(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186321
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20221208BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20221208BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
F01N3/28 301U
F01N3/24 N
F01N3/24 L
F01N3/20 K
F01N3/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094478
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕貴
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AB01
3G091BA02
3G091BA07
3G091BA38
3G091CA03
3G091GB05W
3G091GB17X
3G091HA08
3G091HA31
3G091HA45
(57)【要約】
【課題】排気浄化装置を備える排気浄化システムを小型化することができる技術を提供する。
【解決手段】内燃機関からの排気ガスを浄化する排気浄化装置は、外郭部材と、触媒と、支持部材と、を備える。浄化部は、排気ガスが内部を流れる外郭部材の内部に配置され、排気ガスを浄化する。支持部材は、外郭部材に取り付けられ、外郭部材内で浄化部の位置を変位可能に浄化部を支持する。浄化部は、支持部材によって、排気ガスが浄化部内に形成される内部流路を通過する位置である第1位置と、第1位置よりも排気ガスが内部流路を通過しにくい位置である第2位置と、に変位可能である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気ガスを浄化する排気浄化装置であって、
排気ガスが内部を流れる外郭部材と、
前記外郭部材の内部に配置され、排気ガスを浄化する浄化部と、
前記外郭部材に取り付けられ、前記外郭部材内で前記浄化部の位置を変位可能に前記浄化部を支持する支持部材と、
を備え、
前記浄化部は、前記支持部材によって、排気ガスが前記浄化部内に形成される内部流路を通過する位置である第1位置と、前記第1位置よりも排気ガスが前記内部流路を通過しにくい位置である第2位置と、に変位可能である、排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気浄化装置であって、
前記浄化部は、前記支持部材を基準に回転することで、前記第1位置と前記第2位置との変位が可能である、排気浄化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の排気浄化装置であって、
前記浄化部の外周面の少なくとも一部を覆う壁部材を更に備え、
前記壁部材は、前記浄化部と共に前記支持部材を基準に回転し、前記浄化部が前記第2位置にあるとき前記外郭部材の排気ガスの流入口と前記浄化部との間に位置し、
前記浄化部が前記第2位置にあるときの前記壁部材による前記流入口の閉塞割合は、前記浄化部が前記第1位置にあるときよりも大きい、排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の排気浄化装置であって、
前記浄化部は、前記第1位置にあるとき、前記外郭部材における排気ガスの流入口の中心軸と同軸上に配置され、前記内部流路が前記中心軸に沿って延びる、排気浄化装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の排気浄化装置であって、
前記外郭部材の内部に配置され、前記排気ガスの流れる方向に垂直な断面の断面積が前記浄化部よりも大きい他の浄化部を更に備える、排気浄化装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の排気浄化装置であって、
前記浄化部は、通電により加熱される電気加熱式触媒であって、前記支持部材を介して通電が行われる、排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関からの排気ガスを浄化するために、メイン触媒及びサブ触媒の2つの触媒を備える排気浄化装置が用いられる排気浄化システムが知られている。
