(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186358
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】脳磁計
(51)【国際特許分類】
A61B 5/245 20210101AFI20221208BHJP
【FI】
A61B5/245
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094527
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】水谷 昌平
(72)【発明者】
【氏名】宮永 裕樹
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA10
4C127CC01
4C127KK01
(57)【要約】
【課題】立位の姿勢の被験者に対する測定の精度を向上できる脳磁計を提供する。
【解決手段】脳磁計100は、被験者50の頭部51を収容すると共に、被験者50の脳の活動に伴って発生する磁場を測定する測定装置1を備える。従って、被験者50が測定装置1の測定ユニット1Aの中に入りこんで、立位の姿勢を維持することで、測定装置1は、立位の姿勢の被験者50の測定を行うことができる。これに対し、脳磁計100は、測定装置1で立位の姿勢の被験者50の測定を行うときに、測定のノイズを低減可能な測定補助手段としての立位補助機構30を備える。従って、脳磁計100は、立位の姿勢を維持することによる肉体的負担、及び精神的負担に基づく測定のノイズを立位補助機構30で低減された状態の測定結果を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の頭部を収容すると共に、前記被験者の脳の活動に伴って発生する磁場を測定する測定部と、
前記測定部で立位の姿勢の前記被験者の測定を行うときに、測定のノイズを低減可能な測定補助手段と、を備える脳磁計。
【請求項2】
前記測定補助手段は、立位の姿勢の前記被験者を側方から支持する支持部材を有する、請求項1に記載の脳磁計。
【請求項3】
前記支持部材は、前記被験者の下半身を支持する、請求項2に記載の脳磁計。
【請求項4】
前記支持部材は、更に、立位の姿勢の前記被験者を下方から支持可能である、請求項2又は3に記載の脳磁計。
【請求項5】
前記支持部材は、臀部、及び脛部の少なくとも一方を下方から支持可能である、請求項4に記載の脳磁計。
【請求項6】
前記支持部材は、前記測定部による測定の終了後、前記被験者の支持を解除可能に構成される、請求項2~5の何れか一項に記載の脳磁計。
【請求項7】
前記測定部は、前記測定部内における前記被験者の前記頭部の位置を検出した検出情報に基づいて、測定を開始する、請求項1~6の何れか一項に記載の脳磁計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳磁計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の脳磁計として、特許文献1に記載されたものが知られている。この脳磁計は、被験者の頭部を収容すると共に、被験者の脳の活動に伴って発生する磁場を測定する測定部を備える。測定部の下方には、被験者が座るための椅子が設けられている。従って、測定部は、座位の姿勢の被験者の測定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脳磁計で立位の姿勢の被験者を測定するために、被験者が測定中に立位の姿勢を維持しようとすると、肉体的負担、及び精神的負担に基づく測定のノイズが発生してしまう可能性がある。例えば、特許文献1に記載された脳磁計は、被験者が座った状態での測定を前提としているものであり、立位の姿勢の被験者の姿勢維持に対応していない。
【0005】
そこで、本発明は、立位の姿勢の被験者に対する測定の精度を向上できる脳磁計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る脳磁計は、被験者の頭部を収容すると共に、被験者の脳の活動に伴って発生する磁場を測定する測定部と、測定部で立位の姿勢の被験者の測定を行うときに、測定のノイズを低減可能な測定補助手段と、を備える。
【0007】
脳磁計は、被験者の頭部を収容すると共に、被験者の脳の活動に伴って発生する磁場を測定する測定部を備える。従って、被験者が測定部の中に入りこんで、立位の姿勢を維持することで、測定部は、立位の姿勢の被験者の測定を行うことができる。これに対し、脳磁計は、測定部で立位の姿勢の被験者の測定を行うときに、測定のノイズを低減可能な測定補助手段を備える。従って、脳磁計は、立位の姿勢を維持することによる肉体的負担、及び精神的負担に基づく測定のノイズを測定補助手段で低減された状態の測定結果を得ることができる。以上より、立位の姿勢の被験者に対する測定の精度を向上できる。
