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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186296
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】レーザーダイオードバー移載装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/67 20060101AFI20221208BHJP
   B65H 41/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01L21/68 E
B65H41/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094445
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】390027960
【氏名又は名称】株式会社ニッケ機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】阿多 勝正
(72)【発明者】
【氏名】坂本 英夫
(72)【発明者】
【氏名】平里 和弘
【テーマコード(参考)】
3F108
5F131
【Fターム(参考)】
3F108AA10
3F108JA07
5F131AA04
5F131BA54
5F131CA09
5F131DA03
5F131DA23
5F131DA42
5F131DB22
5F131DB34
5F131DB43
5F131DB72
5F131EC33
5F131EC72
5F131FA03
5F131KA02
5F131KA22
5F131KA52
5F131KB43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】レーザーダイオードバーを、破損させることなく確実に剥離して、次の工程の所定の場所へと移動させることができる移載装置を提供する。
【解決手段】面状の粘着部材60上に複数個が配置されたレーザーダイオードバー70を、粘着部材から剥離して次の配置場所へと移動させる移載装置であって、複数個のレーザーダイオードバーが配置された状態の粘着部材をその上面に載置する剥離ステージ10と、剥離ステージ上の粘着部材からレーザーダイオードバーを個別に吸着して剥離する吸着ヘッド21と、を備える。剥離ステージの上面14には、両端部が閉じた複数本の溝15が連続して形成され、溝同士の間隙部分の上面が剥離ステージの上面を構成し、複数本の溝それぞれの底面に形成された貫通孔16を介して溝内が減圧された状態で、吸着ヘッドがレーザーダイオードバーを吸着して剥離する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状の粘着部材上に複数個が配置されたレーザーダイオードバーを、前記粘着部材から剥離して次の配置場所へと移動させるレーザーダイオードバー移載装置であって、
前記複数個のレーザーダイオードバーが配置された状態の前記粘着部材をその上面に載置する剥離ステージと、前記剥離ステージ上の前記粘着部材から前記レーザーダイオードバーを個別に吸着して剥離する吸着ヘッドとを備え、
前記剥離ステージの上面には、両端部が閉じた複数本の溝が連続して形成され、前記溝同士の間隙部分の上面が前記剥離ステージの上面を構成し、
前記複数本の溝それぞれの底面に形成された貫通孔を介して前記溝内が減圧された状態で、前記吸着ヘッドが前記レーザーダイオードバーを吸着して剥離することを特徴とするレーザーダイオードバー移載装置。
【請求項2】
前記溝は、断面が略U字状であり、前記溝同士の間隙部分が線状に形成されている、請求項1に記載のレーザーダイオードバー移載装置。
【請求項3】
前記剥離ステージに接続されて前記溝の内部を減圧する真空ポンプによる前記溝の内部空間を減圧する速度や最終到達圧力が調整可能である、請求項1または2に記載のレーザーダイオードバー移載装置。
【請求項4】
前記剥離ステージは、前記溝部分を加熱する加熱手段を備えている、請求項1~3のいずれかに記載のレーザーダイオードバー移載装置。
【請求項5】
前記溝を構成する前記剥離ステージの上面の一部が選択的に下方に移動可能に構成されていて、前記吸着ヘッドによる前記レーザーダイオードバーの剥離時に、前記レーザーダイオードバーに接触している前記溝の間隙部分の数が低減される、請求項1~4のいずれかに記載のレーザーダイオードバー移載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、レーザーダイオードの製造課程における一形態としてのレーザーダイオードバーを、所定の場所間で移動させるレーザーダイオードバー移載装置に関し、特に、脆性が高いレーザーダイオードバーを粘着部材から破損させることなく剥離することができるレーザーダイオードバー移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルーレイディスク、DVD、CDなどのディスク型記録媒体や光通信の普及に伴い、これらの記録媒体にデータを書き込んだり読み取ったりする際、また、光通信でのデータ送信の際などに用いられるレーザーダイオードの普及が進んでいる。
【0003】
