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特開2022-186352合成繊維用処理剤、及び合成繊維
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186352
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】合成繊維用処理剤、及び合成繊維
(51)【国際特許分類】
D06M 13/325 20060101AFI20221208BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20221208BHJP
D06M 13/165 20060101ALI20221208BHJP
D06M 15/65 20060101ALI20221208BHJP
D06M 101/28 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
D06M13/325
D06M15/53
D06M13/165
D06M15/65
D06M101:28
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094519
(22)【出願日】2021-06-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大島 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】濱島 暁
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 旬
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA04
4L033AB01
4L033AC09
4L033BA14
4L033BA45
4L033CA48
4L033CA60
4L033CA61
4L033CA64
4L033DA01
(57)【要約】
【課題】耐炎化繊維の集束性を向上させるとともに、炭素繊維の毛羽を抑制する。
【解決手段】合成繊維用処理剤は、フェノールアミン化合物、及び非イオン性界面活性剤を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノールアミン化合物、及び非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤。
【請求項2】
前記フェノールアミン化合物が、
下記のフェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物とから形成されたもの、及び下記のフェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物の3成分から形成された化合物に対してホウ素含有化合物を反応させたものから選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
フェノール誘導体:数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基が、変性しているフェノール。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤が、炭素数4以上30以下の一価アルコール1モルに対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上50モル以下の割合で付加させた化合物、及び炭素数4以上30以下のアルキルアミン1モルに対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上50モル以下の割合で付加させた化合物の少なくとも一つを含む請求項1又は2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記フェノールアミン化合物と前記非イオン性界面活性剤との質量比が、フェノールアミン化合物/非イオン性界面活性剤=5/95以上95/5以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
さらに、ブレンステッド酸を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
さらに、エポキシ化合物を含有する請求項1~5のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
前記エポキシ化合物が、エポキシ変性シリコーン、及びエポキシ・ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つを含むものである請求項6に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項8】
さらに、アミノ変性シリコーン、ジメチルシリコーン、及びポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つを含有する請求項1~7のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項9】
前記合成繊維が、炭素繊維前駆体である請求項1~8のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とする合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤、及び合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、炭素繊維は、アクリル樹脂等を紡糸する紡糸工程、紡糸された繊維を乾燥して緻密化する乾燥緻密化工程、乾燥緻密化した繊維を延伸して合成繊維である炭素繊維前駆体を製造する延伸工程、炭素繊維前駆体を耐炎化する耐炎化処理工程、及び耐炎化繊維を炭素化する炭素化処理工程を行なうことにより製造される。
【0003】
合成繊維の製造工程において、繊維の集束性を向上させるために、合成繊維用処理剤が用いられることがある。
特許文献1には、アミノ変性シリコーンと、界面活性剤と、分子内にポリオキシアルキレン基及び2つ以上の一級アミン基を有するアミン化合物とを含む合成繊維用処理剤としての繊維処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、合成繊維用処理剤には、合成繊維を耐炎化した際における耐炎化繊維の集束性の向上や、耐炎化繊維を炭素化した際における炭素繊維の毛羽の抑制も求められている。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐炎化繊維の集束性の向上、及び炭素繊維の毛羽の抑制を可能にした合成繊維用処理剤を提供することにある。また、この合成繊維用処理剤が付着した合成繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための合成繊維用処理剤は、フェノールアミン化合物、及び非イオン性界面活性剤を含有することを要旨とする。
上記合成繊維用処理剤について、前記フェノールアミン化合物が、下記のフェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物とから形成されたもの、及び下記のフェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物の3成分から形成された化合物に対してホウ素含有化合物を反応させたものから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0008】
フェノール誘導体:数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基が、変性しているフェノール。
上記合成繊維用処理剤について、前記非イオン性界面活性剤が、炭素数4以上30以下の一価アルコール1モルに対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上50モル以下の割合で付加させた化合物、及び炭素数4以上30以下のアルキルアミン1モルに対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上50モル以下の割合で付加させた化合物の少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0009】
上記合成繊維用処理剤について、前記フェノールアミン化合物と前記非イオン性界面活性剤との質量比が、フェノールアミン化合物/非イオン性界面活性剤=5/95以上95/5以下であることが好ましい。
【0010】
上記合成繊維用処理剤について、さらに、ブレンステッド酸を含有することが好ましい。
上記合成繊維用処理剤について、さらに、エポキシ化合物を含有することが好ましい。
【0011】
上記合成繊維用処理剤について、前記エポキシ化合物が、エポキシ変性シリコーン、及びエポキシ・ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つを含むものであることが好ましい。
【0012】
上記合成繊維用処理剤について、さらに、アミノ変性シリコーン、ジメチルシリコーン、及びポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましい。
【0013】
上記合成繊維用処理剤について、前記合成繊維が、炭素繊維前駆体であることが好ましい。
上記課題を解決するための合成繊維用処理剤は、上記合成繊維用処理剤が付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、耐炎化繊維の集束性を向上させることができるとともに、炭素繊維の毛羽を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明に係る合成繊維用処理剤(以下、単に処理剤ともいう。)を具体化した第1実施形態について説明する。
【0016】
本実施形態の処理剤は、フェノールアミン化合物、及び非イオン性界面活性剤を含有する。
処理剤が、フェノールアミン化合物、及び非イオン性界面活性剤を含有することにより、処理剤が付着した合成繊維を耐炎化処理した際に、耐炎化繊維の集束性を向上させることができる。また、この耐炎化繊維を炭素化した際に、炭素繊維の毛羽を抑制することができる。
【0017】
<フェノールアミン化合物について>
上記フェノールアミン化合物は、下記のフェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物とから形成されたもの、及び下記のフェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物の3成分から形成された化合物に対してホウ素含有化合物を反応させたものから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0018】
フェノール誘導体:数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基が、変性しているフェノール。
上記フェノール誘導体は、下記の化1で示されるものであることが好ましい。
【0019】
【化1】
(化1において
R
1:数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基)
上記数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基としては、特に制限されないが、例えばプロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、イソブテン、イソペンテン、イソヘキセン、イソオクテン等の重合物からなる炭化水素基が挙げられる。
【0020】
上記数平均分子量は、500以上1800以下であることが好ましく、600以上1500以下であることがより好ましい。
上記R1は、フェノールに1つのみ変性していてもよいし、フェノールに2つ以上変性していてもよい。フェノールに2つ以上変性している態様では、同じ種類の炭化水素基が変性していてもよいし、異なる種類の炭化水素基が変性していてもよい。また、上記フェノール誘導体は、フェノールの基本構造を有していれば、R1以外の炭化水素基等の官能基を有していてもよい。
【0021】
上記ポリアミン化合物は、第一級アミノ基が2つ以上結合した脂肪族炭化水素を意味するものとする。
上記ポリアミン化合物は、下記の化2で示されるものであることが好ましい。
【0022】
【化2】
(化2において
X:0以上10以下の整数)
ポリアミン化合物の具体例としては、特に制限されないが、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、トリプロピレンテトラアミン、トリブチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、テトラプロピレンペンタアミン、テトラブチレンペンタアミン等が挙げられる。
【0023】
上記ポリアミン化合物は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記フェノールアミン化合物は、フェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物とがマンニッヒ反応を行うことによって形成されたものであることが好ましい。
【0024】
上記フェノールアミン化合物は、下記の化3、又は化4で示されるものであることが好ましい。
【0025】
【化3】
(化3において
R
2:数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基
X:0以上10以下の整数)
【0026】
【化4】
(化4において
R