特許文献1には、排気管路に配置されるメイン触媒と、排気管路においてメイン触媒よりも上流に配置され、電気の通電により加熱されるサブ触媒と、サブ触媒が配置された排気管路をバイパスするバイパス管路と、を備える、触媒の早期暖機が可能な排気浄化装置が開示されている。バイパス管路は、サブ触媒の熱劣化及び排気管路内における通気抵抗増加の抑制のために設けられている。この排気浄化装置では、排気管路内及びバイパス管路内に設けられるバルブの開閉が排気ガスの温度に基づき制御されることによって、排気ガスが流れる流路が排気流路とバイパス管路との間で切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した排気浄化装置では、排気管路とは別にバイパス管路が設けられるため、排気浄化装置を備える排気浄化システムは大きくなりやすく、排気浄化システムの小型化が難しいという問題があった。
【0005】
本開示の一局面は、排気浄化装置を備える排気浄化システムを小型化することができる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、内燃機関からの排気ガスを浄化する排気浄化装置であって、外郭部材と、浄化部と、支持部材と、を備える。外郭部材は、排気ガスが内部を流れる。浄化部は、外郭部材の内部に配置され、排気ガスを浄化する。支持部材は、外郭部材に取り付けられ、外郭部材内で浄化部の位置を変位可能に浄化部を支持する。浄化部は、支持部材によって、排気ガスが浄化部内に形成される内部流路を通過する位置である第1位置と、第1位置よりも排気ガスが内部流路を通過しにくい位置である第2位置と、に変位可能である。
【0007】
このような構成では、支持部材によって、外郭部材内で浄化部の位置を第1位置と第2位置とに変位可能である。このため、排気ガスが浄化部の内部流路を通過して外郭部材内を通過する流路と、排気ガスが当該内部流路を通過しにくい状態で外郭部材内を通過する流路と、を外郭部材内で切り替えることができる。したがって、1つの部材内で流路が切り替えられるため、例えば、複数の管路を設けて排気ガスが流れる流路を切り替える構成と比較して、排気浄化装置を備える排気浄化システムを小型化することができる。
【0008】
本開示の一態様では、浄化部は、支持部材を基準に回転することで、第1位置と第2位置との変位が可能であってもよい。このような構成によれば、支持部材を基準に回転するという簡易な構成で、浄化部の位置を変位させることができる。
【0009】
本開示の一態様は、浄化部の外周面の少なくとも一部を覆う壁部材を更に備えてもよい。壁部材は、浄化部と共に支持部材を基準に回転し、浄化部が第2位置にあるとき外郭部材の排気ガスの流入口と浄化部との間に位置してもよい。浄化部が第2位置にあるときの壁部材による流入口の閉塞割合は、浄化部が第1位置にあるときよりも大きくてもよい。このような構成によれば、浄化部が第2位置にあるとき、外郭部材における排気ガスの流入口と浄化部との間に壁部材が配置されるため、当該浄化部に排気ガスを当たりにくくすることができる。その結果、浄化部の位置を第1位置から第2位置へ変位させることによって、浄化部の熱劣化を抑制することができる。また、浄化部が第2位置にあるときに、浄化部が第1位置にある場合と比較して、浄化部の内部流路を排気ガスが通過しにくいため、通気抵抗増加を抑制することができる。
【0010】
本開示の一態様では、浄化部は、第1位置にあるとき、外郭部材における排気ガスの流入口の中心軸と同軸上に配置され、内部流路が中心軸に沿って延びてもよい。このような構成によれば、浄化部が第1位置にあるとき、例えば、浄化部が外郭部材における排気ガスの流入口の中心軸と同軸上に配置されていない場合と比較して、排気ガスが浄化部に一様に流れやすくすることができる。その結果、浄化部の浄化性及び排気性が確保されやすい。
【0011】
本開示の一態様は、外郭部材の内部に配置され、排気ガスの流れる方向に垂直な断面の断面積が浄化部よりも大きい他の浄化部を更に備えてもよい。このような構成によれば、外郭部材内に浄化部及び他の浄化部が配置されるため、別の部材にそれぞれ浄化部と他の浄化部とが配置される構成と比較して、排気浄化装置を備える排気浄化システムを小型化することができる。また、浄化部が他の浄化部よりも小さいため、浄化部は早期暖機されやすい。
【0012】
本開示の一態様では、浄化部は、通電により加熱される電気加熱式触媒であって、支持部材を介して通電が行われてもよい。このような構成によれば、浄化部が加熱によって早期暖機されやすく、浄化部が電気加熱式触媒でない場合と比較して、より早く排気ガスの浄化作用を活性化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一部の図示が省略された状態で外郭部材が透過的に示され、サブ触媒が第1位置にあるときの排気浄化装置の斜視図である。
