(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186318
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】推力拡大装置
(51)【国際特許分類】
F15B 3/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
F15B3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094475
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096655
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100091225
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 均
(72)【発明者】
【氏名】荒井 茂弘
【テーマコード(参考)】
3H086
【Fターム(参考)】
3H086BA03
3H086BA13
3H086BA19
3H086BB02
3H086BB08
3H086DA02
3H086DA12
3H086DB03
3H086DB06
3H086DB09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】後付するエアシリンダの入力ロッドの移動範囲を調整可能にする。
【解決手段】推力拡大装置1は、後付けするエアシリンダ100の入力ロッド101の後退を規制するための後退規制手段として、入力側蓋3の油圧室8側の端面と当接する後退ストッパ361を入力ロッド101の先端に取付ける。後退ストッパ361、入力側蓋3等と当接した状態で、入力ロッド101の段差部(平取り等)が、入力ロッド101用のOリング47よりも油圧室8側となる位置で停止するように取付けられる。これにより、入力ロッド101の前進、後退によって段差部がOリング47と干渉することが回避される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力用アクチュエータが接続されることで、前記入力用アクチュエータから入力された推力を拡大して出力する推力拡大装置であって、
スラスト方向に軸方向貫通孔が形成されたシリンダと、
前記シリンダ内に形成される流体室と、
前記軸方向貫通孔内に配設され、一方側の面が前記流体室の内壁面の一部を構成し、スラスト方向に移動するピストン部と、前記ピストン部に接続され、前記拡大した推力を出力する出力ロッドを有する流体ピストンと、
前記シリンダの一端側に接続され、前記出力ロッドがスラスト方向に移動する貫通孔が形成された出力側蓋部と、
前記シリンダ内に形成された前記流体室と連通する貫通孔の開放端に配設され、前記入力用アクチュエータの入力ロッドが挿通される開口部が形成された入力蓋部と、
前記開口部に前記入力ロッドが挿通された状態で前記入力用アクチュエータを固定する入力用固定手段と、
前記開口部の内周面に配設され、前記開口部と前記入力ロッドとの間をシールするシール手段と、
前記入力ロッドの前記流体室内における可動範囲を規制する規制手段と、
を具備したことを特徴とする推力拡大装置。
【請求項2】
前記規制手段は、前記入力ロッドの先端部に形成された段差部における、前記入力ロッドの先端から最も離れている段差端位置が、前記シールド手段における最も前記流体室側のシールド端位置よりも、前記流体室側の位置で停止するように、前記入力ロッドの後退方向の移動を規制する、
ことを特徴とする請求項1に記載の推力拡大装置。
【請求項3】
前記規制手段は、前記開口部の内径よりも外径が大きく形成され、干渉回避条件である「段差距離D1<リング距離R1」を満たす状態で前記入力ロッドの先端部に配設される後退ストッパを有することを特徴とする請求項2に記載の推力拡大装置。
ここで、前記段差端位置から、前記後退ストッパと前記入力蓋部との当接面Pまでの距離が段差距離D1で、前記シールド端位置から前記当接面Pまでの距離がリング距離R1である。
【請求項4】
前記規制手段は、前記入力ロッドの先端面と対向している、前記シリンダの内側面よりも手前の位置で停止するように、前記入力ロッドの前進方向の移動を規制する、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の推力拡大装置。
【請求項5】
前記規制手段は、前記入力ロッドの先端面と対向している前記シリンダの側面を貫通し、一端側の先端が入力ロッドと当接することで前記入力ロッドの前進側の移動を規制する、調整ピンを有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1の請求項に記載の推力拡大装置。
【請求項6】
前記規制手段は、前記シリンダの外壁面に固定される調整ブロックを有し、
前記調整ピンは、他端側に雄ネジが形成され、
前記調整ブロックは、前記調整ピンが挿通し、前記調整ピンの雄ネジと螺合する雌ネジが形成された貫通孔を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の推力拡大装置。
【請求項7】
前記シリンダの側壁に形成された側面貫通孔を有し、
前記入力蓋部は、前記側面貫通孔の開放端に配設されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1の請求項に記載の推力拡大装置。
【請求項8】
前記入力蓋部は、前記軸方向貫通孔の他端側の開放端に配設されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1の請求項に記載の推力拡大装置。
【請求項9】
前記ピストン部は、前記出力ロッドが接続されていない側の面が前記流体室の隔壁の一部を構成している、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1の請求項に記載の推力拡大装置。
【請求項10】
前記ピストン部は、前記出力ロッドが接続されている側の面が前記流体室の隔壁の一部を構成し、
前記出力ロッドが前記拡大された推力を引き込む方向に作用させる、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1の請求項に記載の推力拡大装置。
【請求項11】
前記入力蓋部は、前記出力ロッドの中心線に対して、前記開口部の中心線の延長線が、前記開口部の半径と前記出力ロッドの半径を加算した距離よりも離れている位置に配設されている、
ことを特徴とする請求項10に記載の推力拡大装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推力拡大装置に係り、詳細には入力された圧力を増幅した推力として出力する推力拡大装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エア(気体)や油(液体)といった流体を用いた流体圧シリンダが工業の広い分野で利用されている。
これら流体圧シリンダは、流体の圧力でシリンダ内のピストンに推力を発生させることにより、例えば、プレスやアクチュエータの駆動など、様々な機械的な動作の原動となることができる。
このような流体圧シリンダとして、空圧をシリンダ内部で油圧力に変換するエアハイドロシリンダがある(特許文献1)。
このエアハイドロシリンダでは、エアシリンダ(入力側)と推力を拡大する油圧シリンダ(出力側)を共通するシリンダで1体化したもので、シリンダ内の入力側にエアで駆動するエアピストンを配置し、エアピストンの出力を入力として駆動する油圧ピストンと出力ロッドを出力側に配置している。
【0003】
このようなエアハイドロシリンダにおいて、出力側の油圧シリンダ部(推力拡大機構部)を入力側のエアシリンダ部から分離独立させることで、各種エアシリンダの交換を可能にした推力拡大装置が提案されている(特許文献2)。
この推力拡大装置では、油圧室を構成するシリンダ壁に、後付けする各種アクチュエータの出力ロッド(推力拡大装置に対して推力を入力するので、入力ロッドという)のロッド径に合わせた貫通孔を設け、ここにエアシリンダの入力ロッド等を挿入することにより推力拡大機構が動作するようになっている。
【0004】
図10は、推力拡大装置に後付する汎用的なエアシリンダ100を表したものであり、
図10(a)~(d)は雌ネジタイプのエアシリンダを、
図10(e)は雄ネジタイプのエアシリンダ100を表している。
図10に示すように、エアシリンダ100は、吸排気孔102、103からのエア供給によって軸方向に前進、後退する入力ロッド101を備えている。この入力ロッド101の先端には、各種部材を取付けるための雌ネジ152(
図10(b)、(d)参照)、又は雄ネジ154(
図10(e)参照)が形成されている。また、入力ロッド101の先端の雌ネジ152や雄ネジ154に部材を取付ける際に必要な、円筒部の側面に平行にカットした2面からなるスパナ掛け部(以下、平取りという)151が形成されている。
このように、一般的なエアシリンダ100の入力ロッド101の先端には平取りによる段差部や、雄ネジが形成されている部分と形成されていない部分とによる段差部が形成されている。
【0005】
このため、一般的なエアシリンダ等を推力拡大装置に後付けして使用すると、エアシリンダを組み込む際や入力ピストンを動作させる際に、推力拡大装置に設けた入力ロッド用の貫通孔に設けた油圧シール用のOリングと、入力ロッドに形成された段差部とが干渉してしまい、Oリングを損傷させてしまう可能性があった。