3:数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基
R
4:数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基
X:0以上10以下の整数)
上記フェノールアミン化合物は、上記の化3、又は化4の一方を単独で含有したものであってもよいし、化3と化4の両方を含有したものであってもよい。すなわち、フェノールアミン化合物は、化3と化4の混合物であってもよい。
【0027】
また、フェノールアミン化合物は、フェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物の3成分から形成された化合物に対してホウ素含有化合物を反応させたものであってもよい。例えば、上記化3や化4に対して、ホウ素含有化合物を反応させたものであってもよい。
【0028】
言い換えれば、フェノールアミン化合物は、ホウ素化フェノールアミン化合物であってもよい。また、上記化3、化4等のホウ素化していないフェノールアミン化合物と、ホウ素化フェノールアミン化合物との混合物であってもよい。
【0029】
ホウ素含有化合物としては、特に制限されないが、例えば酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸無水物、ホウ酸エステル等が挙げられる。
上記ホウ素化合物は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
上記フェノールアミン化合物を形成する際の、フェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物の比率は特に制限されず、適宜、比率を調整して形成することができる。
【0031】
フェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物の比率としては、例えばフェノール誘導体1当量に対して、ホルムアルデヒド0.7当量以上3.5当量以下、ポリアミン化合物0.3当量以上1.5当量以下反応させることが好ましい。
【0032】
また、フェノールアミン化合物が、フェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物の3成分から形成された化合物に対してホウ素含有化合物を反応させたものである場合、ホウ素含有化合物の比率は特に制限されず、適宜、比率を調整して反応させることができる。
【0033】
ホウ素含有化合物の比率としては、例えばフェノールアミン化合物にホウ素含有量として0.05質量%以上1.5質量%以下となるようにホウ素含有化合物を反応させることが好ましい。
【0034】
フェノールアミン化合物としての上記化3、化4や、ホウ素含有化合物を反応させたものは、例えば液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)等を用いて同定することができる。
【0035】
<希釈剤について>
上記フェノールアミン化合物は、後述のように、非イオン性界面活性剤等と混合して処理剤を調製する際に、希釈剤で希釈された溶液として用いられることが好ましい。
【0036】
希釈剤としては、例えば水、有機溶剤、鉱物油等が挙げられる。有機溶剤の具体例としては、ヘキサン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチルエーテル、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、クロロホルム等が挙げられる。鉱物油としては、例えば、芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えばスピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。鉱物油の粘度は、80~190レッドウッド秒であることが好ましい。これらの鉱物油は、市販品を適宜採用することができる。
【0037】
フェノールアミン化合物、及び希釈剤の含有割合に制限はない。フェノールアミン化合物、及び希釈剤の含有割合の合計を100質量部とすると、フェノールアミン化合物を30質量%以上90質量%以下、及び希釈剤を10質量%以上70質量%以下の割合で含むことが好ましく、フェノールアミン化合物を40質量%以上80質量%以下、及び希釈剤を20質量%以上60質量%以下の割合で含むことがより好ましい。
【0038】
<非イオン性界面活性剤について>
上記非イオン性界面活性剤としては、特に制限されないが、炭素数4以上30以下の一価アルコール1モルに対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上50モル以下の割合で付加させた化合物、及び炭素数4以上30以下のアルキルアミン1モルに対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上50モル以下の割合で付加させた化合物の少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0039】
炭素数4以上30以下の一価アルコールとしては、直鎖状又は分岐鎖構造を有する脂肪族アルコールであっても芳香族アルコールであってもよい。また、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコールのいずれであってもよい。
【0040】
炭素数4以上30以下の一価アルコールの具体例としては、例えば、(1)ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0041】
上記炭素数4以上30以下のアルキルアミンとしては、特に制限されず、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンのいずれであってもよい。
上記炭素数4以上30以下のアルキルアミンにおいて、炭素数4以上30以下のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖を有するアルキル基であってもよい。また、飽和アルキル基であっても、不飽和アルキル基であってもよい。
【0042】
直鎖のアルキル基の具体例としては、例えばブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0043】
分岐鎖を有する飽和アルキル基の具体例としては、例えばイソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
【0044】
不飽和アルキル基としては、不飽和炭素結合として二重結合を1つ有するアルケニル基であっても、二重結合を2つ以上有するアルカジエニル基、アルカトリエニル基等であってもよい。また、不飽和炭素結合として三重結合を1つ有するアルキニル基であっても、三重結合を2つ以上有するアルカジイニル基等であってもよい。炭化水素基中に二重結合を1つ有する直鎖の不飽和アルキル基の具体例としては、例えばオクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
【0045】
アルキル基中に二重結合を1つ有する分岐鎖を有する不飽和アルキル基の具体例としては、例えばイソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
【0046】
上記炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられる。これらの中でも、エチレンオキサイドを含有するものであることが好ましい。
【0047】
アルキレンオキサイドの重合配列としては、特に制限されず、ランダム付加物であっても、ブロック付加物であってもよい。
上記炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中におけるアルコール1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。
上記フェノールアミン化合物と非イオン性界面活性剤との質量比は、特に制限されないが、フェノールアミン化合物/非イオン性界面活性剤=5/95以上95/5以下であることが好ましい。
【0049】
<ブレンステッド酸について>
本実施形態の処理剤は、さらに、ブレンステッド酸を含有することが好ましい。
ブレンステッド酸を含有することにより、耐炎化繊維の集束性をより向上させることができる。
【0050】
ここで、ブレンステッド酸は、プロトンを有し、かつ、水を含有する液体組成物中で当該プロトンを放出又は解離できる酸を意味するものとする。ルイス酸のようなプロトンを有さない酸とは異なるものとする。
【0051】
ブレンステッド酸の具体例としては、特に限定されないが、例えば酢酸、ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレン(n=4.5)ラウリルエーテル酢酸等のアルキルエーテル酢酸、オレオイルサルコシネート、ラウロイルサルコシネート、トリデシルアルコールのエチレンオキサイド5モル付加物のリン酸エステル、ヘキサデシルリン酸エステル等のリン酸エステル、乳酸、クエン酸、リン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸、硫酸等が挙げられる。
【0052】
上記ブレンステッド酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中のブレンステッド酸の含有量は、特に限定されないが、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
<エポキシ化合物について>
本実施形態の処理剤は、さらに、エポキシ化合物を含有することが好ましい。
エポキシ化合物を含有することにより、処理剤が付着した合成繊維を用いて炭素繊維を製造した際に、炭素繊維の毛羽を好適に抑制することができる。
【0054】
エポキシ化合物としては、特に制限はなく、エポキシ変性シリコーン、及びエポキシ・ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つを含むものであることが好ましい。
【0055】
エポキシ化合物が、上記エポキシ変性シリコーン、及びエポキシ・ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つを含むものであることにより、炭素繊維の毛羽をより好適に抑制することができる。
【0056】
エポキシ化合物の具体例としては、例えば25℃における動粘度が6000mm2/s、当量が3700g/molである側鎖型脂環式エポキシ変性シリコーン、25℃における動粘度が8000mm2/s、当量が3300g/molである側鎖型グリシジルエポキシ変性シリコーン、25℃における動粘度が120mm2/s、当量が2700g/molである両末端型グリシジルエポキシ変性シリコーン、25℃における動粘度が2800mm2/s、当量が2800g/molである側鎖型グリシジルエポキシポリエーテル変性シリコーン、25℃における動粘度が5000mm2/s、当量が4200g/molである側鎖型脂環式エポキシ変性シリコーン、25℃における動粘度が3100mm2/s、当量が10200g/molである側鎖型グリシジルエポキシポリエーテル変性シリコーン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(平均分子量370)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(平均分子量470)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(平均分子量340)、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ポリグリセリンのグリシジルエーテル化物(平均分子量1000)等が挙げられる。
【0057】
上記エポキシ化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、エポキシ化合物等の25℃における動粘度は、キャノンフェンスケ粘度計を用いて、25℃の条件下で公知の方法により測定することができる。
【0058】
処理剤中のエポキシ化合物の含有量は、特に限定されないが、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
<その他のシリコーンについて>
上記処理剤は、さらに、上記エポキシ変性シリコーン、及びエポキシ・ポリエーテル変性シリコーン以外のシリコーン(以下、「その他のシリコーン」ともいう。)を含有することが好ましい。その他のシリコーンを含有することにより、後述のように、処理剤を付着させた合成繊維を用いて製造した炭素繊維の強度をより向上させることができる。
【0059】
また、処理剤が、その他のシリコーンと上記のエポキシ化合物とを含有することにより、処理剤を付着させた合成繊維を用いて炭素繊維を製造した際に、炭素繊維同士の融着をより好適に抑制することができる。
【0060】
その他のシリコーンとしては、アミノ変性シリコーン、ジメチルシリコーン、及びポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