【
図3】一部の図示が省略された状態で外郭部材が透過的に示され、サブ触媒が第2位置にあるときの排気浄化装置の斜視図である。
【
図5】サブ触媒が第1位置にあるときの排気ガスの流れを
図1のII-II断面において示す図である。
【
図6】サブ触媒が第1位置にあるときの排気ガスの流れを
図1のVI-VI断面において示す図である。
【
図7】サブ触媒が第2位置にあるときの排気ガスの流れを
図3のIV-IV断面において示す図である。
【
図8】サブ触媒が第2位置にあるときの排気ガスの流れを
図3のVIII-VIII断面において示す図である。
【
図9】外郭部材内におけるサブ触媒の配置位置の変形例を示す図である。
【
図10】外郭部材が、サブ触媒が配置される第1外郭部材と、メイン触媒が配置される第2外郭部材と、の2つの部材によって構成される排気浄化装置を示す図である。
【
図11】入口部の内径よりも大きい直径のサブ触媒を備える排気浄化装置を示す図である。
【
図12】楕円柱状に形成されたサブ触媒を示す図である。
【
図13】四角柱状に形成されたサブ触媒を示す図である。
【
図14】屈曲した支持部材を備える排気浄化装置を示す図である。
【
図15】屈曲した支持部材を備える排気浄化装置において、サブ触媒が第1位置にあるときの断面を示す図である。
【
図16】屈曲した支持部材を備える排気浄化装置において、サブ触媒が第2位置にあるときの断面を示す図である。
【
図17】ケース部材の上流側に設けられる当接部と、外郭部材と、の間に緩衝部材が配置される構成の排気浄化装置を示す図である。
【
図18】入口部の中心軸と、本体部の中心軸と、が同軸でない構成の外郭部材を備える排気浄化装置を示す図である。
【
図19】サブ触媒の位置の変位が支持部材の直線運動によって行われる構成の排気浄化装置において、サブ触媒が第1位置にあるときの断面を示す図である。
【
図20】サブ触媒の位置の変位が支持部材の直線運動によって行われる構成の排気浄化装置において、サブ触媒が第2位置にあるときの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
図1~
図4に示す排気浄化装置100は、自動車の内燃機関から排出された排気ガスを浄化するための装置である。排気浄化装置100は、外郭部材1と、2つの軸受2と、ケース部材3と、メイン触媒4と、サブ触媒5と、2つの支持部材6と、アクチュエータ7と、を備える。なお、
図1及び
図3に示す排気浄化装置100の外郭部材1は、外郭部材1内の内部構造を分かりやすく示すために、全体が透過的に示されており、一部が省略して示されている。
【0015】
外郭部材1は、排気ガスが内部を流れる排気流路を形成する筒状の部材である。外郭部材1は、排気ガスが流れる方向に沿って直線状に延びる。外郭部材1の中心軸Aに直交する断面は、略円形である。
図2及び
図4に示すように、外郭部材1は、本体部11と、上流部12と、下流部13と、入口部14と、出口部15と、を備える。
【0016】
本体部11は、径が略一定の円筒状に形成された管である。上流部12は、排気ガスの流れる方向に対して本体部11よりも上流側の筒状の部分であり、上流側に向うに従い縮径するテーパ状に形成されている。下流部13は、排気ガスの流れる方向に対して本体部11よりも下流側の筒状の部分であり、下流側に向かうに従い縮径するテーパ状に形成されている。入口部14は、排気ガスの流れる方向に対して上流部12よりも上流側の径が略一定の円筒状の部分であり、外郭部材1における排気ガスの流入口である。出口部15は、排気ガスの流れる方向に対して下流部13よりも下流側の径が略一定の円筒状の部分であり、外郭部材1における排気ガスの流出口である。
【0017】
軸受2は、円筒状の部材である。軸受2は、本体部11の上流側に、本体部11を貫通した状態で固定されている。2つの軸受2は、互いの中心軸が一致するように本体部11に配置される。軸受2には、後述する支持部材6が本体部11を貫通するように挿入される。軸受2は、当該軸受2と外郭部材1との間から外郭部材1の外部へ排気ガスが漏れ出さないように密閉可能な機能を有する。軸受2は、例えば、樹脂、ゴム等の絶縁性の材料により形成されている。
【0018】
