(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186366
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】変成器付き電力量計
(51)【国際特許分類】
G01R 11/02 20060101AFI20221208BHJP
H01F 38/34 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G01R11/02 D
H01F38/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094543
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】牧野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大原 慎也
【テーマコード(参考)】
5E081
【Fターム(参考)】
5E081AA20
5E081CC11
(57)【要約】
【課題】通信モジュールの接続の有無に関わらず計器用変成器の使用負担を一定とすることができる変成器付き電力量計を得ること。
【解決手段】変成器付き電力量計2は、電源トランス22と、計測制御部27と、第1接続線L1と接地との間に設けられるダミー抵抗24と、スイッチング素子25との直列回路と、を備える。計測制御部27は、通信モジュール3が第1接続線L1に接続されているときは、スイッチング素子25をオフにしてダミー抵抗24を電気的に切り離し、通信モジュール3が第1接続線L1に未接続であるときは、スイッチング素子25をオンにしてダミー抵抗24を電気的に接続する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信モジュールが着脱可能な変成器付き電力量計であって、
前記通信モジュールの駆動に使用される電源の電源出力と接地間に接続されるダミー抵抗と、スイッチング素子との直列回路と、を備え、
前記通信モジュールが前記電力量計に接続された時には前記スイッチング素子をオフとし、前記通信モジュールが前記電力量計に未接続の時には前記スイッチング素子をオンとする
ことを特徴とする変成器付き電力量計。
【請求項2】
前記ダミー抵抗は、前記通信モジュールと使用負担が同じとなるよう抵抗値が調整される
ことを特徴とする請求項1に記載の変成器付き電力量計。
【請求項3】
前記通信モジュールの前記電力量計への接続の有無は、前記電力量計の制御部が検知し前記スイッチング素子を制御する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変成器付き電力量計。
【請求項4】
前記通信モジュールを前記電力量計へ接続時に、前記通信モジュールが前記スイッチング素子をオフとする
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の変成器付き電力量計。
【請求項5】
計器用変成器の計測信号を降圧し、降圧後の計測信号の絶縁出力である第1出力を第1接続線を介して前記通信モジュールに出力し、降圧後の計測信号の非絶縁出力である第2出力を第2接続線に出力する電源トランス、
をさらに備え、
前記ダミー抵抗と前記スイッチング素子との前記直列回路は、前記第1接続線と前記接地との間に設けられる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の変成器付き電力量計。
【請求項6】
前記第2接続線から得られた前記第2出力に基づいて電力量の計量を行う制御部を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の変成器付き電力量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計器用変成器と組み合わせて回路の電力量を計量する変成器付き電力量計に関する。
【背景技術】
【0002】
変成器付き電力量計は、受配電盤、分電盤などにおける回路の電力量を測定するため、計器用変成器の二次側に設置される。変成器付き電力量計は、計器用変成器の一次側に配置される主回路の大電流、高電圧を計器用変成器によって計器にて測定可能な電圧値、電流値に変換し、計量を行う計器である。
【0003】
計器用変成器では、二次側に接続される計器の接続状態によって、計器用変成器の使用負担が変動して検出精度が変化するのを防止することが必要である。このため、特許文献1では、使用負担が小さい領域では、計器用変成器の二次側に調整用負担を接続し、使用負担が大きい領域では、計器用変成器の二次側から調整用負担を切り離し、負担の変動を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、通信によって自動検針を行うケースが増えており、電力量計に通信モジュールを組合せることにより、電力量計に通信機能を付与する構成が増えている。このような構成の場合、通信モジュールを後付けで組み合わせることができるため、通信モジュールの有無に応じて使用負担が変動し、結果として計器用変成器の二次側の負担変動が大きくなるという新たな課題が発生している。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、通信モジュールの接続の有無に関わらず計器用変成器の使用負担を一定とすることができる変成器付き電力量計を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、通信モジュールが着脱可能な変成器付き電力量計は、通信モジュールの駆動に使用される電源の電源出力と接地間に接続されるダミー抵抗と、スイッチング素子との直列回路と、を備え、通信モジュールが電力量計に接続された時にはスイッチング素子をオフとし、通信モジュールが電力量計に未接続の時にはスイッチング素子をオンとすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示における変成器付き電力量計によれば、通信モジュールの接続の有無に関わらず計器用変成器の使用負担を一定とすることができる変成器付き電力量計を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態にかかる変成器付き電力量計を含む回路構成を示す全体構成図
【
図2】実施の形態にかかる変成器付き電力量計の回路構成図
【
図3】実施の形態におけるダミー抵抗およびスイッチング素子の具体的回路構成を示す図
【
図4】実施の形態にかかる変成器付き電力量計の動作例を示すフローチャート
【
図5】実施の形態にかかる変成器付き電力量計の変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施の形態にかかる変成器付き電力量計を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態.
