(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186317
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】推力拡大装置
(51)【国際特許分類】
F15B 3/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
F15B3/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094474
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096655
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100091225
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 均
(72)【発明者】
【氏名】荒井 茂弘
【テーマコード(参考)】
3H086
【Fターム(参考)】
3H086BA03
3H086BA14
3H086BA19
3H086BB02
3H086BB08
3H086BC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】増幅された高推力を装置側に引込む方向に出力可能とする。
【解決手段】推力を入力する入力機能と、入力された推力を拡大し出力する推力拡大機能を有するエアハイドロシリンダから推力拡大機能を構成する部分を分離、独立して推力拡大装置1を形成した。装置本体2に、軸方向に、シリンダ部21を構成する大径部、油圧室6を構成する中径部、出力ロッド5が挿通される小径部からなる、異なる3つの内径で貫通する貫通孔が形成されている。大径部のシリンダ部21内にピストン4が配設され、このピストン4に対して、油圧室6側に出力ロッドが形成されている。これにより、接続したエアシリンダ100から入力され、油圧室6で拡大された推力は、ピストン4が蓋部3側に移動する方向に作用し、ピストン4に固定された出力ロッド5は装置本体2の内側に引込まれる方向に拡大推力を出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力用アクチュエータが接続されることで、前記入力用アクチュエータから入力された推力を拡大して出力する推力拡大装置であって、
シリンダを有する装置本体と、
前記シリンダ内に配設されて当該シリンダの軸方向に移動するピストンと、
前記ピストンの一方の面に配設された出力ロッドと、
前記ピストンの内周面と前記ピストンの前記一方の面を隔壁の一部とし、内部に液体が充填される流体圧室と、
前記装置本体の側面から前記流体圧室まで貫通し、前記入力用アクチュエータの入力ロッドが挿通される入力口と、
前記入力口に前記入力ロッドが挿通された前記入力用アクチュエータを前記装置本体に固定する入力用固定手段と、
を具備したことを特徴とする推力拡大装置。
【請求項2】
前記入力口は、前記出力ロッドに対して交差する方向に前記装置本体から前記流体圧室まで貫通している、
ことを特徴とする請求項1に記載の推力拡大装置。
【請求項3】
前記入力用固定手段は、装置本体の前記軸方向に延びる側面に形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の推力拡大装置。
【請求項4】
前記装置本体の外周面は、軸方向に延びる側面が平面に形成され、
前記入力用固定手段は、前記平面に形成された前記入力用アクチュエータを固定するネジ穴を有している、
ことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の推力拡大装置。
【請求項5】
前記入力口と前記入力用固定手段が複数形成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1の請求項に記載の推力拡大装置。
【請求項6】
入力用アクチュエータが配設されない前記入力口を封止する封止蓋と、
前記封止蓋を前記装置本体に固定する蓋固定手段と、
を具備したことを特徴とする請求項5に記載の推力拡大装置。
【請求項7】
前記入力用固定手段は、前記蓋固定手段を兼用している、
ことを特徴とする請求項6に記載の推力拡大装置。
【請求項8】
前記入力口は、入力用固定手段に固定された入力用アクチュエータの入力ロッドが、前記出力ロッドと干渉しない位置にずらして配設されている、
ことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の推力拡大装置。
【請求項9】
前記入力口は、前記入力用固定手段側から見て、前記流体圧室よりも先まで形成されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の推力拡大装置。
【請求項10】
前記入力口は、前記装置本体における、前記入力用固定手段と反対側の側面よりも手前まで形成されている、有底の凹部である、
ことを特徴とする請求項9に記載の推力拡大装置。
【請求項11】
前記入力口は、前記装置本体の全体を貫通し、
前記装置本体の全体を貫通する入力口における、前記入力用固定手段と反対側を封止する封止手段、
を具備したことを特徴とする請求項9に記載の推力拡大装置。
【請求項12】
前記封止手段は、前記入力口と連続し、入力ロッドが挿通する延長凹部を有している、
ことを特徴とする請求項11に記載の推力拡大装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推力拡大装置に係り、詳細には入力された圧力を増幅した推力として出力する推力拡大装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エア(気体)や油(液体)といった流体を用いた流体圧シリンダが工業の広い分野で利用されている。これら流体圧シリンダは、流体の圧力でシリンダ内のピストンに推力を発生させることにより、例えば、プレスやアクチュエータの駆動など、様々な機械的な動作の原動となることができる。
このような流体圧シリンダとして、空圧をシリンダ内部で油圧力に変換するエアハイドロシリンダがある(特許文献1)。このエアハイドロシリンダでは、エアシリンダ(入力側)と推力を拡大する油圧シリンダ(出力側)を共通するシリンダで1体化したもので、シリンダ内の入力側にエアで駆動するエアピストンを配置し、エアピストンの出力を入力として駆動する油圧ピストンと出力ロッドを出力側に配置している。
【0003】
この特許文献1記載のエアハイドロシリンダでは、入力側のエアシリンダ部と出力側の油圧シリンダ部(推力拡大機構部)が一体に形成されているため、異なるエアシリンダ部のストロークなどの変更が必要になった場合には、エアハイドロシリンダ全体を交換する必要があった。
