(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186387
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】固着ユニット
(51)【国際特許分類】
H01H 27/06 20060101AFI20221208BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01H27/06 G
H01H27/06 P
B23Q11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094573
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100212923
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】釜谷 拓次
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011AA15
(57)【要約】
【課題】権限のないユーザ(作業者)が安全スイッチを構成する部品を脱着することができないようにしつつも、権限のあるユーザ(管理者)が安全スイッチを構成する部品を容易に脱着することができるようにすることにより、作業者による安全スイッチの無効化を防止するとともに、管理者が安全スイッチおよびアクチュエータを容易に交換等することができるようにするための固着ユニットを提供すること。
【解決手段】本発明の固着ユニットは、設備内での作業者の安全を確保するために設置される安全スイッチを構成する部品を締結部材によって設備の壁あるいは扉に固着した固着状態を、権限のないユーザが解除することができないように制限する制限手段と、ユーザに権限がある場合に、そのユーザについて、固着状態を解除しうる状態とする許可手段とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備内での作業者の安全を確保するために設置される安全スイッチを構成する部品を締結部材によって前記設備の壁あるいは扉に固着した固着状態を、権限のないユーザが解除することができないように制限する制限手段と、
ユーザに権限がある場合に、そのユーザについて、前記固着状態を解除しうる状態とする許可手段と、
を備えた固着ユニット。
【請求項2】
前記安全スイッチを構成する部品は、相互に接近および離反することができるスイッチ本体および/またはアクチュエータである、
請求項1に記載の固着ユニット。
【請求項3】
前記許可手段は、ユーザに権限がある場合に、前記固着状態を解除しうる状態となるように前記制限手段に力を作用させる作用手段を備える、
請求項1または2に記載の固着ユニット。
【請求項4】
前記締結部材は、前記固着状態を解除するための頭部を備えるネジであり、
前記制限手段は、前記頭部を遮蔽して前記固着状態を解除しえないようにする禁止位置と、前記頭部を露出させて前記固着状態を解除しうるようにする許可位置と、の間を移動する遮蔽部材を備え、
前記作用手段は、前記遮蔽部材を前記禁止位置と前記許可位置との間で移動させる移動機構であり、
前記許可手段は、物理的または電子的な鍵によってユーザの権限の有無を認証し、
前記移動機構は、前記鍵を用いた施解錠の動力によって前記遮蔽部材を移動させる、
請求項3に記載の固着ユニット。
【請求項5】
前記締結部材は、回転入力部が側面に形成された頭部を備えるネジであり、
前記制限手段は、前記側面の少なくとも一部に対向することで前記固着状態を解除しえない状態に前記側面に近接または接触した禁止位置と、前記締結部材から離間して前記固着状態を解除しうる状態である許可位置と、の間を移動する規制部材を備え、
前記作用手段は、前記規制部材を前記禁止位置および前記許可位置に移動させる移動機構であり、
前記許可手段は、物理的または電子的な鍵によってユーザの権限の有無を認証し、
前記移動機構は、前記鍵を用いた施解錠の動力によって前記規制部材を移動させる、
請求項3に記載の固着ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固着ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
安全スイッチ(例えば、ドアインターロック装置、ガードインターロック装置)は、工作機械の正面扉および/または産業用ロボットの周囲の安全柵の扉部分などに取りつけられる。この安全スイッチは、扉の開閉検出を行う目的で使用される(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
