(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186369
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】レガシーシステムとの共存を実行するための基地局装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20221208BHJP
H04W 92/20 20090101ALI20221208BHJP
H04W 52/38 20090101ALI20221208BHJP
【FI】
H04W48/16
H04W92/20
H04W52/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094548
(22)【出願日】2021-06-04
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴山 昌也
(72)【発明者】
【氏名】梅原 雅人
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA03
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE10
5K067GG08
(57)【要約】
【課題】干渉の発生又は影響を抑制すること。
【解決手段】第1の通信規格に従ってシステム周波数帯域の全域にわたって参照信号を送信することを含んだ通信を行う基地局装置は、第1の通信規格と異なる第2の通信規格に従って動作する他の基地局装置から、または、この他の基地局装置と関連付けられており、第1の通信規格に従って動作する第2の他の基地局装置から、他の基地局装置が端末装置へユーザデータを送信するために割り当てる周波数および時間に関するリソースの情報を取得し、その情報によって示されるリソースのユーザデータの送信のための使用とそのリソースにおいて送信されるべき参照信号の送信を制限する制御を実行する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信規格に従ってシステム周波数帯域の全域にわたって参照信号を送信することを含んだ通信を行う基地局装置であって、
前記第1の通信規格と異なる第2の通信規格に従って動作する他の基地局装置から、または、当該他の基地局装置と関連付けられており、前記第1の通信規格に従って動作する第2の他の基地局装置から、当該他の基地局装置が端末装置へユーザデータを送信するために割り当てる周波数および時間に関するリソースの情報を取得する取得手段と、
前記情報によって示されるリソースのユーザデータの送信のための使用と当該リソースにおいて送信されるべき前記参照信号の送信を制限する制御を実行する制御手段と、
を有することを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記情報によって示されるリソースにおいて制限された前記参照信号の電力に基づいて、前記情報によって示されるリソースと時間が同じで周波数が異なるリソースにおける前記参照信号の送信電力を増加する、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記取得手段は、基地局装置間を接続するインタフェースを介して前記情報を取得する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記基地局装置間を接続するインタフェースは、X2インタフェースまたはS1インタフェースを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記情報によって示されるリソースにおいてユーザデータを送信しないことにより、又は、前記他の基地局装置が当該リソースを用いてユーザデータを送信する前記端末装置の方向に向けて形成されるビームにおいて当該リソースをユーザデータの送信のために割り当てないことにより、当該リソースのユーザデータの送信のための使用を制限する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記情報によって示されるリソースにおいて前記参照信号の送信を停止することにより、又は、当該リソースにおいて前記参照信号の送信電力を低減することにより、当該リソースにおける前記参照信号の送信を制限する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項7】
基地局装置であって、
第1の通信規格に従ってシステム周波数帯域の全域にわたって参照信号を送信する他の基地局装置からの信号の無線品質を測定するように、前記第1の通信規格と異なる第2の通信規格に従って動作する端末装置へ指示する指示手段と、
前記端末装置から前記無線品質の測定の結果を取得する取得手段と、