ケース部材3は、径が略一定の円筒状の部材であり、外郭部材1の内部に収容されている。ケース部材3には、2つの貫通孔31が形成されている。2つの貫通孔31は、互いに対向するように設けられる。2つの貫通孔31には、それぞれ、後述する支持部材6が挿入される。
【0019】
メイン触媒4及びサブ触媒5は、それぞれ、円柱状に形成されている。メイン触媒4は、排気ガスの流れる方向に沿って延びる。サブ触媒5は、後述する第1位置にあるとき、排気ガスの流れる方向に沿って延び、後述する第2位置にあるとき、排気ガスの流れる方向に略垂直に延びる。メイン触媒4は、外郭部材1の内周面との間に若干の隙間が形成されるように、外郭部材1の内部に配置される。そして、当該隙間には、クッション性を有する保護マット41が配置される。メイン触媒4は、当該メイン触媒4内を排気ガスが通過する内部流路を有する。メイン触媒4の内部流路は、外郭部材1の中心軸Aに沿って延びる。サブ触媒5は、ケース部材3の内周面との間に若干の隙間が形成されるように、ケース部材3の内部に配置される。そして、当該隙間には、クッション性を有する保護マット51が配置される。なお、保護マット51には、ケース部材3の2つの貫通孔31と重なる位置に、2つの貫通孔511が形成されている。2つの貫通孔511は、互いに対向するように設けられる。サブ触媒5は、当該サブ触媒5内を排気ガスが通過する内部流路を有する。サブ触媒5の内部流路は、ケース部材3の中心軸に沿って延びる。
【0020】
メイン触媒4及びサブ触媒5は、排気ガスとの接触により排気ガス中の有害物質、例えば、CO、HC、NOx等を改質又は補集することで、排気ガスを浄化する。メイン触媒4及びサブ触媒5は、格子状の構造を有する触媒担体を有する。触媒担体は、外郭部材1の中心軸A又はケース部材3の中心軸に沿って延び、当該触媒担体を貫通する多数の孔が形成されており、排気ガス中の有害物質の酸化、還元を促す貴金属を担持している。当該貴金属は、例えば、Pt、Pd、Rh等である。なお、当該触媒担体を貫通する多数の孔が、メイン触媒4内及びサブ触媒5内に形成される排気ガスが通過する内部流路である。外郭部材1の中心軸A又はケース部材3の中心軸に直交する当該多数の孔の断面は、三角形状、四角形状、六角形状、八角形状等の様々な形状を有してもよい。触媒担体は、例えば、炭素ケイ素系セラミック等といった、導電性を有する多孔質のセラミック材により構成される。なお、セラミック材に替えて、例えば、導電性を有する金属材料により構成された触媒担体を有する電気加熱式触媒(以下、EHC(Electrically Heated Catalyst)とも称する)が用いられてもよい。本実施形態では、サブ触媒5は、通電により加熱されるEHCとして用いられる。なお、メイン触媒4は、導電性を有する構成であっても、導電性を有しない構成であってもよい。
【0021】
本実施形態では、サブ触媒5は、メイン触媒4よりも上流側に設けられている。本実施形態では、メイン触媒4及び後述する第1位置にあるときのサブ触媒5は、外郭部材1の中心軸Aと同軸上に配置される。ここで、同軸上とは、中心軸Aと、メイン触媒4及びサブ触媒5の中心軸が実質的に一致することである。具体的には、メイン触媒4及び後述する第1位置にあるときのサブ触媒5は、外郭部材1の入口部14の中心軸と同軸上に配置される。なお、入口部14の中心軸とケース部材3の中心軸とは、サブ触媒5が後述する第1位置にあるときに一致し、サブ触媒5が後述する第2位置にあるときに略垂直に交差する。入口部14の中心軸とケース部材3の中心軸とが一致するように、ケース部材3が外郭部材1内に位置するとき、ケース部材3の上流側の端部と外郭部材1とは、接触又は近接する。これにより、ケース部材3の上流側の端部と外郭部材1との間の隙間は、限りなく小さくなる。
【0022】
本実施形態では、メイン触媒4は、排気ガスの流れる方向に沿って垂直な断面の断面積がサブ触媒5の断面積よりも大きい。具体的には、サブ触媒5の直径D1は、メイン触媒4の直径D2よりも小さい。また、サブ触媒5の直径D1は、入口部14の内径d1と略同一又はよりも少し小さい。なお、本実施形態では、ケース部材3の内径が、入口部14の内径d1と略同一である。また、サブ触媒5の内部流路の長さLは、メイン触媒4の直径D2よりも小さい。なお、サブ触媒5の内部流路の長さLは、ケース部材3の長さと略同一である。
【0023】
