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特開2022-186350合成繊維用処理剤、繊維用第1処理剤、繊維用第2処理剤、合成繊維用処理剤の水性液、繊維の処理方法、及び繊維
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186350
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】合成繊維用処理剤、繊維用第1処理剤、繊維用第2処理剤、合成繊維用処理剤の水性液、繊維の処理方法、及び繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 15/53 20060101AFI20221208BHJP
D06M 13/292 20060101ALI20221208BHJP
D06M 101/32 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
D06M15/53
D06M13/292
D06M101:32
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094517
(22)【出願日】2021-06-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-04
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高山 義弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智八
(72)【発明者】
【氏名】大海 卓滋
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA04
4L033AA07
4L033AB01
4L033AC09
4L033BA14
4L033BA39
4L033BA46
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】低泡性、乳化安定性、及び防腐性を向上させた合成繊維用処理剤等を提供する。
【解決手段】本発明は、分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させた含窒素ノニオン界面活性剤(A)を含有する合成繊維用処理剤であって、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)が下記のものである。(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させた含窒素ノニオン界面活性剤(A)を含有する合成繊維用処理剤であって、
前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)が下記のものであることを特徴とする合成繊維用処理剤。
(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
【請求項2】
前記有機アミンが、分子中に炭素数10以上20以下の炭化水素基を有するものである請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)が、全鎖長を100モル%とすると、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%超の部分が、0≦エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド<5(モル比率)である請求項1又は2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
更に、下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
非含窒素ノニオン界面活性剤(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項5】
前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)を1質量部以上80質量部以下、及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を20質量部以上99質量部以下の割合で含有する請求項4に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
更に、下記のアニオン界面活性剤(C)を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項7】
更に、下記のアニオン界面活性剤(C)を含有し、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)、及び前記アニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)と前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)との含有割合の合計が10質量部以上90質量部以下、及び前記アニオン界面活性剤(C)が10質量部以上90質量部以下の割合で含有する請求項4に記載の合成繊維用処理剤。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項8】
前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する繊維用第1処理剤、及び下記のアニオン界面活性剤(C)を含有する繊維用第2処理剤を含む請求項4に記載の合成繊維用処理剤。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項9】
短繊維に適用される請求項1~8のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項10】
ポリエステル短繊維に適用される請求項1~8のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項11】
紡績糸製造に適用される請求項1~10のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項12】
下記のアニオン界面活性剤(G)を含有する繊維用第2処理剤と併用され、下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有することを特徴とする繊維用第1処理剤。
含窒素ノニオン界面活性剤(E):分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させたものであり、含窒素ノニオン界面活性剤(E)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
非含窒素ノニオン界面活性剤(F):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
アニオン界面活性剤(G):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項13】
前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)を20質量部以上99質量部以下、及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有する請求項12に記載の繊維用第1処理剤。
【請求項14】
下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有する繊維用第1処理剤と併用され、下記のアニオン界面活性剤(G)を含有することを特徴とする繊維用第2処理剤。
含窒素ノニオン界面活性剤(E):分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させたものであり、含窒素ノニオン界面活性剤(E)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
非含窒素ノニオン界面活性剤(F):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
アニオン界面活性剤(G):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤、及び水を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項16】
請求項12又は13に記載の繊維用第1処理剤と、請求項14に記載の繊維用第2処理剤とを、含むことを特徴とする合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項17】
前記繊維用第1処理剤と前記繊維用第2処理剤との含有割合の比が、不揮発分の質量比として前記繊維用第1処理剤/前記繊維用第2処理剤=1/9~9/1であることを特徴とする請求項16に記載の合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項18】
水に、請求項12又は13に記載の繊維用第1処理剤と、請求項14に記載の繊維用第2処理剤とを添加し得られた合成繊維用処理剤の水性液を繊維に付与することを特徴とする繊維の処理方法。
【請求項19】
請求項12又は13に記載の繊維用第1処理剤と、請求項14に記載の繊維用第2処理剤とが、付着していることを特徴とする繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の含窒素ノニオン界面活性剤を含有する合成繊維用処理剤、繊維用第1処理剤、繊維用第2処理剤、合成繊維用処理剤の水性液、繊維の処理方法、及び繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸延伸工程、仕上げ工程等において、例えば繊維の摩擦低減、帯電防止性、集束性等の観点から、繊維の表面に繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
【0003】
従来、特許文献1に開示の繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、グリセライド誘導体を含有し、且つリン元素の含有量が0.5質量%以下であることを特徴とする合成短繊維用処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、低泡性、乳化安定性、及び防腐性の更なる向上が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、合成繊維用処理剤において、所定の含窒素ノニオン界面活性剤を含有する構成が好適であることを見出した。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の合成繊維用処理剤では、分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させた含窒素ノニオン界面活性剤(A)を含有する合成繊維用処理剤であって、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)が下記のものであることを要旨とする。
【0007】
(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
【0008】
前記合成繊維用処理剤において、前記有機アミンが、分子中に炭素数10以上20以下の炭化水素基を有するものであってもよい。
前記合成繊維用処理剤において、前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)が、全鎖長を100モル%とすると、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%超の部分が、0≦エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド<5(モル比率)であってもよい。
【0009】
前記合成繊維用処理剤において、更に、下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有してもよい。
非含窒素ノニオン界面活性剤(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
【0010】
前記合成繊維用処理剤において、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)を1質量部以上80質量部以下、及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を20質量部以上99質量部以下の割合で含有してもよい。
【0011】
前記合成繊維用処理剤において、更に、下記のアニオン界面活性剤(C)を含有してもよい。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0012】
前記合成繊維用処理剤において、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)、及び前記アニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)と前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)との含有割合の合計が10質量部以上90質量部以下、及び前記アニオン界面活性剤(C)が10質量部以上90質量部以下の割合で含有してもよい。
【0013】
前記合成繊維用処理剤において、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する繊維用第1処理剤、及び下記のアニオン界面活性剤(C)を含有する繊維用第2処理剤を含んでもよい。
【0014】
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0015】
前記合成繊維用処理剤において、短繊維に適用されてもよい。
前記合成繊維用処理剤において、ポリエステル短繊維に適用されてもよい。
前記合成繊維用処理剤において、紡績糸製造に適用されてもよい。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維用第1処理剤では、下記のアニオン界面活性剤(G)を含有する繊維用第2処理剤と併用され、下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有することを要旨とする。
【0017】
含窒素ノニオン界面活性剤(E):分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させたものであり、含窒素ノニオン界面活性剤(E)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
【0018】
非含窒素ノニオン界面活性剤(F):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
【0019】
アニオン界面活性剤(G):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0020】
前記繊維用第1処理剤において、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)を20質量部以上99質量部以下、及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有してもよい。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維用第2処理剤では、下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有する繊維用第1処理剤と併用され、下記のアニオン界面活性剤(G)を含有することを要旨とする。
【0022】
含窒素ノニオン界面活性剤(E):分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させたものであり、含窒素ノニオン界面活性剤(E)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
【0023】
非含窒素ノニオン界面活性剤(F):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
【0024】
アニオン界面活性剤(G):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0025】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用処理剤の水性液では、前記合成繊維用処理剤、及び水を含有することを要旨とする。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用処理剤の水性液では、前記繊維用第1処理剤と、前記繊維用第2処理剤とを含んでもよい。
【0026】
前記合成繊維用処理剤の水性液において、前記繊維用第1処理剤と前記繊維用第2処理剤との含有割合の比が、不揮発分の質量比として前記繊維用第1処理剤/前記繊維用第2処理剤=1/9~9/1であってもよい。
【0027】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維の処理方法では、水に、前記繊維用第1処理剤と、前記繊維用第2処理剤とを添加し得られた合成繊維用処理剤の水性液を繊維に付与することを要旨とする。
【0028】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維では、前記繊維用第1処理剤と、前記繊維用第2処理剤とが、付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば低泡性、乳化安定性、及び防腐性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1実施形態>
以下、本発明の合成繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、下記に示される含窒素ノニオン界面活性剤(A)を含有する。
【0031】
(含窒素ノニオン界面活性剤(A))
含窒素ノニオン界面活性剤(A)は、分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させたものである。さらに含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加して形成されたものである。且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のものである。かかる化合物により、低泡性、乳化安定性、及び防腐性を向上させる。
【0032】
含窒素ノニオン界面活性剤(A)としては、炭素数8以上22以下の炭化水素基を1つ有する1級アミンに(ポリ)オキシアルキレン基(X)を2つ有する3級アミン化合物、炭素数8以上22以下の炭化水素基を2つ有する2級アミンに(ポリ)オキシアルキレン基(X)を1つ有する3級アミン化合物、炭素数8以上22以下の炭化水素基を1つ有する1級アミンに(ポリ)オキシアルキレン基(X)を1つ有する2級アミン化合物のいずれであってもよい。これらの中で製造容易性の観点から炭素数8以上22以下の炭化水素基を1つ有する1級アミンに(ポリ)オキシアルキレン基(X)を2つ有する3級アミン化合物が好ましい。
【0033】
炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミンを構成する炭化水素基としては、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。また、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐鎖を有する炭化水素基であってもよい。