前記測定の結果に基づいて、前記端末装置が前記他の基地局装置からの信号を所定のレベル以上の電力で受信している場合に、当該端末装置へユーザデータを送信するために割り当てる周波数および時間に関するリソースの情報を前記他の基地局装置へ通知する通知手段と、
前記端末装置へ、前記第2の通信規格に従って、前記リソースを割り当ててユーザデータを送信する送信手段と、
を有することを特徴とする基地局装置。
【請求項8】
前記指示手段は、前記基地局装置によって形成される前記第1の通信規格のセルを測定の対象から除いて、又は、前記基地局装置と関連付けられた第2の他の基地局装置によって形成される前記第1の通信規格のセルを測定の対象から除いて、前記無線品質を測定するように、前記端末装置へ指示を送信する、ことを特徴とする請求項7に記載の基地局装置。
【請求項9】
前記指示手段は、前記無線品質が所定値を超えた場合に前記基地局装置へ前記測定の結果を報告させる指示を前記端末装置へ送信し、
前記通知手段は、前記測定の結果を受信したことに基づいて、前記他の基地局装置へ前記情報を通知する、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の基地局装置。
【請求項10】
前記第1の通信規格は、ロングタームエボリューション(LTE)規格であり、前記第2の通信規格は第5世代(5G)規格である、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項11】
第1の通信規格に従ってシステム周波数帯域の全域にわたって参照信号を送信することを含んだ通信を行う基地局装置によって実行される制御方法であって、
前記第1の通信規格と異なる第2の通信規格に従って動作する他の基地局装置から、または、当該他の基地局装置と関連付けられており、前記第1の通信規格に従って動作する第2の他の基地局装置から、当該他の基地局装置が端末装置へユーザデータを送信するために割り当てる周波数および時間に関するリソースの情報を取得することと、
前記情報によって示されるリソースのユーザデータの送信のための使用と当該リソースにおいて送信されるべき前記参照信号の送信を制限する制御を実行することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
基地局装置によって実行される制御方法であって、
第1の通信規格に従ってシステム周波数帯域の全域にわたって参照信号を送信する他の基地局装置からの信号の無線品質を測定するように、前記第1の通信規格と異なる第2の通信規格に従って動作する端末装置へ指示することと、
前記端末装置から前記無線品質の測定の結果を取得することと、
前記測定の結果に基づいて、前記端末装置が前記他の基地局装置からの信号を所定のレベル以上の電力で受信している場合に、当該端末装置へユーザデータを送信するために割り当てる周波数および時間に関するリソースの情報を前記他の基地局装置へ通知することと、
前記端末装置へ、前記第2の通信規格に従って、前記リソースを割り当ててユーザデータを送信することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
第1の通信規格に従ってシステム周波数帯域の全域にわたって参照信号を送信することを含んだ通信を行う基地局装置に備えられたコンピュータに、
前記第1の通信規格と異なる第2の通信規格に従って動作する他の基地局装置から、または、当該他の基地局装置と関連付けられており、前記第1の通信規格に従って動作する第2の他の基地局装置から、当該他の基地局装置が端末装置へユーザデータを送信するために割り当てる周波数および時間に関するリソースの情報を取得させ、
前記情報によって示されるリソースのユーザデータの送信のための使用と当該リソースにおいて送信されるべき前記参照信号の送信を制限する制御を実行させる、
ためのプログラム。
【請求項14】
基地局装置に備えられたコンピュータに、
第1の通信規格に従ってシステム周波数帯域の全域にわたって参照信号を送信する他の基地局装置からの信号の無線品質を測定するように、前記第1の通信規格と異なる第2の通信規格に従って動作する端末装置へ指示させ、
前記端末装置から前記無線品質の測定の結果を取得させ、
前記測定の結果に基づいて、前記端末装置が前記他の基地局装置からの信号を所定のレベル以上の電力で受信している場合に、当該端末装置へユーザデータを送信するために割り当てる周波数および時間に関するリソースの情報を前記他の基地局装置へ通知させ、