支持部材6は、丸棒状の真っ直ぐな部材である。2つの支持部材6は、互いの中心軸が一致するように、軸受2を介して外郭部材1に摺動可能に取り付けられる。本実施形態では、支持部材6は、軸受2に対して、支持部材6の軸を中心に回転摺動する。2つの支持部材6の外郭部材1内に挿入された端部は、それぞれ、ケース部材3の2つの貫通孔31及び保護マット51の2つの貫通孔511に挿入されてサブ触媒5に接合される。ケース部材3の2つの貫通孔31及び保護マット51の2つの貫通孔511によって、支持部材6が、ケース部材3と当接せずに、ケース部材3内に配置されるサブ触媒5と接合が可能である。このように、支持部材6が軸受2を介して外郭部材1に摺動可能に取り付けられた状態でサブ触媒5と接合されることによって、支持部材6は、外郭部材1内でサブ触媒5の位置を変位可能にサブ触媒5を支持する。
【0024】
支持部材6は、例えば、ステンレス等の導電性の材料により形成されている。2つの支持部材6のうち、1つは正電圧が印加される正の電極として機能し、もう1つは負電圧が印加される負の電極として機能することで、サブ触媒5は、2つの支持部材6を介して通電される。
【0025】
具体的には、支持部材6は、外郭部材1の内部に挿入された端部に電極層61を有する。電極層61は、サブ触媒5の外周面に沿って曲面状に広がる略均一な厚みの薄板形状である。電極層61は、導電性の材料により形成される。なお、例えば、電極層61は、導電性の材料をサブ触媒5の外周面に溶射することで形成されてもよい。本実施形態では、2つの支持部材6にそれぞれ電極層61が接合されており、2つの電極層61は、互いに対向するように間隔を空けてサブ触媒5の外周面に沿って配置される。このため、2つの支持部材6にそれぞれ電圧が印加されると、各支持部材6の端部に形成された電極層61を介してサブ触媒5の全体に電圧が印加される。
【0026】
アクチュエータ7は、支持部材6を揺動させるためのモータである。本実施形態では、アクチュエータ7は、モータの回転運動に基づき、支持部材6の軸を中心に支持部材6を回転させる。アクチュエータ7は、例えば、メイン触媒4の温度が所定の値に達した場合に、支持部材6を回転させるように制御される。
【0027】
[2.サブ触媒の位置の変位について]
本実施形態では、支持部材6は、軸受2に対して、支持部材6の軸を中心に回転する。このため、サブ触媒5は、外郭部材1内において、支持部材6を基準としてケース部材3と共に回転する。具体的には、サブ触媒5は、支持部材6を基準に回転することで、
図1及び
図2に示す第1位置と、
図3及び
図4に示す第2位置と、に変位する。本実施形態では、メイン触媒4の温度が所定の値未満の場合、サブ触媒5は第1位置に位置する。そして、メイン触媒4の温度が所定の値以上となった場合、アクチュエータ7が制御されることで、サブ触媒5は第1位置から第2位置へ変位する。
【0028】
第1位置とは、排気ガスがサブ触媒5の内部流路を通過する位置である。具体的には、第1位置において、サブ触媒5の一方の端面は入口部14を向き、サブ触媒5の他方の端面はメイン触媒4の上流側の端面を向く。つまり、サブ触媒5が第1位置にあるとき、サブ触媒5の内部流路は、外郭部材1の中心軸Aに沿って延びる。このようにサブ触媒5が第1位置にあるとき、排気ガスの流入口である入口部14とサブ触媒5との間にケース部材3は位置しない。具体的には、サブ触媒5が第1位置にあるとき、入口部14の中心軸とケース部材3の中心軸とが一致し、ケース部材3の上流側の端部は、外郭部材1と接触又は近接する。これにより、ケース部材3の上流側の端部と外郭部材1との間には大きな隙間が生じないため、入口部14から流入した排気ガスが当該隙間から漏れ出しにくい。このため、サブ触媒5が第1位置にあるとき、
図5及び
図6に示す矢印のように、排気ガスがサブ触媒5を通過し、外郭部材1内に流入する。サブ触媒5が第1位置にあるときの排気ガスが流れる流路、すなわちサブ触媒5の内部流路は、サブ触媒5の回転軸である支持部材6の中心軸と直交する。
【0029】
第2位置とは、第1位置よりも排気ガスがサブ触媒5の内部流路を通過しにくい位置である。具体的には、第2位置において、サブ触媒5の両側の端面は、それぞれ外郭部材1の内周面を向く。つまり、サブ触媒5が第2位置にあるとき、サブ触媒5の内部流路は、外郭部材1の中心軸Aに直交するように延びる。このようにサブ触媒5が第2位置にあるとき、ケース部材3による入口部14の閉塞割合は、サブ触媒5が第1位置にあるときよりも大きい。なお、閉塞割合とは、入口部14をケース部材3によって完全に塞ぐ割合を示すものではなく、入口部14の流路断面におけるケース部材3が投影された投影領域の割合を示すものである。本実施形態では、ケース部材3は外郭部材1と当接しない状態で、入口部14とサブ触媒5との間にケース部材3が位置する。具体的には、サブ触媒5が第2位置にあるとき、入口部14の中心軸とケース部材3の中心軸とは直交し、ケース部材3の全周囲において外郭部材1との間に排気ガスの流路となる隙間が生じる。このため、サブ触媒5が第2位置にあるとき、