レーザーダイオードは、pn接合部分に電流を注入して得られた光を発振させることで干渉性が高く強い光を照射させることができるが、レーザー発振させるために端面を劈開面である反射鏡面とするとともに、ウェハから切り出された際の断面にスパッタリング処理を行うことが必要となる。このスパッタリング処理は、製造効率の向上のために、個別に劈開してレーザーチップ化する前の棒状態のレーザーダイオード、いわゆるレーザーダイオードバーを、間にスペーサーを挟んだ状態で側面を揃えて複数本積層し、複数本のレーザーダイオードバーの側面を一括してスパッタリングするという手法で行われている。
【0004】
また、幅が0.1~1mm程度、長さが数十mm程度、厚さが数十~数百μmの薄くかつ細長い棒状態のレーザーダイオードバーを、振動等によっても位置ずれが生じないように保持するため、表面に粘着剤が塗布された粘着テープやゲル状のポリウレタンなどからなるゲルパックなどの粘着部材が用いられる。レーザーダイオードバーは、これら粘着部材上に複数個が並んで配置され、次の工程へと移載される場合は、粘着部材の上面から個々のレーザーダイオードバーを剥離することが必要となる。
【0005】
従来、粘着テープなどの粘着部材上に載置されている状態の半導体チップ等の部品を吸着ヘッドにより吸着する際には、粘着部材である粘着テープから剥離する剥離方法としてテープ下方からピンによって突き上げる方法が採用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06-349934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の剥離方法は、半導体チップを突き上げる4本の突き上げピンと、この突き上げピンよりも長く形成された4本の位置決めピンとを有する昇降部材を用いることで、吸着コレット内に位置ズレすることなく半導体チップを収容するというものである。
【0008】
しかし、シリコンベースの基板上に形成される半導体チップと比較して、ガリウムヒ素(GaAs)ベースの基板上に形成されるレーザーダイオードは、極めて脆性が高い。また、個々のレーザーダイオードに壁返される前のレーザーダイオードバーは、半導体チップと比較して、極めて薄く細長い形状である。このため、レーザーダイオードバーの粘着部材からの剥離に、従来の突き上げピンによる突き上げ方式を採用すると、レーザーダイオードバーが容易に位置ずれを起こしたり、場合によって破損してしまったりするなどの不具合が生じてしまう。
【0009】
そこで本願は、これら従来の課題を解決して、脆性が高い材料で形成され、かつ、薄く細長いという形状面からも粘着部材からの剥離が困難なレーザーダイオードバーを、破損させることなく確実に剥離して、次の工程の所定の場所へと移動させることができる移載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本願で開示するレーザーダイオードバー移載装置は、面状の粘着部材上に複数個が配置されたレーザーダイオードバーを、前記粘着部材から剥離して次の配置場所へと移動させる移載装置であって、前記複数個のレーザーダイオードバーが配置された状態の前記粘着部材をその上面に載置する剥離ステージと、前記剥離ステージ上の前記粘着部材から前記レーザーダイオードバーを個別に吸着して剥離する吸着ヘッドとを備え、前記剥離ステージの上面には、両端部が閉じた複数本の溝が連続して形成され、前記溝同士の間隙部分の上面が前記剥離ステージの上面を構成し、前記複数本の溝それぞれの底面に形成された貫通孔を介して前記溝内が減圧された状態で、前記吸着ヘッドが前記レーザーダイオードバーを吸着して剥離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、本願で開示するレーザーダイオードバー移載装置は、レーザーダイオードバーが剥離ステージの上面から吸着ヘッドにより剥離されるときに、吸着ヘッドの上面に形成された溝の内部が減圧され、粘着部材がレーザーダイオードバーの背面から引き離された状態となる。この結果、粘着部材のレーザーダイオードバーに対する粘着力が低減するためレーザーダイオードバーを傷つけることなく剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置の全体構成を説明するための概略平面図である。
図2図2は、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置の剥離ステージと吸着ヘッドとの状態を説明するための図である。
図3図3は、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置の剥離ステージの上面の状態を示す部分拡大斜視図である。
図4図4は、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置における、剥離ステージと、粘着テープと、レーザーダイオードバーと、吸着ヘッドとの位置関係を模式的に示す部分拡大断面図である。図4(a)が、剥離ステージ上に、上面にレーザーダイオードバーが配置された粘着テープが載置された状態、図4(b)が、剥離ステージの内部の空間が減圧された状態を示す。
図5図5は、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置における、吸着ヘッドによるレーザーダイオードバーが吸着剥離される状態を模式的に示す部分拡大断面図である。図5(a)が、吸着ヘッドが下降してレーザーダイオードバーの上面に接触した状態を、図5(b)が、吸着ヘッドの上昇に伴ってレーザーダイオードバーが剥離された状態を示す。