前記端末装置へ、前記第2の通信規格に従って、前記リソースを割り当ててユーザデータを送信させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム間における干渉低減技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)による第5世代(5G)の無線通信規格に従う無線通信システムが展開されている。この5Gの無線通信システムは、発展の途上であり、第4世代(4G)の無線通信規格(例えばロングタームエボリューション(LTE)規格)の無線通信システムと共に利用されている。このような環境において、5Gの無線通信システムで使用可能な周波数リソースを増やすために、4Gの無線通信システムにおいて使用されている周波数リソースを使用することが想定されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LTE規格では、直行周波数分割多元接続をベースとして、周波数キャリアと1つのOFDMシンボルとからなるリソースエレメントを最小の無線リソースの単位としている。そして、複数のリソースエレメントを1つのリソースブロックとして、そのリソースブロックを通信に割り当てる最小の単位として、基地局装置と端末装置との間での通信が行われる。LTE規格では、参照信号が配置されるリソースエレメントがシステム周波数帯域の全体に分散しており、基地局装置は、ユーザデータを送信しないリソースブロックにおいても参照信号を送信することになっている。したがって、LTE規格においてユーザデータの通信のために割り当てられていないリソースブロックを5Gの通信のために割り当てる場合、LTE規格の参照信号が5Gの通信へ干渉することとなる。
【0005】
なお、1つの基地局装置がLTEの通信と5Gの通信とを実行可能な場合、その基地局装置が、LTEの参照信号が送信されない時間・周波数リソースにおいて5Gの信号を送信することによって、その干渉を防ぐことができる。しかしながら、この場合であっても、例えば隣接する他の基地局装置から送信された参照信号からの干渉は発生してしまう。
【0006】
本発明は、周波数リソースを共有するシステム間の干渉の影響を低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による基地局装置は、第1の通信規格に従ってシステム周波数帯域の全域にわたって参照信号を送信することを含んだ通信を行う基地局装置であって、前記第1の通信規格と異なる第2の通信規格に従って動作する他の基地局装置から、または、当該他の基地局装置と関連付けられており、前記第1の通信規格に従って動作する第2の他の基地局装置から、当該他の基地局装置が端末装置へユーザデータを送信するために割り当てる周波数および時間に関するリソースの情報を取得する取得手段と、前記情報によって示されるリソースのユーザデータの送信のための使用と当該リソースにおいて送信されるべき前記参照信号の送信を制限する制御を実行する制御手段と、を有する。
【0008】
本発明の別の一態様による基地局装置は、第1の通信規格に従ってシステム周波数帯域の全域にわたって参照信号を送信する他の基地局装置からの信号の無線品質を測定するように、前記第1の通信規格と異なる第2の通信規格に従って動作する端末装置へ指示する指示手段と、前記端末装置から前記無線品質の測定の結果を取得する取得手段と、前記測定の結果に基づいて、前記端末装置が前記他の基地局装置からの信号を所定のレベル以上の電力で受信している場合に、当該端末装置へユーザデータを送信するために割り当てる周波数および時間に関するリソースの情報を前記他の基地局装置へ通知する通知手段と、前記端末装置へ、前記第2の通信規格に従って、前記リソースを割り当ててユーザデータを送信する送信手段と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周波数リソースを共有するシステム間の干渉の影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】基地局装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】第1の基地局装置の機能構成例を示す図である。
【
図4】第2の基地局装置の機能構成例を示す図である。
【
図5】無線通信システムで実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
(通信システムの構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。本無線通信システムは、複数の無線通信規格による周波数および時間、空間などの無線リソースの共用が行われる無線通信システムである。一例において、無線通信システムは第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)規格に従うセルラ通信システムである。以下では、複数の無線通信規格として、第1の通信規格としてロングタームエボリューション(LTE)規格が用いられ、第2の通信規格として第5世代(5G)規格(New Radio(NR)規格)が用いられるものとする。本無線通信システムは、例えば、LTEと5Gとの両方での通信が可能な第1の基地局装置101と、LTEでの通信が可能な第2の基地局装置102とを含んで構成される。
【0013】