また、全長において円筒形状に形成された入力ロッドのエアシリンダを使用することで、Oリングの損傷を回避することが可能であるが、特殊仕様の特注をする必要があった。
【0006】
また入力側アクチュエータがエアシリンダの場合、そのストロークは例えば、10mmから50mmまでは10mmとび、50mmから100mmまでは25mmとび等のように段階的に標準化されている。このため、段階途中のストロークが必要な場合は特注で製作するか、短い標準仕様のストロークのエアシリンダを使用して推力拡大装置で出力可能なストローク仕様を変更する必要があった。
エアシリンダの多くは前進と後退の2点動作が一般的だが、特許文献2記載の推力拡大装置では、エアシリンダの前進側のストロークを調整すること、即ち、入力ロッドの前進端の停止位置を調整することができないため、設計当初の仕様よりも長いストロークのエアシリンダに変更することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4895342号公報
【特許文献2】特開2020-076495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、後付する入力用アクチュエータにおける入力ロッドのストローク範囲を調整可能な推力拡大装置を提供することを第1の目的とする。
また、推力拡大装置の流体シール用のシール手段と、入力用アクチュエータにおける入力ロッドの段差部との干渉を回避することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)請求項1に記載の発明では、入力用アクチュエータが接続されることで、前記入力用アクチュエータから入力された推力を拡大して出力する推力拡大装置であって、スラスト方向に軸方向貫通孔が形成されたシリンダと、前記シリンダ内に形成される流体室と、前記軸方向貫通孔内に配設され、一方側の面が前記流体室の内壁面の一部を構成し、スラスト方向に移動するピストン部と、前記ピストン部に接続され、前記拡大した推力を出力する出力ロッドを有する流体ピストンと、前記シリンダの一端側に接続され、前記出力ロッドがスラスト方向に移動する貫通孔が形成された出力側蓋部と、前記シリンダ内に形成された前記流体室と連通する貫通孔の開放端に配設され、前記入力用アクチュエータの入力ロッドが挿通される開口部が形成された入力蓋部と、前記開口部に前記入力ロッドが挿通された状態で前記入力用アクチュエータを固定する入力用固定手段と、前記開口部の内周面に配設され、前記開口部と前記入力ロッドとの間をシールするシール手段と、前記入力ロッドの前記流体室内における可動範囲を規制する規制手段と、を具備したことを特徴とする推力拡大装置を提供する。
(2)請求項2に記載の発明では、前記規制手段は、前記入力ロッドの先端部に形成された段差部における、前記入力ロッドの先端から最も離れている段差端位置が、前記シールド手段における最も前記流体室側のシールド端位置よりも、前記流体室側の位置で停止するように、前記入力ロッドの後退方向の移動を規制する、ことを特徴とする請求項1に記載の推力拡大装置を提供する。
(3)請求項3に記載の発明では、前記規制手段は、前記開口部の内径よりも外径が大きく形成され、干渉回避条件である「段差距離D1<リング距離R1」を満たす状態で前記入力ロッドの先端部に配設される後退ストッパを有することを特徴とする請求項2に記載の推力拡大装置を提供する。
ここで、前記段差端位置から、前記後退ストッパと前記入力蓋部との当接面Pまでの距離が段差距離D1で、前記シールド端位置から前記当接面Pまでの距離がリング距離R1である。
(4)請求項4に記載の発明では、前記規制手段は、前記入力ロッドの先端面と対向している、前記シリンダの内側面よりも手前の位置で停止するように、前記入力ロッドの前進方向の移動を規制する、ことを特徴とする請求項1、請求項2、又は請求項3に記載の推力拡大装置を提供する。
(5)請求項5に記載の発明では、前記規制手段は、前記入力ロッドの先端面と対向している前記シリンダの側面を貫通し、一端側の先端が入力ロッドと当接することで前記入力ロッドの前進側の移動を規制する、調整ピンを有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1の請求項に記載の推力拡大装置を提供する。
(6)請求項6に記載の発明では、前記規制手段は、前記シリンダの外壁面に固定される調整ブロックを有し、前記調整ピンは、他端側に雄ネジが形成され、前記調整ブロックは、前記調整ピンが挿通し、前記調整ピンの雄ネジと螺合する雌ネジが形成された貫通孔を有する、ことを特徴とする請求項5に記載の推力拡大装置を提供する。
(7)請求項7に記載の発明では、前記シリンダの側壁に形成された側面貫通孔を有し、前記入力蓋部は、前記側面貫通孔の開放端に配設されている、ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1の請求項に記載の推力拡大装置を提供する。
(8)請求項8に記載の発明では、前記入力蓋部は、前記軸方向貫通孔の他端側の開放端に配設されている、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1の請求項に記載の推力拡大装置を提供する。
(9)請求項9に記載の発明では、前記ピストン部は、前記出力ロッドが接続されていない側の面が前記流体室の隔壁の一部を構成している、ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1の請求項に記載の推力拡大装置を提供する。
(10)請求項10に記載の発明では、前記ピストン部は、前記出力ロッドが接続されている側の面が前記流体室の隔壁の一部を構成し、前記出力ロッドが前記拡大された推力を引き込む方向に作用させる、ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1の請求項に記載の推力拡大装置を提供する。
(11)請求項11に記載の発明では、前記入力蓋部は、前記出力ロッドの中心線に対して、前記開口部の中心線の延長線が、前記開口部の半径と前記出力ロッドの半径を加算した距離よりも離れている位置に配設されている、ことを特徴とする請求項10に記載の推力拡大装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、入力ロッドの流体室内における可動範囲を規制する規制手段を有するので、後付する入力用アクチュエータにおける入力ロッドのストローク範囲を調整可能な推力拡大装置を提供することができる。
また、請求項2記載の発明よれば、入力ロッドに形成された段差部の段差端位置が、前記シールド手段のシールド端位置よりも、流体室側の位置で停止するように、入力ロッドの後退方向の移動を規制するので、シール手段と入力ロッドの段差部との干渉を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】エアシリンダを取付けた推力拡大装置の説明図である。
【
図2】入力ロッドの段差部とOリングとの干渉を回避するための干渉回避条件についての説明図である。
【
図3】第1実施形態の推力拡大装置にエアシリンダを後付する手順を表した説明図である。
【
図4】第1実施形態における推力拡大装置の動作説明図である。
【
図5】第2実施形態における推力拡大装置の説明図である。
【
図6】第3実施形態における推力拡大装置の説明図である。
【
図7】第4実施形態における推力拡大装置の説明図である。
【
図8】第5実施形態における推力拡大装置の説明図である。
【
図9】第6実施形態における推力拡大装置の説明図である。
【
図10】推力拡大装置に後付するエアシリンダについての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)実施形態の概要
本実施形態の推力拡大装置1では、出力する推力の元となる推力を入力する入力機能と、入力された推力をパスカルの原理を利用した流体圧として拡大し出力する推力拡大機能とを有する、いわゆるエアハイドロシリンダから推力拡大機能を構成する部分を分離、独立して形成したものである。
推力拡大装置1は、自装置内に入力機能がないため単独では動作せず、拡大対象となる推力(入力)を得るために、各種入力側アクチュエータを直接、又はアダプタを介して組み付ける(後付する)ことで動作可能になる。
【0013】
具体的には、推力拡大装置1の入力側に、入力側の各種アクチュエータのロッド径に合わせた流体室(油圧室8)の入力口(貫通孔)が設けてあり、そこに入力側アクチュエータのロッド(入力ロッド101等)を挿入することにより推力拡大機構が動作する。
推力拡大装置1の入力側アクチュエータ取付部は、各種アクチュエータの固定方法、およびロッド形状に合わせて部品を変更できるように構成されている。入力側蓋3の蓋用アダプタ4を変更することで入力ロッド断面積を変更し、推力拡大率を自由に変更することが可能である。また入力側アクチュエータの入力ストロークを変更することにより、出力側ロッドのストロークを変更することができる。
推力拡大装置1によれば、入力側アクチュエータから分離独立したことにより、一般に使用されている各種シリンダを容易に取り付け、交換することができる。
【0014】
本実施形態の推力拡大装置1では、後付けする入力側アクチュエータの入力ロッドの前進及び後退する際の可動範囲を規制する規制手段を設けている。