そこで、特許文献2では、推力を入力する第1機能と、入力された推力を拡大して出力する第2機能を有するエアハイドロシリンダから、第2機能を構成する部分とを分離、独立して推力拡大装置を形成した技術について提案されている。
【0004】
しかし、いずれの装置においても、増幅された推力は出力軸から出力されるが、その出力の方向が、装置からみて外部に押圧する方向の出力しか得られず、引込む方向の高推力を得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4895342号公報
【特許文献2】特開2020-076495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、増幅された高推力が出力ロッドを装置側に引込む方向に出力可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)請求項1に記載の発明では、入力用アクチュエータが接続されることで、前記入力用アクチュエータから入力された推力を拡大して出力する推力拡大装置であって、シリンダを有する装置本体と、前記シリンダ内に配設されて当該シリンダの軸方向に移動するピストンと、前記ピストンの一方の面に配設された出力ロッドと、前記ピストンの内周面と前記ピストンの前記一方の面を隔壁の一部とし、内部に液体が充填される流体圧室と、前記装置本体の側面から前記流体圧室まで貫通し、前記入力用アクチュエータの入力ロッドが挿通される入力口と、前記入力口に前記入力ロッドが挿通された前記入力用アクチュエータを前記装置本体に固定する入力用固定手段と、を具備したことを特徴とする推力拡大装置を提供する。
(2)請求項2に記載の発明では、前記入力口は、前記出力ロッドに対して交差する方向に前記装置本体から前記流体圧室まで貫通している、ことを特徴とする請求項1に記載の推力拡大装置を提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、前記入力用固定手段は、装置本体の前記軸方向に延びる側面に形成されている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の推力拡大装置を提供する。
(4)請求項4に記載の発明では、前記装置本体の外周面は、軸方向に延びる側面が平面に形成され、前記入力用固定手段は、前記平面に形成された前記入力用アクチュエータを固定するネジ穴を有している、ことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の推力拡大装置を提供する。
(5)請求項5に記載の発明では、前記入力口と前記入力用固定手段が複数形成されている、ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1の請求項に記載の推力拡大装置を提供する。
(6)請求項6に記載の発明では、入力用アクチュエータが配設されない前記入力口を封止する封止蓋と、前記封止蓋を前記装置本体に固定する蓋固定手段と、を具備したことを特徴とする請求項5に記載の推力拡大装置を提供する。
(7)請求項7に記載の発明では、前記入力用固定手段は、前記蓋固定手段を兼用している、ことを特徴とする請求項6に記載の推力拡大装置を提供する。
(8)請求項8に記載の発明では、前記入力口は、入力用固定手段に固定された入力用アクチュエータの入力ロッドが、前記出力ロッドと干渉しない位置にずらして配設されている、ことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の推力拡大装置を提供する。
(9)請求項9に記載の発明では、前記入力口は、前記入力用固定手段側から見て、前記流体圧室よりも先まで形成されている、ことを特徴とする請求項8に記載の推力拡大装置を提供する。
(10)請求項10に記載の発明では、前記入力口は、前記装置本体における、前記入力用固定手段と反対側の側面よりも手前まで形成されている、有底の凹部である、ことを特徴とする請求項9に記載の推力拡大装置を提供する。
(11)請求項11に記載の発明では、前記入力口は、前記装置本体の全体を貫通し、前記装置本体の全体を貫通する入力口における、前記入力用固定手段と反対側を封止する封止手段、を具備したことを特徴とする請求項9に記載の推力拡大装置を提供する。
(12)請求項12に記載の発明では、前記封止手段は、前記入力口と連続し、入力ロッドが挿通する延長凹部を有している、ことを特徴とする請求項11に記載の推力拡大装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シリンダ内に配設されるピストンに対し、当該ピストンに配設される出力ロッド側に流体圧室が形成され、入力用アクチュエータ用の入力口が装置本体の側面から流体圧室まで貫通しているので、増幅された高推力が出力ロッドを装置側に引込む方向に出力することができる。
また、入力口に入力ロッドを挿通する入力用アクチュエータを装置本体に固定する入力用固定手段を有するので、各種の入力側アクチュエータを容易に固定、交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】推力拡大装置の第1実施形態についての説明図である。
【
図2】推力拡大装置の使用例についての説明図である。
【
図3】推力拡大装置の第2実施形態と使用例の説明図である。
【
図4】推力拡大装置の第3実施形態と使用例の説明図である。
【
図5】推力拡大装置の実施例についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)実施形態の概要
本実施形態の推力拡大装置1では、出力する推力の元となる推力を入力する入力機能と、入力された推力をパスカルの原理を利用した流体圧として拡大し出力する推力拡大機能とを有する、いわゆるエアハイドロシリンダから推力拡大機能を構成する部分を分離、独立して形成したものである。
推力拡大装置1は、自装置内に入力がないため単独では動作せず、拡大対象となる推力(入力)を得るために、各種入力側アクチュエータを直接、又はアダプタを介して組み付けることで動作可能になる。
【0011】
そして、装置本体2に、軸方向(図面上下方向)に、シリンダ部21を構成する大径部、油圧室6を構成する中径部、出力ロッド5が挿通される小径部からなる、異なる3つの内径で貫通する貫通孔が形成されている。
大径部のシリンダ部21内にピストン4が配設され、このピストン4に対して、油圧室6側に出力ロッド5が形成されている。
これにより、接続したエアシリンダ100から入力され、油圧室6で拡大された推力は、ピストン4が蓋部3側に移動する方向に作用し、ピストン4に固定された出力ロッド5は装置本体2の内側に引込まれる方向に拡大推力を出力する。
【0012】
(2)実施形態の詳細