ここで、安全スイッチに関しては、機械の安全ガードに関連するインターロック装置の設計および選定のための一般要求事項に関する規格「ISO14119」がある。この「ISO14119」の2013年版より、安全スイッチの無効化防止対策として「無効化の動機がある場合については適切な対策を取ること」が要求されるようになった。その対策の中には、「(安全スイッチおよび)アクチュエータの取り外し不可能な固定」という項目が設けられている。
【0004】
これは、権限のないユーザ(作業者)には、アクチュエータを取り外すなどによって安全スイッチを無効化する動機(例えば、扉を開けたまま作業を行いたいなどの動機)があるためである。
【0005】
そして、「ISO14119」における「(安全スイッチおよび)アクチュエータの取外し不可能な固定」を実現するために推奨されている具体策としては、「溶接」、「溶着」、「ワンウェイねじ」、「リベット」などがある。これらの具体策により、作業者は、扉などに固定された安全スイッチおよび/またはアクチュエータを容易に取り外すことができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4229556号
【特許文献2】特許第6097250号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方で、これらの具体策は、権限のあるユーザ(管理者)に対しても、アクチュータ等を設置する際にアクチュータ等の位置を微調整することを難しくさせ、また、これらの具体策によって設置された後のアクチュエータ等を交換することも難しくさせる。
【0008】
本発明の目的は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、作業者が安全スイッチを構成する部品を脱着することができないようにしつつも、管理者が安全スイッチを構成する部品を容易に脱着することができるようにするための固着ユニットを提供することにより、作業者による安全スイッチの無効化を防止するとともに、管理者による安全スイッチおよび/またはアクチュエータの交換等を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、
設備内での作業者の安全を確保するために設置される安全スイッチを構成する部品を締結部材によって前記設備の壁あるいは扉に固着した固着状態を、権限のないユーザが解除することができないように制限する制限手段と、
ユーザに権限がある場合に、そのユーザについて、前記固着状態を解除しうる状態とする許可手段と、
を備えた固着ユニットである。
【0010】
また、第1の発明において、
前記安全スイッチを構成する部品は、相互に接近および離反することができるスイッチ本体および/またはアクチュエータであってもよい。
【0011】
また、第1の発明において、
前記許可手段は、ユーザに権限がある場合に、前記固着状態を解除しうる状態となるように前記制限手段に力を作用させる作用手段を備えてもよい。
【0012】
また、第1の発明において、
前記締結部材は、前記固着状態を解除するための頭部を備えるネジであり、
前記制限手段は、前記頭部を遮蔽して前記固着状態を解除しえないようにする禁止位置と、前記頭部を露出させて前記固着状態を解除しうるようにする許可位置と、の間を移動する遮蔽部材を備え、
前記作用手段は、前記遮蔽部材を前記禁止位置と前記許可位置との間で移動させる移動機構であり、
前記許可手段は、物理的または電子的な鍵によってユーザの権限の有無を認証し、
前記移動機構は、前記鍵を用いた施解錠の動力によって前記遮蔽部材を移動させてもよい。
【0013】
また、第1の発明において、
前記締結部材は、回転入力部が側面に形成された頭部を備えるネジであり、
前記制限手段は、前記側面の少なくとも一部に対向することで前記固着状態を解除しえない状態に前記側面に近接または接触した禁止位置と、前記締結部材から離間して前記固着状態を解除しうる状態である許可位置と、の間を移動する規制部材を備え、
前記作用手段は、前記規制部材を前記禁止位置および前記許可位置に移動させる移動機構であり、
前記許可手段は、物理的または電子的な鍵によってユーザの権限の有無を認証し、
前記移動機構は、前記鍵を用いた施解錠の動力によって前記規制部材を移動させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業者が安全スイッチを構成する部品を脱着することができないようにしつつも、管理者が安全スイッチを構成する部品を容易に脱着することができるようになる。これにより、作業者による安全スイッチの無効化を防止するとともに、管理者による安全スイッチおよび/またはアクチュエータの交換等を容易にするための固着ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態における、固着ユニットの使用状態(閉扉状態)を示す正面概略図である。
【
図2】第1実施形態における、安全スイッチを構成する部品(アクチュエータ)の平面図である。
【
