(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186372
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 3/08 20060101AFI20221208BHJP
H01Q 19/12 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01Q3/08
H01Q19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094552
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141678
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】板垣 賢二
(72)【発明者】
【氏名】尚 尓昊
(72)【発明者】
【氏名】夏原 啓一
(72)【発明者】
【氏名】野呂 崇徳
【テーマコード(参考)】
5J020
5J021
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA09
5J020BC02
5J020BC08
5J021AA01
5J021AB02
5J021BA01
5J021CA02
5J021DA02
5J021DA04
5J021DA05
5J021GA02
5J021HA10
(57)【要約】
【課題】移相器を必要とすることなく全方向のビームを走査する。
【解決手段】平面波発生部2が、電磁波を放射するプローブ28と、プローブ28から放射される円筒波の電磁波を平面波の電磁波に変換するカセグレン構造を構成する主反射鏡26および副反射鏡27と、を有し、アンテナ部3が、板状の基部311と、基部311において列状に連なるスロットとして形成されて相互に等間隔で離間しつつ平行に配設される複数の放射スタブ312と、を備えるフィードアレイ31を有し、第1の回動部によりプローブ28を回転中心として平面波発生部2とアンテナ部3とを一緒に回転させることによって方位角方向のビーム走査を行うとともに、第2の回動部によりプローブ28を回転中心として平面波発生部2に対してアンテナ部3を回転させてアンテナ部3の基部311へと入射される平面波の電磁波の波面を傾斜させることによって高度角方向のビーム走査を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面波発生部と、アンテナ部と、第1の回動部と、第2の回動部と、を有し、
前記平面波発生部が、
電磁波を放射するプローブと、
前記プローブから放射される円筒波の電磁波を平面波の電磁波に変換するカセグレン構造を構成する主反射鏡および副反射鏡と、を有し、
前記アンテナ部が、
板状の基部と、
前記基部において列状に連なるスロットとして形成されて相互に等間隔で離間しつつ平行に配設される複数の放射スタブと、を備えるフィードアレイを有し、
前記第1の回動部により前記プローブを回転中心として前記平面波発生部と前記アンテナ部とを一緒に回転させることによって方位角方向のビーム走査を行うとともに、
前記第2の回動部により前記プローブを回転中心として前記平面波発生部に対して前記アンテナ部を回転させて前記アンテナ部の前記基部へと入射される前記平面波の電磁波の波面を傾斜させることによって高度角方向のビーム走査を行う、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記平面波発生部が、平行平板線路を各々構成して積層される下層導波管および上層導波管を備える折り返し導波管を有し、
前記カセグレン構造が前記下層導波管内に設けられ、
前記アンテナ部が前記上層導波管側に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アンテナ装置に関し、例えば、種々の移動体に搭載される衛星通信用アンテナに適用して好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数チャンネルの電波走査を行う従来のアンテナとして、複数個の素子アンテナと、各素子アンテナの受信信号の位相を制御する移相器と、位相を制御された複数の受信信号を合成する合成器とを有するサブアレーを複数個組み合わせて構成するアンテナ装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のアンテナ装置では、複数個の素子アンテナの各々に対応させて移相器が設けられるために相当数の移相器が必要になるので、機器構成が複雑になり、また、コストが増加する、という問題がある。
