(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186325
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】カードリーダ及びカードリーダにおける異物検知方法
(51)【国際特許分類】
G06K 13/06 20060101AFI20221208BHJP
G06K 7/08 20060101ALI20221208BHJP
G11B 5/00 20060101ALI20221208BHJP
G07D 11/235 20190101ALN20221208BHJP
【FI】
G06K13/06 B
G06K7/08 040
G11B5/00 Z
G07D11/235
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094483
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】影山 岳志
【テーマコード(参考)】
3E141
5B023
5D091
【Fターム(参考)】
3E141AA03
3E141BA07
3E141DA01
3E141FK10
5B023GA07
5D091AA12
5D091BB06
5D091JJ21
(57)【要約】
【課題】
内部に挿入された物体を簡易な構成で確実に検知することができるカードリーダを提供する。
【解決手段】
カードリーダは、挿入されたカードを装置内に搬送するために上側搬送路と下側搬送路とで形成されるカード搬送路と、前記カードに記録された情報を読取る読取部とを備えている。下側搬送路の上面には、読取部の後方に下側凹凸部を設ける。一方、上側搬送路の下面には下側凹凸部と嵌合するように上側凹凸部を設ける。また、下側凹凸部と上側凹凸部とを物体が存在しない場合に嵌合状態を維持するため押圧部を設ける。そして、下側凹凸部と上側凹凸部の間隔が開いた状態を検知する検知センサを設ける。検知センサが、下側凹凸部と上側凹凸部の間隔が開いた状態を検知することにより、下側凹凸部と上側凹凸部との間に物体が挿入されたことを認識する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入されたカードを装置内に取込むために上側搬送路と下側搬送路とで形成されるカード搬送路と、前記カードに記録された情報を読取る読取部とを備えたカードリーダであって、
前記カード搬送路の前記読取部の後方であり前記下側搬送路の上面に下側凹凸部と、前記下側凹凸部と嵌合するように前記上側搬送路の下面に上側凹凸部とを設け、
前記下側凹凸部と前記上側凹凸部とは物体が存在しない場合に嵌合状態を維持するようにし、
前記下側凹凸部と前記上側凹凸部の間隔の変化を検知する検知センサを設けたカードリーダ。
【請求項2】
請求項1に記載されたカードリーダにおいて、前記読取部は、前記カードに形成された磁気ストライプに記録された情報を読取る磁気ヘッドであることを特徴とするカードリーダ。
【請求項3】
請求項2に記載されたカードリーダにおいて、前記カードの磁気ストライプの各トラックの横方向中央部が、前記下側凹凸部の凹部に相対するように構成されることを特徴とするカードリーダ。
【請求項4】
請求項1に記載されたカードリーダにおいて、前記検知センサは、前記下側凹凸部と前記上側凹凸部の上下方向の相対的な間隔変化に対応して移動する検出体と、前記検出体の移動を検出する位置検出センサとで構成したことを特徴とするカードリーダ。
【請求項5】
請求項4に記載のカードリーダにおいて、前記検出体は遮光板であり、前記位置検出センサは前記遮光板の位置変化を検出する光センサであることを特徴とするカードリーダ。
【請求項6】
請求項4に記載されたカードリーダにおいて、前記位置検出センサは前記検出体が接近したか否かを検出する近接センサであることを特徴とするカードリーダ。
【請求項7】
請求項1に記載されたカードリーダにおいて、前記下側凹凸部と前記上側搬送路との前記嵌合状態を維持するために、前記下側凹凸部を複数のリンク用アームで支持した平行リンク機構を形成し、前記下側凹凸部を上方に移動させる力を付与するバネを備えたことを特徴とするカードリーダ。
【請求項8】
請求項1に記載されたカードリーダにおいて、前記検知センサを、前記カードの搬送方向に沿って複数個設けたことを特徴とするカードリーダ。
【請求項9】
請求項1に記載されたカードリーダにおいて、前記下側凹凸部と前記上側凹凸部は、その一部もしくは全体が金属製であることを特徴とするカードリーダ。
【請求項10】