図3】第1実施形態における、固着ユニットの施錠状態での、(A)平面図、(B)断面図(I-I線断面図)、および(C)錠の断面図である。
【
図4】第1実施形態における、固着ユニットの解錠状態での、(A)平面図および(B)断面図(I′-I′線断面図)である。
【
図5】第2実施形態における、固着ユニットの施錠状態での、(A)平面図、および(B)断面図(II-II線断面図)、錠の断面図である。
【
図6】第2実施形態における、固着ユニットの解錠状態での、(A)平面図、および(B)断面図(II′-II′線断面図)である。
【
図7】第3実施形態における、固着ユニットの施錠状態での、(A)平面図、および(B)断面図(III-III線断面図)、錠の断面図である。
【
図8】第3実施形態における、固着ユニットの解錠状態での、(A)平面図、および(B)断面図(III′-III′線断面図)である。
【
図9】第4実施形態における、遮蔽部材の(A)禁止位置における平面図、および(B)許可位置における平面図である。
【
図10】第5実施形態における、固着ユニットの施錠状態での側面図である。
【
図11】第6実施形態における、(A)固着ユニットの施錠状態での側面図、および(B)固着ユニットの解錠状態での側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
本発明の実施形態にかかる固着ユニット1について、
図1~
図4を参照して説明する。固着ユニット1は、
図1のとおり、安全スイッチ500を構成するアクチュエータなどの部品を固着させる(固定する)ために適用される。
【0017】
<安全スイッチの説明>
安全スイッチ500は、工作機械などの設備の正面扉および/または産業用ロボット周囲の安全柵などの設備の扉部分などに取りつけられ、扉の開閉検出を行う目的で使用される。この安全スイッチ500は、設備内での作業者の安全を確保するために設置される。
【0018】
<固着ユニットの説明>
固着ユニット1は、安全スイッチ500を構成する部品を、締結部材を用いて設備の壁Wあるいは扉Dに固着させる。固着ユニット1は、管理者(権限のあるユーザ)が部品の固着状態を容易に解除することができるようにしつつも、作業者(権限のないユーザ)が部品の固着状態を解除することができないようにする。
【0019】
すなわち、固着ユニット1は、作業者が安全スイッチ500の部品の着脱を行うことを制限(禁止)する。
【0020】
一方、固着ユニット1は、管理者に対しては、部品の固着状態を解除しうる状態とすることができる。具体的には、管理者は、締結部材にアクセスすることが許可され、締結部材の締結状態を調整することで安全スイッチ500の部品の位置調整、および部品の交換などを容易に実行することができる。
【0021】
本実施形態では、安全スイッチ500を構成する部品の一例としてアクチュエータ510を用い、締結部材の一例としてネジ20A、20Bを用いて説明する。
【0022】
なお、以下において、単に「ユーザ」という場合には、作業者および管理者の双方を示す。
【0023】
<安全スイッチおよび固着ユニットの構成>
安全スイッチ500は、アクチュエータ510とスイッチ本体(スイッチ)520とで構成される。アクチュエータ510は、扉Dに配置され、スイッチ本体520(
図1の紙面右側から見た側面部に形成された挿入孔)に対して抜き差しをすることができる部材である。
【0024】
アクチュエータ510は、
図2のとおり、先端部511および基端部512などで構成される。
【0025】
先端部511は、スイッチ本体520に挿入される部分であり、挿入された状態においてスイッチ本体520の内部機構と係合する。そして、先端部511は、先端を切り欠いて形成される切り欠き511aと、中空となっている開孔511bとで構成されている。
【0026】
基端部512は、先端部511よりも幅(
図2における上下方向の長さ)が広く形成されている。そして、基端部512には、取付孔513A、513Bが形成されている。
【0027】
取付孔513A、513Bに挿通されたネジ20A、20B(
図3、
図4参照)によって、
図1のとおり、アクチュエータ510が扉Dの表面に固定される。
【0028】
そして、扉Dのスライド(
図1の紙面左右方向における開閉移動)に追従して、アクチュエータ510がスイッチ本体520に対して抜き差しされる。すなわち、アクチュエータ510およびスイッチ本体520が、相互に接近および離反する。
【0029】
スイッチ本体520は、壁Wに設置され、アクチュエータ510の抜き差しによって、安全スイッチ500の出力状態を切り替える。これにより、扉Dの開閉状態が検出される。
図1は、引戸の扉Dが閉まっており、アクチュエータ510がスイッチ本体520に挿入されている状態を示す。
【0030】
図3のとおり、固着ユニット1は、収容部10、ネジ20A、20B、制限手段30および許可手段40を備える。