【0005】
そこでこの発明は、移相器を必要とすることなく全方向のビームを走査することが可能な、アンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係るアンテナ装置は、平面波発生部と、アンテナ部と、第1の回動部と、第2の回動部と、を有し、前記平面波発生部が、電磁波を放射するプローブと、前記プローブから放射される円筒波の電磁波を平面波の電磁波に変換するカセグレン構造を構成する主反射鏡および副反射鏡と、を有し、前記アンテナ部が、板状の基部と、前記基部において列状に連なるスロットとして形成されて相互に等間隔で離間しつつ平行に配設される複数の放射スタブと、を備えるフィードアレイを有し、前記第1の回動部により前記プローブを回転中心として前記平面波発生部と前記アンテナ部とを一緒に回転させることによって方位角方向のビーム走査を行うとともに、前記第2の回動部により前記プローブを回転中心として前記平面波発生部に対して前記アンテナ部を回転させて前記アンテナ部の前記基部へと入射される前記平面波の電磁波の波面を傾斜させることによって高度角方向のビーム走査を行う、ことを特徴とする。
【0007】
この発明に係るアンテナ装置は、前記平面波発生部が、平行平板線路を各々構成して積層される下層導波管および上層導波管を備える折り返し導波管を有し、前記カセグレン構造が前記下層導波管内に設けられ、前記アンテナ部が前記上層導波管側に設けられる、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るアンテナ装置によれば、平面波発生部とアンテナ部とを一緒に回転させることによって方位角方向のビーム走査を行うとともに、平面波発生部に対してアンテナ部を回転させてアンテナ部の基部へと入射される平面波の電磁波の波面を傾斜させることによって高度角方向のビーム走査を行うようにしているので、移相器を必要とすることなく全方向のビームを走査することが可能となるとともに、アンテナ装置のコストの低廉化を実現することが可能となる。
【0009】
この発明に係るアンテナ装置によれば、また、平面波発生部およびアンテナ部の回転中心からプローブ給電するようにしているので、アンテナ装置の構成を一層簡易にすることが可能となる。
【0010】
この発明に係るアンテナ装置は、平面波発生部が折り返し導波管を有するようにした場合には、アンテナ装置のコンパクト化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の実施の形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す図である。(A)は縦断面図である。(B)は平面図である。
【
図2】
図1のアンテナ装置の平面波発生部のカセグレン構造を説明する図である。
【
図3】
図1のアンテナ装置のアンテナ部(フィードアレイ)の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】
図1のアンテナ装置のxy面内の指向性を説明する図である。(A)は放射スタブが同位相で励振される場合の図である。(B)は放射スタブが位相差を付けて励振される場合の図である。
【
図5】
図1のアンテナ装置のアンテナ部(フィードアレイ)の放射スタブが位相差を付けて励振される状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。ここでの説明では、アンテナ装置1の構造に対して、相互に直交するx軸,y軸,およびz軸によって規定される3次元直交座標系のx軸方向,y軸方向,およびz軸方向を
図1などに示すように対応させる。また、この発明において平面波発生部2およびアンテナ部3はyz面に沿って回転可能であるように構成され、
図1中のx軸方向,y軸方向,およびz軸方向に対して平面波発生部2およびアンテナ部3が同図中の位置にある状態のことを「
図1の状態」と呼ぶ。また、各図は、アンテナ装置1のあくまでも概略構成や働きを説明するための図であり、各部の詳細構造や相互の寸法関係を厳密に表すものではない。
【0013】
図1は、この発明の実施の形態に係るアンテナ装置1の概略構成を示す図である。実施の形態に係るアンテナ装置1は、主に、平面波発生部2と、アンテナ部3と、第1の回動部(図示していない)と、第2の回動部(図示していない)と、制御部(図示していない)と、を有する。
【0014】
