(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186354
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20221208BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20221208BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20221208BHJP
H01F 41/12 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01F17/04 Z
H01F27/29 123
H01F17/00 B
H01F17/04 F
H01F41/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094523
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】江田 北斗
(72)【発明者】
【氏名】大久保 等
(72)【発明者】
【氏名】荒田 正純
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 政太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 耕平
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 隆将
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E044CA03
5E044CA06
5E070AA01
5E070AA16
5E070AB08
5E070BB03
5E070CB12
5E070CB13
5E070CB20
5E070DA13
(57)【要約】
【課題】素体表面の同一面に設けられた外部端子間の絶縁性の向上が図られたコイル部品を提供する。
【解決手段】 コイル部品1においては、外部端子電極60A、60B、60C、60Dを介して電圧を印加したときに、たとえば外側端部41a、42a間に電位差が生じることがある。コイル部品1においては、素体10の端面10aに露出した上側絶縁体50Aによって外側端部41a、42a間における絶縁性が高められているため、外側端部41a、42a間に電位差が生じた場合であっても、端面10a上において外側端部41a、42a同士が短絡する事態が抑制されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属磁性粉含有樹脂で構成され、互いに平行な第1の端面および第2の端面を有する素体と、
前記素体内に設けられ、前記第1の端面および前記第2の端面に対して直交し、かつ、前記第1の端面と前記第2の端面との間に亘って延在する絶縁基板と、
前記絶縁基板上に設けられ、前記第1の端面に露出する第1端部をそれぞれ有する一対のコイル部と、
前記第1の端面に設けられ、前記一対のコイル部の第1端部とそれぞれ接続された一対の第1の外部端子と、
前記素体の内部から前記第1の端面に露出し、前記第1の端面において前記一対のコイル部の第1端部の間に位置する第1の絶縁部と
を備える、コイル部品。
【請求項2】
前記第1の絶縁部が、前記第1の端面において前記一対のコイル部の第1端部間に挟まれた領域の全域にある、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1の端面において前記一対のコイル部の第1端部間に挟まれた領域に、前記第1の絶縁部と前記金属磁性粉含有樹脂とが露出しており、
前記一対のコイル部の第1端部が並ぶ方向において前記第1の絶縁部が前記金属磁性粉含有樹脂に挟まれている、請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1の絶縁部が、前記一対のコイル部の第1端部間を横断するように延びている、請求項1~3のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1の端面における前記一対のコイル部の第1端部間に挟まれた領域の少なくとも一部を覆う絶縁層をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1の端面において前記第1の外部端子が前記第1の絶縁部の一部を直接覆っている、請求項1~5のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記一対のコイル部が前記第2の端面に露出する第2端部をそれぞれ有し、
前記第2の端面に設けられ、前記一対のコイル部の第2端部とそれぞれ接続された一対の第2の外部端子と、
前記素体の内部から前記第2の端面に露出し、前記第2の端面において前記一対のコイル部の第2端部の間に位置する第2の絶縁部と
をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、素体内に複数のコイルが設けられたコイル部品が知られている。下記特許文献1には、素体内に2つのコイルが設けられた4端子のコイル部品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなコイル部品においては、素体表面の同一面に複数の外部端子が設けられることがあり、これらの外部端子間では十分な絶縁を図る必要がある。
【0005】
発明者らは、外部端子間の絶縁について研究を重ね、外部端子間の絶縁性をより高めることができる技術を新たに見出した。
【0006】
本発明は、素体表面の同一面に設けられた外部端子間の絶縁性の向上が図られたコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るコイル部品は、金属磁性粉含有樹脂で構成され、互いに平行な第1の端面および第2の端面を有する素体と、素体内に設けられ、第1の端面および第2の端面に対して直交し、かつ、第1の端面と第2の端面との間に亘って延在する絶縁基板と、絶縁基板上に設けられ、第1の端面に露出する第1端部をそれぞれ有する一対のコイル部と、第1の端面に設けられ、一対のコイル部の第1端部とそれぞれ接続された一対の第1の外部端子と、素体の内部から第1の端面に露出し、第1の端面において一対のコイル部の第1端部の間に位置する第1の絶縁部とを備える。
【0008】
上記コイル部品においては、素体の第1の端面に露出する第1の絶縁部により、一対のコイル部の第1端部同士が、第1の端面上において短絡する事態が抑制されている。
【0009】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、第1の絶縁部が、第1の端面において一対のコイル部の第1端部間に挟まれた領域の全域にある。
【0010】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、第1の端面において一対のコイル部の第1端部間に挟まれた領域に、第1の絶縁部と金属磁性粉含有樹脂とが露出しており、一対のコイル部の第1端部が並ぶ方向において第1の絶縁部が金属磁性粉含有樹脂に挟まれている。
【0011】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、第1の絶縁部が、一対のコイル部の第1端部間を横断するように延びている。
【0012】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、第1の端面における一対のコイル部の第1端部間に挟まれた領域の少なくとも一部を覆う絶縁層をさらに備える。
【0013】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、第1の端面において第1の外部端子が第1の絶縁部の一部を直接覆っている。
【0014】
本発明の他の側面に係るコイル部品は、一対のコイル部が第2の端面に露出する第2端部をそれぞれ有し、第2の端面に設けられ、一対のコイル部の第2端部とそれぞれ接続された一対の第2の外部端子と、素体の内部から第2の端面に露出し、第2の端面において一対のコイル部の第2端部の間に位置する第2の絶縁部とをさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、素体表面の同一面に設けられた外部端子間の絶縁性の向上が図られたコイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係るコイル部品の概略斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すコイル部品のIV-IV線断面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すコイル部品のV-V線断面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示すコイル部品の素体の一方の端面を示した図である。
【
図8】
図8は、
図1に示すコイル部品の素体の他方の端面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
実施形態に係るコイル部品1は、バランコイルである。バランコイルは、たとえば近距離無線通信回路(NFC回路)をセルラー端末に搭載する際に利用される。バランコイルがアンテナの不平衡信号とNFC回路の平衡信号との間の変換をおこなうことで、不平衡回路と平衡回路との接続が実現される。
【0019】
図1に示すように、コイル部品1は、素体10と、素体10内に埋設されたコイル構造体20と、素体10の表面に設けられた二対の外部端子電極60A、60B、60C、60Dとを備えて構成されている。
【0020】
