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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186388
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】記録装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20221208BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B41J2/165 301
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/165 307
【審査請求】未請求
【請求項の数】33
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094575
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹腰 里枝
(72)【発明者】
【氏名】寒河 裕人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一生
(72)【発明者】
【氏名】弾塚 俊光
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大岳
(72)【発明者】
【氏名】現田 心
(72)【発明者】
【氏名】成實 一樹
(72)【発明者】
【氏名】山室 友生
(72)【発明者】
【氏名】島 貴明
(72)【発明者】
【氏名】石見 啓太
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB11
2C056EB35
2C056EB37
2C056EB58
2C056EC03
2C056EC04
2C056EC11
2C056EC23
2C056EC31
2C056EC37
2C056EC54
2C056EC57
2C056FA03
2C056FA10
2C056JA01
2C056JA13
2C056JB02
2C056JB04
2C056JB05
2C056JB08
2C056JB15
2C056JC13
2C056JC23
2C056KB37
2C056KC16
(57)【要約】
【課題】ワイピング後の吐出口からのインクの漏れによる画像品位の低下を抑制する。
【解決手段】インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭部と、キャリッジを停止させる際の減速度が第1の減速度である場合には、キャリッジが停止してから払拭部が吐出口面の払拭を開始するまでの時間を第1の時間とし、キャリッジを停止させる際の減速度が第1の減速度よりも小さい第2の減速度である場合には、キャリッジが停止してから払拭部が吐出口面の払拭を開始するまでの時間を第1の時間よりも短い第2の時間とするように、キャリッジの移動動作と払拭部の払拭動作とを制御する。
を備える
【選択図】 図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、
前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、
前記キャリッジを停止させる際の減速度が第1の減速度である場合には、前記キャリッジが停止してから前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を開始するまでの時間を第1の時間とし、前記キャリッジを停止させる際の減速度が前記第1の減速度よりも小さい第2の減速度である場合には、前記キャリッジが停止してから前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を開始するまでの時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間とするように、前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1の減速度および前記第2の減速度は、前記キャリッジが停止した際に前記記録ヘッドの内圧が正圧となる減速度であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、
前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、
前記キャリッジを停止させる前の前記キャリッジの定速度での移動距離が第1の距離である場合には、前記キャリッジが停止してから前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を開始するまでの時間を第1の時間とし、前記キャリッジの前記定速度での移動距離が前記第1の距離よりも長い第2の距離である場合には、前記キャリッジが停止してから前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を開始するまでの時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間とするように、前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドの内圧は、前記キャリッジが停止した時点で正圧であることを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、
前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、
前記キャリッジを停止させる前の前記キャリッジの移動動作中での前記記録媒体の所定領域に対するインクドットの付与割合を示す記録打ち込み密度が第1の打ち込み密度である場合には、前記キャリッジが停止してから前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を開始するまでの時間を第1の時間とし、前記記録打ち込み密度が前記第1の打ち込み密度よりも高い第2の打ち込み密度である場合には、前記キャリッジが停止してから前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を開始するまでの時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間とするように、前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドの内圧は、前記キャリッジが停止した時点で正圧であることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項7】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、
前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、
前記吐出口面を払拭することなく前記キャリッジを停止させる場合には、前記キャリッジの減速度を第1の減速度とし、前記吐出口面を払拭するために前記キャリッジを停止させる場合には、前記キャリッジの減速度を前記第1の減速度よりも小さい第2の減速度とするように、前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
前記第1の減速度は、前記キャリッジが停止した際に前記記録ヘッドの内圧が正圧となる減速度であることを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記第2の減速度は、前記キャリッジが停止した際に前記記録ヘッドの内圧が負圧となる減速度であることを特徴とする請求項7または8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記吐出口面を払拭するために前記キャリッジを停止させる前の前記キャリッジの定速度での移動距離が第1の距離である場合には、前記キャリッジの減速度を前記第2の減速度とし、前記キャリッジの前記定速度での移動距離が前記第1の距離よりも短い第2の距離である場合には、前記キャリッジの減速度を前記第2の減速度よりも小さい第3の減速度とすることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記吐出口面を払拭するために前記キャリッジを停止させる前の前記キャリッジの移動動作中での前記記録媒体の所定領域に対するインクドットの付与割合を示す記録打ち込み密度が第1の打ち込み密度である場合には、前記キャリッジの減速度を前記第2の減速度とし、前記記録打ち込み密度が前記第1の打ち込み密度よりも低い第2の打ち込み密度である場合には、前記キャリッジの減速度を前記第2の減速度よりも小さい第3の減速度とすることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項12】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、
前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、
前記キャリッジを停止させる際の減速度が第1の減速度である場合には、前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を終了してから次の前記キャリッジの移動動作を開始するまでの時間を第1の時間とし、前記キャリッジを停止させる際の減速度が前記第1の減速度よりも小さい第2の減速度である場合には、前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を終了してから次の前記キャリッジの移動動作を開始するまでの時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間とするように、前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項13】
前記払拭手段による前記吐出口面の払拭は、前記キャリッジが停止した後に開始されることを特徴とする請求項12に記載の記録装置。
【請求項14】