【0031】
収容部10は、
図3(B)のとおり、開口11が形成され、制限手段30および許可手段40の一部を収容する。収容部10は、例えば金属製のベース12およびカバー13を備える。
【0032】
ベース12は、取付孔12A、12B(12Bは不図示)が形成された例えば金属製の板状部材である。
【0033】
ベース12の取付孔12A、12Bは、アクチュエータ510の取付孔513A、513Bに対向する。取付孔12A、12Bには、それぞれネジ20A、20Bが挿通されている。
図1のとおり、これらのネジ20A、20Bによって、ベース12は、アクチュエータ510とともに扉Dの表面に固定される(固着状態となる)。
【0034】
カバー13は、制限手段30などを収容することができるように凹形状で形成されている。カバー13は、例えば、金属製の板状部材であり、溶接によってベース12に固着される。
【0035】
ネジ20A(20B)は、
図4のとおり六角穴付ボルトであり、収容部10およびアクチュエータ510を、扉Dの表面に固定する締結部材である。ネジ20A(20B)は、回転入力部である穴(例えば、六角形状)が形成された頭部21A(21B)、および、ネジ溝が形成されたネジ部22A(22B)を備える。
【0036】
そして、例えば、管理者が頭部21A、21Bの穴に対応する形状のドライバを用いて頭部21A、21Bを回転させることで、ネジ20A、20Bが取り外される。これにより、アクチュエータ510の固着状態が解除される。
【0037】
制限手段30は、作業者がアクチュエータ510の固着状態を解除することができないように制限する。制限手段30は、遮蔽部材31を備える。
【0038】
遮蔽部材31は、
図3に示す禁止位置と
図4に示す許可位置との間を、後述する移動機構41の駆動に伴って移動(スライド)する。具体的には、遮蔽部材31は、ベース12の上面およびカバー13の内壁面にガイドされて禁止位置と許可位置との間をスライドする。
【0039】
図3(A)および
図3(B)の禁止位置において、遮蔽部材31は、ネジ20A、20Bの頭部21A、21Bを遮蔽して、アクチュエータ510の固着状態を解除しえないようにする。
【0040】
また、
図4(A)および
図4(B)の許可位置において、遮蔽部材31は、ネジ20A、20Bの頭部21A、21Bを露出させて、アクチュエータ510の固着状態を解除しうるようにする。
【0041】
許可手段40は、移動機構41および錠42を備える。そして、許可手段40は、ユーザに権限がある場合(ユーザが管理者である場合)に、そのユーザについて、アクチュエータ510の固着状態を解除しうる状態とする。
【0042】
移動機構41は、回転部411、偏心ローター412およびバネ413を備える。そして、移動機構(作用手段)41は、ユーザに権限がある場合(ユーザが管理者である場合)に、アクチュエータ510の固着状態を解除しうる状態となるように制限手段30(遮蔽部材31)に力(動力)を作用させる。具体的には、移動機構41は、遮蔽部材31を禁止位置と許可位置との間で移動させる。
【0043】
回転部411は、
図3(C)のとおり、錠42のキーシリンダー421と一体形成されている。そして、回転部411は、キーシリンダー421に挿入された鍵50を回すことで回転する。この回転部411の回転に伴って、偏心ローター412も回転する。
【0044】
偏心ローター412は、板状部材であり、回転部411に固定されている。偏心ローター412は、回転部411の回転に伴って、
図3(A)に示す位置と
図4(A)に示す位置との間を回転する。
【0045】
バネ413は、一端がベース12に固定され、他端が遮蔽部材31に固定される。バネ413は、遮蔽部材31を収容部10の内部に向かう方向に付勢する。このバネ413の付勢力によって、遮蔽部材31は、常に、偏心ローター412の側面に当接した状態となる。
【0046】
例えば、偏心ローター412が
図4(A)の位置から
図3(A)の位置に時計回りに回転することによって、遮蔽部材31は、許可位置から禁止位置にスライドする。また、偏心ローター412が
図3(A)の位置から
図4(A)の位置に反時計回りに回転する場合に、遮蔽部材31は、バネ413の付勢力によって、禁止位置から許可位置にスライドする。
【0047】
錠42は、対応する鍵50を用いて施解錠をすることができる。本実施形態では、遮蔽部材31が禁止位置にある状態(
図3の位置)で偏心ローター412が反時計回りに回転することができないように施錠される。また、遮蔽部材31が許可位置にある状態で解錠される。
【0048】
したがって、錠42を施錠しておくことで、鍵50を所持していないユーザである作業者は、ネジ20A、20Bの頭部21A、20Bにアクセスすることができない。すなわち、作業者は、アクチュエータ510の固着状態を解除することができないため、作業者によるアクチュエータの無効化を防止することができる。