図1は本実施形態における推力拡大装置1の構成を表したもので、(a)スラスト方向(中心線の方向)の断面を表したもの、(b)は左側からの側面を、(c)は右側からの側面を、(d)は(a)におけるAA断面を矢印方向(図面下から上方向)に見た断面図を、(e)は下からの下面をそれぞれ表したものである。
図1において、油圧室6を含めて油が充填されている領域を塗りつぶしにより表し、空気室7においてエアが充填されている領域を左下がりの斜線で表している。
【0013】
図1に示すように、推力拡大装置1は、シリンダ部21を有する装置本体2と、蓋部3と、ピストン4と出力ロッド5を備えている。
装置本体2と蓋部3は、アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属で形成されている。
装置本体2の外形形状は、6面体形状であり、軸方向と直交する面での断面形状は
図1(d)に示すように略正方形形状である。蓋部3は、方形の板状に形成されている。
装置本体2の大きさは、一例として、断面成形形状の1辺が70mm程度、出力ロッド5のストローク長さが5mm程度であるが、これよりも大きく形成し、あるいは、小さく形成することも可能である。
【0014】
装置本体2には、軸方向(図面上下方向)に異なる3つの内径で貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔は、図面下側から上側に向かって順に、大径部、中径部、小径部で構成されている。
大径部は、装置本体2の一方の端部(下面)で開放されシリンダ部21を構成し、その内側をピストン4が軸方向に摺動するようになっている。
小径部は、装置本体2の他方の端部(上面)で開放され、その内側に出力ロッド5が挿通されるようになっている。
中径部は、一方が大径部と、他方が小径部と連続し、その内側に液体が充填される流体圧室として機能する油圧室6を構成している。
なお、以下の説明では、装置本体2の中径部の位置や領域を指して油圧室6と呼ぶが、実際の油が充填されて推力拡大に寄与するのは、例えば、後述する入力口22や給油孔26、ピストン4が移動した際の大径部などの、油圧室6と連続する部分が該当する。
【0015】
装置本体2には、1つの側面から油圧室6まで貫通する入力口22が形成されている。
この入力口22の外側の2箇所には、
図1(c)に示すように、装置本体2に後述するエアシリンダ100(入力用アクチュエータ)を取り付けるためのネジ穴25が形成されている。
入力口22は、装置本体2に取り付けたエアシリンダ100の入力ロッド101(
図2参照)が挿通される。
入力口22の内周面には、全周にわたって内周溝が形成され、この内周溝にはOリング23が配設されている。このOリング23により、入力口22の内周面と入力ロッド101の外周面の間から油圧室6内の油が漏れることが防止される。
【0016】
装置本体2には、入力口22が形成されている面と反対側の面に、油圧室6まで貫通する給油孔26が形成されており、給油口栓27で塞がれるようになっている。
本実施形態では、給油孔26と給油口栓27の1組が配設されているが、入力口22の形成面と同一面または他の面にもう1組配設するようにしてもよい。この場合、何れか一方から油圧室6内に油を供給し、他方はエア抜き用として使用される。
なお、給油孔26に圧力センサを取り付けることで油圧室6内の油圧を検出することができるようにしてもよい。
図1では、油圧室6を含め、給油孔26から油が充填される領域を塗りつぶしにより表している。ただし、入力口22は全体を塗りつぶしているが、装置本体2の開放端側(側面側)からは入力ロッド101が挿通されるので、実際に油が存在するのは、Oリング23よりも油圧室6側まで、詳細には入力ロッド101の先端面までである。
【0017】
装置本体2における軸方向の貫通孔の小径部の内周面には、全周にわたって内周溝が形成され、この内周溝内には、出力ロッド5との間から油圧室6内の油が漏れることを防止するためのOリング28が配設されている。
【0018】
装置本体2における、シリンダ部21側の端面には、軸方向の貫通孔における大径部の外側には、蓋部3を固定するためのネジ穴29が4箇所形成されている。
【0019】
蓋部3には、
図1(e)に示されるように、装置本体2のネジ穴29に対応する4箇所にボルト穴31が形成されている。蓋部3は、ボルト穴31とネジ穴29を通る押さえボルト32で装置本体2に固定される。
蓋部3は、装置本体2に取り付けられた状態での油圧室6側の面に、非貫通のピン穴が2箇所に形成されている。この2箇所のピン穴には、回り止めピン33の一端側が圧入により固定され、他端側はピストン4のガイド穴42内に摺動可能に挿入されている。
【0020】
シリンダ部21内周面と、ピストン4のガイド穴42が形成されている側の端面と、蓋部3のピストン4に対向する内側面により空気室7が形成されている。
蓋部3には、回り止めピン33と干渉しない位置に、L字状に曲がった吸排気孔34が形成されている。この吸排気孔34は、ピストン4と対向する空気室7側の面から軸方向に延びた後に屈曲して径方向に延び、蓋部3の外周面まで貫通している。
吸排気孔34の端部には、吸排気孔34から排出されるエアによる音を小さくするためのサイレンサー35が配設されている。
空気室7は、ピストン4の軸方向の移動に伴い、内容積が増減し、この内容積の増減に伴い気体(空気)が吸排気孔34とサイレンサー35から吸排気されるようになっている。
【0021】
ピストン4の一方の面には出力ロッド5が配設されている。本実施形態の出力ロッド5はピストン4と一体形成されているが、両者を別体で形成し、圧入やネジ止め等の方法にて固定するようにしてもよい。
ピストン4は、シリンダ部21の大径部内を軸方向に摺動可能に配設されている。この状態で出力ロッド5は、中径部の油圧室6と小径部を通り、その先端が装置本体2の外部に露出している。
このように、本実施形態の推力拡大装置1では、ピストン4の一方の面が油圧室6の隔壁の一部として機能し、ピストン4の油圧室6側の面(一方の面)側に出力ロッド5が配設されている。これにより、油圧室6内に入力ロッド101が進入することで増幅された流体圧力(推力)がピストン4に対して蓋部3方向に作用し、この増幅推力はピストン4に接続された出力ロッド5を蓋部3方向、すなわち、装置本体2から見て引込む方向に作用することができる。
【0022】
ピストン4の外周面には、全周にわたって外周溝が形成され、この外周溝内には、シリンダ部21の内周面との間から油圧室6内の油が漏れることを防止するためのOリング41が配設されている。
なお
図1~
図4の推力拡大装置1には図示していないが、出力ロッド5の先端(開放端)には各種工具を取り付けるための取り付け部が形成されている。例えば、出力ロッド5の端面からピストン4方向に向けて形成された工具をネジ止めするためのボルト穴が形成されたり、また、出力ロッド5の先端外周面に雌ねじが形成されるがこれらに限定されない。