【0034】
直鎖の飽和炭化水素基の具体例としては、例えばオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
【0035】
分岐鎖構造を有する飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基、イソドコシル基等が挙げられる。
【0036】
不飽和炭化水素基としては、不飽和炭素結合として二重結合を1つ有するアルケニル基であっても、二重結合を2つ以上有するアルカジエニル基、アルカトリエニル基等であってもよい。また、不飽和炭素結合として三重結合を1つ有するアルキニル基であっても、三重結合を2つ以上有するアルカジイニル基等であってもよい。炭化水素基中に二重結合を1つ有する直鎖の不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばオクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、ドコセニル基等が挙げられる。
【0037】
炭化水素基中に二重結合を1つ有する分岐鎖構造を有する不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基、イソドコセニル基等が挙げられる。
【0038】
これらの中で有機アミンが、分子中に炭素数10以上20以下の炭化水素基を有するものが好ましい。炭素数10以上の場合、低泡性をより向上させる。また炭素数20以下の場合、処理剤が水溶液として調製された際、乳化安定性をより向上させる。
【0039】
炭素数8以上22以下の炭化水素基を1つ有する1級アミンの具体例としては、例えばオクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、イコシルアミン、ドコシルアミン、オレイルアミン等が挙げられる。
【0040】
含窒素ノニオン界面活性剤(A)を構成する(ポリ)オキシアルキレン基(X)としては炭素数2のエチレンオキサイド及び炭素数3のプロピレンオキサイドを付加して形成される。エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数の合計の下限は、2モル以上、好ましくは4モル以上である。かかる付加モル数の合計の上限は、100モル以下、好ましくは50モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対するエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのモル数を示す。エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0041】
(ポリ)オキシアルキレン基(X)中におけるエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合は、50%以上のものである。かかる構成により、特に乳化安定性を向上させる。
【0042】
前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)が、全鎖長を100モル%とすると、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%超の部分が、0≦エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド<5(モル比率)であることが好ましい。かかる構成の場合、低泡性をより向上させる。
【0043】
前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)が、全鎖長を100モル%とすると、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%以下の部分が、0≦プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド≦2(モル比率)であることが好ましい。
【0044】
前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)が、その末端部分がプロピレンオキサイドが付加されていることが好ましい。
前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)は、製造容易性の観点よりランダム付加又は最終付加工程がプロピレンオキサイドのブロック付加であることが好ましい。更には、最終付加工程がプロピレンオキサイドのブロック付加であることがより好ましい。
【0045】
これらの含窒素ノニオン界面活性剤(A)は、一種類の含窒素ノニオン界面活性剤(A)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の含窒素ノニオン界面活性剤(A)を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0046】
(非含窒素ノニオン界面活性剤(B))
処理剤は、更に下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有してもよい。非含窒素ノニオン界面活性剤(B)により処理剤が付与された繊維の濡れ性を向上させる。
【0047】
非含窒素ノニオン界面活性剤(B)は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つである。
【0048】
非含窒素ノニオン界面活性剤(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルを構成するアルキル基としては、特に制限はなく、直鎖状のアルキル基であってもよいし、分岐アルキル基であってもよい。
【0049】
アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルキル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
【0050】
非含窒素ノニオン界面活性剤(B)において、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステルを構成するアルケニル基としては、特に制限はなく、直鎖状のアルケニル基であってもよいし、分岐アルケニル基であってもよい。
【0051】
アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルケニル基の具体例としては、例えばブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、イソヘキセニル基、イソヘプテニル基、イソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
【0052】
非含窒素ノニオン界面活性剤(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルを構成するオキシアルキレン鎖の具体例としては、例えばオキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖等が挙げられる。オキシアルキレン鎖を形成するアルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、好ましくは200モル以下、より好ましくは150モル以下、より好ましくは100モルである。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中におけるアルコール化合物又はカルボン酸化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0053】
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸の具体例としては、例えば(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキル脂肪酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキル脂肪酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニル脂肪酸、(4)レシノイン酸、ヒマシ油脂肪酸、硬化ヒマシ油脂肪酸等のヒドロキシ脂肪酸等が挙げられる。ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの具体例としては、ポリオキシアルキレンソルビタントリオレアート、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0054】
これらの非含窒素ノニオン界面活性剤(B)は、一種類の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0055】
処理剤中において、含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量部としたとき、含窒素ノニオン界面活性剤(A)を1質量部以上80質量部以下、及び非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を20質量部以上99質量部以下の割合で含有することが好ましい。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。含窒素ノニオン界面活性剤(A)の含有割合が1質量部以上の場合、低泡性及び防腐性をより向上させる。非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有割合が20質量部以上の場合、濡れ性をより向上させる。
【0056】
(アニオン界面活性剤(C))
処理剤において、更に下記のアニオン界面活性剤(C)を含有してもよい。アニオン界面活性剤(C)により、処理剤が付与された繊維がカードを通過させる際のカード通過性を向上させる。
【0057】
アニオン界面活性剤(C)は、分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである。
【0058】
有機リン酸エステルを構成する脂肪族アルコールは、公知のものが適宜挙げられ、飽和脂肪族アルコールであってもよいし、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
【0059】
炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールの具体例としては、例えば(1)ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール等が挙げられる。
【0060】
炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加することにより形成されたオキシアルキレン鎖を有する有機リン酸エステルが用いられてもよい。オキシアルキレン鎖を形成するアルキレンオキサイドの具体例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、好ましくは50モル以下、より好ましくは40モル以下、さらに好ましくは30モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0061】
有機リン酸エステルを構成するリン酸は、特に制限はなく、オルトリン酸であってもよいし、二リン酸等のポリリン酸であってもよい。
有機リン酸エステルの塩が適用される場合、塩としては、例えばリン酸エステルアミン塩、リン酸エステル金属塩等が挙げられる。
【0062】
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0063】
アミン塩を構成するアミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0064】
アニオン界面活性剤(C)は、繊維の工程通過性及び製剤安定性の観点より有機リン酸エステルのアルカリ金属塩が好ましく、更には、有機リン酸エステルのカリウム塩がより好ましい。
【0065】
これらのアニオン界面活性剤(C)は、一種類のアニオン界面活性剤(C)を単独で使用してもよいし、又は二種以上のアニオン界面活性剤(C)を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0066】
処理剤中において、含窒素ノニオン界面活性剤(A)、非含窒素ノニオン界面活性剤(B)、及びアニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、含窒素ノニオン界面活性剤(A)と非含窒素ノニオン界面活性剤(B)との含有割合の合計が10質量部以上90質量部以下、及びアニオン界面活性剤(C)が10質量部以上90質量部以下の割合で含有することが好ましい。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。アニオン界面活性剤(C)が10質量部以上の場合、カード通過性をより向上させる。アニオン界面活性剤(C)が90質量部以下の場合、乳化安定性及び濡れ性をより向上させる。
【0067】
(保存形態)
処理剤は、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)の他、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)及び前記アニオン界面活性剤(C)を含有する場合、下記の繊維用第1処理剤及び繊維用第2処理剤として構成されることが好ましい。繊維用第1処理剤は、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する。繊維用第2処理剤は、前記アニオン界面活性剤(C)を含有する。かかる構成により保存時において製剤安定性を向上させる。
【0068】
上記第1実施形態の処理剤の作用及び効果について説明する。
(1-1)上記第1実施形態の処理剤では、所定の含窒素ノニオン界面活性剤(A)を含有する。したがって、低泡性、乳化安定性、及び防腐性を向上できる。それにより、特に乳化液の泡由来のスカムの発生、乳化不良によって生じた析出物由来のスカムの発生、さらには腐敗物由来のスカムの発生を抑制できる。よって、生産性、品質性を向上できる。また、新たな処理剤又は再利用される処理剤がフィルタでろ過されて使用される場合、フィルタの目詰まりを抑制し、生産効率を向上させる。
【0069】
特にアミンを出発物質とした含窒素ノニオン界面活性剤を使用することにより処理剤の腐敗を抑制できる。また、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドからオキシアルキレン基が形成されることにより、起泡の発生を抑制できる。また、更にエチレンオキサイドをプロピレンオキサイドよりも多く付加させることにより乳化安定性を向上できる。
【0070】
(1-2)また、処理剤は、消泡剤を使用しなくとも、消泡性を向上できる。特に、シリコーン系消泡剤を使用しない場合、繊維に対する処理剤の各機能をより向上できる。
(1-3)処理剤が、含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する繊維用第1処理剤、及びアニオン界面活性剤(C)を含有する繊維用第2処理剤から構成される場合、保存時における製剤安定性を向上させる。
【0071】
<第2実施形態>
次に、本発明の繊維用第1処理剤(以下、第1処理剤という)を具体化した第2実施形態を説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0072】
本実施形態の第1処理剤では、非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有する。非含窒素ノニオン界面活性剤(F)は、第1実施形態において説明した非含窒素ノニオン界面活性剤(B)と同一成分である。含窒素ノニオン界面活性剤(E)は、第1実施形態において説明した含窒素ノニオン界面活性剤(A)と同一成分である。第1処理剤は、アニオン界面活性剤(G)を含有する繊維用第2処理剤(以下、第2処理剤という)と併用される。アニオン界面活性剤(G)は、第1実施形態において説明したアニオン界面活性剤(C)と同一である。
【0073】
第1処理剤において、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)を20質量部以上99質量部以下、及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる構成により、第1処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0074】
本実施形態の第1処理剤の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(2-1)本実施形態の第1処理剤では、非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有し、アニオン界面活性剤(G)を含有する第2処理剤と併用される。したがって、第1処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、第2処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。
【0075】
<第3実施形態>
次に、本発明の第2処理剤を具体化した第3実施形態を説明する。以下、第1,2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0076】
本実施形態の第2処理剤は、上述したアニオン界面活性剤(G)を含有する。そして、上述した非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有する第1処理剤と併用される。
【0077】
本実施形態の第2処理剤の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1,2実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(3-1)本実施形態の第2処理剤では、アニオン界面活性剤(G)を含有する。そして、非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有する第1処理剤と併用される。したがって、第2処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、第1処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。
【0078】
<第4実施形態>
次に、本発明の繊維の処理方法を具体化した第4実施形態を説明する。
本実施形態の繊維の処理方法では、第1実施形態の処理剤及び水を含有する処理剤の水性液(以下、水性液ともいう)を繊維に付与することを特徴とする。
【0079】
より具体的には、水性液を、例えば紡糸又は延伸工程等からなる紡績糸製造工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。水性液の調製方法は、下記の水性液の調製方法を採用できる。
【0080】
水性液は、水に第2実施形態の第1処理剤と、第3実施形態の第2処理剤とを添加して調製することが好ましい。第1処理剤と第2処理剤とを併用する形態は、第1処理剤と第2処理剤の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な紡糸延伸性を得るための処理剤又は水性液を調製することが容易になる。それにより安定した繊維製造が可能となる。第1処理剤と第2処理剤との含有割合の比は、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=1/9~9/1であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。繊維の処理方法は、上記のように得られた水性液を、例えば紡糸又は延伸工程等からなる紡績糸製造工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。尚、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0081】