【0049】
一方、鍵50を所持しているユーザである管理者は、錠42を解錠することで、遮蔽部材31を許可位置に移動させることができる。これにより、管理者は、ネジ20A、20Bの頭部21A、20Bにアクセスすることができるため、管理者が容易にアクチュエータの交換等をすることができる。なお、鍵50は、使用されない場合において、キーシリンダー421から引き抜かれて作業者が保管すればよい。
【0050】
<固着ユニットの動作>
例えば、ユーザがネジ20A、20Bにアクセスする必要がない通常時においては、固着ユニット1(錠42)は、施錠されている状態である。そのため、
図3のとおり、遮蔽部材31は、禁止位置にあって、ネジ20A、20Bの頭部21A、21Bを遮蔽している。したがって、作業者は、アクチュエータ510の固着状態を解除することができない。
【0051】
一方、管理者がアクチュエータ510にアクセスする必要がある場合においては、管理者が鍵50を用いて固着ユニット1(錠42)を解錠することができる。具体的には、管理者が鍵50をキーシリンダー421に差し込んだのちに反時計回りに回転させることにより、回転部411とともに偏心ローター412が反時計回りに回転し、バネ413による付勢力によって遮蔽部材31が禁止位置から許可位置にスライドする。以上の手順により、ネジ20A、20Bの頭部21A、21Bが露出し、アクチュエータ510の固着状態を解除することができる。
【0052】
作業が終了したのちは、管理者が、鍵50を用いて再び固着ユニット1(錠42)を施錠すればよい。具体的には、管理者は、鍵50をキーシリンダー421に差し込んだのちに時計回りに回転させることにより、回転部411とともに偏心ローター412が時計回りに回転する。そして、偏心ローター412の回転によって遮蔽部材31が許可位置から禁止位置にスライドする。そして、この施錠状態で、管理者が鍵50をキーシリンダー421から引き抜けばよい。
【0053】
<発明の効果>
本実施形態の固着ユニットによれば、作業者が安全スイッチを構成する部品を脱着することができないようにしつつも、管理者が安全スイッチを構成する部品を容易に脱着することができるようになる。これにより、作業者による安全スイッチの無効化を防止するとともに、管理者が安全スイッチおよび/またはアクチュエータの交換等を容易にすることができる。
【0054】
[第2実施形態]
本実施形態は、固着ユニットの制限手段および許可手段の移動機構の構成において前述の第1実施形態と異なる。これらの異なる構成について、
図5および
図6を用いて説明する。
【0055】
図5、
図6のとおり、本実施形態の固着ユニット101は、制限手段130および許可手段140を備える。
【0056】
制限手段130は、遮蔽部材131を備える。遮蔽部材131は、禁止位置と許可位置との間を、後述する移動機構141の駆動に伴って移動(回転)する。
図5(A)、5(B)のとおり、禁止位置において、遮蔽部材131は、頭部21A、21Bを遮蔽してアクチュエータ510の固着状態を解除しえないようにする。また、
図6(A)、6(B)のとおり、許可位置において、遮蔽部材131は、頭部21A、21Bを露出させてアクチュエータ510の固着状態を解除しうるようにする。
【0057】
許可手段140は、移動機構141および錠42を備える。移動機構141は、ユーザに権限がある場合(ユーザが管理者である場合)に、固着状態を解除しうる状態となるように制限手段130(遮蔽部材131)に力(動力)を作用させる。移動機構141は、回転部1411を備える。
【0058】
回転部1411は、錠42のキーシリンダー421と一体形成されている。回転部1411は、キーシリンダー421に挿入された鍵50を回すことで回転する。回転部1411は、遮蔽部材131に固定されている。そして、回転部1411の回転に伴って遮蔽部材131も回転する。
【0059】
これにより、管理者がキーシリンダー421に挿入された鍵50を回すことで、遮蔽部材131は、禁止位置との許可位置との間を回転する。そして、遮蔽部材131が禁止位置にある状態で移動することができないように施錠される。また、遮蔽部材131が許可位置にある状態で解錠される。
【0060】
その他の構成については第1実施形態と同様である。また、本実施形態においても、前述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0061】
[第3実施形態]
本実施形態は、固着ユニットの収容部、ネジ(締結部材)、制限手段、許可手段の構成において前述の実施形態と異なる。これらの異なる構成について、
図7、
図8を用いて説明する。
【0062】
図7、
図8のとおり、アクチュエータ510は、ネジ220によって扉Dの表面に固定される。固着ユニット201は、収容部210、ネジ220A、220B(締結部材)、制限手段230、許可手段240を備える。
