(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186384
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】毛髪化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/894 20060101AFI20221208BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20221208BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20221208BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61K8/894
A61K8/39
A61K8/86
A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094568
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 紗希
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC432
4C083AC532
4C083AC712
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083BB01
4C083CC31
4C083CC33
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE28
(57)【要約】
【課題】毛髪にツヤを付与する効果があり、毛髪の感触も良好にでき、かつ、製剤安定性が高い毛髪化粧料組成物を提供する。
【解決手段】(A)(A-1)アルコールアルキレンオキシド付加重合体、及び(A-2)ポリアルキレングリコール重合体から選ばれる少なくとも一つと、(B)ポリエーテル変性シリコーンと、(C)(A)成分及び(B)成分以外の界面活性剤と、を含有する毛髪化粧料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記(A-1)成分及び下記(A-2)成分から選ばれる少なくとも一つと、
(A-1)1~6価のアルコールに、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、及びブチレンオキシド(BO)から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキシド(ただし、アルキレンオキシドとして少なくともPOを含む)が付加重合した、アルコールアルキレンオキシド付加重合体
(A-2)エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、及びブチレンオキシド(BO)から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキシド(ただし、アルキレンオキシドとして少なくともPOを含む)が重合した、ポリアルキレングリコール重合体
(B)ポリエーテル変性シリコーンと、
(C)前記(A)成分及び前記(B)成分以外の界面活性剤と、
を含有する、毛髪化粧料組成物。
【請求項2】
前記毛髪化粧料組成物中の前記(B)成分及び前記(C)の合計含有量に対する、前記毛髪化粧料組成物中の前記(A)成分の含有量の質量比(A)/{(B)+(C)}が、0.4以上3.8以下である、請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項3】
前記毛髪化粧料組成物中の前記(C)成分の含有量に対する、前記毛髪化粧料組成物中の前記(B)成分の含有量の質量比(B)/(C)が、0.1以上3以下である、請求項1又は請求項2に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項4】
更に(D)2~4価の多価アルコールを含有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項5】
前記毛髪化粧料組成物中の前記(D)成分の含有量に対する、前記毛髪化粧料組成物中の前記(A)成分の含有量の質量比(A)/(D)が、3以下である、請求項4に記載の毛髪化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、毛髪化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアアイロン等の加熱器具を用いることにより、巻き髪、ストレートヘア等の所望の髪型に毛髪をセットすることが行われている。形成されたカール又はストレートを長時間持続させたり、毛髪にツヤを付与したりする目的で使用される毛髪化粧料として、加熱器具の使用前に毛髪に適用するタイプの毛髪化粧料がある。
【0003】
こうしたタイプの毛髪化粧料として、特許文献1には、1~6価のアルコールアルキレンオキシド付加重合体と、タンパク質及び加水分解タンパク質からなる郡から選ばれる少なくとも一種等を含有する毛髪化粧料が記載されている。特許文献1によれば、その組成を有する毛髪化粧料は、形成されたカール又はストレートを持続させる効果に優れ、かつ、毛髪の手触り等を良好なものにすることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によれば、アルキレンオキシドが重合したポリアルキレングリコール重合体も、アルコールアルキレンオキシド付加重合体と同様に毛髪にツヤを付与する効果を有する。しかし、アルコールアルキレンオキシド付加重合体又はポリアルキレングリコール重合体を含有する毛髪化粧料組成物は、製剤安定性が十分でない場合があることが新たに判明した。具体的には、アルコールアルキレンオキシド付加重合体又はポリアルキレングリコール重合体が十分に可溶化せず、白濁したり沈殿が発生したりする場合があった。
【0006】
一方で、アルコールアルキレンオキシド付加重合体又はポリアルキレングリコール重合体を可溶化するために界面活性剤を配合すると、毛髪の感触が損なわれる場合があった。