水性液の調製方法は、例えば水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上10質量%以下にする方法が用いられる。
水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加する方法は、公知の方法を適宜採用できるが、下記の工程1及び下記の工程2を経ることが好ましい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。
【0082】
工程1は、第1の水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超10質量%以下の処理剤の水性液の母液を調製する工程である。第1処理剤及び第2処理剤の第1の水への添加順は、特に限定されず、先に第1処理剤を水に添加し、次に第2処理剤を水に添加してもよく、先に第2処理剤を水に添加し、次に第1処理剤を水に添加してもよい。また、第1処理剤及び第2処理剤を同時に水に添加してもよい。また、希釈する水の温度は、特に限定されない。エマルジョンの安定性の向上の観点から、先に第2処理剤を第1の水に添加し、次に第1処理剤を第1の水に添加することが好ましい。
【0083】
さらに、工程1は、第1の水の全量のうち20~70質量%の水を60~95℃に加温し、第1処理剤及び第2処理剤を添加した後、40℃以下に調整された残り30~80質量%の第1の水を添加する工程を経ることが好ましい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。この場合も第1処理剤及び第2処理剤の水への添加順は、特に限定されず、先に第1処理剤を水に添加し、次に第2処理剤を水に添加してもよく、先に第2処理剤を水に添加し、次に第1処理剤を水に添加してもよい。また、第1処理剤及び第2処理剤を同時に水に添加してもよい。エマルジョンの安定性の向上の観点から、先に第2処理剤を第1の水に添加し、次に第1処理剤を第1の水に添加することが好ましい。
【0084】
また、工程1は、第1の水の全量のうち20~70質量%の水を60~95℃に加温し、第2処理剤を添加した後、40℃以下に調整された残り30~80質量%の第1の水を添加した後、最後に第1処理剤を添加する工程を経てもよい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。
【0085】
工程2は、工程1で調製した処理剤の水性液の母液に第2の水を添加し、不揮発分濃度が0.01質量%以上2質量%以下の水性液を調製する工程である。
水性液が付与される繊維の種類は、特に限定されない。繊維に付与された水性液により、最終的に処理剤が繊維表面を覆い、摩擦特性を向上させるからである。水性液が付与される繊維としては、合成繊維が挙げられる。合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。これらの中で製造工程において、特に繊維間の摩擦特性の付与が必要なポリエステル又はポリオレフィンに適用されることが好ましい。
【0086】
繊維の用途は、特に限定されず、例えば短繊維、紡績糸、不織布等が挙げられる。短繊維及び長繊維のいずれの繊維用途としても適用できるが、短繊維に適用されることが好ましい。短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましい。これらの中で、ポリエステル短繊維に適用されることが好ましい。
【0087】
水性液を繊維に付着させる割合に特に制限はないが、水性液を繊維に対し、最終的に固形分が0.1~3質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、各成分による効能を有効に発揮できる。また、水性液を付着させる方法は、特に制限はなく、繊維の種類、形態、用途等により公知の方法、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等を採用できる。
【0088】
水性液が付与された繊維は、公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。乾燥処理により水等の溶媒が揮発され、第1処理剤及び第2処理剤中に含有される成分が付着している繊維が得られる。
【0089】
本実施形態の繊維の処理方法の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1~3実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(4-1)本実施形態の繊維の処理方法では、水性液を、例えば紡糸又は延伸工程等の紡績糸製造工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。特に、水に第2実施形態の第1処理剤と、第3実施形態の第2処理剤とを添加して調製した水性液の場合、乳化安定性に優れる水性液が得られる。したがって、各成分による短繊維、紡績糸、不織布等に対する効能を有効に発揮できる。
【0090】
(4-2)本実施形態の繊維の処理方法における水性液の調製方法は、例えば水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上10質量%以下にする方法が用いられる。したがって、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性を向上できる。また、予め調製された第1処理剤と第2処理剤を水に混合することにより、繊維付与形態である水性液を調製できるため、使用時に試薬から調合する方法に比べて水性液を簡易に調製できる。
【0091】
(4-3)また、水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超10質量%以下の水性液の母液を調製する工程を経る場合、エマルションの安定性をより向上できる。それにより、成分の繊維への均一な付着性を低下させることがなく、各成分による効能を有効に発揮できる。
【0092】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の各処理剤又は水性液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤又は水性液の品質保持のため、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機酸、上記以外の界面活性剤等の通常処理剤等に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【0093】
・上記第1処理剤は、本願発明の効果を阻害しない範囲で、溶媒と混合されて保存してもよい。溶媒は、安全性、生産性の観点から、水が好ましい。第1処理剤と溶媒との配合比率は、第1処理剤が70質量%以上100質量%未満、溶媒が0質量%を超えて30質量%以下の範囲が好ましい。
【実施例0094】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0095】
試験区分1(処理剤の調製)
処理剤は、表3に示される含窒素ノニオン界面活性剤(A)、非含窒素ノニオン界面活性剤(B)、アニオン界面活性剤(C)、及び添加剤(X)を使用し、下記調製方法により調製した。
【0096】
・含窒素ノニオン界面活性剤(A)
含窒素ノニオン界面活性剤(A)は、表1に示されるA-1~23、a-1~10を使用した。含窒素ノニオン界面活性剤(A)を構成する有機アミンの炭化水素基の種類、(ポリ)オキシアルキレン基(X)を形成するエチレンオキサイド(以下、EOという)の付加モル数、プロピレンオキサイド(以下、POという)の付加モル数、EO及びPOの総付加モル数に対するEOの付加モル数の割合、原料である有機アミンに付加させるアルキレンオキサイドの付加順序と付加方法と付加モル数、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%以下の部分におけるPO/EO(モル比率)、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%超の部分のEO/PO(モル比率)を、表1の「有機アミンの炭化水素基の種類」欄、「EO付加モル数」欄、「PO付加モル数」欄、「EOの付加モル数の割合」欄、「付加順序」欄、「50モル%以下の部分」欄、「50モル%超の部分」欄にそれぞれ示す。なお、有機アミンに付加させるアルキレンオキサイドの付加方法で特に記載のないものはブロック付加を示す。
【0097】
・非含窒素ノニオン界面活性剤(B)
非含窒素ノニオン界面活性剤(B)は、表2に示されるB-1~26を使用した。非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の分岐度、EOとPOの付加形態、種類を、表2の「分岐度」欄、「付加形態」欄、「非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の種類」欄にそれぞれ示す。なお、分岐度は、1H-NMRを測定し、0.8-1.0ppmに検出されるピークをメチル基、1.2-1.4ppmに検出されるピークをメチレン基とした際、メチレン基/メチル基の面積比を分岐度とした。付加形態は、2成分あるものは「/」で区切りそれぞれ表記する。
【0098】
(実施例1-1)
表3に示されるように、含窒素ノニオン界面活性剤(A)として含窒素ノニオン界面活性剤(A-1)25部(%)、非含窒素ノニオン界面活性剤(B)としてポリオキシエチレン(5モル(EOの付加モル数を示す(以下同じ)))デシルエーテル(B-1)20部(%)及び(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(r+s=20、rはオキシエチレン単位の数、sはオキシプロピレン単位の数)硬化ひまし油(B-20)5部(%)、アニオン界面活性剤(C)としてラウリルリン酸エステルカリウム塩(C-1)50部(%)、添加剤(X)としてドデシルスルホン酸ナトリウム塩(X-1)を含む実施例1-1の処理剤を調製した。なお、添加剤(X)としてドデシルスルホン酸ナトリウム塩(X-1)は、含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有量の合計を100%とした場合、1%を処理剤中に配合した。
【0099】
(実施例1-2~1-42、比較例1-1~1-15)
実施例1-2~1-42、比較例1-1~1-15の処理剤は、実施例1-1の処理剤と同様にして含窒素ノニオン界面活性剤(A)、非含窒素ノニオン界面活性剤(B)、アニオン界面活性剤(C)、及び添加剤(X)を表3に示した割合で含むように調製した。
【0100】
含窒素ノニオン界面活性剤(A)の種類と含有量、非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の種類と含有量、アニオン界面活性剤(C)の種類と含有量を、表3の「含窒素ノニオン界面活性剤(A)」欄、「非含窒素ノニオン界面活性剤(B)」欄、「アニオン界面活性剤(C)」欄にそれぞれ示す。また、添加剤(X)の種類と、含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有量の合計を100%とした場合の含有量を、表3の「添加剤(X)」欄にそれぞれ示す。
【0101】
【0102】
【0103】
【表3】
表3に記載するアニオン界面活性剤(C)、添加剤(X)、及び後述する表4のアニオン界面活性剤(G)の詳細は以下のとおりである。
【0104】
(アニオン界面活性剤(C)(G))
C-1:ラウリルリン酸エステルカリウム塩
C-2:セチルリン酸エステルカリウム塩
C-3:ポリオキシエチレン(n=10)セチルリン酸エステルカリウム塩
C-4:オクタデシルリン酸エステルカリウム塩
(添加剤(X))
X-1:ドデシルスルホン酸ナトリウム塩
X-2:オレイン酸カリウム塩
X-3:酢酸カリウム塩
X-4:乳酸
試験区分2(低泡性)
各実施例及び比較例の処理剤を約70℃の温水で希釈し、0.25%の乳化液を調製する。調製した0.25%乳化液を100mL有栓メスシリンダー(Cherry社製、栓を除く高さ26.5cm)へ20mL入れる。メスシリンダーの高さにより泡の生成量が異なるため26.5±0.1cmの高さの有栓メスシリンダーでの測定が好ましい。有栓メスシリンダーの蓋を閉め、上下30回/10秒間の速さで激しく振とうする。振とう後に静置させ、静置開始から10秒後の泡高さH1[cm]と5分後の泡立ち高さH2[cm]を測定する。上記の試験において、H1が抑泡性を、H2が泡残り性を示し、それぞれ以下の基準で評価する。
【0105】
(抑泡性)
◎:H1≦10.0cm
○:10.0cm<H1≦12.0cm
×:H1>12.0cm
(泡残り性)
◎:H2≦7.0cm
○:7.0cm<H2≦8.5cm
×:H2>8.5cm
上記抑泡性及び泡残り性を基に以下の基準で低泡性を評価した。結果を表3の「低泡性」欄に示す。
【0106】
(低泡性)
◎◎(優れる):抑泡性及び泡残り性がいずれも◎の場合
◎(良好):抑泡性及び泡残り性のどちらかが◎であるが、もう一方は○の場合
○(可):抑泡性及び泡残り性がいずれも○の場合
×(不可):抑泡性及び泡残り性がいずれも、もしくは一方が×の場合
試験区分3(防腐性)
各実施例及び比較例の処理剤を約70℃の蒸留水で希釈し、0.25%の乳化液を調製する。乳化液に対して微生物数が107個/mL以上の細菌懸濁液を0.2%添加し、滅菌済み割り箸で撹拌する。この際、同じ割り箸は異なる乳化液の撹拌に使用しない。37℃の恒温条件下で48時間培養し、培養後の乳化液に微生物測定器具(三愛石油社製、サンアイバイオチェッカーTTC)を浸漬させ、培地面に乳化液を付与する。乳化液を付与させた微生物測定器具を30℃の恒温条件下で48時間培養させる。培養後に微生物測定器具の培地面上の菌数を読み取り、以下の基準で評価する。結果を表3の「防腐性」欄に示す。
【0107】
(防腐性)
◎◎(優れる):微生物数が105個/mL未満
◎(良好):微生物数が105個/mL以上、106個/mL未満
○(可):微生物数が106個/mL以上、107個/mL未満
×(不可):微生物数が107個/mL以上
試験区分4(乳化安定性)
各実施例及び比較例の処理剤を約70℃の温水で希釈し、5%の乳化液を調製する。調製した5%乳化液を50℃で24時間静置し、その時の乳化液の外観を目視で確認し、以下の基準で評価する。結果を表3の「乳化安定性」欄に示す。
【0108】
(乳化安定性)
◎◎(優れる):白濁、析出物の発生、下層部に沈殿が見られない場合
◎(良好):微量の析出物の発生が見られるが、撹拌棒を用いて手動で撹拌することにより解消される場合
○(可):析出物の発生、下層部に沈殿が見られるが、撹拌棒を用いて手動で撹拌することにより解消される場合
×(不可):白濁、析出物の発生、下層部に沈殿が見られる場合
試験区分5(濡れ性)
各実施例及び比較例の処理剤を約70℃の温水で希釈し、0.25%の乳化液を調製する。処理剤が付与されていない不織布に、調製した0.25%の乳化液を5μL滴下する。不織布に処理剤が完全に浸透するまでの時間を記録し、以下の基準で評価する。結果を表3の「濡れ性」欄に示す。
【0109】
(濡れ性)
◎◎(優れる):浸透までにかかる時間が500秒未満
◎(良好):浸透までにかかる時間が500秒以上、1000秒未満
○(可):浸透までにかかる時間が1000秒以上、1500秒未満
×(不可):浸透までにかかる時間が1500秒以上
試験区分6(カード通過性)
処理剤が付与されていないポリエステル綿(1.3de×38mm)に、付着量がポリエステル綿に対して0.15%となるように各実施例及び比較例の処理剤を付着させる。処理剤を付着させたポリエステル綿を80℃の乾燥機内で2時間乾燥させる。乾燥させたポリエステル綿を20℃、40%RHの条件下で24時間温調させ、同様に20℃、40%RHの条件下でカード機内へポリエステル綿を投入する。カード通過量を、(ポリエステル綿の紡出量[kg])/(ポリエステル綿の投入量[kg])と定義し、以下の基準でカード通過性を評価する。結果を表3の「カード通過性」欄に示す。
【0110】
(カード通過性)
◎◎(優れる):カード通過量が0.80以上
◎(良好):カード通過量が0.80未満、0.65以上
○(可):カード通過量が0.65未満、0.50以上
×(不可):カード通過量が0.50未満
試験区分7(第1処理剤の調製)
(第1処理剤(I-1))
表4に示されるように、含窒素ノニオン界面活性剤(E)として含窒素ノニオン界面活性剤(A-1)50部(%)、非含窒素ノニオン界面活性剤(F)としてポリオキシエチレン(5モル)デシルエーテル(B-1)40部(%)及び(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(r+s=20)硬化ひまし油(B-20)10部(%)、添加剤(X)としてドデシルスルホン酸ナトリウム塩(X-1)を含む第1処理剤(I-1)を調製した。なお、添加剤(X)としてドデシルスルホン酸ナトリウム塩(X-1)は、含窒素ノニオン界面活性剤(E)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(F)の含有量の合計を100%とした場合、1%を第1処理剤中に配合した。
【0111】
(第1処理剤I-2~42、第1処理剤i-1~15)
第1処理剤I-2~42、第1処理剤i-1~15は、第1処理剤(I-1)と同様にして含窒素ノニオン界面活性剤(E)、非含窒素ノニオン界面活性剤(F)、及び添加剤(X)を表4に示した割合で含むように調製した。
【0112】
含窒素ノニオン界面活性剤(E)の種類と含有量、非含窒素ノニオン界面活性剤(F)の種類と含有量を、表4の「含窒素ノニオン界面活性剤(E)」欄、「非含窒素ノニオン界面活性剤(F)」欄にそれぞれ示す。また、添加剤(X)の種類と、含窒素ノニオン界面活性剤(E)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(F)の含有量の合計を100%とした場合の含有量を、表4の「添加剤(X)」欄にそれぞれ示す。
【0113】
【表4】
試験区分8(第2処理剤の調製)
(第2処理剤(II-1))
第2処理剤(II-1)は、表5に示されるアニオン界面活性剤(G)としてアニオン界面活性剤(C-1)100部(%)を含むようにした。
【0114】
(第2処理剤II-2~10)
第2処理剤II-2~10は、表5に示されるアニオン界面活性剤(G)を表5に示した割合で含むように調製した。アニオン界面活性剤(G)の種類と含有量を、表5の「アニオン界面活性剤(G)」欄にそれぞれ示す。
【0115】
【表5】
試験区分9(製剤安定性の評価)
上記第1処理剤を、25℃にて1週間保管した。1週間経過後の外観を観察し、下記の基準に従って評価した。第2処理剤は、水で処理剤の濃度を40%としたものを第2処理剤の製剤とし、25℃にて1週間保管した。1週間経過後の外観を観察し、下記の基準に従って評価した。結果を表4,5の「製剤安定性」欄に示す。
【0116】
・製剤安定性の評価基準(第1剤及び第2剤)
○(可):分離及び増粘が起きていない場合
×(不可):分離又は増粘が起きている場合
試験区分10(第1処理剤と第2処理剤から処理剤の調製)
(実施例2-1)
表6に示される第1処理剤(I-1)50部、第2処理剤(II-1)50部、及び水を混合して実施例2-1の処理剤の水性液を調製した。
【0117】
(実施例2-2~2-42、比較例2-1~2-15)
実施例2-1と同様にして、表6に示される第1処理剤と第2処理剤、及び実施例2-1と同じ割合の水とを混合して各例の処理剤の水性液を調製した。第1処理剤の種類と含有比率、第2処理剤の種類と含有比率を、表6の「第1処理剤」欄、「第2処理剤」欄にそれぞれ示す。
【0118】
得られた各例の処理剤を用いて、実施例1-1と同様に低泡性、乳化安定性、防腐性、濡れ性、カード通過性について評価した。結果を表6の「低泡性」欄、「乳化安定性」欄、「防腐性」欄、「濡れ性」欄、「カード通過性」欄にそれぞれ示す。