請求項1に記載されたカードリーダにおいて、前記検知センサが最大の前記間隔を検知した状態で、前記下側凹凸部の上端面と、前記上側凹凸部の下端面との距離が、カードの厚さと挿入されうる異物の厚さとの和の大きさ以下となるようにしたことを特徴とするカードリーダ。
【請求項11】
挿入されたカードを装置内に搬送するための上側搬送路と下側搬送路とで構成されたカード搬送路と、前記カードに記録された情報を読取る読取部とを備えたカードリーダにおける異物検知方法であって、
前記カード搬送路の前記読取部の後方であり前記下側搬送路に設けられた下側凹凸部と前記下側凹凸部と嵌合するように前記上側搬送路に設けられた上側凹凸部とを備え、
前記下側凹凸部と前記上側凹凸部とは物体が存在しない場合に嵌合状態を維持するようにし、
前記下側凹凸部と前記上側凹凸部の間隔の変化を検知し、
前記カードが挿入されていない場合であり、かつ前記間隔の変化を検知した場合に異物が存在していると判断するカードリーダにおける異物検知方法。
【請求項12】
請求項11に記載されたカードリーダにおける異物検知方法において、前記読取部は、前記カードに形成された磁気ストライプに記録された情報を読取る磁気ヘッドであることを特徴とするカードリーダにおける異物検知方法。
【請求項13】
請求項11に記載されたカードリーダにおける異物検知方法において、前記間隔の変化は、前記下側凹凸部と前記上側凹凸部の上下方向の相対的な位置移動に対応して移動する検知体の移動を検出する位置センサにより検知することを特徴とするカードリーダにおける異物検知方法。
【請求項14】
請求項11に記載されたカードリーダにおける異物検知方法において、前記下側凹凸部と前記上側凹凸部の間隔の変化を、搬送方向に対して複数個設置した検知センサにより検知することを特徴とするカードリーダにおける異物検知方法。
【請求項15】
請求項11に記載されたカードリーダにおける異物検知方法において、
前記異物が存在していると判断した場合に、前記異物の存在を報知するようにしたことを特徴とするカードリーダにおける異物検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードリーダ及びカードリーダにおける異物検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現金自動預け払機(ATM)などの取引処理装置等において、カードリーダ内にスキミング用装置(スキマー)を設置し、カードに記録された情報(カード情報)を不正に取得すること(いわゆるスキミング)が行われている。
スキミングでは、不正な読取ヘッド(磁気ヘッド)をカードリーダのカード挿入口に被せるように設置し、カード情報を盗み取る方法が行われることが多い。このようなスキミングへの対策として、挿入口の近傍に妨害磁界を生じさせ、この妨害磁界により磁気データの不正な読み取りを阻止することが行われてきている。
【0003】
ところが、近年では、上述したカード挿入口近傍の妨害磁界を逃れるため、小型・薄型のスキミング用装置をカード挿入口の内側(カードリーダの読取ヘッドの後方)まで差し入れて設置し、妨害磁界を免れながらカード情報を不正に取得することも行われている。
【0004】
このような新たなスキミング手法への対抗策として、例えば、カードリーダの内部にスキミング用装置が取り付けられたことを検知する技術が開発されている。例えば、特開2020-24537号公報(特許文献1)や、特開2017-219971号公報(特許文献2)には、カードリーダの磁気ヘッドの後方に設置されたスキミング用装置などの異物を検知するための技術を開示している。
【0005】
すなわち、特許文献1では、カードリーダの筐体内部に金属を検知する金属センサを配置し、スキミング用装置などの金属製の異物を精度よく検知(検出)する技術を開示している。また、特許文献2では、カード通過路(カード搬送路)を閉鎖するためのシャッタ部材よりも奥側に静電容量センサを配置してカードリーダの内部に取付けられたスキミング用装置を検知する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-24537号公報
【特許文献2】特開2017-219971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1や特許文献2の技術を採用すれば、カードリーダの読取部の後方(奥側)に取付けられたスキミング用装置などの異物を検知することができる。
【0008】