本開示の一局面は、毛髪にツヤを付与する効果があり、毛髪の感触も良好にでき、かつ、製剤安定性が高い毛髪化粧料組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、毛髪化粧料組成物であって、(A)下記(A-1)成分及び下記(A-2)成分から選ばれる少なくとも一つと、(B)ポリエーテル変性シリコーンと、(C)(A)成分及び(B)成分以外の界面活性剤と、を含有する。(A-1)成分は、1~6価のアルコールに、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、及びブチレンオキシド(BO)から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキシド(ただし、アルキレンオキシドとして少なくともPOを含む)が付加重合した、アルコールアルキレンオキシド付加重合体である。(A-2)成分は、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、及びブチレンオキシド(BO)から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキシド(ただし、アルキレンオキシドとして少なくともPOを含む)が重合した、ポリアルキレングリコール重合体である。
【0008】
本開示の一態様では、毛髪化粧料組成物中の(B)成分及び(C)の合計含有量に対する、毛髪化粧料組成物中の(A)成分の含有量の質量比(A)/{(B)+(C)}が、0.4以上3.8以下であってもよい。
【0009】
本開示の一態様では、毛髪化粧料組成物中の(C)成分の含有量に対する、毛髪化粧料組成物中の(B)成分の含有量の質量比(B)/(C)が、0.1以上3以下であってもよい。
【0010】
本開示の一態様では、更に(D)2~4価の多価アルコールを含有してもよい。
本開示の一態様では、毛髪化粧料組成物中の(D)成分の含有量に対する、毛髪化粧料組成物中の(A)成分の含有量の質量比(A)/(D)が、3以下であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、毛髪にツヤを付与する効果に優れ、毛髪の感触も良好にでき、かつ、製剤安定性が高い毛髪化粧料組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の一態様の毛髪化粧料組成物は、
(A)下記(A-1)成分及び下記(A-2)成分から選ばれる少なくとも一つと、
(A-1)1~6価のアルコールに、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、及びブチレンオキシド(BO)から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキシド(ただし、アルキレンオキシドとして少なくともPOを含む)が付加重合した、アルコールアルキレンオキシド付加重合体
(A-2)エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、及びブチレンオキシド(BO)から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキシド(ただし、アルキレンオキシドとして少なくともPOを含む)が重合した、ポリアルキレングリコール重合体
(B)ポリエーテル変性シリコーンと、
(C)(A)成分及び(B)成分以外の界面活性剤と、
を含有する。
【0013】
上述のとおり、(A-2)成分であるポリアルキレングリコール重合体は、(A-1)成分であるアルコールアルキレンオキシド付加重合体と同様に、毛髪にツヤを付与する効果を有する。しかし、これらの(A)成分を可溶化するために界面活性剤を配合すると、毛髪にべたつきが生じやすく、毛髪の軽さ、滑らかさ等が損なわれ、良好な感触が得られない場合があった。
【0014】
(B)成分であるポリエーテル変性シリコーンは、界面活性剤の一種であり、(A)成分を可溶化することができる。また、(B)成分は、上述したような毛髪の感触の低下を起こさず、寧ろ(A)成分と併用することにより毛髪の感触を向上することができる。そして、(C)成分である、(A)成分及び(B)成分以外の界面活性剤は、(B)成分だけでは不足しがちな(A)成分の可溶化性能を補うことができる。よって、(A)成分に加えて(B)成分及び(C)成分を配合することにより、製剤安定性を向上させつつ、毛髪の感触を良好にすることができる。なお、(A)成分も界面活性剤として使用される場合があることから、(C)成分からは(A)成分が除外されている。
【0015】
以下、本開示の一態様の毛髪化粧料組成物について詳細に説明する。
[(A)成分]
(A)成分は、(A)下記(A-1)成分及び下記(A-2)成分から選ばれる少なくとも一つである。(A)成分は、毛髪にツヤを付与することができる。
【0016】
<(A-1)成分>
(A-1)成分は、1~6価のアルコールに、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、及びブチレンオキシド(BO)から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキシド(ただし、アルキレンオキシドとして少なくともPOを含む)が付加重合した、アルコールアルキレンオキシド付加重合体である。
【0017】
1価のアルコールとしては、例えば、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール等が挙げられる。2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等が挙げられる。3価のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等が挙げられる。4価のアルコールとしては、例えば、ジグリセリン、ペンタエリトリトール等が挙げられる。5価のアルコールとしては、キシリトール等が挙げられる。6価のアルコールとしては、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
【0018】