図7及び
図8に示す矢印のように、排気ガスがサブ触媒5を通過せずに、サブ触媒5の周囲の流路、すなわちケース部材3と外郭部材1との間の隙間を通過し、外郭部材1内に流入する。サブ触媒5が第2位置にあるときの排気ガスが流れる流路、すなわちケース部材3と外郭部材1との間の隙間により形成されるサブ触媒5の周囲の流路は、サブ触媒5の回転軸である支持部材6の中心軸と直交する。
【0030】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)本実施形態では、メイン触媒4の温度に基づき制御されるアクチュエータ7により回転する支持部材6によって、外郭部材1内でサブ触媒5の位置を第1位置と第2位置とに変位可能である。このため、排気ガスがサブ触媒5の内部流路を通過して外郭部材1内を通過する流路と、排気ガスがサブ触媒5の周囲の流路、すなわちケース部材3と外郭部材1との間の隙間を通過して外郭部材1内を通過する流路と、を外郭部材1内で切り替えることができる。つまり、支持部材6を基準にサブ触媒5を回転させるという簡易な構成で、サブ触媒5内を排気ガスが流れるか流れないかを切り替えることができる。したがって、1つの部材内で流路が切り替えられるため、例えば、複数の管路を設けて排気ガスが流れる流路を切り替る構成と比較して、排気浄化装置100を備える排気浄化システムを小型化することができる。
【0031】
(3b)本実施形態では、支持部材6によってサブ触媒5を回転させることで、排気ガスが流れる流路を切り替えられるため、例えば、排気ガスが流れる流路を切り替えるためのバルブを用いなくてもよい。
【0032】
(3c)本実施形態では、メイン触媒4の温度が所定の値に達した場合に、アクチュエータ7が制御されて支持部材6が回転することで、サブ触媒5が第1位置から第2位置へ変位する。このため、排気ガスが高温である場合、入口部14とサブ触媒5との間にケース部材3が配置されるため、サブ触媒5に高温の排気ガスを当たりにくくすることができる。その結果、サブ触媒5の熱劣化を抑制することができる。また、サブ触媒5が第2位置にあるとき、サブ触媒5の内部流路は外郭部材1の中心軸Aに直交するので、サブ触媒5の内部流路の入口が入口部14と対向しない。このため、サブ触媒5が第2位置にあるときに、サブ触媒5の内部流路が中心軸Aに沿うようにサブ触媒5が第1位置にある場合と比較して、サブ触媒5の内部流路を排気ガスが通過しにくいため、通気抵抗増加を抑制することができる。
【0033】
(3d)本実施形態では、メイン触媒4及びサブ触媒5は、外郭部材1の中心軸Aと同軸上に配置される。換言すると、メイン触媒4及びサブ触媒5は、外郭部材1の入口部14の中心軸と同軸上に配置される。したがって、サブ触媒5が第1位置にあるとき、例えば、サブ触媒5が外郭部材1における入口部14の中心軸と同軸上に配置されていない場合と比較して、排気ガスがサブ触媒5に一様に流れやすくすることができる。その結果、サブ触媒5の浄化性及び排気性が確保されやすい。
【0034】
また、サブ触媒5が第1位置にあるとき、例えば、メイン触媒4が外郭部材1における入口部14の中心軸と同軸上に配置されていない場合と比較して、排気ガスがメイン触媒4に一様に流れやすくすることができる。その結果、メイン触媒4の浄化性及び排気性も確保されやすい。
【0035】
(3e)本実施形態では、外郭部材1内にサブ触媒5及びメイン触媒4が配置されるため、別の部材にそれぞれサブ触媒5とメイン触媒4とが配置される構成と比較して、排気浄化装置100を備える排気浄化システムを小型化することができる。また、本実施形態では、サブ触媒5がメイン触媒4よりも小さいため、サブ触媒5は早期暖機されやすい。
【0036】
(3f)本実施形態では、メイン触媒4及びサブ触媒5がそれぞれ円柱状に形成されているため、例えば、メイン触媒4及びサブ触媒5が特殊な形状に構成されている場合と比較して、製造性を確保しやすく、コスト増加を抑制することができる。
【0037】
(3g)本実施形態では、サブ触媒5は支持部材6を介した通電により加熱されるEHCとして用いられる。このため、車両のエンジン始動後、一定期間にわたって2つの支持部材6を介して電圧を印加することで、サブ触媒5が加熱される。したがって、エンジンの始動後、サブ触媒5が早期暖機されやすく、サブ触媒5が電気加熱式触媒でない場合と比較して、より早く排気ガスの浄化作用を活性化することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、ケース部材3が壁部材に相当し、メイン触媒4が他の浄化部に相当し、サブ触媒5が浄化部に相当する。