図6図6は、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置における、粘着部材からレーザーダイオードバーを剥離する際の剥離ステージ内部の空気圧の変化を説明するイメージ図である。
図7図7は、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置における、粘着部材からレーザーダイオードバーを剥離する際の剥離ステージ内部の空気圧の変化の異なる例を説明するイメージ図である。
図8図8は、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置の剥離ステージの別の構成を模式的に示す部分拡大断面図である。
図9図9は、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置の剥離ステージのさらに別の構成を模式的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示のレーザーダイオードバー移載装置は、面状の粘着部材上に複数個が配置されたレーザーダイオードバーを、前記粘着部材から剥離して次の配置場所へと移動させるレーザーダイオードバー移載装置であって、前記複数個のレーザーダイオードバーが配置された状態の前記粘着部材をその上面に載置する剥離ステージと、前記剥離ステージ上の前記粘着部材から前記レーザーダイオードバーを個別に吸着して剥離する吸着ヘッドとを備え、前記剥離ステージの上面には、両端部が閉じた複数本の溝が連続して形成され、前記溝同士の間隙部分の上面が前記剥離ステージの上面を構成し、前記複数本の溝それぞれの底面に形成された貫通孔を介して前記溝内が減圧された状態で、前記吸着ヘッドが前記レーザーダイオードバーを吸着して剥離する。
【0014】
このようにすることで、本願で開示するレーザーダイオードバー移載装置は、剥離ステージの上面に形成された溝の内部が減圧されて、レーザーダイオードバーが、その背面から粘着部材が離れた状態で吸着ヘッドにより粘着部材から剥離される。特に、剥離ステージの上面に形成された複数本の溝は、両端が閉じているためそれぞれの溝が、粘着部材により上面が構成された独立した空間を形成する。さらに、底面に形成された貫通孔を介して溝の内部が減圧されるため、溝をまたいで配置された粘着部材が、確実に溝の中に引き下げられてレーザーダイオードバーの背面から剥離する。このため、粘着部材によりレーザーダイオードバーに加わる粘着力が低減され、材質面や形状面で脆く破損しやすいレーザーダイオードバーを損傷することなく、吸着ヘッドにより吸着して他の配置場所へと移載することができる。
【0015】
本開示のレーザーダイオードバー移載装置では、前記溝は、断面が略U字状であり、前記溝同士の間隙部分が線状に形成されていることが好ましい。このようにすることで、溝内部の空間に粘着部材が引き込まれやすくなる。また、吸着ヘッドの上面と載置されるレーザーダイオードバーの背面に配置されている粘着部材とが接触する面積を最小とすることができ、吸着ヘッド上での粘着部材からのレーザーダイオードバーの剥離を、より、レーザーダイオードバーに負荷をかけることなく行うことができる。
【0016】
また、前記剥離ステージに接続されて前記溝の内部を減圧する真空ポンプによる、前記溝の内部空間を減圧する速度や最終到達圧力が調整可能であることが好ましい。このようにすることで、粘着部材の粘着力や厚さ、レーザーダイオードバーの面積や剛性と脆性の度合いに応じて、レーザーダイオードバーへの負荷を低減した状態で、粘着部材をその背面から剥離することができる。
【0017】
さらに、前記剥離ステージは、前記溝部分を加熱する加熱手段を備えていることが好ましい。このようにすることで、樹脂製部材を基材とする粘着部材を柔らかくして、溝内部に引き込まれやすくすることができるとともに、粘着剤の粘着力も低減させることができ、粘着部材をレーザーダイオードバーの背面から、より剥離しやすい状態とすることができる。
【0018】
さらにまた、前記溝を構成する前記剥離ステージの上面の一部が選択的に下方に移動可能に構成されていて、前記吸着ヘッドによる前記レーザーダイオードバーの剥離時に、前記レーザーダイオードバーに接触している前記溝の間隙部分の数が低減されることが好ましい。このようにすることで、レーザーダイオードバーの背面に対する粘着部材の粘着力を小さくすることができ、幅に対して長さ方向が大きな細長いレーザーダイオードバーであっても、容易に粘着部材から剥離することができる。
【0019】
以下、本願で開示するレーザーダイオードバー移載装置について、図面を参照して具体的な実施形態を説明する。
【0020】
(実施の形態)
図1は、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置の全体構成を示す概略平面図である。
【0021】
図1に示すレーザーダイオードバー移載装置100は、粘着部材上に複数個が並んで配置されたレーザーダイオードバーを、一つ一つ個別に吸着ヘッドで吸着して粘着部材から剥離し、側面にスパッタリング処理を行う際に使用される治具であるバーホルダーへと移載するものである。
【0022】