前記払拭手段による前記吐出口面の払拭は、前記キャリッジが停止する前に開始されることを特徴とする請求項12に記載の記録装置。
【請求項15】
前記第1の減速度および前記第2の減速度は、前記キャリッジが停止した際に前記記録ヘッドの内圧が正圧となる減速度であることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項16】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、
前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、
前記キャリッジを停止させる前の前記キャリッジの定速度での移動距離が第1の距離である場合には、前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を終了してから次の前記キャリッジの移動動作を開始するまでの時間を第1の時間とし、前記キャリッジの前記定速度での移動距離が前記第1の距離よりも長い第2の距離である場合には、前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を終了してから次の前記キャリッジの移動動作を開始するまでの時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間とするように、前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項17】
前記払拭手段による前記吐出口面の払拭は、前記キャリッジが停止した後に開始されることを特徴とする請求項16に記載の記録装置。
【請求項18】
前記払拭手段による前記吐出口面の払拭は、前記キャリッジが停止する前に開始されることを特徴とする請求項16に記載の記録装置。
【請求項19】
前記記録ヘッドの内圧は、前記キャリッジが停止した時点で正圧であることを特徴とする請求項16乃至18のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項20】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、
前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、
前記キャリッジを停止させる前の前記キャリッジの移動動作中での前記記録媒体の所定領域に対するインクドットの付与割合を示す記録打ち込み密度が第1の打ち込み密度である場合には、前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を終了してから次の前記キャリッジの移動動作を開始するまでの時間を第1の時間とし、前記記録打ち込み密度が前記第1の打ち込み密度よりも高い第2の打ち込み密度である場合には、前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を終了してから次の前記キャリッジの移動動作を開始するまでの時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間とするように、前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項21】
前記払拭手段による前記吐出口面の払拭は、前記キャリッジが停止した後に開始されることを特徴とする請求項20に記載の記録装置。
【請求項22】
前記払拭手段による前記吐出口面の払拭は、前記キャリッジが停止する前に開始されることを特徴とする請求項20に記載の記録装置。
【請求項23】
前記記録ヘッドの内圧は、前記キャリッジが停止した時点で正圧であることを特徴とする請求項20乃至22のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項24】
前記払拭手段が前記吐出口面を払拭するために前記キャリッジを停止した際の前記記録ヘッドの内圧が、前記キャリッジが静止している状態の前記記録ヘッドの内圧よりも高いことを特徴とする請求項1乃至23のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項25】
インクを収容するインクタンクをさらに備え、前記インクタンクから前記記録ヘッドへのインク供給を水頭差によって行うことを特徴とする請求項1乃至24のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項26】
前記払拭手段は、シート状の多孔質材料で構成された払拭部材を有することを特徴とする請求項1乃至23のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項27】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、を備える記録装置を制御する方法であって、
前記キャリッジを停止させる際の減速度が第1の減速度である場合には、前記キャリッジが停止してから前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を開始するまでの時間を第1の時間とし、前記キャリッジを停止させる際の減速度が前記第1の減速度よりも小さい第2の減速度である場合には、前記キャリッジが停止してから前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を開始するまでの時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間とするように、前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御工程を有することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項28】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、を備える記録装置を制御する方法であって、
前記キャリッジを停止させる前の前記キャリッジの定速度での移動距離が第1の距離である場合には、前記キャリッジが停止してから前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を開始するまでの時間を第1の時間とし、前記キャリッジの前記定速度での移動距離が前記第1の距離よりも長い第2の距離である場合には、前記キャリッジが停止してから前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を開始するまでの時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間とするように、前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御工程を有することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項29】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、を備える記録装置を制御する方法であって、
前記キャリッジを停止させる前の前記キャリッジの移動動作中での前記記録媒体の所定領域に対するインクドットの付与割合を示す記録打ち込み密度が第1の打ち込み密度である場合には、前記キャリッジが停止してから前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を開始するまでの時間を第1の時間とし、前記記録打ち込み密度が前記第1の打ち込み密度よりも高い第2の打ち込み密度である場合には、前記キャリッジが停止してから前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を開始するまでの時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間とするように、前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御工程を有することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項30】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、を備える記録装置を制御する方法であって、
前記吐出口面を払拭することなく前記キャリッジを停止させる場合には、前記キャリッジの減速度を第1の減速度とし、前記吐出口面を払拭するために前記キャリッジを停止させる場合には、前記キャリッジの減速度を前記第1の減速度よりも小さい第2の減速度とするように、前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御工程を有することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項31】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、を備える記録装置を制御する方法であって、
前記キャリッジを停止させる際の減速度が第1の減速度である場合には、前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を終了してから次の前記キャリッジの移動動作を開始するまでの時間を第1の時間とし、前記キャリッジを停止させる際の減速度が前記第1の減速度よりも小さい第2の減速度である場合には、前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を終了してから次の前記キャリッジの移動動作を開始するまでの時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間とするように、前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御工程を有することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項32】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、を備える記録装置を制御する方法であって、