この規制手段の一例としては、入力ロッドの後退を規制するための後退規制手段として、入力側蓋3(蓋用アダプタ4がある場合には蓋用アダプタ4)の油圧室8側の端面と当接する後退ストッパ361又は後退ストッパ365を、入力ロッド101の雌ネジ152又は雄ネジ154に取付ける。
後退ストッパ361、365は、入力側蓋3等の油圧室8側の端面と当接した状態で、入力ロッド101の段差部(平取り151等)が、入力ロッド101用のOリング47よりも油圧室8側となる位置で停止するように取付けられる。
これにより、入力ロッド101の前進、後退によって段差部がOリング47と干渉することが回避される。
【0015】
また、他の規制手段の一例としては、入力ロッド101の前進を規制する前進規制手段として、入力ロッド101の進行方向前方部に、入力ロッド101の先端部(雄ネジタイプでは入力ロッド101の先端、雌ネジタイプでは後退ストッパ361を固定する止めボルト362の先端)と当接する調整ピン373を備えた前進調整ユニット370をシリンダ2に設ける。
調整ピン373は、油圧室8内の先端位置を前後方向に調整することができるようになっている。調整ピン373の先端位置は、取付けたエアシリンダ100のストロークに応じて調整することが可能である。このため、ストロークが異なる別のエアシリンダ100に交換することも可能である。
前進調整ユニット370による調整ピン373の位置調整は、エアシリンダや電動シリンダ等の入力側アクチュエータを組み込んだ後でも、装置の外側から調整することができる。
なお、入力ロッド101のストロークを規制する規制手段としては、後退方向の移動を規制する後退規制手段と、前進方向の移動を規制する前進規制手段の少なくとも一方を設けることができる。
【0016】
(2)第1実施形態の詳細
図1は第1実施形態における推力拡大装置1に入力側アクチュエータとしてのエアシリンダ100を取付けた状態を表したもので、(a)スラスト方向(中心線の方向)の断面(A-A断面)を表し、(b)はB-B断面を上方から表し、(c)はC-C断面を右側から表したものである。
図1に示すように、推力拡大装置1は、油圧室8の一部(周面)を形成するシリンダ2を備えている。
シリンダ2は、
図1(a)の上下方向(長手方向)に長い直方体形状に形成され、上下方向に貫通して一部が油圧室8を形成する軸方向貫通孔が形成されている。
またシリンダ2の4つの側面のうちの3つの側面には、油圧室8と連通する側面貫通孔が形成されている。シリンダ2の4つの側面のうち、側面貫通孔が形成されている3つの側面は同一の厚さで、側面貫通孔が形成されていない面に比べて厚く形成されている。
シリンダ2の軸方向貫通孔と、3側面の側面貫通孔は同一径に形成されることで、後述するように、エアシリンダ100をいずれの貫通孔にも取り付け可能になっている。
【0017】
また、側面貫通孔は、複数の推力拡大装置1をアダプタで連結する場合にも使用される。すなわち、中央に連通貫通孔が形成されたアダプタを2台の推力拡大装置1の側面に固定することで、両推力拡大装置1の油圧室8が連通する。
このようにアダプタを介して複数の推力拡大装置1を連結することで、複数のエアシリンダ100を取付けることが可能になる。
そして、エアシリンダ100を駆動する台数、すなわち、油圧室8内に前進する入力ロッド101の数に応じて、各推力拡大装置1の出力ロッド72のストロークを段階的に変更することが可能になる。
【0018】
シリンダ2の軸方向貫通孔の上部には、
図1(a)、(c)に示すように、上部蓋3aが固定されている。また、シリンダ2の側面に形成された3つの側面貫通孔のうち、対向する2つの側面貫通孔には、
図1(b)、(c)に示すように、側面蓋3b、3cが固定されている。
上部蓋3a、側面蓋3b、3cは、同一形状に形成され、シリンダ2の軸方向貫通孔、側面貫通孔と略同一径の凸部が形成されている。各凸部の外周面には全周にわたって溝が形成され、Oリング39が配設されている。
上部蓋3a、側面蓋3b、3cの凸部を、それぞれシリンダ2の貫通部に挿入することにより、各Oリング39が貫通部内周面と圧接されることで、シリンダ2の油圧室8内の油をシールしている。
上部蓋3a、側面蓋3b、3cのそれぞれは、
図1(c)に示した後述する入力側蓋3と同様に8個の押さえボルト33a、33b、33cでシリンダ2に固定されている。
【0019】
また、シリンダ2における残りの側面、即ち側面貫通孔が形成されていない面と対向する面には、側面入力貫通孔31(
図3(b)参照)が形成され、この側面入力貫通孔31には、入力側蓋3の一部が挿入されて固定されている。
入力側蓋3の中央には、後付して使用する入力側アクチュエータに応じて交換可能な蓋用アダプタ4が取り付けられている。この入力側蓋3と蓋用アダプタ4が入力蓋部として機能している。
一方、シリンダ2の長手方向の下側、すなわち、上部蓋3aの反対側の端部には、出力側蓋5が固定され、この出力側蓋5の中央には止め蓋6が取り付けられている。
【0020】
シリンダ2における軸方向貫通孔内の中央付近には、上部蓋3a側と出力側蓋5側とを仕切る当接壁4wが形成されている。
当接壁4wは、
図1(b)に示すように、シリンダ2の内側に突出する半円弧形状に形成され、エアシリンダ100側とその反対側の2箇所(同一面上)に形成されている。
当接壁4wは、一端側がシリンダ2から延設されている平板部4w1と、当該平板部4w1から更に延設され、軸方向貫通孔の中心に向かって徐々に薄くなる曲面部4w2を有している。
この曲面部4w2は、
図1(a)に示すように、側面蓋3b側から側面蓋3c側に貫通する側面貫通孔の形成による曲面であり、この側面貫通孔の内周面J1と一致している。この側面貫通孔の形成により、対向する2つの当接壁4wの間(中央部分)がカットされている。
なお、
図1(b)において、符号J2は、軸方向貫通孔の内周面を表している。
【0021】
当接壁4wは、例えば次のようにして形成される。すなわち、内周面がJ3(
図1(b))で表される小径の貫通孔をシリンダ2の軸方向に形成した後、内周面がJ2で表される軸方向貫通孔を上下両方向から平板部4w1の厚さ分を残して形成する。これにより、シリンダ2の内側に突出する、内周面J2から内周面J3までの幅を有し平板部4w1を含むフランジ形状部が形成される。
さらに内周面J1(同(a))で表される側面貫通孔を形成することで、フランジ形状部における両当接壁4wの間部分がカットされるとともに、曲面部4w2が形成される。
なお、各貫通孔の形成の順序は一例であり、他の順序で形成することも可能である。
【0022】
シリンダ2における軸方向貫通孔の、当接壁4wよりも出力側蓋5側には、油圧ピストン7(流体ピストン)が配設されている。
当接壁4wは、油圧ピストン7のピストン部71が当接することで、初期状態におけるピストン部71の位置を規定する機能を有している。
【0023】
本実施形態の推力拡大装置1を構成する部品(Oリングや摺動補助リング等の特定の部品を除く)の材質は、アルミニウム、ステンレス、鉄などの金属で形成されている。
推力拡大装置1の大きさは、一例として、側壁部分の幅が70mm程度、上下方向の長さが120mm程度(油圧ピストン7が初期状態の場合)、出力ロッド72のストローク長さが5mm程度であるが、これよりも大きくても、あるいは、小さくてもよい。
以下、シリンダ2、入力側蓋3、蓋用アダプタ4、出力側蓋5、止め蓋6、油圧ピストン7の各々について説明する。
【0024】
シリンダ2は、出力側(下側)及び上側の開放端には、それぞれ出力側蓋5を固定する押さえボルト54用のボルト穴と、上部蓋3aを固定する押さえボルト33a用のボルト穴がそれぞれ8箇所に形成されている。
またシリンダ2の側面貫通孔が形成されている3側面には、それぞれ側面蓋3bを固定する押さえボルト33b用のボルト穴、側面蓋3cを固定する押さえボルト33c用のボルト穴、および、後述する蓋部3を固定する押さえボルト33用のボルト穴26がそれぞれ8箇所に形成されている。
これら、それぞれ8箇所に形成された、押さえボルト33a、33b、33c用のボルト穴、および、押さえボルト33用のボルト穴26は、同一の配置関係(
図1(c)参照)で形成されている。このため、上部蓋3a、側面蓋3b、3c、蓋部3の取り付け位置を任意位置に交換することが可能である。
また、本実施形態では蓋部3を1箇所に取り付けているが、2箇所、3箇所または4箇所に配置することも可能である。この場合、蓋部3を取り付けていない他の箇所には、上部蓋3a、または側面蓋3b、3cを取り付ける。
【0025】
シリンダ2の側面貫通孔が形成されていない側面で、当接壁4wよりも上側の位置には給油口21が形成されている。
給油口21は、後述する油圧室8内に油等の流体を供給するための貫通孔で、給油口栓22で塞がれるようになっている。図面では1つが表示されているが、給油口21と給油口栓22は、シリンダ2の同一円周上にそれぞれ2つ設けられており、何れか一方から油圧室8内に油を供給し、他方はエア抜き用として使用される。なお、いずれか一方の給油口21に圧力センサを取り付けることで油圧室8内の油圧を検出することができるようにしてもよい。
【0026】
油圧室8は、互いに連通する油圧室8a、8b、8cで構成され、流体室として機能している。
油圧室8aは、油圧ピストン7のピストン部71と出力ロッド72に形成された有底の空洞部73(凹部)が該当する。
油圧室8bは、シリンダ2の軸方向貫通孔のうち、ピストン部71の出力ロッド72と反対側の端面よりも上部蓋3a側の空間が該当する。
油圧室8cは、入力側蓋3を取付けるために形成した側面貫通孔の一部が該当している。
以下の各実施形態において、互いに連通する各油圧室8a、8b、8c等について、油圧室全体を指す場合には油圧室8といい、個別の油圧室を指す場合には油圧室8にa、b、c等の添え字を付けて説明する。