この実施の形態に係るアンテナ装置1は、平面波発生部2と、アンテナ部3と、第1の回動部と、第2の回動部と、を有し、平面波発生部2が、電磁波を放射するプローブ28と、プローブ28から放射される円筒波の電磁波を平面波の電磁波に変換するカセグレン構造を構成する主反射鏡26および副反射鏡27と、を有し、アンテナ部3が、板状の基部311と、基部311において列状に連なるスロットとして形成されて相互に等間隔で離間しつつ平行に配設される複数の放射スタブ312と、を備えるフィードアレイ31を有し、第1の回動部によりプローブ28を回転中心として平面波発生部2とアンテナ部3とを一緒に回転させることによって方位角方向のビーム走査を行うとともに、第2の回動部によりプローブ28を回転中心として平面波発生部2に対してアンテナ部3を回転させてアンテナ部3の基部311へと入射される平面波の電磁波の波面を傾斜させることによって高度角方向のビーム走査を行う、ようにしている。
【0015】
この実施の形態に係るアンテナ装置1は、また、平面波発生部2が、平行平板線路を各々構成して積層される下層導波管21および上層導波管22を備える折り返し導波管を有し、前記カセグレン構造が下層導波管21内に設けられ、アンテナ部3が上層導波管22側に設けられる、ようにしている。
【0016】
平面波発生部2は、平面波発生機構として機能する機序であり、主に、下層導波管21,上層導波管22,折り返し部23,反射板24,導体板25,主反射鏡26,副反射鏡27,プローブ28,およびチョーク29を有する(
図1,
図2参照)。平面波発生部2は、第1の回動部によってyz面に沿って回転可能であるように構成される。
【0017】
下層導波管21および上層導波管22は、
図1の状態におけるxy面視において広壁面幅(即ち、
図1の状態におけるy軸方向における幅;言い換えると、横幅)がaであるとともに狭壁面幅(即ち、x軸方向における幅;言い換えると、高さ)がbである方形導波管が広壁面幅に沿って(即ち、
図1の状態におけるy軸方向に沿って)180°折り返されて、x軸方向において積層状態に構成される。下層導波管21と上層導波管22とは、それぞれ、平行平板線路を構成する。
【0018】
折り返し部23は、
図1の状態におけるxy面視においてy軸方向における幅(言い換えると、横幅)がaであるとともにx軸方向における幅(言い換えると、高さ)が2×bである方形状に形成されて、下層導波管21と上層導波管22とを結合する。
【0019】
折り返し部23の、下層導波管21と上層導波管22とに対向する面(即ち、xy面に沿う内面)に反射板24が形成される。
【0020】
導体板25は、下層導波管21と上層導波管22との間にyz面に沿って配設されて下層導波管21と上層導波管22とを分離し、下層導波管21と上層導波管22とに共通の管壁となる。導体板25の、折り返し部23側の端は反射板24から離間し、折り返し部23における下層導波管21と上層導波管22とに対する開口窓が設けられる。
【0021】
上記の下層導波管21,上層導波管22,折り返し部23,反射板24,および導体板25は折り返し導波管を構成し、上記の広壁面幅a,狭壁面幅b,および導体板25の端の反射板24からの離間の幅は平行平板線路内を伝搬する電磁波の自由空間波長や伝搬モードなどに基づいて適宜設定される。
【0022】
主反射鏡26は、カセグレン構造の凹面鏡として機能するものであり、yz面視において放物状に形成されて、下層導波管21内に設けられる。主反射鏡26について、開口部の寸法をL〔m〕とし、焦点をf2とする。なお、図に示す例では、L=aである(但し、a:下層導波管21および上層導波管22の広壁面幅)。また、焦点f2から主反射鏡26全体を見込む開口角は、例えば、120°~180°程度の範囲のうちのいずれかの角度に設定される。
【0023】
副反射鏡27は、カセグレン構造の凸面鏡として機能するものであり、yz面視において双曲状に形成されて、下層導波管21内に設けられる。副反射鏡27について、双曲状(別言すると、双曲線)の2つの焦点のうちの一方の焦点f1はプローブ28から放射される円筒波(別言すると、電磁波)の位相中心(また、平面波発生部2およびアンテナ部3の平面視における回転中心位置でもある)と一致し、他方は主反射鏡26の焦点f2と一致する。
【0024】
下層導波管21への電磁波(別言すると、RF(Radio Frequency の略)信号)の給電はプローブ28によって行われる。プローブ28は、平面波発生部2およびアンテナ部3の平面視(即ち、yz面視)における回転中心位置に配設される。
【0025】
プローブ28の近傍の、
図1の状態におけるz軸方向における一方の側(