前記キャリッジを停止させる前の前記キャリッジの定速度での移動距離が第1の距離である場合には、前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を終了してから次の前記キャリッジの移動動作を開始するまでの時間を第1の時間とし、前記キャリッジの前記定速度での移動距離が前記第1の距離よりも長い第2の距離である場合には、前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を終了してから次の前記キャリッジの移動動作を開始するまでの時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間とするように、前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御工程を有することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項33】
インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、を備える記録装置を制御する方法であって、
前記キャリッジを停止させる前の前記キャリッジの移動動作中での前記記録媒体の所定領域に対するインクドットの付与割合を示す記録打ち込み密度が第1の打ち込み密度である場合には、前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を終了してから次の前記キャリッジの移動動作を開始するまでの時間を第1の時間とし、前記記録打ち込み密度が前記第1の打ち込み密度よりも高い第2の打ち込み密度である場合には、前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を終了してから次の前記キャリッジの移動動作を開始するまでの時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間とするように前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御工程を有することを特徴とする記録装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吐出口面を払拭する手段を備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャリッジに搭載されたインクジェット記録ヘッドを往復動作させ記録するインクジェット記録装置において、インクタンクの交換頻度を減らすためにはインクタンクの大容量化が必要となる。しかし、インクジェット記録ヘッドとインクタンクとが一体化された方式では、キャリッジ上に大型のインクタンクを搭載すると、キャリッジの慣性が増大してしまう。そのため、キャリッジのような移動する物体上ではなく、移動しない位置にインクタンクを配設したインクジェット記録装置が知られている。そして、インクタンクとキャリッジ上の記録ヘッドとを供給チューブで接続し、インクタンクから記録ヘッドへインクを供給している。
【0003】
上記のような構成では、キャリッジの移動に伴って供給チューブ内のインクの揺動が生じると、慣性によりインクに動圧がかかることが知られている。特許文献1では、チューブ内に生じるインクの動圧を利用し、キャリッジの加速度を制御することでサブタンクにインクを充填する構成が開示されている。サブタンクとはメインタンクと記録ヘッドとの間に設けられたインク貯留部を指す。
【0004】
一方でインクジェット記録装置では、インク吐出に伴って生ずる微細な飛沫や吐出インクの記録媒体からのはね返り等が吐出口面に付着することがある。このような付着物は、吐出口を塞ぐ原因となったり、吐出インク滴に接触して記録画像品位を低下させる原因となる。このような記録不良を抑制するため、ブレード等により吐出口面を払拭(以下、「ワイピング」ともいう)し付着インク滴等を除去する手段が従来より知られている。特許文献2には、記録中や記録後(記録紙の排紙後)に記録ヘッドの吐出口面をワイピングするインクジェット記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-226738号公報
【特許文献2】特開2000-094701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
供給チューブ内のインクにかかる動圧によって供給チューブから記録ヘッド内にインクが流れ込む時、記録ヘッド内圧は上昇する。特許文献1では、このインクの動圧はキャリッジの加減速度に比例すると記載されており、記録ヘッドの内圧も同様である。すなわち加減速度の大きさによっては、キャリッジ停止後記録ヘッドの内圧が正圧となる場合がある。特許文献2では、キャリッジ停止後にワイピングを実行する。このとき、払拭部材により吐出口に形成された凸状のメニスカスが壊れ、続いてキャリッジが移動することによって、吐出口から記録媒体上などにインクがしたたり落ちる等、記録される画像の品位が低下する可能性がある。
【0007】
なお、キャリッジが停止した後ワイピング動作を実行するまでのワイパの昇降等の動作時間内に、記録ヘッドの内圧が正圧から負圧へと低下することで、インクの漏れを抑制することができる。
【0008】
一方、スループットを向上させるために、キャリッジの移動を高速化させると、キャリッジの加減速度も大きくする必要があり、それに伴って記録ヘッド内圧の上昇幅および下降幅も大きくなる。
【0009】
特に記録動作を高速で行う際には、ワイピング動作実行までに記録ヘッドの内圧が正圧から負圧へと低下する時間が確保でない可能性がある。
【0010】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイピング後の吐出口からのインクの漏れによる画像品位の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係わる記録装置は、インクを吐出する記録ヘッドを搭載し、記録媒体に対して往復移動するキャリッジと、前記記録ヘッドのインク吐出口が形成された吐出口面を払拭する払拭手段と、前記キャリッジを停止させる際の減速度が第1の減速度である場合には、前記キャリッジが停止してから前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を開始するまでの時間を第1の時間とし、前記キャリッジを停止させる際の減速度が前記第1の減速度よりも小さい第2の減速度である場合には、前記キャリッジが停止してから前記払拭手段が前記吐出口面の払拭を開始するまでの時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間とするように、前記キャリッジの移動動作と前記払拭手段の払拭動作とを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイピング後の吐出口からのインクの漏れによる画像品位の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の概観構成を示す図。
図2】第1の実施形態における記録ヘッドの模式図。
図3A】第1の実施形態における回復ユニットの模式図。
図3B】第1の実施形態における回復ユニットの模式図。
図3C】第1の実施形態における回復ユニットの模式図。
図3D】第1の実施形態における回復ユニットの模式図。
図3E】第1の実施形態における回復ユニットの模式図。
図4】第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の一色分のインク流路を示す模式的断面図。
図5】第1の実施形態における制御構成を示すブロック図。
図6】キャリッジの速度プロファイルと記録ヘッドの内圧プロファイルを示す図。
図7A】キャリッジの走査時における記録ヘッドと供給チューブの概略図。
図7B】キャリッジの走査時における記録ヘッドと供給チューブの概略図。
図7C】キャリッジの走査時における記録ヘッドと供給チューブの概略図。
図8A】キャリッジが減速を開始した後の速度プロファイルを示す図。
図8B】キャリッジが減速を開始した後のキャリッジの内圧プロファイルを示す図。
図8C】キャリッジが減速を開始した後の速度プロファイルを示す図。
図8D】キャリッジが減速を開始した後のキャリッジの内圧プロファイルを示す図。
図8E】記録ヘッドの吐出口近傍の断面図。
図8F】記録ヘッドの吐出口近傍の断面図。
図8G】記録ヘッドの吐出口近傍の断面図。
図8H】記録ヘッドの吐出口近傍の断面図。
図9A】第1の実施形態におけるワイピング動作を示すフローチャート。
図9B】第1の実施形態におけるウェイト時間を示す図。
図10】第2の実施形態におけるキャリッジの速度プロファイルと記録ヘッドの内圧プロファイルを示す図。
図11】記録中のスキャンの様子をベクトルで示した模式図。
図12】第2の実施形態におけるキャリッジの速度プロファイルと記録ヘッドの内圧プロファイルを示す図。
図13A】第2の実施形態におけるワイピング動作を示すフローチャート。
図13B】第2の実施形態におけるワイピング直前のキャリッジ減速度を示す図。
図14A】キャリッジが減速を開始した後の速度プロファイルを示す図。
図14B】キャリッジが減速を開始した後のキャリッジの内圧プロファイルを示す図。
図14C】キャリッジが減速を開始した後の速度プロファイルを示す図。
図14D】キャリッジが減速を開始した後のキャリッジの内圧プロファイルを示す図。
図15A】第3の実施形態におけるワイピング動作を示すフローチャート。
図15B】第3の実施形態におけるウェイト時間を示す図。
図16A】キャリッジが減速を開始した後の速度プロファイルを示す図。
図16B】キャリッジが減速を開始した後のキャリッジの内圧プロファイルを示す図。
図16C】キャリッジが減速を開始した後の速度プロファイルを示す図。
図16D】キャリッジが減速を開始した後のキャリッジの内圧プロファイルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0015】
