(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186274
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20221208BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20221208BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20221208BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20221208BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01L29/78 658L
H01L29/78 652T
H01L29/78 653C
H01L29/78 652H
H01L29/78 655A
H01L21/66 H
H01L21/66 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094413
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森野 友生
【テーマコード(参考)】
4M106
【Fターム(参考)】
4M106AA13
4M106BA14
4M106CA04
4M106CA14
4M106CA56
4M106DJ14
4M106DJ27
(57)【要約】
【課題】ゲート絶縁膜の特性が変化したり破壊されることを抑制できる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板に、第1電極、第2電極、および第1電極と第2電極との間に流れる電流を制御するゲート電極がゲート絶縁膜上に配置された対象装置を用意することと、対象装置に対し、ゲート絶縁膜の状態に依存する第1特性検査を行うことと、対象装置にブレークダウンを発生させて耐圧を測定することと、耐圧を測定することの後、再びゲート絶縁膜の状態に依存する第2特性検査を行うことと、第1特性検査と第2特性検査の変化を導出することと、導出した変化結果を変化閾値範囲と比較し、変化結果が変化閾値範囲内にあると判定した場合に対象装置が良品であると判定する良否判定を行うこととを行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート絶縁膜(17)を有する半導体素子が形成された半導体装置の製造方法であって、
半導体基板(10)に、第1電極(20)、第2電極(21)、および前記第1電極と前記第2電極との間に流れる電流を制御するゲート電極(18)が前記ゲート絶縁膜上に配置された対象装置を用意することと、
前記対象装置に対し、前記ゲート絶縁膜の状態に依存する第1特性検査を行うことと、
前記対象装置にブレークダウンを発生させて耐圧を測定することと、
前記耐圧を測定することの後、再び前記ゲート絶縁膜の状態に依存する第2特性検査を行うことと、
前記第1特性検査と前記第2特性検査の変化を導出することと、
導出した変化結果を変化閾値範囲と比較し、前記変化結果が前記変化閾値範囲内にあると判定した場合に前記対象装置が良品であると判定する良否判定を行うことと、を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記対象装置を用意することでは、第1導電型のドリフト層(12)と、前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース層(13)と、前記ドリフト層のうちの前記ベース層側と反対側に形成された第1導電型または第2導電型の第1不純物領域(11)と、前記ベース層の表層部に形成された第1導電型の第2不純物領域(14)とを含む前記半導体基板に対し、前記第2不純物領域と前記ドリフト層との間に挟まれた前記ベース層の表面に前記ゲート絶縁膜が配置され、前記ベース層および前記第2不純物領域と電気的に接続されるように前記第1電極が配置されると共に前記第1不純物領域と電気的に接続されるように前記第2電極が配置された前記対象装置を用意し、
前記第1特性検査では、前記ゲート絶縁膜を介して前記第2不純物領域と前記ゲート電極との間に流れるリーク電流を測定すること、前記ゲート絶縁膜を介して前記第1不純物領域と前記ゲート電極との間に流れるリーク電流を測定すること、および前記第1電極と前記第2電極との間に電流が流れ出す前記ゲート電極の閾値電圧を測定すること、の少なくとも1つの測定を行い、