【0063】
収容部210は、開口211が形成されており、制限手段230及び許可手段240の一部を収容する。
【0064】
収容部210は、ベース212およびカバー213を備える。
【0065】
ベース212は、凹形状であり、凹部の底面に取付孔212A、212B(212Bは不図示)が形成されている。また、ベース212は、ネジ220A、220Bによって、アクチュエータ510とともに扉Dの表面に固定される。
【0066】
カバー213は、ベース212の上面の一部を覆う板状部材である。カバー213は、例えば、溶接によってベース212に固着される。
【0067】
ネジ220Aは、回転入力部が側面に形成された頭部221A、および、ネジ溝が形成されたネジ部222Aを備える。ネジ220Aは、例えば、頭部221Aが平面視(
図7(A)における紙面奥行方向)において六角形状の六角ボルトである。ネジ220Bも同様の構成である。例えば、管理者は、スパナを頭部221A、221Bの側面に外嵌して回転させてネジ220A、220Bを取り外すことによって、アクチュエータ510の固着状態を解除することができる。
【0068】
制限手段230は、規制部材231を備える。
【0069】
規制部材231は、平面視(
図7(A)の紙面奥行方向)においてアラビア数字「3」の形状であり、2つの凹部232A、232Bを備える。規制部材231は、禁止位置と許可位置との間を、後述する移動機構241の駆動に伴って移動(スライド)する。規制部材231は、ベース212の凹部底面およびカバー213の下面にガイドされて禁止位置と許可位置との間をスライドする。
【0070】
なお、凹部232A、232Bそれぞれの幅(
図7(A)の紙面上下方向の長さ)は、ネジ220A、220Bの頭部221A、221Bにおける六角形の対向する角同士を結んだ対角線の長さよりも短く、ネジ220A、220Bの頭部221A、221Bにおける六角形の対向する辺同士の間隔よりも大きければよい。
【0071】
すなわち、凹部232A、232Bそれぞれの幅が、頭部221A、221Bにおける六角形の対向する角同士を結んだ対角線の長さよりも長い場合には、作業者がネジ220A、220Bを回して固着状態を解除することができてしまう場合がある。また、凹部232A、232Bそれぞれの幅が、頭部221A、221Bにおける六角形の対向する辺同士の間隔よりも小さい場合には、規制部材231が禁止位置に移動(スライド)することができない。
【0072】
図7(A)、7(B)のとおり、規制部材231の禁止位置では、凹部232A(232B)において、ネジ220A(220B)の頭部221A(221B)が収容された状態となる。このとき、規制部材231の禁止位置では、規制部材231(凹部232A、232B)の側面が、頭部221A、221Bの側面の少なくとも一部に対向して近接または接触した状態(作業者がスパナを頭部221A、221Bの側面に外嵌することができない状態)となる。これにより、アクチュエータ510の固着状態を解除しえない状態となる。
【0073】
一方、
図8(A)、8(B)のとおり、規制部材231の許可位置では、規制部材231は、ネジ220A、220Bから離間してアクチュエータ510の固着状態を解除しうる状態(管理者がスパナを頭部221A、221Bの側面に外嵌することができる状態)となる。
【0074】
許可手段240は、移動機構241および錠42を備える。
【0075】
移動機構241は、回転部2411、偏心ローター2412およびバネ2413を備える。そして、移動機構241は、ユーザに権限がある場合(ユーザが管理者である場合)に、アクチュエータ510の固着状態を解除しうる状態となるように制限手段230(規制部材231)に力(動力)を作用させる。具体的には、移動機構241は、規制部材231を禁止位置と許可位置との間で移動させる。
【0076】
回転部2411は、錠42のキーシリンダー421と一体形成されている。回転部2411は、キーシリンダー421に挿入された鍵50を回すことで回転する。この回転部2411の回転に伴って偏心ローター2412も回転する。
【0077】
偏心ローター2412は、回転部2411に固定されている。偏心ローター2412は、回転部2411の回転に伴って回転する。
【0078】
バネ2413は、一端がベース212に固定され、他端が規制部材231に固定される。バネ2413は、規制部材231を収容部210の内部に向かう方向に付勢する。このバネ2413の付勢力によって、規制部材231は、常に、偏心ローター2412の側面に当接した状態となる。
【0079】
例えば、偏心ローター2412が
図8(A)の位置から
図7(A)の位置に時計回りに回転することによって、規制部材231は、許可位置から禁止位置にスライドする。また、偏心ローター2412が
図7(A)の位置から