図1に示すレーザーダイオードバー移載装置100は、平面視円形の剥離ステージ10、第1搬送部20、中間ステージ30、第2搬送部40、中央ステージ50を有している。なお、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置100は、剥離ステージ10から第2搬送部40までのひとまとまりの移載機構を、移載装置100の中央に位置するセンターステージ50を通る左右方向中心線に対してほぼ線対称に2組備えている。そして、図中右側の一つ目の移載機構によってレーザーダイオードバーが中央ステージ50へと移載され、図中右側の二つ目の移載機構によって、バーホルダー内でレーザーダイオードバーと交互に積層されるスペーサーが中央ステージ50へと移載される。
【0023】
本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置100において、レーザーダイオードバーを移載する一つ目の移載機構と、スペーサーを移載する二つ目移載機構とは、その構成は同じで移載する物質のみが異なる。このため、本明細書においては、スペーサーを移載する2つめの移載機構を構成する部材には、それぞれ剥離ステージ10’、第1搬送部20’、中間ステージ30’、第2搬送部40’と一つ目の移載機構の部材と同じ名称を付し、符号に「’」を付けて区別するが、各部材の詳細な説明は省略する。
【0024】
剥離ステージ10は平面視円形の部材であり、その上面に粘着部材と、粘着部材上に複数個が並べて配置されたレーザーダイオードバーとが搭載される。なお、剥離ステージ10の直径は、レーザーダイオードバーが作製されるガリウムヒ素基板の直径に対して少し径大に形成されていて、ガリウムヒ素基板を切り出して個別のレーザーダイオードバーに分割した状態のままガリウムヒ素基板とほぼ同径の粘着シートである粘着テープに搭載したものを、剥離ステージ上にそのまま載置することができるようになっている。
【0025】
なお、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置では、ゲル状のポリウレタンなどからなるゲルパック上に配置されたレーザーダイオードバーを剥離し移載することが可能なように、略正方形のゲルパックが複数個配置できるように構成されたゲルパックトレイ11を剥離ステージ10上に適宜装着することができる。
【0026】
第1搬送部20は、図1中に示す矢印Aの範囲で図中左右方向に稼働する部材で、詳細の図示は省略する吸着ヘッド21と、剥離ステージ10上のレーザーダイオードバーの位置を確認するカメラ22とを備え、カメラ22の画像に基づいて、剥離、移載させるレーザーダイオードバーの位置と角度などの詳細情報を把握し、さらに、吸着ヘッド21の位置を確認しながら、吸着ヘッド21の先端部分23(図2参照)が、正確に移載対象のレーザーダイオードバーを吸着できるように制御される。
【0027】
なお、剥離ステージ10と、第1搬送部20の吸着ヘッド21との詳細については、後に詳述する。
【0028】
中間ステージ30は、剥離ステージ10が上面に配置された供給リング部12と、レーザーダイオードバー移載装置の中央に位置する中央ステージ50との間に配置されていて、第1搬送部20によって剥離ステージ10上から剥離されたレーザーダイオードバーの面方向の角度を変化させて、中央ステージ50上のバーホルダー(51、53)へと移載するための中継点としての機能を果たす。
【0029】
本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置100では、レーザーダイオードバーとスペーサーのスパッタリング処理が行われる側面が面一に揃った状態で収納されるように、バーホルダー(51、53)は、レーザーダイオードバーとスペーサーとの積層方向が鉛直軸に対して所定の角度傾斜した状態で中央ステージ上に配置されている。一方、剥離ステージ10は、その上面が水平に維持されているため、剥離ステージ10の上面に配置された状態のレーザーダイオードバーの面方向は水平である。そこで、中間ステージ30において、レーザーダイオードバーの面方向の角度を、剥離ステージ上での水平方向からバーホルダー(51、53)への収容時点での傾斜角度に変化させている。
【0030】
具体的には、中間ステージ30は、ガイド機構31から延在した回転軸に取り付けられたバー搭載ステージ32と、この回転軸を回転させるアクチュエーター33、バー搭載ステージ32上に配置されたレーザーダイオードバーを監視するカメラ34を有している。
【0031】
まず、バー搭載ステージ32の上面が水平に維持されている状態で、第1搬送部20によって搬送されたレーザーダイオードバーがバー搭載ステージ32上に移載される。その後、アクチュエーター33によってバー搭載ステージ32の上面がバーホルダー(51、53)の傾斜角度と同じ傾斜角度になった状態で、第2搬送部40によって、バー搭載ステージ32から中央ステージ50上のバーホルダー(51、53)にレーザーダイオードバーが移載される。
【0032】
なお、第2搬送部40は、第1搬送部20と同様にレーザーダイオードバーを吸着する図示しない吸着ヘッドとレーザーダイオードバーの状態を確認する図示しないカメラとを備えている。
【0033】
本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置100では、中央ステージ50上にバーホルダーを2つ(51、53)備えている。このようにすることで、一方のバーホルダー51にレーザーダイオードバーとスペーサーとが移載された後、次のスパッタリング工程に向けてバーホルダー51を取り外して運び出す処理を行っている間に、レーザーダイオードバーとスペーサーとを他方のバーホルダー53に移載することができて効率が良い。このため、第2搬送部40と40’の可動範囲を示す矢印Bと矢印B’は、左右の中間ステージ30、30’から2つのバーホルダー51、53にレーザーダイオードバーとスペーサーとを移載できるように設定されている。