前記第2特性検査では、前記第1特性検査で行った測定と同じ測定を行う請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記対象装置を用意することでは、前記半導体基板が炭化珪素で構成され、前記ベース層および前記第2不純物領域を貫通して前記ドリフト層に達するトレンチ(16)の壁面に前記ゲート絶縁膜が形成され、前記ドリフト層に、前記トレンチの底面よりも前記第1不純物領域側に位置する部分を有して前記第1電極と電気的に接続される第2導電型の電界緩和層(15)が形成された前記対象装置を用意する請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート絶縁膜を有する半導体素子が形成された半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゲート絶縁膜を有する半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この半導体装置は、ドリフト層やベース層を含んで構成される半導体基板にMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略)が形成されて構成されている。より詳しくは、この半導体装置は、n-型のドリフト層上にp型のベース層が形成され、ベース層の表層部にn+型のソース領域が形成されている。また、ドリフト層を挟んでベース層と反対側には、n+型のドレイン領域が形成されている。そして、ベース層およびソース領域を貫通するように複数のトレンチが形成され、各トレンチは、壁面に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とによって埋め込まれている。
【0003】
そして、半導体基板には、ベース層およびソース領域と電気的に接続されるように上部電極が配置され、ドレイン領域と電気的に接続されるように下部電極が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような半導体装置を製造する場合には、リーク電流測定等の特性検査を1回行った後に良否判定が行われる。そして、良否判定では、測定結果が所定の範囲内である場合に良品と判定され、測定結果が所定の範囲外である場合に不良品と判定される。
【0006】
また、上記のような半導体装置では、使用時等にホールがゲート絶縁膜に入り込むことにより、ゲート絶縁膜の特性が変化したり、ゲート絶縁膜が破壊される可能性がある。しかしながら、1回の特性検査のみでは、使用時等にゲート絶縁膜にホールが入り込み難いか否かの判定を行うことが困難である。このため、上記のような製造方法では、ゲート絶縁膜の特性が変化したり破壊される可能性のある半導体装置を良品と判定してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、ゲート絶縁膜の特性が変化したり破壊されることを抑制できる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1は、ゲート絶縁膜(17)を有する半導体素子が形成された半導体装置の製造方法であって、半導体基板(10)に、第1電極(20)、第2電極(21)、および第1電極と第2電極との間に流れる電流を制御するゲート電極(18)がゲート絶縁膜上に配置された対象装置を用意することと、対象装置に対し、ゲート絶縁膜の状態に依存する第1特性検査を行うことと、対象装置にブレークダウンを発生させて耐圧を測定することと、耐圧を測定することの後、再びゲート絶縁膜の状態に依存する第2特性検査を行うことと、第1特性検査と第2特性検査の変化を導出することと、導出した変化結果を変化閾値範囲と比較し、変化結果が変化閾値範囲内にあると判定した場合に対象装置が良品であると判定する良否判定を行うことと、を含む半導体装置の製造方法である。
【0009】
これによれば、ブレークダウンを発生させた耐圧測定の前後において、ゲート絶縁膜の状態に依存する特性検査を行っている。そして、耐圧測定を行う前後の特性検査の結果から変化を導出し、導出した変化結果が変化閾値範囲内にあるか否かを判定する良否判定を行っている。このため、予め、使用時等にゲート絶縁膜にホールが入り込みやすい対象装置を不良品と判定することができる。したがって、ゲート絶縁膜の特性が変化することやゲート絶縁膜が破壊されることを抑制した半導体装置を製造することができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
【
図2】