図8(A)の位置に反時計回りに回転すると、規制部材231は、バネ2413の付勢力によって、禁止位置から許可位置にスライドする。
【0080】
このように管理者がキーシリンダー421に挿入された鍵50を回すことで、規制部材231は、禁止位置と許可位置との間をスライドする。そして、規制部材231が禁止位置にある状態で移動することができないように施錠される。また、規制部材231が許可位置にある状態で解錠される。
【0081】
その他の構成については前述の実施形態と同様である。また、本実施形態においても、前述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0082】
[第4実施形態]
本実施形態は、許可手段の移動機構の構成において前述の実施形態と異なる。具体的には、固着ユニット301において、
図9のとおり、ベース312と遮蔽部材331との間に2つのバネ3413A、3413Bが配置されている。
【0083】
また、ベース312の両端(
図9の紙面上側および下側の端部)には、遮蔽部材331およびバネ3413A、3413Bを移動させるために形成された溝状のガイド313A、313Bが形成されている。
【0084】
そして、この2つのバネ3413A、3413Bの付勢力によって、遮蔽部材331が常に偏心ローター3412に当接する。
【0085】
この発明によれば、両端のガイド313A、313Bを、遮蔽部材331の移動経路のみならず、バネ3413A、3413Bの移動経路とすることができる。
【0086】
その他の構成については実施形態1と同様である。また、本実施形態においても、前述の実施形態1と同様の効果を奏する。
【0087】
なお、遮蔽部材と偏心ローターとの相対的な位置関係を一定に保つ手段(両者を等距離に保つ、両者を当接させるなどの手段であって、例えば、第1実施形態におけるバネ413、本実施形態におけるバネ3413A、3413Bなど)は、これら以外にも様々な構成を採用することができる。例えば、遮蔽部材と偏心ローターとが連結部材によって連結されていてもよい。この場合には、連結部材の一端は遮蔽部材に固定されており、連結部材の他端が偏心ローター内に形成された案内レール上を移動することで、遮蔽部材と偏心ローターとが常に当接していてもよい。この場合において、例えば、連結部材の中央部は、伸縮自在な物質/機構とすることが好ましい。
【0088】
[第5実施形態]
本実施形態は、鍵および制限部材の構成において前述の実施形態と異なる。具体的には、
図10のとおり、固着ユニット401に用いられる鍵50は南京錠であり、遮蔽部材431はネジ20A、20Bを覆うように形成された直方体形状で構成されている。本実施形態のアクチュエータ410は、図示しない扉に設置された取付金具に対しネジ20A、20Bにより固定される。
【0089】
図10のとおり、本実施形態におけるアクチュエータ410は、側面視(
図10の紙面奥行方向)がL字形状となっている。そして、基端部の一端は、
図10の紙面上側に向かって立設されている。この基端部には、ネジ20A(20B)を挿通するための孔が形成されているとともに、鍵50のシャックル部分50A(掛け金)を挿通するための孔が形成されている。
【0090】
遮蔽部材431は4つの面部材で構成される箱型の部品である。すなわち、遮蔽部材431は、アクチュエータ410と接する部分(
図10における紙面右側および下側)には面部材がない。
【0091】
また、遮蔽部材531におけるアクチュエータ410の先端部側に面する面部材には、鍵50のシャックル部分50A(掛け金)を挿通するための孔が形成されている。また、遮蔽部材431は、蝶番4311によってアクチュエータ410の基端部に固定されている。すなわち、本実施形態のアクチュエータ410は、遮蔽部材431と一体化されている。
【0092】
管理者がアクチュエータ410の固着状態を解除する場合には、鍵50を解錠したのち、蝶番5311を中心に遮蔽部材431を上側(
図10における紙面上側)に回転させることによりネジ20A、20Bを露出させて許可状態とすればよい。
【0093】
その他の構成については前述の実施形態と同様である。また、本実施形態においても、前述の実施形態1と同様の効果を奏する。
【0094】
[第6実施形態]
本実施形態は、
図11のとおり、第5実施形態の変形例である。
【0095】
遮蔽部材531は、第5実施形態と同様、4つの面部材で構成される箱型の部品である。すなわち、遮蔽部材531は、アクチュエータ510と接する部分(
図11における紙面右側および下側)には面部材がない。
【0096】
また、遮蔽部材531は、錠542の機構によって、アクチュエータ510の基端部に固定されている。すなわち、本実施形態のアクチュエータ510は、第5実施形態と同様、遮蔽部材531と一体化されている。
【0097】
管理者がアクチュエータ510の固着状態を解除する場合には、鍵50を挿入して錠542を回すことで遮蔽部材531を上側(