【0119】
【表6】
本発明の処理剤は、低泡性、乳化安定性、及び防腐性を向上できる。また処理剤が付与された繊維は、濡れ性、カード通過性を向上できる。なお、各例の処理剤をポリオレフィンとしてポリプロピレン繊維にも適用できることを確認している。
【手続補正書】
【提出日】2021-10-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させた含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する合成繊維用処理剤(アルキレンオキシド共重合体を50重量%以上と、R-N((AO)
m
H)((AO)
n
H)(R:炭素数6~22のアルキル基、A:炭素数2~4のアルキレン基、m及びn:1~10の整数であってm+nが2~20の整数)を0.1~10重量%含有するポリアミド系合成繊維用処理剤を除く)であって、
前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)が下記のものであることを特徴とする合成繊維用処理剤。
(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
非含窒素ノニオン界面活性剤(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項2】
分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させた含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び下記のアニオン界面活性剤(C)を含有する合成繊維用処理剤(アルキレンオキシド共重合体を50重量%以上と、R-N((AO)
m
H)((AO)
n
H)(R:炭素数6~22のアルキル基、A:炭素数2~4のアルキレン基、m及びn:1~10の整数であってm+nが2~20の整数)を0.1~10重量%含有するポリアミド系合成繊維用処理剤を除く)であって、
前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)が下記のものであることを特徴とする合成繊維用処理剤。
(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項3】
分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させた含窒素ノニオン界面活性剤(A)を含有する合成繊維用処理剤(アルキレンオキシド共重合体を50重量%以上と、R-N((AO)
m
H)((AO)
n
H)(R:炭素数6~22のアルキル基、A:炭素数2~4のアルキレン基、m及びn:1~10の整数であってm+nが2~20の整数)を0.1~10重量%含有するポリアミド系合成繊維用処理剤を除く)であって、
前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)が下記のものであり、短繊維に又は紡績糸製造に適用されることを特徴とする合成繊維用処理剤。
(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
【請求項4】
前記有機アミンが、分子中に炭素数10以上20以下の炭化水素基を有するものである請求項1~3のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)が、全鎖長を100モル%とすると、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%超の部分が、0≦エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド<5(モル比率)である請求項1~4のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
更に、下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する請求項2又は3に記載の合成繊維用処理剤。
非含窒素ノニオン界面活性剤(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
【請求項7】
前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)を1質量部以上80質量部以下、及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を20質量部以上99質量部以下の割合で含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項8】
更に、下記のアニオン界面活性剤(C)を含有する請求項1又は3に記載の合成繊維用処理剤。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項9】
更に、下記のアニオン界面活性剤(C)を含有し、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)、及び前記アニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)と前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)との含有割合の合計が10質量部以上90質量部以下、及び前記アニオン界面活性剤(C)が10質量部以上90質量部以下の割合で含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項10】
前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する繊維用第1処理剤、及び下記のアニオン界面活性剤(C)を含有する繊維用第2処理剤を含む請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項11】
短繊維に適用される請求項1又は2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項12】
ポリエステル短繊維に適用される請求項1~10のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項13】
紡績糸製造に適用される請求項1又は2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項14】
下記のアニオン界面活性剤(G)を含有する繊維用第2処理剤と併用され、下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有することを特徴とする繊維用第1処理剤。
含窒素ノニオン界面活性剤(E):分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させたものであり、含窒素ノニオン界面活性剤(E)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
非含窒素ノニオン界面活性剤(F):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
アニオン界面活性剤(G):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項15】
前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)を20質量部以上99質量部以下、及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有する請求項14に記載の繊維用第1処理剤。
【請求項16】
下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有する繊維用第1処理剤と併用され、下記のアニオン界面活性剤(G)を含有することを特徴とする繊維用第2処理剤。
含窒素ノニオン界面活性剤(E):分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させたものであり、含窒素ノニオン界面活性剤(E)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
非含窒素ノニオン界面活性剤(F):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
アニオン界面活性剤(G):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤、及び水を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項18】
請求項14又は15に記載の繊維用第1処理剤と、請求項16に記載の繊維用第2処理剤とを、含むことを特徴とする合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項19】
前記繊維用第1処理剤と前記繊維用第2処理剤との含有割合の比が、不揮発分の質量比として前記繊維用第1処理剤/前記繊維用第2処理剤=1/9~9/1であることを特徴とする請求項18に記載の合成繊維用処理剤の水性液。
【請求項20】
水に、請求項14又は15に記載の繊維用第1処理剤と、請求項16に記載の繊維用第2処理剤とを添加し得られた合成繊維用処理剤の水性液を繊維に付与することを特徴とする繊維の処理方法。
【請求項21】
請求項14又は15に記載の繊維用第1処理剤と、請求項16に記載の繊維用第2処理剤とが、付着していることを特徴とする繊維。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の含窒素ノニオン界面活性剤を含有する合成繊維用処理剤、繊維用第1処理剤、繊維用第2処理剤、合成繊維用処理剤の水性液、繊維の処理方法、及び繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸延伸工程、仕上げ工程等において、例えば繊維の摩擦低減、帯電防止性、集束性等の観点から、繊維の表面に繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
【0003】
従来、特許文献1に開示の繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、グリセライド誘導体を含有し、且つリン元素の含有量が0.5質量%以下であることを特徴とする合成短繊維用処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、低泡性、乳化安定性、及び防腐性の更なる向上が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、合成繊維用処理剤において、所定の含窒素ノニオン界面活性剤を含有する構成が好適であることを見出した。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の合成繊維用処理剤では、分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させた含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する合成繊維用処理剤(アルキレンオキシド共重合体を50重量%以上と、R-N((AO)
m
H)((AO)
n
H)(R:炭素数6~22のアルキル基、A:炭素数2~4のアルキレン基、m及びn:1~10の整数であってm+nが2~20の整数)を0.1~10重量%含有するポリアミド系合成繊維用処理剤を除く)であって、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)が下記のものであることを要旨とする。
【0007】
(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
非含窒素ノニオン界面活性剤(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
【0008】
本発明の別の態様の合成繊維用処理剤では、分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させた含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び下記のアニオン界面活性剤(C)を含有する合成繊維用処理剤(アルキレンオキシド共重合体を50重量%以上と、R-N((AO)
m
H)((AO)
n
H)(R:炭素数6~22のアルキル基、A:炭素数2~4のアルキレン基、m及びn:1~10の整数であってm+nが2~20の整数)を0.1~10重量%含有するポリアミド系合成繊維用処理剤を除く)であって、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)が下記のものであることを要旨とする。
(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
本発明の別の態様の合成繊維用処理剤では、分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させた含窒素ノニオン界面活性剤(A)を含有する合成繊維用処理剤(アルキレンオキシド共重合体を50重量%以上と、R-N((AO)
m
H)((AO)
n
H)(R:炭素数6~22のアルキル基、A:炭素数2~4のアルキレン基、m及びn:1~10の整数であってm+nが2~20の整数)を0.1~10重量%含有するポリアミド系合成繊維用処理剤を除く)であって、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)が下記のものであり、短繊維に又は紡績糸製造に適用されることを要旨とする。
(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
前記合成繊維用処理剤において、前記有機アミンが、分子中に炭素数10以上20以下の炭化水素基を有するものであってもよい。
前記合成繊維用処理剤において、前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)が、全鎖長を100モル%とすると、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%超の部分が、0≦エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド<5(モル比率)であってもよい。
【0009】
前記合成繊維用処理剤において、更に、下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有してもよい。
非含窒素ノニオン界面活性剤(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
【0010】
前記合成繊維用処理剤において、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)を1質量部以上80質量部以下、及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を20質量部以上99質量部以下の割合で含有してもよい。
【0011】
前記合成繊維用処理剤において、更に、下記のアニオン界面活性剤(C)を含有してもよい。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0012】
前記合成繊維用処理剤において、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)、及び前記アニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)と前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)との含有割合の合計が10質量部以上90質量部以下、及び前記アニオン界面活性剤(C)が10質量部以上90質量部以下の割合で含有してもよい。
【0013】
前記合成繊維用処理剤において、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する繊維用第1処理剤、及び下記のアニオン界面活性剤(C)を含有する繊維用第2処理剤を含んでもよい。
【0014】
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0015】
前記合成繊維用処理剤において、短繊維に適用されてもよい。
前記合成繊維用処理剤において、ポリエステル短繊維に適用されてもよい。
前記合成繊維用処理剤において、紡績糸製造に適用されてもよい。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維用第1処理剤では、下記のアニオン界面活性剤(G)を含有する繊維用第2処理剤と併用され、下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有することを要旨とする。
【0017】
含窒素ノニオン界面活性剤(E):分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させたものであり、含窒素ノニオン界面活性剤(E)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
【0018】
非含窒素ノニオン界面活性剤(F):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
【0019】
アニオン界面活性剤(G):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0020】
前記繊維用第1処理剤において、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)を20質量部以上99質量部以下、及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有してもよい。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維用第2処理剤では、下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有する繊維用第1処理剤と併用され、下記のアニオン界面活性剤(G)を含有することを要旨とする。
【0022】
含窒素ノニオン界面活性剤(E):分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させたものであり、含窒素ノニオン界面活性剤(E)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
【0023】
非含窒素ノニオン界面活性剤(F):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
【0024】
アニオン界面活性剤(G):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0025】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用処理剤の水性液では、前記合成繊維用処理剤、及び水を含有することを要旨とする。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の合成繊維用処理剤の水性液では、前記繊維用第1処理剤と、前記繊維用第2処理剤とを含んでもよい。
【0026】
前記合成繊維用処理剤の水性液において、前記繊維用第1処理剤と前記繊維用第2処理剤との含有割合の比が、不揮発分の質量比として前記繊維用第1処理剤/前記繊維用第2処理剤=1/9~9/1であってもよい。