【0008】
測定補助手段は、立位の姿勢の被験者を側方から支持する支持部材を有してよい。この場合、被験者は、立位の姿勢を維持する時に、支持部材によって側方から支持される。そのため、測定時において、被験者が立位の姿勢を楽に維持することができるため、肉体的負担及び精神的負担が低減される。その結果、支持部材は、立位の姿勢を維持することによる肉体的負担、及び精神的負担に基づく測定のノイズを低減することができる。
【0009】
支持部材は、被験者の下半身を支持してよい。頭部は測定部側で固定されるため、被験者が測定時の姿勢を調整及び維持するときには、頭部から遠い下半身への負担が大きくなる傾向にある。従って、支持部材が下半身を支持することで、被験者は楽に立位の姿勢を維持することができる。
【0010】
支持部材は、更に、立位の姿勢の被験者を下方から支持可能であってよい。被験者は、測定時の姿勢によっては、自身の筋力で自重を支える必要がある。これに対し、支持部材が被験者を下方から支持することで、被験者が自重を支えるための負荷を低減することができる。
【0011】
支持部材は、臀部、及び脛部の少なくとも一方を下方から支持可能であってよい。臀部及び脛部は、姿勢によっては自重を支えるときに負荷が掛かりやすい箇所である。従って、支持部材が、これらの箇所を下方から支持することで、被験者の負荷を低減することができる。
【0012】
支持部材は、測定部による測定の終了後、被験者の支持を解除可能に構成されてよい。この場合、被験者は、測定が終了したら、支持部材による支持を解除して、速やかに自由に移動することが可能となる。
【0013】
測定部は、測定部内における被験者の頭部の位置を検出した検出情報に基づいて、測定を開始してよい。この場合、この場合、測定部は、測定部内における頭部の位置を正確に位置合わせした状態にて、測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、立位の姿勢の被験者に対する測定の精度を向上できる脳磁計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る脳磁計の構成を示す概略構成図である。
【
図2】測定ユニット内における被験者の頭部の位置検出について説明するための拡大図である。
【
図4】脳磁計を用いた測定の手順を示す工程図である。
【
図5】制御部による制御処理の内容を示すフローチャートである。
【
図6】比較例に係る脳磁計を示す概略構成図である。
【
図7】変形例に係る脳磁計の構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1に示される脳磁計100は、測定装置1(測定部)と、立位補助機構30と、を備える。測定装置1は、測定ユニット1Aと、冷凍機1Bと、制御部1Cと、を備える。測定装置1は、測定ユニット1A内に被験者50の頭部51を収容すると共に、被験者50の脳の活動に伴って発生する磁場を測定する装置である。測定装置1は、測定ユニット1A内の測定位置Hに頭部51が位置するように立位の姿勢で姿勢維持した被験者50に対して、脳の神経活動に伴って発生する微弱な磁場を非接触で測定、解析する装置である。
【0018】
測定ユニット1Aは、脳で発生する磁場を検出するSQUID(Superconducting QuantumInterference Device)センサ3を備えている。この測定ユニット1Aでは、被験者50の脳の様々な位置から発生する磁場を検出するため、数十個~数百個(64個,128個,256個など)といった多数の上記SQUIDセンサ3が、測定位置Hの周囲に配置され、ヘルメット部4で固定されている。
【0019】
測定ユニット1Aは、SQUIDセンサ3を冷却する液体ヘリウム5を収納するためのデュワー(容器)7を備えている。デュワー7は、
図1に示されるように、円筒状で有底の断熱容器である。また、デュワー7の底部7bは、被験者50の頭部51を覆うように内に凹んでいる。
【0020】
ヘルメット部4は、SQUIDセンサ3の耐震性を向上させて、生体磁場の測定に対する振動の影響を低減させるべく、デュワー7の内側面7aに固定されている。ヘルメット部4は、被験者50の頭部51を覆う形状を有している。
【0021】