【0034】
また、バーホルダー51、53の配置部分には、第2搬送部40、40’の吸着ヘッドからレーザーダイオードバーやスペーサーを取り外す吸着解除機構52、54が配置されていて、レーザーダイオードバーやスペーサーがバーホルダー51、53内に正しく収まるように規制しながら吸着の解除を行う。
【0035】
上述したように、中間ステージ30のバー搭載ステージ32上でバーホルダー(51、53)の傾斜角度に合わせられたレーザーダイオードバーが、第2搬送部40によって中央ステージ上のバーホルダー(51、53)に移載される。次に、第2の移載機構において、レーザーダイオードバーと同様に中間ステージ30’のスペーサー搭載ステージ32’上でバーホルダー(31、33)の傾斜角度に合わせられたスペーサーが、第2搬送部40’によって中央ステージ上のバーホルダー(51、53)に移載される。これを交互に繰り返して、バーホルダー(51、53)内部に、レーザーダイオードバーとスペーサーとが、その側面を面一に規制された状態で重ねて配置される。
【0036】
なお、上記は本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置100の構成のあくまでも一例であって、レーザーダイオードバーとスペーサーとを移載して交互にバーホルダー内に積層することができる限りにおいて、レーザーダイオードバー移載装置の具体的な構成は様々な形態を採りうることは言うまでもない。
【0037】
次に、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置の、剥離ステージとレーザーダイオードバーを吸着剥離する剥離ヘッドの詳細について説明する。
【0038】
図2は、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置における、剥離ステージからレーザーダイオードバーを剥離する状態を説明するためのイメージ図である。
【0039】
図2に示すように、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置の剥離ステージ10は、中央部分に上方に突出した円形平面である上面14が形成された突出部13を備えた所定の厚さを有する円盤状部材であり、一例として、アルミに硬質アルマイト処理を施した金属材料によって形成されている。
【0040】
図2に示すように、剥離ステージ10の突出部13の上面14は、外形が円形の平坦な面であり、この上面14には一方向に並んで複数個の溝15が形成されている。各溝15の延在方向における略中央部分には、溝15の底部にそれぞれ貫通孔16が形成されていて、溝15の内部の空間と剥離ステージ10の突出部13の内側の空間とを連通している。なお、図2では、溝15の内部にそれぞれ一つずつ貫通孔16が形成されているものを例示したが、溝15内部における貫通孔の数は1つに限られるものではない。また、複数の貫通孔16を形成する場合も含めて、貫通孔16は必ずしも溝15の延在方向の中央部分に形成されている必要もない。
【0041】
剥離ステージ10の突出部13の下端部からは、水平方向外側に延在する鍔部17が形成されていて、図示は省略するが複数個のねじ穴が形成され、剥離ステージ10はこのねじ穴によって供給リング部12(図1参照)の上面に固着されている。図示は省略するが、供給リング部12における剥離ステージ10の下側には、突出部13の内面によって上方が覆われる気密の内部空間が形成されていて、この内部空間の圧力(気圧)を減少させることができる真空ポンプが配置されている。上述した、剥離ステージ10の上面14に形成された複数の溝15の内部に形成される空間は、貫通孔16を介してそれぞれこの内部空間につながっていて、真空ポンプが動作することによって溝15の内部部分の気圧を減少させることができる。
【0042】
図3は、図2中に領域Cとして示した剥離ステージの部分拡大斜視図である。
【0043】
図3に示すように、剥離ステージ10の上面に形成された溝15の断面形状は、上方に行くにつれてその幅が広がり、かつ、底面が湾曲した略「U」字状である。また、溝15の延在方向における両端部分は上面14によって遮られて閉じている。言い換えると、それぞれの溝15は、平坦面である剥離ステージ10の上面14に別々に掘られたようになっていて、互いに独立している。なお、隣り合う溝15同士の間隙部分18は、溝の側面である傾斜面同士が鋭角に交わるように形成されていて、その幅は極めて細い線状となっている。なお、溝15の間隙部分18は、剥離ステージ10の上面を形成している。言い換えると、溝15の間隙部分18の高さは、溝15の周囲部分の剥離ステージ10の上面14と同じ高さである。また、溝15の断面形状は、上方の幅がより広く形成されていればよく、「V」字形に近い形状とすることもできる。
【0044】
図2に戻って、剥離ステージ10上には、粘着部材である粘着テープ60がその上面に複数個のレーザーダイオードバー70が並べて配置され粘着材によって固着された状態で、搭載されている。なお、図2では、図面が煩雑なることを避けるために、レーザーダイオードバー70は、粘着テープ60の中央部分に配置された一つのみを明示し、他のレーザーダイオードバー70はその配置領域にドットを付すことで示している。また、剥離ステージ10の上面14に形成された溝15の構成を示すために、粘着テープ60は点線で示され、粘着テープ60上の配置されたレーザーダイオードバー70を示す領域も、下方の剥離ステージ10の上面14が透視できるように示されている。