図1は実施の形態にかかる変成器付き電力量計を含む回路構成を示す全体構成図である。
図1において、主回路の電源側から負荷側に流れる電源配線11,12,13には、変流器20、変流器30および計器用変圧器1が接続されている。例えば、変流器20は電源配線11に接続され、変流器30は電源配線13に接続されている。変流器20,30は、主回路の電源側から負荷側に流れる大電流を変成器付き電力量計2が計測可能な小電流に変換する。変流器20,30は、計測された電流値に対応する電圧値を変成器付き電力量計2に入力する。
【0012】
計器用変圧器1は、電源配線11,12,13に接続され、主回路に関係する高電圧を変成器付き電力量計2が計測可能な低電圧に変換する。計器用変圧器1は、計測された電圧値を変成器付き電力量計2に入力する。この計器用変圧器1の出力は、電力量の計測に用いるとともに変成器付き電力量計2の動作電源としても使用される。
【0013】
変成器付き電力量計2は、変流器20、変流器30、および計器用変圧器1に接続されている。変成器付き電力量計2は、主回路に接続された変流器20および変流器30から取り出した電流に対応する電圧と、計器用変圧器1から取り出した電圧とを取り込むことで、主回路に関する電力量の計量を行う。
【0014】
電源トランス22は、通信モジュール3に接続されている。通信モジュール3は、変成器付き電力量計2と着脱可能な構造である。通信モジュール3は、例えば、スマートフォン、パーソナルコンピュータなどを用いて、変成器付き電力量計2で計量した計量値を取得する。通信モジュール3は、例えばBluetooth(登録商標)、特定小電力無線を用いた無線通信、CC-Link(Control Communication Link、登録商標)、PROFIBUS(Process Field Bus、登録商標)などの有線通信が利用可能である。
【0015】
図2は、実施の形態にかかる変成器付き電力量計2の回路構成図である。
図2に示した計器用変成器40は、変流器20と、変流器30と、計器用変圧器1とを含んだ回路構成を示している。変成器付き電力量計2は、計器用変圧器1が接続された整流回路21と、電源トランス22と、電源制御回路23と、ダミー抵抗24と、スイッチング素子25と、計器内部電源26と、制御部としての計測制御部27と、入力回路28と、表示部29と、を有している。入力回路28は、変流器20、変流器30、計器用変圧器1が接続され、各入力信号を計測用の電圧信号に変換する。表示部29は、計測制御部27で算出された電力量を表示する。
【0016】
整流回路21は、計器用変圧器1で変換された低電圧の交流電力(例えば、AC110V)を変成器付き電力量計2の動作電源として利用するため直流電力に変換する。入力回路28は、変流器20と、変流器30と、計器用変圧器1とを含む計器用変成器40から出力される交流信号を計測制御部27が読み込める電圧信号に変換する。電源トランス22は、変換された直流電圧を、変成器付き電力量計2内の回路および通信モジュール3で駆動可能な低電圧に降圧変換する。また、電源トランス22は、電源トランス22の一次側回路と通信モジュール3とを電気的に絶縁する。
【0017】
電源制御回路23は、例えば、電源トランス22の出力電圧制御のためのフィードバック制御を行うフィードバック回路などを備えている。
【0018】
ダミー抵抗24は、後述するが、電源トランス22の絶縁出力の出力電圧を維持するための回路構成である。スイッチング素子25は、ダミー抵抗24を回路から電気的に切り離し、かつダミー抵抗24を回路に電気的に接続する。ダミー抵抗24とスイッチング素子25との直列回路は、通信モジュール3の駆動に使用される電源の電源出力と接地間に接続される。
【0019】
計器内部電源26は、電源トランス22で生成された非絶縁出力としての電圧出力を、計測制御部27が駆動可能な低電圧に変換する。
【0020】
計測制御部27は、変成器付き電力量計2の計測、制御用に用いられるCPU(Central Processing Unit)である。計測制御部27は、電源トランス22から計器内部電源26を介して取得した変流器20および変流器30からの電流出力と、計器用変圧器1から取り出した電圧出力とを用いて、主回路の電力量の計量を行う。また、計測制御部27は、通信モジュール3の接続監視と、スイッチング素子25のオン/オフ制御を行う。
【0021】
図2に示す回路構成は、例えば整流回路21と電源トランス22の構成をフライバック方式のスイッチング電源とし、出力電圧の安定化を目的とした電圧制御のために電源制御回路23を用いてフィードバック回路を構成することで、電源トランス22の二次側の出力電圧を監視し、制御する必要がある。フィードバック回路を構成することにより、計器内部電源26は非絶縁出力となる。
【0022】
しかし、
図2において、計器用変成器40の二次側に接続される変成器付き電力量計2の電圧・電流入力と、通信モジュール3とは、ノイズ、またはサージの影響を避けるため、一般的に絶縁された構成とする必要がある。
【0023】
そこで、本実施の形態では、変成器付き電力量計2の内部で使用する電源を非絶縁・絶縁の2出力構成とし、非絶縁の出力を計器内部電源26で使用し、絶縁の出力を通信モジュール3の駆動に使用する。
【0024】