第1の基地局装置101は、例えば、LTE用の通信回路と5G用の通信回路を有し、それらを協調させて、共通のアンテナからLTEの信号と5Gの信号とを送信しうる。また、第1の基地局装置101は、共通のアンテナによってLTEの信号と5Gの信号とが混在する信号を受信し、その受信信号から、LTEの信号と5Gの信号とを分離することができるように構成されうる。これにより、第1の基地局装置101は、LTE規格に準拠した端末装置および5G規格に準拠した端末装置と並行して通信することができる。なお、これは一例であり、第1の基地局装置101は、1つ以上のLTE用の基地局装置と1つ以上の5G用の基地局装置とを含む基地局装置の集合体として構成されてもよい。この場合、LTE用の基地局装置と5G用の基地局装置は、例えば相互に物理的に接続されると共に論理的に相互に関連付けられ、協調して通信を行うことが可能に構成される。一例において、LTE用の基地局装置が、5Gの制御のために他の(5G用の基地局装置と関連付けられていても関連付けられていなくてもよい)LTEの基地局装置と、例えばX2インタフェースやS1インタフェースを介して通信することができる。なお、これは一例であり、例えばXnインタフェースや将来規定されるインタフェースなど、基地局装置間を直接接続する又は他のノードを介して基地局装置間を接続して、基地局装置間の通信を可能とする任意のインタフェースが用いられうる。なお、第1の基地局装置101は5Gの基地局装置であってもよく、LTEの機能を有しなくてもよい。
【0014】
第2の基地局装置102は、LTE用の通信回路を用いて、LTE規格に準拠した端末装置との間で通信を行う。第2の基地局装置102は、例えば、第1の基地局装置101とX2インタフェースやS1インタフェースを介して通信することができる。第2の基地局装置102は、例えば、第1の基地局装置101のLTE用の通信が可能な機能部分との間で通信を実行しうるが、そのLTE用の通信が可能な機能部分を介して5G用の通信が可能な機能と通信を行うように構成されてもよい。また、第2の基地局装置102は、第1の基地局装置101の5Gの機能部分との通信を直接実行可能に構成されてもよい。なお、第2の基地局装置102も、LTEのみならず、5Gでの通信が可能に構成されてもよい。すなわち、第2の基地局装置102は、以下で説明する第1の基地局装置101の機能を実行可能に構成されうる。なお、第1の基地局装置101も、第2の基地局装置102の機能を実行可能に構成されうる。
【0015】
端末装置103は、例えば第1の基地局装置101との間で、5G規格に従って通信可能なユーザ端末(UE)でありうる。なお、端末装置103は、一例において、LTE規格での通信も可能に構成され、5Gでの通信ができない場合などにLTEでの通信を行うように構成されうる。端末装置103は、例えば、第1の基地局装置101の5G通信機能による制御の下で5Gネットワークに接続し、5G規格に従って通信しうる。また、端末装置103は、例えば、第1の基地局装置101の5G通信機能による指示を受けて、LTE規格の信号を測定することも可能に構成される。
【0016】
本実施形態では、端末装置103は、例えばセル111において、第1の基地局装置101と5Gで通信を行うものとする。第1の基地局装置101は、例えば、LTEと5Gとの共用周波数帯域のうちの一部を5Gの通信用として定め、対応する時間および周波数のリソースを端末装置103へ割り当てて5Gの信号を送信しうる。ここで、端末装置103がセル111の端部に滞在する場合、端末装置103が受信する信号は、隣接するセル112やセル113において送信された信号から干渉を受けることが想定される。ここで、例えば第1の基地局装置101が、セル111において端末装置103のユーザデータの送信のために割り当てた周波数および時間リソースを、セル112において使用しないことにより、セル112のユーザデータ送信用の信号からの干渉を抑制することができる。同様に、第1の基地局装置101が、第2の基地局装置102に対して端末装置103へのリソース割り当て情報を通知して、第2の基地局装置102がそのリソースを使用しないようにすることもできる。しかしながら、LTE規格では、システム周波数帯域の全域にわたって参照信号(セル固有参照信号)を送信することとなっており、これは、ユーザデータの送信に使用されないリソースにおいても例外ではない。このため、端末装置103は、セル112やセル113から送出された参照信号によって干渉を受けることになる。このため、本実施形態では、このような干渉の影響を抑制するための手法を提供する。
【0017】
