(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186326
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】情報処理装置および画像生成方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20221208BHJP
A63F 13/213 20140101ALI20221208BHJP
A63F 13/26 20140101ALI20221208BHJP
G06F 3/0346 20130101ALI20221208BHJP
【FI】
G06F3/01 510
A63F13/213
A63F13/26
G06F3/0346 426
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094484
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】310021766
【氏名又は名称】株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】南野 孝範
(72)【発明者】
【氏名】内田 真樹
【テーマコード(参考)】
5B087
5E555
【Fターム(参考)】
5B087AA02
5B087BC05
5B087BC32
5E555AA64
5E555BA02
5E555BA20
5E555BB02
5E555BB20
5E555BC04
5E555BE17
5E555CA42
5E555CB45
5E555CB47
5E555CC05
5E555DA05
5E555DA08
5E555DB53
5E555DC09
5E555EA22
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】撮影画像にもとづいて、ヘッドマウントディスプレイの位置または姿勢の少なくとも一方を高精度に推定するための技術を提供する。
【解決手段】推定処理部222は、ヘッドマウントディスプレイの周囲を撮影した画像にもとづいて、ヘッドマウントディスプレイの位置または姿勢の少なくとも一方を推定する処理を実施する。画像生成部230は、ヘッドマウントディスプレイとは異なるディスプレイ装置に表示する表示画像を生成する。画像生成部230は、静止画である絵柄を少なくとも一部に含む表示画像を生成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドマウントディスプレイの周囲を撮影した画像にもとづいて、前記ヘッドマウントディスプレイの位置または姿勢の少なくとも一方を推定する処理を実施する推定処理部と、
前記ヘッドマウントディスプレイとは異なるディスプレイ装置に表示する表示画像を生成する画像生成部と、を備えた情報処理装置であって、
前記画像生成部は、静止画である絵柄を少なくとも一部に含む表示画像を生成する、
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記画像生成部は、枠を構成する前記絵柄と、当該枠の内側に動画を含む表示画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記画像生成部は、静止画である前記絵柄を全面に含む表示画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記画像生成部は、静止画である前記絵柄をブロック画像として隅に含む表示画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記画像生成部は、静止画である前記絵柄を上下左右のいずれか一つの側、または複数の側に含む表示画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記推定処理部が推定処理を実施しているとき、前記画像生成部は、前記絵柄を含む表示画像を生成し、
前記推定処理部が推定処理を実施していないとき、前記画像生成部は、前記絵柄を含む表示画像を生成しない、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項7】
ユーザが頭部にヘッドマウントディスプレイを装着しているとき、前記画像生成部は、前記絵柄を含む表示画像を生成し、