【0027】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維の処理方法では、水に、前記繊維用第1処理剤と、前記繊維用第2処理剤とを添加し得られた合成繊維用処理剤の水性液を繊維に付与することを要旨とする。
【0028】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維では、前記繊維用第1処理剤と、前記繊維用第2処理剤とが、付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば低泡性、乳化安定性、及び防腐性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1実施形態>
以下、本発明の合成繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、下記に示される含窒素ノニオン界面活性剤(A)を含有する。また、本発明の処理剤は、アルキレンオキシド共重合体を50重量%以上と、R-N((AO)
m
H)((AO)
n
H)(R:炭素数6~22のアルキル基、A:炭素数2~4のアルキレン基、m及びn:1~10の整数であってm+nが2~20の整数)を0.1~10重量%含有するポリアミド系合成繊維用処理剤を除くものである。また、本発明の処理剤は、後述する非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含むものであるか、後述するアニオン界面活性剤(C)を含むものであるか、短繊維に又は紡績糸製造に適用されるものである。
【0031】
(含窒素ノニオン界面活性剤(A))
含窒素ノニオン界面活性剤(A)は、分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させたものである。さらに含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを付加して形成されたものである。且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のものである。かかる化合物により、低泡性、乳化安定性、及び防腐性を向上させる。
【0032】
含窒素ノニオン界面活性剤(A)としては、炭素数8以上22以下の炭化水素基を1つ有する1級アミンに(ポリ)オキシアルキレン基(X)を2つ有する3級アミン化合物、炭素数8以上22以下の炭化水素基を2つ有する2級アミンに(ポリ)オキシアルキレン基(X)を1つ有する3級アミン化合物、炭素数8以上22以下の炭化水素基を1つ有する1級アミンに(ポリ)オキシアルキレン基(X)を1つ有する2級アミン化合物のいずれであってもよい。これらの中で製造容易性の観点から炭素数8以上22以下の炭化水素基を1つ有する1級アミンに(ポリ)オキシアルキレン基(X)を2つ有する3級アミン化合物が好ましい。
【0033】
炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミンを構成する炭化水素基としては、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。また、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐鎖を有する炭化水素基であってもよい。
【0034】
直鎖の飽和炭化水素基の具体例としては、例えばオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
【0035】
分岐鎖構造を有する飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基、イソドコシル基等が挙げられる。
【0036】
不飽和炭化水素基としては、不飽和炭素結合として二重結合を1つ有するアルケニル基であっても、二重結合を2つ以上有するアルカジエニル基、アルカトリエニル基等であってもよい。また、不飽和炭素結合として三重結合を1つ有するアルキニル基であっても、三重結合を2つ以上有するアルカジイニル基等であってもよい。炭化水素基中に二重結合を1つ有する直鎖の不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばオクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、ドコセニル基等が挙げられる。
【0037】
炭化水素基中に二重結合を1つ有する分岐鎖構造を有する不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基、イソドコセニル基等が挙げられる。
【0038】
これらの中で有機アミンが、分子中に炭素数10以上20以下の炭化水素基を有するものが好ましい。炭素数10以上の場合、低泡性をより向上させる。また炭素数20以下の場合、処理剤が水溶液として調製された際、乳化安定性をより向上させる。
【0039】
炭素数8以上22以下の炭化水素基を1つ有する1級アミンの具体例としては、例えばオクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、イコシルアミン、ドコシルアミン、オレイルアミン等が挙げられる。
【0040】
含窒素ノニオン界面活性剤(A)を構成する(ポリ)オキシアルキレン基(X)としては炭素数2のエチレンオキサイド及び炭素数3のプロピレンオキサイドを付加して形成される。エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数の合計の下限は、2モル以上、好ましくは4モル以上である。かかる付加モル数の合計の上限は、100モル以下、好ましくは50モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対するエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのモル数を示す。エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0041】
(ポリ)オキシアルキレン基(X)中におけるエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合は、50%以上のものである。かかる構成により、特に乳化安定性を向上させる。
【0042】
前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)が、全鎖長を100モル%とすると、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%超の部分が、0≦エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド<5(モル比率)であることが好ましい。かかる構成の場合、低泡性をより向上させる。
【0043】
前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)が、全鎖長を100モル%とすると、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%以下の部分が、0≦プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド≦2(モル比率)であることが好ましい。
【0044】
前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)が、その末端部分がプロピレンオキサイドが付加されていることが好ましい。
前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)は、製造容易性の観点よりランダム付加又は最終付加工程がプロピレンオキサイドのブロック付加であることが好ましい。更には、最終付加工程がプロピレンオキサイドのブロック付加であることがより好ましい。
【0045】
これらの含窒素ノニオン界面活性剤(A)は、一種類の含窒素ノニオン界面活性剤(A)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の含窒素ノニオン界面活性剤(A)を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0046】
(非含窒素ノニオン界面活性剤(B))
処理剤は、更に下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有してもよい。非含窒素ノニオン界面活性剤(B)により処理剤が付与された繊維の濡れ性を向上させる。
【0047】
非含窒素ノニオン界面活性剤(B)は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つである。
【0048】
非含窒素ノニオン界面活性剤(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルを構成するアルキル基としては、特に制限はなく、直鎖状のアルキル基であってもよいし、分岐アルキル基であってもよい。
【0049】
アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルキル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
【0050】
非含窒素ノニオン界面活性剤(B)において、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステルを構成するアルケニル基としては、特に制限はなく、直鎖状のアルケニル基であってもよいし、分岐アルケニル基であってもよい。
【0051】
アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルケニル基の具体例としては、例えばブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、イソヘキセニル基、イソヘプテニル基、イソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
【0052】
非含窒素ノニオン界面活性剤(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルを構成するオキシアルキレン鎖の具体例としては、例えばオキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖等が挙げられる。オキシアルキレン鎖を形成するアルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、好ましくは200モル以下、より好ましくは150モル以下、より好ましくは100モルである。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中におけるアルコール化合物又はカルボン酸化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0053】
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸の具体例としては、例えば(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキル脂肪酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキル脂肪酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニル脂肪酸、(4)レシノイン酸、ヒマシ油脂肪酸、硬化ヒマシ油脂肪酸等のヒドロキシ脂肪酸等が挙げられる。ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの具体例としては、ポリオキシアルキレンソルビタントリオレアート、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0054】
これらの非含窒素ノニオン界面活性剤(B)は、一種類の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0055】
処理剤中において、含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量部としたとき、含窒素ノニオン界面活性剤(A)を1質量部以上80質量部以下、及び非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を20質量部以上99質量部以下の割合で含有することが好ましい。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。含窒素ノニオン界面活性剤(A)の含有割合が1質量部以上の場合、低泡性及び防腐性をより向上させる。非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有割合が20質量部以上の場合、濡れ性をより向上させる。
【0056】
(アニオン界面活性剤(C))
処理剤において、更に下記のアニオン界面活性剤(C)を含有してもよい。アニオン界面活性剤(C)により、処理剤が付与された繊維がカードを通過させる際のカード通過性を向上させる。
【0057】
アニオン界面活性剤(C)は、分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである。
【0058】
有機リン酸エステルを構成する脂肪族アルコールは、公知のものが適宜挙げられ、飽和脂肪族アルコールであってもよいし、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
【0059】
炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールの具体例としては、例えば(1)ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール等が挙げられる。
【0060】
炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加することにより形成されたオキシアルキレン鎖を有する有機リン酸エステルが用いられてもよい。オキシアルキレン鎖を形成するアルキレンオキサイドの具体例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、好ましくは50モル以下、より好ましくは40モル以下、さらに好ましくは30モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0061】
有機リン酸エステルを構成するリン酸は、特に制限はなく、オルトリン酸であってもよいし、二リン酸等のポリリン酸であってもよい。
有機リン酸エステルの塩が適用される場合、塩としては、例えばリン酸エステルアミン塩、リン酸エステル金属塩等が挙げられる。
【0062】
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0063】
アミン塩を構成するアミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0064】
アニオン界面活性剤(C)は、繊維の工程通過性及び製剤安定性の観点より有機リン酸エステルのアルカリ金属塩が好ましく、更には、有機リン酸エステルのカリウム塩がより好ましい。
【0065】
これらのアニオン界面活性剤(C)は、一種類のアニオン界面活性剤(C)を単独で使用してもよいし、又は二種以上のアニオン界面活性剤(C)を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0066】
処理剤中において、含窒素ノニオン界面活性剤(A)、非含窒素ノニオン界面活性剤(B)、及びアニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、含窒素ノニオン界面活性剤(A)と非含窒素ノニオン界面活性剤(B)との含有割合の合計が10質量部以上90質量部以下、及びアニオン界面活性剤(C)が10質量部以上90質量部以下の割合で含有することが好ましい。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。アニオン界面活性剤(C)が10質量部以上の場合、カード通過性をより向上させる。アニオン界面活性剤(C)が90質量部以下の場合、乳化安定性及び濡れ性をより向上させる。
【0067】
(保存形態)
処理剤は、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)の他、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)及び前記アニオン界面活性剤(C)を含有する場合、下記の繊維用第1処理剤及び繊維用第2処理剤として構成されることが好ましい。繊維用第1処理剤は、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する。繊維用第2処理剤は、前記アニオン界面活性剤(C)を含有する。かかる構成により保存時において製剤安定性を向上させる。
【0068】
上記第1実施形態の処理剤の作用及び効果について説明する。
(1-1)上記第1実施形態の処理剤では、所定の含窒素ノニオン界面活性剤(A)を含有する。したがって、低泡性、乳化安定性、及び防腐性を向上できる。それにより、特に乳化液の泡由来のスカムの発生、乳化不良によって生じた析出物由来のスカムの発生、さらには腐敗物由来のスカムの発生を抑制できる。よって、生産性、品質性を向上できる。また、新たな処理剤又は再利用される処理剤がフィルタでろ過されて使用される場合、フィルタの目詰まりを抑制し、生産効率を向上させる。
【0069】
特にアミンを出発物質とした含窒素ノニオン界面活性剤を使用することにより処理剤の腐敗を抑制できる。また、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドからオキシアルキレン基が形成されることにより、起泡の発生を抑制できる。また、更にエチレンオキサイドをプロピレンオキサイドよりも多く付加させることにより乳化安定性を向上できる。
【0070】
(1-2)また、処理剤は、消泡剤を使用しなくとも、消泡性を向上できる。特に、シリコーン系消泡剤を使用しない場合、繊維に対する処理剤の各機能をより向上できる。
(1-3)処理剤が、含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する繊維用第1処理剤、及びアニオン界面活性剤(C)を含有する繊維用第2処理剤から構成される場合、保存時における製剤安定性を向上させる。
【0071】
<第2実施形態>
次に、本発明の繊維用第1処理剤(以下、第1処理剤という)を具体化した第2実施形態を説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0072】
本実施形態の第1処理剤では、非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有する。非含窒素ノニオン界面活性剤(F)は、第1実施形態において説明した非含窒素ノニオン界面活性剤(B)と同一成分である。含窒素ノニオン界面活性剤(E)は、第1実施形態において説明した含窒素ノニオン界面活性剤(A)と同一成分である。第1処理剤は、アニオン界面活性剤(G)を含有する繊維用第2処理剤(以下、第2処理剤という)と併用される。アニオン界面活性剤(G)は、第1実施形態において説明したアニオン界面活性剤(C)と同一である。
【0073】
第1処理剤において、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)を20質量部以上99質量部以下、及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる構成により、第1処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0074】