その他のシリコーンの具体例としては、例えば25℃における動粘度が250mm2/s、当量が7600g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン、25℃における動粘度が1300mm2/s、当量が1700g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン、25℃における動粘度が1700mm2/s、当量が3800g/molであるモノアミン型のアミノ変性シリコーン、25℃における動粘度が80mm2/s、当量が4000g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン、25℃における動粘度が5000mm2/sであるジメチルシリコーン、25℃における動粘度が1700mm2/s、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=40/60、シリコーン/ポリエーテルの質量比=20/80のポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0061】
(第2実施形態)
本発明に係る合成繊維を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している合成繊維である。合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ乳酸エステル等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、(5)セルロース系繊維、(6)リグニン系繊維等が挙げられる。
【0062】
合成繊維としては、後述する炭素化処理工程を経ることにより炭素繊維となる樹脂製の炭素繊維前駆体が好ましい。炭素繊維前駆体を構成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、リグニン樹脂、ピッチ等を挙げることができる。
【0063】
第1実施形態の処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、処理剤(溶媒を含まない)を合成繊維に対し0.1~2質量%となるように付着させることが好ましく、0.3~1.2質量%となるように付着させることがより好ましい。
【0064】
第1実施形態の処理剤を繊維に付着させる際の形態としては、例えば有機溶媒溶液、水性液等が挙げられる。
処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、例えば、第1実施形態の処理剤の有機溶媒溶液、水性液等を用いて、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー法、計量ポンプを用いたガイド給油法等によって付着させる方法を適用できる。
【0065】
本発明に係る処理剤、及びこの処理剤が付着した合成繊維を用いた炭素繊維の製造方法について説明する。
炭素繊維の製造方法は、下記の工程1~3を経ることが好ましい。
【0066】
工程1:合成繊維を紡糸するとともに、第1実施形態の処理剤を付着させる紡糸工程。
工程2:前記工程1で得られた合成繊維を200~300℃、好ましくは230~270℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程。
【0067】
工程3:前記工程2で得られた耐炎化繊維をさらに300~2000℃、好ましくは300~1300℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程。
紡糸工程は、さらに、樹脂を溶媒に溶解して紡糸する湿式紡糸工程、湿式紡糸された合成繊維を乾燥して緻密化する乾燥緻密化工程、及び乾燥緻密化した合成繊維を延伸する延伸工程を有していることが好ましい。
【0068】
乾燥緻密化工程の温度は特に限定されないが、湿式紡糸工程を経た合成繊維を、例えば、70~200℃で加熱することが好ましい。処理剤を合成繊維に付着させるタイミングは特に限定されないが、湿式紡糸工程と乾燥緻密化工程の間であることが好ましい。
【0069】
耐炎化処理工程における酸化性雰囲気は、特に限定されず、例えば、空気雰囲気を採用することができる。
炭素化処理工程における不活性雰囲気は、特に限定されず、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空雰囲気等を採用することができる。
【0070】
本実施形態の処理剤、及び合成繊維によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)処理剤は、フェノールアミン化合物、及び非イオン性界面活性剤を含有する。したがって、処理剤が付着した合成繊維を耐炎化処理した際に、耐炎化繊維の集束性を向上させることができる。また、この耐炎化繊維を炭素化した際に、炭素繊維の毛羽を抑制することができる。
【0071】
(2)処理剤は、さらに、ブレンステッド酸を含有する。したがって、耐炎化繊維の集束性をより向上させることができる。
(3)処理剤は、エポキシ化合物を含有する。したがって、処理剤が付着した合成繊維を用いて炭素繊維を製造した際に、炭素繊維の毛羽を好適に抑制することができる。
【0072】
(4)処理剤は、その他のシリコーンとエポキシ化合物とを含有する。したがって、処理剤を付着させた合成繊維を用いて炭素繊維を製造した際に、炭素繊維同士の融着をより好適に抑制することができる。
【0073】
上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態、及び、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・本実施形態では、湿式紡糸工程と乾燥緻密化工程の間において、処理剤を合成繊維に付着させていたが、この態様に限定されない。乾燥緻密化工程と延伸工程の間において処理剤を合成繊維に付着させても良いし、延伸工程と耐炎化処理工程の間において処理剤を合成繊維に付着させても良い。
【0074】
・本実施形態において、例えば、合成繊維が、耐炎化処理工程を行なうものの、炭素化処理工程までは行わない繊維であってもよい。また、耐炎化処理工程と炭素化処理工程の両方を行わない繊維であってもよい。
【0075】
・本実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤、帯電防止剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤(シリコーン系化合物)等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【実施例0076】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0077】
試験区分1(合成繊維用処理剤の調製)
(実施例1)
以下の方法により、表1に示されるフェノールアミン化合物(a1-1)が70部、希釈剤(a2-1)が30部の配合割合で含有するフェノールアミン化合物の溶液(A-1)を調製した。
【0078】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-1)>
まず、ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、トリエチレンテトラアミン52部(0.7当量)と、100レッドウッド秒の鉱物油368部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液30部(ホルムアルデヒド15部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-1)を調製した。
【0079】
なお、フェノールアミン化合物の溶液(A-2)~(A-12)は、以下の方法で調製した。
<フェノールアミン化合物の溶液(A-2)>
フェノールアミン化合物の溶液(A-1)100部をホウ酸1.1部と反応させてホウ素含有量が0.2質量%のフェノールアミン化合物の溶液(A-2)を調製した。
【0080】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-3)>
ポリブテン部分の数平均分子量が1200であるポリブテニル基で変性されたフェノール730部(1当量)と、ジエチレントリアミン58部(1当量)と、80レッドウッド秒の流動パラフィン530部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液34部(ホルムアルデヒド17部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-3)を調製した。
【0081】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-4)>
ポリブテン部分の数平均分子量が600であるポリブテニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、トリエチレンテトラアミン102部(0.6当量)と、150レッドウッド秒の鉱物油916部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液70部(ホルムアルデヒド35部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-4)を調製した。
【0082】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-5)>
ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、トリプロピレンテトラアミン47部(0.5当量)と、100レッドウッド秒の流動パラフィン213部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液30部(ホルムアルデヒド15部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-5)を調製した。
【0083】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-6)>
ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、トリエチレンテトラアミン66部(0.9当量)と、120レッドウッド秒の鉱物油872部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液30部(ホルムアルデヒド15部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-6)を調製した。
【0084】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-7)>
フェノールアミン化合物の溶液(A-6)100部をホウ酸5.7部と反応させてホウ素含有量が1.0質量%のフェノールアミン化合物の溶液(A-7)を調製した。
【0085】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-8)>
ポリイソブチレン部分の数平均分子量が900であるポリイソブテニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、トリエチレンテトラアミン130部(1.1当量)と、190レッドウッド秒の鉱物油1410部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液150部(ホルムアルデヒド75部相当、3.1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-8)を調製した。
【0086】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-9)>
ポリブテン部分の数平均分子量が600であるポリブテニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、テトラエチレンペンタアミン175部(0.8当量)と、100レッドウッド秒の鉱物油423部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液62部(ホルムアルデヒド31部相当、0.9当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-9)を調製した。
【0087】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-10)>
ポリブテン部分の数平均分子量が1000であるポリブテニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、エチレンジアミン31部(0.7当量)と、120レッドウッド秒の鉱物油840部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液44部(ホルムアルデヒド22部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-10)を調製した。
【0088】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-11)>
ポリプロプレン部分の数平均分子量が1500であるポリプロペニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、トリブチレンテトラアミン55部(0.4当量)と、120レッドウッド秒の鉱物油863部とを混合した、得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液30部(ホルムアルデヒド15部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-11)を調製した。
【0089】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-12)>