【0045】
図2に示す例では、粘着テープ60は、レーザーダイオードバー70の製造時に使用されるガリウムヒ素基板とほぼ同じ大きさの円形に形成され、ガリウムヒ素基板を切断して複数個のレーザーダイオードバー70に分割した状態で、一枚の基板から作製されるレーザーダイオードバー70の全てを、基板における作成時そのままの配列状態でその上に配置されている。
【0046】
このような複数個のレーザーダイオードバー70が並んで配置された円形の粘着テープ60は、レーザーダイオードバー70の配置方向が溝15の延在方向に対して略垂直になるように、剥離ヘッドの上面に搭載される。このため、図2に示されるように、それぞれのレーザーダイオードバー70は、剥離ステージ10の上面14に形成された溝15に対して、一つのレーザーダイオードバーが複数本の溝15に跨がるような位置関係で搭載される。なお、レーザーダイオードバー70の長さや、溝15の幅は適宜選択することができるため、1本のレーザーダイオードバー70が跨がる溝15の本数や、一つの粘着テープ60上に配置されるレーザーダイオードバー70の本数などは、図示されたものには限られない。
【0047】
剥離ステージ10の上面に載置された粘着シート60に複数個が配置されたレーザーダイオードバー70に対向するように、吸着ヘッド21(図1参照)が配置される。図2に示すように、吸着ヘッド21の先端部分23には、実際にレーザーダイオードバー70の上面に接触する吸着バー23aが形成され、この吸着バー23aの内部はチューブ23bを介して図示しない真空ポンプに連通している。なお、図1を用いて説明したように、第1搬送部20には吸着ヘッド21とともに吸着ヘッド21の位置と、吸着されるレーザーダイオードバー70との位置を把握するカメラ22が搭載されていて、吸着バー23aがレーザーダイオードバー70の上面の幅方向における略中央部分に正確に当接するように、吸着ヘッド21の位置と角度の制御が行われる。
【0048】
以下、図4図5を用いて、剥離ステージ上の粘着テープから吸着ヘッドによって、レーザーダイオードバーを剥離する工程について説明する。
【0049】
図4は、剥離ステージと、粘着テープと、レーザーダイオードバーと、吸着ヘッドとの位置関係を模式的に示す部分拡大断面図である。図4(a)が、剥離ステージ上に、レーザーダイオードバーが配置された粘着テープが載置された状態、図4(b)が、剥離ステージの内部の空間が減圧された状態を示す。
【0050】
図4(a)に示すように、レーザーダイオードバー70は粘着テープ60上に粘着剤によって貼り付けられた状態で、剥離ステージ10の上面に載置される。上述したように、剥離ステージ10の上面に複数形成された溝15同士の間隙部分18は、剥離ステージ10の上面14を形成する、すなわち、上面14と同じ高さに位置するため、レーザーダイオードバー70が固着された状態の粘着テープ60は、溝15の間隙部分18に支えられた状態となる。
【0051】
この状態で、図4(b)に示すように、剥離ステージ10に連接された図示しない真空ポンプが動作すると、剥離ステージ10の内面の空間19の空気が吸引されて(矢印D)減圧される。剥離ステージ10の内部空間19は貫通孔16を介して溝15内部の空間19と連通しているため、結果的に溝15の内部が減圧される。このため、薄い樹脂製部材により形成されている粘着テープ60は、図4(b)に示されるように、溝15の内側に引き込まれる。
【0052】
図5は、吸着ヘッドによるレーザーダイオードバーが吸着剥離される状態を模式的に示す部分拡大断面図である。図5(a)が、吸着ヘッドが下降してレーザーダイオードバーの上面に接触した状態を、図5(b)が、吸着ヘッドの上昇に伴ってレーザーダイオードバーが剥離された状態を示す。
【0053】
図5(a)に示すように、吸着ヘッド21が下降(矢印E)して吸着バー23aがレーザーダイオードバー70の上面に接触する。そして、吸着バー23aに接続された図示しない真空ポンプによって吸着バー23a内が減圧されて(矢印F)、レーザーダイオードバー70が吸着バー23aに吸着される。
【0054】
その後、図5(b)に示すように、吸着バー23aが上昇する(矢印G)と、吸着バー23aに吸着された状態でレーザーダイオードバー70が粘着テープ60から剥離される。
【0055】
本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置100では、溝15の断面形状が略U字状に形成され、かつ、それぞれの溝15の底面に貫通孔16が形成され、この貫通孔16から溝15内部の空気が排出される。このため、剥離ステージ10の内部の空間19と連通して空間的に閉じた状態の溝15内部の気圧が下がる際に、溝15の上面部分において溝15同士の間隙18上に溝に跨がって配置されている粘着テープに対して、面的に均一に、かつ、複数の溝15内部においても均等に溝15内部へと引き込む力が加わる。この結果、全ての溝15の内部において、粘着テープ60をレーザーダイオードバー70の下面から引きはがすことができ、吸着バー23aに吸着されてレーザーダイオードバー70が引き上げられる際に、レーザーダイオードバー70をねじれさせたり、引き裂くような不均一な力が加わったりすることを効果的に防止することができる。