素体10は、直方体状の外形を有し、6つの面10a~10fを有する。素体10は、一例として、長辺2.0mm、短辺1.25mm、高さ0.65mmの寸法で設計される。素体10の面10a~10fのうち、端面10a(第1の端面)と端面10b(第2の端面)とが互いに平行であり、上面10cと下面10dとが互いに平行であり、側面10eと側面10fとが互いに平行である。素体10の上面10cは、コイル部品1が実装される実装基板の実装面と平行に対向する面である。
【0021】
素体10は、磁性材料の一種である金属磁性粉含有樹脂12で構成されている。金属磁性粉含有樹脂12は、金属磁性粉体がバインダ樹脂により結着された結着粉体である。金属磁性粉含有樹脂12の金属磁性粉は、たとえば鉄ニッケル合金(パーマロイ合金)、カルボニル鉄、アモルファス、非晶質または結晶質のFeSiCr系合金、センダスト等で構成されている。バインダ樹脂は、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂である。本実施形態では、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントでは80~92vol%であり、質量パーセントでは95~99wt%である。磁気特性の観点から、結着粉体における金属磁性粉体の含有量は、体積パーセントで85~92vol%、質量パーセントで97~99wt%であってもよい。金属磁性粉含有樹脂12の磁性粉は、1種類の平均粒径を有する粉体であってもよく、複数種類の平均粒径を有する混合粉体であってもよい。
【0022】
素体10の金属磁性粉含有樹脂12は、後述するコイル構造体20を一体的に覆っている。具体的には、金属磁性粉含有樹脂12は、コイル構造体20を上下方向から覆うとともに、コイル構造体20の外周を覆っている。また、金属磁性粉含有樹脂12は、コイル構造体20の内周領域を充たしている。
【0023】
コイル構造体20は、絶縁基板30と、絶縁基板30の上側に設けられた上側コイル構造体40Aと、絶縁基板30の下側に設けられた下側コイル構造体40Bとを備えて構成されている。
【0024】
絶縁基板30は、平板状の形状を有し、素体10の端面10a、10b間に亘って延在しており、端面10a、10bに対して直交するように設計されている。また、絶縁基板30は、素体10の上面10cおよび下面10dに対して平行に延在している。
図3に示すように、絶縁基板30は、素体10の長辺方向に沿って延びる楕円環状のコイル形成部31と、素体10の短辺方向に沿って延びるとともにコイル形成部31を両側から挟む一対のフレーム部34A、34Bとを有する。コイル形成部31の中央部分には、素体10の長辺方向に沿って延びる楕円状の開口32が設けられている。
【0025】
絶縁基板30は、非磁性の絶縁材料で構成されている。絶縁基板30の厚さは、たとえば10~60μmの範囲に設計することができる。本実施形態では、絶縁基板30はガラスクロスにエポキシ系樹脂が含浸した構成を有する。絶縁基板30を構成する樹脂は、エポキシ系樹脂に限られず、BTレジン、ポリイミド、アラミド等であってもよい。絶縁基板30の構成材料は、セラミックやガラスであってもよい。絶縁基板30の構成材料は、大量生産されているプリント基板材料であってもよい。絶縁基板30の構成材料は、BTプリント基板、FR4プリント基板、またはFR5プリント基板に用いられる樹脂材料であってもよい。
【0026】
上側コイル構造体40Aは、絶縁基板30のコイル形成部31における基板上面30aに設けられている。上側コイル構造体40Aは、
図2、3に示すように、第1の平面コイル41と、第2の平面コイル42と、上側絶縁体50Aとを備えて構成されている。第1の平面コイル41と第2の平面コイル42とは、絶縁基板30の上面30a上において並行するように隣り合った状態で巻回されている。
【0027】
第1の平面コイル41は、絶縁基板30の上面30aにおいて、同一層内で、コイル形成部31の開口32の周りに巻かれた略長円形の渦巻状空芯コイルである。第1の平面コイル41のターン数は、1ターンであってもよく複数ターンであってもよい。本実施形態では、第1の平面コイル41のターン数は3~4である。第1の平面コイル41は、外側端部41aと、内側端部41bとを有する。外側端部41aは、フレーム部34Aに設けられており、素体10の端面10aから露出する。内側端部41bは、開口32の縁に設けられている。絶縁基板30には、第1の平面コイル41の内側端部41bと重なる位置に、絶縁基板30の厚さ方向に延びる第1の貫通導体41cが設けられている。第1の平面コイル41は、たとえばCuで構成されており、電解めっきにより形成され得る。
【0028】