しかしながら、上述した技術では、スキマーの検知に金属センサや静電容量センサを使用しているため、スキマーの電子回路を覆う部材の材質や取付け位置、大きさ等によってはスキミング用装置(異物)を確実に検知することが困難な場合があった。また、最近では、非常に薄いスキミング用装置が取り付けられる場合もあり、それを検知するためには高精度のセンサが必要であり、コストが高くなるという課題がある。また、確実に検出するためには、搬送路に沿って広範囲に多数のセンサを設置する必要もあり、製造コストの増加につながる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、簡単な構成により確実にカードリーダ内部に取り付けられた物体を検知することができるカードリーダ及びカードリーダにおける異物検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明は、その一例を挙げると、挿入されたカードを装置内に取込むために上側搬送路と下側搬送路とで形成されるカード搬送路と、前記カードに記録された情報を読取る読取部とを備えたカードリーダであって、前記カード搬送路の前記読取部の後方であり前記下側搬送路の上面に下側凹凸部と、前記下側凹凸部と嵌合するように前記上側搬送路の下面に上側凹凸部とを設け、前記下側凹凸部と前記上側凹凸部とは物体が存在しない場合に嵌合状態を維持するようにし、前記下側凹凸部と前記上側凹凸部の間隔の変化を検知する検知センサを設けたカードリーダである。
【0011】
また、本発明の他の一例を挙げると、挿入されたカードを装置内に搬送するための上側搬送路と下側搬送路とで構成されたカード搬送路と、前記カードに記録された情報を読取る読取部とを備えたカードリーダにおける異物検知方法であって、前記カード搬送路の前記読取部の後方であり前記下側搬送路に設けられた下側凹凸部と前記下側凹凸部と嵌合するように前記上側搬送路に設けられた上側凹凸部とを備え、前記下側凹凸部と前記上側凹凸部とは物体が存在しない場合に嵌合状態を維持するようにし、前記下側凹凸部と前記上側凹凸部の間隔の変化を検知し、前記カードが挿入されていない場合であり、かつ前記間隔の変化を検知した場合に異物が存在していると判断するカードリーダにおける異物検知方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカードリーダによれば、簡易な構成で確実にカードリーダ内部に装着された物体を検知することができる。また、本発明のカードリーダにおける異物検知方法によれば、簡易な構成で確実にその物体が異物であることを検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1におけるカードリーダの外観斜視図である。
【
図2】実施例1においてカードが挿入された状態のカードリーダの外観斜視図である。
【
図3】実施例1におけるカードリーダの上面図である。
【
図4】実施例1におけるカードリーダの正面図である。
【
図5】実施例1におけるカードリーダの側面図である。
【
図7】実施例1における異物検知方法を説明する図である。
【
図8】実施例1における異物検知方法を説明する図である。
【
図9】実施例1におけるカードリーダの内部斜視図である。
【
図10】実施例1におけるカードリーダの内部斜視図である。
【
図11】実施例1におけるカードリーダの内部斜視図である。
【
図12】実施例1におけるカードリーダの内部側面図である。
【
図13】実施例1におけるカードリーダの内部斜視図である。
【
図14】実施例1におけるカードリーダの内部斜視図である。
【
図15】本発明の実施例2におけるカードリーダの正面拡大図である。
【
図16】本発明の実施例3におけるカードリーダの正面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体的な実施例により詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明は、以下に説明する実施例を含めて種々の態様に変形することができる。また、以下の説明で用いる図面において、同一の部品や構成機器には同一の符号(番号)を用いており、すでに説明した部品や構成機器に関する説明を省略する場合がある。
【0015】
≪実施例1≫
次に、実施例1について、
図1から
図14を用いて説明する。
図1および
図2は、実施例1におけるカードリーダの外観斜視図である。
図3はカードリーダの上面図、
図4はカード挿入口側から見た正面図、
図5は側面から見た側面図である。
図6は異物検知方法の基本的な考え方を説明するための図であり、
図7は本発明の実施例1における異物検知方法を説明するための図である。
図8~
図12は、本発明の実施例1の具体的な構成を示す図である。なお、これらの図において、カードが搬送される方向をX方向、カードの幅方向をY方向、カード搬送路の鉛直方向(上下方向)をZ方向とする。