オクチル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、ジエチレントリアミン260部(0.7当量)と、120レッドウッド秒の鉱物油871部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液276部(ホルムアルデヒド108部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-12)を調製した。
【0090】
フェノールアミン化合物の種類、及び含有量、希釈剤の種類、及び含有量は、表1の「フェノールアミン化合物」欄、「希釈剤」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0091】
【表1】
(フェノールアミン化合物)
a1-1:ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリエチレンテトラアミンを反応させて得られた化合物
a1-2:ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリエチレンテトラアミンを反応させて得られた化合物をホウ酸と反応させた化合物(ホウ素含有量:0.2質量%)
a1-3:ポリブテン部分の数平均分子量が1200であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/ジエチレントリアミンを反応させて得られた化合物
a1-4:ポリブテン部分の数平均分子量が600であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリエチレンテトラアミンを反応させて得られた化合物
a1-5:ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリプロピレンテトラアミンを反応させて得られた化合物
a1-6:ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリエチレンテトラアミンを反応させて得られた化合物
a1-7:ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリエチレンテトラアミンを反応させて得られた化合物をホウ酸と反応させた化合物(ホウ素含有量:1.0質量%)
a1-8:ポリイソブチレン部分の数平均分子量が900であるポリイソブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリエチレンテトラアミンを反応させて得られた化合物
a1-9:ポリブテン部分の数平均分子量が600であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/テトラエチレンペンタアミンを反応させて得られた化合物
a1-10:ポリブテン部分の数平均分子量が1000であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/エチレンジアミンを反応させて得られた化合物
a1-11:ポリプロピレン部分の数平均分子量が1500であるポリプロペニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリブチレンテトラアミンを反応させて得られた化合物
a1-12:オクチル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/ジエチレントリアミンを反応させて得られた化合物
(希釈剤)
a2-1:鉱物油(レッドウッド粘度計での粘度が100秒)
a2-2:流動パラフィン(レッドウッド粘度計での粘度が80秒)
a2-3:鉱物油(レッドウッド粘度計での粘度が150秒)
a2-4:流動パラフィン(レッドウッド粘度計での粘度が100秒)
a2-5:鉱物油(レッドウッド粘度計での粘度が120秒)
a2-6:鉱物油(レッドウッド粘度計での粘度が190秒)
次に、表2に示される各成分を用いて、フェノールアミン化合物の溶液(A-1)が60部、非イオン性界面活性剤(B1-1)が20部、ブレンステッド酸(C-1)が0.5部、エポキシ化合物(D-1)が7.5部、その他のシリコーン(E-1)が10部、その他化合物が2部となるようにビーカーに加えた。これらをよく撹拌して合成繊維用処理剤を調製した。
【0092】
(実施例2~26及び比較例1~3)
実施例2~26及び比較例1~3の各フェノールアミン化合物の溶液は、表1、2に示される各成分を使用し、実施例1と同様の方法にて調製した。各例の処理剤中におけるフェノールアミン化合物の溶液の種類と含有量、非イオン性界面活性剤の種類と含有量、ブレンステッド酸の種類と含有量、エポキシ化合物の種類と含有量、その他のシリコーンの種類と含有量、その他化合物の種類と含有量、及びコハク酸イミド化合物と非イオン性界面活性剤の質量比は、表2の「フェノールアミン化合物の溶液」欄、「非イオン性界面活性剤」欄、「ブレンステッド酸」欄、「エポキシ化合物」欄、「その他のシリコーン」欄、「その他化合物」欄、及び「コハク酸イミド化合物/非イオン性界面活性剤」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0093】
【表2】
表2の記号欄に記載するB1-1~B1-9、B2-1~B2-3、C-1~C-11、D-1~D-11、E-1~E-6、F-1~F-5の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0094】
(非イオン性界面活性剤)
B1-1:ドデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた化合物
B1-2:イソドデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを12モル付加させた化合物
B1-3:テトラデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを7モル付加させた化合物
B1-4:テトラデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを7モル付加させた化合物
B1-5:ペンタデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを15モル付加させた化合物
B1-6:テトラデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを15モル付加させた後、プロピレンオキサイドを18モル付加させた化合物
B1-7:2級トリデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた化合物
B1-8:ドデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを2モル、プロピレンオキサイドを6モルランダム付加させた化合物
B1-9:トリスチレン化フェノール1モルに対してエチレンオキサイドを15モル、プロピレンオキサイドを9モル付加させた化合物
B2-1:ドデシルアミン1モルに対してエチレンオキサイドを4モル付加させた化合物
B2-2:ドデシルアミン1モルに対してエチレンオキサイドを8モル付加させた化合物
B2-3:オクタデシルアミン1モルに対してエチレンオキサイドを15モル付加させた化合物
(ブレンステッド酸)
C-1:酢酸
C-2:ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエーテル酢酸
C-3:ポリオキシエチレン(n=4.5)ラウリルエーテル酢酸
C-4:オレオイルサルコシネート
C-5:ラウロイルサルコシネート
C-6:トリデシルアルコールのエチレンオキサイド5モル付加物のリン酸エステル
C-7:ヘキサデシルリン酸エステル
C-8:乳酸
C-9:クエン酸
C-10:リン酸
C-11:ドデシルベンゼンスルホン酸
(エポキシ化合物)
D-1:25℃における動粘度が6000mm2/s、当量が3700g/molである側鎖型脂環式エポキシ変性シリコーン
D-2:25℃における動粘度が8000mm2/s、当量が3300g/molである側鎖型グリシジルエポキシ変性シリコーン
D-3:25℃における動粘度が120mm2/s、当量が2700g/molである両末端型グリシジルエポキシ変性シリコーン
D-4:25℃における動粘度が2800mm2/s、当量が2800g/molである側鎖型グリシジルエポキシポリエーテル変性シリコーン
D-5:25℃における動粘度が5000mm2/s、当量が4200g/molである側鎖型脂環式エポキシ変性シリコーン
D-6:25℃における動粘度が3100mm2/s、当量が10200g/molである側鎖型グリシジルエポキシポリエーテル変性シリコーン
D-7:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(平均分子量370)
D-8:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(平均分子量470)
D-9:ビスフェノールFジグリシジルエーテル(平均分子量340)
D-10:テトラグリシジルジアミンジフェニルメタン
D-11:ポリグリセリンのグリシジルエーテル化物(平均分子量1000)
(その他のシリコーン)
E-1:25℃における動粘度が250mm2/s、当量が7600g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン
E-2:25℃における動粘度が1300mm2/s、当量が1700g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン
E-3:25℃における動粘度が1700mm2/s、当量が3800g/molであるモノアミン型のアミノ変性シリコーン
E-4:25℃における動粘度が80mm2/s、当量が4000g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン
E-5:25℃における動粘度が5000mm2/sであるジメチルシリコーン
E-6:25℃における動粘度が1700mm2/s、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=40/60、シリコーン/ポリエーテルの質量比20/80のポリエーテル変性シリコーン
(その他化合物)
F-1:分子量600のポリエチレングリコールの両末端に3-アミノプロピル基を付加したもの
F-2:ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物のジドデシルエステル
F-3:1-エチル-2-(ヘプタデセニル)-4,5-ジハイドロ-3-(2-ハイドロキシエチル)-1H-イミダゾリニウムのエチル硫酸塩
F-4:トリメチルオクチルアンモニウムジメチルホスフェート
F-5:イソトリデシルイソステアレート
試験区分2(合成繊維、及び炭素繊維の製造)
試験区分1で調製した合成繊維用処理剤を用いて、合成繊維、及び炭素繊維を製造した。
【0095】
まず、工程1として、アクリル樹脂を湿式紡糸した。具体的には、アクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル3.5質量%、メタクリル酸1.5質量%からなる極限粘度1.80の共重合体を、ジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解してポリマー濃度が21.0質量%、60℃における粘度が500ポイズの紡糸原液を作成した。紡糸原液は、紡浴温度35℃に保たれたDMACの70質量%水溶液の凝固浴中に孔径(内径)0.075mm、ホール数12,000の紡糸口金よりドラフト比0.8で吐出した。
【0096】
凝固糸を水洗槽の中で脱溶媒と同時に5倍に延伸して水膨潤状態のアクリル繊維ストランド(原料繊維)を作成した。このアクリル繊維ストランドに対して、固形分付着量が1質量%(溶媒を含まない)となるように、試験区分1で調製した合成繊維用処理剤を給油した。合成繊維用処理剤の給油は、合成繊維用処理剤の4%イオン交換水溶液を用いた浸漬法により実施した。その後、アクリル繊維ストランドに対して、130℃の加熱ローラーで乾燥緻密化処理を行い、更に170℃の加熱ローラー間で1.7倍の延伸を施した後に巻き取り装置を用いて糸管に巻き取った。
【0097】
次に、工程2として、巻き取られた合成繊維から糸を解舒し、230~270℃の温度勾配を有する耐炎化炉で空気雰囲気下1時間、耐炎化処理した後に、搬送用ローラーを経由して糸管に巻き取ることで耐炎化糸(耐炎化繊維)を得た。
【0098】
次に、工程3として、巻き取られた耐炎化糸から糸を解舒し、窒素雰囲気下で300~1300℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維に転換後、糸管に巻き取ることで炭素繊維を得た。
【0099】
試験区分3(評価)
実施例1~26及び比較例1~3の処理剤について、処理剤を付着させた合成繊維を用いて作製した耐炎化繊維の集束性、炭素繊維同士の融着の有無、炭素繊維の強度、及び炭素繊維の毛羽の有無を評価した。各試験の手順について以下に示す。また、試験結果を表1の“耐炎化集束性”、“融着”、“強度”、及び“毛羽”欄に示す。
【0100】
(耐炎化集束性)
試験区分2の工程2において、耐炎化処理を行った繊維が搬送用ローラーを通過する際の集束状態を目視で確認して、以下の基準で集束性の評価を行った。
【0101】
・耐炎化繊維の集束性の評価基準
◎(良好):繊維が集束してトウ幅が相対的に狭くなっており、且つトウ幅が一定である場合
〇(可):繊維が集束しているものの、トウ幅が一定でない場合
×(不可):繊維が集束しておらず、繊維束中に空間が存在してトウ幅が広くなっている場合
(融着)
試験区分2の工程3で得られた炭素繊維を長さ10mmに切断し、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテルの水溶液中に分散させた。10分間攪拌した後、繊維の分散状態を目視で確認して、以下の基準で融着の評価を行なった。