本実施形態の第1処理剤の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(2-1)本実施形態の第1処理剤では、非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有し、アニオン界面活性剤(G)を含有する第2処理剤と併用される。したがって、第1処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、第2処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。
【0075】
<第3実施形態>
次に、本発明の第2処理剤を具体化した第3実施形態を説明する。以下、第1,2実施形態との相違点を中心に説明する。
【0076】
本実施形態の第2処理剤は、上述したアニオン界面活性剤(G)を含有する。そして、上述した非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有する第1処理剤と併用される。
【0077】
本実施形態の第2処理剤の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1,2実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(3-1)本実施形態の第2処理剤では、アニオン界面活性剤(G)を含有する。そして、非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有する第1処理剤と併用される。したがって、第2処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。また、第1処理剤との混合比率を調整することにより、得られる処理剤の成分を調整できる。
【0078】
<第4実施形態>
次に、本発明の繊維の処理方法を具体化した第4実施形態を説明する。
本実施形態の繊維の処理方法では、第1実施形態の処理剤及び水を含有する処理剤の水性液(以下、水性液ともいう)を繊維に付与することを特徴とする。
【0079】
より具体的には、水性液を、例えば紡糸又は延伸工程等からなる紡績糸製造工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。水性液の調製方法は、下記の水性液の調製方法を採用できる。
【0080】
水性液は、水に第2実施形態の第1処理剤と、第3実施形態の第2処理剤とを添加して調製することが好ましい。第1処理剤と第2処理剤とを併用する形態は、第1処理剤と第2処理剤の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な紡糸延伸性を得るための処理剤又は水性液を調製することが容易になる。それにより安定した繊維製造が可能となる。第1処理剤と第2処理剤との含有割合の比は、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=1/9~9/1であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。繊維の処理方法は、上記のように得られた水性液を、例えば紡糸又は延伸工程等からなる紡績糸製造工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。尚、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0081】
水性液の調製方法は、例えば水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上10質量%以下にする方法が用いられる。
水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加する方法は、公知の方法を適宜採用できるが、下記の工程1及び下記の工程2を経ることが好ましい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。
【0082】
工程1は、第1の水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超10質量%以下の処理剤の水性液の母液を調製する工程である。第1処理剤及び第2処理剤の第1の水への添加順は、特に限定されず、先に第1処理剤を水に添加し、次に第2処理剤を水に添加してもよく、先に第2処理剤を水に添加し、次に第1処理剤を水に添加してもよい。また、第1処理剤及び第2処理剤を同時に水に添加してもよい。また、希釈する水の温度は、特に限定されない。エマルジョンの安定性の向上の観点から、先に第2処理剤を第1の水に添加し、次に第1処理剤を第1の水に添加することが好ましい。
【0083】
さらに、工程1は、第1の水の全量のうち20~70質量%の水を60~95℃に加温し、第1処理剤及び第2処理剤を添加した後、40℃以下に調整された残り30~80質量%の第1の水を添加する工程を経ることが好ましい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。この場合も第1処理剤及び第2処理剤の水への添加順は、特に限定されず、先に第1処理剤を水に添加し、次に第2処理剤を水に添加してもよく、先に第2処理剤を水に添加し、次に第1処理剤を水に添加してもよい。また、第1処理剤及び第2処理剤を同時に水に添加してもよい。エマルジョンの安定性の向上の観点から、先に第2処理剤を第1の水に添加し、次に第1処理剤を第1の水に添加することが好ましい。
【0084】
また、工程1は、第1の水の全量のうち20~70質量%の水を60~95℃に加温し、第2処理剤を添加した後、40℃以下に調整された残り30~80質量%の第1の水を添加した後、最後に第1処理剤を添加する工程を経てもよい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。
【0085】
工程2は、工程1で調製した処理剤の水性液の母液に第2の水を添加し、不揮発分濃度が0.01質量%以上2質量%以下の水性液を調製する工程である。
水性液が付与される繊維の種類は、特に限定されない。繊維に付与された水性液により、最終的に処理剤が繊維表面を覆い、摩擦特性を向上させるからである。水性液が付与される繊維としては、合成繊維が挙げられる。合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。これらの中で製造工程において、特に繊維間の摩擦特性の付与が必要なポリエステル又はポリオレフィンに適用されることが好ましい。
【0086】
繊維の用途は、特に限定されず、例えば短繊維、紡績糸、不織布等が挙げられる。短繊維及び長繊維のいずれの繊維用途としても適用できるが、短繊維に適用されることが好ましい。短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましい。これらの中で、ポリエステル短繊維に適用されることが好ましい。
【0087】
水性液を繊維に付着させる割合に特に制限はないが、水性液を繊維に対し、最終的に固形分が0.1~3質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、各成分による効能を有効に発揮できる。また、水性液を付着させる方法は、特に制限はなく、繊維の種類、形態、用途等により公知の方法、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等を採用できる。
【0088】
水性液が付与された繊維は、公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。乾燥処理により水等の溶媒が揮発され、第1処理剤及び第2処理剤中に含有される成分が付着している繊維が得られる。
【0089】
本実施形態の繊維の処理方法の作用及び効果について説明する。本実施形態では、第1~3実施形態の効果に加えて、以下の効果を有する。
(4-1)本実施形態の繊維の処理方法では、水性液を、例えば紡糸又は延伸工程等の紡績糸製造工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。特に、水に第2実施形態の第1処理剤と、第3実施形態の第2処理剤とを添加して調製した水性液の場合、乳化安定性に優れる水性液が得られる。したがって、各成分による短繊維、紡績糸、不織布等に対する効能を有効に発揮できる。
【0090】
(4-2)本実施形態の繊維の処理方法における水性液の調製方法は、例えば水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上10質量%以下にする方法が用いられる。したがって、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性を向上できる。また、予め調製された第1処理剤と第2処理剤を水に混合することにより、繊維付与形態である水性液を調製できるため、使用時に試薬から調合する方法に比べて水性液を簡易に調製できる。
【0091】
(4-3)また、水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超10質量%以下の水性液の母液を調製する工程を経る場合、エマルションの安定性をより向上できる。それにより、成分の繊維への均一な付着性を低下させることがなく、各成分による効能を有効に発揮できる。
【0092】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の各処理剤又は水性液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤又は水性液の品質保持のため、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機酸、上記以外の界面活性剤等の通常処理剤等に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【0093】
・上記第1処理剤は、本願発明の効果を阻害しない範囲で、溶媒と混合されて保存してもよい。溶媒は、安全性、生産性の観点から、水が好ましい。第1処理剤と溶媒との配合比率は、第1処理剤が70質量%以上100質量%未満、溶媒が0質量%を超えて30質量%以下の範囲が好ましい。
【実施例0094】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0095】
試験区分1(処理剤の調製)
処理剤は、表3に示される含窒素ノニオン界面活性剤(A)、非含窒素ノニオン界面活性剤(B)、アニオン界面活性剤(C)、及び添加剤(X)を使用し、下記調製方法により調製した。
【0096】
・含窒素ノニオン界面活性剤(A)
含窒素ノニオン界面活性剤(A)は、表1に示されるA-1~23、a-1~10を使用した。含窒素ノニオン界面活性剤(A)を構成する有機アミンの炭化水素基の種類、(ポリ)オキシアルキレン基(X)を形成するエチレンオキサイド(以下、EOという)の付加モル数、プロピレンオキサイド(以下、POという)の付加モル数、EO及びPOの総付加モル数に対するEOの付加モル数の割合、原料である有機アミンに付加させるアルキレンオキサイドの付加順序と付加方法と付加モル数、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%以下の部分におけるPO/EO(モル比率)、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%超の部分のEO/PO(モル比率)を、表1の「有機アミンの炭化水素基の種類」欄、「EO付加モル数」欄、「PO付加モル数」欄、「EOの付加モル数の割合」欄、「付加順序」欄、「50モル%以下の部分」欄、「50モル%超の部分」欄にそれぞれ示す。なお、有機アミンに付加させるアルキレンオキサイドの付加方法で特に記載のないものはブロック付加を示す。
【0097】
・非含窒素ノニオン界面活性剤(B)
非含窒素ノニオン界面活性剤(B)は、表2に示されるB-1~26を使用した。非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の分岐度、EOとPOの付加形態、種類を、表2の「分岐度」欄、「付加形態」欄、「非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の種類」欄にそれぞれ示す。なお、分岐度は、1H-NMRを測定し、0.8-1.0ppmに検出されるピークをメチル基、1.2-1.4ppmに検出されるピークをメチレン基とした際、メチレン基/メチル基の面積比を分岐度とした。付加形態は、2成分あるものは「/」で区切りそれぞれ表記する。
【0098】
(実施例1-1)
表3に示されるように、含窒素ノニオン界面活性剤(A)として含窒素ノニオン界面活性剤(A-1)25部(%)、非含窒素ノニオン界面活性剤(B)としてポリオキシエチレン(5モル(EOの付加モル数を示す(以下同じ)))デシルエーテル(B-1)20部(%)及び(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(r+s=20、rはオキシエチレン単位の数、sはオキシプロピレン単位の数)硬化ひまし油(B-20)5部(%)、アニオン界面活性剤(C)としてラウリルリン酸エステルカリウム塩(C-1)50部(%)、添加剤(X)としてドデシルスルホン酸ナトリウム塩(X-1)を含む実施例1-1の処理剤を調製した。なお、添加剤(X)としてドデシルスルホン酸ナトリウム塩(X-1)は、含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有量の合計を100%とした場合、1%を処理剤中に配合した。
【0099】
(実施例1-2~1-42、比較例1-1~1-15)
実施例1-2~1-42、比較例1-1~1-15の処理剤は、実施例1-1の処理剤と同様にして含窒素ノニオン界面活性剤(A)、非含窒素ノニオン界面活性剤(B)、アニオン界面活性剤(C)、及び添加剤(X)を表3に示した割合で含むように調製した。
【0100】
含窒素ノニオン界面活性剤(A)の種類と含有量、非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の種類と含有量、アニオン界面活性剤(C)の種類と含有量を、表3の「含窒素ノニオン界面活性剤(A)」欄、「非含窒素ノニオン界面活性剤(B)」欄、「アニオン界面活性剤(C)」欄にそれぞれ示す。また、添加剤(X)の種類と、含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有量の合計を100%とした場合の含有量を、表3の「添加剤(X)」欄にそれぞれ示す。
【0101】
【0102】
【0103】
【表3】
表3に記載するアニオン界面活性剤(C)、添加剤(X)、及び後述する表4のアニオン界面活性剤(G)の詳細は以下のとおりである。
【0104】
(アニオン界面活性剤(C)(G))
C-1:ラウリルリン酸エステルカリウム塩
C-2:セチルリン酸エステルカリウム塩
C-3:ポリオキシエチレン(n=10)セチルリン酸エステルカリウム塩
C-4:オクタデシルリン酸エステルカリウム塩
(添加剤(X))
X-1:ドデシルスルホン酸ナトリウム塩
X-2:オレイン酸カリウム塩
X-3:酢酸カリウム塩
X-4:乳酸
試験区分2(低泡性)
各実施例及び比較例の処理剤を約70℃の温水で希釈し、0.25%の乳化液を調製する。調製した0.25%乳化液を100mL有栓メスシリンダー(Cherry社製、栓を除く高さ26.5cm)へ20mL入れる。メスシリンダーの高さにより泡の生成量が異なるため26.5±0.1cmの高さの有栓メスシリンダーでの測定が好ましい。有栓メスシリンダーの蓋を閉め、上下30回/10秒間の速さで激しく振とうする。振とう後に静置させ、静置開始から10秒後の泡高さH1[cm]と5分後の泡立ち高さH2[cm]を測定する。上記の試験において、H1が抑泡性を、H2が泡残り性を示し、それぞれ以下の基準で評価する。
【0105】
(抑泡性)
◎:H1≦10.0cm
○:10.0cm<H1≦12.0cm
×:H1>12.0cm
(泡残り性)
◎:H2≦7.0cm
○:7.0cm<H2≦8.5cm
×:H2>8.5cm
上記抑泡性及び泡残り性を基に以下の基準で低泡性を評価した。結果を表3の「低泡性」欄に示す。
【0106】
(低泡性)
◎◎(優れる):抑泡性及び泡残り性がいずれも◎の場合
◎(良好):抑泡性及び泡残り性のどちらかが◎であるが、もう一方は○の場合
○(可):抑泡性及び泡残り性がいずれも○の場合
×(不可):抑泡性及び泡残り性がいずれも、もしくは一方が×の場合
試験区分3(防腐性)
各実施例及び比較例の処理剤を約70℃の蒸留水で希釈し、0.25%の乳化液を調製する。乳化液に対して微生物数が107個/mL以上の細菌懸濁液を0.2%添加し、滅菌済み割り箸で撹拌する。この際、同じ割り箸は異なる乳化液の撹拌に使用しない。37℃の恒温条件下で48時間培養し、培養後の乳化液に微生物測定器具(三愛石油社製、サンアイバイオチェッカーTTC)を浸漬させ、培地面に乳化液を付与する。乳化液を付与させた微生物測定器具を30℃の恒温条件下で48時間培養させる。培養後に微生物測定器具の培地面上の菌数を読み取り、以下の基準で評価する。結果を表3の「防腐性」欄に示す。
【0107】
(防腐性)
◎◎(優れる):微生物数が105個/mL未満
◎(良好):微生物数が105個/mL以上、106個/mL未満
○(可):微生物数が106個/mL以上、107個/mL未満
×(不可):微生物数が107個/mL以上
試験区分4(乳化安定性)
各実施例及び比較例の処理剤を約70℃の温水で希釈し、5%の乳化液を調製する。調製した5%乳化液を50℃で24時間静置し、その時の乳化液の外観を目視で確認し、以下の基準で評価する。結果を表3の「乳化安定性」欄に示す。
【0108】
(乳化安定性)
◎◎(優れる):白濁、析出物の発生、下層部に沈殿が見られない場合
◎(良好):微量の析出物の発生が見られるが、撹拌棒を用いて手動で撹拌することにより解消される場合
○(可):析出物の発生、下層部に沈殿が見られるが、撹拌棒を用いて手動で撹拌することにより解消される場合
×(不可):白濁、析出物の発生、下層部に沈殿が見られる場合
試験区分5(濡れ性)
各実施例及び比較例の処理剤を約70℃の温水で希釈し、0.25%の乳化液を調製する。処理剤が付与されていない不織布に、調製した0.25%の乳化液を5μL滴下する。不織布に処理剤が完全に浸透するまでの時間を記録し、以下の基準で評価する。結果を表3の「濡れ性」欄に示す。
【0109】
(濡れ性)
◎◎(優れる):浸透までにかかる時間が500秒未満
◎(良好):浸透までにかかる時間が500秒以上、1000秒未満
○(可):浸透までにかかる時間が1000秒以上、1500秒未満
×(不可):浸透までにかかる時間が1500秒以上
試験区分6(カード通過性)
処理剤が付与されていないポリエステル綿(1.3de×38mm)に、付着量がポリエステル綿に対して0.15%となるように各実施例及び比較例の処理剤を付着させる。処理剤を付着させたポリエステル綿を80℃の乾燥機内で2時間乾燥させる。乾燥させたポリエステル綿を20℃、40%RHの条件下で24時間温調させ、同様に20℃、40%RHの条件下でカード機内へポリエステル綿を投入する。カード通過量を、(ポリエステル綿の紡出量[kg])/(ポリエステル綿の投入量[kg])と定義し、以下の基準でカード通過性を評価する。結果を表3の「カード通過性」欄に示す。
【0110】
(カード通過性)
◎◎(優れる):カード通過量が0.80以上
◎(良好):カード通過量が0.80未満、0.65以上
○(可):カード通過量が0.65未満、0.50以上
×(不可):カード通過量が0.50未満
試験区分7(第1処理剤の調製)
(第1処理剤(I-1))
表4に示されるように、含窒素ノニオン界面活性剤(E)として含窒素ノニオン界面活性剤(A-1)50部(%)、非含窒素ノニオン界面活性剤(F)としてポリオキシエチレン(5モル)デシルエーテル(B-1)40部(%)及び(ポリオキシエチレン)(ポリオキシプロピレン)(r+s=20)硬化ひまし油(B-20)10部(%)、添加剤(X)としてドデシルスルホン酸ナトリウム塩(X-1)を含む第1処理剤(I-1)を調製した。なお、添加剤(X)としてドデシルスルホン酸ナトリウム塩(X-1)は、含窒素ノニオン界面活性剤(E)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(F)の含有量の合計を100%とした場合、1%を第1処理剤中に配合した。