【0023】
ピストン4の他方の面には、回り止めピン33に対応する2箇所の位置に、ピストン4を貫通しないガイド穴42が形成されている。
このガイド穴42には、一端側が蓋部3に圧入された回り止めピン33の他端側が挿入されている。これにより、ピストン4がシリンダ部21内を軸方向に移動する際の回転を抑止するようになっている。
【0024】
次に、以上のように構成された推力拡大装置1の使用について説明する。
本実施形態の推力拡大装置1を使用する場合には、入力口22が形成された装置本体2の側面に各種入力用アクチュエータを取り付けて使用する。
図2は、推力拡大装置1に、入力用アクチュエータとして機能するエアシリンダ100を取り付けた使用例を表したものである。
図2(a)の第1使用例では、エアシリンダ100を取り付けた状態を表したものである。
図2(b)は右側面を、
図2(c)は上面を、(d)はエアシリンダ100による推力拡大装置1の動作状態を表したものである。
なお、
図2(a)、(c)、(d)では、推力拡大装置1について内部の状態を説明するために断面で表し、油を充填した油圧室6の状態を解り易くするために、油が充填されている領域を塗りつぶしにより表し、また空気室7のエアが存在している領域を左下がりの斜線で表している。
図2(c)の推力拡大装置1は、
図2(a)におけるAA断面を矢印方向(図面下から上方向)に見た断面図を表している。
【0025】
図2(a)に示すように、エアシリンダ100は円柱形状の入力ロッド101と吸排気孔102、103を備えている。エアシリンダ100は、吸排気孔102、103からのエア供給と排気によって、入力ロッド101の先端が軸方向の前後方向に移動するようになっている。
エアシリンダ100は、
図2(b)に示すように、本体部分の外形形状が方形に形成され、本体部分の2箇所に軸方向に貫通する貫通孔が形成されている。
【0026】
エアシリンダ100の内部状態は図示しないが、吸排気孔102と吸排気孔103との間にピストンが配設され、ピストンの吸排気孔103側の面に入力ロッド101が接続されている。
このため、エアシリンダ100は、吸排気孔103を開放状態にし、吸排気孔102からエアを供給することで、ピストンが空圧により押され、入力ロッド101が
図2(a)の左側に押し出されることになる。逆に、吸排気孔102を開放状態にし、吸排気孔103からエアを供給することでピストン4が反対側に押され、押し出されていた入力ロッド101が装置内部に戻される。
【0027】
エアシリンダ100を取り付ける場合、入力ロッド101の先端を、推力拡大装置1の入力口22内に、Oリング23よりも内側まで挿通する。
この状態で、エアシリンダ100の貫通孔に通した2本の押さえボルト109を、装置本体2のネジ穴25に螺合することで、推力拡大装置1に固定する。
エアシリンダ100を取り付けた後、装置本体2の給油口栓27を外し、給油孔26から油を供給する。
なお、エアシリンダ100を取り付ける前に油圧室6にある程度油を入れておき、エアシリンダ100を取り付けた後、給油口栓27を外し給油孔26から不足分の油を供給しても良い。
エアシリンダ100を取り付けた後、油圧室6に油が十分に充填され、給油口栓27で給油孔26を塞ぐことにより、油圧室6は外部流体の流出入が無い密閉構造となる。
なお、本実施形態の推力拡大装置1では、増幅した流体圧力(推力)を得るために使用する流体として、入手が容易で非圧縮性流体である作動油などの油を使用している。但し、使用する流体としては、流動性を持つ気体、液体またはゲル状の物質を使用することも可能である。この場合には、該当する流体を油圧室6に充填する。
【0028】
次に、エアシリンダ100を取り付けた推力拡大装置1を使用する場合の動作について説明する。
なお、推力拡大装置1は、
図2(a)、(c)に示す状態を、推力が拡大されていない初期状態とする。すなわち、初期状態において、エアシリンダ100は、入力ロッド101の先端が押し出されていない状態である。また、初期状態の推力拡大装置1としては、ピストン4の油圧室6側の端面が、装置本体2を軸方向に貫通する貫通孔の大径部と中径部とにより形成される段部(蓋部3と対向する段部)に当接した状態である。この状態ではピストン4が最も蓋部3から離れた状態であり、ピストン4に接続された出力ロッド5の先端が最も装置本体2から外部に出ている状態である。初期状態において出力ロッド5の先端は、装置本体2からL0だけ出ているものとする。
【0029】
エアシリンダ100を取り付けた推力拡大装置1を使用する場合、
図2(a)に示す初期状態において、推力拡大装置1の吸排気孔34と、エアシリンダ100の吸排気孔103を開放状態にして内部のエアが抜けるようにする。
この状態で
図2(d)に太矢印で示すように、吸排気孔102からエアを供給することで、エアシリンダ100内の図示しないピストンが推力拡大装置1側に押され、吸排気孔103からエアが抜ける。このピストンの移動に伴い入力ロッド101が押し出され、油圧室6内に進入する。
この入力ロッド101の移動により、ピストン4と出力ロッド5は、油圧室6の反対側(蓋部3側)に油圧ストロークOS(=L0-L1)だけ移動する。ピストン4の移動により、その移動分だけ空気室7の容積が小さくなり、内部のエアが吸排気孔34から抜ける。
【0030】
そして、出力ロッド5の先端からは、エアシリンダ100の推力、すなわち、入力ロッド101の先端からの推力Fiに対して、油圧によって増幅された(拡大された)推力Fp1での引込み力が生じる。
【0031】
ここで、入力ロッド101の先端面の面積をS1、ピストン4の面積(ピストン4のラジアル方向の断面積から出力ロッド5のラジアル方向の断面積を引いた面積)をS2とすると、ピストン4が油圧室6の油から受ける力、すなわち、出力ロッド5の先端から出力される引込み方向の推力Fpは次式(1)の通りである。
式(1) Fp1=(Fi/S1)×S2=Fi×(S2/S1)
本実施形態の推力拡大装置1によれば、S1<S2の関係にあるので、出力ロッド5からは、入力ロッド101からの推力Fiに対して拡大された推力Fpでの引込み力を出力することができる。
【0032】
なお、推力拡大装置1から拡大した推力(引込み力)を出力している
図2(d)の状態から、
図2(a)に示す初期状態に戻す場合には、次の通りである。
すなわち、吸排気孔102を開放状態とし、吸排気孔103からエアを供給することで、エアシリンダ100の入力ロッド101を油圧室6から後退させる。
これにより、油圧室6は、入力ロッド101が入っていた体積分の空間が復元され、ピストン4には油圧室6側で負圧がかかり、空気室7には大気圧がかかっているので、ピストン4は段差部に当接するまで移動する。
【0033】
ここで、より確実に初期状態に戻す場合は、吸排気孔103からエアを供給すると共に、開放状態であった推力拡大装置1の吸排気孔34から空気室7にエアを供給してもよい。