【0102】
◎(良好):繊維が完全に均一に分散しており、短繊維束の存在が全く認められない場合
〇(可):繊維が概ね均一に分散しているが、短繊維束の存在が明らかに認められる場合
×(不可):繊維の分散状態が不均一で、短繊維束の存在が全体に認められる場合
(強度)
試験区分2の工程3で得られた炭素繊維を用いて、JIS R 7606に準じて炭素繊維の強度を測定した。以下の基準で炭素繊維の強度の評価を行った。
【0103】
・強度の評価基準
◎◎(優れる):強度が4.5GPa以上
◎(良好):強度が4.0GPa以上、4.5GPa未満
〇(可):強度が3.5GPa以上、4.0GPa未満
×(不可):強度が3.5GPa未満
(毛羽)
試験区分2の工程3において、糸管に巻き取られる炭素繊維を目視で観察し、10分間当たりの毛羽数を以下の基準で評価した。
【0104】
・毛羽の評価基準
◎◎(優れる):毛羽数が10個未満
◎(良好):毛羽数が10個以上、30個未満
〇(可):毛羽数が30個以上、50個未満
×(不可):毛羽数が50個以上
表2の結果から、本発明によれば、耐炎化繊維の集束性を好適に向上させることができる。また、本発明の合成繊維用処理剤を付着させた合成繊維を用いて製造した炭素繊維は、繊維同士の融着が抑制される。また、強度が向上するとともに、毛羽が抑制される。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノールアミン化合物、及び非イオン性界面活性剤を含有し、
前記フェノールアミン化合物が、
下記のフェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物とから形成されたもの、及び下記のフェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物の3成分から形成された化合物に対してホウ素含有化合物を反応させたものから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする合成繊維用処理剤。
フェノール誘導体:数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基が、変性しているフェノール。
【請求項2】
前記非イオン性界面活性剤が、炭素数4以上30以下の一価アルコール1モルに対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上50モル以下の割合で付加させた化合物、及び炭素数4以上30以下のアルキルアミン1モルに対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上50モル以下の割合で付加させた化合物の少なくとも一つを含む請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記フェノールアミン化合物と前記非イオン性界面活性剤との質量比が、フェノールアミン化合物/非イオン性界面活性剤=5/95以上95/5以下である請求項1又は2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
さらに、ブレンステッド酸を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
さらに、エポキシ化合物を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
前記エポキシ化合物が、エポキシ変性シリコーン、及びエポキシ・ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つを含むものである請求項5に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
さらに、アミノ変性シリコーン、ジメチルシリコーン、及びポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つを含有する請求項1~6のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項8】
前記合成繊維が、炭素繊維前駆体である請求項1~7のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とする合成繊維。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤、及び合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、炭素繊維は、アクリル樹脂等を紡糸する紡糸工程、紡糸された繊維を乾燥して緻密化する乾燥緻密化工程、乾燥緻密化した繊維を延伸して合成繊維である炭素繊維前駆体を製造する延伸工程、炭素繊維前駆体を耐炎化する耐炎化処理工程、及び耐炎化繊維を炭素化する炭素化処理工程を行なうことにより製造される。
【0003】
合成繊維の製造工程において、繊維の集束性を向上させるために、合成繊維用処理剤が用いられることがある。
特許文献1には、アミノ変性シリコーンと、界面活性剤と、分子内にポリオキシアルキレン基及び2つ以上の一級アミン基を有するアミン化合物とを含む合成繊維用処理剤としての繊維処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、合成繊維用処理剤には、合成繊維を耐炎化した際における耐炎化繊維の集束性の向上や、耐炎化繊維を炭素化した際における炭素繊維の毛羽の抑制も求められている。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐炎化繊維の集束性の向上、及び炭素繊維の毛羽の抑制を可能にした合成繊維用処理剤を提供することにある。また、この合成繊維用処理剤が付着した合成繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための合成繊維用処理剤は、フェノールアミン化合物、及び非イオン性界面活性剤を含有し、前記フェノールアミン化合物が、下記のフェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物とから形成されたもの、及び下記のフェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物の3成分から形成された化合物に対してホウ素含有化合物を反応させたものから選ばれる少なくとも一つである。
【0008】
フェノール誘導体:数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基が、変性しているフェノール。
上記合成繊維用処理剤について、前記非イオン性界面活性剤が、炭素数4以上30以下の一価アルコール1モルに対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上50モル以下の割合で付加させた化合物、及び炭素数4以上30以下のアルキルアミン1モルに対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上50モル以下の割合で付加させた化合物の少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0009】
上記合成繊維用処理剤について、前記フェノールアミン化合物と前記非イオン性界面活性剤との質量比が、フェノールアミン化合物/非イオン性界面活性剤=5/95以上95/5以下であることが好ましい。
【0010】
上記合成繊維用処理剤について、さらに、ブレンステッド酸を含有することが好ましい。
上記合成繊維用処理剤について、さらに、エポキシ化合物を含有することが好ましい。
【0011】
上記合成繊維用処理剤について、前記エポキシ化合物が、エポキシ変性シリコーン、及びエポキシ・ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つを含むものであることが好ましい。
【0012】
上記合成繊維用処理剤について、さらに、アミノ変性シリコーン、ジメチルシリコーン、及びポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましい。
【0013】
上記合成繊維用処理剤について、前記合成繊維が、炭素繊維前駆体であることが好ましい。
上記課題を解決するための合成繊維用処理剤は、上記合成繊維用処理剤が付着していることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、耐炎化繊維の集束性を向上させることができるとともに、炭素繊維の毛羽を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明に係る合成繊維用処理剤(以下、単に処理剤ともいう。)を具体化した第1実施形態について説明する。
【0016】
本実施形態の処理剤は、フェノールアミン化合物、及び非イオン性界面活性剤を含有する。
処理剤が、フェノールアミン化合物、及び非イオン性界面活性剤を含有することにより、処理剤が付着した合成繊維を耐炎化処理した際に、耐炎化繊維の集束性を向上させることができる。また、この耐炎化繊維を炭素化した際に、炭素繊維の毛羽を抑制することができる。
【0017】
<フェノールアミン化合物について>
上記フェノールアミン化合物は、下記のフェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物とから形成されたもの、及び下記のフェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物の3成分から形成された化合物に対してホウ素含有化合物を反応させたものから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0018】
フェノール誘導体:数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基が、変性しているフェノール。
上記フェノール誘導体は、下記の化1で示されるものであることが好ましい。
【0019】
【化1】
(化1において
R
1:数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基)
上記数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基としては、特に制限されないが、例えばプロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、イソブテン、イソペンテン、イソヘキセン、イソオクテン等の重合物からなる炭化水素基が挙げられる。
【0020】
上記数平均分子量は、500以上1800以下であることが好ましく、600以上1500以下であることがより好ましい。
上記R1は、フェノールに1つのみ変性していてもよいし、フェノールに2つ以上変性していてもよい。フェノールに2つ以上変性している態様では、同じ種類の炭化水素基が変性していてもよいし、異なる種類の炭化水素基が変性していてもよい。また、上記フェノール誘導体は、フェノールの基本構造を有していれば、R1以外の炭化水素基等の官能基を有していてもよい。
【0021】
上記ポリアミン化合物は、第一級アミノ基が2つ以上結合した脂肪族炭化水素を意味するものとする。
上記ポリアミン化合物は、下記の化2で示されるものであることが好ましい。
【0022】
【化2】
(化2において
X:0以上10以下の整数)
ポリアミン化合物の具体例としては、特に制限されないが、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、トリプロピレンテトラアミン、トリブチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、テトラプロピレンペンタアミン、テトラブチレンペンタアミン等が挙げられる。
【0023】
上記ポリアミン化合物は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記フェノールアミン化合物は、フェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物とがマンニッヒ反応を行うことによって形成されたものであることが好ましい。
【0024】
上記フェノールアミン化合物は、下記の化3、又は化4で示されるものであることが好ましい。
【0025】
【化3】
(化3において
R
2:数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基
X:0以上10以下の整数)
【0026】
【化4】
(化4において
R
3:数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基
R
4:数平均分子量が100以上2000以下の炭化水素基
X:0以上10以下の整数)
上記フェノールアミン化合物は、上記の化3、又は化4の一方を単独で含有したものであってもよいし、化3と化4の両方を含有したものであってもよい。すなわち、フェノールアミン化合物は、化3と化4の混合物であってもよい。
【0027】
また、フェノールアミン化合物は、フェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物の3成分から形成された化合物に対してホウ素含有化合物を反応させたものであってもよい。例えば、上記化3や化4に対して、ホウ素含有化合物を反応させたものであってもよい。
【0028】
言い換えれば、フェノールアミン化合物は、ホウ素化フェノールアミン化合物であってもよい。また、上記化3、化4等のホウ素化していないフェノールアミン化合物と、ホウ素化フェノールアミン化合物との混合物であってもよい。
【0029】