【0016】
まず、
図1~
図5によりカードリーダの外観および機能について説明する。
図1~
図5において、カードリーダ1は、カード挿入口11を有している。また、カードリーダ1は、下部フレーム141と上部フレーム142とを有し、内部にカードの搬送を行うためのカード搬送路15が形成されている。カード搬送路15は、下部フレーム141内に形成された下側搬送路151と、上部フレーム142内に形成された上側搬送路152とを含む構成である。なお、カード搬送路15には、搬送のための駆動機構が含まれる。13は上部蓋であり、上部蓋13の下面には、プリント基板14が配備される。
【0017】
図1において、カード2は、カード挿入方向を示す矢印が記載されている面を表面とし、その反対面を裏面とする。カード2の裏面には、磁気ストライプ21が形成される。磁気ストライプ21には、口座番号や暗証コードなど取扱いのために必要な情報(以下、「カード情報」)が記録されている。カード2は、利用者によってカード挿入口11からX方向に挿入され、カード搬送路15によりカードリーダ1の内部に搬送される。カード2は、表面を上面として挿入される。この搬送の際に、カード挿入口近傍右側の突出部12内に設けられた読取部(ここでは、磁気ヘッド121)により、カード2の裏面に備わる磁気ストライプ21に記録されたカード情報が読取られる。磁気ヘッド121は、カード2の磁気ストライプ21に記録されたカード情報を読取ることが可能な位置に配備されている。
図2は、カード2がカードリーダ1の奥まで挿入された状態を示している。また、
図3はカードリーダ1の上面図、
図4は
図3において矢印Xの方向から見た正面図、
図5は矢印Yの方向から見た側面図である。読取られたカード情報は、利用者と金融機関との間の取引等に利用される。その後、カードリーダ1は、カード2を利用者に返却するために、図示しない駆動機構を駆動して搬送路からカード挿入口11に搬送(搬出)する。
【0018】
なお、この実施例ではカードとして磁気カードを示しているが、本発明は磁気カードに限るものではない。例えば、ICカードのようにIC内に情報を記録したカード情報を読取るためのカードリーダにも適用できる。
【0019】
スキミングを行う不正行為者は、例えば薄型の磁気ヘッドを備えたスキマーをカード挿入口11から磁気ヘッド121の後ろ側へ挿入し設置する。本発明は、そのようにしてスキマー(スキミング用装置)が設置された場合でも、そのような物体を簡単で確実に検知するカードリーダを提供する。
【0020】
何者かによってカードリーダ内にスキマー等の異物が挿入された場合に、本発明では、金属センサや静電容量センサを用いることなく異物検知を行うことができる。次に、そのための基本的な考え方(概要)について、
図6を用いて説明する。
図6は、カードリーダ1の側面(
図5に相当)のカード搬送路の部分を示す断面図である。
【0021】
まず、
図6の(A)に示すように、カード搬送路15は下側搬送路151と上側搬送路152とからなる。下側搬送路151は、ベース153に取り付けられたバネ等による押圧部154にて上側搬送路152側へ押し当てられている。つまり、カードが挿入されていないときは、下側搬送路151と上側搬送路152との間の間隔(ギャップ)はない状態となる。なお、この実施例では、下側搬送路151は下部フレーム141内に、上側搬送路152は上部フレーム142内に配備される。
【0022】
次に、
図6の(B)に示すように、カード2がカード挿入口11からX方向(図の右方向)へ挿入されると、下側搬送路151はカード2の厚み分だけ、下方向に移動し、カードが挿入された状態となる。なお、カードが挿入されているか否かは、カード挿入口近傍に設けたカード検知センサ(例えば、光センサ)を設けておけば、その検知信号により認識することができる。ここでは、カード検知センサは図示していない。
【0023】
そして、
図6の(C)に示すように、カード2が抜去されると下側搬送路151は押圧部154の作用により元の位置に戻る。このように、スキマーなどの異物が挿入されていない場合は、下側搬送路151と上側搬送路152との間のギャップ(間隔)は、カード挿入時のみ発生し、カードが挿入されていない時にはゼロに戻る。
【0024】
ここで、
図6の(D)に示すように、取引が行われていないとき(カードが挿入されていないとき)に、スキマー等の異物3が挿入されている場合、下側搬送路151はその厚みdだけ、下方へ変位する。この変位量、すなわち、搬送路間の間隔dの存在を検出することによって、異物が挿入されたことを認識する(検知する)ことができる。
【0025】