更に、測定ユニット1Aは、デュワー7を包囲するように配置され、被験者50を覆う二重構造の筒型体15を備えている。この二重構造の筒型体15の外筒部15aと内筒部15bとの間には、超伝導磁気シールド装置11が内蔵されている。また、筒型体15とデュワー7との間には断熱材19が充填されている。なお、筒型体15は、支持機構14によって支持される。支持機構14は、中心軸線Cに沿った昇降方向D1の筒型体15の移動を可能とする。また、筒型体15の下方には、測定中の被験者50を載置する足場部16が設けられる。足場部16は、被験者50を載置した状態で昇降方向D2に移動可能である。これにより、支持機構14及び足場部16は、被験者50の頭部51と、SQUIDセンサ3との間の高さ調整を行うことができる。なお、中心軸線Cは傾いているが、地面に対して垂直であってもよい。
【0022】
被験者50が筒型体15の内部に入る前段階では、支持機構14は筒型体15を上げておくと共に、足場部16は低い位置に退避しておく。被験者50が足場部16の上に載ったら、支持機構14は筒型体15を降ろすと共に、足場部16は上に移動することで被験者50を持ち上げる。これにより、被験者50が筒型体15の下端から潜り込む形で筒型体15内に収容され、頭部51が測定位置Hに配置される。なお、支持機構14及び足場部16の少なくとも一方が上下の移動機構を備えていればよい。
【0023】
測定装置1は、被験者50の脳で発生する極めて微弱な磁場を検出するため、測定位置Hの近傍における外部磁場の影響を除去する必要がある。このため、測定装置1は、中心軸線Cが測定位置Hを通るように配置された筒状の超伝導磁気シールド装置11を備えている。超伝導磁気シールド装置11は、デュワー7を包囲して筒型体15の外筒部15aに支持されると共に、筒型体15の上下寸法とほぼ同じ寸法で延在している。また、測定位置Hは、中心軸線C上に位置すると共に、上下方向においても超伝導磁気シールド装置11の全高のほぼ中央に位置している。
【0024】
冷凍機1Bは、超伝導磁気シールド装置11を冷却するための装置である。冷凍機1Bは、超伝導磁気シールド装置11を冷却するための極低温の冷却ガスを超伝導磁気シールド装置11へ送出する。また、冷凍機1Bは、超伝導磁気シールド装置11を冷却した後の冷却ガスを回収する。なお、冷凍機1Bとして、GM冷凍機、スターリング冷凍機、パルスチューブ冷凍機等が特に好ましい。また、冷却ガスとして、例えばヘリウムガスを用いることもできる。
【0025】
制御部1Cは、測定ユニット1A及び冷凍機1Bの動作を制御する装置である。制御部1Cは、測定処理部21と、位置検出部22と、運転制御部23と、を備える。制御部1Cは、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インターフェースを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの演算器である。メモリは、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。通信インターフェースは、データ通信を実現する通信機器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インターフェースを統括し、測定処理部21、位置検出部22、及び運転制御部23の機能を実現する。制御部1Cは、測定ユニット1A及び冷凍機1Bを制御して測定を実行するための測定ソフトウェアをPCなどの演算装置にインストールすることによって構成される。測定処理部21、位置検出部22、及び運転制御部23による各制御処理は、測定ソフトウェアに実装される。なお、制御部1Cを構成する演算装置には、測定装置1による測定を行うための測定回路が組み込まれていてよい。
【0026】
測定処理部21は、SQUIDセンサ3で検出された検出信号に基づいて、脳の神経活動に伴って発生する微弱な磁場を測定及び解析するユニットである。測定処理部21は、測定結果をモニタなどの出力部に出力する。
【0027】
位置検出部22は、測定ユニット1A内における被験者50の頭部51の位置を検出するユニットである。ここで、被験者50の頭部51の位置の具体的な検出方法の一例について、
図2を参照して説明する。