この明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。また「記録」とは、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に、画像、模様、パターン等を形成、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。さらに、「インク」(「液体」という場合もある)とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。したがって、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、あるいはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色材の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。またさらに、「ノズル」とは、特に断らない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括していうものとする。
【0016】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録装置について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施形態におけるシリアル走査式記録装置の記録主要部の概略斜視図である。図1において、キャリッジ104は記録ヘッド101を保持しつつ、記録媒体105に対し、座標軸Xで示す方向(主走査方向)に主走査移動する。キャリッジ104の駆動はキャリッジ104上に固定された駆動ベルト(不図示)をインクジェット記録装置本体に取り付けられたキャリッジモータ(不図示)で引っ張ることにより行われる。搬送ローラ106は、その回転に伴って記録媒体105を、座標軸Yで示す方向(副走査方向)に搬送する。記録データに従って記録ヘッド101がインクを吐出しながらキャリッジ104が主走査方向に移動する主走査と、搬送ローラ106の回転に伴う記録媒体の搬送動作と、を交互に繰り返すことにより、段階的に記録媒体上に画像が形成される。記録動作に伴い記録ヘッド101内のインクが消費されると、インク供給システム108から供給チューブ102を介してインクが供給される。インク供給システム108には、それぞれ異なる色のインクを収容する複数のインクタンク103が配置されている。
【0018】
回復ユニット107は、キャリッジ104の移動方向における記録領域外に配置されている。キャリッジ104は、記録動作の開始前や記録動作中に必要に応じて記録領域外のホームポジションに停止する。ホームポジションとは、キャリッジの主走査方向に対して図中右端の位置を意味する。また、キャリッジの主走査方向に対して図中左端の位置をバックポジションとする。回復ユニット107は、キャリッジ104がホームポジションに停止したときの記録ヘッド101と対向した位置に配置されている。回復ユニット107は、必要に応じて記録ヘッド101の吐出口面200に設けられた複数の吐出口からインクや空気を吸引してクリーニング動作を行ったり、吐出口面に付着したインクや異物を取り除くワイピング動作(払拭動作)を行ったりする。
【0019】
図2は、本実施形態に係る記録ヘッドの模式図である。図2は、記録ヘッド101をインクが吐出される方向(下方)から見たときの図である。記録ヘッド101は、インクを吐出する吐出口(ノズル)が複数配列された吐出口列(ノズル列)201~206が複数設けられた吐出口面(ノズル面)200を有している。吐出口列201~206は、キャリッジ104の移動方向に沿って異なる色調(色、濃度を含む)のインクを吐出可能に並んで配置されている。例えば、キャリッジ104の移動方向に沿って、ブラック(Bk)、ライトシアン(Lc)、シアン(C)、ライトマゼンタ(Lm)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)のインクを吐出可能な吐出口列201~206が並んで配置されている。各吐出口には、インクタンク(不図示)とチューブを介して接続されたインク導入部207から、記録ヘッド内部のインク流路を介して、インクが供給される。本実施形態の記録ヘッド101は、熱エネルギを利用してインクを吐出するインクジェット方式の記録ヘッドであり、熱エネルギを発生するための電気熱変換体を複数備えている。すなわち記録ヘッド101は、電気熱変換体に印加されるパルス信号によって熱エネルギを発生させ、この熱エネルギによって不図示のインク発泡室においてインクの膜沸騰を起こし、膜沸騰の発泡圧力を利用して吐出口よりインクを吐出する。なお、インクの吐出方法はこれに限らず、圧電素子による方法であってもよい。
【0020】
図3A図3Bに、本実施形態に係る回復ユニット107の模式図を示す。回復ユニット107は、記録ヘッド101の吐出口面を覆うキャップ302と、キャップ302が吐出口面を覆った状態において記録ヘッドからインクを吸引する吸引ポンプ303と、記録ヘッドの吐出口面をワイピングするワイパ301とを備えて構成される。キャップ302は、不図示の昇降機構によって昇降可能に支持されており、上昇位置と下降位置との間を移動する。キャップ302は、上昇位置では、記録ヘッド101と当接し記録ヘッド101の吐出口面200を覆う(キャッピングする)。キャップ302は、吐出口面200を覆うことにより、非記録動作時に記録ヘッド101の吐出口が乾燥しインクが蒸発することを抑制したり、あるいは、後述する吸引ポンプ303を駆動することで記録ヘッド101からインクを吸引したりすることができる。
【0021】
また、キャップ302は、記録動作時には、キャリッジ104と共に移動する記録ヘッド101との干渉を避けるため、下降位置に位置する。キャップ302が下降位置に位置した状態において、記録ヘッド101は、キャップ302と対向した位置に移動したときに、キャップ302に対して予備吐出を行うことができる。ワイパ301は、吐出口面200に付着するインク残渣等の異物を除去するために、周知の手段によって、ワイピングポジションと退避ポジションとの間を矢印Z方向に往復移動することで、吐出口面200に接触および退避する。つまり、ワイパ301は、非ワイピング時には図3Aに示すように退避ポジションに位置している。一方でワイピング動作時には図3Bに示すようにワイピングポジションにまで移動し、その状態でキャリッジ104が矢印X方向に移動することでワイパ301が吐出口面200をワイプしワイピング動作が行われる。
【0022】
吸引ポンプ303は、キャップ302が記録ヘッド101の吐出口面200を覆いその内部を略密閉空間にした状態において駆動され、その内部に負圧を発生させることにより記録ヘッド101からインクを吸引する吸引動作を行う。この吸引動作は、インクタンク103から記録ヘッド101内にインクを充填する際(初期充填時)や、吐出口内部の塵埃、固着物、気泡等を吸引除去する際(吸引回復時)に行われる。キャップ302は可撓性のチューブ304を介して不図示の廃インク吸収体と接続されている。
【0023】
なお、本実施形態では、ワイパ301はゴムなどの弾性部材から構成されているが、インクを吸収するシート状の多孔質の材料から構成される部材であってもよい。多孔質材料は、弾性材料に比べワイピング時により吐出口からインクを吸収し引き出しやすいため、本実施形態における効果がより発揮される。シート状の多孔質材料で構成された払拭ユニット309を搭載している回復ユニット107の模式図を図3C図3Dに示す。
【0024】
払拭ユニット309は、細長いシート状に形成された多孔質体からなり、例えばポリエチレングリコール等の揮発性の低い溶剤を主要成分とする払拭液が予め含浸された液体含浸部材(払拭部材)305を備えている。以下、この液体含浸部材(払拭部材)305を、「シート部材」とも称する。
【0025】
細長いシート状に形成されたシート部材305は、一端が第1の芯材307に、他端が第2の芯材308に、それぞれロール状に巻き付けられている。シート部材305は、ロール状に巻かれていない部分(以下、「非ロール部」という)が、記録ヘッド101の往復移動時にインク吐出口面200と対向するように配置されている。すなわち、シート部材305の非ロール部は、第1の芯材307および第2の芯材308よりも鉛直方向上方に配置されている。
【0026】
シート部材305は、弾性材料からなる支持部材306によって、非ロール部の背面(インク吐出口面200に対向する面とは反対側の面)が支持されている。支持部材306は、吐出口面200に付着するインク残渣等の異物を除去するために、周知の手段によって、ワイピングポジションと退避ポジションとの間を矢印Z方向に往復移動することで、吐出口面200に接触および退避する。つまり、支持部材306は、非ワイピング時には図3Cに示すように退避ポジションに位置している。一方でワイピング動作時には図3Dに示すようにワイピングポジションにまで移動し、その状態でキャリッジ104が矢印X方向に移動することでワイピング動作が行われる。
【0027】
第1の芯材307は、シート部材305の搬送モータにより駆動され、図3C図3Dにおいて、R方向に回転するように構成される。これにより、シート部材305を、キャリッジ104の往方向(矢印X方向参照)と同方向に搬送することができる。一方、第2の芯材308は、第1の芯材307の回転に伴って従動回転するが、第1の芯材307には、支持部材306が鉛直方向に往復移動するときに回転しないように、周知のトルクリミッタが設けられている。シート部材305の搬送長(搬送量)は、搬送モータの回転量によって制御されるが、周知の手段、例えば、光学的手段を用いた搬送長測定手段の測定結果に基づいて制御されるように構成されていてもよい。このとき、シート部材305の搬送方向に沿った端部に、長さ測定用のスケール(目盛り)が付されていることが好ましい。
【0028】
また、本実施形態では、ワイピング方向は記録ヘッドにおける吐出口列の配置方向であったが、この方向と交差(直交)する方向(吐出口の配列方向)に移動する構成であってもよい。ワイパが吐出口の配列方向に移動する構成を持つ回復ユニットの模式図を図3Eに示す。図3E図1における+Z方向から見た図である。
【0029】