【0027】
シリンダ2の当接壁4wよりも下側の端面部近傍には、吸排気口24用の貫通孔が形成されている。本実施形態の吸排気口24は、給油口21と同一の側面に形成されているが、他の側面に形成することも可能である。
吸排気口24は、後述する空気室9内のエアを吸排気するための貫通孔である。この空気室9、吸排気口24は、流体ピストン(油圧ピストン7)に対して、入力側方向の力を加える付勢手段として機能している。
空気室9は、ピストン部71の軸方向の移動に伴って内容積が増減し、この内容積の増減に伴い気体(空気)が吸排気口24吸排気されるようになっている。
なお、他の実施形態含め、吸排気口24内にサイレンサーを配設することで、気体の吸排気音を消音/減音するようにしてもよい。
【0028】
入力側蓋3は、大径のフランジ部と小径部とを有する板状に形成されている。入力側蓋3は、その小径部が、シリンダ2の側面に形成された側面入力貫通孔31(
図3(b)参照)内に収容されている。
入力側蓋3のフランジ部には、貫通孔32が8箇所に形成されている。そして、
図1(b)に示すように、8本の押さえボルト33がこの貫通孔32を挿通してシリンダ2のネジ穴26に螺合されることで、入力側蓋3がシリンダ2に固定されている。
入力側蓋3のフランジ部は
図1(c)に示すように円形ではなく、四隅が同心円状で切り取られた方形形状に形成されている。これにより、入力側蓋3のフランジ部は、外周面の4箇所が平面状に形成され、対向する平面と平面との間の長さは、シリンダ2の直径よりも大きく形成されている。この形状は、後述する出力側蓋5のフランジ部と同じである。
【0029】
入力側蓋3の中央には、蓋用アダプタ4を配設するための、アダプタ用貫通孔が形成されている。このアダプタ用貫通孔は、蓋用アダプタ4の形状に合わせて、油圧室8側(以下、内面側という)の内径が、エアシリンダ100の当接側(以下、外面側という)よりも小さく形成されることで、段差部が形成され、この段差部(外面側の面)には内面側に向けてネジ穴34が形成されている。
蓋用アダプタ4の外面側の端面には、
図1(a)、(c)に示すように、4箇所にネジ穴35が形成されている。このネジ穴35は、
図1(a)の断面には現れないので、同図においては点線で表示している。このネジ穴35は、推力拡大装置1にエアシリンダ100等の入力用シリンダ装置を押さえボルト109で固定するための、入力用固定手段として機能するネジ穴である。
また、入力側蓋3における、シリンダ2内に収容される小径部の外周面には、全周に渡って外周溝が形成され、この外周溝にはOリング39が配設されている。Oリング39は、後述する油圧室8内の油をシールしている。
【0030】
入力側蓋3のアダプタ用貫通孔には蓋用アダプタ4が配設され、蓋用アダプタ4は押さえボルト44で入力側蓋3に固定されている。
蓋用アダプタ4は、大径のフランジ部と小径部とを有する板状に形成され、中央には、入力ロッド用貫通孔(入力部)が形成されている。蓋用アダプタ4に形成された入力ロッド用貫通孔は本実施形態の開口部として機能している。
蓋用アダプタ4の入力ロッド用貫通孔は、外面側の内径に対して内面側の内径が大きく形成されることで、内径が2段階に形成されている。内面側と外面側の内径の差分と同じ厚さのガイドブッシュ42が内面側に配置されている。
ガイドブッシュ42の外径は入力ロッド用貫通孔の内面側の内径と同じで、ガイドブッシュ42の内径は入力ロッド用貫通孔の外面側の内径(径が狭い方)と同じである。但し、ガイドブッシュ42の外径は、入力ロッド用貫通孔に圧入される際の圧入代分(寸法公差範囲)だけ大きく形成されている。また、ガイドブッシュ42の内径は、挿入される入力ロッド101の外径よりも大きく、また入力ロッド101が蓋用アダプタ4に接触しないようにするため、入力ロッド用貫通孔の外面側の内径よりも寸法公差の範囲で小さく形成されている。なお、ガイドブッシュ42の軸方向の長さは、内面側の端面が蓋用アダプタ4の内面側端面までの長さよりも寸法公差分だけ短く形成されている。
ガイドブッシュ42は、その内周面で、推力拡大装置1に取り付けられる各種シリンダの入力ロッドを受けると共に、入力ロッド101の前後方向(軸方向)の移動をガイドするガイド部材である。
【0031】
蓋用アダプタ4のフランジ部(大径部)には、
図1(c)に示す4箇所の押さえボルト44に対応する4箇所に貫通孔43が形成されている。この貫通孔43を押さえボルト44を挿通し、入力側蓋3のネジ穴34に螺合されることで、蓋用アダプタ4が入力側蓋3に固定される。
蓋用アダプタ4は、後付されるエアシリンダ100等のサイズ、特に入力ロッド用貫通孔に挿通される入力ロッド101のサイズに合わせて適宜交換される。交換される蓋用アダプタ4の入力ロッド用貫通孔とガイドブッシュ42の内径、及び、後述するOリング47のサイズについては、入力ロッド101の径に合わせて適宜選択される。
蓋用アダプタ4の交換は、押さえボルト44を取り外すことで行われる。
本実施形態によれば、入力側蓋3と別にエアシリンダ100の入力ロッド101に対応した蓋用アダプタ4を設けることで、内部に油圧ピストン7を収容した状態のまま、別サイズのエアシリンダ100や電動シリンダなどの異なるタイプの入力側アクチュエータに容易に交換することができる。
なお、本実施形態では、入力側蓋3と蓋用アダプタ4が入力蓋部として機能しているが、入力側蓋3と蓋用アダプタ4とを別体とせずに、一体形成した入力側蓋3を使用し、押さえボルト33で取り外して、シリンダ装置の入力ロッド径に合わせた入力側蓋3に交換するようにしてもよい。この場合には、一体形成した入力側蓋3が入力蓋部として機能する。
【0032】
蓋用アダプタ4における入力ロッド用貫通孔の外面側の内周面には、全周に渡って内周溝が形成され、この内周溝内には油圧室8内の油をシールするシール手段として機能するOリング47(
図1(a)参照)が配設されている。
また蓋用アダプタ4における小径部の外周面には、全周に渡って外周溝が形成され、この外周溝には、油圧室8内の油をシールするための、Oリング49(
図1(a)参照)が配設されている。
【0033】
図1(a)に示すように、蓋用アダプタ4の入力ロッド用貫通孔には、後付けする雌ネジタイプのエアシリンダ100(
図10(a)参照)の入力ロッド101が挿通される。この入力ロッド101の先端には、入力ロッド101の平取り151(スパナ掛け部)等の段差部が形成されている。
本実施形態では、入力ロッド101の段差部が蓋用アダプタ4のOリング47と干渉することを回避するために、入力ロッド101の先端部に後退規制手段として機能する後退ストッパ361が止めボルト362で固定されている。
後退ストッパ361の外径は、蓋用アダプタ4における入力ロッド用貫通孔の内径(内面側)よりも大きく、シリンダ2の側面に形成された側面入力貫通孔31(
図3参照)における油圧室側の内径よりも小さいサイズに形成されている。
これにより、エアシリンダ100の入力ロッド101が後退した際に、後退ストッパ361が蓋用アダプタ4の内側面と当接し、これにより入力ロッド101の段差部(平取り151)とOリング47との干渉を回避することができる。
なお、入力ロッド101の段差部(平取り151)とOリング47との干渉を回避するために必要な条件については後述する。
【0034】
一方、シリンダ2の長手方向の下側の端部には出力側蓋5が配設されている。
出力側蓋5は、小径部と大径のフランジ部を有する板状に形成されている。出力側蓋5の小径部はシリンダ2内に収容され、フランジ部の内面側(油圧室8側)の端面はシリンダ2の開放端と当接している。
出力側蓋5における小径部の外周面には、全周に渡って外周溝が形成され、この外周溝に空気室9内のエアをシールするOリング59が配設されている(
図1(a)参照)。
出力側蓋5のフランジ部には、押さえボルト54用の貫通孔が6箇所に形成されている。そして、6本の押さえボルト54がこの貫通孔を挿通してシリンダ2の端面に形成されたネジ穴に螺合されることで、出力側蓋5がシリンダ2に固定されている。
出力側蓋5のフランジ部は、入力側蓋3(
図1(c)参照)と同様に、四隅が同心円状で切り取られた方形形状に形成されている。
【0035】
出力側蓋5の中央には、止め蓋6が配設される出力用貫通孔が形成されている。出力側蓋5の出力用貫通孔の内周面は、油圧室8側から外面側に向けて、小内径部、中内径部、大内径部が形成されている。出力側蓋5及び止め蓋6は出力側蓋部として機能する。
出力側蓋5における中内径部と大内径部で形成される段差部(外面側の面)には、油圧室8方向に向けたネジ穴が6箇所に形成されている。このネジ穴は、後述する止め蓋6を押さえボルト63で出力側蓋5に固定するためのものである。
【0036】
出力側蓋5の出力用貫通孔の中内径部には、小内径部と中内径部の差分と同じ厚さのガイドブッシュ51が配設されている。ガイドブッシュ51の軸方向の長さは、中内径部の軸方向の長さと同じである。ガイドブッシュ51の外径、内径は、それぞれ出力用貫通孔の中内径部の内径、小内径部の内径と同じである。
但し、ガイドブッシュ51の外径と内径については、ガイドブッシュ42と同様に、圧入分だけ寸法公差の範囲で外径が大きく形成され、挿入される出力ロッド72がガイドブッシュ51以外と接触しないようにするために内径が寸法公差の範囲で小さく形成されている。また、ガイドブッシュ51の軸方向の長さも、中内径部よりも寸法公差の範囲で短く形成されている。