図1の状態において、z軸の矢印の向きの側と反対側)に、チョーク29が設けられる。チョーク29の働きにより、プローブ28の放射方向が、当該プローブ28の、
図1の状態におけるz軸方向における他方の側(
図1の状態において、z軸の矢印の向きの側)に配設される副反射鏡27へと向けられる。
【0026】
プローブ28からみたチョーク29のチョーク深さsは、電磁波(RF信号)の自由空間波長をλとすると、s=λ/4を満たすように調節される。
【0027】
プローブ28から放射される電磁波(尚、円筒波である)は、副反射鏡27による反射と主反射鏡26による反射とによって平面波に変換されて下層導波管21内を
図1の状態におけるz軸方向に沿ってz軸の矢印の向きに伝搬し、折り返し部23を通過して、上層導波管22内を
図1の状態におけるz軸方向に沿ってz軸の矢印の向きと反対向きに伝搬する。
図1の状態における平面波発生部2およびアンテナ部3にとってのz軸方向のことを「電磁波伝搬方向」と呼ぶ。
【0028】
プローブ28は、アンテナポート(別言すると、入出力ポート)として機能する例えば同軸コネクタ(図示していない)と電気的に接続される。
【0029】
同軸コネクタに纏わる構造/構成はこの発明では特定の構造/構成には限定されないので詳細の説明は省略するが、同軸コネクタは、例えば、(必要に応じて電気回線を介して)プローブ28に電気的に接続されるとともに同軸ケーブル(図示していない)の内導体から信号(SIG)が入力される内導体と、下層導波管21の管壁に電気的に接続されるとともに同軸ケーブルの外導体から信号(例えば、GND)が入力される外導体とを有し、プローブ28に対してRF信号(別言すると、無線通信波)を供給する構造/構成とされ得る。
【0030】
アンテナ部3は、主な構成としてフィードアレイ31を有する。アンテナ部3は、第2の回動部によって平面波発生部2に対してyz面に沿って回転可能であるように設けられる。平面波発生部2の平面視における回転中心とアンテナ部3の平面視における回転中心とは相互に一致する。
【0031】
フィードアレイ31は、導電性を備える材質によってyz面視において円形板状に形成される基部311と、複数の放射スタブ312と、を含む(
図3も参照)。
【0032】
複数の放射スタブ312は、各々、基部311において列状に連なるスロットとして形成される。複数の放射スタブ312は、各々の長手方向(即ち、
図1の状態におけるy軸方向)が相互に平行に、また、各々の長手方向と直交する方向(即ち、
図1の状態におけるz軸方向)において等しい間隔Dで相互に離間して配設される。
【0033】
各々の(言い換えると、自身の)長手方向と直交する方向において連続して設けられる放射スタブ312同士の、各々の長手方向と直交する方向における相互の間隔Dは、電磁波(RF信号)の自由空間波長をλとすると、λ/2≦D<λを満たすように調節される。
【0034】
フィードアレイ31は、yz面視において円形であるとともに、複数の放射スタブ312を構成するように複数の細長い溝孔が形成される。
【0035】
アンテナ部3は、基部311の、図においてx軸の矢印の向きの側と反対側の面を平面波発生部2の端面に接触させて摺動させながら、平面波発生部2に対してyz面に沿って回転する。
【0036】
なお、放射スタブ312それぞれが誘電体で埋められる(言い換えると、誘電体が充填される)ようにしてもよい。
【0037】
ここで、各放射スタブ312としての開口部(即ち、細長い溝孔)は、導電性の遮蔽をもたず、放射スタブ312としての開口部を通る電磁エネルギの伝搬を可能とし、アンテナ放射パターンが規定される。
【0038】
平面波発生部2の上層導波管22内を電磁波伝搬方向(即ち、
図1の状態におけるz軸方向)に沿って平面波/電磁波(RF信号)が伝搬し、前記平面波/電磁波(RF信号)により、フィードアレイ31(具体的には、基部311)において、前記平面波/電磁波(RF信号)が伝搬する方向である電磁波伝搬方向の変位電流が励起される。そして、前記電磁波伝搬方向の変位電流が、放射スタブ312に向かってx軸方向に沿って進行して自由空間へと放射される等価な電磁波を励起する。そして、フィードアレイ31の放射スタブ312を通って、RF信号が平面波の形態で放射される。
【0039】