なお、ピストン4は、シリンダ部21内における軸方向の移動に対して、回り止めピン33により回転を抑制することができる。
【0034】
次に推力拡大装置1の第2実施形態について説明する。
第1実施形態で説明した推力拡大装置1では、入力口22の中心軸線が、出力ロッド5の中心軸線上を通る位置に入力口22を形成している。そして、
図2(d)に示すように、接続されるエアシリンダ100の入力ロッド101が押し出された状態で、入力ロッド101の先端が出力ロッド5に接触しないように形成され、又は、入力ロッド101の押し出し量が調整される。
これに対して第2実施形態の推力拡大装置1では、第1実施形態の入力口22に対応する入力口221を、その内周面の延長線が出力ロッド5の外周面と干渉しない位置にずらして、かつ、径方向の断面の一部又は全部が油圧室6内を通るように形成したものである。
【0035】
第2実施形態の推力拡大装置1では、入力口221の内周面の延長が出力ロッド5と干渉しないので、入力口221の終端位置については任意位置にすることが可能である。入力口221の終端位置までの距離を長くすることで、入力口221に侵入する入力ロッド111の侵入量をより多くすることが可能になり、出力ロッド5の稼働範囲を大きくすることができる。
例えば、第1実施形態と同様に、油圧室6の内部を終端位置とすることができる。
また、入力口221を、油圧室6を挟んで反対側の装置本体2まで延長して形成することも可能である。
【0036】
入力口221は、その、延長した最先端部に底部を有するように装置本体2の途中まで形成するようにしてもよい。
更に、入力口221を、装置本体2を貫通するように形成するようにしてもよい。入力口221が装置本体2を貫通形成する場合には、油圧室6を封止するための封止蓋8(封止手段)を配設する。
【0037】
図3は、推力拡大装置1の第2実施形態と使用例の説明図である。
図3(a)は、推力拡大装置1にエアシリンダ110を取り付けた状態を表し、(b)は左側面を表している。また、
図3(c)の推力拡大装置1は、
図3(a)におけるBB断面を矢印方向(図面下から上方向)に見た断面図を表し、
図3(d)はエアシリンダ110による推力拡大装置1の動作状態を表したものである。
図3(a)、(c)、(d)では、
図2と同様に、推力拡大装置1について内部の状態を説明するために断面で表し、油を充填した油圧室6の状態を解り易くするために、油が充填されている領域を塗りつぶしにより表し、また空気室7のエアが存在している領域を左下がりの斜線で表している。
以下の実施形態では、第1実施形態と同一の部分、又は相当する部分には同一の符号を付して、その説明を省略、又は相違点について説明することとする。
【0038】
図3に示した第2実施形態の推力拡大装置1では、上述した入力口221が装置本体2を貫通し、封止蓋8を配設する場合の例である。
推力拡大装置1には、装置本体2に取り付けられるエアシリンダ110の入力ロッド111が挿通される入力口221が形成されている。この入力口221は、
図3(a)、(d)に示すように、長手方向の中央部が油圧室6と重なり、装置本体2全体を貫通している。
【0039】
装置本体2の対向する2面の一方側の面(
図3(a)において右側の面)には、入力口221の外側に、エアシリンダ110を取り付けるためのネジ穴25が、対角線上の2箇所に形成されている。
装置本体2におけるネジ穴25側には、入力口221の内径よりも大きな内径の凹部が形成されている。この凹部には、当該凹部と外径が略同一で、入力口221内に挿入される入力ロッド111の外径と略同一内径の、アダプタ225が配設されている。
このアダプタ225は、種々の内径のアダプタが用意され、接続されるエアシリンダ110における入力ロッド111の外径に応じて適宜選択される。
【0040】
アダプタ225の内周面には全週にわたって内周溝が形成され、当該内周溝にはOリング231が配設されている。また、アダプタ225の外周面には、全週にわたって外周溝が形成され、当該外周溝にはOリング232が配設されている。
両Oリング231、232により、油圧室6の油漏れが防止される。
なお、接続されるエアシリンダ110の入力ロッド111の外径が統一されている場合や、1種類のエアシリンダ110だけ使用する場合には、アダプタ225を使用せず、第1実施形態と同様に、入力口221の内周面にOリング23を設けるようにしてもよい。
【0041】
装置本体2に形成したネジ穴25の形成面の反対側の面(
図3(a)左側の面)の4箇所には、ネジ穴251が形成されている。この4箇所のネジ穴251を使用して、
図3(a)、(b)に示すように、封止蓋8が4本の押さえボルト81で装置本体2に固定される。
封止蓋8は、油圧室6と連通し装置本体2を貫通する入力口221を封止するために使用される。
【0042】
本実施形態の封止蓋8の中央部分には、入力口221の内径よりも大きな外径の、装置本体2側に突出する凸部83と、その反対側に突出する凸部82が形成されている。
封止蓋8の中央には、凸部83側から凸部82側に向けて、入力口221の内径と同一内径の延長凹部84(有底の凹部)が形成されている。これにより、エアシリンダ110の入力ロッド111は、入力口221を通りさらに延長凹部84内まで入り込むことが可能になる。
【0043】
凸部83の外周面には、全周にわたって外周溝が形成され、この外周溝内には、Oリング89が配設されている。
装置本体2を貫通する入力口221の開口部(端部)には、入力口221の内径よりも大きな内径の凹部が形成されており、当該凹部内に凸部83が挿入され、封止蓋8が押さえボルト81で装置本体2に固定される。
封止蓋8を取り付けた際、凸部83のOリング89により、油圧室6内の油漏れが防止される。
【0044】
本実施形態の推力拡大装置1では、装置本体2の軸方向を囲む4面のうち、対向する2面を入力口221で貫通し、その一方の面をエアシリンダ110の固定に、他方の面に封止蓋8の固定に使用している。
そこで、第2実施形態では、
図3(c)に示すように、残りの2面のうちの一方の側(入力口221が形成されていない側)に給油孔26と給油口栓27を配置している。
入力口221が形成されている側に給油孔26と給油口栓27を形成してもよいが、この場合の給油孔26は、当該側面側の端面から入力口221まで貫通させることになる。
【0045】
本実施形態の推力拡大装置1では、第1実施形態よりも大きくなるピストン4と出力ロッド5の油圧ストロークに対応するため、装置本体2及びシリンダ部21の長手方向の長さを第1実施形態よりも長く形成している。
この大きな油圧ストロークに対応するため、第1実施形態よりも、ガイド穴42の深さが深く形成され、また回り止めピン33の長さが長く形成されている。
【0046】
また本実施形態では、蓋部3の中央部に非貫通のピン穴が形成され、このピン穴には、ガイドピン36の一端側が圧入により固定されている。