図2に示すように、被験者50の頭部51の特定箇所に、マーカーコイル12を医療用テープなどを用いて固定しておく。マーカーコイル12が固定される特定箇所は特に限定されないが、例えば、額、両耳の耳介前点、及び鼻根点などにマーカーコイル12が固定されてよい。マーカーコイル12の三次元相対位置情報は、被験者50が測定ユニット1A内に入る前段階において、予め測定機器で測定される。このようなマーカーコイル12の三次元相対位置情報は、マーカーコイル12が取り付けられた頭部51の特定位置の情報を示している。位置検出部22は、マーカーコイル12の三次元相対位置情報を予め取得しておく。測定ユニット1A内における被験者50の頭部51の位置を検出するときには、マーカーコイル12に電流を流して磁場を発生させ、SQUIDセンサ3にて磁場を測定する。位置検出部22は、SQUIDセンサ3で測定された磁場に基づいて、マーカーコイル12の位置の信号源推定処理を行う。位置検出部22は、推定したマーカーコイル12の位置と、予め取得しておいたマーカーコイル12の三次元相対位置情報とを比較することで、測定ユニット1A内における頭部51の位置を検出する。位置検出部22は、上述の方法で測定ユニット1A内における頭部51の位置を検出し、頭部51が測定位置Hに正確に配置されているかを検出することができる。
【0028】
図1に戻り、運転制御部23は、測定ユニット1A及び冷凍機1Bの運転を制御するユニットである。運転制御部23は、測定ユニット1Aによる測定開始処理、及び測定完了処理を実行する。運転制御部23は、測定ユニット1A内における被験者50の頭部51の位置を検出した位置検出部22の検出情報に基づいて、測定ユニット1Aによる測定を開始してよい。具体的には、運転制御部23は、位置検出部22によって、被験者50の頭部51が測定位置Hに配置されていることを検出した場合に、測定ユニット1Aによる測定を開始してよい。運転制御部23は、冷凍機1Bの運転開始処理、及び運転終了処理を実行する。
【0029】
運転制御部23は、支持機構14及び足場部16の少なくとも一方を制御して、被験者50の高さ調整を制御することができる。運転制御部23は、オペレータによる操作によって被験者50の高さ調整を行ってもよく、被験者50自身のコントローラの操作によって被験者50の高さ調整を行ってもよい。また、運転制御部23は、被験者50の高さ調整を自動的に行ってもよい。例えば、測定ユニット1Aの外で、予め被験者50の測定姿勢での身長測定をしておき、運転制御部23は、当該測定姿勢の身長を記録しておく。運転制御部23は、被験者50が測定ユニット1A内に入ったあと、記録しておいた測定時の身長に合わせて、支持機構14及び足場部16の少なくとも一方を制御してよい。
【0030】
立位補助機構30は、被験者50の測定中の立位の姿勢を補助する機構である。立位補助機構30は、被験者50が立位の姿勢を維持し続けることができるように被験者50の体の所定の部位を支持する。立位補助機構30は、被験者50が自力で立位の姿勢を維持する場合に比して、被験者50に作用する肉体的負担、及び精神的負担を低減する。そのため、立位補助機構30は、被験者50の脳の活動に伴って発生する磁場のうち、立位の姿勢を維持するための肉体的負担及び精神的負担に起因する成分を低減することができる。そのため、立位補助機構30は、測定ユニット1Aで立位の姿勢の被験者50の測定を行うときに、測定のノイズを低減可能な測定補助手段として機能する。
【0031】
次に、
図3を参照して、立位補助機構30の具体的な構成の一例について、詳細に説明する。
図3(a)に示すように、立位補助機構30は、立位の姿勢の被験者50の下半身を支持する支持部材31A,31Bを有する。支持部材31Aは、右脚52Aに装着可能な部材である。支持部材31Bは、左脚52Bに装着可能な部材である。支持部材31A,31Bは、下側から順に、足部53に装着可能な第1装着部32と、脛部54に装着可能な第2装着部33と、大腿部57及び臀部58に装着可能な第3装着部34と、を備える。各装着部32,33,34は、拘束具などを用いることによって被験者50の各部位に固定される。第2装着部33は、少なくとも脛部54の前側の部分と接触するように固定される。第3装着部34は、少なくとも大腿部57及び臀部58の後側の部分と接触するように固定される。
【0032】
第1装着部32、第2装着部33、及び第3装着部34は、上下方向に延びる連結バー36,37によって互いに連結されている。連結バー36の下端部は、ジョイント部38を介して第1装着部32に接続されている。連結バー36は、第2装着部33の横部に固定されており、当該第2装着部33よりも上方まで延びる。連結バー37は、第3装着部34から下方へ延びる。連結バー36の上端部と連結バー37の下端部とは、ジョイント部39を介して互いに接続されている。ジョイント部39は、膝部56付近の高さ位置に配置される。なお、連結バー36,37の長さ、及びジョイント部39の位置については、被験者50の身長に応じて調整可能である。なお、連結バー36,37及びジョイント部38,39は、内股側に設けられているが、配置は特に限定されず、外股側に設けられてもよい。
【0033】