第2の平面コイル42は、第1の平面コイル41同様、絶縁基板30の上面30aにおいて、同一層内で、コイル形成部31の開口32の周りに巻かれた略長円形の渦巻状空芯コイルである。第2の平面コイル42は、第1の平面コイル41の内周側において、第1の平面コイル41と隣り合うように巻回されている。第2の平面コイル42のターン数は、1ターンであってもよく複数ターンであってもよい。本実施形態では、第2の平面コイル42のターン数は、第1の平面コイル41のターン数と同じである。第2の平面コイル42は、外側端部42aと、内側端部42bとを有する。第2の平面コイル42の外側端部42aは、第1の平面コイル41の外側端部41a同様、フレーム部34Aに設けられており、素体10の端面10aから露出する。第2の平面コイル42の内側端部42bは、開口32の縁に設けられており、第1の平面コイル41の内側端部41bに隣接している。絶縁基板30には、第2の平面コイル42の内側端部42bと重なる位置に、絶縁基板30の厚さ方向に延びる第2の貫通導体42cが設けられている。第2の平面コイル42は、第1の平面コイル41同様、たとえばCuで構成されており、電解めっきにより形成され得る。
【0029】
上側絶縁体50A(第1の絶縁部)は、絶縁基板30の上面30a上に設けられており、公知のフォトリソグラフィによってパターニングされた厚膜レジストである。上側絶縁体50Aは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42のめっき成長領域を画定している。本実施形態では、
図4に示すように、上側絶縁体50Aは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42を一体的に覆っており、より具体的には第1の平面コイル41および第2の平面コイル42の側面と上面を覆っている。上側絶縁体50Aの一部は、
図5、6に示すように、素体10の内部から外側端部41aと外側端部42aとの間を通って素体10の端面10aまで延び、端面10aに露出している。また、上側絶縁体50Aの一部は、
図5、6に示すように、基板上面30aに沿って素体10の内部から端面10bまで延びて、端面10bに露出している。上側絶縁体50Aの厚さは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42の厚さより厚い。上側絶縁体50Aは、たとえばエポキシ樹脂で構成される。
【0030】
下側コイル構造体40Bは、絶縁基板30のコイル形成部31における基板下面30bに設けられている。下側コイル構造体40Bは、
図2、3に示すように、第1の平面コイル41と、第2の平面コイル42と、下側絶縁体50Bとを備えて構成されている。第1の平面コイル41と第2の平面コイル42とは、絶縁基板30の下面30b上において並行するように隣り合った状態で巻回されている。
【0031】
下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41および第2の平面コイル42は、上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41および第2の平面コイル42と対称性を有する。より具体的には、下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41および第2の平面コイル42は、素体10の短辺に平行な軸周りに、上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41および第2の平面コイル42を反転させた形状を有する。
【0032】
下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の外側端部41aは、フレーム部34Bに設けられており、素体10の端面10bから露出する。下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の内側端部41bは、絶縁基板30に設けられた第1の貫通導体41cと重なっている。そのため、下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の内側端部41bは、第1の貫通導体41cを介して、上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41の内側端部41bと電気的に接続されている。下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41は、たとえばCuで構成されており、電解めっきにより形成され得る。
【0033】
下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の外側端部42aは、フレーム部34Bに設けられており、素体10の端面10bから露出する。下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の内側端部42bは、絶縁基板30に設けられた第2の貫通導体42cと重なっている。そのため、下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の内側端部42bは、第2の貫通導体42cを介して、上側コイル構造体40Aの第2の平面コイル42の内側端部42bと電気的に接続されている。下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42は、たとえばCuで構成されており、電解めっきにより形成され得る。