【0111】
(第1処理剤I-2~42、第1処理剤i-1~15)
第1処理剤I-2~42、第1処理剤i-1~15は、第1処理剤(I-1)と同様にして含窒素ノニオン界面活性剤(E)、非含窒素ノニオン界面活性剤(F)、及び添加剤(X)を表4に示した割合で含むように調製した。
【0112】
含窒素ノニオン界面活性剤(E)の種類と含有量、非含窒素ノニオン界面活性剤(F)の種類と含有量を、表4の「含窒素ノニオン界面活性剤(E)」欄、「非含窒素ノニオン界面活性剤(F)」欄にそれぞれ示す。また、添加剤(X)の種類と、含窒素ノニオン界面活性剤(E)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(F)の含有量の合計を100%とした場合の含有量を、表4の「添加剤(X)」欄にそれぞれ示す。
【0113】
【表4】
試験区分8(第2処理剤の調製)
(第2処理剤(II-1))
第2処理剤(II-1)は、表5に示されるアニオン界面活性剤(G)としてアニオン界面活性剤(C-1)100部(%)を含むようにした。
【0114】
(第2処理剤II-2~10)
第2処理剤II-2~10は、表5に示されるアニオン界面活性剤(G)を表5に示した割合で含むように調製した。アニオン界面活性剤(G)の種類と含有量を、表5の「アニオン界面活性剤(G)」欄にそれぞれ示す。
【0115】
【表5】
試験区分9(製剤安定性の評価)
上記第1処理剤を、25℃にて1週間保管した。1週間経過後の外観を観察し、下記の基準に従って評価した。第2処理剤は、水で処理剤の濃度を40%としたものを第2処理剤の製剤とし、25℃にて1週間保管した。1週間経過後の外観を観察し、下記の基準に従って評価した。結果を表4,5の「製剤安定性」欄に示す。
【0116】
・製剤安定性の評価基準(第1剤及び第2剤)
○(可):分離及び増粘が起きていない場合
×(不可):分離又は増粘が起きている場合
試験区分10(第1処理剤と第2処理剤から処理剤の調製)
(実施例2-1)
表6に示される第1処理剤(I-1)50部、第2処理剤(II-1)50部、及び水を混合して実施例2-1の処理剤の水性液を調製した。
【0117】
(実施例2-2~2-42、比較例2-1~2-15)
実施例2-1と同様にして、表6に示される第1処理剤と第2処理剤、及び実施例2-1と同じ割合の水とを混合して各例の処理剤の水性液を調製した。第1処理剤の種類と含有比率、第2処理剤の種類と含有比率を、表6の「第1処理剤」欄、「第2処理剤」欄にそれぞれ示す。
【0118】
得られた各例の処理剤を用いて、実施例1-1と同様に低泡性、乳化安定性、防腐性、濡れ性、カード通過性について評価した。結果を表6の「低泡性」欄、「乳化安定性」欄、「防腐性」欄、「濡れ性」欄、「カード通過性」欄にそれぞれ示す。
【0119】
【表6】
本発明の処理剤は、低泡性、乳化安定性、及び防腐性を向上できる。また処理剤が付与された繊維は、濡れ性、カード通過性を向上できる。なお、各例の処理剤をポリオレフィンとしてポリプロピレン繊維にも適用できることを確認している。
分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させた含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する合成繊維用処理剤(アルキレンオキシド共重合体を50重量%以上と、R-N((AO)mH)((AO)nH)(R:炭素数6~22のアルキル基、A:炭素数2~4のアルキレン基、m及びn:1~10の整数であってm+nが2~20の整数)を0.1~10重量%含有するポリアミド系合成繊維用処理剤を除く)であって、
前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)が下記のものであることを特徴とする合成繊維用処理剤。
(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
非含窒素ノニオン界面活性剤(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させた含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び下記のアニオン界面活性剤(C)を含有する合成繊維用処理剤(アルキレンオキシド共重合体を50重量%以上と、R-N((AO)mH)((AO)nH)(R:炭素数6~22のアルキル基、A:炭素数2~4のアルキレン基、m及びn:1~10の整数であってm+nが2~20の整数)を0.1~10重量%含有するポリアミド系合成繊維用処理剤を除く)であって、
前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)が下記のものであることを特徴とする合成繊維用処理剤。
(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させた含窒素ノニオン界面活性剤(A)を含有する合成繊維用処理剤(アルキレンオキシド共重合体を50重量%以上と、R-N((AO)mH)((AO)nH)(R:炭素数6~22のアルキル基、A:炭素数2~4のアルキレン基、m及びn:1~10の整数であってm+nが2~20の整数)を0.1~10重量%含有するポリアミド系合成繊維用処理剤を除く)であって、
前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)が下記のものであり、合成繊維のみからなる短繊維に又は合成繊維のみからなる紡績糸製造に適用されることを特徴とする合成繊維用処理剤。
(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)が、全鎖長を100モル%とすると、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%超の部分が、0≦エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド<5(モル比率)である請求項1~4のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)を1質量部以上80質量部以下、及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を20質量部以上99質量部以下の割合で含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
更に、下記のアニオン界面活性剤(C)を含有し、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)、及び前記アニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)と前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)との含有割合の合計が10質量部以上90質量部以下、及び前記アニオン界面活性剤(C)が10質量部以上90質量部以下の割合で含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する繊維用第1処理剤、及び下記のアニオン界面活性剤(C)を含有する繊維用第2処理剤を含む請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
下記のアニオン界面活性剤(G)を含有する繊維用第2処理剤と併用され、下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有することを特徴とする繊維用第1処理剤。
含窒素ノニオン界面活性剤(E):分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させたものであり、含窒素ノニオン界面活性剤(E)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
非含窒素ノニオン界面活性剤(F):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
アニオン界面活性剤(G):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)を20質量部以上99質量部以下、及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有する請求項14に記載の繊維用第1処理剤。
下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有する繊維用第1処理剤と併用され、下記のアニオン界面活性剤(G)を含有することを特徴とする繊維用第2処理剤。
含窒素ノニオン界面活性剤(E):分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させたものであり、含窒素ノニオン界面活性剤(E)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
非含窒素ノニオン界面活性剤(F):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
アニオン界面活性剤(G):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
前記繊維用第1処理剤と前記繊維用第2処理剤との含有割合の比が、不揮発分の質量比として前記繊維用第1処理剤/前記繊維用第2処理剤=1/9~9/1であることを特徴とする請求項18に記載の合成繊維用処理剤の水性液。
水に、請求項14又は15に記載の繊維用第1処理剤と、請求項16に記載の繊維用第2処理剤とを添加し得られた合成繊維用処理剤の水性液を繊維に付与することを特徴とする繊維の処理方法。
本発明は、所定の含窒素ノニオン界面活性剤を含有する合成繊維用処理剤、繊維用第1処理剤、繊維用第2処理剤、合成繊維用処理剤の水性液、繊維の処理方法、及び繊維に関する。
例えば合成繊維の紡糸延伸工程、仕上げ工程等において、例えば繊維の摩擦低減、帯電防止性、集束性等の観点から、繊維の表面に繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
従来、特許文献1に開示の繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、グリセライド誘導体を含有し、且つリン元素の含有量が0.5質量%以下であることを特徴とする合成短繊維用処理剤について開示する。
(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
非含窒素ノニオン界面活性剤(B):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
本発明の別の態様の合成繊維用処理剤では、分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させた含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び下記のアニオン界面活性剤(C)を含有する合成繊維用処理剤(アルキレンオキシド共重合体を50重量%以上と、R-N((AO)mH)((AO)nH)(R:炭素数6~22のアルキル基、A:炭素数2~4のアルキレン基、m及びn:1~10の整数であってm+nが2~20の整数)を0.1~10重量%含有するポリアミド系合成繊維用処理剤を除く)であって、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)が下記のものであることを要旨とする。
(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
本発明の別の態様の合成繊維用処理剤では、分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させた含窒素ノニオン界面活性剤(A)を含有する合成繊維用処理剤(アルキレンオキシド共重合体を50重量%以上と、R-N((AO)mH)((AO)nH)(R:炭素数6~22のアルキル基、A:炭素数2~4のアルキレン基、m及びn:1~10の整数であってm+nが2~20の整数)を0.1~10重量%含有するポリアミド系合成繊維用処理剤を除く)であって、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)が下記のものであり、合成繊維のみからなる短繊維に又は合成繊維のみからなる紡績糸製造に適用されることを要旨とする。
(ポリ)オキシアルキレン基(X):エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
前記合成繊維用処理剤において、前記有機アミンが、分子中に炭素数10以上20以下の炭化水素基を有するものであってもよい。
前記合成繊維用処理剤において、前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)が、全鎖長を100モル%とすると、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%超の部分が、0≦エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド<5(モル比率)であってもよい。
前記合成繊維用処理剤において、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)を1質量部以上80質量部以下、及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を20質量部以上99質量部以下の割合で含有してもよい。
前記合成繊維用処理剤において、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)、及び前記アニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)と前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)との含有割合の合計が10質量部以上90質量部以下、及び前記アニオン界面活性剤(C)が10質量部以上90質量部以下の割合で含有してもよい。
前記合成繊維用処理剤において、前記含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び前記非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する繊維用第1処理剤、及び下記のアニオン界面活性剤(C)を含有する繊維用第2処理剤を含んでもよい。
アニオン界面活性剤(C):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維用第1処理剤では、下記のアニオン界面活性剤(G)を含有する繊維用第2処理剤と併用され、下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有することを要旨とする。
含窒素ノニオン界面活性剤(E):分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させたものであり、含窒素ノニオン界面活性剤(E)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
非含窒素ノニオン界面活性剤(F):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
アニオン界面活性剤(G):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
前記繊維用第1処理剤において、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)を20質量部以上99質量部以下、及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有してもよい。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維用第2処理剤では、下記の非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有する繊維用第1処理剤と併用され、下記のアニオン界面活性剤(G)を含有することを要旨とする。
含窒素ノニオン界面活性剤(E):分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で2モル以上100モル以下付加させたものであり、含窒素ノニオン界面活性剤(E)中の(ポリ)オキシアルキレン基(X)がエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから形成されたものであり、且つエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合が50%以上のもの。
非含窒素ノニオン界面活性剤(F):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つ。
アニオン界面活性剤(G):分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つ。
前記合成繊維用処理剤の水性液において、前記繊維用第1処理剤と前記繊維用第2処理剤との含有割合の比が、不揮発分の質量比として前記繊維用第1処理剤/前記繊維用第2処理剤=1/9~9/1であってもよい。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の繊維の処理方法では、水に、前記繊維用第1処理剤と、前記繊維用第2処理剤とを添加し得られた合成繊維用処理剤の水性液を繊維に付与することを要旨とする。
含窒素ノニオン界面活性剤(A)としては、炭素数8以上22以下の炭化水素基を1つ有する1級アミンに(ポリ)オキシアルキレン基(X)を2つ有する3級アミン化合物、炭素数8以上22以下の炭化水素基を2つ有する2級アミンに(ポリ)オキシアルキレン基(X)を1つ有する3級アミン化合物、炭素数8以上22以下の炭化水素基を1つ有する1級アミンに(ポリ)オキシアルキレン基(X)を1つ有する2級アミン化合物のいずれであってもよい。これらの中で製造容易性の観点から炭素数8以上22以下の炭化水素基を1つ有する1級アミンに(ポリ)オキシアルキレン基(X)を2つ有する3級アミン化合物が好ましい。
炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミンを構成する炭化水素基としては、飽和炭化水素基であってもよいし、不飽和炭化水素基であってもよい。また、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐鎖を有する炭化水素基であってもよい。
直鎖の飽和炭化水素基の具体例としては、例えばオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖構造を有する飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基、イソドコシル基等が挙げられる。
不飽和炭化水素基としては、不飽和炭素結合として二重結合を1つ有するアルケニル基であっても、二重結合を2つ以上有するアルカジエニル基、アルカトリエニル基等であってもよい。また、不飽和炭素結合として三重結合を1つ有するアルキニル基であっても、三重結合を2つ以上有するアルカジイニル基等であってもよい。炭化水素基中に二重結合を1つ有する直鎖の不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばオクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、ドコセニル基等が挙げられる。