ユーザが頭部にヘッドマウントディスプレイを装着していないとき、前記画像生成部は、前記絵柄を含む表示画像を生成しない、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記画像生成部による絵柄表示機能の有効または無効を設定する設定部を、さらに備える、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記推定処理部が推定処理に失敗したとき、前記設定部が、前記画像生成部による絵柄表示機能を有効にし、または前記画像生成部が、ヘッドマウントディスプレイに表示する表示画像であって、絵柄表示機能を有効にする選択肢を含む表示画像を生成する、
ことを特徴とする請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
ヘッドマウントディスプレイの周囲を撮影した画像にもとづいて、前記ヘッドマウントディスプレイの位置または姿勢の少なくとも一方を推定する処理を実施するステップと、
前記ヘッドマウントディスプレイとは異なるディスプレイ装置に表示する表示画像であって、静止画である絵柄を少なくとも一部に含む表示画像を生成するステップと、
を含む画像生成方法。
【請求項11】
コンピュータに、
ヘッドマウントディスプレイの周囲を撮影した画像にもとづいて、前記ヘッドマウントディスプレイの位置または姿勢の少なくとも一方を推定する処理を実施する機能と、
前記ヘッドマウントディスプレイとは異なるディスプレイ装置に表示する表示画像であって、静止画である絵柄を少なくとも一部に含む表示画像を生成する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイの周囲を撮影した画像にもとづいて、ヘッドマウントディスプレイの位置または姿勢の少なくとも一方を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザがヘッドマウントディスプレイ(以下「HMD」と呼ぶ。)を頭部に装着し、HMDに表示されたゲーム画像を見ながら、ゲームコントローラを操作してゲームをプレイすることが行われている。HMDのトラッキング処理を実施して、ユーザの頭部の動きにHMDに表示されるゲーム空間の映像を連動させることで、映像への没入感が向上し、ゲームのエンタテインメント性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HMDの位置および/または姿勢を推定する技術として、SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)が知られている。SLAMは、自己位置推定と環境地図作成とを同時に行う技術であり、HMDに搭載されたカメラで撮影された画像を用いて特徴点のトラッキングを行うことで、HMDの位置および/または姿勢を推定することが可能となる。
【0005】
特徴点のトラッキング処理において、HMDの近くに動画を表示しているテレビが存在し、且つカメラが撮影する画像にテレビが大きく含まれる場合、有効な特徴点を抽出することができないために、トラッキングロストが生じることがある。特に、HMDにゲーム画像を表示しつつ、テレビにもゲーム画像を表示するゲームシステムでは、HMDに搭載されたカメラが、テレビに表示されるゲーム画像を撮影することで、トラッキング精度が悪化することがある。
【0006】
そこで本発明は、HMDとは異なるディスプレイ装置が存在する環境下において、HMDの位置または姿勢の少なくとも一方を高精度に推定するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の情報処理装置は、ヘッドマウントディスプレイの周囲を撮影した画像にもとづいて、ヘッドマウントディスプレイの位置または姿勢の少なくとも一方を推定する処理を実施する推定処理部と、ヘッドマウントディスプレイとは異なるディスプレイ装置に表示する表示画像を生成する画像生成部とを備える。画像生成部は、静止画である絵柄を少なくとも一部に含む表示画像を生成する。
【0008】
本発明の別の態様の画像生成方法は、ヘッドマウントディスプレイの周囲を撮影した画像にもとづいて、ヘッドマウントディスプレイの位置または姿勢の少なくとも一方を推定する処理を実施するステップと、ヘッドマウントディスプレイとは異なるディスプレイ装置に表示する表示画像であって、静止画である絵柄を少なくとも一部に含む表示画像を生成するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例における情報処理システムの構成例を示す図である。
【
図4】情報処理装置の機能ブロックを示す図である。
【
図5】表示パネルに表示される表示画像の例を示す図である。
【
図6】(a)および(b)は撮像装置が撮影した画像の例を示す図である。
【
図7】出力装置に表示される画像の例を示す図である。
【