しかしながら、実際のスキミング用装置の中には、剃刀の刃のように極めて厚みの薄いものも存在する。そのようなきわめて薄いスキミング用装置がカード搬送路15内に設置された場合、ごくわずかな間隔の変位を正確に検知するには検出精度の非常に高いセンサを用いる必要があり、設計公差を極力抑える等の特別な手段を講じる必要がある。しかし、検出精度をある一定程度以上に高めることは難しく、また、設計公差を追い込むことによる製造時間の増大やそれに伴う製造コストの増加を招く等、現実的ではない。さらに、仮に検出精度や設計精度を限界にまで高めることができたとしても、それによって誤検知の可能性が高くなる等、新たな問題が発生し得る。
【0026】
そこで、本発明の実施例1では、物体(異物)の厚みが極めて小さい場合であっても、カード搬送路15を形成する下側搬送路151と上側搬送路152との間の間隔の変化を大きくし、物体を確実に検知することができる新規な構成を採用する。
【0027】
次に、この実施例1における異物検知方法について
図7を用いて説明する。
図7からわかるように、この実施例では、下側搬送路151の上面に、幅方向断面が凹凸形状の下側凹凸部155を設ける。下側凹凸部155の高さWoは、カードの厚みWtよりも大きくする。つまり、Wo>Wtとする。例えば、Woは、Wtの2倍以上にする。この下側凹凸部155は、搬送方向Xにおいて読取部の後方(奥側)に設ける。また、上側搬送路152の下面(下側搬送路側の面)に、下側凹凸部155とかみ合う(嵌合する)ように、上側凹凸部156を設ける。これら上下の凹凸部は、搬送路面を凹凸形状に形成したものでもよいし、凹凸形状の別部材を搬送路面上に形成してもよい。また、上下の凹凸部は、搬送路の幅方向全体にわたって設けても良いが、読取部の後ろ側に設置されるスキマーなどの異物を検知できれば良いので、読取部の読取範囲の幅以上であれば良く搬送路の幅方向全体にわたって設けなくても良い。下側凹凸部155と上側凹凸部156とは、物体が存在しない場合に嵌合状態を維持するようにしている。ここでは、説明を簡単にするために下側凹凸部155を、下方からバネ等による押圧部154により上方に加圧して、上下の凹凸部の嵌合状態を維持する構成を示している。そのため、物体が何もない状態では、下側凹凸部155と上側凹凸部156とは、嵌合した状態を維持する。つまり、この実施例では、下側凹凸部155と上側凹凸部156とからなる「検知ガイド17」を設け、物体が存在しない場合にはそれらが嵌合した状態を維持するように、下側凹凸部155を下側から押し上げようとする力を発生する押圧部154を設けている。なお、上下の凹凸部の篏合状態を維持する構成は、ここで示した例に限らない。
【0028】
このように、読取部の後方に下側凹凸部155と上側凹凸部156とからなる検知ガイド17を設けることにより、
図7の(A)に示すように、物体が何も挿入されていない場合には、下側凹凸部155と上側凹凸部156がかみ合った状態(嵌合した状態)になる。つまり、カード2がカードリーダ1内に挿入されていない状態では、下側凹凸部155が押圧部154により押し上げられ、下側凹凸部155と上側凹凸部156が密着した状態(嵌合した状態)が維持されるので、上下の間隔は最小となる。
【0029】
これに対し、
図7の(B)に示すように、カード2をカード挿入口に挿入してカードリーダ1内に搬送した状態では、各凹凸部の凸部面同士がカード厚み分になるまで開く状態になる。つまり、カード挿入により、下側凹凸部155と上側凹凸部156との間の間隔Wは、凹凸部の高さWoとカード厚みWtを加算したW=Wo+Wtになる。
【0030】
この
図7(A)のカード非挿入状態から、(B)のカード挿入状態の両搬送路間の間隔の変化量は、上下の凹凸部で構成される検知ガイド17を設けない場合(
図6の場合)に比べて、各段に大きな値とすることができる。この間隔の変化は、仮に、カードの厚みよりも非常に薄い(異物の厚さが略ゼロ)物体が搬送路に挿入された場合でも、凹凸部の高さWoの間隔以上の変化が生じることになる。このような構成により、何らかの物体(カードであるか、異物であるかを問わず)が存在する場合には、大きな間隔の変化を生じる。したがって、カード2がカードリーダ1に挿入されていない非挿入時である場合に、上下の凹凸部間に大きな間隔Wが生じている場合には、カード以外の何らかの異物が設置されていると判断することができる。
【0031】
このように、上下の凹凸部による検知ガイド17を有するカード搬送路15の場合には、その物体が一定の剛性を持っていれば極めて薄い物体であったとしても、下側凹凸部155と上側凹凸部156間の間隔は大きな変化となる。そのため、間隔の変化を検知する検知センサは、間隔の変化が生じたか否かを検知可能な検出精度の低い簡単な検知センサでも問題ない。このような検知センサとしては、例えば、検出体の存在の有無による光の遮光と受光を検知可能な光センサや、検出体が近づいたか否かを検知する近接センサなどを用いることができる。