図3(b)(c)は、被験者50の下半身を左側から右側へ向かって見た図である。なお、
図3(b)(c)では、連結バー36,37及びジョイント部38,39の様子を示すために、左脚52B及び支持部材31Bを省略し、右脚52A及び支持部材31Aのみが示されている。なお、支持部材31Bは、支持部材31Aと同趣旨の構造を有し、同趣旨の動作を行うため、説明を省略する。
図3(b)は、被験者50が膝部56を曲げて中腰になった様子を示す。
図3(c)は、被験者50が膝部56を曲げることなく直立になった状態を示す。
【0034】
図3(c)に示すように、直立の姿勢においては、脛部54及び大腿部57は、上下方向に真っ直ぐに延びた状態となっている。
図3(c)に示す例では、連結バー36及び連結バー37は、上下方向に真っ直ぐに延びるような位置関係となっている。当該状態から被験者50が膝部56を曲げると、
図3(b)に示すように、脛部54及び大腿部57は、当該膝部56で屈曲して傾斜した状態となる。このとき、連結バー36及び連結バー37は、ジョイント部39を基点として屈曲して傾斜した状態となる。連結バー36は、ジョイント部38を基点として第1装着部32に対して傾斜した状態となる。なお、
図3(c)の連結バー36,37の状態は一例に過ぎず、被験者50が直立の状態であっても、連結バー36,37がジョイント部39にて浅い角度で屈曲していてもよい。
【0035】
ジョイント部38,39は、被験者50が姿勢の調整を行っているときは、連結バー36,37の回転を許容する。当該状態を「フリー状態」と称する場合がある。当該フリー状態では、被験者50は、自由に膝部56を曲げて、姿勢の調整や歩行を行うことができる。また、ジョイント部38,39は、被験者50の姿勢の調整が完了したら、連結バー36,37の回転を規制し、位置を固定することができる。当該状態を「ロック状態」と称する場合がある。当該ロック状態では、各装着部32,33,34が右脚52A全体の動きを拘束し、被験者50の姿勢が維持される。ロック状態では、装着部33,34が、被験者50の右脚52Aの各部位を支持することで、姿勢維持のための被験者50の肉体的・精神的負担を低減することができる。ジョイント部38,39のロック状態とフリー状体の切替は、オペレータが行ってもよく、被験者50自身が行ってもよい。また、ジョイント部38,39のロック状態とフリー状態の切替は、ネジ締めなどの機械的機構の操作によって行われてもよく、アクチュエータなどの電気的機構の操作によって行われてもよい。また、ロック状態とフリー状態との切替は、運転制御部23によってソフトウェア的に行われてもよい。
【0036】
次に、支持部材31Aが立位の姿勢の被験者50をどのように支持するかについての説明を行う。まず、
図3(c)に示す状態でジョイント部38,39をロック状態とした場合について説明する。
図3(c)に示すような直立の姿勢では、第2装着部33は、上下方向に真っ直ぐに延びた状態の脛部54を支持する。脛部54が前方にふらつこうとしたり、膝部56が曲がることで脛部54が前方に傾斜しようとした場合、第2装着部33は、脛部54に対して後側へ水平方向に沿った支持力FA1を作用させる。第3装着部34は、上下方向に真っ直ぐに延びた状態の大腿部57、及び臀部58を支持する。大腿部57及び臀部58が後方にふらつこうとしたり、大腿部57が曲がることで臀部58が後方に突き出されそうになった場合、第3装着部34は、大腿部57及び臀部58に対して前側へ水平方向に沿った支持力FB1を作用させる。
【0037】
以上のように、支持部材31Aは、水平方向に沿った支持力FA1,FB1を直立の姿勢の被験者50に対して作用させることができる。従って、支持部材31Aは、立位の姿勢の被験者50を側方から支持することができる。なお、被験者50を側方から支持する状態とは、前側、後側、左側、及び右側(あるいはそれらの中間の方向)のいずれかから被験者50を見たときに、水平方向に沿った支持力で被験者50を支持する状態であることを意味する。ここでは、第2装着部33が前方から脛部54を支持している状態、及び第3装着部34が後方から大腿部57及び臀部58を支持してる状態は、いずれも「被験者50を側方から支持する状態」に該当している。なお、支持部材31Aが作用させる支持力は、
図3に示す「FA1」「FB1」以外に、上下方向の力の成分が含まれる場合もあるが、後述の
図3(b)の「FA2」「FB2」に比して微小であり、誤差の範囲内であるものとする。
【0038】
次に、
図3(b)に示す状態でジョイント部38,39をロック状態とした場合について説明する。