ガイドブッシュ51は、その内周面で、シリンダ2内に配設される油圧ピストン7の出力ロッド72を受けると共に、出力ロッド72の前後方向(軸方向)の移動をガイドするガイド部材である。
【0037】
出力側蓋5の出力用貫通孔における中内径部の外側には、穴55が1箇所に、穴57aが6箇所に、互いに干渉しない位置に形成されている。なお、穴55、穴57の数は任意に設定可能である。
穴55の内部には、後述する油圧ピストン7の移動に伴い、回り止めピン75が油圧ピストン7と同一方向にスライドするようになっている。
穴57aの内部には、コイルバネ57用の一端部が挿入され固定される。コイルバネ57(付勢手段)の他端部はピストン部71の外面側(油圧室8の反対側)端面に当接している。
また、出力側蓋5の外面側端面には、同心円上の6箇所にネジ穴56が形成されている。このネジ穴56は、推力拡大装置1の出力側に各種部材を取り付けるためのものである。
【0038】
出力側蓋5における出力用貫通孔の大内径部には、中内径部に配設したガイドブッシュ51を固定するための止め蓋6が配設されている。
止め蓋6の中央には、出力ロッド72が挿通されるロッド用貫通孔が形成されている。このロッド用貫通孔の内面には、全周に渡って内周溝が形成され、この内周溝にはダストシール65が配設されている。
ダストシール65は、出力ロッド72が摺動した時に、出力ロッド72に付着した外部からのゴミや異物等が、推力拡大装置1の内部に侵入するのを防いでいる。
このロッド用貫通孔の外側には同心円上の6箇所に貫通孔が形成され、この各貫通孔を6本の押さえボルト63が挿通して出力側蓋5に形成されたネジ穴に螺合されることで、止め蓋6が出力側蓋5に固定されている。
なお、本実施形態では、止め蓋6と出力側蓋5がそれぞれ別体に形成され、両者が押さえボルト63で固定されているが、出力側蓋5と止め蓋6を一体に形成することも可能である。
【0039】
油圧ピストン7は、ピストン部71と、ピストン部71の中央から出力側(油圧室8の反対側)方向に延出する出力ロッド72を備えている。ピストン部71はシリンダ2内に配置されて、シリンダ2と共に、油圧室8側の面が油圧室8内の内壁の一部を形成すると共に、出力側の面が空気室9の一部を形成している。
ピストン部71の外周面には全周に渡って外周溝が形成され、この外周溝には、油圧室8と空気室9の間をシールするOリング79が配設されている。
【0040】
ピストン部71の出力側端面には、出力側蓋5の穴55と穴57aに対応する箇所に、ピン穴74とピン穴76が形成されている。
ピン穴74には回り止めピン75の一端側が圧入により固定され、回り止めピン75の他端側は出力側蓋5内に摺動可能に挿入されている。回り止めピン75は、ピストン部71が、その移動に伴って回転することを抑止するようになっている。
ピン穴76にはガイドピン77の一端側が圧入により固定され、ガイドピン77の他端側がコイルバネ57内に挿入されていて、コイルバネ57の伸び縮みをガイドするようになっている。なお、本実施形態では円周状に6つのコイルバネ57を配置したが、コイルバネは1つでもよい。この場合、出力ロッド72の外径よりも大きな内径のコイルバネを使用し、コイルバネの内径に出力ロッド72を挿入し、コイルバネの一端側端部がピストン部71に、コイルバネの他端側端部が出力側蓋5に、適宜位置決め溝等を介して当接していればよい。
回り止めピン75とコイルバネ57は回り止め部材の一例である。
【0041】
油圧ピストン7の中央には、油圧室8b側から軸方向に貫通していない有底の空洞部73が形成されている。この空洞部73内も油圧室8の一部(油圧室8a)を構成している。
油圧ピストン7の出力ロッド72の端部側には、その端面から油圧室8方向に向けてボルト穴72aが形成されている。このボルト穴72aは、例えばプレス加工等で使用する抜き型用のパンチなどの各種工具を取り付けるためのものである。
【0042】
次に、入力ロッド101の段差部(平取り151)とOリング47との干渉を回避するための干渉回避条件について説明する。
干渉回避条件は、入力ロッド101の先端部に形成された段差部(平取り151等)における、入力ロッド101の先端から最も離れている段差端位置が、Oリング47(シールド手段)における最も油圧室8(流体室)側の位置(シールド端位置)よりも、油圧室8側の位置で停止するように、入力ロッド101の後退方向の移動を規制する、ための条件である。
【0043】
図2は、干渉回避条件についての説明図である。
図2では、シリンダ2や入力側蓋3については省略して、止めボルト362で後退ストッパ361を固定した入力ロッド101と蓋用アダプタ4を拡大して表示している。
ここで
図2に示すように、平取り151等の段差部における最もエアシリンダ100の本体側の位置(先端から最も離れている段差端位置)から、後退ストッパ361と蓋用アダプタ4との当接面Pまでの距離を段差距離D1とし、後退ストッパ361と入力ロッド101の先端との当接面Qまでの距離を段差距離D2とする。
また、Oリング47の最も後退ストッパ361側の位置(シールド端位置)から、当接面Pまでの距離をリング距離R1とし、当接面Qまでの距離をリング距離R2とする。
【0044】
そして、入力ロッド101の段差部とOリング47との干渉回避条件としては次の式(1)で表される。
段差距離D1<リング距離R1 …(1)
【0045】
図1、
図2(a)に示した蓋用アダプタ4と入力ロッド101の場合、段差距離D2がリング距離R2よりも小さい(D2<R2)ので、当接面Pと当接面Qを同一面としても、上記式(1)の干渉回避条件を満たしている。
そこで、後退ストッパ361を、そのエアシリンダ100側の端面を平板状に形成することで、当接面Pと当接面Qを同一面としている。
【0046】
一方、
図2(b)に示すように、段差距離D2がリング距離R2以上である場合(D2≧R2)、後退ストッパ361を平板状として当接面Pと当接面Qを同一面にすると、干渉回避条件(D1=D2<R1=R2)を満たさないため、段差部(平取り151)がOリング47と干渉してしまうことになる。
そこで、段差距離D2がリング距離R2以上である場合(D2≧R2)には、
図2(c)に示すように、中央に入力ロッド101の外形よりも大きい内径の凹部363が形成された後退ストッパ361を使用することで干渉回避条件を満たしている。
すなわち、当接面Pと当接面Qを同一面ではなく、当接面Pに対する当接面Qの位置を、段差距離D1<リング距離R1となる位置まで前方(止めボルト362/油圧室8)側に移動させることで、干渉回避条件を満たすようにする。
具体的には、後退ストッパ361に形成する凹部363を、当接面Q(入力ロッド101の先端面)までの段差距離D2から、当接面P(蓋用アダプタ4の先端面)までのリング距離R1を減じた距離(=D2-R1)よりも深くなるように形成する。
【0047】
図3は、推力拡大装置1にエアシリンダ100を後付する手順を表した説明図である。
最初に推力拡大装置1から、中央に蓋用アダプタ4を固定した状態の入力側蓋3をシリンダ2から取外す。
そして
図3(a)に示すように、蓋用アダプタ4の入力ロッド用貫通孔に、後付けするエアシリンダ100の入力ロッド101を挿通する。この状態で、エアシリンダ100を貫通させた押さえボルト109を蓋用アダプタ4のネジ穴35に螺合することで、蓋用アダプタ4にエアシリンダ100を固定する。
【0048】
次に、入力ロッド101の先端部が蓋用アダプタ4の端面よりも前方に前進した状態で、後退ストッパ361を通した止めボルト362を雌ネジ152に螺合することで、後退ストッパ361を入力ロッド101の先端に固定する。これにより、後退ストッパ361のエアシリンダ100側の端面と入力ロッド101の先端面とが当接して当接面Pが形成される。
【0049】
次に、
図3(b)に示すように、入力側蓋3にエアシリンダ100を固定した蓋用アダプタ4の小径部を、シリンダ2の側面入力貫通孔31に嵌入し、押さえボルト33をシリンダ2側面のネジ穴26に螺合することで、エアシリンダ100の後付けが完了する。
次に、エアシリンダ100を取付けた後、
図3(c)に示すように、シリンダ2から給油口栓22を外して油を充填することで、油圧室8に油を満たす。
なお、本実施形態の推力拡大装置1では、増幅した流体圧力(推力)として出力する部分に使用する流体として、入手が容易で非圧縮性流体である作動油などの油を使用している。但し、使用する流体としては、流動性を持つ気体、液体またはゲル状の物質を使用することも可能である。この場合には、該当する流体を油圧室8に充填する。
図3(c)以下の各図面では、油を充填した油圧室8の状態を解り易くするために、油が充填されている領域を塗りつぶしにより表している。
【0050】
次に、エアシリンダ100を取付けた推力拡大装置1の動作について説明する。
図4は、第1実施形態における推力拡大装置の動作説明図である。
図4(a)は、推力拡大装置1の初期状態を表し、(b)は動作状態を表している。
なお、
図4では、推力拡大装置1について内部の状態を説明するために断面で表している。
推力拡大装置1に後付したエアシリンダ100は、吸排気孔102、103からのエア供給と排気によって、入力ロッド101が前後方向に移動するようになっている。
エアシリンダ100の吸排気孔102を解放状態にして吸排気孔103からエアを供給することで、
図4(a)に示すように、入力ロッド101が最もエアシリンダ100の本体側(図面右側)に後退した初期状態となる。
【0051】
推力拡大装置1の初期状態では、入力ロッド101の先端に取付けられた後退ストッパ361が蓋用アダプタ4の端面と当接することで、入力ロッド101の更なる後退が抑止されている。そして、