アルコールとしては、毛髪にツヤを付与する効果が高いことから、1~4価のアルコールが好ましい。また、アルコールの炭素数は、毛髪にツヤを付与する効果が高いことから、1以上4以下が好ましい。
【0019】
1~6価のアルコールに付加重合するアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドから選ばれる少なくとも一つである。ただし、油のような性質を呈し、毛髪にツヤを効果的に付与できることから、アルキレンオキシドとしては少なくともプロピレンオキシドを含む。また、アルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシドの他にエチレンオキシドを含むことが好ましい。エチレンオキシドを有することにより、水のようにしっとりとしつつもサラサラとした性質を呈するため、毛髪のべたつきを抑え、毛髪に軽さや潤いを付与することができる。
【0020】
毛髪のべたつきを抑え軽さや潤いを付与できることから、単一成分中のエチレンオキシドの付加モル数は20以下が好ましく、単一成分中のプロピレンオキシドの付加モル数は20以下が好ましく、単一成分中のブチレンオキシドの付加モル数は20以下が好ましい。
また、単一成分中のアルキレンオキシドの総付加モル数は、毛髪にツヤを付与する効果が高いことから、3以上が好ましく、5以上が好ましい。また、総付加モル数は、毛髪のべたつきを抑え軽さや潤いを付与できることから、60以下が好ましく、30以下がより好ましい。
また、(A-1)成分としては、毛髪のべたつきを抑え軽さや潤いを付与できることから、常温で液状のものが好ましい。
【0021】
(A-1)成分のアルコールアルキレンオキシド付加重合体としては、例えば、PPG-2ブテス-2、PPG-5ブテス-5、PPG-7ブテス-10、PPG-10ブテス-9、PPG-12ブテス-12、PPG-15ブテス-20、PPG-17ブテス-17、PPG-28ブテス-30、PPG-33ブテス-45、PPG-30ブテス-30、PPG-24グリセレス-24、PPG-25-PEG-25トリメチロールプロパン、PPG-68-PEG-10トリメチロールプロパン、PEG-5-PPG-65ペンタエリスリチル、PPG-75-PEG-300ヘキシレングリコール、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、PPG-20ブチル、PPG-33ブチル、PPG-40ブチル、PPG-3グリセリル、PPG-6グリセリル、PPG-9グリセリル、PPG-10グリセリル、PPG-16グリセリルエーテル、PPG-24グリセリル、PPG-67グリセリル、PPG-9ジグリセリル、PPG-14ジグリセリル、PPG-10ソルビトール等が挙げられる。これらのうち、一種のみ含有されてもよいし、二種以上が含有されてもよい。
【0022】
(A-1)成分のアルコールアルキレンオキシド付加重合体としては、毛髪にツヤを付与し、軽やかな感触をもたらす効果が高いことから、PPG-5ブテス-5、PPG-7ブテス-10、PPG-10ブテス-9、PPG-12ブテス-12、PPG-15ブテス-20、PPG-17ブテス-17、PPG-3グリセリル、PPG-6グリセリル、PPG-9グリセリル、PPG-10グリセリル、PPG-16グリセリル、及びPEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンから選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましく、PPG-7ブテス-10を含有することがより好ましい。
【0023】
<(A-2)成分>
(A-2)成分は、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、及びブチレンオキシド(BO)から選ばれる少なくとも一つのアルキレンオキシドが重合した、ポリアルキレングリコール重合体である。ただし、油のような性質を呈し、毛髪にツヤを効果的に付与できることから、アルキレンオキシドとしては少なくともプロピレンオキシドを含む。
【0024】
ポリアルキレングリコール重合体としては、毛髪にツヤを付与する効果が高いことから、ポリプロピレングリコール、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールから選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましく、ポリプロピレングリコールを含有することがより好ましい。
【0025】
毛髪のべたつきを抑え軽さや潤いを付与できることから、単一成分中のエチレンオキシドの重合数は20以下が好ましく、単一成分中のプロピレンオキシドの重合数は20以下が好ましく、単一成分中のブチレンオキシドの重合数は20以下が好ましい。
また、単一成分中のアルキレンオキシドの総重合数は、毛髪にツヤを付与する効果が高いことから、3以上が好ましく、5以上が好ましい。また、総重合数は、毛髪のべたつきを抑え軽さや潤いを付与できることから、60以下が好ましく、30以下がより好ましい。
また、(A-2)成分としては、毛髪のべたつきを抑え軽さや潤いを付与できることから、常温で液状のものが好ましい。
【0026】
(A-2)成分のポリアルキレングリコール重合体としては、例えば、PPG-3、PPG-7、PPG-13、PPG-17、PPG-34、PEG/PPG-3/17コポリマー、PEG/PPG-5/30コポリマー、PEG/PPG-5/35コポリマー、PEG/PPG-10/30コポリマー、PEG/PPG-10/65コポリマー、PEG/PPG-12/35コポリマー、PEG/PPG-16/17コポリマー、PEG/PPG-17/6コポリマー、PEG/PPG-18/4コポリマー、PEG/PPG-20/20コポリマー、PEG/PPG-20/60コポリマー、PEG/PPG-22/25コポリマー、PEG/PPG-25/30コポリマー、PEG/PPG-30/35コポリマー、PEG/PPG-150/35コポリマー等が挙げられる。これらのうち、一種のみ含有されてもよいし、二種以上が含有されてもよい。
【0027】