上記の構成を備えるフィードアレイ31は連続トランスバーススタブ(CTS:Continuous Transvers Stub の略)アンテナとも呼ばれる構造の一部に相当し、フィードアレイ31の機能については例えば「The Continuous Transverse (CTS) Array: Basic Theory, Experiment, and Application」(Milroy,W.W. 「Proceedings of the Antenna Applications Symposium Held on 25-27 September 1991. Volume 1」 AD-A253 682,p253-283)並びに特表2006-522561号公報,米国特許第6,281,838号明細書,米国特許第5,757,379号明細書,米国特許5,483,248号明細書,米国特許第5,379,007号明細書,および米国特許第5,266,961号明細書に説明されている。
【0040】
第1の回動部(図示していない)は、yz面視においてプローブ28(さらに言えば、プローブ28から放射される円筒波/電磁波の位相中心)を回転中心としてyz面に沿って平面波発生部2を回転駆動させる。
【0041】
第2の回動部(図示していない)は、yz面視においてプローブ28(さらに言えば、プローブ28から放射される円筒波/電磁波の位相中心)を回転中心としてyz面に沿ってアンテナ部3を回転駆動させる。
【0042】
第1の回動部や第2の回動部は、例えば平面波発生部2やアンテナ部3をプローブ28を回転中心として回転可能に支持する保持機構/ガイド機構ならびにモータなどを含む仕組みとして構成され、平面波発生部2やアンテナ部3をyz面に沿って回転駆動させる。
【0043】
第1の回動部が平面波発生部2を回転駆動させる際にはアンテナ部3も回転し、第2の回動部がアンテナ部3を回転駆動させる際にはアンテナ部3のみが回転する。すなわち、第1の回動部が作動することによって平面波発生部2とアンテナ部3とが一緒に回転し、第2の回動部が作動することによってアンテナ部3が単独で回転する。
【0044】
第1の回動部や第2の回動部のモータの駆動は制御部(図示していない)によって制御され、すなわち、平面波発生部2の回転の程度と平面波発生部2に対するフィードアレイ31の回転の程度とのそれぞれが制御部によって制御される。
【0045】
アンテナ装置1は、方位角(AZ:Azimuth)方向のビーム走査を行うとともに、高度角(EL:Elevation)方向のビーム走査を行う。なお、方位角(AZ)は、北方向または南方向を0°とし、時計回りを正として定めた角度である。また、高度角(EL)は、地平線を0°とし、天頂方向へと向かって定めた角度である。
【0046】
アンテナ装置1は、第1の回動部によって平面波発生部2(および、アンテナ部3)を回転させることにより、方位角(AZ)方向のビーム走査を行う。
【0047】
アンテナ装置1は、また、第2の回動部によって平面波発生部2に対してアンテナ部3を回転させる(言い換えると、アンテナ部3を単独で回転させる)ことにより、高度角(EL)方向のビーム走査を行う。
【0048】
具体的には、平面波発生部2に対するアンテナ部3のフィードアレイ31の回転の程度が制御されることにより、平面波発生部2の上層導波管22内を電磁波伝搬方向に沿って伝搬する電磁波の波面に対するフィードアレイ31の複数の放射スタブ312各々の長手方向の傾斜の程度に変化が与えられ、フィードアレイ31(具体的には、基部311)へと入射される電磁波の波面に傾斜が与えられて、高度角(EL)方向のビーム走査が行われる。
【0049】
すなわち、フィードアレイ31へと伝搬する導波モードの傾斜入射を用いて、放射スタブ312へと入ってくる電磁波の位相面を放射スタブ312の長手方向において変化させることにより、放射スタブ312の長手方向のH平面においてビーム走査が行われる。
【0050】
ここで、この発明では、フィードアレイ31へと伝搬する導波モードの傾斜入射を用いて、放射スタブ312へと入ってくる電磁波の位相面を放射スタブ312の長手方向において変化させることにより、放射スタブ312を、当該放射スタブ312の長手方向に沿って複数の素子アンテナが1列に連なって並んでいる機序として機能させる。放射スタブ312を構成していると看做される(想定上の)素子アンテナのことを「仮想素子アンテナ312a」と呼ぶ。
【0051】
図4(A)に、放射スタブ312が同位相で励振される場合の、すなわち、放射スタブ312を構成していると看做される複数の仮想素子アンテナ312aのそれぞれが同位相で励振される場合の、複数の仮想素子アンテナ312aの配列と指向性との関係を示す。
【0052】
この場合は、放射スタブ312の長手方向が電磁波伝搬方向と直交する方向(即ち、
図1の状態におけるy軸方向)に沿っている状態であり(