図2で説明したように、上記式(1)で示される干渉回避条件を満たす状態で後退ストッパ361が取付けられているので、初期状態において入力ロッド101の段差部である平取り151が、Oリング47よりも油圧室8側で停止し、干渉が回避されている。
【0052】
推力拡大装置1を動作させる場合、推力拡大装置1の吸排気口24と、エアシリンダ100の吸排気孔103を開放状態にして内部のエアが抜けるようにする。
この状態で吸排気孔102からエアを供給することで、
図4(b)に示すように、エアシリンダ100の入力ロッド101が前進し油圧室8内に侵入する。これにより吸排気口24から空気室9内のエアが抜け、シリンダ2内の当接壁4wより上部に存在していた油圧室8の油がピストン部71と出力ロッド72を出力側(図面下側)に押し、ピストン部71と出力ロッド72が油圧ストロークOSだけ前進する。この際、入力ロッド101で押出された油圧室8内の油は、ピストン部71と出力ロッド72を押しながら、当接壁4wと前進するピストン部71の間に流入する。
そして、出力ロッド72の先端からは、エアシリンダ100の推力、すなわち、入力ロッド101の先端からの入力推力Fiに対して、油圧によって増幅された(拡大された)拡大推力Fpが出力される。
【0053】
ここで、入力ロッド101の平取り151以外の部分におけるラジアル方向の断面の面積をS1、ピストン部71の面積(空洞部73の底面を含む面積で、シリンダ2のラジアル方向の断面積と同じ)をS2とすると、ピストン部71が油圧室8の油から受ける力、すなわち、出力ロッド72の先端から出力される拡大推力Fpは次式(2)の通りである。
Fp=(Fi/S1)×S2=Fi×(S2/S1) …(2)
本実施形態の推力拡大装置1によれば、S1<S2の関係にあるので、出力ロッド72からは、入力ロッド101からの入力推力Fiに対して拡大された拡大推力Fpを出力することができる。
【0054】
なお、推力拡大装置1から拡大した推力を出力している状態(
図4(b))から、初期状態(
図4(a))に戻す場合の動作は次の通りである。
すなわち、吸排気孔102を開放状態とし、吸排気孔103からエアを供給することで、エアシリンダ100の入力ロッド101を入力側に後退させる。
これにより、油圧室8は、入力ロッド101が入っていた体積分の空間が復元される。油圧室8は外部からの流体の流出入がないので、復元された空間部分には油圧室8全体の油が流入し、ピストン部71には入力側への負圧力が発生する。吸排気口24は解放されていて空気室9には大気圧がかかっているので、ピストン部71は入力側に移動する。このとき、コイルバネ57の付勢力により、入力側への移動が補助される。
ここで、より確実に初期状態に戻す場合は、吸排気孔103からエアを供給すると共に、開放状態であった推力拡大装置1の吸排気口24から空気室9にエアを供給してもよい。
なお、ピストン部71は、出力方向の移動、及び入力方向への移動に対して、回り止めピン75により回転を抑制することができる。また、ガイドピン77に沿ってコイルバネ57が延び縮みすることで、軸方向の付勢力をピストン部71に加えることができる。
【0055】
次に、推力拡大装置1の第2実施形態について説明する。
説明した第1実施形態では、後付けするエアシリンダ100の入力ロッド101の先端に、式(1)で示す干渉回避条件を満たすように後退ストッパ361を取り付けることで、入力ロッド101の段差部(平取り151等)がOリング47との干渉を回避するようにしている。
すなわち第1実施形態では、後付けしたエアシリンダ100の入力ロッド101の前後方向の移動のうち、後退方向の移動を規制することで、干渉回避条件を満たしている。
これに対して第2実施形態の推力拡大装置1では、第1実施形態による後退方向の移動規制に加えて、入力ロッド101の前進方向の移動を規制するようにしたものである。
【0056】
図5は、第2実施形態における推力拡大装置1にエアシリンダ100を取り付けた状態を表したものである。
図5(a)はスラスト方向の断面を表し、
図5(b)は入力ロッド101の中心線を通る水平方向の断面を上方から表したものである。
第2実施形態における推力拡大装置1については、シリンダ2の側面に前進調整ユニット370(前進規制手段)を設けたもので、他の部分については第1実施形態と同様であるのでその説明を適宜省略する。
【0057】
図5に示すように、推力拡大装置1のシリンダ2には、エアシリンダ100を取り付けた側面と対向する側面に、入力ロッド101の前進を所定の位置で規制するための前進調整ユニット370が配設されている。
前進調整ユニット370は、調整ブロック371と調整ピン373を備えている。
調整ブロック371は、シリンダ2の側壁に設けられた複数のネジ穴にボルト372で固定されている。
調整ブロック371は、平板部に凸部が形成されるとともに、中央に平板部から凸部まで貫通する貫通孔が形成されている。調整ブロック371は、凸部の外側の平板部において、複数のボルト372によってシリンダ2の側壁に固定されている。
調整ブロック371の貫通孔は、油圧室8側から凸部の途中までの大内径部と、凸部端面側の小内径部を有し、凸部端面側の小内径部の内面側には雌ネジが形成されている。
【0058】
調整ブロック371の貫通孔と同軸となるシリンダ2の側面にはピン用貫通孔が形成され、このピン用貫通孔の内周面には全周にわたって内周溝が形成され、油圧室8内の油をシールするためのOリング375が配設されている。
調整ピン373は、一端側に雄ネジが形成され、他端側がネジのない円柱状に形成されている。この調整ピン373は、一端側の雄ネジ部分が調整ブロック371の雌ネジに螺合し、他端側の円柱部分の先端がシリンダ2のピン用貫通孔を貫通し、油圧室8の内部まで到達している。
調整ピン373は、雄ネジ部分による螺入量を調整することで、油圧室8内の先端位置を調整することができるようになっている。
位置調整後の調整ピン373は、調整ブロック371の凸部に設けた径方向の止めネジ374によって固定するようになっている(
図5(a)参照)。
【0059】
図5では、第1実施形態で説明した初期状態から入力ロッド101を前進させることで推力拡大装置1を動作させた状態を表している。
図5に示すように、推力拡大装置1の動作状態では、入力ロッド101の先端に取り付けた止めボルト362の端面が調整ピン373と当接することで、入力ロッド101の前進量が規制される。
なお、第2実施形態の推力拡大装置1の動作方法および初期状態に戻す動作については、第1実施形態と同様である。
【0060】
このように第2実施形態の推力拡大装置1によれば、推力拡大装置1を分解することなく、前進調整ユニット370の外側から調整ピン373の螺入量を調整することで、入力ロッド101の前進端の位置調整を行うことができる。
また、入力側アクチュエータ(エアシリンダ100や電動シリンダ等)における入力ロッド101のストロークを調整することができる。このため、出力ロッド72のストローク調整を入力側アクチュエータのストローク調整で行うことができる。
また、入力ロッド101の前進量を調整できるので、最初の設計仕様によって取り付けた入力側アクチュエータよりも長いストロークの入力側アクチュエータを組み付けることができる。
また、入力ロッド101の前進と後退を規制する前進調整ユニット370と後退ストッパ361が配設されているので、入力側アクチュエータとして取り付けた電動シリンダが仮に誤動作で暴走することがあったとしても、推力拡大装置1を壊すことなく停止させることができる。
【0061】
次に第3実施形態の推力拡大装置1について説明する。
説明した第1実施形態、第2実施形態の推力拡大装置1では、シリンダ2の側面にエアシリンダ100を取り付けることで、入力軸方向(入力ロッド101の軸方向)と、出力軸方向(出力ロッド72の軸方向)とが直交する場合について説明した。
これに対して第3実施形態の推力拡大装置1は、入力軸と出力軸が一致するように構成したものである。
【0062】
図6は、第3実施形態における推力拡大装置1にエアシリンダ100を取り付けた状態を表したものである。
図6(a)、(c)はスラスト方向の断面(A-A断面)を表し、
図6(b)は入力ロッド101の中心線を直行する水平面での断面(B-B断面)を上方から表したものである。また、
図6(a)は、推力拡大装置1の初期状態を、(c)は動作状態を表している。
図6に示すように第3実施形態の推力拡大装置1では、シリンダ2の軸方向に軸方向貫通孔が形成され、軸方向貫通孔内の軸方向の中央付近には当接壁4xが形成されている。
この当接壁4xにおける出力側(図面下側)の面にはピストン部71が当接し、逆の入力側(図面上側)の面には、入力ロッド101の先端に付けた後退ストッパ361が当接する。
当接壁4xの入力側の面には、後退ストッパ361が当接した場合においても入力側の油圧室8bと出力側の油圧室8a(
図6(c)参照)との連通状態を維持させるための溝(図示しない)が中心から放射状に形成されている。この油圧室8bと油圧室8aを連通させるための溝は、1つでもよく、複数でもよい。
なお、当接壁4xの溝に代えて、後退ストッパ361が当接壁4xに当接した状態で、油圧室8bと油圧室8aを連通させる連通穴(例えば軸方向の貫通孔)を当接壁4xに設けるようにしてもよい。
当接壁4xは、第1実施形態の当接壁4wと同様に、中央に円形の貫通孔が形成されることで、全体としてシリンダ2の内側に突出するフランジ形状となっている。但し、当接壁4x中央の貫通孔の径は、後退ストッパ361と当接することで入力ロッド101の前進側の移動を規制する機能を有するため、後退ストッパ361よりも小さい内径に形成されることで、当接壁4wの貫通孔より小さくなっている。