【0032】
次に、異物が挿入されたことによって下側凹凸部と上側凹凸部の間隔が変化したことを検知する検知センサの具体的な構成例を、
図8に示す模式図により説明する。
図8の(A)に示すように、上側搬送路152と接続されたプリント基板14には、発光部161と受光部162とからなる光センサ16が取り付けられている。下側搬送路151には、上下の搬送路の間隔(ギャップ)が最小になっているときに発光部161の光を受光部162が受光できなくする(遮光する)ための遮光板160が取り付けられている。この遮光板160は、下側凹凸部155と上側凹凸部156の間隔の変化を検出するための検出体として機能する。カード非挿入時においては、遮光板160により光センサ16はOFF(遮光状態)となっている。
図8の(B)に示すように、カード搬送路15内にカード2や異物3が挿入された場合、下側搬送路151がバネ力に抗して押し下げられ、それに伴って遮光板160も下がり、発光部161からの光が受光部162にて検出されON(投光状態)となる。この光センサ16のOFFとONの状態は、カードに限らず、異物3が挿入されている場合にも生じる。つまり、物体がない状態ではOFFとなり、物体が存在している状態ではONとなる。したがって、カード2が挿入されていない状態において、光センサ16がONとなることにより、異物3が挿入されていることを検知する(判断する)ことができる。
【0033】
なお、
図8では、検出体である遮光板160を下側搬送路151に取り付け、光センサ16を上側搬送路152の側に設置した例を示したが、これと反対に、光センサを下側搬送路に取付け、遮光板160を上側搬送路に取り付けてもよい。また、ここでは、光センサを用いた場合を説明したが、光センサ以外のセンサであっても良い。例えば、検出体が近接したか否かを検出する近接センサ(近接スイッチ)を用いても実施することができる。すなわち、上下の凹凸部間の間隔変化を検知することが可能な検知センサであれば本発明は実現可能である。
【0034】
次に、以上の概略説明を前提とした、本発明の実施例1におけるカードリーダ1の具体的な構造を
図9~
図14を用いて説明する。
【0035】
図9は、
図1におけるカードリーダ1の上部蓋13を外した状態を示す図であり、主要制御回路等を搭載したプリント基板14および上側搬送路152を備える上部フレーム142と、下側搬送路151を備えた下部フレーム141とからなる。
【0036】
図10は、
図9においてプリント基板14を取り外した状態を示す図である。下部フレーム141に含まれる下側搬送路151と共に上下動する検出体である遮光レバー143及び144が、下部フレーム141側から上側搬送路152を含む上部フレーム142の孔を介して突出している。また、上部フレーム142には、カード2がカード挿入口11から挿入されたことを検知する挿入検知レバー146と、カードが奥まで挿入されたことを検知するカード挿入完了検知レバー145とを有している。この挿入検知レバー146とカード挿入完了検知レバー145により、カード2がカードリーダ1内に挿入されているか否かを検知する(認識する)ことができる。
【0037】
図11は、
図10において上部フレーム142を取り外した状態の下部フレーム141を示す図である。下部フレーム141は、下側搬送路151を含み、下側搬送路151の上面には下側凹凸部155が設けられている。なお、この実施例では、下側凹凸部155は下側搬送路151とは別体構成としているが、
図7、
図8に示すように下側搬送路151と一体化した構成でも良い。下側凹凸部155は、読取部である磁気ヘッド121の後ろ側(奥側)に配備されており、押圧部により上方への押圧力が発生する。遮光レバー143及び144(上記遮光板160と同等の機能を有する)は、下側凹凸部155あるいは下側搬送路151に取り付けられ、下側凹凸部155の上下方向の移動に同期して(対応して)移動する。
【0038】
図12は、
図11における下部フレーム141の側面図である。(A)に示すように、遮光レバー143及び144は、下側凹凸部155と接続されており、下側凹凸部155の移動に同期して(対応して)上下に可動する。
【0039】
また、