図8】絵柄表示機能のオンオフの設定画面の例を示す図である。
【
図9】表示パネルに表示される設定画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施例における情報処理システム1の構成例を示す。情報処理システム1は情報処理装置10と、記録装置11と、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)100と、ユーザが手指で操作する入力デバイス16と、画像および音声を出力する出力装置15とを備える。出力装置15は、HMD100とは異なるディスプレイ装置であって、据置型のテレビであってよい。情報処理装置10は、アクセスポイント(AP)17を介して、インターネットなどの外部のネットワーク2に接続される。AP17は無線アクセスポイントおよびルータの機能を有し、情報処理装置10はAP17とケーブルで接続してもよく、既知の無線通信プロトコルで接続してもよい。
【0011】
記録装置11は、システムソフトウェアや、ゲームソフトウェアなどのアプリケーションを記録する。情報処理装置10は、コンテンツサーバからネットワーク2経由で、ゲームソフトウェアを記録装置11にダウンロードしてよい。情報処理装置10はゲームプログラムを実行して、ゲームの画像データおよび音声データをHMD100に供給する。情報処理装置10とHMD100とは既知の無線通信プロトコルで接続されてもよく、またケーブルで接続されてもよい。
【0012】
HMD100は、ユーザが頭部に装着することによりその眼前に位置する表示パネルに画像を表示する表示装置である。HMD100は、左目用表示パネルに左目用の画像を、右目用表示パネルに右目用の画像を、それぞれ別個に表示する。これらの画像は左右の視点から見た視差画像を構成し、立体視を実現する。ユーザは光学レンズを通して表示パネルを見るため、情報処理装置10は、レンズによる光学歪みを補正した視差画像データをHMD100に供給する。
【0013】
HMD100を装着したユーザにとって出力装置15は必要ないが、出力装置15を用意することで、別のユーザが出力装置15の表示画像を見ることができる。情報処理装置10は、HMD100を装着したユーザが見ている画像と同じ画像を出力装置15に表示してもよいが、別の画像を表示してもよい。たとえばHMDを装着したユーザと、別のユーザとが一緒にゲームをプレイするような場合、出力装置15からは、当該別のユーザのキャラクタ視点からのゲーム画像が表示されてもよい。
【0014】
情報処理装置10と入力デバイス16とは既知の無線通信プロトコルで接続されてよく、またケーブルで接続されてもよい。入力デバイス16は操作ボタンなどの複数の操作部材を備え、ユーザは入力デバイス16を把持しながら、手指で操作部材を操作する。情報処理装置10がゲームプログラムを実行する際、入力デバイス16はゲームコントローラとして利用される。
【0015】
HMD100には、複数の撮像装置14が搭載される。複数の撮像装置14は、HMD100の前面の異なる位置に取り付けられる。撮像装置14はCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなど、一般的なデジタルビデオカメラで利用されている可視光センサを有してよい。複数の撮像装置14は同期したタイミングで、ユーザの前方を所定の周期(たとえば60フレーム/秒)で撮影し、撮影画像を情報処理装置10に送信する。
【0016】
情報処理装置10は、HMD100の周囲を撮影した画像にもとづいて、HMD100の位置または姿勢の少なくとも一方を推定する機能を有する。以下では、情報処理装置10が、HMD100の位置および姿勢の双方を推定する機能を有するものとして説明するが、位置または姿勢の少なくとも一方の推定機能を有していればよい。
【0017】
情報処理装置10は、時系列で撮影した撮影画像を用いて、任意の時刻(t)におけるHMD100の位置および姿勢を、時刻(t)の直前の時刻(t-1)におけるHMD100の位置および姿勢から推定する。情報処理装置10は、HMD100の位置を、実空間に定義した座標系における位置座標として導出し、HMD100の姿勢を、実空間に定義した座標系における姿勢情報として導出してよい。なお情報処理装置10は、HMD100に設けられた姿勢センサが検出したセンサデータをさらに利用して、HMD100の位置情報および姿勢情報を高精度に導出してよい。
【0018】
図2は、HMD100の外観形状の例を示す。HMD100は、出力機構部102および装着機構部104から構成される。装着機構部104は、ユーザが被ることにより頭部を一周してHMD100を頭部に固定する装着バンド106を含む。装着バンド106はユーザの頭囲に合わせて長さの調節が可能な素材または構造をもつ。