推力拡大装置1における、当接壁4xよりも出力側の構造については、第1実施形態における当接壁4wよりも出力側の構造と同様に形成されている。
【0063】
図6(b)に示すように、シリンダ2の4箇所の側面のうち3つの側面には、当接壁4xよりも入力側(図面上側)に側面貫通孔が形成されており、各々側面蓋3d~3fが複数の押さえボルト33d~33fで固定されている。
各側面蓋3d~3fは、シリンダ2の側面貫通孔の内径と略同一の内径である周壁が油圧室8側に突出形成され、この周壁の外周面には全周にわたって外周溝が形成され、油圧室8内の油をシールするOリングが配設されている。
【0064】
シリンダ2における軸方向貫通孔の入力側には、入力側蓋3tが押さえボルト33tでシリンダ2に固定されている。この入力側蓋3tは、推力拡大装置1にエアシリンダ100等の入力用アクチュエータを後付けするためのものである。
入力側蓋3tは、第1実施形態における入力側蓋3と蓋用アダプタ4と同様に機能している。第1実施形態では入力側蓋3と蓋用アダプタ4が別体で形成され両者が押さえボルト44で固定されているが、本実施形態の入力側蓋3tは一体形成されて入力蓋部として機能している。
【0065】
入力側蓋3tは、蓋用アダプタ4と同様に、中央に入力ロッド用貫通孔が形成されており、後付するエアシリンダ100の入力ロッド101が挿通される。
入力ロッド101の先端には、第1実施形態と同様に、式(1)の干渉回避条を件満たす状態で、後退ストッパ361が止めボルト362で固定されている。
これにより第1実施形態と同様に、
図6(a)の初期状態において後退ストッパ361が入力側蓋3tの油圧室8側端面と当接することで後退側の動きが規制され、入力ロッド101の段差部(平取り151、
図6(c)参照)とOリング47との干渉が回避される。
【0066】
第3実施形態の推力拡大装置1の動作は、第1実施形態と同様である。
すなわち
図6(a)に示す初期状態から、エアシリンダ100を動作させて入力ロッド101を前進させることで、ピストン部71が当接壁4xから離れて出力ロッド72が油圧ストロークOSだけ前進する。
なお、
図6に示したエアシリンダ100の入力ロッド101の場合、入力ストロークが短いため、最も前進した状態で当接壁4xの手前で停止している。
これに対して、より長い入力ストロークのエアシリンダ100を取付けた場合には、後退ストッパ361の止めボルト362側端面が当接壁4xに当接することで、前進方向の移動が規制される。
このように、第3実施形態における推力拡大装置1の当接壁4xは、長い入力ストロークのエアシリンダ100を取付けた場合に、入力ロッド101の前進方向の移動を規制する前進規制手段として機能する。
なお、後退ストッパ361の厚さを変更することとで、当接壁4xと後退ストッパ361との当接位置を変更し、入力ロッド101の前進端停止位置を変更することができる。例えば、より厚い後退ストッパ361を使用することで、入力ロッド101をより手前で停止させることができる。
【0067】
次に第4実施形態について説明する。
第1実施形態~第3実施形態の推力拡大装置1では、エアシリンダ100として、
図10(a)~(d)で説明した雌ネジタイプのエアシリンダ100を後付けする場合について説明した。
これに対して第4実施形態の推力拡大装置1では、
図10(e)で説明した雄ネジタイプのエアシリンダ100を後付けするものである。
図7は、第4実施形態の推力拡大装置1に雄ネジタイプのエアシリンダ100を取付けた状態を表したもので、(a)は動作状態におけるスラスト方向(中心線の方向)の断面(A-A断面)を表したもの、(b)は初期状態におけるB-B断面を上方から表したものである。
【0068】
第4実施形態の推力拡大装置1は、入力ロッド101に取付ける後退規制手段(後退ストッパ361、365)を除き、第2実施形態で説明した推力拡大装置1(
図5参照)と同一であり、シリンダ2の側壁には前進調整ユニット370が配設されている。
【0069】
図7、
図10に示すように、雄ネジタイプのエアシリンダ100の入力ロッド101の先端部に小径部153が形成され、この小径部153の外周面に雄ネジが形成されている。また、小径部153の手前側(吸排気孔103側)には段差部であるスパナ掛け用の平取り151が形成されている。
本実施形態では、入力ロッド101の雄ネジ154に、後退規制手段として機能する後退ストッパ365が配設されている。
後退ストッパ365は、円板形状に形成され、中央に内周面に雌ネジを有する貫通孔が形成されている。また、後退ストッパ365は、その外周面に径方向に貫通するネジ穴が形成され、止めネジ366(
図7(b)参照)で固定されるようになっている。
【0070】
入力ロッド101の小径部153における後退ストッパ365の固定位置については、上述した式(1)で示す干渉回避条件を満たす位置である。
式(1)において、後退ストッパ365を使用した場合の段差距離D1は、平取り151等の段差部における最もエアシリンダ100の本体側の位置から、後退ストッパ365と蓋用アダプタ4との当接面Pまでの距離である。また、リング距離R1は、Oリング47の最も後退ストッパ365側から、当接面Pまでの距離である。
なお、雄ネジタイプの入力ロッド101の場合、小径部153に形成されている雄ネジ154の範囲で後退ストッパ365の固定位置を調整することで、干渉回避条件を満たすことができる。
【0071】
第4実施形態の推力拡大装置1を動作させた場合、
図7(a)に示すように、入力ロッド101の先端が調整ピン373に当接することで、前進方向の移動を規制する。
【0072】
なお、説明した第4実施形態の推力拡大装置1では、第2実施形態の推力拡大装置1を例に説明したが、第1実施形態や第3実施形態で説明した推力拡大装置1に対して雄ネジタイプの入力用アクチュエータ(エアシリンダ100や電動シリンダ)を後付けする場合も、第4実施形態と同様に後退ストッパ365を使用することができる。
【0073】
次に第5実施形態について説明する。
第1実施形態~第4実施形態では、後付けしたエアシリンダ100の入力ロッド101が油圧室8内を前進することで、出力ロッド72の先端がシリンダから離れる方向に移動する推力拡大装置1である。すなわち、入力ロッド101から入力された推力が油圧室8で拡大されて装置からみて外部方向(押圧方向)に出力する、押し出し型の推力拡大装置1である。
これに対して、第5実施形態の推力拡大装置1は、入力ロッド101から入力されて油圧室8で拡大された推力が、出力ロッド72の先端を装置の内側に引き込む方向に出力する、引込み型の推力拡大装置1である。
【0074】
図8は、第5実施形態の推力拡大装置1に雌ネジタイプのエアシリンダ100を取付けた状態を表したもので、(a)と(d)はスラスト方向(中心線の方向)の断面(A-A断面)を表し、(b)はB-B断面を上方から表し、(c)は右側面を表したものである。また
図8(a)は初期状態を、(d)は動作状態を表している。
推力拡大装置1は
図8(a)の上下方向(長手方向)に長い直方体形状に形成され、上下方向に貫通して一部が油圧室8を形成する軸方向貫通孔が形成されている。
シリンダ2における軸方向貫通孔内の中央よりも上の位置には内周壁面の全周にわたる当接壁4wが形成されている。この当接壁4wは、中央に円形の貫通孔が形成されることで、全体としてシリンダ2の内側に突出するフランジ形状となっている。
当接壁4wは、ピストン部71における出力ロッド72側の面が当接することで、初期状態におけるピストン部71の位置を規定する機能を有している。
【0075】
シリンダ2の下部には、第1実施形態と同じように、出力ロッド72が挿通する出力側蓋5と止め蓋6が押さえボルト54でシリンダ2の端部に固定されている。
本実施形態では、第1実施形態に比べて、出力側蓋5とピストン部71には回り止めピン75とガイドピン77、コイルバネ57は配設されていない。但し、本実施形態および後述する第6実施形態において、上部蓋3aに穴55、57aを設けるとともに、ピストン部71の上部蓋3aの対向する側にピン穴74、76を設けることで、第1実施形態と同様に、回り止めピン75とガイドピン77、コイルバネ57を配設するようにしてもよい。
一方、シリンダ2の上部には、上部蓋3aが8個の押さえボルト33aで固定されている。上部蓋3aは、シリンダ2の軸方向貫通孔内に挿入される略同一径の凸部が形成され、その外周面には全周にわたって溝が形成され、Oリングが配設されている。
【0076】
第1実施形態の推力拡大装置1では、当接壁4wの下側にピストン部71が配設され、上側が油圧室8を構成している。
これに対して本実施形態の推力拡大装置1では、
図8(a)に示すように、当接壁4wの上側にピストン部71が配設され、下方側が油圧室8を構成している。
ピストン部71の一方側に設けられた出力ロッド72は、油圧室8および出力側蓋5、止め蓋6を通り、シリンダ2よりも出力側(図面下側)まで延設している。出力ロッド72の開放端側にはボルト穴72aが形成されているが、空洞部73(
図1参照)は形成されていない。
【0077】
ピストン部71における、出力ロッド72が配設されていない側の面と上部蓋3aとの間には空気室9が形成されている。
上部蓋3aには、この空気室9と外部とを連通させるL字状に曲った吸排気孔36aが形成されている。この吸排気孔36aは、ピストン部71と対向する側の面から軸方向に延びた後に屈曲して径方向に延び、上部蓋3aの側面まで貫通している。上部蓋3aの側面には、吸排気孔36aと繋がる吸排気口24が配設されている。