(A-2)成分のポリアルキレングリコール重合体としては、毛髪にツヤを付与し、軽やかな感触をもたらす効果が高いことから、PPG-3、PPG-7、及びPPG-17から選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましい。
【0028】
<(A)成分の含有量>
毛髪化粧料組成物中の(A)成分の含有量は、毛髪にツヤを付与する効果がより発揮されることから、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、(A)成分の含有量は、可溶化されやすく製剤安定性がより向上することから、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0029】
[(B)成分]
(B)ポリエーテル変性シリコーンは、(A)成分及び(C)成分と併用することにより、毛髪の感触を良好にしつつ、製剤安定性を向上することができる。
【0030】
ここでいうポリエーテル変性シリコーンとは、主鎖であるシリコーン鎖にポリエーテル鎖が導入された化合物である。ポリエーテル鎖としては、例えば、ポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖等が挙げられる。
【0031】
シリコーン鎖は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。毛髪の感触を良好にしつつ製剤安定性を向上する効果に優れることから、シリコーン鎖は直鎖状であることが好ましい。ポリエーテル鎖が導入される位置は、シリコーン鎖の片末端であってもよく、両末端であってもよい。また、ポリエーテル鎖は、毛髪の感触を良好にしつつ製剤安定性を向上する効果に優れることから、側鎖として導入されていることが好ましい。また、ポリエーテル変性シリコーンは、アミノ基で変性されていないことが好ましい。
【0032】
また、(B)ポリエーテル変性シリコーンのHLB値は、毛髪の感触を良好にしつつ製剤安定性を向上する効果に優れることから、8以上が好ましい。HLB値は、「ハンドブック-化粧品・製剤原料-改訂版(昭和53年3月1日波高、日光ケミカルズ株式会社)」に記載された「20・3・1 乳化法によるHLB値の実測」(854~855頁)に従って測定することができる。
【0033】
(B)ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、PEG-9ジメチコン、PEG-9メチルエーテルジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG-17ジメチコン、ビスPEG-15メチルエーテルジメチコン、PEG-32メチルエーテルジメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコン、PEG/PPG-20/6ジメチコン、PEG/PPG-20/20ジメチコン、PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン、PEG/PPG-30/10ジメチコン等が挙げられる。これらのうち、一種のみ含有されてもよいし、二種以上が含有されてもよい。
【0034】
(B)ポリエーテル変性シリコーンとしては、毛髪の感触を良好にしつつ製剤安定性を向上する効果に優れることから、PEG-9ジメチコン、PEG-9メチルエーテルジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG-17ジメチコン、及びビスPEG-15メチルエーテルジメチコンから選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましく、PEG-9ジメチコン、及びPEG-11メチルエーテルジメチコンから選ばれる少なくとも一つを含有することがより好ましい。
【0035】
毛髪化粧料組成物中の(B)成分の含有量は、製剤安定性がより向上することから、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、(B)成分の含有量は、毛髪の感触の低下がより抑えられることから、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0036】
[(C)成分]
(C)成分は、(A)成分及び(B)成分以外の界面活性剤である。(C)成分は、(B)成分とともに(A)成分を可溶化することにより、製剤安定性を向上することができる。
【0037】
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、及びアニオン界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、(A)成分の可溶化性能が高く製剤安定性がより向上することから、ノニオン界面活性剤及び両性界面活性剤を含有することが好ましい。なお、以下の記載において、POEはポリオキシエチレン鎖、POPはポリオキシプロピレン鎖を表している。
【0038】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、POE水添ヒマシ油、POEアルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルグルコシド、レシチン誘導体水素添加大豆レシチン等が挙げられる。
【0039】
ノニオン界面活性剤としては、(A)成分の可溶化性能が高く製剤安定性がより向上することから、POE水添ヒマシ油、POEアルキルエーテル、及びPOEソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましい。POE水添ヒマシ油としては、例えば、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-80水添ヒマシ油、PEG-100水添ヒマシ油等が挙げられる。POEアルキルエーテルとしては、例えば、オレス-20、オレス-50、ラウレス-25、PPG-4セテス-20等が挙げられる。POEソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリソルベート-60等が挙げられる。これらのうち、(A)成分の可溶化性能が高く製剤安定性がより向上することから、PEG-60水添ヒマシ油、及びオレス-20から選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましい。