【0019】
出力機構部102は、HMD100を装着したユーザの左右の目を覆う形状の筐体108を含み、内部には装着時に目に正対する表示パネルを備える。表示パネルは液晶パネルや有機ELパネルなどであってよい。筐体108内部にはさらに、表示パネルとユーザの目との間に位置し、ユーザの視野角を拡大する左右一対の光学レンズが備えられる。HMD100はさらに、ユーザの耳に対応する位置にスピーカーやイヤホンを備えてよく、外付けのヘッドホンが接続されるように構成されてもよい。
【0020】
筐体108の前方側外面には、複数の撮像装置14a、14b、14c、14dが備えられる。筐体108の正面方向を基準として、撮像装置14aは、カメラ光軸が右斜め上を向くように前方側外面の右上隅に取り付けられ、撮像装置14bは、カメラ光軸が左斜め上を向くように前方側外面の左上隅に取り付けられる。撮像装置14cは、カメラ光軸が正面方向を向くように前方側外面の右下隅に取り付けられ、撮像装置14dは、カメラ光軸が正面方向を向くように前方側外面の左下隅に取り付けられ、撮像装置14cと撮像装置14dは、ステレオカメラを構成する。
【0021】
HMD100は、撮像装置14が撮影した撮影画像、姿勢センサが検出したセンサデータを情報処理装置10に送信し、また情報処理装置10で生成されたゲーム画像データおよびゲーム音声データを受信する。
【0022】
図3は、HMD100の機能ブロックを示す。制御部120は、画像データ、音声データ、センサデータなどの各種データや、命令を処理して出力するメインプロセッサである。記憶部122は、制御部120が処理するデータや命令などを一時的に記憶する。姿勢センサ124は、HMD100の動きに関するセンサデータを取得する。姿勢センサ124は、少なくとも3軸の加速度センサおよび3軸のジャイロセンサを含み、所定の周期(たとえば1600Hz)で各軸成分の値(センサデータ)を検出する。
【0023】
通信制御部128は、ネットワークアダプタまたはアンテナを介して、有線または無線通信により、制御部120から出力されるデータを外部の情報処理装置10に送信する。また通信制御部128は、情報処理装置10からデータを受信し、制御部120に出力する。
【0024】
制御部120は、ゲーム画像データやゲーム音声データを情報処理装置10から受け取ると、表示パネル130に供給して表示させ、また音声出力部132に供給して音声出力させる。表示パネル130は、左目用表示パネル130aと右目用表示パネル130bから構成され、各表示パネルに一対の視差画像が表示される。また制御部120は、姿勢センサ124が取得したセンサデータ、マイク126が取得した音声データ、撮像装置14が取得した撮影画像を、通信制御部128から情報処理装置10に送信させる。
【0025】
図4は、情報処理装置10の機能ブロックを示す。情報処理装置10は、処理部200および通信部202を備え、処理部200は、取得部210、設定部220、推定処理部222、ゲーム実行部224および画像生成部230を有する。取得部210は、撮影画像取得部212、センサデータ取得部214および操作情報取得部216を有し、画像生成部230は、HMD100に表示する表示画像を生成するHMD画像生成部232と、出力装置15に表示する表示画像を生成するTV画像生成部234とを有する。
【0026】
通信部202は、入力デバイス16から送信される操作情報を受信し、取得部210に供給する。また通信部202は、HMD100から送信される撮影画像およびセンサデータを受信し、取得部210に供給する。
【0027】
これらの構成はハードウェア的には、任意のプロセッサ、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである
【0028】
撮影画像取得部212は、HMD100の周囲を撮影した画像を取得し、推定処理部222に供給する。推定処理部222は、撮影画像にもとづいて、HMD100の位置および姿勢を推定する処理を実施し、推定結果である位置情報および姿勢情報をゲーム実行部224に供給する。センサデータ取得部214は、HMD100の姿勢センサ124が検出したセンサデータを取得し、推定処理部222に供給する。推定処理部222はセンサデータを利用して、HMD100の位置情報および姿勢情報の推定精度を高めることが好ましい。
【0029】