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0039】
(4a)上記実施形態では、外郭部材1内において、サブ触媒5がメイン触媒4よりも上流側に設けられていたが、サブ触媒5が配置される位置はこれに限定されるものではない。例えば、
図9に示すように、外郭部材1内において、サブ触媒5がメイン触媒4よりも下流側に配置されてもよい。
【0040】
(4b)上記実施形態では、メイン触媒4及びサブ触媒5が1つの部材により構成された外郭部材1内に配置される構成を例示したが、メイン触媒4及びサブ触媒5が配置される構成はこれに限定されるものではない。例えば、メイン触媒4及びサブ触媒5は、それぞれ排気ガスが通過する排気流路における別の位置に配置された異なる外郭部材に配置されてもよい。また、例えば、
図10に示すように、支持部材6によって回転可能に構成されたサブ触媒5が配置される第1外郭部材16と、メイン触媒4が配置される第2外郭部材17と、に外郭部材を分けて、組み付け可能な構成としてもよい。これにより、例えば、異なるメイン触媒が用いられる様々な車両に対して、共通した設計のサブ触媒を容易に組み合わせることができる。
【0041】
(4c)上記実施形態では、サブ触媒5の直径D1が入口部14の内径d1と略同一又はよりも少し小さい。しかし、
図11に示すサブ触媒5aのように、サブ触媒5aの直径D1は、入口部14の内径d1よりも大きくて、メイン触媒4の直径D2よりも小さくてもよい。この場合、サブ触媒5aが収容されるケース部材3aの内径も、入口部14の内径d1よりも大きく、メイン触媒4の直径D2よりも小さくなる。なお、サブ触媒5aの直径D1に代えて、ケース部材3の外径、ケース部材3の内径、保護マット51の厚みを含むサブ触媒5の径のいずれか1つが入口部14の内径d1よりも大きくて、メイン触媒4の直径D2よりも小さくてもよい。
【0042】
(4d)上記実施形態では、サブ触媒5が円柱状に形成されていたが、サブ触媒の形状はこれに限定されるものではない。例えば、
図12に示すように、サブ触媒5bは、楕円柱状に形成されていてもよい。また、例えば、
図13に示すように、サブ触媒5cは、四角柱状に形成されていてもよい。
【0043】
(4e)互いの中心軸が一致するように配置された2つの支持部材6は、排気浄化装置100が車両に対して取り付けられ状態において、当該車両を基準に上下方向、前後方向、左右方向など、様々な向きとなるように配置されてもよい。つまり、サブ触媒5の回転軸は、排気浄化装置100が車両に対して取り付けられ状態において、様々な方向を向いていてもよい。
【0044】
(4f)上記実施形態では、サブ触媒5の第1位置から第2位置への変位として、サブ触媒5の重心位置が大きくは変わらない回転移動する構成を例示したが、サブ触媒5の位置の変位によってサブ触媒5の重心位置が大きく変化するような構成であってもよい。その際に、サブ触媒5の重心が外郭部材1の中心軸Aから外れてもよい。例えば、
図14に示すように、支持部材6dは、ケース部材3と接合する部分と、外郭部材1に摺動可能に固定される部分と、が同じ直線状に配置されないように、屈曲した棒状部材であってもよい。支持部材6dは、外郭部材1に摺動可能に固定される部分を軸として回転して、サブ触媒5の位置が
図15に示す第1位置から
図16に示す第2位置へ変位する際に、ケース部材3と接合する部分の位置が変わるように変位する。すなわち、サブ触媒5の位置が変位する際に、サブ触媒5の重心となる中心点Bが外郭部材1の中心軸A上から外れて偏心する。サブ触媒5が第2位置にあるとき、ケース部材3の下流側の端部は、外郭部材1における本体部11の内周面の一部と当接又は近接する。具体的には、サブ触媒5が第2位置にあるとき、入口部14の中心軸とケース部材3の中心軸とは直交し、ケース部材3の上流側の端部と本体部11との間に排気ガスの流路となる隙間が生じる。このような構成でも、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
(4g)上記実施形態では、サブ触媒5が第1位置にあるとき、ケース部材3の上流側の端部が外郭部材1と接触又は近接することで、外郭部材1とケース部材3の上流側の端部との間の隙間を生じにくくする構成を例示した。しかし、例えば、外郭部材1とケース部材3の上流側の端部との間に緩衝部材が配置されていてもよい。例えば、