図1に示す半導体装置の製造工程を示すフローチャートである。
【
図3】ドレイン-ソース間電圧と電流との関係を示す図である。
【
図4A】ブレークダウンが発生した際のSiC半導体装置の状態を示す模式図である。
【
図4B】
図4Aに続くSiC半導体装置の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図1に示されるように、炭化珪素(以下では、単にSiCともいう)で構成された半導体基板10に、半導体素子としてのMOSFETが形成されたSiC半導体装置を例に挙げて説明する。なお、
図1ではSiC半導体装置のうちのセル領域のみを示しているが、実際のSiC半導体装置には、セル領域を囲むように、耐圧構造を有する外周領域が備えられている。
【0014】
SiC半導体装置は、半導体基板10を用いて構成されている。具体的には、SiC半導体装置は、SiCからなるn+型の基板11を含む半導体基板10を用いて構成されている。本実施形態では、基板11として、例えば、(0001)Si面に対して0~8°のオフ角を有し、窒素やリン等のn型不純物濃度が1.0×1019/cm3とされ、厚さが50~300μm程度とされたものが用いられる。なお、基板11は、本実施形態ではドレイン領域を構成するものであり、第1不純物領域に相当している。
【0015】
基板11の表面上には、SiCで構成される、n-型のドリフト層12、p型のベース層13等がエピタキシャル成長等によって形成されている。以下では、半導体基板10のうちのベース層13側の面を半導体基板10の一面10aとし、半導体基板10のうちの基板11側の面を半導体基板10の他面10bとして説明する。なお、本実施形態では、ソース領域14が第2不純物領域に相当している。
【0016】
ドリフト層12は、例えば、n型不純物濃度が1.0~50.0×1015/cm3程度とされ、厚さが5~50μm程度とされている。ベース層13は、ドリフト層12上に形成されており、例えば、p型不純物濃度が2.0×1017/cm3程度とされ、厚さが0.5~2μm程度とされている。
【0017】
ソース領域14は、ベース層13の表層部に形成されてドリフト層12よりも高不純物濃度とされており、例えば、表層部におけるn型不純物濃度が2.5×1018~2.0×1019/cm3程度とされ、厚さが0.2~1.5μm程度とされている。なお、ベース層13の表層部には、ソース領域14を挟んで後述するトレンチ16と反対側に、ベース層13よりも高不純物濃度とされたp+型のコンタクト領域が形成されていてもよい。
【0018】
また、本実施形態では、ドリフト層12の表層部にp型のディープ層15が形成されている。本実施形態のディープ層15は、ベース層13よりもp型不純物濃度が高くされており、複数本が等間隔に配置され、互いに交点なく離れて配置されることで上面レイアウトがストライプ状とされている。例えば、各ディープ層15は、p型不純物濃度が1.0×1017~1.0×1019/cm3程度とされ、幅が0.7μmとされている。また、各ディープ層15は、深さが0.4μm以上の深さとされ、後述するトレンチ16の底面よりも深い位置まで形成されることで、トレンチ16に配置されるゲート絶縁膜17への電界の入り込みを抑制するようになっている。
【0019】
なお、本実施形態では、ディープ層15をドリフト層12の表層部にのみ形成した構造を例に挙げて説明するが、ディープ層15は、ソース領域14やベース層13を貫通してドリフト層12に達するように形成されていてもよい。この場合、ディープ層15は、例えば、半導体基板10の一面10a側からトレンチを形成し、このトレンチ内を埋め込むように配置されるようにしてもよい。また、本実施形態では、ディープ層15が電界緩和層に相当する。
【0020】
半導体基板10には、ベース層13およびソース領域14を貫通してドリフト層12に達するように、例えば、幅が0.8μm程度とされたトレンチ16が形成されている。トレンチ16は、
図1の紙面左右方向を幅方向、紙面法線方向を長手方向、紙面上下方向を深さ方向とするライン状のレイアウトで形成されている。なお、
図1では1本のトレンチ16のみを示しているが、トレンチ16は、実際には、複数本が紙面左右方向に等間隔に配置されると共に、各トレンチ16がディープ層15の間に挟まれるように配置されていてストライプ状とされている。
【0021】