ゲームプレイの開始前、HMD100を装着したユーザは、自身の周囲の環境を撮像装置14で撮影して登録する初期設定を実施する。初期設定時、ユーザは、プレイ中の安全を確保するために、自身がプレイするエリア(ユーザが動くことのできるエリア)を画定する。ゲームプレイ中、ユーザがプレイエリアから出そうになると、情報処理装置10は、ユーザに対して、プレイエリアから出そうであることを警告する。ゲームプレイ中、初期設定時に登録された周囲環境の画像は定期的に更新されて、最新の環境地図が作成されてよい。
【0030】
推定処理部222は、HMD100の撮像装置14によって撮影された画像を時系列で取得し、各画像をグリッド分割して区間ごとに特徴点を検出する。推定処理部222は、時刻(t-1)に撮影された画像と、時刻(t)に撮影された画像との間で特徴点の対応付けを行い、2つの画像における特徴点の移動量(dx,dy)を抽出する。たとえば推定処理部222は、特徴点の動きを予測しつつ、周辺検索で特徴点のブロックマッチングを行って、特徴点のトラッキング(追跡)処理を実施してよい。なお推定処理部222は、この手法以外にも、既知の手法を用いて特徴点のトラッキング処理を実施してよい。推定処理部222は、トラッキング処理を高精度に実施することで、HMD100の位置および姿勢を高精度に推定することが可能となる。HMD100の位置情報および姿勢情報はゲーム実行部224に供給されて、ゲームに対する入力として利用される。
【0031】
操作情報取得部216は、入力デバイス16から送信される操作情報を取得し、ゲーム実行部224に供給する。ゲーム実行部224は、入力デバイス16の操作情報、HMD100の位置情報および姿勢情報にもとづいて、ゲームプログラムを実行して、仮想空間においてゲームキャラクタを動かす演算処理を行う。画像生成部230は、レンダリング処理などを実行するGPU(Graphics Processing Unit)を含み、ゲーム画像を生成する。
【0032】
画像生成部230において、HMD画像生成部232は、HMD100の表示パネル130に表示する表示画像を生成し、TV画像生成部234は、出力装置15に表示する表示画像を生成する。なお図示していないが、情報処理装置10は、ゲーム音声を生成する音声生成部を備えて構成される。
【0033】
図5は、表示パネル130に表示される表示画像の例を示す。HMD画像生成部232は、ゲーム画像を生成して、HMD100の表示パネル130に供給する。上記したように表示パネル130は、左目用表示パネル130aと右目用表示パネル130bを有しており、HMD画像生成部232は、左目用のゲーム画像と右目用のゲーム画像をそれぞれ生成して、左目用表示パネル130aと右目用表示パネル130bに供給する。左目用表示パネル130aおよび右目用表示パネル130bは、それぞれゲーム画像を表示する。
【0034】
TV画像生成部234は、HMD画像生成部232が生成する画像と同じゲーム画像を生成して、出力装置15に供給する。なお情報処理システム1において、HMD100を装着したユーザは、出力装置15に表示されるゲーム画像を見ないため、TV画像生成部234は、別のユーザのために、異なるゲーム画像を生成して、出力装置15に供給してもよい。
【0035】
HMD100を頭部に装着したユーザが、出力装置15が設置されている方向を向いてゲームをプレイしている場合、出力装置15の画面サイズが大きく、且つユーザと出力装置15との距離が近ければ、撮像装置14が撮影する画像に含まれる出力装置15の領域は大きくなる。このとき推定処理部222は、出力装置15に表示されているゲーム画像から多くの特徴点を抽出することになり、過去に抽出した特徴点と対応付けができないために、トラッキングロストが生じる可能性が高くなる。
【0036】
図6(a)は、撮像装置14cが撮影した画像の例を示し、
図6(b)は、撮像装置14dが撮影した画像の例を示す。撮像装置14cと撮像装置14dとはステレオカメラを構成しているため、両者の撮影画像は水平方向に僅かにずれた画像となる。
図6に示されるように、撮影画像には、出力装置15に表示されたゲーム画像が大きく含まれている。
【0037】
図6(a)および(b)に示す撮影画像において、出力装置15に表示されているゲーム画像の占める割合は非常に大きい。ゲーム画像は刻々と変化するため、推定処理部222は、撮影画像から、有効な特徴点を抽出することが困難となり、HMD100の位置および姿勢の推定処理を失敗することがある。
【0038】
そこで実施例の情報処理装置10において、TV画像生成部234が、静止画である絵柄を少なくとも一部に含む表示画像を生成して、推定処理部222が、トラッキングに有効な特徴点を抽出できるようにする。
【0039】