図12の(B)に示すように、下側凹凸部155には、リンク用アーム147及び148が取り付けられて平行リンク構造を形成している。これにより、下側凹凸部155は平行状態で上下に移動可能となっている。リンク用アーム147および148には、それぞれトーションバネ171および172が取り付けられ、リンクアームに回動方向の力を付勢している。これより、下側凹凸部155はリンク用アームにより上方向に持ち上げられる力が作用する。つまり、下側凹凸部155は、上側凹凸部156と嵌合する状態を維持することになり、物体が存在しない場合にその間隔は小さくなる。なお、トーションバネの代りに、上下の凹凸部を嵌合させる力を発生するために他の部材(例えば、引っ張りバネで上下の凹凸部間を接続する構造)を使用しても良い。
【0040】
図12の(C)に示すように、何らかの物体(例えば、カード2)が挿入されると、下側凹凸部155はトーションバネ171及び172のバネ力に逆らって下方向に押されて下側凹凸部155が下降する。それに伴い、遮光レバー143及び144も下降する(図示省略)。平行リンク機構によって、下側凹凸部155上の端部に物体が存在した場合でも、下側凹凸部155は全体として平行を保ったまま下降する。この下降により下側凹凸部155と上側凹凸部156の間隔が開くので、その間隔の変化を検知することにより、物体の存在を検知することができる。そして、物体が検知された状態で、カード2が挿入されていない場合には、カード以外の何らかの異物が存在していると判断することができる。
【0041】
図13は、
図10において上部フレーム142をZ方向下側から見た図であり、下部フレーム141の下側凹凸部155に嵌合する上側凹凸部156を有している。
【0042】
図14は、遮光レバー143と144の上下の変位(Z方向の変位)によってON,OFFされる位置に取付けられた光センサ181と182が、プリント基板14に取り付けられた状態を示すものである。この図では、見やすくするために上部フレーム142は図示していない。光センサ181及び182は、いずれも発光部と受光部とから構成され、カード挿入待ち受け状態では、発光部と受光部の間に遮光レバー143及び144の上側先端部分が位置することによって、遮光状態(OFF)となっている(
図8の(A)に相当)。そして、カードや異物など何らかの物体が挿入されると、下側凹凸部155が押し下げられ、それに伴い遮光レバー143及び144も下がる。そのため、その先端部分が光センサ181及び182の発光部と受光部の間から外れて、光センサ181及び182が投光状態(ON)となり(
図8(B)に相当)、物体(カードや異物)が挿入されたことを検知することができる。
【0043】
なお、平行リンク機構(リンク用アーム147、148などで構成)を備えたことによって、下側凹凸部155が平行な状態を保ったまま上下動するので、光センサは原理的には1個で足りるが、異物の位置や形状、装置組み立て時の公差や経年劣化に伴うガタ等により、異物を正確に検知できなくなる可能性を考慮し、この実施例1ではカード搬送方向に沿って複数個(ここでは、光センサ181,182)の検知センサを設けている。この検知センサは、3個以上であっても良い。
【0044】
また、下側凹凸部155と上側凹凸部156は、全体もしくはその一部を金属製とすることによって、内部をヤスリ等で削ってスキマー等を設置するスペースを確保することを困難にし、そのような不正行為を防止することができる。
【0045】
以上説明した本発明の実施例1によれば、下側凹凸部と上側凹凸部を嵌合状態としておき、物体が挿入された場合に大きな間隔変化を生じさせることができるので、簡易な構成で確実にカードリーダの内部(読取部の後ろ側)に挿入され取り付けられた物体を検知することができる。そして、カードが挿入されていない状態で、物体の存在を検知した場合、異物が挿入されていると判断することが可能となる。例えば図示しない上位装置からのチェックコマンド等によって検知センサを動作させ、カードが装置内に存在し得ない状態(取引動作時以外等)で検知センサが上下の凹凸部間の間隔が開いている状態を検知した場合、スキマー等の異物が挿入されていると判断することができる。また、検知センサを常時動作させておき、カードが装置内に存在し得ない状態で検知センサが物体を検知する状態が発生した場合は、カードリーダ1の制御部(プリント基板14に配備)が自発的に異常検知(異物検知)を上位装置に報知(通知)することが可能である。また、異物が存在することを表示装置に表示させたり、ブザーなどにより警報音を発生させるようにしても良い。
【0046】
≪実施例2≫
次に、本発明の実施例2について、
図15により説明する。実施例2の基本的な構成はすでに説明した実施例1と同様であるので説明を省略し、ここでは実施例1と異なる構成の部分について説明する。
【0047】
図15は、実施例1における
図7に対応した図面であり、カード挿入口11の突出部12を正面から見た拡大模式図を示している。突出部12には、磁気ストライプのカード情報を読取る磁気ヘッド121が取り付けられている。