本実施形態では、図2における、それぞれ3つの吐出口列(201~203,204~206)をワイピングする2つのワイパ310,311と、吐出口列201~206を含む吐出口面全体をワイピングするワイパ312とが設けられている。ワイパ310,311は、ワイパホルダ313に固定されている。ワイパホルダ313は、図中のY方向で示す前後方向(記録ヘッド101における吐出口の配列方向)に移動可能である。記録ヘッド101がホームポジションに位置したときに、ワイパホルダ313が+Y方向(片方向)に移動することによって、ワイパ310,311が吐出口面と当接しながら吐出口面をワイピングするワイピング動作を行うことができる。ワイピング動作が終了すると、キャリッジ104をワイピング動作を行う領域から移動し退避させてから、ワイパホルダ313を移動し元の位置(ワイピング動作前の位置)に戻す。
【0030】
図3Eのような構成においても、ワイパはゴムなどの弾性部材に限らずインクを吸収する多孔質の材料で構成される部材であってもよい。
【0031】
また、本実施形態では、ワイピングはワイパが片方向に移動するときにのみ行う構成であるが、ワイパが往復双方向に移動するときにワイピングを行う構成であってもよい。
【0032】
図4は、図1における記録主要部を+Y方向から見た図である。図4は、インクジェット記録装置本体の定位置にインクタンク103を配置し、チューブ102を介してキャリッジ104上の記録ヘッド101にインクを供給するシリアル走査タイプのインクジェット記録装置を示している。そして、インクタンク103から記録ヘッド101までのインクの経路が示されている。供給チューブ102はキャリッジ104の移動方向に略平行な区間を有するように配置されている。なお、図4で示した供給チューブ102の配置はあくまで一例であって、これに限定されるものではない。
【0033】
インク供給システム108は、記録装置本体の所定の位置に保持固定されている。本実施形態では、インクタンク103の鉛直下方にはサブタンク407が設けられ、サブタンク407には、鉛直上方へ延在する第1中空管404と第2中空管405が備えられている。また、サブタンク407には大気連通口406が設けられている。また、インクタンク103は底部に第1ジョイント部402と第2ジョイント部403を有する。第1ジョイント部402に対して第1中空管404が、第2ジョイント部403に対して第2中空管405が挿入されることで、大気連通口406を介してインクタンク103と大気が連通している。
【0034】
記録ヘッド101は、供給チューブ102を介して、内部にインクを貯留しているサブタンク407に連通している。記録動作の際は、各吐出口からインクが吐出されることで記録ヘッド101内のインクが消費されると、随時サブタンク407から、供給チューブ102を介してインクが供給される。サブタンク407のインクが消費された際には、まずサブタンク407の液面が下降する。すると、第1中空管404の下端部とサブタンク407内のインク液面が離れるため、第1中空管404を通じてインクタンク103が大気と連通する。大気と連通したことで、大気連通口406から空気が排出されると共にインクタンク103内のインク液面が下降し、サブタンク407にインクが再度充填される。図4中にBで示した鉛直方向位置と同位置まで液面が上がった状態で、再び第1中空管404の下端部がインクでふさがりインクタンク103からサブタンク407へのインクの移動は停止、すなわち充填が完了する。
【0035】
加えて、サブタンク407内のインク液面は、記録ヘッド101の吐出口面200よりも重力方向下方になるように、サブタンク407の鉛直方向位置等が設定されている。そのため、いわゆる水頭差によって、記録ヘッド101内の圧力は負圧に保たれる。また、この負圧によって、インク吐出口に形成されるメニスカスが壊れないように、サブタンク407の鉛直方向位置等が設定されている。なお本実施形態では、吐出口面200とサブタンク407内のインク液面の高低差、いわゆる水頭差Hは約80mmである。また開閉弁408がサブタンク407に隣接して供給チューブ102に配設されており、供給チューブ102が構成するインク通路を開閉する。インクジェット記録装置の輸送時には、開閉弁408を閉めることでインクが吐出口から漏れしたたり落ちることを防ぐ。以上が、本実施形態における水頭差方式を用いたインク供給系の概要である。
【0036】
インク供給方式には、他にもレギュレータを用いた加圧方式などが挙げられ、いずれの供給方式においても本実施形態の効果を発揮することができる。特に水頭差方式では、記録ヘッドの内圧を水頭差によってのみ制御しており、キャリッジ移動によって生じるインク動圧が及ぼす圧力変動影響が大きいため、本実施形態の効果はより発揮される。
【0037】
次に、インクジェット記録装置の記録制御を実行するための制御構成について説明する。図5は、図1に示したインクジェット記録装置の制御系の構成を説明するためのブロック図である。
【0038】
図5において、まず、スキャナやデジタルカメラ等の画像入力機器501やハードディスク等の各種記憶媒体に保存されている多値画像データが、画像入力部502に入力される。画像入力部502は、記録装置外部に接続されたホストコンピュータであり、インターフェイス回路503を介して、記録装置である画像出力部504に対して記録すべき画像情報を転送する。画像入力部502には、画像データを転送する際に必要なCPU505や、記憶素子(ROM506)が配置されている。ホストコンピュータの形態としては、情報処理装置としてのコンピュータとするほか、イメージリーダなどの形態とすることもできる。
【0039】
記録制御部507の内部には、CPU508、入出力ポート509が配置され、制御プログラムなどを記憶した記憶素子(ROM510)や、各種画像処理を実施する際のワークエリアとなるRAM511、不揮発性メモリNVRAM512が配置されている。ROM510は、CPU508の制御プログラムや記録動作に必要なパラメータなどの各種データを格納している。RAM511は、CPU508のワークエリアとして使用されると共に、画像入力部502から受信した画像データや生成した記録データなどの各種データの一時保管等を行う。そして、記録制御部507において変換された画像データに基づき、記録ヘッド101の各吐出口から記録媒体にインクを付与することにより画像を形成する。
【0040】
また、記録制御部507には入出力ポート509を通じて、キャリッジやLF(ラインフィード)を動作させるための各種モータ518、吸引動作モータ519、記録ヘッド101、およびそれらの各駆動回路513,514,515が接続される。吸引動作モータ519は、図2において説明した記録ヘッド101からインクの吸引排出を行うための吸引ポンプ303を動作させるための駆動源である。さらに、入出力ポート509には、周辺環境の温湿度を検知する温湿度センサ521などのセンサ類及びその駆動回路517が接続される。さらに、インクジェット記録装置の表示部や操作部520をコントロールするための表示部操作部コントローラ516も接続される。
【0041】
次に、キャリッジ104の移動による記録ヘッド101の内圧変動について説明する。
【0042】
図6(a)にホームポジション側からキャリッジ104が1往復走査し、ワイピングを実行する場合のキャリッジ速度プロファイル例を示す。また、図6(b)にその時の記録ヘッドの内圧プロファイル例を示す。図6(a)では横軸が時間、縦軸がキャリッジ速度を示している。図1中のX軸正方向に移動する際の速度を正としている。また、図6(b)では、横軸が時間、縦軸が記録ヘッドの内圧を示している。
【0043】
図6(a)の時間0における供給チューブ102の配置の概略図を図7Aに示す。これはキャリッジ104がホームポジション側から走査を開始する瞬間であり、速度は0である。
【0044】
図6(a)の期間Aでは、ホームポジション側からキャリッジ104が移動を開始し、所定速度V1に達するまで加速を行う。本実施形態では、速度60inch/sに達するまで加速を行った。図7Aのようにキャリッジ104がホームポジション側で加速を行うと、サブタンク407から記録ヘッド101へと向かう方向に慣性力によるインク動圧が発生する。発生したインク動圧によりチューブ内インクが記録ヘッド101の方向へ移動するため、記録ヘッド101内の圧力は上昇する。図6(b)の期間Aでは、記録ヘッド101の内圧はP1まで上昇する。本実施形態では、+10mmaqまで上昇した。
【0045】
次に期間Bでは、キャリッジ104は一定の速度V1で移動する。この時、インクに慣性力が働かないため記録ヘッド101の内圧は基準圧P0に向けて徐々に下降していく。ここでいう基準圧P0とはキャリッジ104が静止している時の記録ヘッド101の内圧で、本実施形態では-80mmaqとした。期間Aで記録ヘッド101の内圧は上昇しているため、図6(b)の期間Bでは、記録ヘッド101の内圧は基準圧P0に向けて下降していく。
【0046】
次に期間C、Dでは、バックポジション側でキャリッジ104が減速し、向きを反転させた後加速して、速度V2で逆向きに移動する。本実施形態では、速度V2も60inch/sとした。図6(a)の時刻TCにおける供給チューブ102の配置の概略図を図7Bに示す。キャリッジ104が主走査方向の左端側で減速した後、反対方向への加速を行うと、記録ヘッド101からサブタンク407へと向かう方向にチューブ内インクに慣性力によるインク動圧が発生する。発生したインク動圧により、チューブ内インクがサブタンク407へ戻る方向へ移動するため、記録ヘッド101内の圧力は下降する。図6(b)の期間C、Dでは記録ヘッド101の内圧はP2まで下降する。本実施形態では、-85mmaqまで下降した。
【0047】
次に期間Eでは、期間B同様、キャリッジ104は一定の速度で移動する。期間Dで記録ヘッド101の内圧は下降しているため、図6(b)の期間Eで記録ヘッド101の内圧は基準圧P0に向け上昇していく。次にキャリッジ104の停止後にワイピングを実行するため、回復ユニット107上にキャリッジ104が停止しなければならない。したがって、期間E中のキャリッジ走査距離は期間B中のキャリッジ走査距離よりも長くなる。よって期間Eの時間は期間Bの時間よりも長い。
【0048】