本実施形態では、端末装置103と接続している第1の基地局装置101は、第2の基地局装置102に対して、端末装置103に割り当てる周波数および時間リソース(リソースブロックの位置)の情報を通知する。この情報は、例えばX2インタフェースやS1インタフェースを介して送信される。一例において、第1の基地局装置101の5Gの機能部分が、第1の基地局装置101のLTEの機能部分を介して、第2の基地局装置102へ情報を通知しうる。ここで通知される情報は、端末装置103に割り当てられるリソースブロックを特定可能な情報であれば、どのような形式を有してもよい。また、第1の基地局装置101の内部でも、5Gの機能部分から、セル112に関するLTE用の機能部分に対して、そのリソースの情報を通知しうる。なお、この通知は、基地局装置間の通知と同様に行われてもよいし、装置内部の独自のインタフェースを介して行われてもよい。
【0018】
そして、第2の基地局装置102(及び第1の基地局装置101のセル112に関するLTEの機能部分)は、第1の基地局装置101から受信した情報によって示されるリソースのユーザデータの送信のための使用を制限するのみならず、参照信号の送信をも制限する。ここで、参照信号の送信の制限は、取得した情報によって示されるリソースにおいて参照信号の送信を停止することと、そのリソースにおけるセル固有参照信号の送信電力を低減することとのいずれかでありうる。また、リソースのユーザデータの送信のための使用の制限は、そのリソースへのユーザデータの割り当てを行わないことを含む。また、この制限は、例えば、端末装置103の方向に向けて形成されるビームにおいてそのリソースをユーザデータの送信に割り当てないことを含みうる。なお、ビームが形成される方向が可変である場合には、端末装置103の方向を避けてビームを形成してユーザデータの通信を行うようにしてもよい。この場合、取得した情報によって示されるリソースにおいてセル固有参照信号が送信されない又は十分に電力が小さいが、復調参照信号が送信されるため、そのリソースでユーザデータを受信した端末装置は、そのユーザデータを復調することができる。なお、第1の基地局装置101のセル112に関するLTEの機能部分も、端末装置103に割り当てられるリソースにおける、ユーザデータの送信のための使用と参照信号の送信の制限を行いうる。一方、第1の基地局装置101のセル111に関するLTEの機能部分は、例えば、セル固有参照信号が送信されるリソースエレメントを端末装置103のユーザデータの通信に使用せず、かつ、LTEのユーザデータの送信には割り当てないようにしうる。これによれば、セル111においては参照信号が送信されながらも、端末装置103の通信にLTEの参照信号が干渉することを防ぐことができる。また、セル111においても、端末装置103に割り当てたリソースにおいてはセル固有参照信号を送信しない又はその送信電力を低減するようにしてもよい。このような処理によれば、端末装置103の5Gによるユーザデータの通信に割り当てられるリソースにおいて、LTEからの干渉を十分に抑制することができる。
【0019】
なお、LTEでは、端末装置が、セル固有参照信号の電力を測定し、システム周波数帯域の全体でのその電力の平均値を算出して、RSRP(参照信号受信電力)として出力することになっている。このため、一部の参照信号の送信を制限することによって、このRSRPの測定に影響が生じうる。このため、第2の基地局装置102や、第1の基地局装置101のセル112のLTEの機能部分は、送信が停止された参照信号の数や、参照信号の送信電力の低減量の総量に応じた電力だけ、同じ時間に対応する他の周波数リソースにおいて参照信号の送信電力レベルを増加しうる。これにより、システム周波数帯域の全体での参照信号の電力が維持されるため、RSRPの測定への影響を抑制することができるようになる。
【0020】
なお、端末装置103に干渉を及ぼしうる全てのLTEの基地局装置に対して上述の処理を実行させることができるが、この場合、端末装置103に干渉しないような基地局装置において不必要にリソースの使用が回避されてしまいうる。このため、ある実施形態においては、上述の処理を実行する基地局装置を限定しうる。例えば、第1の基地局装置101(第1の基地局装置101の5Gの機能部分)は、端末装置103に対して周囲のLTEの基地局装置から送信された信号(例えばセル固有参照信号)の無線品質(受信電力)の測定を指示し、その測定の結果に基づいて、上述の処理を実行させるLTEの基地局装置を特定しうる。
【0021】
例えば、第1の基地局装置101は、端末装置103からの信号の受信電力の測定の結果が所定値を超えるLTEのセルを特定し、そのセルを展開する基地局装置に対して、端末装置103に割り当てるリソースの情報を通知するようにする。これにより、端末装置103に対して十分に強い干渉を与えうる基地局装置が、端末装置103に割り当てられるリソースにおいてユーザデータの送信や参照信号の送信を制限することになり、端末装置103の通信に対する干渉を効率的に抑制することができる。
【0022】