一方、ピストン4の中央には、ガイドピン36の外径よりも大きな内径で、出力ロッド5まで延びる深さの有底の穴44が形成されている。この穴44には、ガイドピン36の他端側が挿入される。
ガイドピン36の外周面と穴44の内周面との間にはコイルバネ37が配設されている。このコイルバネ37の一端は蓋部3に当接し、他端は穴44の底面に当接することで、蓋部3とピストン4が離れる方向に付勢している。
このコイルバネ37の付勢力により、ピストン4と出力ロッド5が駆動状態から初期状態に素早く戻ることが可能になる。
【0047】
次に、
図3(a)、(d)を参照して、エアシリンダ110による、本実施形態の推力拡大装置1の動作について説明する。
推力拡大装置1の初期状態は、
図3(a)に示すように、第1実施形態と同様に、推力が拡大されておらず、ピストン4が最も蓋部3から離れた状態である。
図3(a)の初期状態から、
図3(d)に太矢印で示すように、吸排気孔112からエアを供給することで、エアシリンダ110内の図示しないピストンが推力拡大装置1側に押され、吸排気孔113からエアが抜ける。このピストンの移動に伴い入力ロッド111が押し出され、油圧室6内を通過し、封止蓋8の延長凹部84内にまでに進入する。
この入力ロッド111の移動により、第1実施形態と同様に、ピストン4と出力ロッド5は、蓋部3側に移動し、ピストン4の移動により空気室7内のエアが吸排気孔34から抜ける。
【0048】
そして、出力ロッド5の先端からは、エアシリンダ110の推力、すなわち、入力ロッド111の先端からの推力に対して、油圧によって増幅された(拡大された)推力での引込み力が生じる。
第2実施形態の推力拡大装置1では、上述したように、油圧室6内に侵入する入力ロッド111の体積が第1実施形態の場合よりも大きくなったのに対応して、出力ロッド5の油圧ストローク(引込み距離)も大きくなる。
【0049】
一方、推力拡大装置1から拡大した推力(引込み力)を出力している
図3(d)の状態から、
図3(a)に示す初期状態に戻す場合には、第1実施形態と同様に、吸排気孔112を開放状態とし、吸排気孔113からエアを供給することで、入力ロッド111を油圧室6から後退させる。
この際、第2実施形態では、出力ロッド5が蓋部3から離れる方向にコイルバネ37で付勢されているので、よりスムーズに初期状態に復帰することができる。
なお、ガイドピン36、コイルバネ37、及び、穴44を第1実施形態の推力拡大装置1にも配設するようにしてもよい。
また、第2実施形態においても、第1実施形態の変形例として説明したように、吸排気孔113からエアを供給すると共に、開放状態であった推力拡大装置1の吸排気孔34から空気室7にエアを供給するようにしてもよい。これにより、さらにスムーズに初期状態に復帰させることができる。
【0050】
以上説明したように、第2実施形態の推力拡大装置1によれば、入力ロッド111に対する長い入力ストローク(入力容積)を確保することができるので、ピストン4と出力ロッド5の油圧ストローク(引込みストローク)を長くすることができる。
【0051】
以上、第2実施形態の推力拡大装置1について、油圧室6と連接し、装置本体2を貫通する入力口221を形成し、その両開口面の一方側(
図3(a)の右側)にエアシリンダ110を取り付け、他方側(同左側)に封止蓋8を取り付ける場合について説明した。
この第2実施形態に対して、エアシリンダ110と封止蓋8を、入力口221の両開口面の何れの側にでも配設できるようにしてもよい。
すなわち、装置本体2を貫通する入力口221の両側に、同一位置、形状、サイズの凹部を形成し、封止蓋8の凸部83とアダプタ225の外径形状を同一にする。なお、アダプタ225の内径については、入力ロッド111の外径が出入り可能なサイズに形成するのは第2実施形態と同じである。
【0052】
また、第2実施形態では、エアシリンダ110を固定するためのネジ穴25を対角線上の2箇所に形成したが、この変形例では、説明したネジ穴25の2箇所に加え、他の対角線上の2箇所、合計4箇所にネジ穴25を形成する。
そして、封止蓋8を固定するための、ネジ穴251をネジ穴25と共通する位置に形成する。
このように、ネジ穴25(ネジ穴251)を4箇所形成することで、推力拡大装置1に対する、吸排気孔112と吸排気孔113の向きが上下左右の何れの向きにでもエアシリンダ110を取り付けることが可能になる。
【0053】
また、第2実施形態の封止蓋8は、凸部82を設け、当該凸部82の内側に延長凹部84を形成した。
これに対する他の変形例として、封止蓋8の一方側にだけ凸部83を形成し、反対側を凸部82が無い平面状に形成してもよい。この場合にも、封止蓋8の厚さを、凸部82に相当する厚さ分だけ加えた厚さとして、凸部83側を開口側とする有底の延長凹部84を中央に形成する。すなわち封止蓋8の厚さを、有底の延長凹部84を形成可能な十分な厚さにする。
【0054】
また、封止蓋8の両面側に凸部がない平板状に形成するようにしてもよい。
この場合、封止蓋8と装置本体2の互いに対向する両端面のいずれか一方の端面に、入力口221の外側を囲う円形の溝を形成し、当該溝にOリングを配設することで、入力口221から油圧室6内の油漏れを防止する。
【0055】
次に第3実施形態について説明する。
説明した第1、第2実施形態では、推力拡大装置1に入力用アクチュエータ(エアシリンダ100等)を接続するための、入力口と入力用固定手段(ネジ穴25)が1箇所(装置本体2の4側面のうちの1側面)に形成されている場合について説明した。
これに対して第3実施形態の推力拡大装置1では、入力口と入力用固定手段を複数の側面に形成することで、複数の入力用アクチュエータ(エアシリンダ100等)を取り付けることが可能になっている。
この第3実施形態では、取り付けた複数の入力用シリンダを同時に稼働した状態(入力ロッドが油圧室6内に侵入した状態)で各入力ロッド同士が干渉(接触)しないように、各取り付け面の位置を調整している。
【0056】
図4は、推力拡大装置の第3実施形態と使用例の説明図である。
図4(a)は、
図2(a)に対応する第3実施形態の装置本体2の断面図で、AA(図示せず)断面を図面下から見た図、(b)は左からの側面を、(c)は下からの側面を表したものである。なお、
図4(a)では、
図2、3と同様に、推力拡大装置1だけ断面を表し、油が充填されている領域を塗りつぶしにより表している。
【0057】
図4に示すように、本実施形態の推力拡大装置1は、出力ロッド5を囲う装置本体2の4面のうちの3面に、入力用固定手段であるネジ穴25が設けられている。各面のネジ穴25は、対角線上の2箇所ではなく、4箇所に形成され、エアシリンダ100を固定する場合には、エアシリンダ100の取り付け向きに応じた対角線上の2箇所のネジ穴25が使用される。
一方、エアシリンダ100を取り付けない面に対しては、4箇所のネジ穴25を使用して入力口22を封止するための蓋9が押さえボルト91で固定される。
