形態では、第1実施形態~第3実施形態の車両用空調装置1において、それぞれ異なる位置に外気導入部50が設けられている例について説明したが、これに限定されない。例えば、外気導入部50は、第1実施形態~第3実施形態に説明した3つの外気導入部50のうち、2つ以上の外気導入部50を組合せた構成であってもよい。
【0078】
上述の実施形態では、送風機30が各々にブレードを有する第1送風ファン33および第2送風ファン34を含む構成である例について説明したが、これに限定されない。例えば、送風機30は、第1送風ファン33および第2送風ファン34が一体で構成された遠心送風機であってもよい。
【0079】
上述の実施形態では、蒸発部41および放熱部42が一体で構成されて空気通路15に配置されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、蒸発部41および放熱部42は、一体で構成されておらず、蒸発部41が内気通路151に配置されており、放熱部42が外気通路152に配置されている構成であってもよい。
【0080】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0081】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0082】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【符号の説明】
【0083】
10 ケーシング
11 内気導入口
12 外気導入口
35 送風機
41 蒸発部
42 放熱部
50 外気導入部
151 内気通路
152 外気通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8