図3(b)に示すような中腰の姿勢では、第2装着部33は、傾斜した状態の脛部54を支持する。第2装着部33は、脛部54が前方にふらつこうとしたり、膝部56が更に曲がることで脛部54が更に前方に傾斜しようとした場合、第2装着部33は、脛部54に対して後側へ水平方向に沿った支持力FA1を作用させる。それに加え、被験者50が体重を支持部材31Aに預けようとすると、第2装着部33は、膝部56が更に曲がろうとすることで脛部54が下方へ沈もうとするものに対し、脛部54に対して上方へ向かう支持力FA2を作用させる。このように、第2装着部33が脛部54へ作用させる支持力には、水平方向成分の支持力FA1と、上下方向成分の支持力FA2と、が含まれる。
【0039】
第3装着部34は、傾斜した状態の大腿部57、及び臀部58を支持する。大腿部57及び臀部58が後方にふらつこうとしたり、大腿部57が更に曲がることで臀部58が後方に更に突き出されそうになった場合、第3装着部34は、大腿部57及び臀部58に対して前側へ水平方向に沿った支持力FB1を作用させる。それに加え、被験者50が体重を支持部材31Aに預けようとすると、第3装着部34は、膝部56が更に曲がろうとすることで大腿部57及び臀部58が下方へ沈もうとするものに対し、大腿部57及び臀部58に対して上方へ向かう支持力FB2を作用させる。このように、第3装着部34が脛部54へ作用させる支持力には、水平方向成分の支持力FB1と、上下方向成分の支持力FB2と、が含まれる。
【0040】
以上のように、支持部材31Aは、水平方向に沿った支持力FA1,FB1を中腰の状態の被験者50に対して作用させることができる。従って、支持部材31Aは、立位の姿勢の被験者50を側方から支持することができる。また、支持部材31Aは、上方へ向かう支持力FA2,FB2を中腰の状態の被験者50に対して作用させることができる。従って、支持部材31Aは、立位の姿勢の被験者50を更に下方から支持することができる。
【0041】
次に、
図4を参照して、脳磁計1の測定のための準備から測定完了までの工程について説明する。なお、以下の説明は、工程の一例を示しているに過ぎず、適宜変更可能である。
図4に示すように、測定準備が行われる(ステップS10)。この工程では、被験者50の頭部51の特定箇所にマーカーコイル12が医療用テープなどで固定され(
図2参照)、コイル間の位置関係を測定する機器にて、マーカーコイル12の三次元相対位置情報を把握する。次に、被験者50に対して立位補助機構30を装着させる(ステップS20)。この工程は、被験者50自身またはオペレータが行う。次に、被験者50は、立位補助機構30のジョイント部38,39をフリー状態として、測定ユニット1Aの中に入る(ステップS30)。被験者50は、測定ユニット1A内にて、測定中の姿勢を想定した立位の姿勢となるように姿勢調整をおこなう(ステップS40)。この工程では、姿勢が決まったら、被験者50自身またはオペレータがジョイント部38,39をロック状態とする。
【0042】
次に、測定ユニット1A内での被験者50の位置合わせを行う(ステップS50)。この工程では、被験者50の頭部51をヘルメット部4と接触させるために支持機構14にて筒型体15を降下させる、あるいは足場部16を上昇させる。筒型体15の降下はオペレータが操作することが好ましいが、足場部16の上昇は被験者50自身の操作によって行われてもよい。また、この工程では、マーカーコイル12に電流を流す。これにより、制御部1Cは、測定ユニット1A内におけるマーカーコイル12の相対位置関係と、予め取得しておいた三次元相対位置情報とを比較することで、被験者50の頭部51の位置を検出する。制御部1Cは、頭部51の位置合わせが完了したら、測定ユニット1Aによる測定を開始する(ステップS60)。また、測定中は、測定中に問題が生じていないかの監視が行われる(ステップS70)。予定していた測定が完了したら、測定完了処理を行う(ステップS80)。この工程では、制御部1Cは測定ユニット1Aによる測定を停止する。また、筒型体15を上昇させ、あるいは足場部16を降下させることで、被験者50が測定ユニット1Aの外部に出られるようにする。なお、ステップS50~S80における制御部1Cの処理の詳細については、
図5を参照して後述する。
【0043】
被験者50が装着している立位補助機構30のジョイント部38,39のロックを解除してフリー状態とする(ステップS90)。被験者50が歩けるようになったら、測定ユニット1Aから外部へ退避する(ステップS100)。そして、被験者50は、測定ユニット1Aの外部にて、立位補助機構30を下半身から脱離させる(ステップS110)。
【0044】
次に、