各トレンチ16内は、各トレンチ16の壁面を覆うように形成されたゲート絶縁膜17と、このゲート絶縁膜17の上に形成されたポリシリコン等により構成されるゲート電極18とにより埋め込まれている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。なお、本実施形態では、トレンチ16の壁面が、第2不純物領域とドリフト層との間に挟まれたベース層の表面に相当する。また、本実施形態のSiC半導体装置は、後述する上部電極20と下部電極21との間に流れる電流がゲート電極18に印加される電圧によって制御される。
【0022】
ベース層13(すなわち、半導体基板10の一面10a)上にはBPSG(Borophosphosilicate Glassの略)等で構成される層間絶縁膜19が形成されている。そして、層間絶縁膜19には、ソース領域14の一部およびベース層13を露出させるコンタクトホール19aが形成されている。
【0023】
層間絶縁膜19上には、コンタクトホール19aを通じてソース領域14およびベース層13と電気的に接続される上部電極20が形成されている。本実施形態の上部電極20は、例えば、Ni/Al等の複数の金属にて構成されている。そして、複数の金属のうちのn型SiC(すなわち、ソース領域14)を構成する部分と接触する部分は、n型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。また、複数の金属のうちの少なくともp型SiC(すなわち、ベース層13)と接触する部分は、p型SiCとオーミック接触可能な金属で構成されている。なお、本実施形態では、上部電極20が第1電極に相当している。なお、ディープ層15は、ベース層13を介して上部電極20と電気的に接続されている。
【0024】
半導体基板10の他面10b側には、基板11と電気的に接続される下部電極21が形成されている。なお、本実施形態では、下部電極21が第2電極に相当している。本実施形態のSiC半導体装置では、このような構造により、nチャネルタイプの反転型であるトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。
【0025】
以上が本実施形態におけるSiC半導体装置の構成である。なお、本実施形態では、n+型、n-型が第1導電型に相当しており、p型が第2導電型に相当している。そして、上記のようにSiC半導体装置が構成されており、半導体基板10は、基板11、ドリフト層12、ディープ層15、ベース層13、ソース領域14等を含んで構成されている。次に、上記SiC半導体装置の作動について説明する。
【0026】
上記のようなSiC半導体装置は、上部電極20に下部電極21より低い電圧が印加されると共に、ゲート電極18に所定の閾値電圧以上の電圧が印加されると、ベース層13のうちのトレンチ16と接する部分にn型の反転層(すなわち、チャネル)が形成される。そして、ソース領域14から反転層を介して電子がドリフト層12に供給されることにより、上部電極20と下部電極21との間に電流が流れるオン状態となる。
【0027】
また、上部電極20と下部電極21の間に電流が流れていないオフ状態では、高電圧が印加されたとしても、トレンチゲート構造よりも深い位置まで形成されたディープ層15によってトレンチ16の底部への電界の入り込みが抑制される。このため、トレンチ底部での電界集中が緩和され、ゲート絶縁膜17の破壊が防止される。
【0028】
次に、上記SiC半導体装置の良否判定を含む製造方法について、
図2、
図3、
図4Aおよび
図4Bを参照しつつ説明する。
【0029】
図2に示されるように、SiC半導体装置を製造する際には、まず、ステップS100において、エピタキシャル成長、エッチング、イオン注入等の所定の半導体製造プロセスを行い、上記
図1に示すSiC半導体装置を有する対象装置を用意する。なお、対象装置は、複数のチップ形成領域を有するウェハの各チップ形成領域に上記
図1のSiC半導体装置が形成されているウェハ状態であってもよいし、チップ単位に分割されて上記
図1のSiC半導体装置が形成されているチップ状態であってもよい。
【0030】
次に、ステップS101~S103において、対象装置に対し、ゲート絶縁膜17の状態に依存する第1特性検査を行う。本実施形態では、ステップS101において、対象装置のゲート-ソース間の第1リーク電流測定を行う。ステップS102において、対象装置のドレイン-ゲート間の第1リーク電流測定を行う。ステップS103において、対象装置における第1閾値電圧測定を行う。
【0031】