図1(B)参照)、隣り合う仮想素子アンテナ312aが同位相で励振される場合、言い換えると、隣り合う仮想素子アンテナ312aについての位相のシフト量の差Δφが0(ゼロ)であるように制御されて励振される場合と捉え得る。
【0053】
放射スタブ312が同位相で励振される場合は、複数の仮想素子アンテナ312aの配列(即ち、放射スタブ312の長手方向であり、
図1,
図4(A)におけるy軸方向)と平行に電磁波の波面が形成され、複数の仮想素子アンテナ312aの配列と直交する方向(即ち、
図1,
図4(A)におけるx軸方向)にメインローブが形成される。
【0054】
図4(B)に、放射スタブ312が位相差を付けて励振される場合の、すなわち、放射スタブ312を構成していると看做される複数の仮想素子アンテナ312aのそれぞれが位相差を付けて励振される場合の、複数の仮想素子アンテナ312aの配列と指向性との関係を示す。
【0055】
この場合は、放射スタブ312の長手方向が電磁波伝搬方向と直交する方向に対して傾斜している状態であり(
図5参照)、隣り合う仮想素子アンテナ312aごとにΔφ(≠0)の位相差を付けて励振される場合、言い換えると、隣り合う仮想素子アンテナ312aについての位相のシフト量の差Δφが或る値(但し、0ではない)で一定であるように制御されて励振される場合と捉え得る。
【0056】
放射スタブ312が位相差を付けて励振される場合は、複数の仮想素子アンテナ312aの配列(即ち、放射スタブ312の長手方向)に対して電磁波の波面が傾斜し、その結果としてメインローブの方向が複数の仮想素子アンテナ312aの配列と直交する方向(即ち、
図1,
図4(B)におけるx軸方向)に対してΔθだけ回転する。なお、仮想素子アンテナ312a同士の相互の間隔をdとすると、Δθ=d・sin(Δφ) である。
【0057】
上記したような、放射スタブ312を構成していると看做される複数の仮想素子アンテナ312aの配列と指向性との関係を実現する位相シフト制御をアンテナ部3(具体的には、フィードアレイ31)の回転制御によって実行することにより、放射スタブ312の長手方向のH平面内の指向性をスキャンすることができる。
【0058】
そして、例えば、第2の回動部を作動させて平面波発生部2に対してアンテナ部3が回転して平面波発生部2に対するアンテナ部3の回転の程度が調節されることによって高度角(EL)方向が設定され、平面波発生部2に対するアンテナ部3の回転の程度を固定した状態で第1の回動部を作動させて平面波発生部2とアンテナ部3とが一緒に回転することによって方位角(AZ)方向のビーム走査が行われる。
【0059】
実施の形態に係るアンテナ装置1によれば、平面波発生部2とアンテナ部3とを一緒に回転させることによって方位角方向のビーム走査を行うとともに、平面波発生部2に対してアンテナ部3を回転させてアンテナ部3の基部311へと入射される平面波の電磁波の波面を傾斜させることによって高度角方向のビーム走査を行うようにしているので、移相器を必要とすることなく全方向のビームを走査することが可能となるとともに、アンテナ装置のコストの低廉化を実現することが可能となる。
【0060】
実施の形態に係るアンテナ装置1によれば、また、平面波発生部2およびアンテナ部3の回転中心からプローブ給電するようにしているので、アンテナ装置の構成を一層簡易にすることが可能となる。
【0061】
また、実施の形態に係るアンテナ装置1によれば、平面波発生部2が折り返し導波管を有するようにしているので、アンテナ装置のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0062】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0063】
具体的には、上記の実施の形態では給電部によって生成される平面波がアンテナ部3のフィードアレイ31(具体的には、基部311)へと入射されるようにしているが、フィードアレイ31へと入射される平面波を生成する機構は上記の実施の形態における給電部に限定されるものではなく、他の平面波発生機構によって生成される平面波がフィードアレイ31へと入射されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 アンテナ装置
2 平面波発生部
21 下層導波管
22 上層導波管
23 折り返し部
24 反射板
25 導体板
26 主反射鏡
27 副反射鏡
28 プローブ
29 チョーク
3 アンテナ部
31 フィードアレイ
311 基部
312 放射スタブ
312a 仮想素子アンテナ