図5を参照して、ステップS50~S80における制御部1Cの処理の具体例について説明する。まず、制御部1Cの位置検出部22は、被験者50の頭部51の測定ユニット1A内での位置を検出するための処理を行う(ステップS200)。この工程では、位置検出部22は、電流が流れているマーカーコイル12の磁場の測定結果に基づいて、マーカーコイル12の位置の信号源推定を行う。また、位置検出部22は、信号源推定の結果の相対位置関係と、ステップS10で予め取得した三次元相対位置情報とを比較することで、頭部51の位置合わせが完了したか否かを判定する(ステップS210)。このとき、位置検出部22は、信号源推定による相対位置関係と、予め取得した三次元相対位置関係情報との間で、ある閾値以上の相関が認められた場合、頭部51の位置合わせが完了したと判定する。位置合わせが完了していないと判定された場合、位置検出部22は再びステップS200を繰り返す。
【0045】
ステップS210において頭部51の位置合わせが完了したと判定された場合、制御部1Cの運転制御部23は、測定ユニット1Aの測定を開始する(ステップS220)。これにより、制御部1Cの測定処理部21は、被験者50に対する測定を行う。
【0046】
運転制御部23は、測定中に問題が生じていないかを監視する(ステップS230)。例えば、測定中に被験者50の気分が悪くなった場合、外部の支援者の介添え、または被験者50自身の操作によって、立位補助機構30のロックを解除して測定ユニット1Aから退避する。このとき、被験者50自身、またはオペレータが緊急停止ボタンなどを押してよい。運転制御部23は、このような緊急停止ボタンが押されたら、測定中に問題が生じたと判定する。運転制御部23は、問題が生じたと判定したら、測定ユニット1Aの測定を停止する(ステップS250)。
【0047】
また、位置検出部22は、測定の途中、または予定していた測定の完了時に、被験者50に固定されたマーカーコイル12に基づいて頭部51の位置検出を行い、初期状態からの頭部51のずれを検出してよい。運転制御部23は、頭部51のずれが閾値以上に大きくなったら、問題が生じたと判定して、測定を停止してよい。ただし、運転制御部23は、ずれが矯正されたら再び測定を開始してよい。
【0048】
運転制御部23は、ステップS230において問題無しと判定したら、予定していた測定が完了したか否かを判定する(ステップS240)。運転制御部23は、測定が完了していないと判定したら、測定を継続すると共にステップS230へ再び移行する。運転制御部23は、測定が完了したと判定したら、測定を停止する(ステップS250)。ステップS250が完了したら、
図5に示す処理が終了する。
【0049】
次に、本実施形態に係る脳磁計100の作用・効果について説明する。
【0050】
まず、
図6を参照して、比較例に係る脳磁計について説明する。
図6(a)に示す脳磁計は、ベッド70上に寝た姿勢の被験者50の測定を行う。このとき、測定ユニット1Aは、ベッド70上に寝ている被験者50の頭部を覆うように配置される。
図6(b)に示す脳磁計は、椅子75に座った姿勢の被験者50の測定を行う。このとき、測定ユニット1Aは、椅子に座っている被験者50の頭部を覆うように配置される。
【0051】
これに対し、脳磁計で立位の姿勢の被験者50を測定すると、例えば、
図6に示すような寝た姿勢や座った姿勢とは異なり、立位の姿勢での固有の信号や反応を観測できる可能性がある。また、
図6(b)に示すように被験者50が長時間(~1時間)の計測中に椅子75に座ることで、臀部が痛くなる可能性があるため、当該問題を回避するために、立位の姿勢で測定することが求められる場合がある。
【0052】
しかし、被験者50が(本実施形態のような支持部材無しで)測定中に立位の姿勢を維持しようとすると、肉体的負担、及び精神的負担に基づく測定のノイズが発生してしまう可能性がある。例えば、被験者50が立位の姿勢を維持するために余計な力がかかり、筋電位、及び姿勢維持をしようとする思考の測定ノイズが測定結果に含まれてしまう可能性がある。また、長時間の測定の途中で、被験者50が肉体的負担、及び精神的負担によって体を動かしてしまい、必要なデータが体を動かした際のノイズに埋もれてしまう可能性がある。
【0053】
これに対し、本実施形態に係る脳磁計100は、被験者50の頭部51を収容すると共に、被験者50の脳の活動に伴って発生する磁場を測定する測定装置1を備える。従って、被験者50が測定装置1の測定ユニット1Aの中に入りこんで、立位の姿勢を維持することで、測定装置1は、立位の姿勢の被験者50の測定を行うことができる。これに対し、脳磁計100は、測定装置1で立位の姿勢の被験者50の測定を行うときに、測定のノイズを低減可能な測定補助手段としての立位補助機構30を備える。従って、脳磁計100は、立位の姿勢を維持することによる肉体的負担、及び精神的負担に基づく測定のノイズを立位補助機構30で低減された状態の測定結果を得ることができる。以上より、立位の姿勢の被験者50に対する測定の精度を向上できる。