このように、本実施の形態を構成する変成器付き電力量計2の回路構成において、電源トランス22で降圧された二次側出力は非絶縁出力と絶縁出力の2出力からなり、降圧された二次側出力の絶縁出力である第1出力は、第1接続線L1を介して通信モジュール3に出力され、降圧された二次側出力の非絶縁出力である第2出力は、第2接続線L2を介して計器内部電源26および計測制御部27に出力される。
【0025】
非絶縁出力である第2出力は電源制御回路23によって、出力電圧が制御されている。しかし、通信モジュール3に供給される絶縁出力である第1出力は出力電圧制御がなされておらず、通信モジュール3が変成器付き電力量計2に未接続の場合、出力電圧が著しく高くなることが想定される。そのため、実施の形態の変成器付き電力量計2においては、出力電圧維持を目的としてダミー抵抗24を実装している。
【0026】
ここで、ダミー抵抗24を実装した状態で通信モジュール3が接続された場合、通信モジュール3での電力消費が変成器付き電力量計2に加算される。つまり、変成器付き電力量計2の電圧回路における使用負担が増加する。
【0027】
例えば、変成器付き電力量計2が検定付計器であった場合、使用される計器用変成器40と組み合わせる変成器付き電力量計2の合計負担を、計器用変成器40の使用負担の範囲内に抑える必要がある。
【0028】
前述のように、変成器付き電力量計2に通信モジュール3を着脱することで、変成器付き電力量計2の使用負担が変わると、計器用変成器40の使用負担の範囲を超えてしまうことが懸念される。
【0029】
そこで、本実施の形態ではスイッチング素子25を実装し、計測制御部27でスイッチング素子25をオン/オフする構成とした。すなわち、ダミー抵抗24と、スイッチング素子25との直列回路を、第1接続線L1と接地との間に設けた。
【0030】
ここで、スイッチング素子25は例えばトランジスタ、またはサイリスタなどで構成される簡易的なスイッチ回路である。
【0031】
図3は、実施の形態におけるダミー抵抗24およびスイッチング素子25の具体的回路構成を示す図である。
図3では、スイッチング素子25をトランジスタ25aとしている。
【0032】
図3において、計測制御部27は通信モジュール3の変成器付き電力量計2に対する接続の有無を監視する。計測制御部27は、通信モジュール3が未接続状態の場合、トランジスタ25aをオンに制御する。これにより、ダミー抵抗24が電気的に接続され、ダミー抵抗24が使用負担となる回路が形成される。一方、通信モジュール3が接続状態である場合、計測制御部27は、トランジスタ25aをオフに制御する。これにより、ダミー抵抗24が切り離され、通信モジュール3が使用負担となる回路が形成される。
【0033】
ダミー抵抗24は、通信モジュール3と使用負担が同じとなるよう抵抗値が調整される。これにより、通信モジュール3の接続の有無に応じて、トランジスタ25aをオン/オフすることで、通信モジュール3の接続の有無にかかわらず、変成器付き電力量計2の使用負担を一定に保つことができる。
【0034】
図4は、実施の形態にかかる変成器付き電力量計2の動作例を示すフローチャートである。
図4は、計測制御部27の動作を示している。
【0035】
まず、計測制御部27は、通信モジュール3が変成器付き電力量計2に接続されているか否かを判定する(ステップS11)。通信モジュール3が接続されている場合(ステップS11:Yes)、計測制御部27は、スイッチング素子25をオフとする(ステップS14)。これにより、ダミー抵抗24が回路から切り離される(ステップS15)。この結果、通信モジュール3が変成器付き電力量計2の負荷となる。
【0036】
通信モジュール3が接続されていない場合(ステップS11:No)、計測制御部27は、スイッチング素子25をオンとする(ステップS12)。これにより、ダミー抵抗24が回路に接続され(ステップS13)、ダミー抵抗24が変成器付き電力量計2の負荷となる。
【0037】
図5は、実施の形態にかかる変成器付き電力量計2の変形例を示す図である。
図5に示す変形例では、通信モジュール3が制御信号によってスイッチング素子25のオン/オフ制御を行う。すなわち、
図4に示したように、通信モジュール3が、変成器付き電力量計2に接続されているか否かを判定し、判定結果に応じてスイッチング素子25のオン/オフ制御を行う。別言すれば、通信モジュール3が変成器付き電力量計2へ接続された時に、通信モジュール3がスイッチング素子25をオフとする。
【0038】
このように実施の形態によれば、通信モジュール3が接続されている場合、スイッチング素子25をオフとして、ダミー抵抗24を回路から切り離し、通信モジュール3が接続されていない場合、スイッチング素子25をオンとして、ダミー抵抗24を回路に接続している。したがって、通信モジュール3の接続の有無にかかわらず、計器の使用負担を一定に保つことができ、計測精度を担保することができる。また、計器内部の電源回路の構成要件であるダミー抵抗を使用することで、追加の部品を少なく構成することが可能となる。加えて、本実施の形態における計器の使用負担はDC回路で制御しているため、比較的小サイズかつ安価な部品で実現することができる。
【0039】
以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 計器用変圧器、2 変成器付き電力量計、3 通信モジュール、11,12,13 電源配線、20,30 変流器、21 整流回路、22 電源トランス、23 電源制御回路、24 ダミー抵抗、25 スイッチング素子、25a トランジスタ、26 計器内部電源、27 計測制御部、28 入力回路、29 表示部、40 計器用変成器。