また、第1の基地局装置101は、例えば、測定の結果が所定値を超えた場合に、その結果を報告するように端末装置103に指示してもよい。このとき、第1の基地局装置101は、測定の結果が所定値を超えた回数が所定回数に達した場合に測定結果を報告させるように指示してもよいし、例えば、所定期間にわたって測定の結果が所定値を超え続けた場合に測定結果を報告させるように指示してもよい。この指示は、例えば、5G規格において規定されている無線アクセス技術(RAT)間ハンドオーバのための測定指示でありうる。RAT間ハンドオーバのための測定指示に関するイベントとして、RATの異なる(すなわち無線通信規格の異なる)隣接セルにおける無線品質の測定結果が所定の閾値を超えた場合に基地局装置へ報告を送信することを規定するEventB1が存在する。このEventB1を利用することにより、端末装置103に、受信信号の電力が閾値を超えた周囲のLTEのセル(すなわち、基地局装置)を報告させることができる。このため、基地局装置101は、測定の結果が報告されたセルに対応する基地局装置に対して、端末装置103に割り当てるリソースの情報を通知するようにしうる。これにより、端末装置103に対して十分に強い干渉を与えうる基地局装置が、端末装置103に割り当てられるリソースにおいてユーザデータの送信や参照信号の送信を制限することになり、端末装置103の通信に対する干渉を効率的に抑制することができる。
【0023】
なお、第1の基地局装置101は、端末装置103に対して5Gの通信サービスを提供しているセルと共通のエリアを有する、第1の基地局装置101によって形成されたLTEのセルについては、測定対象から除くように、端末装置103へ指示しうる。第1の基地局装置101は、端末装置103に割り当てられるリソースを認識しており、また、セル111でのLTEの信号がどの程度のレベルで干渉するかを事前に認識できるため、端末装置103にその測定をさせる必要がないからである。例えば、端末装置103への測定指示によって、例えば隣接セルリストに含まれるセルなどの事前設定されたセルの測定を実行させうる。この場合、そのセルの中にセル111が含まれうるが、第1の基地局装置101は、セル111を測定対象から除くことを示す情報を測定指示に含めうる。また、端末装置103への測定指示において測定対象とするセルを都度指定してもよい。この場合、第1の基地局装置101は、測定対象のセルにセル111を含めないようにしてもよい。これにより、端末装置103に不要な測定を実行させないようにすることができる。
【0024】
なお、第1の基地局装置101は、端末装置103における第2の基地局装置102等からの信号の受信電力の測定値に基づいて、各基地局装置において参照信号の送信電力をどの程度低減させるべきかを決定し、その決定した電力低減量を、第2の基地局装置102等に通知してもよい。これによれば、第2の基地局装置102等は、端末装置103への干渉を十分に抑制しながら、適切に低減した電力で参照信号を送信することができるようになる。
【0025】
以下では、上述のような処理を実行する第1の基地局装置101および第2の基地局装置102の構成例と、実行される処理の流れの例について説明する。
【0026】
(装置構成)
図2を用いて、第1の基地局装置101及び第2の基地局装置102のハードウェア構成例について説明する。第1の基地局装置101及び第2の基地局装置102は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM202は、第1の基地局装置101や第2の基地局装置102が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路205は、例えば、LTEや5Gの無線通信用の回路によって構成される。なお、
図2では、1つの通信回路205が図示されているが、第1の基地局装置101及び第2の基地局装置102は、複数の通信回路を有しうる。例えば、第1の基地局装置101は、LTE用および5G用の無線通信回路と共通のアンテナを有しうる。なお、第1の基地局装置101は、LTE用のアンテナと5G用のアンテナとを別個に有してもよい。また、第1の基地局装置101は、さらに、第2の基地局装置102などの他の基地局装置やコアネットワークのノードと通信する際に使用される有線通信回路を有しうる。また、第2の基地局装置102は、LTE用の無線通信回路及びアンテナと、有線通信用の有線通信回路とを有しうる。なお、第1の基地局装置101および第2の基地局装置102は、使用可能な複数の周波数帯域のそれぞれについて別個の通信回路205を有してもよいし、それらの周波数帯域の少なくとも一部に対して共通の通信回路205を有してもよい。
【0027】
図3は、第1の基地局装置101の機能構成例を示す図である。第1の基地局装置101は、その機能として、例えば、測定指示部301、測定結果取得部302、リソース設定通知部303、および、通信部304を有する。なお、