【0040】
毛髪化粧料組成物中のノニオン界面活性剤の含有量は、製剤安定性がより向上することから、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上が更に好ましい。また、ノニオン界面活性剤の含有量は、毛髪の感触の低下がより抑えられることから、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
【0041】
両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸型界面活性剤、ベタイン型界面活性剤等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン型界面活性剤としては、ココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が挙げられる。アミノ酸型界面活性剤としては、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0042】
両面活性剤としては、(A)成分の可溶化性能が高く製剤安定性がより向上することから、ベタイン型界面活性剤を含有することが好ましく、ココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、及びラウリルベタインから選ばれる少なくとも一つを含有することがより好ましい。
【0043】
カチオン界面活性剤としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、セトリモニウムメトサルフェート、ベヘントリモニウムメトサルフェート、ベヘニルPGトリモニウムクロリド、ステアロキシプロピルトリモニウムクロリド、塩化アラキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、ベヘニルジメチルアミン、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリルジメチルアミン、パルミトキシプロピルジメチルアミン、ステアロキシプロピルジメチルアミン、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。
【0044】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル、N-アルキロイルメチルタウリン塩、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミン等が挙げられる。より具体的には、アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えば、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。アルキル硫酸塩として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等が挙げられる。アルキル硫酸塩の誘導体として、例えば、POEラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。スルホコハク酸エステルとして、例えば、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等が挙げられる。N-アルキロイルメチルタウリン塩としては、例えば、N-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0045】
これらの界面活性剤のうち、一種のみ含有されてもよいし、二種以上が含有されてもよい。
毛髪化粧料組成物中の(C)成分の含有量は、製剤安定性がより向上することから、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。また、(C)成分の含有量は、毛髪の感触の低下がより抑えられることから、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
【0046】
毛髪化粧料組成物中の(B)成分及び(C)の合計含有量、すなわち界面活性剤の総含有量に対する、毛髪化粧料組成物中の(A)成分の含有量の質量比(A)/{(B)+(C)}は、0.1以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。質量比(A)/{(B)+(C)}が0.1以上であると、界面活性剤に起因する毛髪の感触の低下がより抑えられるとともに、(A)成分による毛髪にツヤを付与する効果がより発揮される。また、質量比(A)/{(B)+(C)}は、5以下が好ましく、3.8以下がより好ましい。質量比(A)/{(B)+(C)}が5以下であると、製剤安定性がより向上する。
【0047】
毛髪化粧料組成物中の(C)成分の含有量に対する、毛髪化粧料組成物中の(B)成分の含有量の質量比(B)/(C)は、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。質量比(B)/(C)が0.01以上であると、毛髪の感触の低下がより抑えられる。また、質量比(B)/(C)は、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。質量比(B)/(C)が5以下であると、製剤安定性がより向上する。
【0048】
[(D)成分]
毛髪化粧料組成物は、(D)2~4価の多価アルコールを更に含有することが好ましい。
(D)成分は、(A)成分よりも効果が劣るものの毛髪にツヤを付与する効果があり、(A)成分よりも可溶化しやすい。よって、(A)成分と併せて(D)成分を含有することにより、毛髪に適度なツヤを付与しつつ、製剤安定性をより向上させることができる。
【0049】
ここでいう多価アルコールとは、水酸基を2~4個有するアルコールをいい、炭化水素の2~4個の水素原子を水酸基で置き換えた化合物、及びこれらの脱水縮合物等が含まれる。アルコールの炭素数は、毛髪にツヤを付与する効果が高いことから、1以上4以下が好ましい。