最後に期間Fでは、回復ユニット107上の位置でキャリッジ104を停止させるために減速を行う。図6(a)の時刻TF(キャリッジが停止した時点)における供給チューブ102の配置は図7Cで示される。ワイピングを実行するためにキャリッジ104は回復ユニット107上に停止する。期間Aと同様の向きに慣性力が働くため、図6(b)の期間Fでは記録ヘッド101の内圧はP1まで上昇する。以上がキャリッジ移動による圧力変動の説明である。以下、減速時における加速度のことを、「減速度」と表記する。
【0049】
上記のように、記録ヘッド101の内圧は、回復ユニット107が配置されているホームポジション側で正圧となる可能性が高い。したがって供給チューブ102はバックポジション側から接続されている方が、本実施形態における効果は大きい。
ここで、チューブ内のインクの動圧は、
Pn=(mn・an)/S …式(1)
mn:加速度がかかるインクの質量
S:供給チューブの断面積
an:キャリッジの加速度
で表すことができる。また、この場合、最大の動圧が生じるときのインク質量は、
mn=k・S・Ln …式(2)
k:インクの比重
S:供給チューブの断面積
Ln:加速度による慣性を受ける供給チューブの最大長さ
と表すことができる。
【0050】
式(1)に式(2)を代入することにより、
Pn=k・Ln・an …式(3)
という関係となる。
【0051】
ここで、加速度は加速開始時のキャリッジ速度と加速終了時のキャリッジ速度の差を加速時間で除算した値である。同様に、減速度は減速開始時のキャリッジ速度と減速終了時のキャリッジ速度の差を減速時間で除算した値である。両者とも図1中のX軸正方向を正としている。
【0052】
この式(3)から、インク動圧は加減速度に比例することがわかる。加減速度は、主に記録中のキャリッジ速度に左右される。スループット向上のためにキャリッジ速度を大きくすれば加減速度も大きくなり、逆に画質向上のためキャリッジ速度を小さくすれば加減速度も小さくなる。
【0053】
また、式(3)からインク動圧は加速度による慣性を受けるチューブの最大長さにも比例することがわかる。したがって図4のようなチューブ配置のインクジェット記録装置においてキャリッジ104がホームポジション側で加減速する場合は、バックポジション側で加減速するよりも記録ヘッド101内に発生する圧力の変動幅は大きい。図7Aのようにキャリッジ104がホームポジション端側で加減速を行う方が図7Bのようにバックポジション側で加減速を行う場合よりも慣性を受ける供給チューブの最大長さが長い(L701>L702)ためである。
【0054】
以上のことから、ホームポジション側でのキャリッジ加減速による記録ヘッドの内圧上昇幅が、バックポジション側でのキャリッジ加減速による記録ヘッドの内圧下降幅と、定速移動中の記録ヘッドの内圧上昇幅よりも大きい場合がある。その際、ホームポジション側でのキャリッジ加減速による記録ヘッドの内圧は基準圧P0以上で推移する。
【0055】
なお、記録ヘッドとインクタンクとが一体化した系についても、インク流路の一部がキャリッジの移動方向に略平行な区間を有するような構成であれば、効果は発揮される。ただし、インクタンクから供給チューブにより記録ヘッドへインク供給が行われる系の方がより本実施形態の効果が発揮される。
【0056】
次に本実施形態の特徴部分である、キャリッジ停止からワイピング動作開始までのウェイト時間を設定する制御について説明する。
【0057】
速度V801で移動していたキャリッジが減速度a801(inch/秒2)で減速して回復ユニット上に停止した時刻をT801a、記録ヘッドの内圧が0となる時刻をT801bとした場合のキャリッジ速度プロファイルを図8Aに示す。その場合の記録ヘッドの内圧プロファイルを図8Bに示す。また、速度V802で移動していたキャリッジが減速度a802(inch/秒2)(a802>a801)で減速して回復ユニット上に停止した時刻をT802a、記録ヘッドの内圧が0となる時刻をT802bとした場合のキャリッジの速度プロファイルを図8Cに示す。その場合の記録ヘッドの内圧プロファイルを図8Dに示す。図8A図8Cにおいて、横軸が時間、縦軸がキャリッジの速度を示している。また、図1中のX軸正方向に移動する際の速度を正としている。図8B図8Dにおいて、横軸が時間、縦軸が記録ヘッドの内圧を示している。
【0058】
図8B図8Dより、両者ともキャリッジ停止時における記録ヘッドの内圧は正圧(P802>P801>0)である。図8Eに記録ヘッドの内圧がP801に達した際の吐出口近傍の断面図を、図8Fに記録ヘッドの内圧がP802に達した際の吐出口近傍の断面図を示す。両者とも、図1中のX-Z平面に沿った断面を示している。図8E図8Fに示すように、記録ヘッドの内圧が正圧の場合に吐出口に形成されるインクのメニスカスは凸形状である。この状態でワイパが接触すると、インクのメニスカスが壊れてしまう可能性がある。すなわちキャリッジの停止後すぐにワイピングを実行すると、吐出口からインクが漏れ出る恐れが高い。さらにP802>P801であるため、吐出口面からのメニスカス高さはh802>h801となる。よって特に図8Cの場合は図8Aの場合よりもインクが漏れ出る可能性がある。続いてキャリッジの移動が開始されることにより、吐出口から記録媒体上などにインクが漏れしたたり落ちる可能性がある。
【0059】
そこで、本実施形態では、記録ヘッドの内圧が正圧から負圧へと低下するまで、キャリッジ停止状態でのウェイト時間を設けた後、ワイピング動作に移行する。図8Dにおける時刻T802aから時刻T802bまでの時間T802(秒)以上のウェイト時間を設ければ、図8C図8Aともに記録ヘッドの内圧が負圧の状態でワイピングすることができる。図8Gに示すように記録ヘッドの内圧が負圧であるときにワイピングを実行してもインクが漏れ出る恐れは低い。これにより、続いてキャリッジが移動しても、吐出口から記録媒体上などにインクが漏れしたたり落ちることを抑制することができる。
【0060】
また、図8B図8Dに示すように、記録ヘッドの内圧が負圧になるまでの時間が図8Aの場合と図8Cの場合では異なる(T801<T802)。そこで、図8Aの場合のウェイト時間を最適化し、図8Cの場合のウェイト時間より短くする制御を導入することで、スループットの低下を抑えることができる。
【0061】
さらに、このウェイト時間は、スキャン幅、記録打ち込み密度(以下「duty」とも言う)によっても最適化が可能である。なお、記録打ち込み密度とは、本実施形態ではキャリッジの移動動作中における所定領域に対するインクドットの付与割合(%)を言い、1/1200インチ四方(1200dpi四方)の領域にインクドットを1ドット付与することを100%dutyとする。
【0062】
キャリッジの定速移動中、記録ヘッドの内圧は基準圧P0に収束していく。ここで言う基準圧P0とは、キャリッジ静止時の記録ヘッド101内の圧力(-80(mmaq))のことである。図6(b)に示した期間Dにおける記録ヘッドの内圧が基準圧P0よりも高い場合、ワイピング動作直前のスキャン幅が長くキャリッジ定速移動の期間Eの時間が長いほど、記録ヘッドの内圧は基準圧P0により近くまで下降する。
【0063】
一方、ワイピング動作直前のスキャン幅が短くキャリッジ低速移動の期間Eが短いほど、記録ヘッドの内圧の下降幅が小さく基準圧P0に収束しない。したがって記録ヘッドの内圧が十分に下がっていないままキャリッジは期間Fの減速を開始してしまい、キャリッジ停止後の記録ヘッドの内圧が高くなってしまう。そこで、本実施形態では、ワイピング動作直前のスキャン幅が短いほど、ワイピング動作までのウェイト時間を長くするよう制御する。
【0064】
また、記録時におけるdutyが高いということは、記録ヘッドから吐出されるインク量が多くなるということである。つまりキャリッジ定速移動中に記録ヘッド内から供給チューブを通じてタンク側にインクが戻されるのに加えて、吐出によっても記録ヘッド内のインクが減る。したがって、記録ヘッド内圧力はdutyが高い方が下がりやすい。そこで、本実施形態では、ワイピング動作のためにキャリッジを停止させる場合に、スキャンにおけるdutyが高いほど、ワイピング動作までのウェイト時間を短くするように制御する。
【0065】
なお、本実施形態では、キャリッジ減速度、スキャン幅、記録打ち込み量の全ての要素によりウェイト時間を決定する。図9Aは、記録開始から終了までの記録装置の動作を示すフローチャートである。図9Bは、キャリッジ減速度、スキャン幅、dutyに応じたウェイト時間の表である。
【0066】
ステップS901では、記録開始時にその記録モードにおけるキャリッジ減速度a、スキャン幅w、記録打ち込み密度(duty)dを取得する。ステップS902では、これらの値から図9Bの表に基づいて、ワイピング前停止時のウェイト時間Twを決定する。
【0067】
本実施形態では、例えばキャリッジ減速度が400(inch/秒2)以上、スキャン幅が36(inch)、dutyが50(%)の時は、ウェイト時間を2.9(秒)とする。
【0068】
ステップS903で記録が開始された後、ステップS904では、キャリッジを加速させる。
【0069】
ステップS905では、スキャン終了後にワイピングを実施するか否かを判断する。具体的には、記録動作において記録ヘッドから吐出されたドット数をドットカウント値としてカウントし、このカウント値が所定の値を超過したらワイピングを実施すると判断する。あるいは、前回ワイピングを実施してからの時間をタイマーカウント値としてカウントし、このカウント値が所定の値を超過したらワイピングを実施すると判断する。ドットカウント値またはタイマーカウント値はワイピングを行った後にクリア(0に設定)される。上記の判定方法によってワイピングを実施すると判断した場合には、ステップS906においてキャリッジを停止させた後、ステップS908においてウェイト時間Twの経過を待ち、ステップS909でワイピングを実施する。
【0070】
一方、ステップS905で、スキャン終了後にワイピングを実施しないと判断した場合は、ステップS907において、キャリッジを減速度aで停止させる。
【0071】
ステップS910では、記録を終了するか否かを判断し、終了しない場合は、ステップS904に戻り、終了する場合は、このフローの動作を終了する。
【0072】
以上のように、本実施形態では、キャリッジを停止させる減速度、スキャン幅、記録打ち込み密度に応じて、記録ヘッドの内圧が正圧から負圧へと低下するまでキャリッジ停止状態でウェイト時間を設け、その後にワイピングを実行する。これにより、ワイピング実施後再びキャリッジの移動が開始されても、吐出口から記録媒体上などにインクが漏れしたたり落ちることを抑制することができた。