炭化水素基中に二重結合を1つ有する分岐鎖構造を有する不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基、イソドコセニル基等が挙げられる。
これらの中で有機アミンが、分子中に炭素数10以上20以下の炭化水素基を有するものが好ましい。炭素数10以上の場合、低泡性をより向上させる。また炭素数20以下の場合、処理剤が水溶液として調製された際、乳化安定性をより向上させる。
炭素数8以上22以下の炭化水素基を1つ有する1級アミンの具体例としては、例えばオクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、イコシルアミン、ドコシルアミン、オレイルアミン等が挙げられる。
含窒素ノニオン界面活性剤(A)を構成する(ポリ)オキシアルキレン基(X)としては炭素数2のエチレンオキサイド及び炭素数3のプロピレンオキサイドを付加して形成される。エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数の合計の下限は、2モル以上、好ましくは4モル以上である。かかる付加モル数の合計の上限は、100モル以下、好ましくは50モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における分子中に炭素数8以上22以下の炭化水素基を有する有機アミン1モルに対するエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドのモル数を示す。エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
(ポリ)オキシアルキレン基(X)中におけるエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの総付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数の割合は、50%以上のものである。かかる構成により、特に乳化安定性を向上させる。
前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)が、全鎖長を100モル%とすると、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%超の部分が、0≦エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド<5(モル比率)であることが好ましい。かかる構成の場合、低泡性をより向上させる。
前記(ポリ)オキシアルキレン基(X)が、全鎖長を100モル%とすると、有機アミンを構成する窒素原子に近いほうから50モル%以下の部分が、0≦プロピレンオキサイド/エチレンオキサイド≦2(モル比率)であることが好ましい。
これらの含窒素ノニオン界面活性剤(A)は、一種類の含窒素ノニオン界面活性剤(A)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の含窒素ノニオン界面活性剤(A)を適宜組み合わせて使用してもよい。
非含窒素ノニオン界面活性剤(B)は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1つである。
非含窒素ノニオン界面活性剤(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルを構成するアルキル基としては、特に制限はなく、直鎖状のアルキル基であってもよいし、分岐アルキル基であってもよい。
アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルキル基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、イソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
非含窒素ノニオン界面活性剤(B)において、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステルを構成するアルケニル基としては、特に制限はなく、直鎖状のアルケニル基であってもよいし、分岐アルケニル基であってもよい。
アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30が好ましく、炭素数8~22がより好ましい。アルケニル基の具体例としては、例えばブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、イソブテニル基、イソペンテニル基、イソヘキセニル基、イソヘプテニル基、イソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
非含窒素ノニオン界面活性剤(B)において、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルを構成するオキシアルキレン鎖の具体例としては、例えばオキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖等が挙げられる。オキシアルキレン鎖を形成するアルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、好ましくは200モル以下、より好ましくは150モル以下、より好ましくは100モルである。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中におけるアルコール化合物又はカルボン酸化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸の具体例としては、例えば(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキル脂肪酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキル脂肪酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニル脂肪酸、(4)レシノイン酸、ヒマシ油脂肪酸、硬化ヒマシ油脂肪酸等のヒドロキシ脂肪酸等が挙げられる。ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステルの具体例としては、ポリオキシアルキレンソルビタントリオレアート、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
これらの非含窒素ノニオン界面活性剤(B)は、一種類の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を単独で使用してもよいし、又は二種以上の非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有割合の合計を100質量部としたとき、含窒素ノニオン界面活性剤(A)を1質量部以上80質量部以下、及び非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を20質量部以上99質量部以下の割合で含有することが好ましい。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。含窒素ノニオン界面活性剤(A)の含有割合が1質量部以上の場合、低泡性及び防腐性をより向上させる。非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有割合が20質量部以上の場合、濡れ性をより向上させる。
アニオン界面活性剤(C)は、分子中に炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基又は炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールに炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加したものから水酸基を除いた残基を有する有機リン酸エステル、及びその塩から選ばれる少なくとも1つである。
有機リン酸エステルを構成する脂肪族アルコールは、公知のものが適宜挙げられ、飽和脂肪族アルコールであってもよいし、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
炭素数12以上22以下の脂肪族アルコールの具体例としては、例えば(1)ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール等が挙げられる。
炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを付加することにより形成されたオキシアルキレン鎖を有する有機リン酸エステルが用いられてもよい。オキシアルキレン鎖を形成するアルキレンオキサイドの具体例としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上、さらに好ましくは2モル以上である。かかる付加モル数の上限は、適宜設定されるが、好ましくは50モル以下、より好ましくは40モル以下、さらに好ましくは30モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における脂肪族アルコール化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが2種類適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
アミン塩を構成するアミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
アニオン界面活性剤(C)は、繊維の工程通過性及び製剤安定性の観点より有機リン酸エステルのアルカリ金属塩が好ましく、更には、有機リン酸エステルのカリウム塩がより好ましい。
これらのアニオン界面活性剤(C)は、一種類のアニオン界面活性剤(C)を単独で使用してもよいし、又は二種以上のアニオン界面活性剤(C)を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、含窒素ノニオン界面活性剤(A)、非含窒素ノニオン界面活性剤(B)、及びアニオン界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部としたとき、含窒素ノニオン界面活性剤(A)と非含窒素ノニオン界面活性剤(B)との含有割合の合計が10質量部以上90質量部以下、及びアニオン界面活性剤(C)が10質量部以上90質量部以下の割合で含有することが好ましい。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。アニオン界面活性剤(C)が10質量部以上の場合、カード通過性をより向上させる。アニオン界面活性剤(C)が90質量部以下の場合、乳化安定性及び濡れ性をより向上させる。
特にアミンを出発物質とした含窒素ノニオン界面活性剤を使用することにより処理剤の腐敗を抑制できる。また、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドからオキシアルキレン基が形成されることにより、起泡の発生を抑制できる。また、更にエチレンオキサイドをプロピレンオキサイドよりも多く付加させることにより乳化安定性を向上できる。
(1-2)また、処理剤は、消泡剤を使用しなくとも、消泡性を向上できる。特に、シリコーン系消泡剤を使用しない場合、繊維に対する処理剤の各機能をより向上できる。
(1-3)処理剤が、含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(B)を含有する繊維用第1処理剤、及びアニオン界面活性剤(C)を含有する繊維用第2処理剤から構成される場合、保存時における製剤安定性を向上させる。
本実施形態の第1処理剤では、非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有する。非含窒素ノニオン界面活性剤(F)は、第1実施形態において説明した非含窒素ノニオン界面活性剤(B)と同一成分である。含窒素ノニオン界面活性剤(E)は、第1実施形態において説明した含窒素ノニオン界面活性剤(A)と同一成分である。第1処理剤は、アニオン界面活性剤(G)を含有する繊維用第2処理剤(以下、第2処理剤という)と併用される。アニオン界面活性剤(G)は、第1実施形態において説明したアニオン界面活性剤(C)と同一である。
第1処理剤において、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)の含有割合の合計を100質量部としたとき、前記非含窒素ノニオン界面活性剤(F)を20質量部以上99質量部以下、及び前記含窒素ノニオン界面活性剤(E)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる構成により、第1処理剤の製剤安定性をより向上できる。
本実施形態の第2処理剤は、上述したアニオン界面活性剤(G)を含有する。そして、上述した非含窒素ノニオン界面活性剤(F)及び含窒素ノニオン界面活性剤(E)を含有する第1処理剤と併用される。
より具体的には、水性液を、例えば紡糸又は延伸工程等からなる紡績糸製造工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。水性液の調製方法は、下記の水性液の調製方法を採用できる。
水性液は、水に第2実施形態の第1処理剤と、第3実施形態の第2処理剤とを添加して調製することが好ましい。第1処理剤と第2処理剤とを併用する形態は、第1処理剤と第2処理剤の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な紡糸延伸性を得るための処理剤又は水性液を調製することが容易になる。それにより安定した繊維製造が可能となる。第1処理剤と第2処理剤との含有割合の比は、不揮発分の質量比として第1処理剤と第2処理剤=1/9~9/1であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、操作性を向上できる。繊維の処理方法は、上記のように得られた水性液を、例えば紡糸又は延伸工程等からなる紡績糸製造工程、仕上げ工程等において繊維に付与する方法である。尚、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
工程1は、第1の水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超10質量%以下の処理剤の水性液の母液を調製する工程である。第1処理剤及び第2処理剤の第1の水への添加順は、特に限定されず、先に第1処理剤を水に添加し、次に第2処理剤を水に添加してもよく、先に第2処理剤を水に添加し、次に第1処理剤を水に添加してもよい。また、第1処理剤及び第2処理剤を同時に水に添加してもよい。また、希釈する水の温度は、特に限定されない。エマルジョンの安定性の向上の観点から、先に第2処理剤を第1の水に添加し、次に第1処理剤を第1の水に添加することが好ましい。
さらに、工程1は、第1の水の全量のうち20~70質量%の水を60~95℃に加温し、第1処理剤及び第2処理剤を添加した後、40℃以下に調整された残り30~80質量%の第1の水を添加する工程を経ることが好ましい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。この場合も第1処理剤及び第2処理剤の水への添加順は、特に限定されず、先に第1処理剤を水に添加し、次に第2処理剤を水に添加してもよく、先に第2処理剤を水に添加し、次に第1処理剤を水に添加してもよい。また、第1処理剤及び第2処理剤を同時に水に添加してもよい。エマルジョンの安定性の向上の観点から、先に第2処理剤を第1の水に添加し、次に第1処理剤を第1の水に添加することが好ましい。
また、工程1は、第1の水の全量のうち20~70質量%の水を60~95℃に加温し、第2処理剤を添加した後、40℃以下に調整された残り30~80質量%の第1の水を添加した後、最後に第1処理剤を添加する工程を経てもよい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。
繊維の用途は、特に限定されず、例えば短繊維、紡績糸、不織布等が挙げられる。短繊維及び長繊維のいずれの繊維用途としても適用できるが、短繊維に適用されることが好ましい。短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましい。これらの中で、ポリエステル短繊維に適用されることが好ましい。
水性液を繊維に付着させる割合に特に制限はないが、水性液を繊維に対し、最終的に固形分が0.1~3質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、各成分による効能を有効に発揮できる。また、水性液を付着させる方法は、特に制限はなく、繊維の種類、形態、用途等により公知の方法、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等を採用できる。
水性液が付与された繊維は、公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。乾燥処理により水等の溶媒が揮発され、第1処理剤及び第2処理剤中に含有される成分が付着している繊維が得られる。
(4-2)本実施形態の繊維の処理方法における水性液の調製方法は、例えば水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上10質量%以下にする方法が用いられる。したがって、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性を向上できる。また、予め調製された第1処理剤と第2処理剤を水に混合することにより、繊維付与形態である水性液を調製できるため、使用時に試薬から調合する方法に比べて水性液を簡易に調製できる。
(4-3)また、水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超10質量%以下の水性液の母液を調製する工程を経る場合、エマルションの安定性をより向上できる。それにより、成分の繊維への均一な付着性を低下させることがなく、各成分による効能を有効に発揮できる。
・上記第1処理剤は、本願発明の効果を阻害しない範囲で、溶媒と混合されて保存してもよい。溶媒は、安全性、生産性の観点から、水が好ましい。第1処理剤と溶媒との配合比率は、第1処理剤が70質量%以上100質量%未満、溶媒が0質量%を超えて30質量%以下の範囲が好ましい。
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
含窒素ノニオン界面活性剤(A)の種類と含有量、非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の種類と含有量、アニオン界面活性剤(C)の種類と含有量を、表3の「含窒素ノニオン界面活性剤(A)」欄、「非含窒素ノニオン界面活性剤(B)」欄、「アニオン界面活性剤(C)」欄にそれぞれ示す。また、添加剤(X)の種類と、含窒素ノニオン界面活性剤(A)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(B)の含有量の合計を100%とした場合の含有量を、表3の「添加剤(X)」欄にそれぞれ示す。
含窒素ノニオン界面活性剤(E)の種類と含有量、非含窒素ノニオン界面活性剤(F)の種類と含有量を、表4の「含窒素ノニオン界面活性剤(E)」欄、「非含窒素ノニオン界面活性剤(F)」欄にそれぞれ示す。また、添加剤(X)の種類と、含窒素ノニオン界面活性剤(E)及び非含窒素ノニオン界面活性剤(F)の含有量の合計を100%とした場合の含有量を、表4の「添加剤(X)」欄にそれぞれ示す。
得られた各例の処理剤を用いて、実施例1-1と同様に低泡性、乳化安定性、防腐性、濡れ性、カード通過性について評価した。結果を表6の「低泡性」欄、「乳化安定性」欄、「防腐性」欄、「濡れ性」欄、「カード通過性」欄にそれぞれ示す。