図3では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、第1の基地局装置101が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、第1の基地局装置101は、LTEおよび5Gの基地局装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、
図3の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図3の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路205の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。なお、ここでの「第1の基地局装置101」は、端末装置103に対して5Gの通信を提供する基地局装置(例えば第1の基地局装置101のセル111を提供する機能部分)である。したがって、第1の基地局装置101の内部の、例えばセル112を提供する機能部分については、後述の第2の基地局装置102と同様に扱われうる。
【0028】
測定指示部301は、5Gで通信を行う予定の端末装置103に対して、周囲のLTEの基地局装置(第2の基地局装置102や、第1の基地局装置101のセル112に関する機能部分)からの信号(例えばセル固有参照信号)の測定を行うように指示する。この指示は、例えば5Gの制御メッセージを用いて送信されうる。例えば、RAT間ハンドオーバのための5G以外の無線通信規格の信号の測定報告を行わせるメッセージによって、この指示が端末装置103へ送信される。なお、この指示は、LTE規格の制御メッセージを用いて行われてもよく、例えば、RAT内ハンドオーバのための測定報告のためのメッセージが用いられうる。このメッセージにより、測定されたLTEの信号の電力値が所定値を超える場合に報告を送信させることができる。このとき、その所定値を示す情報や、所定値を超える電力値の信号が測定された場合に直ちに報告を送信するか、信号の測定結果の電力値が所定回数だけ所定値を超えた又は信号の測定結果が一定時間にわたって所定値を超えたセルが存在する場合に報告を送信するか、などを示す報告の条件が通知されてもよい。また、端末装置103の5Gの通信のために、LTEの通信と5Gの通信とのためのリソース共用制御を行う基地局装置が展開しているLTEのセルについては測定の対象外となるように、測定対象の指定が行われうる。なお、測定指示部301は、例えば、RRCメッセージ(RRCReconfigurationメッセージなど)を用いて、端末装置103に対して測定指示を送信することができる。
【0029】
測定結果取得部302は、端末装置103から、信号の測定結果の報告を受信する。この報告は、例えば、5G規格に従って行われうるが、LTE規格に従って行われてもよい。リソース設定通知部303は、端末装置103に対して5Gのユーザデータの通信のための無線リソース(周波数および時間リソース)を設定する。また、リソース設定通知部303は、測定結果取得部302によって取得された情報に基づいて、端末装置103によって十分に強い電力で受信されたLTEの信号の送信元のLTEの基地局装置を特定して、そのLTEの基地局装置に対して、設定した無線リソースを示す情報を通知する。この通知は、例えば4Gとしての機能を用いて、X2インタフェースやS1インタフェースを介して行われうる。なお、リソース設定通知部303は、例えば、測定結果取得部302によって取得された測定の結果に基づいて、干渉量をどの程度下げれば端末装置103の通信への影響を十分に小さくできるかを算出等によって決定し、その干渉量の低減レベルを併せて通知するようにしてもよい。通信部304は、リソース設定通知部303において設定されたリソースを用いて、端末装置103との間で5Gの通信を実行する。なお、一例において、端末装置103に干渉しうる位置に存在する全てのLTEの基地局装置102に対して、端末装置103に割り当てるリソースの情報を通知してもよい。この場合、第1の基地局装置101は、その機能として、測定指示部301や測定結果取得部302を有しなくてもよい。
【0030】
図4は、第2の基地局装置102の機能構成例を示す図である。第2の基地局装置102は、その機能として、例えば、リソース情報取得部401および通信制御部402を有する。なお、
図4では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、第2の基地局装置102が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、第2の基地局装置102は、LTEの基地局装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、