【0058】
このように、装置本体2の4側面のうちの3側面に共通化した入力用固定手段(ネジ穴25)を配設したので、推力拡大装置1の設置環境や用途に合わせてエアシリンダ100の向きや数を選択することができる。
ここで、推力拡大装置1に複数取り付ける入力用アクチュエータは、空圧式でも電動式でも良く、空圧式と電動式を混在させることも可能である。そして、空圧式で出力ロッド5を粗動、電動で微動(微調整)させることも可能である。
【0059】
図4に示すように、本実施形態の推力拡大装置1は、油圧室6に対して3方向から貫通する入力口22a~22cが形成され、各々の周囲4箇所にネジ穴25a、25b、25cが形成されている。
図4に示した使用例では、吸排気孔102a、103aを有するエアシリンダ100aが2箇所のネジ穴25aに押さえボルト109aで固定され、吸排気孔102b、103bを有するエアシリンダ100bが2箇所のネジ穴25bに押さえボルト109bで固定されている。
そして、使用しない入力口22cを封止するための、蓋9が4箇所のネジ穴25cに押さえボルト91で固定されている。
図4に示したエアシリンダ100aを使用しない場合(エアシリンダ100bのみ使用する場合)、使用しない入力口22aと入力口22cのそれぞれを蓋9、9で封止する。
【0060】
蓋9の中央には、入力ロッド101と同径の仮ロッド92(凸部)が形成されている。仮ロッド92は、初期状態における入力ロッド101と同じ長さに形成され、仮ロッド92とOリング23により油圧室6内の油漏れが防止される。
なお、封止蓋8に仮ロッド92を配設せず、平板状に形成するようにしてもよい。この場合、封止蓋8a~8cには、装置本体2と対向する端面に、入力口22a~22cの外側で対向する円形の溝が形成され、当該溝にOリングが配設されている。これにより、封止蓋8a~8cで固定された入力口22a~22cから油圧室6内の油漏れが防止される。なお、円形の溝とOリングについては、装置本体2側に配設するようにしてもよい。
【0061】
図4(a)に示すように、本実施形態の推力拡大装置1では、給油孔26と給油口栓27が、装置本体2における入力口22a~22cが形成されていない面に配設されている。
【0062】
本実施形態の変形例として、更に、油圧室6に対して4方向の全方向から貫通する入力口22a~22dと、各々の周囲4箇所にネジ穴25a~25dを形成することで、4台のエアシリンダ100a~100dを接続できるようにしてもよい。
この変形例では、給油孔26と給油口栓27を、出力ロッド5が出入するための開口が形成された面において、当該開口と干渉しない位置で、入力口22a~22dの上方の位置、又は油圧室6上の位置に形成する。
【0063】
なお、図示しないが、第3実施形態の推力拡大装置1においても、第1実施形態と同様に出力ロッド5とピストン4の回り止手段(ガイド穴42と回り止めピン)を設けるようにしてもよい。
更に第2実施形態と同様に、蓋部3とピストン4が離れる方向に付勢する付勢手段(蓋部3のピン穴、ガイドピン36、コイルバネ37)を設けるようにしてもよい。
【0064】
第3実施形態における推力拡大装置1の動作については次の通りである。
すなわち、第3実施形態の推力拡大装置1に対し、1箇所にだけエアシリンダ100を接続し、残りの2箇所を蓋9で封止した場合の動作は、第1実施形態の推力拡大装置1と同じであり、出力ロッド5の油圧ストロークも同じである。
【0065】
一方、2台又は3台、変形例の場合4台のエアシリンダ100を接続した場合、エアシリンダ100を1台ずつ順番に駆動する第1駆動方法と、全てのエアシリンダを同時に駆動する第2駆動方法とがある。
第1駆動方法、第2駆動方法のいずれにおいても、全エアシリンダ100の駆動が完了した際における出力ロッド5の油圧ストロークは同じである。
また、両駆動方法において、各エアシリンダ100の入力ロッド101による油圧室6への押圧圧力は同一である。
【0066】
第1駆動方法の場合、エアシリンダ100を順番に駆動することで、出力ロッド5の油圧ストローク量を、各エアシリンダ100を動作させた段階毎の位置で止めることができる。すなわち、3台のエアシリンダ100を順に駆動させた場合は、3段階の位置で止めることができる。この場合、複数配設したエアシリンダ100の一部を粗動、残りを微動(精密動作)とすることができる。
一方、第2駆動方法の場合、全エアシリンダ100を同時に駆動するので、最大油圧ストロークまで最短時間で出力ロッド5を移動させることができる。
なお、第1駆動方法、第2駆動方法において、最終的に全てのエアシリンダ100を駆動するだけでなく、推力拡大装置1の使用状況に応じて、接続しているエアシリンダ100の一部だけを駆動するようにしてもよい。
【0067】
駆動した推力拡大装置1を初期状態に戻す場合、各エアシリンダ100の動作は基本的に第1実施形態と同じである。
初期状態に戻す場合、駆動時の方法が第1、第2駆動方法のいずれかによらず、各エアシリンダ100を順番に戻す場合と同時に戻す場合のいずれでもよい。
【0068】
次に、推力拡大装置1の実施例(使用例)について説明する。
図5は、推力拡大装置1の実施例として、出力ロッド5の先端にダイヤフラム式のチャック装置を取り付けた場合の説明図である。
図5(a)では、推力拡大装置1にチャック装置700とエアシリンダ100を取り付けた状態を表し、
図2(a)と同様にエアシリンダ100以外の部分を断面で表している。
図5(a)の断面図において、ダイヤフラム部720の断面に右下がりの斜線を付している。
また、
図5(b)は推力拡大装置1に取り付けたチャック装置700を上側から見た状態を表し、
図5(b)のCC断面を矢印方向に見た推力拡大装置1の断面を
図5(a)で表している。
【0069】
図5に示した推力拡大装置1は、第1実施形態の推力拡大装置1に比べ、引込み用凹部24と、3箇所のねじ穴(ボルト722用)が形成されている点が異なり、他は同様に形成されている。
すなわち、装置本体2の出力ロッド5が出入りする側の端部に引込み用凹部24が形成され、引込み用凹部24の外側にはボルト722用のねじ穴(3箇所)が形成されている。引込み用凹部24は、その内径がチャック装置700のチャック部710よりも大きく、ダイヤフラム部720の外径よりも小さく形成されている。
【0070】
第1実施形態では図示と説明を省略したが、本実施形態の出力ロッド5の先端外周面に工具をネジ止めするための雄ねじが形成されている。
【0071】
推力拡大装置1に取り付ける、チャック装置700は、ワークや治具等を挟持するチャック部710と、ダイヤフラム部720、引込みアダプタ730を備えている。