図7は、出力装置15に表示される画像の例を示す。TV画像生成部234は、静止画である絵柄70を一部に含む表示画像を生成する。この例でTV画像生成部234は、枠を構成する絵柄70と、枠の内側にゲーム動画72を含む表示画像を生成し、出力装置15に表示する。矩形の枠を構成する絵柄70が静止画として表示されることで、推定処理部222は、出力装置15を撮影した画像に含まれる絵柄70から、トラッキングに有効な特徴点を抽出することが可能となる。
【0040】
TV画像生成部234は、絵柄70により構成される枠の内側に、画像サイズを縮小したゲーム動画72を表示してよいが、画像サイズを縮小せずに、絵柄70により構成される矩形の枠をゲーム動画72に重畳した表示画像を生成してもよい。なおゲーム動画72の視認性を損なわないために、枠が占める領域は、出力装置15の画面サイズの50%以下となるように定められることが好ましい。なおTV画像生成部234は、絵柄70を、枠として表示するのではなく、たとえば出力装置15の画面4隅に、ブロックとして表示してもよい。つまりTV画像生成部234は、絵柄70をブロック画像として隅に含む表示画像を生成してもよい。またTV画像生成部234は、絵柄70を上下左右のいずれか一つの側、または複数の側に含む表示画像を生成して、絵柄70が、出力装置15の画面の上下左右のいずれか一つの側、または複数の側に表示されてもよい。いずれの場合においても、絵柄70は、推定処理部222によるトラッキング処理をサポートするために、静止画として表示される。なおTV画像生成部234は、表示画像にゲーム動画72を含めなくてもよく、たとえば静止画である絵柄70を全面に含む表示画像を生成してもよい。
【0041】
推定処理部222は、撮影画像に含まれるコーナー部(角部)を特徴点として抽出するため、絵柄70は、コーナーを多く含む模様で構成されることが好ましい。なおトラッキング精度を高めるために、絵柄70は、近い位置で同じパターンを繰り返さないように構成されることが好ましい。
【0042】
設定部220は、TV画像生成部234による絵柄表示機能のオンまたはオフを設定し、絵柄表示機能がオン設定されている場合の当該機能の有効または無効を設定する。設定部220が絵柄表示機能の有効を設定すると、TV画像生成部234は、静止画である絵柄70を少なくとも一部に含む表示画像を生成し、出力装置15に表示する。設定部220が絵柄表示機能の無効を設定すると、TV画像生成部234は、絵柄70を含む表示画像を生成しない。
【0043】
設定部220は、推定処理部222がHMD100の位置および姿勢の推定処理を実施しているとき、TV画像生成部234による絵柄表示機能の有効を設定し、推定処理を実施していないとき、TV画像生成部234による絵柄表示機能の無効を設定してよい。したがって推定処理部222が推定処理を実施しているとき、TV画像生成部234は、絵柄70を含む表示画像を生成して、推定処理部222によるトラッキング処理をサポートする。一方、推定処理部222が推定処理を実施していないとき、推定処理部222によるトラッキング処理をサポートする必要がないため、TV画像生成部234は、絵柄70を含む表示画像を生成しない。このときTV画像生成部234は、ゲーム動画72を全面に含む表示画像を生成して、出力装置15に表示してよい。
【0044】
設定部220は、ユーザが頭部にHMD100を装着しているとき、TV画像生成部234による絵柄表示機能の有効を設定し、ユーザが頭部にHMD100を装着していないとき、TV画像生成部234による絵柄表示機能の無効を設定してよい。装着の有無は、たとえばHMD100に設けられた近接センサ(図示せず)の検出結果により判断される。したがってユーザが頭部にHMD100を装着しているとき、TV画像生成部234は、絵柄70を含む表示画像を生成して、推定処理部222によるトラッキング処理をサポートする。一方、ユーザが頭部にHMD100を装着していないとき、推定処理部222によるトラッキング処理をサポートする必要がないため、TV画像生成部234は、絵柄70を含む表示画像を生成しない。このときTV画像生成部234は、ゲーム動画72を全面に含む表示画像を生成して、出力装置15に表示してよい。
【0045】
なお設定部220は、推定処理部222がHMD100の位置および姿勢の推定処理を実施しており、且つユーザが頭部にHMD100を装着していることを条件として、TV画像生成部234による絵柄表示機能の有効を設定してよい。
【0046】
推定処理部222は、撮影画像において絵柄70で構成される枠を認識すると、当該枠の内側に配置されるゲーム動画72から特徴点を抽出しないように、トラッキング処理を制御してよい。なお初期設定時に、出力装置15に絵柄70で構成される枠を表示し、枠の画像を登録している場合には、推定処理部222は、ゲームプレイ中に、当該枠の位置における特徴点を使わないように、トラッキング処理を制御してよい。