【0034】
下側絶縁体50B(第2の絶縁部)は、絶縁基板30の下面30b上に設けられており、公知のフォトリソグラフィによってパターニングされた厚膜レジストである。下側絶縁体50Bは、上側絶縁体50A同様、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42のめっき成長領域を画定している。本実施形態では、
図4に示すように、下側絶縁体50Bは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42を一体的に覆っており、より具体的には第1の平面コイル41および第2の平面コイル42の側面と上面を覆っている。下側絶縁体50Bの一部は、上側絶縁体50A同様、素体10の内部から外側端部41aと外側端部42aとの間を通って素体10の端面10bまで延び、端面10bに露出している。また、下側絶縁体50Bの一部は、基板下面30bに沿って素体10の内部から端面10aまで延びて、端面10aに露出している。下側絶縁体50Bの厚さは、第1の平面コイル41および第2の平面コイル42の厚さより厚い。下側絶縁体50Bの厚さは、上側絶縁体50Aの厚さと同一であってもよい。下側絶縁体50Bは、たとえばエポキシ樹脂で構成される。
【0035】
素体10には、二重コイル構造を構成する一対のコイル部C1、C2を備える。第1のコイル部C1は、絶縁基板30の上面30aに設けられた上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41と、絶縁基板30の下面30bに設けられた下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41と、両面の第1の平面コイル41同士を接続する第1の貫通導体41cとにより構成されている。第1のコイル部C1において、上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41の外側端部41aが第1端部を構成しており、下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の外側端部41aが第2端部を構成している。第2のコイル部C2は、絶縁基板30の上面30aに設けられた上側コイル構造体40Aの第2の平面コイル42と、絶縁基板30の下面30bに設けられた下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42と、両面の第2の平面コイル42同士を接続する第2の貫通導体42cとにより構成されている。第2のコイル部C2において、上側コイル構造体40Aの第2の平面コイル42の外側端部42aが第1端部を構成しており、下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の外側端部42aが第2端部を構成している。
【0036】
二対の外部端子電極60A、60B、60C、60Dは、素体10の互いに平行な端面10a、10bに一対ずつ設けられている。
【0037】
端面10aに設けられた一対の外部端子電極60A、60B(第1の外部端子)のうち、外部端子電極60Aは上側コイル構造体40Aの第1の平面コイル41の外側端部41aと接続され、外部端子電極60Bは上側コイル構造体40Aの第2の平面コイル42の外側端部42aと接続されている。
図6に示すように、端面10a側から見て、外部端子電極60Aは、側面10f側に偏倚しており、端面10aにおける側面10f近傍まで覆っている。また、外部端子電極60Bは、側面10e側に偏倚しており、端面10aにおける側面10e近傍まで覆っている。端面10a側から見て、外部端子電極60Aと外部端子電極60Bとは所定の均一幅で離間している。
【0038】
端面10bに設けられた一対の外部端子電極60C、60D(第2の外部端子)のうち、外部端子電極60Cは下側コイル構造体40Bの第1の平面コイル41の外側端部41aと接続され、外部端子電極60Dは下側コイル構造体40Bの第2の平面コイル42の外側端部42aと接続されている。外部端子電極60Cは、側面10f側に偏倚しており、端面10bにおける側面10f近傍まで覆っている。また、外部端子電極60Dは、側面10e側に偏倚しており、端面10bにおける側面10e近傍まで覆っている。端面10b側から見て、外部端子電極60Cと外部端子電極60Dとは所定の均一幅で離間している。
【0039】
端面10aの外部端子電極60Aと端面10bの外部端子電極60Cとは、素体10の長辺方向において互いに対応する位置に設けられている。同様に、端面10aの外部端子電極60Bと端面10bの外部端子電極60Dとは、素体10の長辺方向において互いに対応する位置に設けられている。
【0040】