【0073】
なお、ウェイト時間に関しては、具体的な時間を示したが、記録ヘッドの内圧が正圧から負圧へと低下する時間以上であれば、上記の数値に限定されるものではない。
【0074】
また、ステップS905においてワイピングを実施するか否かを判断したが、キャリッジがホームポジションに移動した際に、毎回あるいは数回置きなど、ワイピングを行うまでのキャリッジの走査回数を予め設定しておいてもよい。
【0075】
また、所定のキャリッジ減速度未満(例えば100(inch/秒2)未満)でキャリッジ停止直後の記録ヘッドの内圧が正とならない場合には、ウェイト時間を0(秒)に設定してよい。
【0076】
本実施形態では、図9Bに示したように、キャリッジ減速度、スキャン幅、dutyについてそれぞれ2段階ずつ区分を設けてウェイト時間を決定しているが、さらにそれぞれ多段階に区分を設けてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、キャリッジ減速度、スキャン幅、dutyの3つの要素のうちすべてを参照しウェイト時間を決定しているが、少なくとも一つの要素からウェイト時間を決定すればよい。
【0078】
また、ここでのキャリッジ減速度は、キャリッジの速度制御のための信号を参照してもよいし、加速度センサ等を用いてリアルタイムに計測した結果を参照してもよい。
【0079】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、ワイピング動作を実行する際にキャリッジを停止させるときのキャリッジ減速度を制御する手法について説明する。
【0080】
キャリッジが減速を開始して回復ユニット107上に停止し、記録ヘッドの内圧が0となるまでのキャリッジ速度プロファイルを図10(a)に示し、その時の記録ヘッドの内圧プロファイルを図10(b)に示す。図10(a)において、横軸が時間、縦軸がキャリッジ速度を示している。図1中のX軸正方向に移動する際の速度を正としている。また図10(b)において、横軸が時間、縦軸が記録ヘッドの内圧を示している。
【0081】
ここで、図10におけるデータ1001のキャリッジ速度プロファイル(キャリッジ減速度が500(inch/秒2))を持つ記録モードによって記録が行われる場合について説明する。
【0082】
図11は、記録媒体Pに対する記録中のキャリッジのスキャンの様子をベクトルで示した図である。スキャン1,3,5はスキャン前後でワイピング動作が入らないスキャンである。スキャン7の終了時にワイピング動作を実行し、その後スキャン9を開始する場合について説明する。
【0083】
ワイピング動作に移行するためにはキャリッジを回復ユニット上まで移動させる必要があるため、スキャン7,9はスキャン1,3,5に比べてキャリッジ移動距離が長くなっている。スキャン7の減速度が仮に図10(a)における減速度と同じであった場合、図10(b)のデータ1001のようにキャリッジ停止時の記録ヘッドの内圧が正圧となる(P1001>0)。そのため、キャリッジ停止後すぐにワイピング動作に移行するとインクが漏れしたたり落ちる可能性がある。
【0084】
そこで、本実施形態では、キャリッジ停止後の記録ヘッドの内圧が正圧となるようなキャリッジ減速度の場合は、ワイピング動作を実行しないキャリッジ減速度よりワイピング動作を実行する際のキャリッジ減速度を小さい値に切り替える。加えて第1の実施形態で説明した通り、スキャン幅が短いほど、またはdutyが低いほど、キャリッジ停止時における記録ヘッドの内圧は高くなる。そこでさらに、本実施形態では、記録動作におけるスキャン幅が短いほど、またはdutyが低いほど、切り替え後のキャリッジ減速度を小さくするよう制御する。
【0085】
ワイピング動作を実行する際にキャリッジを停止させるキャリッジ減速度を切り替えるか否かは、所定のキャリッジ減速度を超えるか否かで判断する。所定のキャリッジ減速度は、キャリッジ停止時の記録ヘッドの内圧が正圧とならないキャリッジ減速度とする。
【0086】
上記の所定の減速度でキャリッジが減速を開始して回復ユニット上に停止するまでのキャリッジ速度プロファイルを図12(a)に示し、その時の記録ヘッドの内圧プロファイルを図12(b)に示す。図12(a)において、横軸が時間、縦軸がキャリッジ速度を示している。図1中のX軸正方向に移動する際の速度を正としている。また図12(b)において、横軸が時間、縦軸が記録ヘッドの内圧を示している。図11におけるスキャン7の減速度は図12(a)における減速度と同様となることが望ましい。
【0087】
図12(a)のデータ1101は、キャリッジ減速度がデータ1001よりも小さいキャリッジ減速度(例えば100(inch/秒2))とする。この場合、キャリッジ停止後の記録ヘッドの内圧は、図12(b)のデータ1101のように正圧とはならない(P1101<0)。そのため、キャリッジ停止後すぐにワイピング動作を実行することが可能である。
【0088】
また、図13Aは、記録開始から終了までの記録装置の動作を示すフローチャートであり、図13Bは、キャリッジ減速度、スキャン幅、dutyに応じたワイピングの直前の減速度の表である。
【0089】
図13Aにおいて、ステップS1201では、記録開始時にその記録モードにおけるキャリッジ減速度a、スキャン幅w、記録打ち込み密度(duty)dを取得する。ステップS1202では、これらの値から図13Bの表に基づいて、ワイピングの直前のキャリッジ減速度awを決定する。本実施形態では、例えばキャリッジ減速度aが100(inch/秒2)以上、スキャン幅が36(inch)、dutyが50(%)の場合は、キャリッジ減速度awを100(inch/秒2)とする。
【0090】
ステップS1203で記録が開始された後、ステップS1204では、キャリッジを加速させる。
【0091】
ステップS1205では、スキャン終了後にワイピングを実施するか否かを判断する。ワイピングの要否は第1の実施形態と同様の手法で判断する。ワイピングを実施すると判断した場合には、ステップS1206において、キャリッジ減速度awでキャリッジを停止させた後、ステップS1208でワイピングを実施する。
【0092】
一方、ステップS1205で、スキャン終了後にワイピングを実施しないと判断した場合は、ステップS1207において、キャリッジを減速度aで停止させる。
【0093】
ステップS1209では、記録を終了するか否かを判断し、終了しない場合は、ステップS1204に戻り、終了する場合は、このフローの動作を終了する。
【0094】
以上のように、本実施形態では、通常の記録時のキャリッジの減速度が、キャリッジ停止後の記録ヘッドの内圧が正圧となるような減速度の場合は、次のようにする。つまり、ワイピング動作を実行しない場合のキャリッジ減速度よりワイピング動作を実行する場合のキャリッジ減速度を小さい値に切り替える。これにより、ワイピング実施後、再びキャリッジの移動が開始されても、吐出口から記録媒体上などにインクが漏れしたたり落ちることを抑制することができる。
【0095】
なお、ワイピング動作を実行する際のキャリッジ減速度に関しては、具体的な減速度を示したが、キャリッジ停止後のヘッドの内圧が正圧とならないキャリッジ減速度であれば、上記の数値に限定されるものではない。
【0096】
また、本実施形態では、キャリッジ速度は一定であることを前提にして説明したが、ワイピング動作のためにキャリッジを停止させるスキャン中のキャリッジ速度も切り替えてよい。
【0097】
また、本実施形態では、ワイピング動作のためにキャリッジを停止させるスキャンのキャリッジ速度プロファイルを切り替えている。しかし、ワイピング動作のためにキャリッジを停止させるスキャンを含む複数スキャンのキャリッジ速度プロファイルを切り替えてもよい。
【0098】
また、本実施形態ではキャリッジ減速度、スキャン幅、dutyの3つの要素のうちすべてを参照しワイピングの直前のキャリッジ減速度を決定しているが、少なくとも一つの要素からキャリッジ減速度awを決定すればよい。
【0099】
本実施形態では、キャリッジ減速度、スキャン幅、dutyについてそれぞれ2段階ずつ区分を設けてワイピング直前のキャリッジ減速度を決定しているが、さらにそれぞれ多段階に区分を設けてもよい。
【0100】
本実施形態では、記録途中にワイピング動作に移行する場合について説明したが、記録動作以外のキャリッジ移動終了後にワイピング動作に移行する場合についても同様である。
【0101】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、キャリッジ停止後続けてワイピング動作を実行した後に、キャリッジ停止時間を設定する制御について説明する。
【0102】
速度V803で移動していたキャリッジが減速度a803で減速して回復ユニット上に停止した時刻をT803とする。そして、ワイピングが実行されてからワイピングが終了するまでの時間をT803y、ワイピングが終了した時刻T803aから記録ヘッドの内圧が0となる時刻T803bまでの時間をT803cとする。その場合のキャリッジ速度プロファイルを図14Aに示す。また、そのときの記録ヘッドの内圧プロファイルを図14Bに示す。
【0103】
また、速度V804で移動していたキャリッジが減速度a804(a804>a803)で減速して回復ユニット上に停止した時刻をT804とする。そして、ワイピングが実行されてからワイピングが終了するまでの時間をT804y、ワイピングが終了した時刻T804aから記録ヘッドの内圧が0となる時刻T804bまでの時間をT804cとする。その場合のキャリッジ速度プロファイルを図14Cに示す。また、そのときの記録ヘッドの内圧プロファイルを図14Dに示す。図14A図14Cにおいて、横軸が時間、縦軸がキャリッジ速度を示している。図1中のX軸正方向に移動する際の速度を正としている。図14B図14Dにおいて、横軸が時間、縦軸が記録ヘッドの内圧を示している。
【0104】