【0054】
立位補助機構30は、立位の姿勢の被験者を側方から支持する支持部材31A,31Bを有してよい。この場合、被験者50は、立位の姿勢を維持する時に、支持部材31A,31Bによって側方から支持される。そのため、測定時において、被験者50が立位の姿勢を楽に維持することができるため、肉体的負担及び精神的負担が低減される。その結果、支持部材31A,31Bは、立位の姿勢を維持することによる肉体的負担、及び精神的負担に基づく測定のノイズを低減することができる。
【0055】
支持部材31A,31Bは、被験者50の下半身を支持してよい。頭部51は測定装置1側で固定されるため、被験者50が測定時の姿勢を調整及び維持するときには、頭部51から遠い下半身への負担が大きくなる傾向にある。従って、支持部材31A,31Bが下半身を支持することで、被験者50は楽に立位の姿勢を維持することができる。なお、本実施形態では、被験者50の上半身には、支持部材が装着されていない。これにより、支持効果の高い部位にのみ、支持部材を装着することができる。
【0056】
支持部材31A,31Bは、更に、立位の姿勢の被験者50を下方から支持可能であってよい。被験者50は、測定時の姿勢によっては、自身の筋力で自重を支える必要がある。これに対し、支持部材31A,31Bが被験者50を下方から支持することで、被験者50が自重を支えるための負荷を低減することができる。
【0057】
支持部材31A,31Bは、臀部58、及び脛部54の少なくとも一方を下方から支持可能であってよい。臀部58及び脛部54は、姿勢によっては自重を支えるときに負荷が掛かりやすい箇所である。従って、支持部材31A,31Bが、これらの箇所を下方から支持することで、被験者50の負荷を低減することができる。なお、支持部材31A,31Bが、被験者50の体のうち、地面に対して傾斜した状態の部位を支持可能であることで、被験者50が自重を支えるための負荷を分散させることができる。
【0058】
支持部材31A,31Bは、測定装置1による測定の終了後、被験者50の支持を解除可能に構成されてよい。この場合、被験者50は、測定が終了したら、支持部材31A,31Bによる支持を解除して、速やかに自由に移動することが可能となる。
【0059】
測定装置1は、測定ユニット1A内における被験者50の頭部51の位置を検出した検出情報に基づいて、測定を開始してよい。この場合、この場合、測定装置1は、測定ユニット1A内における頭部51の位置を正確に位置合わせした状態にて、測定を行うことができる。
【0060】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0061】
例えば、測定のノイズを低減するための立位補助機構の構成は、上述の実施形態で示されたものに限定されない。例えば、第3装着部34は、臀部58及び大腿部57の両方を支持していたが、いずれか一方のみを支持する構成でもよい。このとき、第3装着部34は、臀部58を支持した方が、自重を支持する効果が大きくなる。また、支持部材は、装着部32,33,34を全て有していなくともよく、少なくとも第2装着部33及び第3装着部34の一方を備えていればよい。また、装着部間の連結構造、及び姿勢調整構造は、連結バー36,37及びジョイント部38,39を用いたものに限定されない。また、立位補助機構は、上半身を支持するような支持部材を備えてもよい。
【0062】
例えば、測定のノイズを低減可能な測定補助手段は、上述のような側方及び下方から被験者50を支持する支持部材に限定されず、測定のノイズを低減可能であれば、あらゆる手段が採用されてよい。例えば、
図7に示すような脳磁計200が採用されてもよい。脳磁計200は、測定補助手段として、支持部材を有する立位補助機構30に代えて、制御部1Cにノイズ処理部24が設けられている。このノイズ処理部24は、測定処理部21が取得した測定結果の中から、測定のノイズに該当する成分を除去する機能を有する。ノイズ処理部24は、過去の測定結果から、ノイズに該当する成分を学習するソフトによって構成される。この場合、ノイズ処理部24は、新たな測定結果の中から、必要なデータと、ノイズに該当するデータを識別する。そして、ノイズ処理部24は、ノイズと識別したデータを除去する。
【符号の説明】
【0063】
1…測定装置(測定部)、30…立位補助機構(測定補助手段)、31A,31B…支持部材、24…ノイズ処理部(測定補助手段)、100,200…脳磁計。