なお、第1実施形態と同様に、シリンダ2の側壁に空気室9と繋がる貫通孔と吸排気口24を設けることも可能である。
【0078】
シリンダ2の側面には、当接壁4wより下側の位置に、第1実施形態における側面入力貫通孔31(
図3参照)に対応する側面入力貫通孔が形成されている。
この側面入力貫通孔には、第1実施形態と同様に、押さえボルト44で固定された入力側蓋3と蓋用アダプタ4が、押さえボルト33でシリンダ2の側壁に固定されている。
また蓋用アダプタ4には、押さえボルト109によりエアシリンダ100が後付されており、入力ロッド101の先端には、式(1)の干渉回避条件を満たす状態で、後退ストッパ361が止めボルト362でネジ止めされている。
なお、第5実施形態の推力拡大装置1に後付可能なエアシリンダ100は、入力ロッド101における後退ストッパ361(雄ネジタイプの場合には後退ストッパ365)を取付けた状態での最先端の最大ストロークが、出力ロッド72と接触する手前までであることが条件となる。
シリンダ2の他の側面には、当接壁4wよりも下側に給油用の貫通孔と、給油口栓22が配設されている。
本実施形態の推力拡大装置1にエアシリンダ100を後付する手順については、
図3で説明した実施形態と同様である。
【0079】
次に本実施形態における、エアシリンダ100を取り付けた推力拡大装置1の動作について説明する。
なお、推力拡大装置1は、
図8(a)、(c)に示す状態を推力が拡大されていない初期状態とする。
すなわち、初期状態において、エアシリンダ100は、入力ロッド101の先端が押し出されていない状態であり、推力拡大装置1としては、ピストン部71の出力ロッド72側の端面が、当接壁4wと当接した状態である。この状態ではピストン部71が上部蓋3aから最も離れた状態であり、ピストン部71に接続された出力ロッド72の先端が出力側蓋5から最も外部に出ている状態である。
【0080】
エアシリンダ100を取り付けた推力拡大装置1を使用する場合、初期状態において、推力拡大装置1の吸排気口24と、エアシリンダ100の吸排気孔103を開放状態にして内部のエアが抜けるようにする。
この状態で吸排気孔102からエアを供給することで、エアシリンダ100内の図示しないピストンが推力拡大装置1側に押され、吸排気孔103からエアが抜ける。このピストンの移動に伴い入力ロッド101が押し出され、油圧室8内に進入する。
この入力ロッド101の移動により、ピストン部71と出力ロッド72は、油圧室8の反対側(上部蓋3a側)に油圧ストロークだけ移動する。ピストン部71の移動により、その移動分だけ空気室9の容積が小さくなり、内部のエアが吸排気口24から抜ける。
【0081】
そして、出力ロッド72の先端からは、エアシリンダ100の推力、すなわち、入力ロッド101の先端からの入力推力Fiに対して、油圧によって増幅された(拡大された)拡大推力Fpでの引込み力が生じる。
この入力推力Fiと拡大推力Fpについては、第1実施形態で説明した式(2)と同じである。
【0082】
ここで、入力ロッド101の先端面の面積をS1、ピストン部71の面積(ピストン部71のラジアル方向の断面積から出力ロッド72のラジアル方向の断面積を引いた面積)をS2とすると、ピストン部71が油圧室8の油から受ける力、すなわち、出力ロッド72の先端から出力される引込み方向の拡大推力Fpは上述した式(2)の通りである。
ここで、入力ロッド101の平取り151以外の部分におけるラジアル方向の断面の面積をS1、ピストン部71における油圧室8の油と接する面積(ピストン部71のラジアル方向の断面積から出力ロッド72のラジアル方向の断面積を減じた面積)をS2とした場合、本実施形態の推力拡大装置1も第1実施形態と同様に、S1<S2の関係にある。従って、出力ロッド72からは、入力ロッド101からの入力推力Fiに対して拡大された拡大推力Fpでの引込み力(上部蓋3a方向の力)を出力することができる。
【0083】
なお、推力拡大装置1から拡大した推力(引込み力)を出力している
図8(d)の動作状態から、
図8(a)に示す初期状態に戻す場合には、次の通りである。
すなわち、吸排気孔102(図示しない)を開放状態とし、吸排気孔103からエアを供給することで、エアシリンダ100の入力ロッド101を油圧室8から後退させる。
これにより、油圧室8は、入力ロッド101が入っていた体積分の空間が復元され、ピストン部71には油圧室8側で負圧がかかり、空気室9には大気圧がかかっているので、ピストン部71は当接壁4wに当接するまで移動する。
以上の初期状態に戻す際に、入力ロッド101の先端には後退ストッパ361が取付けられているので、後退ストッパ361が蓋用アダプタ4と当接した時点で後退が規制されるため、平取り151等の段差部とOリング47との干渉が回避されている。
なお、より確実に初期状態に戻す場合は、吸排気孔103からエアを供給すると共に、開放状態であった推力拡大装置1の吸排気口24から空気室9にエアを供給してもよい。
【0084】
次に推力拡大装置1の第6実施形態について説明する。
第5実施形態では、拡大された推力を引き込む方向に作用させる引込み型の推力拡大装置1について説明した。この推力拡大装置1では、シリンダ2の側面入力貫通孔を、その内周面を軸方向に延長した領域が出力ロッド72の外周面と干渉する位置に形成している。このため、後付けするエアシリンダ100の使用条件として、入力ロッド101が最も前進した場合のストローク長が、その先端部(止めボルト362を含む)が出力ロッド72と接触しない長さである必要がある。
これに対して第6実施形態の推力拡大装置1では、出力ロッド72の中心線に対して、蓋用アダプタ4の入力ロッド用貫通孔の中心線(入力ロッド101の中心線)の延長線が、入力ロッド用貫通孔の半径と出力ロッド72の半径を加算した距離よりも離れている位置に、蓋用アダプタ4及び入力側蓋3が配設されている。
具体的には、第1実施形態の側面入力貫通孔31(
図3参照)に対応する側面入力凹部31bをシリンダ2に形成し、入力ロッド101が前進しても何れも出力ロッド72の外周面と干渉しない位置にずらし、かつ、径方向の断面の一部又は全部が油圧室8内を通るように形成したものである。
【0085】
図9は、第6実施形態の推力拡大装置1にエアシリンダ100を取付けた状態を表したもので、(a)はスラスト方向(中心線の方向)の断面(A-A断面)を表し、(b)はB-B断面を上方から表し、(c)は右側面を表したものである。また
図9(a)、(b)はいずれも動作状態を表している。
以下の実施形態では、第5実施形態と同一の部分、又は相当する部分の説明を省略して相違点について説明する。
【0086】
図9(b)(c)に示すように、第6実施形態の推力拡大装置1では、シリンダ2における1の側面(
図9(b)の上側)を第5実施形態よりも肉厚に形成した側面肉厚部2aが形成されている。
この側面肉厚部2aには、当接壁4wよりも下側の位置に、側面で油圧室8aと連通する側面入力凹部31bが形成され、その内径は後退ストッパ361の外形よりも大きく形成されている。側面入力凹部31bは、給油口栓22から油が供給されることで油圧室8cを構成する。
側面入力凹部31bの開放端部(シリンダ2の側面部)は、第1実施形態における側面入力貫通孔31と同様に、開放端側の内径が大きく形成されている。この側面入力凹部31bの開放端部には、第1実施形態と同様に、押さえボルト44で固定された入力側蓋3と蓋用アダプタ4が、押さえボルト33でシリンダ2の側壁に固定されている。
【0087】
蓋用アダプタ4には、押さえボルト109によりエアシリンダ100が後付されている。入力ロッド101の先端には、式(1)の干渉回避条件を満たす状態で、後退ストッパ361が止めボルト362でネジ止めされる。これにより、推力拡大装置1が初期状態に戻った場合において、入力ロッド101の後退側の移動が規制され、平取り151等の段差部とOリング47との干渉が回避されている。
一方、本実施形態の推力拡大装置1では、シリンダ2における、側面入力凹部31bの底部側の側面に、第2実施形態と同様に、前進調整ユニット370が配設されている。これにより推力拡大装置1の動作状態では、入力ロッド101の先端に取り付けた止めボルト362の端面が調整ピン373と当接することで、入力ロッド101の前進側の移動が規制される。なお、前進調整ユニット370の配設は任意であり、省略することも可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 推力拡大装置 2 シリンダ
2a 側面肉厚部 3、3t 入力側蓋(蓋部)
3a 上部蓋 3b、3c、3d~3f 側面蓋
4 蓋用アダプタ 4w、4x 当接壁
5 出力側蓋 6 止め蓋
7 油圧ピストン 8、8a~8c 油圧室
9 空気室 21 給油口
22 給油口栓 24 吸排気口
31 側面入力貫通孔 31b 側面入力凹部
36a 吸排気孔 39、47、49、59 Oリング
42、51 ガイドブッシュ 57 コイルバネ
65 ダストシール 71 ピストン部
72 出力ロッド 72a ボルト穴
73 空洞部 77 ガイドピン
100 エアシリンダ 101 入力ロッド
102 吸排気孔 103 吸排気孔
109 押えボルト 151 平取り
152 雌ネジ 153 小径部
154 雄ネジ 361、365 後退ストッパ
362 止めボルト 363 凹部
370 前進調整ユニット 371 調整ブロック
373 調整ピン 375 Oリング
D1、D2 段差距離 P 当接面
Q 当接面 R1、R2 リング距離