チャック部710は、円を3分割した扇形形状の基部711、各基部711の中央に立設された爪部712、各基部711をダイヤフラム部720に固定するためのネジ穴とボルト713からなる3組の部材を備えている。3本の爪部712は、基部711と同様に円柱部材を縦方向に3分割した形状である。扇形形状の3つの基部711は、その底面側においてリング状部材714で接続されている。
【0072】
ダイヤフラム部720は、中央に貫通孔721が形成され厚さ方向に弾性変形可能な薄板状態のダイヤフラムと、このダイヤフラムの外周に形成された厚肉部を有している。この厚肉部には、チャック部710をボルト713で固定するためのボルト穴と、ダイヤフラム部720をボルト722で装置本体2に固定するためのボルト穴が形成されている。
【0073】
引込みアダプタ730は、長手方向に貫通する貫通孔が中央部に形成され、その内側に出力ロッド5先端の雄ねじと螺合する雌ねじが形成されている。
引込みアダプタ730の長手方向の略中央にはフランジ部731が形成されている。このフランジ部731の外径は、ダイヤフラム部720の中央に形成された貫通孔721の内径よりも大きく形成されている。
【0074】
次に、チャック装置700の取り付け方法について説明する。
チャック装置700は、推力拡大装置1が非動作状態(初期状態)では、
図5に示すように、チャック部710の爪部712が開放した状態である。
最初に
図2(d)における動作説明と同様にエアシリンダ100の吸排気孔103を開放した状態で吸排気孔102からエアを供給する。するとエアシリンダ100の入力ロッド101が油圧室6内に侵入することで、油圧室6で拡大された推力により、ピストン4と共に出力ロッド5の先端に取り付けた引込みアダプタ730のフランジ部731が蓋部3側に引き込まれる。これによりダイヤフラム部720の中央部が蓋部3側に引き込まれることで弾性変形し、開放状態であったチャック部710の爪部712が閉じる。
この爪部712が閉じた状態において、ワーク等のクランプする穴に3本の爪部712を挿入する。挿入後、推力拡大装置1をエアシリンダ100の吸排気孔102を開放し、吸排気孔103からエアを供給して入力ロッド101を元に戻すと、ピストン4が元に戻り、弾性変形したダイヤフラム部720の復元力で爪部712が元の状態に開こうとする。
この時、爪部712がクランプするワーク等の内径が、爪部712が開いたとき(
図5の状態)の外径よりも小さいと、爪部712が開き切る前にワーク等のクランプ内周面と爪部712の外周部が当接する。当接時に、出力ロッド5が引き込んで発生させたダイヤフラム部720の弾性変形量は元に戻りきっていないので、元の状態の戻ろうとする力が残っており、その力でワーク等を爪部712が把持する。
【0075】
次に、チャック装置700の動作について説明する。
チャック装置700は、推力拡大装置1が非動作状態(初期状態)では、
図5に示すように、チャック部710の爪部712が開放した状態である。
この開放状態において、3本の爪部712間にワーク等を挿入した後に、推力拡大装置1をエアシリンダ100で駆動する。
すなわち、
図2(d)における動作説明と同様にエアシリンダ100の吸排気孔103を開放した状態で吸排気孔102からエアを供給する。
するとエアシリンダ100の入力ロッド101が油圧室6内に侵入することで、油圧室6で拡大された推力により、ピストン4と共に出力ロッド5の先端に取り付けた引込みアダプタ730のフランジ部731が蓋部3側に引き込まれる。
これによりダイヤフラム部720の中央部が蓋部3側に引き込まれることで、開放状態であったチャック部710の爪部712が閉じて、ワーク等を挟持する。
【0076】
ワーク等を挟持しているチャック部710を開放する場合、
図2での説明と同様に、推力拡大装置1を初期状態に戻す。
【0077】
以上説明した各実施形態及び実施例では推力拡大装置1にエアシリンダ100、110を取り付ける場合について説明したが、他の入力用アクチュエータとして、異なるサイズのエアシリンダを取り付けたり、電動シリンダを取り付けるようにしてもよい。
例えば、電動シリンダのように、装置本体2に取り付けるための押さえボルト用の貫通孔が存在しない場合には、所定のアダプタを介して装置本体2に固定する。
アダプタを装置本体2に固定する場合、装置本体2のネジ穴25を利用することも可能である。ネジ穴25を利用できない場合には、蓋部3にアダプタ固定用のねじ穴を形成するようにしてもよい。
【0078】
以上説明したように、各実施形態及び変形例(以下、各実施形態等という)の推力拡大装置1では、出力する推力の元となる推力を入力する入力機能と、入力された推力をパスカルの原理を利用した流体圧として拡大し出力する推力拡大機能とを有する、いわゆるエアハイドロシリンダから推力拡大機能を構成する部分を分離、独立して推力拡大装置1として形成した。
推力拡大装置1は、入力機能を分離したため単独では動作しないため、拡大対象となる推力(入力)を得るための各種入力側アクチュエータ(エアシリンダ100等)を直接、又はアダプタを介して、装置本体2の取り付け手段(ネジ穴25)に取り付けることで、動作可能にしている。
このように、各実施形態等の推力拡大装置1によれば、各種の入力側アクチュエータを容易に固定、交換することができる。
【0079】
推力拡大装置1では、装置本体2のシリンダ部21にピストン4を配設し、このピストン4に拡大推力が作用する油圧室6と同じ側の面に、油圧室5内を通る出力ロッド5を配設している。
これにより、接続したエアシリンダ100から入力され、油圧室6で拡大された推力は、出力ロッド5の先端(開放端)側が推力拡大装置1の内側に引き込まれる方向に出力される。
すなわち、油圧室6が作用するピストン4に対して、出力ロッド5を油圧室6と同じ側に配設することで、出力ロッド5に引込み方向の拡大推力を作用させることが可能になっている。
【符号の説明】
【0080】
1 推力拡大装置 2 装置本体
3 蓋部 4 ピストン
5 出力ロッド 6 油圧室
7 空気室 8、8a~8c 封止蓋
9 蓋 21 シリンダ部
22、22a~22c 入力口 23 Oリング
24 引込み用凹部 25 ネジ穴
26 給油孔 27 給油口栓
28 Oリング 29 ネジ穴
31 ボルト穴 32 押えボルト
33 回り止めピン 34 吸排気孔
35 サイレンサー 36 ガイドピン
37 コイルバネ 41 Oリング
42 ガイド穴 44 穴
81 押さえボルト 82 凸部
83 凸部 84 延長凹部
89 Oリング 91 押さえボルト
92 仮ロッド
100、100a~100c エアシリンダ 101 入力ロッド
102、103 吸排気孔 109 押さえボルト
110 エアシリンダ 111 入力ロッド
112、113 吸排気孔 225 アダプタ
231、232 Oリング 251 ネジ穴
700 チャック装置 710 チャック部
711 基部 712 爪部
713 ボルト 714 リング状部材
720 ダイヤフラム部 721 貫通孔
722 ボルト 730 引込みアダプタ
731 フランジ部