【0056】
以下、粘着テープ60上に配置された複数のレーザーダイオードバー70が順次吸着ヘッド21によって吸着、剥離、移載され終わるまで、剥離ステージ10内の空間19、すなわち、溝15内部の空間の減圧状態は維持される。
【0057】
なお、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置100では、剥離ステージ10内部の空間19を減圧する真空ポンプの動作をコントロールして、レーザーダイオードバー70の形状や粘着部材の粘着力に応じて、より適切に粘着テープ60を溝15の内部に引き下げることができる。
【0058】
図6は、粘着部材からレーザーダイオードバーを剥離する際の、剥離ステージ内部の空気圧の変化を説明するイメージ図である。
【0059】
図6に示すように、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置100では、剥離ステージ10内部の気圧を、一例として-70kpaまで、約10秒間かけて減圧する(破線a)。このとき、粘着テープ60の材料やレーザーダイオードバー70の大きさなどの条件から、粘着テープ60が比較的剥がれやすい場合には、図6中符号bで示すように、減圧開始から所定の時間(図6の場合は一例として約8秒間)はゆっくりと減圧して、その後の2秒間で急激に所定の減圧量-70kpaまで減圧する。このように減圧速度を制御することで、粘着テープ60がレーザーダイオードバー70から離れ始める際の、レーザーダイオードバー70を下側に引き下ろす力が軽減されて、レーザーダイオードバー70がねじれたり破損したりすることを回避することができる。また、粘着部材60が一気に溝15の内部に引き込まれてしまう反動で、粘着テープ60上のレーザーダイオードバー70が跳ねて移動してしまうという不具合を回避することができる。
【0060】
一方、粘着力が大きな粘着テープ60や、レーザーダイオードバー70の幅方向が広い場合など、粘着テープ60とレーザーダイオードバー70とがより強硬に接着されている場合には、図6に符号cとして示すように、一例として吸引開始から5秒間の吸引時間の前半部分で急激に減圧をして、その後所定時間の10秒まで減圧速度を比較的小さくするような減圧制御をすることが好ましい。このようにすることで、粘着テープ60に対して下側に引き下げる力が最初に強く加わるため、粘着テープ60の粘着力が強い場合でもレーザーダイオードバー70の背面から引きはがれやすくして、かつ、減圧時間の後半での減圧量の変化を小さくして、レーザーダイオードバー70に必要以上の応力が加わることを効果的に防止することができる。
【0061】
図7は、粘着部材からレーザーダイオードバーを剥離する際の、剥離ステージ内部の空気圧の変化の異なる例を説明するイメージ図である。
【0062】
粘着テープ60の粘着力が弱く、小さな吸引力によっても粘着テープ60をレーザーダイオードバー70の背面から容易に引きはがせる場合には、減圧時間(一例として10秒間)の終了時の剥離ステージ10の内部空間19の減圧量、すなわち最終到達圧力を小さく設定することができる。図6で示した、最終到達圧力-70kpaに対して、図7の、粘着力が弱い粘着テープ60の場合の最終到達圧力は-30kpaに設定している(符号a’)。なお、特に、レーザーダイオードバー70の幅が狭い場合やレーザーダイオードバー70が材質的に脆い場合には、図7において符号b’として示すように、減圧の開始時は比較的緩やかに減圧して、減圧時間の後半に減圧の速度を大きくするように制御することで、レーザーダイオードバー70の破損をより効果的に防止することができ、好ましい。
【0063】
以上述べたように、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置では、粘着材上に配置されたレーザーダイオードバーを粘着部材から剥離する際に、剥離ステージの上面に形成された溝内部の空間を減圧することで、粘着材料を均一に引き下げる力を加えることができるため、粘着部材から剥離される際にレーザーダイオードバーが破損することを効果的に防止することができる。
【0064】
また、吸着ヘッドに吸着されてレーザーダイオードバーが上方に引き上げられる際には、粘着部材が剥離ステージの上面に形成された溝の間隙部分のみでレーザーダイオードバーの背面と固着されている状態となるため、吸着ヘッドにより引き上げられる際にレーザーダイオードバーに無理な力や不均一な力が加わることを効果的に防止することができ、レーザーダイオードバーの移載時に、レーザーダイオードバーが不所望に破損することを効果的に防止することができる。
【0065】
図8は、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置の剥離ステージの別の構成を模式的に示す部分拡大断面図である。
【0066】
図8に示す剥離ステージ10の構成では、剥離ステージ10内に熱源80が配置されている点が前述の実施形態の構成と異なる。なお、熱源80としては、従来知られている各種のヒータを好適に使用することができる。また、例えば、温水や温風の循環路を剥離テーブルの内部に形成することもできる。
【0067】