図11における紙面上側)に回転させることにより、ネジ20A、20Bを露出させて許可状態とすればよい。
【0098】
その他の構成については前述の実施形態と同様である。また、本実施形態においても、前述の実施形態1と同様の効果を奏する。
【0099】
[他の実施形態]
前記実施形態とは異なり、アクチュエータが配置される位置およびスイッチ本体が配置される位置は、
図1とは逆方向であってもよい。
【0100】
また、スイッチ本体に、本発明が適用されてもよい。この場合には、スイッチ本体についても前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0101】
また、スイッチ本体およびアクチュエータの形状、構成は前記実施形態に限られない。例えば、アクチュエータの先端部および基端部は、前述のような平板状ではなく、球体部を備えていてもよい。また、アクチュエータの先端部がスイッチ本体の内部機構と係合するものではなくてもよい。例えば、アクチュエータが非接触のRFID形式であってもよい。
【0102】
また、第1実施形態および第4実施形態では、固着ユニットにバネが設けられている例が記載されているが、これらの実施形態においてバネが設けられていなくてもよい。この場合において、例えば施錠された場合には、回転した偏心ローターによって遮蔽部材が締結部材を覆う側に押されて禁止位置に配置される。一方、解錠された場合には、偏心ローターだけが移動するため遮蔽部材が許可位置には移動しないが、管理者は、自身の指などで遮蔽部材を収容部内にスライドさせて許可位置に移動させればよい。
【0103】
また、前記実施形態のほか、鍵は、ダイヤル式錠を含む機械式錠、および電子錠、ならびに、RFID、指紋認証などの生体認証を用いた錠、などであってもよい。なお、電子錠の場合には、例えば、ON/OFFソレノイドが駆動されることによって施解錠することができればよい。
【0104】
また、前記実施形態とは異なり、例えば1~5の数字が付されたボタンがあり、押されたボタンの組み合わせが正しいときに解錠されるようになっていてもよい。例えば、1と3とが押された状態でレバーを引くと解錠されてネジを覆う扉が開き、扉を閉めると再度施錠されればよい。すなわち、この場合には、解錠するための数字の組み合わせを知っているユーザが、管理者となる。
【0105】
また、鍵は、例えば特殊な材料で形成される樹脂等であってもよい。この場合には、ペースト状の樹脂を塗布してネジ頭を覆ったのちに樹脂を凝固させることで施錠することができ、凝固した樹脂等を溶剤で除去することで解錠することができてもよい。また、樹脂に代えて、管理者のみが取り外すことのできるキャップでネジ頭を覆うことによっても同様の効果を得ることができる。
【0106】
また、前記実施形態とは異なり、本発明の固着ユニットは、鍵を挿入することで、自動的に解錠される構造であってもよい。この場合には、例えば、ユーザがレバー等を引く(レバーをネジ頭に近づけるようにスライドさせる)ことで、スライドバーがネジ頭を覆うとともに施錠することができる。また、管理者が鍵を挿入することで、バネの付勢力により、レバーおよびスライドバーがネジ頭から遠ざかるように移動してネジ頭を露出させるとともに解錠することができる。
【0107】
また、ネジの頭部の形状および溝の形状は、前記実施形態に限られず、様々な形状を採用することができる。
【0108】
また、収容部およびカバーは、樹脂、ステンレスなどで形成することもできる。
【0109】
また、前記実施形態とは異なり、締結部材はネジでなくともよい。締結部材は、例えば、ボルト・ナットであってもよい。
【0110】
また、前記実施形態では、アクチュエータが取付孔を2つ備える例が記載されているが、本発明はこれには限られない。例えば、
図2において、アクチュエータ510は、取付孔513Aのみを備えており、取付孔513Bの代わりに、ベース12に形成された凹部に係止することのできる凸部(例えば、爪状部材)を備えていてもよい。
【0111】
この場合には、ユーザは、アクチュエータ510に形成された凸部をベース12に形成された凹部に係止させることで、ある程度アクチュエータ510の位置決めをしつつ、ネジ20Aを取付孔513Aに挿通してアクチュエータを固着状態とすることができる。これにより、部品点数および材料費を削減することができるとともに、ユーザは安全スイッチをより一層容易に固定することができる。
【符号の説明】
【0112】
1、101、201 固着ユニット
20A、20B、220A、220B ネジ(締結部材)
42 錠
50 鍵
30、130、230 制限手段
40、140、240 許可手段
41、141、241 移動機構(作用手段)
31、131、331、431、531 遮蔽部材
231 規制部材
500 安全スイッチ
510 アクチュエータ
520 スイッチ本体