特に限定されるものではないが、ステップS101~S103の各測定は、例えば、以下のようにして行う。すなわち、ステップS101におけるゲート-ソース間の第1リーク電流測定では、ドレイン-ソース間を接続し、ゲート-ソース間に所定電圧を印加することにより、ゲート絶縁膜17を介してゲート-ソース間を流れるリーク電流を測定する。ステップS102におけるドレイン-ゲート間の第1リーク電流測定では、ゲート-ソース間を接続すると共にグランド電位とし、下部電極21に所定電圧を印加することにより、ゲート絶縁膜17を介してドレイン-ゲート間に流れるリーク電流を測定する。ステップS103における第1閾値電圧測では、ゲート電圧を印加しながら電流が流れる際のゲート電圧を閾値電圧として測定する。
【0032】
続いて、ステップS104において、対象装置の耐圧測定を行う。本実施形態では、
図3に示されるように、ドレイン-ソース間に所定電圧を印加することでブレークダウンを発生させ、ブレークダウンが発生する電圧を耐圧として測定する。なお、
図3の例では、ドレイン-ソース間の電圧が約1650Vの際にブレークダウンが発生する。
【0033】
その後、本実施形態では、ステップS105において、第1良否判定を行う。具体的には、ステップS101~S104の測定結果に基づき、各測定結果がそれぞれの閾値範囲内にあるか否かを判定する。そして、各測定結果が各閾値範囲内である場合には、良品と判定し、各測定結果の少なくとも一部が閾値範囲外である場合には、不良品と判定する。その後、本実施形態では、良品と判定された対象装置に対し、後述のステップS106以降の工程を行う。
【0034】
ここで、ステップS104における耐圧測定を行った際の対象装置(すなわち、SiC半導体装置)の状態について説明する。
図4Aに示されるように、対象装置にブレークダウンが発生するとドリフト層12内にホールhが発生する。そして、
図4Bに示されるように、ホールhが電界によって加速されることにより、ホールhの一部がゲート絶縁膜17内に入り込む場合がある。
【0035】
この場合、本実施形態のような対象装置では、ホールhのゲート絶縁膜17への入り込み易さ(すなわち、入り込む確率)は、n型のドリフト層12と、p型のベース層13、およびディープ層15との間に構成される空乏層に依存する。つまり、ホールhのゲート絶縁膜17への入り込み易さは、ドリフト層12、ベース層13、ディープ層15の出来栄えに依存する。そして、ホールhがゲート絶縁膜17の内部に入り込むと、ゲート絶縁膜17の状態に依存する特性が変化する。なお、ホールhがゲート絶縁膜17の内部に入り込んだ場合、ホールhがゲート絶縁膜17に入り込むほどリーク電流が増加すると共に閾値電圧が高くなる。
【0036】
このため、本実施形態では、ステップS106~S108において、対象装置に対し、再び、ゲート絶縁膜17の状態に依存する第2特性検査を行う。本実施形態では、ステップS106において、対象装置のゲート-ソース間の第2リーク電流測定を行う。ステップS107において、対象装置のドレイン-ゲート間の第2リーク電流測定を行う。ステップS108において、対象装置における第2閾値電圧測定を行う。
【0037】
なお、ステップS106におけるゲート-ソース間の第2リーク電流測定は、ステップS101におけるゲート-ソース間の第1リーク電流測定と同様の条件で行われる。ステップS107におけるドレイン-ゲート間の第2リーク電流測定は、ステップS102におけるドレイン-ゲート間の第1リーク電流測定と同様の条件で行われる。ステップS108の第2閾値電圧測定は、ステップS103の第1閾値電圧測定と同様の条件で行われる。
【0038】
次に、ステップS109において、ステップS101およびステップS106のゲート-ソース間のリーク電流測定における測定結果の変化を導出する。ステップS110において、ステップS102およびステップS107のドレイン-ゲート間のリーク電流測定における測定結果の変化を導出する。ステップS111おいて、ステップS103およびステップS108の閾値電圧測定における測定結果の変化を導出する。なお、ステップS109~S111にて導出される変化結果は、測定結果同士の変化率であってもよいし、測定結果同士の差分であってもよい。
【0039】
その後、ステップS112において、第2良否判定を行う。具体的には、ステップS109~S111で導出された変化結果に基づき、各変化結果がそれぞれの変化閾値範囲内にあるか否かを判定する。そして、対象装置は、各変化結果が各変化閾値範囲内である場合に良品と判定され、各変化結果の少なくとも一部が変化閾値範囲外である場合に不良品と判定される。
【0040】