ホウ素含有化合物としては、特に制限されないが、例えば酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸無水物、ホウ酸エステル等が挙げられる。
上記ホウ素化合物は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
上記フェノールアミン化合物を形成する際の、フェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物の比率は特に制限されず、適宜、比率を調整して形成することができる。
【0031】
フェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物の比率としては、例えばフェノール誘導体1当量に対して、ホルムアルデヒド0.7当量以上3.5当量以下、ポリアミン化合物0.3当量以上1.5当量以下反応させることが好ましい。
【0032】
また、フェノールアミン化合物が、フェノール誘導体と、ホルムアルデヒドと、ポリアミン化合物の3成分から形成された化合物に対してホウ素含有化合物を反応させたものである場合、ホウ素含有化合物の比率は特に制限されず、適宜、比率を調整して反応させることができる。
【0033】
ホウ素含有化合物の比率としては、例えばフェノールアミン化合物にホウ素含有量として0.05質量%以上1.5質量%以下となるようにホウ素含有化合物を反応させることが好ましい。
【0034】
フェノールアミン化合物としての上記化3、化4や、ホウ素含有化合物を反応させたものは、例えば液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)等を用いて同定することができる。
【0035】
<希釈剤について>
上記フェノールアミン化合物は、後述のように、非イオン性界面活性剤等と混合して処理剤を調製する際に、希釈剤で希釈された溶液として用いられることが好ましい。
【0036】
希釈剤としては、例えば水、有機溶剤、鉱物油等が挙げられる。有機溶剤の具体例としては、ヘキサン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチルエーテル、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、クロロホルム等が挙げられる。鉱物油としては、例えば、芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えばスピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。鉱物油の粘度は、80~190レッドウッド秒であることが好ましい。これらの鉱物油は、市販品を適宜採用することができる。
【0037】
フェノールアミン化合物、及び希釈剤の含有割合に制限はない。フェノールアミン化合物、及び希釈剤の含有割合の合計を100質量部とすると、フェノールアミン化合物を30質量%以上90質量%以下、及び希釈剤を10質量%以上70質量%以下の割合で含むことが好ましく、フェノールアミン化合物を40質量%以上80質量%以下、及び希釈剤を20質量%以上60質量%以下の割合で含むことがより好ましい。
【0038】
<非イオン性界面活性剤について>
上記非イオン性界面活性剤としては、特に制限されないが、炭素数4以上30以下の一価アルコール1モルに対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上50モル以下の割合で付加させた化合物、及び炭素数4以上30以下のアルキルアミン1モルに対し炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上50モル以下の割合で付加させた化合物の少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0039】
炭素数4以上30以下の一価アルコールとしては、直鎖状又は分岐鎖構造を有する脂肪族アルコールであっても芳香族アルコールであってもよい。また、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコールのいずれであってもよい。
【0040】
炭素数4以上30以下の一価アルコールの具体例としては、例えば、(1)ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0041】
上記炭素数4以上30以下のアルキルアミンとしては、特に制限されず、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンのいずれであってもよい。
上記炭素数4以上30以下のアルキルアミンにおいて、炭素数4以上30以下のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖を有するアルキル基であってもよい。また、飽和アルキル基であっても、不飽和アルキル基であってもよい。
【0042】
直鎖のアルキル基の具体例としては、例えばブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0043】
分岐鎖を有する飽和アルキル基の具体例としては、例えばイソブチル基、イソペンチル基、イソヘキシル基、イソヘプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基等が挙げられる。
【0044】
不飽和アルキル基としては、不飽和炭素結合として二重結合を1つ有するアルケニル基であっても、二重結合を2つ以上有するアルカジエニル基、アルカトリエニル基等であってもよい。また、不飽和炭素結合として三重結合を1つ有するアルキニル基であっても、三重結合を2つ以上有するアルカジイニル基等であってもよい。炭化水素基中に二重結合を1つ有する直鎖の不飽和アルキル基の具体例としては、例えばオクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
【0045】
アルキル基中に二重結合を1つ有する分岐鎖を有する不飽和アルキル基の具体例としては、例えばイソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基等が挙げられる。
【0046】
上記炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられる。これらの中でも、エチレンオキサイドを含有するものであることが好ましい。
【0047】
アルキレンオキサイドの重合配列としては、特に制限されず、ランダム付加物であっても、ブロック付加物であってもよい。
上記炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中におけるアルコール1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。
上記フェノールアミン化合物と非イオン性界面活性剤との質量比は、特に制限されないが、フェノールアミン化合物/非イオン性界面活性剤=5/95以上95/5以下であることが好ましい。
【0049】
<ブレンステッド酸について>
本実施形態の処理剤は、さらに、ブレンステッド酸を含有することが好ましい。
ブレンステッド酸を含有することにより、耐炎化繊維の集束性をより向上させることができる。
【0050】
ここで、ブレンステッド酸は、プロトンを有し、かつ、水を含有する液体組成物中で当該プロトンを放出又は解離できる酸を意味するものとする。ルイス酸のようなプロトンを有さない酸とは異なるものとする。
【0051】
ブレンステッド酸の具体例としては、特に限定されないが、例えば酢酸、ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレン(n=4.5)ラウリルエーテル酢酸等のアルキルエーテル酢酸、オレオイルサルコシネート、ラウロイルサルコシネート、トリデシルアルコールのエチレンオキサイド5モル付加物のリン酸エステル、ヘキサデシルリン酸エステル等のリン酸エステル、乳酸、クエン酸、リン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸、硫酸等が挙げられる。
【0052】
上記ブレンステッド酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中のブレンステッド酸の含有量は、特に限定されないが、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
<エポキシ化合物について>
本実施形態の処理剤は、さらに、エポキシ化合物を含有することが好ましい。
エポキシ化合物を含有することにより、処理剤が付着した合成繊維を用いて炭素繊維を製造した際に、炭素繊維の毛羽を好適に抑制することができる。
【0054】
エポキシ化合物としては、特に制限はなく、エポキシ変性シリコーン、及びエポキシ・ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つを含むものであることが好ましい。
【0055】
エポキシ化合物が、上記エポキシ変性シリコーン、及びエポキシ・ポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つを含むものであることにより、炭素繊維の毛羽をより好適に抑制することができる。
【0056】
エポキシ化合物の具体例としては、例えば25℃における動粘度が6000mm2/s、当量が3700g/molである側鎖型脂環式エポキシ変性シリコーン、25℃における動粘度が8000mm2/s、当量が3300g/molである側鎖型グリシジルエポキシ変性シリコーン、25℃における動粘度が120mm2/s、当量が2700g/molである両末端型グリシジルエポキシ変性シリコーン、25℃における動粘度が2800mm2/s、当量が2800g/molである側鎖型グリシジルエポキシポリエーテル変性シリコーン、25℃における動粘度が5000mm2/s、当量が4200g/molである側鎖型脂環式エポキシ変性シリコーン、25℃における動粘度が3100mm2/s、当量が10200g/molである側鎖型グリシジルエポキシポリエーテル変性シリコーン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(平均分子量370)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(平均分子量470)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(平均分子量340)、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ポリグリセリンのグリシジルエーテル化物(平均分子量1000)等が挙げられる。
【0057】
上記エポキシ化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、エポキシ化合物等の25℃における動粘度は、キャノンフェンスケ粘度計を用いて、25℃の条件下で公知の方法により測定することができる。
【0058】
処理剤中のエポキシ化合物の含有量は、特に限定されないが、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
<その他のシリコーンについて>
上記処理剤は、さらに、上記エポキシ変性シリコーン、及びエポキシ・ポリエーテル変性シリコーン以外のシリコーン(以下、「その他のシリコーン」ともいう。)を含有することが好ましい。その他のシリコーンを含有することにより、後述のように、処理剤を付着させた合成繊維を用いて製造した炭素繊維の強度をより向上させることができる。
【0059】
また、処理剤が、その他のシリコーンと上記のエポキシ化合物とを含有することにより、処理剤を付着させた合成繊維を用いて炭素繊維を製造した際に、炭素繊維同士の融着をより好適に抑制することができる。
【0060】
その他のシリコーンとしては、アミノ変性シリコーン、ジメチルシリコーン、及びポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
その他のシリコーンの具体例としては、例えば25℃における動粘度が250mm2/s、当量が7600g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン、25℃における動粘度が1300mm2/s、当量が1700g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン、25℃における動粘度が1700mm2/s、当量が3800g/molであるモノアミン型のアミノ変性シリコーン、25℃における動粘度が80mm2/s、当量が4000g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン、25℃における動粘度が5000mm2/sであるジメチルシリコーン、25℃における動粘度が1700mm2/s、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=40/60、シリコーン/ポリエーテルの質量比=20/80のポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0061】
(第2実施形態)
本発明に係る合成繊維を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している合成繊維である。合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ乳酸エステル等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、(5)セルロース系繊維、(6)リグニン系繊維等が挙げられる。
【0062】