図17に示すように、ケース部材3eが上流側の端部に当接部32を有し、当該当接部32と外郭部材1との間に緩衝部材8として、例えば金属メッシュが設けられるような構成であってもよい。
【0046】
(4h)上記実施形態では、排気ガスが流れる方向に沿って外郭部材1が直線状に延びる構成を例示したが、外郭部材1の形状はこれに限定されるものではない。例えば、
図18に示すように、外郭部材1fは、入口部14fの中心軸Cと、本体部11fの中心軸Dが同軸でない構成であってもよい。この外郭部材1f内に配置されるサブ触媒5の中心軸は、入口部14fの中心軸Cと同軸であることが好ましい。
【0047】
(4i)上記実施形態では、浄化部として、EHCであるサブ触媒を例示したが、浄化部はEHCでない構成であってもよい。つまり、サブ触媒は通電による加熱を行わないものであってもよい。例えば、浄化部は、排気ガスの有害物質に対する酸化、還元等の反応を伴わずに排気ガス中に含まれるHCを吸着する吸着剤であってもよい。また、例えば、浄化部は、コージェライト等の導電性を有さないセラミック材により構成されていてもよい。この場合、支持部材は、導電性の材料により形成されていなくてもよい。また、支持部材が挿入される軸受は、絶縁性の材料により形成されていなくてもよい。つまり、軸受は、例えば、金属メッシュ等の導電性の材料により形成されていてもよい。また、保護マット及びケース部材には貫通孔が形成されていなくてもよく、支持部材が直接ケース部材に接合していてもよい。
【0048】
(4j)上記実施形態では、アクチュエータ7により回転する支持部材6によって、外郭部材1内でサブ触媒5の位置を変位させる構成を例示したが、支持部材の駆動方法は回転に限定されるものではない。例えば、
図19及び
図20に示すように、アクチュエータ7gによって、支持部材6gが直線運動することでサブ触媒5の位置を変位させる構成であってもよい。具体的には、サブ触媒5を外郭部材1の中心軸Aに沿って、入口部14から離れる方向に移動させて第1位置から第2位置へ変位させる。このような構成では、サブ触媒5が第2位置にあるとき、外郭部材1に接触又は近接していたケース部材3の上流側の端部が、外郭部材1から離れることで、ケース部材3と外郭部材1との間に排気ガスの流路となる隙間が生じる。このため、入口部14から流入する排気ガスは、ケース部材3と外郭部材1との間の隙間にも流れることから、サブ触媒5の内部流路に流れる排気ガスが減少する。
【0049】
(4k)上記実施形態では、アクチュエータ7におけるモータの回転運動をサブ触媒5の支持部材6を基準とした回転運動に伝える構成を例示したが、支持部材6を基準にサブ触媒5を回転させる方法はこれに限定されるわけではない。例えば、サーモスタット等による直線運動をサブ触媒5の支持部材6を基準とした回転運動に伝える方法であってもよい。具体的には、直線運動を回転運動に変換するリンク機構、ラックピニオン機構などを用いてもよい。
【0050】
(4l)上記実施形態では、メイン触媒4の温度に基づきアクチュエータ7が制御されることで支持部材6を駆動して、サブ触媒5を変位させていたが、サブ触媒5の変位方法はこれに限定されるものではない。すなわち、アクチュエータ7の制御に用いられる因子は、メイン触媒4の温度に限定されるものではない。アクチュエータ7は、例えば、排気ガスの温度を用いて制御されてもよい。アクチュエータ7の制御に排気ガスの温度が用いられる場合、メイン触媒4通過後の排気ガスの温度を制御に用いる因子とすることが望ましい。アクチュエータ7は、例えば、排気ガスの流量、圧力等に基づき制御されてもよい。また、アクチュエータ7の代わりに、バネ等の弾性部材を用いて、排気ガスの流量に応じて支持部材6、サブ触媒5、ケース部材3のいずれか1つが駆動することでサブ触媒5を変位させるような構成であってもよい。
【0051】
(4m)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0052】
1,1f…外郭部材、2…軸受、3,3e…ケース部材、4…メイン触媒、5,5a,5b,5c…サブ触媒、6,6b,6d,6g…支持部材、7,7g…アクチュエータ、8…緩衝部材、11,11f…本体部、12…上流部、13…下流部、14,14f…入口部、15…出口部、16…第1外郭部材、17…第2外郭部材、31,511…貫通孔、32…当接部、41,51…保護マット、61…電極層、100…排気浄化装置。