外部端子電極60A、60B、60C、60Dはいずれも、L字状に屈曲しており、端面10a、10bと上面10cとを連続的に覆っている。本実施形態では、外部端子電極60A、60B、60C、60Dは、樹脂電極で構成されており、たとえばAg粉を含有する樹脂で構成されている。
【0041】
続いて、
図7を参照しつつ、素体10の端面10aの構成について説明する。
【0042】
素体10の端面10aには、第1の平面コイル41の外側端部41aと第2の平面コイル42の外側端部42aとが、絶縁基板30の上面30a上において並んでいる。そして、素体10の端面10aにおいて第1の平面コイル41の外側端部41aと第2の平面コイル42の外側端部42aとの間の領域Rには上側絶縁体50Aが位置している。本実施形態では、上側絶縁体50Aは、領域Rの全域に亘って存在しており、かつ、素体10の端面10aにおいて外側端部41a、42a間を横断するように延びている。また、素体10の端面10aには、絶縁基板30を挟んで上側絶縁体50Aと対向するように、下側絶縁体50Bが位置している。
【0043】
上記コイル部品1においては、外部端子電極60A、60B、60C、60Dを介して電圧を印加したときに、たとえば外側端部41a、42a間に電位差が生じることがある。コイル部品1においては、素体10の端面10aに露出した上側絶縁体50Aによって外側端部41a、42a間における絶縁性が高められているため、外側端部41a、42a間に電位差が生じた場合であっても、端面10a上において外側端部41a、42a同士が短絡する事態が抑制されている。本実施形態では、素体10の端面10aに露出した下側絶縁体50Bによって外側端部41a、42a間における絶縁性がさらに高められており、端面10a上において外側端部41a、42a同士が短絡する事態がさらに抑制されている。
【0044】
同様に、素体10の端面10bにおいても、
図8に示すように、第1の平面コイル41の外側端部41aと第2の平面コイル42の外側端部42aとの間の領域Rに、端面10bに露出した下側絶縁体50Bが位置している。下側絶縁体50Bによって外側端部41a、42a間における絶縁性が高められているため、外側端部41a、42a間に電位差が生じた場合であっても、端面10b上において外側端部41a、42a同士が短絡する事態が抑制されている。本実施形態では、素体10の端面10bに露出した上側絶縁体50Aによって外側端部41a、42a間における絶縁性がさらに高められており、端面10b上において外側端部41a、42a同士が短絡する事態がさらに抑制されている。
【0045】
本実施形態では、外部端子電極60Aは、領域Rに露出した上側絶縁体50Aの一部(より具体的には外側端部41a側の一部)を直接覆っており、外部端子電極60Bは、領域Rに露出した上側絶縁体50Aの一部(より具体的には外側端部42a側の一部)を直接覆っている。このように、外部端子電極60A、60Bが上側絶縁体50Aの一部を覆うことで、外部端子電極60A、60Bと素体10の接触面積を減らすことができ、外側端部41a、42a間に電位差が生じた場合であっても、短絡するリスクを低くすることもできる。
【0046】
上側絶縁体50Aおよび下側絶縁体50Bは、必ずしも領域Rの全域にわたって存在する必要はなく、領域Rの一部に存在していてもよい。このとき、外部端子電極60A、60B、60C、60Dは、上側絶縁体50Aおよび下側絶縁体50Bの一部を覆っていてもよく、上側絶縁体50Aおよび下側絶縁体50Bを全く覆っていなくてもよい。
【0047】
たとえば、
図9に示すように、領域R内に素体10の金属磁性粉含有樹脂12が位置する態様であってもよい。
図9に示した態様では、領域Rには、素体10内部から金属磁性粉含有樹脂12の一部12aが露出しており、外側端部41a、42aの並び方向(
図9における左右方向)において上側絶縁体50Aが金属磁性粉含有樹脂12に挟まれている。この場合も、外部端子電極60Aは、領域Rに露出した上側絶縁体50Aの一部を直接覆うことができ、外部端子電極60Bは、領域Rに露出した上側絶縁体50Aの一部を直接覆うことができる。
【0048】
また、
図10に示すように、外部端子電極60A、60Bの間において露出する端面10aを覆う絶縁層70を設けてもよい。絶縁層70は、素体10の端面10aにおいて外部端子電極60A、60B間を横断するように延びている。絶縁層70は、領域Rの少なくとも一部を覆うように設けることができる。外部端子電極60C、60Dの間において露出する端面10bを覆う絶縁層70を設けることもできる。絶縁層70は、エポキシ系樹脂で構成することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…コイル部品、10…素体、12…金属磁性粉含有樹脂、30…絶縁基板、41…第1の平面コイル、42…第2の平面コイル、41a、42a…外側端部、50A…上側絶縁体、50B…下側絶縁体、60A~60D…外部端子電極、70…絶縁層、C1…第1のコイル部、C2…第2のコイル部、R…領域。