合成繊維としては、後述する炭素化処理工程を経ることにより炭素繊維となる樹脂製の炭素繊維前駆体が好ましい。炭素繊維前駆体を構成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、リグニン樹脂、ピッチ等を挙げることができる。
【0063】
第1実施形態の処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、処理剤(溶媒を含まない)を合成繊維に対し0.1~2質量%となるように付着させることが好ましく、0.3~1.2質量%となるように付着させることがより好ましい。
【0064】
第1実施形態の処理剤を繊維に付着させる際の形態としては、例えば有機溶媒溶液、水性液等が挙げられる。
処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、例えば、第1実施形態の処理剤の有機溶媒溶液、水性液等を用いて、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー法、計量ポンプを用いたガイド給油法等によって付着させる方法を適用できる。
【0065】
本発明に係る処理剤、及びこの処理剤が付着した合成繊維を用いた炭素繊維の製造方法について説明する。
炭素繊維の製造方法は、下記の工程1~3を経ることが好ましい。
【0066】
工程1:合成繊維を紡糸するとともに、第1実施形態の処理剤を付着させる紡糸工程。
工程2:前記工程1で得られた合成繊維を200~300℃、好ましくは230~270℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程。
【0067】
工程3:前記工程2で得られた耐炎化繊維をさらに300~2000℃、好ましくは300~1300℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程。
紡糸工程は、さらに、樹脂を溶媒に溶解して紡糸する湿式紡糸工程、湿式紡糸された合成繊維を乾燥して緻密化する乾燥緻密化工程、及び乾燥緻密化した合成繊維を延伸する延伸工程を有していることが好ましい。
【0068】
乾燥緻密化工程の温度は特に限定されないが、湿式紡糸工程を経た合成繊維を、例えば、70~200℃で加熱することが好ましい。処理剤を合成繊維に付着させるタイミングは特に限定されないが、湿式紡糸工程と乾燥緻密化工程の間であることが好ましい。
【0069】
耐炎化処理工程における酸化性雰囲気は、特に限定されず、例えば、空気雰囲気を採用することができる。
炭素化処理工程における不活性雰囲気は、特に限定されず、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、真空雰囲気等を採用することができる。
【0070】
本実施形態の処理剤、及び合成繊維によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)処理剤は、フェノールアミン化合物、及び非イオン性界面活性剤を含有する。したがって、処理剤が付着した合成繊維を耐炎化処理した際に、耐炎化繊維の集束性を向上させることができる。また、この耐炎化繊維を炭素化した際に、炭素繊維の毛羽を抑制することができる。
【0071】
(2)処理剤は、さらに、ブレンステッド酸を含有する。したがって、耐炎化繊維の集束性をより向上させることができる。
(3)処理剤は、エポキシ化合物を含有する。したがって、処理剤が付着した合成繊維を用いて炭素繊維を製造した際に、炭素繊維の毛羽を好適に抑制することができる。
【0072】
(4)処理剤は、その他のシリコーンとエポキシ化合物とを含有する。したがって、処理剤を付着させた合成繊維を用いて炭素繊維を製造した際に、炭素繊維同士の融着をより好適に抑制することができる。
【0073】
上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態、及び、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・本実施形態では、湿式紡糸工程と乾燥緻密化工程の間において、処理剤を合成繊維に付着させていたが、この態様に限定されない。乾燥緻密化工程と延伸工程の間において処理剤を合成繊維に付着させても良いし、延伸工程と耐炎化処理工程の間において処理剤を合成繊維に付着させても良い。
【0074】
・本実施形態において、例えば、合成繊維が、耐炎化処理工程を行なうものの、炭素化処理工程までは行わない繊維であってもよい。また、耐炎化処理工程と炭素化処理工程の両方を行わない繊維であってもよい。
【0075】
・本実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤、帯電防止剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤(シリコーン系化合物)等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【実施例0076】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0077】
試験区分1(合成繊維用処理剤の調製)
(実施例1)
以下の方法により、表1に示されるフェノールアミン化合物(a1-1)が70部、希釈剤(a2-1)が30部の配合割合で含有するフェノールアミン化合物の溶液(A-1)を調製した。
【0078】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-1)>
まず、ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、トリエチレンテトラアミン52部(0.7当量)と、100レッドウッド秒の鉱物油368部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液30部(ホルムアルデヒド15部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-1)を調製した。
【0079】
なお、フェノールアミン化合物の溶液(A-2)~(A-12)は、以下の方法で調製した。
<フェノールアミン化合物の溶液(A-2)>
フェノールアミン化合物の溶液(A-1)100部をホウ酸1.1部と反応させてホウ素含有量が0.2質量%のフェノールアミン化合物の溶液(A-2)を調製した。
【0080】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-3)>
ポリブテン部分の数平均分子量が1200であるポリブテニル基で変性されたフェノール730部(1当量)と、ジエチレントリアミン58部(1当量)と、80レッドウッド秒の流動パラフィン530部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液34部(ホルムアルデヒド17部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-3)を調製した。
【0081】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-4)>
ポリブテン部分の数平均分子量が600であるポリブテニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、トリエチレンテトラアミン102部(0.6当量)と、150レッドウッド秒の鉱物油916部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液70部(ホルムアルデヒド35部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-4)を調製した。
【0082】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-5)>
ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、トリプロピレンテトラアミン47部(0.5当量)と、100レッドウッド秒の流動パラフィン213部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液30部(ホルムアルデヒド15部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-5)を調製した。
【0083】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-6)>
ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、トリエチレンテトラアミン66部(0.9当量)と、120レッドウッド秒の鉱物油872部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液30部(ホルムアルデヒド15部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-6)を調製した。
【0084】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-7)>
フェノールアミン化合物の溶液(A-6)100部をホウ酸5.7部と反応させてホウ素含有量が1.0質量%のフェノールアミン化合物の溶液(A-7)を調製した。
【0085】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-8)>
ポリイソブチレン部分の数平均分子量が900であるポリイソブテニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、トリエチレンテトラアミン130部(1.1当量)と、190レッドウッド秒の鉱物油1410部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液150部(ホルムアルデヒド75部相当、3.1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-8)を調製した。
【0086】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-9)>
ポリブテン部分の数平均分子量が600であるポリブテニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、テトラエチレンペンタアミン175部(0.8当量)と、100レッドウッド秒の鉱物油423部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液62部(ホルムアルデヒド31部相当、0.9当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-9)を調製した。
【0087】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-10)>
ポリブテン部分の数平均分子量が1000であるポリブテニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、エチレンジアミン31部(0.7当量)と、120レッドウッド秒の鉱物油840部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液44部(ホルムアルデヒド22部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-10)を調製した。
【0088】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-11)>
ポリプロプレン部分の数平均分子量が1500であるポリプロペニル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、トリブチレンテトラアミン55部(0.4当量)と、120レッドウッド秒の鉱物油863部とを混合した、得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液30部(ホルムアルデヒド15部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-11)を調製した。
【0089】
<フェノールアミン化合物の溶液(A-12)>
オクチル基で変性されたフェノール800部(1当量)と、ジエチレントリアミン260部(0.7当量)と、120レッドウッド秒の鉱物油871部とを混合した。得られた混合物に、1時間にわたって50%のホルムアルデヒド水溶液276部(ホルムアルデヒド108部相当、1当量)を滴下した後、窒素気流下、100℃で3時間反応させた。200℃に昇温し、未反応物と生成水を減圧除去した。その後、降温し、濾過して、フェノールアミン化合物の溶液(A-12)を調製した。
【0090】
フェノールアミン化合物の種類、及び含有量、希釈剤の種類、及び含有量は、表1の「フェノールアミン化合物」欄、「希釈剤」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0091】
【表1】
(フェノールアミン化合物)
a1-1:ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリエチレンテトラアミンを反応させて得られた化合物
a1-2:ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリエチレンテトラアミンを反応させて得られた化合物をホウ酸と反応させた化合物(ホウ素含有量:0.2質量%)
a1-3:ポリブテン部分の数平均分子量が1200であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/ジエチレントリアミンを反応させて得られた化合物