【0047】
TV画像生成部234による絵柄表示機能のオンまたはオフは、初期設定時に、ユーザにより設定されてよい。
図8は、絵柄表示機能のオンオフの設定画面の例を示す。この設定画面は、初期設定時に表示パネル130に表示される。ユーザが絵柄表示機能をオン設定すると、設定部220は、推定処理部222がHMD100の位置および姿勢の推定処理を実施しており、且つユーザが頭部にHMD100を装着していることを条件として、TV画像生成部234による絵柄表示機能を有効とする。これによりTV画像生成部234は、絵柄70を含む表示画像を生成するようになる。一方、ユーザが絵柄表示機能をオフ設定すると、設定部220は、TV画像生成部234による絵柄表示機能を無効とする。
【0048】
なお絵柄表示機能がオフ設定されている場合、推定処理部222は、出力装置15の全面に表示されたゲーム画像を撮影した画像を用いてトラッキング処理することで、HMD100の位置および姿勢の推定処理に失敗することがある。推定処理に失敗したとき、設定部220は、TV画像生成部234による絵柄表示機能をオン設定に自動で変更し、絵柄表示機能を有効としてもよい。
【0049】
なお設定部220が絵柄表示機能を自動でオン設定に変更するのではなく、HMD画像生成部232が、絵柄表示機能を有効にする選択肢を含む表示画像を生成して、表示パネル130に表示してよい。
【0050】
図9は、ゲームプレイ中に表示パネル130に表示される設定画面の例を示す。ユーザが「補助表示機能をONする」の項目を選択すると、設定部220は、TV画像生成部234による絵柄表示機能をオン設定に変更し、絵柄表示機能を有効とする。これによりトラッキング精度が改善されることになる。
【0051】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。上記実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。実施例では推定処理を情報処理装置10が実施したが、情報処理装置10の一部または全ての機能がHMD100に設けられて、HMD100が推定処理を実施してもよい。このときHMD100は、情報処理装置として機能する。
【0052】
実施例では撮像装置14がHMD100に取り付けられているが、撮像装置14は、HMD100の周囲の空間を撮影できればよく、HMD100以外の別の位置に取り付けられてもよい。
【0053】
変形例では、設定部220が、絵柄表示機能の有効または無効を、動的に設定してもよい。たとえば設定部220は、出力装置15とHMD100の距離にもとづいて、絵柄表示機能の有効または無効を設定する。具体的に設定部220は、出力装置15とHMD100の距離が所定長以下であれば、絵柄表示機能の有効を設定し、所定長より長ければ、絵柄表示機能の無効を設定してもよい。
【0054】
設定部220は、撮影画像に含まれる出力装置15の領域が占める割合にもとづいて、絵柄表示機能の有効または無効を設定してもよい。具体的に設定部220は、出力装置15の領域が占める割合が所定値以上であれば、絵柄表示機能の有効を設定し、所定値未満であれば、絵柄表示機能の無効を設定してもよい。
【0055】
なおプレイエリアを設定する際、出力装置15の画面サイズと、出力装置15とHMD100との距離を検出して、画面サイズが大きく、且つ距離が近ければ、設定部220は、絵柄表示機能をオン設定することをユーザに勧めてもよい。画面サイズは、HDMI(登録商標)によって検出してもよい。画面サイズが大きく且つ距離が近いことは、撮像装置14の撮影画像に含まれる出力装置15の領域が占める割合によって判断してもよい。
【0056】
また設定部220は、出力装置15の画面サイズに応じて、表示する絵柄70を選択してもよい。具体的に、画面サイズが小さければ、大きい模様が含まれる絵柄70が選択され、画面サイズが大きければ、小さな模様が含まれる絵柄70が選択されてよい。なお設定部220は、撮影画像に含まれる出力装置15の領域が占める割合にもとづいて、絵柄70を選択してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1・・・情報処理システム、10・・・情報処理装置、14・・・撮像装置、15・・・出力装置、70・・・絵柄、72・・・ゲーム動画、100・・・HMD、200・・・処理部、202・・・通信部、210・・・取得部、212・・・撮影画像取得部、214・・・センサデータ取得部、216・・・操作情報取得部、220・・・設定部、222・・・推定処理部、224・・・ゲーム実行部、230・・・画像生成部、232・・・HMD画像生成部、234・・・TV画像生成部。