【0048】
この実施例2では、下側搬送路151とベース153とに、搬送路側の高さ調整部151Aとベース側の高さ調整部153Aとをそれぞれ設けている。その点が実施例1の場合と異なる。相対する高さ調整部151A、153Aによって、下側搬送路151の下方向への可動域が制限され、下側搬送路が最大限下降した状態で上側凹凸部156の下端と下側凹凸部155の上端との空隙(すなわち、カード挿入用隙間)がWdとなっている。
【0049】
ここで、カードの厚さを誤差も含めてWcとし、スキマー等の異物の最小厚をWsとすると、Wd<(Wd+Ws)となるようにすれば、スキマー等の異物が挿入された状態ではカードを挿入することができなくなるため、スキマーがカードリーダ内に取り付けられたことに気付かずにカードを挿入してカード情報が不正に読み取られることを防止することができる。
【0050】
この実施例2によれば、実施例1における効果を有するとともに、仮に、検知センサが故障(寿命)により正しく機能しない場合や、装置の運用としてスキマー検知機能を適用していない場合においても、カード情報の不正読取を防止することができる。
【0051】
なお、高さ調整部151A及び153Aは、それぞれ下側搬送路151及びベース153と一体成形とすることができる。また、高さ調整部151A及び153Aを、それぞれ下側搬送路151及びベース153から取り外し可能とすることによって、空隙Wdの高さを調整できるように構成してもよい。
【0052】
≪実施例3≫
次に、本発明の実施例3について、
図16を用いて説明する。
図16は、本発明の実施例3を示す図である。実施例3の基本的な構成はすでに説明した実施例1と同様であるのでそれらについての説明を省略し、ここでは実施例1と異なる構成の部分を中心に説明する。
【0053】
上記した実施例の構成においては、カード挿入時にカード2の裏面の磁気ストライプ21と下側凹凸部155とが接触する可能性がある。そのため、カード2の挿入と抜去が繰り返し行われることにより、カード2の磁気ストライプの部分が下側凹凸部155との接触によって削られ、長期間のカード使用により、磁気ストライプに記録されたカード情報の読取に支障をきたす(劣化する)可能性がある。これを回避するために、実施例3では下側凹凸部155の凹部が磁気ストライプの各トラックの磁気データの中心にあたるように配置して磁気ストライプに記録されたカード情報(磁気データ)の劣化を防ぐように構成した。
【0054】
図16は、この実施例3の磁気ヘッド121の具体的な構成を示しており、カード挿入口の方向から見た拡大模式図を示している。カード2は、裏面に磁気ストライプ21を備えている。この例では、磁気ストライプ21は、3個のトラック21A、21Bおよび21Cを備える。一方、カードリーダ側に設けられる磁気ヘッド121も、それに対応して3個の磁気ヘッド121A、121Bおよび121Cを有している。
【0055】
図16に示すように、下側凹凸部155の凹部が、カード2の磁気ストライプの3個のトラック21A~21Cのそれぞれ中央部となるように配置する。これにより、カード2の下面が下側凹凸部155と接触しても、カード2の磁気ストライプ21を構成する各トラック21A~21Cの部分は下側凹凸部155と接触しないので、摩耗による劣化を防ぐことができる。3個の磁気ヘッド121A~121Cは、各トラックの中央部付近を読み取る位置に設けているため、それ以外の部分に摩耗が生じたとしても、磁気データを良好に読み取ることが可能である。
【0056】
このように、本発明の実施例3によれば、実施例1における効果を有するとともに、カードの磁気ストライプの摩耗による劣化を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0057】
1…カードリーダ、2…カード、3…異物、11…カード挿入口、12…突出部、13…上部蓋、14…プリント基板、15…カード搬送路、16…光センサ、17…検知ガイド、121…磁気ヘッド、141…下部フレーム、142…上部フレーム、143…遮光レバー、144…遮光レバー、145…カード挿入完了検知レバー、146…挿入検知レバー、147…リンク用アーム、148…リンク用アーム、151…下側搬送路、152…上側搬送路、153…ベース、154…押圧部、155…下側凹凸部、156…上側凹凸部、160…遮光板、161…発光部、162…受光部、171…トーションバネ、172…トーションバネ、181…光センサ、182…光センサ、21A~21C…トラック、121A~121C…磁気ヘッド、151A…高さ調整部、153A…高さ調整部。