なお、各変化閾値範囲は、互いに異なっていてもよいし、同じとされていてもよく、適宜変更可能である。例えば、ステップS109~S111にて変化結果としての変化率を導出する場合、変化閾値範囲は、ゲート-ソース間のリーク電流測定に対する変化閾値範囲が100%とされ、ドレイン-ゲート間のリーク電流測定に対する変化閾値範囲が10%とされていてもよい。
【0041】
以上説明した本実施形態によれば、SiC半導体装置を製造する際には、耐圧測定を行う前後において、ゲート絶縁膜17の状態に依存する特性検査を行っている。そして、耐圧測定を行う前後の特性検査の結果から変化を導出し、導出した変化結果が変化閾値範囲内にあるか否かを判定する良否判定を行っている。このため、予め、使用時等にゲート絶縁膜17にホールhが入り込みやすい対象装置を不良品と判定することができる。したがって、ゲート絶縁膜17の特性が変化することやゲート絶縁膜17が破壊されることを抑制したSiC半導体装置を製造することができる。
【0042】
また、本実施形態では、耐圧測定を行う際に発生するホールhを利用して第2良否判定を行っている。このため、ゲート絶縁膜17へのホールhの入り込みのみを目的とした工程を行う必要がなく、製造工程が不必要に増加することを抑制できる。
【0043】
(1)本実施形態では、ゲート絶縁膜17の状態に依存する特性検査として、ゲート-ソース間のリーク電流測定、ドレイン-ゲート間のリーク電流測定、および閾値電圧測定の3種類の測定を行っている。このため、いずれか1つのみの測定を行う場合と比較して、良否判定の精度を向上できる。
【0044】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0045】
例えば、上記第1実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETが形成されたSiC半導体装置の製造方法について説明した。しかしながら、これは1例を示したに過ぎず、他の構造の半導体素子が形成されたSiC半導体装置の製造方法に上記第1実施形態の製造方法を適用することもできる。例えば、nチャネルタイプに対して各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのトレンチゲート構造のMOSFETが形成されたSiC半導体装置の製造方法にも適用できる。また、MOSFET以外に、同様の構造のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistorの略)が形成されたSiC半導体装置の製造方法に適用することもできる。なお、IGBTの場合、上記第1実施形態におけるn+型の基板11(すなわち、ドレイン領域)をP+型のコレクタ層に変更する以外は、上記第1実施形態で説明した縦型MOSFETと同様である。
【0046】
また、上記第1実施形態において、半導体基板10は、SiCではなく、シリコン等で構成されていてもよい。さらに、上記第1実施形態において、SiC半導体装置は、トレンチゲート構造が形成された構成ではなく、プレーナゲート構造が形成された構成とされていてもよい。すなわち、上記第1実施形態の製造方法は、ゲート絶縁膜17を有する半導体素子が形成された半導体装置の製造方法に適用可能である。
【0047】
そして、上記第1実施形態において、ディープ層15等の電界緩和層は形成されていなくてもよい。このような構成としても、ステップS104における耐圧測定を行ってブレークダウンによるホールhを発生させた場合には、ドリフト層12とベース層13との出来栄えによってゲート絶縁膜17に入り込むホールhの量が変化する。このため、電解緩和層が形成されていない半導体装置に上記第1実施形態の製造方法を適用しても、有効な良否判定を行うことができる。
【0048】
さらに、上記第1実施形態において、ステップS101~S103の測定、およびステップS106~S108の測定は、対応する測定の少なくとも1つの測定のみを行うようにしてもよい。例えば、測定として、ステップS101およびステップS106のゲート-ソース間のリーク電流測定のみを行うようにしてもよい。また、ステップS101~S103の測定、およびステップS106~S108の測定は、対応する測定の少なくとも2つの測定のみを行うようにしてもよい。例えば、測定として、ステップS101およびステップS106のゲート-ソース間のリーク電流測定を行うと共に、ステップS102おおびステップS107のドレイン-ゲート間のリーク電流測定のみを行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 半導体基板
17 ゲート絶縁膜
18 ゲート電極
20 上部電極(第1電極)
21 下部電極(第2電極)