図4の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図4の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路205の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。なお、ここでの「第2の基地局装置102」は、端末装置103に対して5Gの通信を提供する基地局装置(例えば第1の基地局装置101のセル111を提供する機能部分)以外の、任意のLTEの通信が可能な基地局装置でありうる。
【0031】
リソース情報取得部401は、第1の基地局装置101から、端末装置103に割り当てられるリソースの情報を取得する。通信制御部402は、取得した情報によって示されるリソースのユーザデータの送信への使用を制限し、かつ、そのリソースでの参照信号(例えばセル固有参照信号)の送信を制限する。例えば、通信制御部402は、取得した情報によって示されるリソースをユーザデータの送信に用いることを禁止し、参照信号の送信を停止する制御を行う。例えば、通信制御部402は、端末装置103の方向に向けたビームにおいては、ユーザデータが送信されないようにしうる。また、通信制御部402は、例えば、参照信号の電力レベルを下げることを第1の基地局装置101から指示された場合、その指示によって指定された電力レベルだけ、参照信号の送信電力を低減しうる。なお、通信制御部402は、リソース情報取得部401によって通知されたリソースにおける参照信号の停止または電力の低減を行った場合、その参照信号の電力レベルの低下量に応じて、参照信号を制限した時間において、他の周波数リソースにおける参照信号の電力を増加しうる。
【0032】
(処理の流れ)
続いて、本実施形態に係る無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例について、
図5を用いて概説する。なお、各処理の詳細については上述の通りであるため、ここでは処理の概要を説明するにとどめ、その詳細については説明を省略する。
【0033】
まず、端末装置103と5Gで通信する第1の基地局装置101が、端末装置103に対して、LTEの信号の測定指示を送信する(S501)。例えば、第1の基地局装置101は、端末装置103に対して、5GのRRCメッセージによって、RAT間のハンドオーバのための測定報告の設定を行わせうる。これにより、5Gで通信する端末装置103に、LTEの無線品質を測定させることができる。S501では、例えば、測定対象のセルの識別情報(物理セル識別子(PCI))や測定対象としないセルの識別情報(例えば第1の基地局装置101のPCI)が通知されうる。また、S501では、報告をトリガする無線品質(受信電力)の閾値などの、端末装置103に報告を行わせるための条件を示す情報が通知されうる。そして、端末装置103は、この設定に基づいて、周囲のLTEの基地局装置から送信される信号の受信電力を測定する。
図5の例では、端末装置103は、第2の基地局装置102等の周囲のLTEの基地局装置からのセル固有参照信号を測定する(S502)。端末装置103は、例えば、この測定において、参照信号受信電力(RSRP)を特定しうる。なお、セル固有参照信号以外の信号が測定対象として使用されてもよい。
【0034】
その後、端末装置103は、例えば、測定結果の報告をすべき条件が満たされた場合(例えば、測定結果の電力値が所定回数又は所定期間にわたって所定値を超えた場合など)に、その測定結果を第1の基地局装置101へ報告する(S503)。
図5の例では、例えば、第2の基地局装置102からの信号の受信電力が所定値を超えたことが第1の基地局装置101に報告されたものとする。この場合、第1の基地局装置101は、第2の基地局装置102へ、端末装置103のユーザデータの送信のために割り当てる、時間および周波数のリソースの情報を第2の基地局装置102へ通知する(S504)。そして、第2の基地局装置102は、その情報によって示されるリソースでの信号送信を制限する(S505)。すなわち、第2の基地局装置102は、そのリソースのユーザデータの送信での使用を行わず、又は、端末装置103の方向へ向かうビームにおいてそのリソースでユーザデータを送信しないようにする。また、第2の基地局装置102は、そのリソースにおけるセル固有参照信号の送信を停止し、又は、セル固有参照信号の送信電力を低減する。送信電力の低減が行われる場合、その低減量は、例えば、S504において、第1の基地局装置101から、リソースの情報と共に通知されうる。なお、第2の基地局装置101は、システム周波数帯域におけるセル固有参照信号の送信電力の総量が一定に保たれるように、情報によって通知されたリソースとは周波数が異なるリソースにおいて、セル固有参照信号の送信電力を増加する(S506)。
【0035】
以上のようにして、端末装置103へ5Gでのユーザデータが送信される際に、そのユーザデータへの、周囲のLTEのセルからのセル固有参照信号による干渉を抑制することができる。
【0036】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。