レーザーダイオードバーが上面に配置されている粘着部材は、基本的には樹脂製の材料で形成されるため、レーザーダイオードバーの剥離にその温度を上昇させることで、変形がしやすくなり、溝内部が減圧されたときに溝の内部により容易に引き込まれるようになる。また、粘着部材に粘着性を持たせる粘着剤も、温度が上昇すればその粘着力が相対的に低下するものが多い。このため、剥離ステージの内部に熱源が配置され、レーザーダイオードバーから粘着部材が溝内に引き下げられる際、また、レーザーダイオードバーが吸着ヘッドによって上方に引き上げられる際に、剥離ステージの温度を高くすることで、レーザーダイオードバーの背面からの粘着部材の剥離をより容易に行うことができる。
【0068】
図9は、本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置の剥離ステージのさらに別の構成を模式的に示す拡大断面図である。
【0069】
図9に示す形態の剥離ステージは、その上面に形成された溝の一部分を下降させることができる機構を有している点が、図4に示して説明した上記の剥離ステージと異なっている。
【0070】
一例として、図9に示すさらに別の形態の剥離ステージ10では、溝15を構成する部分の内、図中黒色に塗られた4つの部分(10a)を、他の部分10bに対して下降させることができる。そして、図9(b)に示すように、剥離ステージ10の上面に粘着テープとその上面に配置されたレーザーダイオードバー70が載置された後に、下降可能な4つの部分(10a)を下降させる。
【0071】
このようにすることで、この4つの部分(10a)の上端部の位置が下がるため、当該部分の粘着テープ60もレーザーダイオードバー70の背面から離れることとなる。このため、剥離ステージ10の内部の空間19が減圧された際に、レーザーダイオードバー70の背面に当接している剥離ステージ10の溝15の間隙部分18の数が、一例として10個所から6個所に減少し、レーザーダイオードバー70が吸着ヘッド21によって引き上げられる際に、粘着テープ60からより容易に、かつ、安全に引きはがすことかができる。
【0072】
なお、どの溝15を下降可能に形成して、剥離時にレーザーダイオードバー70の背面に接触している溝15の間隙部分18の数をいくつに設定するかについては、適宜定めることができる。しかし、一般的には、レーザーダイオードバー70が剥離される際に、その背面に接触している間隙部分18がなるべく均等に分散することが好ましい。このため、例えば、下降可能な間隙部分18を交互に配置することがより好ましいものと考えられる。
【0073】
また、剥離ステージ10の溝15部分を引き下げる機構としては、いわゆるシリンダ機構などの、部材を上下方向に移動させることができる周知の機械的な各機構を採用することができる。また、図9では、溝15の同士の間隙部分を構成する断面が略山形の部材全体を下げるように構成した例を示したが、溝15の頂部、すなわち溝15同士の間隙部分18が下降する構成であれば、図示した構成には限られず、溝15同士の中間部分18のみが所定の幅で下降するような構成とすることもできる。特に、本実施形態のレーザーダイオードバー移載装置100における剥離ステージ10では、剥離ステージ10の内部の空間19全体が真空ポンプによって減圧される構成となっているため、剥離ステージ10の上面に位置する溝15を部分的に下降可能な構成としても、上面が吸着テープ60で覆われた場合には、剥離ステージ10の内部の空間19の機密性が保たれるので、所望する減圧動作を行うことができる。
【0074】
また、図9では、図9(a)として、溝15部の一部が下降する前の状態において、まず剥離ステージ10の内部の空間19が減圧されるように示したが、内部の空間19の減圧(矢印D)の前に、下降可能な溝部分(10a)を下降させるようにしても構わない。
【0075】
また、上記実施形態では、レーザーダイオードバーを粘着部材上から中間ステージの載置台上に移載するものを例示したが、例えば不良品であることが判明したレーザーダイオードバーを不良品が搭載されるトレイに移載する場合など、本願で開示するレーザーダイオードバー移載装置は、レーザーダイオードバーを粘着部材上から、それぞれ求められる次の配置位置に移載する全ての場合に適用することができる。
【0076】
さらに、上記実施形態では、本願で開示する移載装置によって移載される部材をガリウムヒ素基板上に形成されたレーザーダイオードバーに限定して説明したが、基板材料はガリウムヒ素基板には限定されない。
【0077】
なお、上述のように本実施形態にかかるレーザーダイオードバー移載装置では、バーホルダー内でレーザーダイオードバーと交互に積層されるスペーサーも、レーザーダイオードバーと同様に剥離ステージ上から剥離されて、中間ステージを経て中央ステージ上のバーホルダーまで移載される構成としている。このようにすることで、レーザーダイオードバーと比較すれば高い強度を有するものの、形状がほぼ同じのスペーサーについても、移載のための剥離時にねじれや破損、粘着部材上での飛びはねなどの不所望な事態を生じさせることなく、バーホルダーへと移載することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本願で開示するレーザーダイオードバー移載装置は、レーザーダイオードバーを破損させることなく粘着部材から剥離して所定の場所へと移載することができる装置として有用である。
【符号の説明】
【0079】
10 剥離ステージ
14 剥離ステージ上面
15 溝
16 貫通孔
21 吸着ヘッド
60 粘着テープ(粘着部材)
70 レーザーダイオードバー
100 レーザーダイオードバー移載装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9