【0050】
2価の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等が挙げられる。
【0051】
3価の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等が挙げられる。4価の多価アルコールとしては、例えば、ジグリセリン、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
【0052】
(D)成分としては、毛髪にツヤを付与する効果が高いことから、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びグリセリンから選ばれる少なくとも一つを含有することが好ましく、1,3-ブチレングリコールを含有することがより好ましい。
【0053】
毛髪化粧料組成物中の(D)成分の含有量は、毛髪にツヤを付与する効果がより発揮されることから、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。また、(D)成分の含有量は、特に限定されないが、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
【0054】
毛髪化粧料組成物中の(D)成分の含有量に対する、毛髪化粧料組成物中の(A)成分の含有量の質量比(A)/(D)は、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。質量比(A)/(D)が5以下であると、(A)成分と(D)成分との配合バランスが良く、製剤安定性がより向上する。また、質量比(A)/(D)の下限は特に限定されないが、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。
【0055】
[他の成分]
毛髪化粧料組成物は、必要に応じて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、溶剤((A)成分及び(D)成分に該当するものを除く)、セット樹脂、油性成分、水溶性高分子増粘剤((A)成分に該当するものを除く)、pH調整剤、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、安定剤、噴射剤、アミノ酸、ペプチド、植物抽出物、生薬抽出物、尿素、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0056】
溶剤としては、例えば、精製水等の水、有機溶媒等が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、ケイ皮アルコール、アニスアルコール、p-メチルベンジルアルコール、α-ジメチルフェネチルアルコール、α-フェニルエタノール、エチレングリコールフェニルエーテル、フェノキシイソプロパノール、2-ベンジルオキシエタノール、N-アルキルピロリドン、炭酸アルキレン等が挙げられる。これらの溶剤のうち、一種のみ含有されてもよいし、二種以上が含有されてもよい。溶剤としては、水が含有されていることが好ましい。
【0057】
セット樹脂は、毛髪に被膜を形成することにより毛髪を所望の形状に維持する効果を有する。セット樹脂としては、例えば、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル/ビニルピロリドン共重合体、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMP、アクリル樹脂アルカノールアミン〔(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMPなど〕、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミド/ビニルイミダゾール共重合体、N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-メチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル共重合体、ポリウレタン-14等が挙げられる。
【0058】
油性成分としては、例えば、油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン等が挙げられる。
油脂としては、例えば、アルガニアスピノサ核油、オリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、月見草油、杏仁油、パーシック油、桃仁油、パーム油、卵黄油等が挙げられる。
【0059】
ロウとしては、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン等が挙げられる。
炭化水素としては、例えば、パラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、合成スクワラン等が挙げられる。
【0060】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0061】
高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、2-ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0062】
アルキルグリセリルエーテルとしては、例えば、バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
エステルとしては、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2-エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10~30の炭素数を有する脂肪酸からなるコレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジエトキシエチル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0063】
シリコーンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、650~10000の平均重合度を有する高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
これらの油性成分のうち、一種のみ含有されてもよいし、二種以上が含有されてもよい。
【0064】
水溶性高分子増粘剤は、毛髪化粧料組成物の粘性を改良するために配合することができる。水溶性高分子増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、ガラクタン、グアーガム、クインスシードガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、デキストラン、ヒアルロン酸、カードラン、サクシノグルカン、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン又はアルブミン等の天然系高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はメチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、可溶性デンプン等のデンプン系高分子、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸-メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アミド、高重合ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン等の合成高分子、ベントナイト、モンモリロナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム等の無機物質等が挙げられる。これらのうち、一種のみ含有されてもよいし、二種以上が含有されてもよい。
【0065】
pH調整剤としては、例えば、アルカリ剤、無機酸、有機酸、及び無機酸又は有機酸の塩類等が挙げられる。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、アルカノールアミン、有機アミン、塩基性アミノ酸、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。無機酸としては、例えば、リン酸、ケイ酸、メタケイ酸、炭酸等が挙げられる。リン酸には、オルトリン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、メタリン酸等が含まれる。有機酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ピロリン酸、グルコン酸、グルクロン酸、安息香酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸等が挙げられる。塩類としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。なお、炭酸の塩類には、炭酸塩及び炭酸水素塩が含まれる。これらのうち、一種のみ含有されてもよいし、二種以上が含有されてもよい。
【0066】
防腐剤としては、例えば、フェノキシエタノール、パラベン、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩、ジエチレントリアミン五酢酸塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸塩等が挙げられる。酸化防止剤としては、アスコルビン酸、無水亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。安定剤としては、例えば、フェナセチン、8-ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム等が挙げられる。噴射剤としては、例えば、LPG、ジメチルエーテル、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気等が挙げられる。これらの成分のうち、一種のみ含有されてもよいし、二種以上が含有されてもよい。
【0067】
ペプチド及びアミノ酸は、毛髪の状態を向上させるものであれば特に制限されない。例えば、コラーゲン、ケラチン、エラスチン、フィブロイン、シルク、カゼイン、ゼラチンなどの動物系蛋白質、コムギ、オオムギ、カラスムギ、ダイズ、アーモンドなどの植物から得られるタンパク質、これらのタンパク質を酸、アルカリ、酵素などにより加水分解したもの等が挙げられる。これらの成分のうち、一種のみ含有されてもよいし、二種以上が含有されてもよい。
【0068】
[毛髪化粧料組成物]
毛髪化粧料組成物は、巻き髪、ストレートヘア等の所望の髪型に毛髪をセットする前に、毛髪に塗布して使用することができる。毛髪のセットは、加熱器具を用いて行うことが好ましい。加熱器具としては、例えば、カールヘアアイロン、ストレートヘアアイロン、ドライヤー、ホットカーラー等が挙げられる。加熱温度は、40℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。また、毛髪へのダメージがより抑えられることから、加熱温度は、250℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましい。
【0069】
毛髪化粧料組成物の製剤としての形態は、特に限定されない。製剤形態としては、例えば、ヘアミスト、ヘアローション、ヘアスプレー等が挙げられる。毛髪化粧料組成物を毛髪に均一塗布しやすいことから、製剤形態としては、毛髪化粧料組成物を噴射することにより毛髪に塗布するタイプの形態、具体的には、ヘアミスト又はヘアスプレーが好ましい。
【実施例0070】
[毛髪化粧料組成物の調製]
表1及び表2に示す各成分を含有する毛髪化粧料組成物を常法に従い調製した。なお、各表において、各成分の含有量を表す数値の単位は質量%である。
[評価]