図14B図14Dより、両者ともキャリッジ停止時における記録ヘッドの内圧は正圧(P804>P803>0)である。図8Eに記録ヘッドの内圧がP803に達した際の吐出口近傍の断面図を示し、図8Fに記録ヘッドの内圧がP804に達した際の吐出口近傍の断面図を示す。両者とも図1中のX-Z平面に沿った断面を示している。図8E図8Fに示すように、記録ヘッドの内圧が正圧時において吐出口に形成されるインクのメニスカスは凸形状である。この状態でワイパが接触すると、インクのメニスカスが壊れてしまう可能性がある。すなわちワイピング実行後すぐにキャリッジの移動が開始されることにより、吐出口から記録媒体上などにインクが漏れしたたり落ちる問題が発生する可能性も高くなる。
【0105】
そこで、本実施形態では、キャリッジ停止後のワイピング実行後に、記録ヘッドの内圧が正圧から負圧へと低下するまでキャリッジ停止状態のウェイト時間を設ける。図8Hは、ワイピング実行後の吐出口近傍の断面図である。図8Hに示すように、記録ヘッドの内圧が正圧時においてワイピングを実行すると、吐出口に形成されるインクのメニスカスが壊れてしまう場合がある。しかし、すぐにキャリッジの移動を開始せずに、ウェイト時間を設けると、記録ヘッドの内圧が負圧の状態に収束しようとする。その間にインクのメニスカスが壊れることにより吐出口から漏れ出たインクには吐出口へと戻ろうとする毛細管現象による力(図8H中矢印で示す)が働き、再び図8Gに示すようなメニスカスを形成することができる。図14DにおけるT804aからT804bまでの時間T804c(秒)以上のウェイト時間をワイピング後に設ければ、データ803,804ともに記録ヘッドの内圧を負圧の状態に収束させることができる。これにより、記録ヘッドの内圧が負圧であるときにキャリッジの移動が開始されるので、吐出口から記録媒体上などにインクが漏れしたたり落ちることを抑制することができる。
【0106】
また、図14B図14Dに示すように、記録ヘッドの内圧が負圧になるまでの時間がデータ803とデータ804では異なる(T803c<T804c)。そこで、データ803のウェイト時間を最適化し、データ804のウェイト時間より短くする制御を導入することで、スループットの低下を抑えることができる。
【0107】
さらに、このウェイト時間は、スキャン幅、記録打ち込み密度によっても最適化が可能である。図15Aに記録開始から終了までの動作のフローチャートを示し、図15Bにキャリッジ減速度、スキャン幅、dutyに応じたウェイト時間の表を示す。
【0108】
図15Aにおいて、ステップS1401では、記録開始時にその記録モードにおけるキャリッジ減速度a、スキャン幅w、記録打ち込み密度(duty)dを取得する。ステップS1402では、これらの値から図15Bの表に基づいて、ワイピング後のキャリッジの移動までのウェイト時間Twを決定する。
【0109】
本実施形態では、例えばキャリッジ減速度が400(inch/秒2)以上、スキャン幅が36(inch)、dutyが50(%)の場合は、ウェイト時間を2.9(秒)とする。
【0110】
ステップS1403で記録が開始された後、ステップS1404では、キャリッジを加速させる。
【0111】
ステップS1405では、スキャン終了後にワイピングを実施するか否かを判断する。具体的には、記録動作において記録ヘッドから吐出されたドット数をドットカウント値としてカウントし、このカウント値が所定の値を超過したらワイピングを実施すると判断する。あるいは、前回ワイピングを実施してからの時間をタイマーカウント値としてカウントし、このカウント値が所定の値を超過したらワイピングを実施すると判断する。ドットカウント値またはタイマーカウント値はワイピングを行った後にクリア(0に設定)される。上記の判定方法によってワイピングを実施すると判断した場合には、ステップS1406においてキャリッジを停止させた後、ステップS1408でワイピングを実施し、ステップS1409においてウェイト時間Twの間キャリッジの移動を停止させる。
【0112】
一方、ステップS1405で、スキャン終了後にワイピングを実施しないと判断した場合は、ステップS1407において、キャリッジを減速度aで停止させる。
【0113】
ステップS1410では、記録を終了するか否かを判断し、終了しない場合は、ステップS1404に戻り、終了する場合は、このフローの動作を終了する。
【0114】
以上のように、本実施形態では、キャリッジを停止させる減速度に応じて、キャリッジ停止後のワイピング実行後に、記録ヘッドの内圧が正圧から負圧へと低下するまでキャリッジを停止状態にするウェイト時間を設ける。これにより、ワイピング実施後再びキャリッジの移動が開始されても吐出口から記録媒体上などにインクが漏れしたたり落ちることを抑制することができる。なお、ウェイト時間に関して、具体的な時間を示したが、記録ヘッドの内圧が正圧から負圧へと低下する時間以上であれば、上記の数値に限定されるものではない。
【0115】
また、ステップS1405においてワイピングを実施するか否かを判断したが、キャリッジがホームポジションに移動した際に、毎回あるいは数回置きなど、ワイピングを行うまでのキャリッジの走査回数を予め設定しておいてもよい。
【0116】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、キャリッジが停止する直前の低速時にワイピング動作を実行した後に、キャリッジ停止時間を設定する制御について説明する。
【0117】
速度V805で移動していたキャリッジが減速度a805で減速して回復ユニット上に停止する直前の低速時に、ワイピングを開始した時刻をT805とする。そして、ワイピングが実行されてから終了するまでの時間をT805y、ワイピングが終了した時刻T805aから記録ヘッドの内圧が0となる時刻T805bまでの時間をT805cとする。その場合のキャリッジの速度プロファイルを図16Aに示す。また、そのときの記録ヘッドの内圧プロファイルを図16Bに示す。
【0118】
また、速度V806で移動していたキャリッジが減速度a806(a806>a805)で減速して回復ユニット上に停止する直前の低速時に、ワイピングを開始した時刻をT806とする。そして、ワイピングが実行されてから終了するまでの時間をT806y、ワイピングが終了した時刻T806aから記録ヘッドの内圧が0となる時刻T806bまでの時間をT806cとする。その場合のキャリッジの速度プロファイルを図16Cに示す。また、そのときの記録ヘッドの内圧プロファイルを図16Dに示す。図16A図16Cにおいて、横軸が時間、縦軸がキャリッジ速度を示している。図1中のX軸正方向に移動する際の速度を正としている。図16B図16Dにおいて、横軸が時間、縦軸が記録ヘッドの内圧を示している。
【0119】
図16B図16Dより、両者ともキャリッジが停止する直前の低速時における記録ヘッドの内圧は正圧(P806>P805>0)である。前述した第3の実施形態と同様に、この状態でワイパが吐出口面に接触すると、インクのメニスカスが壊れてしまう可能性がある。すなわちワイピング実行後すぐにキャリッジの移動が開始されることにより、吐出口から記録媒体上などにインクが漏れしたたり落ちる可能性がある。
【0120】
そこで、本実施形態では、キャリッジが停止する直前の低速時のワイピング実行後に、記録ヘッドの内圧が正圧から負圧へと低下するまでキャリッジの停止状態でウェイト時間を設ける。第3の実施形態と同様に、図8Hにワイピング実行後の吐出口近傍の断面図を示す。図8Hに示すように、記録ヘッドの内圧が正圧である状態において、ワイピングを実行すると、吐出口に形成されるインクのメニスカスが壊れてしまう場合がある。しかし、すぐにキャリッジの移動を開始せずに、ウェイト時間を設けると、記録ヘッドの内圧が負圧の状態に収束しようとする。その間にインクのメニスカスが壊れることによって吐出口から漏れ出たインクには吐出口へと戻ろうとする毛細管現象による力(図8H中矢印で示す)が働き、再び図8Gに示すようなメニスカスを形成することができる。図16Dにおける時刻T806aから時刻T806bまでの時間T806c(秒)以上のウェイト時間をワイピング後に設ければ、データ805,806ともに記録ヘッドの内圧を負圧の状態に収束させることができる。これにより、記録ヘッドの内圧が負圧であるときにキャリッジの移動が開始されるので、吐出口から記録媒体上などにインクが漏れしたたり落ちることを抑制することができる。
【0121】
また、図16B図16Dに示すように、記録ヘッドの内圧が負圧になるまでの時間がデータ805とデータ806では異なる(T805c<T806c)。そこで、データ805のウェイト時間を最適化し、データ806のウェイト時間より短くする制御を導入することで、スループットの低下を抑えることができる。
【0122】
さらに、このウェイト時間は、スキャン幅、記録打ち込み密度によっても最適化が可能であることは第1及び第3の実施形態と同様である。
【0123】
以上のように、本実施形態では、キャリッジを停止させる減速度に応じて、キャリッジが停止する直前の低速時のワイピング実行後に、記録ヘッドの内圧が正圧から負圧へと低下するまでキャリッジ停止状態のウェイト時間を設ける。これにより、ワイピングの実施後再びキャリッジの移動が開始されても、吐出口から記録媒体上などにインクが漏れしたたり落ちることを抑制することができる。さらに、キャリッジが停止する前にワイピングを実施するため、前述の実施形態と比較し、キャリッジが減速を開始しワイピング実施後再びキャリッジを加速するまでの時間が短くて済むため、スループットが向上する。したがって、キャリッジがホームポジションに移動した際には毎回あるいは数回置きなど頻度高くワイピングを実行する場合において特に好ましい。
【0124】
(他の実施形態)
また本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読み出し実行する処理でも実現できる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現できる。
【0125】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0126】
101:記録ヘッド、102:供給チューブ、103:インクタンク、104:キャリッジ、107:回復ユニット、108:インク供給システム、407:サブタンク、301:ワイパ、309:払拭ユニット
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
図16D