a1-4:ポリブテン部分の数平均分子量が600であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリエチレンテトラアミンを反応させて得られた化合物
a1-5:ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリプロピレンテトラアミンを反応させて得られた化合物
a1-6:ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリエチレンテトラアミンを反応させて得られた化合物
a1-7:ポリブテン部分の数平均分子量が1500であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリエチレンテトラアミンを反応させて得られた化合物をホウ酸と反応させた化合物(ホウ素含有量:1.0質量%)
a1-8:ポリイソブチレン部分の数平均分子量が900であるポリイソブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリエチレンテトラアミンを反応させて得られた化合物
a1-9:ポリブテン部分の数平均分子量が600であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/テトラエチレンペンタアミンを反応させて得られた化合物
a1-10:ポリブテン部分の数平均分子量が1000であるポリブテニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/エチレンジアミンを反応させて得られた化合物
a1-11:ポリプロピレン部分の数平均分子量が1500であるポリプロペニル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/トリブチレンテトラアミンを反応させて得られた化合物
a1-12:オクチル基で変性されたフェノール/ホルムアルデヒド/ジエチレントリアミンを反応させて得られた化合物
(希釈剤)
a2-1:鉱物油(レッドウッド粘度計での粘度が100秒)
a2-2:流動パラフィン(レッドウッド粘度計での粘度が80秒)
a2-3:鉱物油(レッドウッド粘度計での粘度が150秒)
a2-4:流動パラフィン(レッドウッド粘度計での粘度が100秒)
a2-5:鉱物油(レッドウッド粘度計での粘度が120秒)
a2-6:鉱物油(レッドウッド粘度計での粘度が190秒)
次に、表2に示される各成分を用いて、フェノールアミン化合物の溶液(A-1)が60部、非イオン性界面活性剤(B1-1)が20部、ブレンステッド酸(C-1)が0.5部、エポキシ化合物(D-1)が7.5部、その他のシリコーン(E-1)が10部、その他化合物が2部となるようにビーカーに加えた。これらをよく撹拌して合成繊維用処理剤を調製した。
【0092】
(実施例2~26及び比較例1~3)
実施例2~26及び比較例1~3の各フェノールアミン化合物の溶液は、表1、2に示される各成分を使用し、実施例1と同様の方法にて調製した。各例の処理剤中におけるフェノールアミン化合物の溶液の種類と含有量、非イオン性界面活性剤の種類と含有量、ブレンステッド酸の種類と含有量、エポキシ化合物の種類と含有量、その他のシリコーンの種類と含有量、その他化合物の種類と含有量、及びコハク酸イミド化合物と非イオン性界面活性剤の質量比は、表2の「フェノールアミン化合物の溶液」欄、「非イオン性界面活性剤」欄、「ブレンステッド酸」欄、「エポキシ化合物」欄、「その他のシリコーン」欄、「その他化合物」欄、及び「コハク酸イミド化合物/非イオン性界面活性剤」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0093】
【表2】
表2の記号欄に記載するB1-1~B1-9、B2-1~B2-3、C-1~C-11、D-1~D-11、E-1~E-6、F-1~F-5の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0094】
(非イオン性界面活性剤)
B1-1:ドデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた化合物
B1-2:イソドデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを12モル付加させた化合物
B1-3:テトラデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを7モル付加させた化合物
B1-4:テトラデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを7モル付加させた化合物
B1-5:ペンタデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを15モル付加させた化合物
B1-6:テトラデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを15モル付加させた後、プロピレンオキサイドを18モル付加させた化合物
B1-7:2級トリデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた化合物
B1-8:ドデシルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを2モル、プロピレンオキサイドを6モルランダム付加させた化合物
B1-9:トリスチレン化フェノール1モルに対してエチレンオキサイドを15モル、プロピレンオキサイドを9モル付加させた化合物
B2-1:ドデシルアミン1モルに対してエチレンオキサイドを4モル付加させた化合物
B2-2:ドデシルアミン1モルに対してエチレンオキサイドを8モル付加させた化合物
B2-3:オクタデシルアミン1モルに対してエチレンオキサイドを15モル付加させた化合物
(ブレンステッド酸)
C-1:酢酸
C-2:ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエーテル酢酸
C-3:ポリオキシエチレン(n=4.5)ラウリルエーテル酢酸
C-4:オレオイルサルコシネート
C-5:ラウロイルサルコシネート
C-6:トリデシルアルコールのエチレンオキサイド5モル付加物のリン酸エステル
C-7:ヘキサデシルリン酸エステル
C-8:乳酸
C-9:クエン酸
C-10:リン酸
C-11:ドデシルベンゼンスルホン酸
(エポキシ化合物)
D-1:25℃における動粘度が6000mm2/s、当量が3700g/molである側鎖型脂環式エポキシ変性シリコーン
D-2:25℃における動粘度が8000mm2/s、当量が3300g/molである側鎖型グリシジルエポキシ変性シリコーン
D-3:25℃における動粘度が120mm2/s、当量が2700g/molである両末端型グリシジルエポキシ変性シリコーン
D-4:25℃における動粘度が2800mm2/s、当量が2800g/molである側鎖型グリシジルエポキシポリエーテル変性シリコーン
D-5:25℃における動粘度が5000mm2/s、当量が4200g/molである側鎖型脂環式エポキシ変性シリコーン
D-6:25℃における動粘度が3100mm2/s、当量が10200g/molである側鎖型グリシジルエポキシポリエーテル変性シリコーン
D-7:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(平均分子量370)
D-8:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(平均分子量470)
D-9:ビスフェノールFジグリシジルエーテル(平均分子量340)
D-10:テトラグリシジルジアミンジフェニルメタン
D-11:ポリグリセリンのグリシジルエーテル化物(平均分子量1000)
(その他のシリコーン)
E-1:25℃における動粘度が250mm2/s、当量が7600g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン
E-2:25℃における動粘度が1300mm2/s、当量が1700g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン
E-3:25℃における動粘度が1700mm2/s、当量が3800g/molであるモノアミン型のアミノ変性シリコーン
E-4:25℃における動粘度が80mm2/s、当量が4000g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン
E-5:25℃における動粘度が5000mm2/sであるジメチルシリコーン
E-6:25℃における動粘度が1700mm2/s、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=40/60、シリコーン/ポリエーテルの質量比20/80のポリエーテル変性シリコーン
(その他化合物)
F-1:分子量600のポリエチレングリコールの両末端に3-アミノプロピル基を付加したもの
F-2:ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物のジドデシルエステル
F-3:1-エチル-2-(ヘプタデセニル)-4,5-ジハイドロ-3-(2-ハイドロキシエチル)-1H-イミダゾリニウムのエチル硫酸塩
F-4:トリメチルオクチルアンモニウムジメチルホスフェート
F-5:イソトリデシルイソステアレート
試験区分2(合成繊維、及び炭素繊維の製造)
試験区分1で調製した合成繊維用処理剤を用いて、合成繊維、及び炭素繊維を製造した。
【0095】
まず、工程1として、アクリル樹脂を湿式紡糸した。具体的には、アクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル3.5質量%、メタクリル酸1.5質量%からなる極限粘度1.80の共重合体を、ジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解してポリマー濃度が21.0質量%、60℃における粘度が500ポイズの紡糸原液を作成した。紡糸原液は、紡浴温度35℃に保たれたDMACの70質量%水溶液の凝固浴中に孔径(内径)0.075mm、ホール数12,000の紡糸口金よりドラフト比0.8で吐出した。
【0096】
凝固糸を水洗槽の中で脱溶媒と同時に5倍に延伸して水膨潤状態のアクリル繊維ストランド(原料繊維)を作成した。このアクリル繊維ストランドに対して、固形分付着量が1質量%(溶媒を含まない)となるように、試験区分1で調製した合成繊維用処理剤を給油した。合成繊維用処理剤の給油は、合成繊維用処理剤の4%イオン交換水溶液を用いた浸漬法により実施した。その後、アクリル繊維ストランドに対して、130℃の加熱ローラーで乾燥緻密化処理を行い、更に170℃の加熱ローラー間で1.7倍の延伸を施した後に巻き取り装置を用いて糸管に巻き取った。
【0097】
次に、工程2として、巻き取られた合成繊維から糸を解舒し、230~270℃の温度勾配を有する耐炎化炉で空気雰囲気下1時間、耐炎化処理した後に、搬送用ローラーを経由して糸管に巻き取ることで耐炎化糸(耐炎化繊維)を得た。
【0098】
次に、工程3として、巻き取られた耐炎化糸から糸を解舒し、窒素雰囲気下で300~1300℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維に転換後、糸管に巻き取ることで炭素繊維を得た。
【0099】
試験区分3(評価)
実施例1~26及び比較例1~3の処理剤について、処理剤を付着させた合成繊維を用いて作製した耐炎化繊維の集束性、炭素繊維同士の融着の有無、炭素繊維の強度、及び炭素繊維の毛羽の有無を評価した。各試験の手順について以下に示す。また、試験結果を表1の“耐炎化集束性”、“融着”、“強度”、及び“毛羽”欄に示す。
【0100】
(耐炎化集束性)
試験区分2の工程2において、耐炎化処理を行った繊維が搬送用ローラーを通過する際の集束状態を目視で確認して、以下の基準で集束性の評価を行った。
【0101】
・耐炎化繊維の集束性の評価基準
◎(良好):繊維が集束してトウ幅が相対的に狭くなっており、且つトウ幅が一定である場合
〇(可):繊維が集束しているものの、トウ幅が一定でない場合
×(不可):繊維が集束しておらず、繊維束中に空間が存在してトウ幅が広くなっている場合
(融着)
試験区分2の工程3で得られた炭素繊維を長さ10mmに切断し、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテルの水溶液中に分散させた。10分間攪拌した後、繊維の分散状態を目視で確認して、以下の基準で融着の評価を行なった。
【0102】
◎(良好):繊維が完全に均一に分散しており、短繊維束の存在が全く認められない場合
〇(可):繊維が概ね均一に分散しているが、短繊維束の存在が明らかに認められる場合
×(不可):繊維の分散状態が不均一で、短繊維束の存在が全体に認められる場合
(強度)
試験区分2の工程3で得られた炭素繊維を用いて、JIS R 7606に準じて炭素繊維の強度を測定した。以下の基準で炭素繊維の強度の評価を行った。
【0103】
・強度の評価基準
◎◎(優れる):強度が4.5GPa以上
◎(良好):強度が4.0GPa以上、4.5GPa未満
〇(可):強度が3.5GPa以上、4.0GPa未満
×(不可):強度が3.5GPa未満
(毛羽)
試験区分2の工程3において、糸管に巻き取られる炭素繊維を目視で観察し、10分間当たりの毛羽数を以下の基準で評価した。
【0104】
・毛羽の評価基準
◎◎(優れる):毛羽数が10個未満
◎(良好):毛羽数が10個以上、30個未満
〇(可):毛羽数が30個以上、50個未満
×(不可):毛羽数が50個以上
表2の結果から、本発明によれば、耐炎化繊維の集束性を好適に向上させることができる。また、本発明の合成繊維用処理剤を付着させた合成繊維を用いて製造した炭素繊維は、繊維同士の融着が抑制される。また、強度が向上するとともに、毛羽が抑制される。