調製した毛髪化粧料組成物について、以下の評価を行った。評価結果は表1及び表2の下方の欄に示した。
【0071】
(製剤安定性)
調製した毛髪化粧料組成物をPET製の容器に入れ、50℃の恒温槽にて2週間放置した。調製直後の室温の毛髪化粧料組成物、50℃の恒温槽に入れた直後に50℃となった毛髪化粧料組成物、及び50℃で2週間放置後の毛髪化粧料組成物を目視で確認し、製剤安定性を以下の基準により評価した。
【0072】
A:2週間放置後も透明であった。
B:調製直後は室温及び50℃のいずれでも透明であったが、2週間放置後は非透明であった。
C:調整直後において、室温では透明であったが、50℃では非透明であった。
D:調製直後の室温でも非透明であった。
【0073】
毛髪化粧料組成物が透明であるか否かの判断は、以下のようにして行った。直径4cmの有底円筒状の透明ガラス容器内に毛髪化粧料組成物を入れ、正面側から目視で確認したときに、容器背面側に付された文字・図柄を容易に確認できるものを透明とし、白濁が生じたり油滴のような沈殿が発生したりすることで文字・図柄の確認が困難なものを非透明とした。
【0074】
(毛髪の感触)
毛髪化粧料組成物をミスト容器に充填し、30cmのヒトの毛束に対して0.5g塗布した。指及び櫛で毛髪化粧料組成物を毛束に馴染ませた後、180℃に熱したカールヘアアイロンで、根元から毛先まで毛束を巻いた。専門パネラー10名が、巻いた毛束を指で触った時の感触を、柔らかさ、軽さ、滑らかさ(指通りの良さ)、べたつきのなさ、毛先のまとまり具合、潤いの5つの観点から評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0075】
4点:感触がとても良い。
3点:感触が良い。
2点:感触がやや良い。
1点:感触が良くない。
【0076】
10名のパネラーの採点結果について平均点を算出し、平均点が3.6以上を「A:とても優れる:5」、2.6点以上3.6点未満を「B:優れる」、1.6点以上2.6点未満を「C:良好」、1.6点未満を「D:不良」とする評価を下した。
【0077】
なお、上記「製剤安定性」で評価がDであった毛髪化粧料組成物については、本評価を行わなかった。
(毛髪のツヤ)
上記「毛髪の感触」で作製した、巻いた毛束について、専門のパネラー10名が標準光源下で目視にて観察し、ツヤを以下の基準により評価した。
【0078】
4点:ツヤがとても良い。
3点:ツヤが良い。
2点:ツヤがやや良い。
1点:ツヤが良くない。
【0079】
10名のパネラーの採点結果について平均点を算出し、平均点が3.6以上を「A:とても優れる:5」、2.6点以上3.6点未満を「B:優れる」、1.6点以上2.6点未満を「C:良好」、1.6点未満を「D:不良」とする評価を下した。
【0080】
なお、上記「製剤安定性」で評価がDであった毛髪化粧料組成物については、本評価を行わなかった。
【0081】
【0082】
【0083】
[考察]
実施例1~17に示すように、(A)~(C)成分を含有する毛髪化粧料組成物は、製剤安定性が高く、毛髪にツヤを付与する効果があり、毛髪の感触も良好にできていた。
【0084】
実施例1~4に示すように、(A)成分としてPPG-7ブテス-10又はPPG-7を含有する場合の方が、PPG-17ブテス-17又はPEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンを含有する場合よりも、軽さの評価が高かった。
実施例1,5,6に示すように、(B)成分としてPEG-11メチルエーテルジメチコン又はPEG-9ジメチコンを含有する場合の方が、PEG/PPG-30/10ジメチコンを含有する場合よりも、製剤安定性、感触、及びツヤの評価が高かった。
実施例7に示すように、(C)成分の種類を変えても、製剤安定性、感触、及びツヤの評価が同様に高かった。
【0085】
実施例1,8~11に示すように、質量比(A)/{(B)+(C)}が、0.4以上3.8以下の範囲内である場合の方が、範囲外である場合よりも、製剤安定性、感触、及びツヤの評価が高かった。具体的には、実施例8に示すように、質量比(A)/{(B)+(C)}が0.4未満であると、ツヤの評価がやや低下する傾向にあった。また、実施例11に示すように、質量比(A)/{(B)+(C)}が3.8よりも大きいと、製剤安定性がやや低下する傾向にあった。
【0086】
実施例1と実施例12とを比較すると、実施例12のように(D)成分を含有しない場合には、ツヤの評価が「A:とても優れる」となるように比較的多量の(A)成分を配合すると、製剤安定性がやや低下する傾向にあった。よって、(A)成分と(D)成分とを併用することが、毛髪に適度なツヤを付与しつつ、製剤安定性をより向上させるためには好ましいと考えられる。
【0087】
実施例1,13,14に示すように、質量比(A)/(D)が、3以下である場合の方が、3よりも大きい場合よりも、製剤安定性が高かった。
【0088】
実施例1,15~18に示すように、質量比(B)/(C)が、0.1以上3以下の範囲内である場合の方が、範囲外である場合よりも、製剤安定性、感触、及びツヤの評価が高かった。具体的には、実施例15に示すように、質量比(B)/(C)が0.1未満であると、べたつきのなさ、軽さ、滑らかさ等の評価が低下し、感触がやや低下する傾向にあった。また、実施例17に示すように、質量比(B)/(C)が3よりも大きいと、製剤安定性がやや低下する傾向にあった。
【0089】
一方、比較例1に示すように、(A)成分を含有しない場合には、ツヤの評価が少なくとも「C:良好」以上となるように比較的多量の(D)成分を配合しなければならず、その結果、毛髪にベタつきが生じ感触が良くなかった。
比較例2,3に示すように、(B)ポリエーテル変性シリコーンの代わりに、ポリグリセリン変性シリコーン、又はジメチコンを含有する場合には、製剤安定性が十分でなかった。
【0090】
比較例4に示すように、(B)成分を使用せず(C)成分のみで(A)成分を可溶化した場合には、べたつきが生じ軽さを感じられず、感触が良くなかった。
比較例5に示すように、(C)成分を使用せず(B)成分のみでは(A)成分を十分に可溶化することができない上、ベタつきが生じ軽さを感じられず、感触が良くなかった。